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2019-02-20(Wed)

【新司】倒産法平成20年第1問

昼飯を食べすぎてめちゃくちゃ気持ち悪いんですが……

頑張って今日も答案を書きます……

平成20年代最後になります。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,取引先の倒産を契機として経営状態が著しく悪化した。A社のメインバンクとして,同社の全債務3億円のうち2億5000万円について貸付けを行っていたB銀行は,平成19年12月になり,債権全額についてA社から回収することは困難であると考え,A社との間で再建計画を作成し,弁済期の到来した2億5000万円の債務について期限を猶予した。しかし,その後A社の経営状態に不安を抱いたB銀行が経理状況を改めて調査したところ,A社には,実際は,総額1億円の簿外債務が存在することが判明した。B銀行は,A社の破たんはいずれ避けられないものと判断して再建計画に基づく協力を取りやめることを決定し,平成20年1月25日にはその旨をA社に告げて再建計画を破棄した。
 他方,以前からB銀行を抵当権者とする抵当権が設定されていたA社所有の甲土地については,周辺地域の再開発計画が発表され,地価が上昇したことから,2000万円分の担保余剰が生じた。そこで,A社は,平成20年2月1日,これに抵当権を設定して資金を調達すべく,C銀行に融資を申し込み,C銀行は,同月4日,A社の救済策として,甲土地について第2順位の抵当権を設定して,2000万円を貸し付けた。しかし,A社の破産は必至であると考えていた同社の代表者Dは,融資を受けるに当たり,貸付金を妻のEに贈与することを意図しており,その後貸付金はEに交付された。
 また,F株式会社(以下「F社」という。)は,A社に対して無担保の債権3000万円(以下「S債権」という。)を有していたが,B銀行が再建計画を破棄したことを知り,平成20年2月5日,A社から,同社所有の土地のうち唯一担保の設定されていない乙土地(価格3000万円)を代金3000万円で買い受け,同日,既に弁済期の到来していたS債権をもって乙土地についての売買代金債権と相殺する旨の意思表示をした。
 その後資金繰りに窮したA社は,平成20年3月3日に裁判所に対し自ら破産手続開始の申立てをし,同月10日に破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。

 〔設 問〕
1.破産管財人Xは,甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができるか。
2..破産管財人Xは,F社に対してどのような請求をすべきか。


問題文は短めです。

しかし,その割には,検討事項が多そうです。

否認のオンパレードという感じです。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Xは,A社がC銀行のために甲土地に抵当権を設定した行為(以下「本件抵当権設定行為」という。)が「担保の供与」にあたるとして,偏頗行為否認(破産法162条1項)を行使することが考えられる。
  ⑵ もっとも,本件抵当権設定行為は,C銀行がA社に対して2000万円を貸し付ける行為(以下「本件貸付行為」という。)と引き換えにされているから,同時交換行為であるとして,「既存の債務についてされた担保の供与」とはいえないのではないか。
 破産法162条1項が既存の債務についてされた担保の供与を否認の対象としたのは,本来の優先関係を潜脱する抜け駆け的回収を否定するためである。これに対して,同時交換的行為は,当初から優先的地位が付与された債権が与えられるため,既存の優先関係を潜脱するものではない。そのため,同時交換的行為にあたる場合には,「既存の債務についてされた担保の供与」にはあたらない(※1)
 そこで,本件抵当権設定行為が同時交換的行為であるかについて検討すると(※2),本件抵当権設定行為は,甲土地の地価の上昇により2000万円の担保余剰が生じたことから,本件貸付行為を行う前提としてされたものである。そうすると,本件抵当権設定行為は,取引通念に照らして,本件貸付行為と同時に行われたものであるから,同時交換的行為であるといえる。したがって,本件抵当権設定行為は,「既存の債務についてされた担保の供与」にはあたらない。
  ⑶ よって,本件抵当権設定行為について,偏頗行為否認をすることはできない。
 2⑴ そこで,Xとしては,本件抵当権設定行為について,相当対価処分行為否認(破産法161条1項)を行使することが考えられる(※3)
  ⑵ア 本件抵当権設定行為は,「破産者」であるA社の「有する財産を処分する行為」である(同項柱書)。
   イ 本件抵当権設定行為は,甲土地の交換的価値をもって,2000万円の貸付けを行わせるものであり,「当該処分による財産の種類の変更」を生じさせている(※4)。そして,総債務者の共同担保としての確実性の高い不動産の価値を,費消隠匿しやすい金銭に換えるものであるから,「破産者において破産債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるもの」である(同項1号)。
   ウ 「破産者」であるA社は法人であるから,その「隠匿等の処分をする意思を有していた」かどうかは,その代表者Dの意思をもって判断すべきところ,Dは本件抵当権設定行為の「対価として取得した」貸付金2000万円を妻のEに贈与することを意図しており,「無償の供与」として「隠匿等の処分をする意思を有していた」ということができる(同項2号)。
   エ 本件抵当権設定行為の「相手方」であるC銀行は,A社の救済策として本件貸付行為を行うに至っているから,貸付金がDを通じてEに贈与されるものと考えていた可能性は低い。また,銀行という性質上,貸付を行うにあたっては,厳格な審査が行われるはずであり,Dが貸付金をEに贈与する意図を有していることを知っていれば,本件貸付行為は行われていなかったと考えられる。そうすると,C銀行が,本件抵当権設定行為の「当時」,A社が「隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていた」とは考えにくい(同項3号)。
   オ 以上からすると,本件抵当権設定行為について,相当対価処分行為否認の要件を満たさない。
  ⑶ したがって,Xは,相当対価処分行為否認を行使することはできない。
 3 よって,Xは,甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができない。
第2 設問2
 1⑴ まず,Xとしては,乙土地をF社に売却した行為(以下「本件売却行為」という。)について相当対価処分行為否認を行使し,乙土地の返還を請求することが考えられる。
  ⑵ア 本件売却行為は,「破産者」であるA社の「有する財産を処分する行為」である(破産法161条1項柱書)。
   イ 本件売却行為により,「不動産」である乙土地が3000万円の「金銭への変換」がされており,上記のように,不動産に比して金銭は費消隠匿がしやすいから,「破産債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるもの」である(同項1号)。
   ウ もっとも,本件売却行為の当時,A社としては,S債権を弁済する手段として乙土地を売却することにより生ずる売買代金請求権と相殺することを認識していたにとどまるものと考えられるから,「対価として取得した金銭について,隠匿等の処分をする意思を有していた」とは認められない。
   エ 以上からすると,本件売却行為について,相当対価処分行為否認の要件を満たさない。
  ⑶ したがって,Xは,本件売却行為について,相当対価処分行為否認を行使することはできない。
 2⑴ 次に,Xとしては,本件売却行為がS債権を消滅させるものとして偏頗行為否認(破産法162条1項)を行使し,乙土地の返還を請求することが考えられる。
  ⑵ア 本件売却行為は,「既存の債務」であるS債権に係る債務を相殺によって「消滅」させる行為である(同項柱書かっこ書)。
   イ 本件売却行為の時点で,A社が「支払不能」の状態にあったかを検討すると,A社は平成19年12月の時点で,B銀行の貸付金2億5000万円の弁済期が到来しており,一旦はB銀行による再建計画のもと期限が猶予されたが,平成20年1月25日にB銀行が当該再建計画を放棄したことによって,期限の猶予も放棄されたこととなるから,2億5000万円の債務の弁済期が到来している状態にある。しかし,A社がこれを弁済するのは困難な状況にあるから,「その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態」にあるということができる(同法2条11項)。したがって,A社は,平成20年1月25日の時点で「支払不能」の状態にある。そうすると,本件売却行為は,「支払不能になった後にした行為」である(同法162条1項1号本文)。
   ウ F社は,B銀行が再建計画を放棄したことを知っているから,これによってA社が「支払不能」の状態に陥っていることを「知っていた」と考えられる(同項1号ただし書イ)。
   エ 以上からすると,本件売却行為について,偏頗行為否認の要件を満たす。
  ⑶ したがって,Xは,本件売却行為について偏頗行為否認を行使し,乙土地の返還を請求することができる。
 3⑴ また,Xとしては,本件売却行為により生じた売買代金債権とS債権との相殺は,相殺禁止にあたると主張して,売買代金の支払を請求することが考えられる。
  ⑵ア S債権は,A社の「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,「破産債権」(破産法2条5項)にあたるから,F社は「破産債権者」である(同条6項)。
   イ 上記のとおり,本件売却行為の時点でA社は「支払不能」に陥っているから,本件売却行為に係る契約(以下「本件売買契約」という。)は「支払不能になった後」の契約である。これによって,F社は,売買代金として3000万円を支払う「債務」を負担している。F社は,本件売買契約に基づいて乙土地を買受けるのと同日に,売買代金債権とS債権とを相殺する旨の意思表示をしているが,F社がこのような行動に出たのは,B銀行が再建計画を破棄したことを知り,A社が支払不能に陥ったことを認識したことから,自社の早期な債権回収を図る目的があったものと考えられる。そうすると,F社が本件売買契約を結んだのは,「専ら破産債権をもってする相殺に供する目的」があったものと認められる(※5)。このような目的のもと,F社は,乙土地の「処分を内容とする」本件売買契約を締結しているということができる。
 そして,F社は,上記のように,「当該契約の締結の当時」,A社が「支払不能であったことを知っていた」ものと認められる(破産法71条1項2号)。
   ウ 以上からすると,本件売却行為により生じた売買代金債権とS債権との相殺は,相殺禁止に該当する。
  ⑶ したがって,Xは,F社に対し,上記売買代金の支払を請求することができる。
 4 そこで,Xとしては,乙土地の返還と,上記売買代金の支払と,どちらを請求すべきかが問題となる。乙土地の返還を受けたところで,結局のところ,これを換価することとなるし(破産法184条以下),これが時価相当額で売却できるかは不明であるから,売買代金の支払を受け,3000万円を確実に破産財団に組み入れる方が妥当であると考える(※6)
 したがって,Xは,F社に対して,本件売買契約に基づき売買代金の支払を請求すべきである。

以 上


(※1)「偏頗行為否認が問題とするのは,本来の優先関係を潜脱する『抜け駆け的』回収であるのに対し,担保供与を前提として行われる新規融資の場合は当初から担保の付与された優先的な地位が付与された債権であり,既存の優先関係を潜脱するとは評価できない。また,このような行為が否認されると,経済的窮境にある債務者に対しその債権を図るために行われる融資(「救済融資」と呼ばれる)が,否認リスクのために萎縮し,倒産を加速させかねない。そのため,同時交換的行為は明示的に偏頗行為否認の対象から除外されている(破162条1項柱書かっこ書,160条1項柱書かっこ書)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』300頁
(※2)「担保提供と『同時』といえるかどうかは取引通念に照らして判断される。その観点から担保提供を前提とした融資であるといえるならば『同時』と評価される。」前掲山本ほか301頁
(※3)「同時交換的行為が否認の対象から除外されるのは,担保提供について偏頗行為否認を問題とする場合であり,およそ同時交換的行為が否認の対象とならないわけではない。担保提供と新規融資を全体として捉えれば,担保の対象となった財産の処分行為とみることができる。したがって,清算義務が課されている限りは相当の対価による処分行為の否認の規律(破161条)が適用され,例えば,新規融資による融資金の使途が財産の隠匿や無用の費消のためである場合には,同条の要件のもとで否認が可能である……。また,清算義務が課されないような場合には,端的に財産減少行為となる。」前掲山本ほか301頁
(※4)「新たに担保権を設定して借入れを行う行為……も,全体としてみると担保権の設定の客体である財産の換価行為であり,財産の種類の変更をもたらす処分に該当しうる。」前掲山本ほか288頁
(※5)「『契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的』とは,契約の目的が『専ら』相殺による債権回収を目的とすることをいう。例えば,支払不能を知って,(ⅰ)代物弁済の実を図るために破産者の財産を買い受け,さして感覚を置かずに相殺をする場合や,(ⅱ)将来の相殺による債権回収のために預金の積み増しを求め,それに応じて積み増しが行われた場合は,これに該当する。『専ら』は幅のある概念であり,相当に評価の余地がある。一般的にいえば,事業や取引関係の平常の過程から突出した債権回収のための行為は『専ら』相殺による債権回収を目的とするものと判断される。」前掲山本ほか258頁
(※6)出題趣旨では,「否認と相殺制限の優先関係や得失等についても言及することが求められる。」と書かれているので,最後に簡単に触れてはいますが,果たしてこの結論が通るのかは分かりません。



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