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2019-02-18(Mon)

【新司】倒産法平成29年第1問

平成22年の第2問もやってしまおうかと思いましたが,

さすがにちょっと疲れが……

もう年ですね……

ということで,またも,だいぶ前に答案を書いたシリーズで,

倒産法の平成29年を掲載することとします。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 個人A(57歳)は,「A金属工業」の屋号で,妻B(55歳)を含む従業員5名と共に,父の代から続く金属加工業を営んでいた。Aは,目立った遊興等に興じることもなく,真面目に仕事に精を出し,平成25年頃までは,おおむね順調に事業を遂行していた。
 しかし,平成26年頃から,資材の高騰や受注件数の減少,取引先の経営悪化等により,Aの資金繰りは徐々に悪化していった。平成28年には,Aの主要取引先であったCに対する売掛金債権約100万円が未払いとなったまま,Cが廃業して音信不通となり,また,同じく主要取引先であったDは,同年6月に破産手続開始決定を受け,Dに対する売掛金債権約200万円についても破産手続による配当はなかった。さらに,同年11月,Aの従業員Eが売上金約100万円を持ち逃げして行方不明となったことで,Aは,ますます資金繰りに窮するようになった。
 その結果,Aは,新たな融資を受けない限り,F銀行からの借入金債務のうち,弁済期を平成29年3月末日とする分割金100万円の弁済に窮する見通しとなり,債務整理を行うことで立て直しを図りたいと考え,同月15日,弁護士Yに債務整理を依頼した。Yは,同月17日,同日付けで,Aから聴取して判明した債権者宛てに,下記の内容の通知(以下「本件通知」という。)を発送した。

   記

 当職は,この度,Aから依頼を受けて,同人の債務整理の任に当たることとなりました。
 債務整理の方針については,Aの債務及び資産の状況を調査の上,慎重に決定することとなりますが,これらの全てについて当職がAの代理人としてAと協議の上行うこととなります。
 つきましては,以後,Aとの債権債務関係に関する連絡の一切は,当職宛てにしていただき,Aやその家族への連絡や取立行為は一切中止願います


Yが本件通知発送時までに行った調査の結果によれば,Aの主な債務は,F銀行からの事業資金の借入金債務の残額が約1500万円,同じくF銀行からの自宅兼工場の建物のローンの残額が約2000万円あるほか,金融業者4社からの若干の借入金債務がある程度であり,Aの説明では,Aの取引先に対する買掛金債務は存在しないとのことであった。
 平成29年3月30日,Aは,Yとの間で債務整理の方針についての打合せを行ったところ,やはり同月末の支払を行うことは困難であるとの結論に達し,破産手続開始の申立てを行うことを決意してその旨をYに委任した。
 平成29年4月10日,Aは,Yを申立代理人として破産手続開始の申立てを行い,裁判所は,同月12日午後5時,Aについて破産手続開始の決定を行い,破産管財人として弁護士Xを選任した。
 XがAの資産状況等を調査したところ,次の事実が判明した。
① Aは,債務整理を依頼した後も,Yに相談することなく資金の融通先を探しており,平成29年3月18日の深夜,長年の取引先で個人的な親交もあった取引先業者(個人)Gの自宅にBとともに赴き,100万円の融資を依頼した。Gは,同日の時点でAに対し,弁済期を4月末日とする80万円の売掛金債権を有していたが,Aが「どうしても今月末の支払に100万円が必要なのです。今回をしのげば絶対立て直せます。取引先Cからの売掛金100万円の入金があれば必ず返せますから。決して御迷惑はお掛けしません。」と懇願するので同情し,「うちも楽ではないし100万円までは貸せないけど,せめてこれくらいなら」と,その場でAに50万円を貸し付けた。
② Aは,Gから受領した金員をF銀行に対する平成29年3月末日の分割金の弁済に充てようと思っていたが,まだ50万円ほど不足しており,これ以上のあても思い付かずにいたところ,同月25日の早朝,Bから,Bの父親Hが倒れ,入院費用が必要になったことを聞いた。Aは,昨年12月末頃にHから「立て直しに成功したら返してくれればよい」として60万円を借りていたことを思い出し,平成29年3月26日,Bを通じて,Gから受領した50万円をHに弁済した。
③  Aの資産としては,現金約20万円,預貯金30万円のほか,自宅兼工場としている借地上の建物がある。ただし,当該建物には,F銀行の根抵当権が設定されており,その被担保債権の残額は,借地権付建物の現在の評価額を上回っている。Aは,破産手続開始の決定に伴い「A金属工業」を廃業した。その後,就職を試みてハローワークに通うなどしているものの,未だ就職先は決定しておらず,その見通しもない。Bは,Aの破産手続開始後,それまでの心労がたたって倒れ,以後入退院を繰り返している。

 〔設 問〕
1.Xは,AのHに対する50万円の弁済を否認することができるか否かを調査検討している。
 本件通知が「支払の停止」に該当するかについて触れつつ,平成29年3月17日の時点でAに「支払不能」が認められるかについて,論じなさい。
2.Aの債権者であるGは,債権者集会兼免責審尋期日に出頭し,Aの免責を許可することについて強く反対する旨の意見を述べた。
 他方,Aは,免責許可決定を受けることを強く希望している。Aは,債権者集会兼免責審尋期日に出頭したほか,Xによる事情聴取にも素直に応じ,Gからの借入れやHに対する弁済について説明するなど,Xの管財業務に積極的に協力していた。
 ⑴ Aに免責不許可事由が認められるか否かについて,論じなさい。
 ⑵ 仮にAに免責不許可事由が認められるとして,破産裁判所は,Aの免責を許可するべきか否かについて,肯定的に考慮すべき事情,否定的に考慮すべき事情双方を挙げつつ,論じなさい。


弁護士の一人称って,なんで「当職」なんですかね。

どうでもいいですね。

答案の中身はたぶんクソです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 平成29年3月17日の時点で,Aに「支払不能」が認められるか。
 2⑴ 「支払不能」とは,債務者が,支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(破産法2条11項)。債務者が支払不能にあるときは,これが破産手続開始の原因となる(同法15条1項)。また,債務者が支払を停止したときは,支払不能にあるものと推定される(同条2項)ほか,否認権行使の要件となる(同法160条1項1号)。
  ⑵ Aから債務整理を依頼された弁護士Yは,債権者宛に本件通知を発しているので,これをもって「支払の停止」に該当するか検討する。
 「支払の停止」とは,債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいう
 本件通知は,Aが債務整理を行うこととなったことを示すものであるが,未だAの債務及び資産の状況は調査されておらず,債務整理の方針についても今後の協議による旨の記載しかされていない。そうすると,本件通知がなされただけでは,Aが弁済期にある債務を一般的かつ継続的に支払うことができるか否か判然としない。したがって,本件通知がされたことをもって,Aが弁済期にある債務を一般的かつ継続的に支払うことができないことが外部に表示されたということはできない(※1)(※2)
 よって,Yが本件通知を発したことは,「支払の停止」に該当しない。
  ⑶ そこで,上記時点において,Aが「支払不能」にあるか検討すると,Aは,F銀行からの借入金債務のうち,弁済期を平成29年3月末日とする分割金100万円の弁済に窮する見通しとなっているにとどまるから,この状態で「支払不能」ということができるか問題となる。
 支払不能を判断するにあたり,弁済期にない債務あるいは弁済期にないが到来が確実である債務については考慮することができるとする見解がある。しかし,法が「その債務のうち弁済期にあるもの」と明示した文言に反することとなり,妥当ではない。また,安易な「支払不能」の認定により,破産手続開始の決定がされることを防止するためにも,厳格に解釈すべきであるから,弁済期の到来した債務のみをもって,支払不能を判断すべきである。
 これを本件についてみると,F銀行からの借入金債務のうち100万円については,本件通知を発した時点では弁済期が到来していないから,同月末においてこの弁済ができないとしても,当該時点における支払不能においては考慮されない。そうすると,Aは,平成29年3月17日の時点で,債務を一般的かつ継続的に支払うことができないとはいえない。
 3 以上から,上記の時点で,Aは「支払不能」が認められない。
第2 設問2
 1 小問⑴
 Aに免責不許可事由が認められるか(破産法252条1項)。
 Aは,Gから50万円を借り入れ,これをHの弁済にあてているが,「著しく不利益な条件で債務を負担し」たとはいえず,「浪費又は賭博その他の射幸行為」にもあたらず,Gに対し「詐術を用い」ることをしていないから,同項2号,4号及び5号には該当しない。また,同項6号ないし11号に該当する行為も行っていない。そして,Aが,Hに対して弁済を行ったのは,Hが倒れ入院費用が必要になったからであって,「債権者を害する目的」はないものと考えられるから,同項1号にも該当しない。
 そこで,同項3号に該当するかどうか検討すると,Aは「特定の債権者」Hに対する60万円の「債務」について,50万円を弁済することによって「債務の消滅に関する行為」をしている。そして,この弁済はHの入院を機に,弁済を思い立ったものであり,他の債権者からも多額の借入金を抱える中でHのみに利益となるものであるから「当該債権者に特別の利益を与える目的」であると認められる。また,Aは,Hから60万円を借り入れるに当たって,「立て直しに成功したら返してくれればよい」と言われているから,立て直しに成功することを停止条件として返済義務が生じるものであると考えられる。そうすると,Aは未だ立て直しに成功していないどころか債務整理を行うことをYに依頼している状況にあるから,立て直しに成功しておらず,停止条件が成就していない。したがって,Aとしては,未だ60万円の借入金について返済する必要がないのであるから,「時期が債務者の義務に属しない」と認められる。したがって,同項3号に該当する。
 以上から,Aに免責不許可事由が認められる。
 2 小問⑵
 Aに免責不許可事由が認められる場合でも,破産裁判所は,裁量的に免責許可をすることができる(破産法252条2項)。
 そこで,裁量免責の可否について検討すると,Aが「破産手続開始の決定に至った経緯」としては,資材の高騰や受注件数の減少,取引先の経営悪化といった,Aの努力では如何ともしがたい事情によって,資金繰りが悪化したこと,C及びDの廃業や破産手続開始決定により,計300万円の回収ができなくなったこと,従業員Eが100万円を持ち逃げしたことによるものである。そうすると,Aは,自己の事情によらず,外部的な要因によって資金繰りが立ち行かない状態に陥ったということができる。
 一方で,Aは,債務整理の依頼後であるにもかかわらず,Yに相談することなく,独断でGから50万円を借り入れているうえ,この50万円を借り入れの目的と異なるHへの弁済に充てている。そうすると,Aの行為によって新たに債務が発生し,共同担保を害している。しかし,Hへの弁済は,Hが入院費用を必要としていたことからしたものであって,他の債権者を害するといった悪質な目的を有していたものとはいえない。
 そして,Aは,破産手続開始の決定後も就職を試みてハローワークに通うなど,一定の努力をしている。また,Bが,入退院を繰り返していることから,免責を認める必要性が高い。
 以上からすると,Aについて免責を認める必要があり,これによる弊害も少ないということができるから,「免責を許可することが相当である」ということができる。よって,破産裁判所は,Aの免責を許可すべきである。

以 上


(※1)「破産法七四条一項の『支払ノ停止』とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解すべきところ、債務者が債務整理の方法等について債務者から相談を受けた弁護士との間で破産申立の方針を決めただけでは、他に特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないものというべきである。」最判昭和60年2月14日判時1149号159頁
(※2)「破産法162条1項1号イ及び3項にいう『支払の停止』とは,債務者が,支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて,その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解される……。」「これを本件についてみると,本件通知には,債務者であるAが,自らの債務の支払の猶予又は減免等についての事務である債務整理を,法律事務の専門家である弁護士らに委任した旨の記載がされており,また,Aの代理人である当該弁護士らが,債権者一般に宛てて債務者等への連絡及び取立て行為の中止を求めるなどAの債務につき統一的かつ公平な弁済を図ろうとしている旨をうかがわせる記載がされていたというのである。そして,Aが単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないという本件の事情を考慮すると,上記各記載のある本件通知には,Aが自己破産を予定している旨が明示されていなくても,Aが支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないことが,少なくとも黙示的に外部に表示されているとみるのが相当である。」「そうすると,Aの代理人である本件弁護士らが債権者一般に対して本件通知を送付した行為は,破産法162条1項1号イ及び3項にいう『支払の停止』に当たるというべきである。」最判平成24年10月19日集民241号199頁




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