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2019-02-17(Sun)

【新司】倒産法平成22年第1問

今日は,大阪から知人が遊びに来ておりまして,

朝から大宮の鉄道博物館に訪問していました。

10年近くぶりだと思いますが,

未だに会館前から行列ができており,

その人気ぶりに驚愕させられました。

リニューアルオープンがされて,館内も見どころにつきませんでした。

詳しい記事は,また後日(書く暇があれば)(書く気が起きたら)(書く内容を覚えていれば)書きます。

さて,帰宅後の倒産法,今日は平成22年第1問です。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 建設業を営むA株式会社(以下「A社」という。)は,区分所有建物(以下「本件建物」という。)を所有していたところ,金融業を営むB株式会社(以下「B社」という。)から弁済期を2年後として3000万円を借り入れ(以下,この貸付金の返還請求権を「本件貸付債権」という。),本件貸付債権を被担保債権として,B社のために,本件建物に1番抵当権(以下「本件抵当権」という。)を設定し,その登記がされた。その直後,A社は,C株式会社(以下「C社」という。)に対し,本件建物を賃料月30万円で賃貸し,C社は,ここで店舗の営業を始めた。
 ところがその半年後,A社は,経営不振から急速に資金繰りに窮してきた。そこで,A社の内情を知ったB社は,A社との間で,A社が所有していた中古トラック(以下「本件トラック」といい,道路運送車両法第5条第1項の適用を受けるものとする。)を,本件貸付債権のうちの100万円の弁済に代えて譲り受ける旨の合意をし,その引渡しを受けて登録名義もA社からB社に移転した(この代物弁済契約を,以下「本件代物弁済」という。)。そして,B社は,直ちにこれを100万円で第三者に売却して,引き渡した。
 それから20日後,A社は,とうとう資金繰りがつかずに,手形の不渡りを出した。そして,その翌日,A社は,自己破産を申し立て,直ちに破産手続開始決定がされて,破産管財人Kが選任された。
 Kは,本件トラックについて調査をしたところ,現在の所在は不明で,現物を取り戻すことは不可能であるが,時価は150万円と算定することができることが明らかとなった。また,Kは,本件建物についても調査したところ,C社がそこで店舗の営業を続けており,本件建物の時価は約1500万円であった。

 〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1⑴ 本件代物弁済に関して,KはB社に対してどのような請求をすることができるかを論じなさい。
 ⑵ 設問の事実関係で,仮に本件代物弁済がされた際に本件トラックの登録名義の移転がされず,登録名義がA社に残ったままであったとしたならば,本件代物弁済に関して,KはB社に対してどのような請求をすることができるか,上記⑴と比較しながら論じなさい。
2 B社は,A社の破産手続開始決定後に,本件貸付債権の残額をどのように回収することができるか,その場合の手続はどのようになるかについて,本件貸付債権の破産手続の中での行使と,本件抵当権の行使との両方を踏まえて,説明しなさい。

(参照条文)道路運送車両法
第5条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は,登録を受けなければ,第三者に対抗することができない。
2 (省略)


倒産法は,平成30年から遡る形で過去問を進めていますが,

そうすると,この年の問題は,ほとんどどの年度かと出題がかぶっていることに気が付きます。

意外と同じような問題が繰り返し出題されているようです。

とはいえ,前に解いたことを今も覚えているとは限らない(真理)

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
  ⑴ Kは,B社に対して,本件代物弁済について偏頗行為否認(破産法162条1項2号)をした上で,本件トラックの返還を請求することが考えられる。
   ア A社は,本件貸付債権に係る債務のうち100万円の弁済に代えて本件トラックをB社に譲渡しているから,「既存の債務についてされた債務の消滅に関する行為」である。
   イ 本件貸付債権に係る契約においては,その弁済期が2年後とされているのに対して,本件代物弁済は,当該契約締結から半年しか経過していない段階でされたものであって,未だ弁済期が到来していないにも関わらず,その弁済をさせるものであるから,「その時期が破産者の義務に属しない行為」である。
   ウ A社の「支払不能」となった時期について,A社が手形の不渡りを出した時点で「支払の停止」(同法162条3項)があったとして,同時点をもって「支払不能」を推定することが考えられる。
 「支払の停止」とは,債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいう(※1)。手形の不渡りは,これが6か月の間に2回されると,銀行取引停止処分がされ,これによって取引会社としては資金源が絶たれることとなる。そのため,2回目の手形不渡りを出した時点では,資金欠乏のため債務の支払ができないことが外部に表示されたとみることができ,「支払の停止」があるということができる。そうすると,1回目の手形不渡りを出した時点であれば,未だ銀行取引を行うことはできるから,直ちに資金欠乏であるとは認められないが,その背後にある客観的財産状態から債務超過が認められ,1回目の手形不渡りがそれを表明しているものであるときには,資金欠乏のため支払をすることができない旨が外部に表示されたとみることができるから,「支払の停止」にあたる(※2)(※3)
 これを本件についてみると,A社は,手形不渡りを出す直前から,既に急速に資金繰りに窮する状態に陥っており,本件代物弁済に出るなど,自己の財産を売り飛ばして債務の弁済を行い,無理くり食いつないでいる状態にある。そうすると,A社は,遅くとも1回目の手形不渡りを出した時点では,客観的財産状態から債務超過あったと認められるから,A社が出した1回目の手形不渡りは,その背後にある客観的財産状態が支払不能にあることを表明するものであるということができる。したがって,A社の手形不渡りの時点で,「支払の停止」が認められるため,手形不渡り時点での「支払不能」が推定される。
   エ 本件代物弁済は,上記手形不渡りから20日前に行われたものであるから,「支払不能になる前三十日前にされたもの」である。
   オ B社は,A社から本件代物弁済を受けた当時,A社の資金繰りに窮する内情を知って,本件代物弁済の合意を取り付けているのであるから,「債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかった」とはいえない。
   カ よって,本件代物弁済については,偏頗行為否認の要件を満たす。
  ⑵ もっとも,本件トラックは,その所在が不明であるため,現物を取り元図ことは不可能であるとされている。そこで,Kとしては,B社に対し,否認による原状回復の効果として(同法167条1項),価格賠償請求を行うことが考えられる。
 否認の効果は,その権利を行使した時点で生ずるから,価格の算定は,その権利行使時を基準として行う。そうすると,本件トラックは,否認権の行使時点で,その時価が150万円であるとされている。したがって,Kは,B社に対し,150万円の賠償請求をすることができる。
 2 小問⑵
  ⑴ア Kは,B社に対して,所有権に基づいて,本件トラックの引渡しを請求することが考えられる。Kの主張は,B社が代物弁済によって本件トラックを取得したことについて登録を経ていないことから,B社は本件トラックの所有権を「第三者」であるKに対抗することができず,B社からの対抗要件の抗弁は認められないとするものである。
   イ そこで,Kの法的地位について検討すると,破産管財人は,破産手続開始と同時に,裁判所によって選任され(破産法74条1項),破産者の破産財団に属する財産の管理処分権限を取得する(同法78条1項)。そうすると,破産管財人は,破産者の破産手続開始と同時に,破産財団に属する権利義務について,破産者の地位を承継することとなる。
 一方で,破産手続が開始されると,破産債権の行使は破産手続外でなし得ないなど(同法100条1項),破産債権者による破産債権の個別行使ができなくなり,それに代替する包括的差押の性質を有し,破産管財人は破産財団の管理に関し善管注意義務を負う(同法85条1項)。そうすると,破産管財人は,破産債権者の地位をも代替する者として,第三者的地位をも有することとなる。
 以上からすると,破産管財人が第三者的立場に立つのは,破産債権者の利益を代替する場合であるから,第三者からの解除権の行使に対して破産管財人が第三者的立場を主張することができるのは,破産債権者の利益が影響を受ける場合に限られる(※4)
 これを本件についてみると,本件トラックは時価が150万円であって,破産手続における換価を通じて,破産債権者に対する配当原資とすることができるものであるから,破産債権者の利益に影響を及ぼす場合である。したがって,KがB社に対し本件トラックの返還を求めることとの関係では,Kは第三者的立場に立つのであるから,B社が本件トラックの所有権をKに対抗するためには,対抗要件としての登録を備えている必要がある。しかし,B社は,これを備えていないから,Kにその所有権を対抗することができない。
   ウ したがって,Kの上記主張は認められる。
  ⑵ もっとも,本件トラックはその所在が不明のため,現物を取り戻すことができない状態にある。そこで,Kとしては,B社に対し,不当利得に基づく利得金返還請求をすることが考えられる(民法703条)。
 B社は,本件トラックを第三者に転売し,その対価として100万円を受領しているから,100万円の「利得」がある。一方,Kは,本件トラックの所有権を侵害されたことによる「損害」を生じている。両者は,B社による本件トラックの転売から生じた表裏の事象であるから,因果関係がある。そして,上記のように,B社は,本件トラックの所有権をKに対抗しえない以上,本来本件トラックを転売し得る地位にはなく,転売代金100万円の保持権原がなく,「法律上の原因」がない。
 したがって,KのB社に対する上記請求は,その要件を満たすため,100万円の返還請求をすることができる。
 なお,この場合には,小問⑴の場合よりも,返還請求し得る金額が50万円減縮されることとなるが,否認権は上記のようにその効果として原状回復をさせるものであるのに対し,不当利得返還請求は当事者間の衡平の観点からその損得を調整する機能を有するにすぎないから,B社が現実に利得している100万円を超えて返還請求し得るものではないため,結論を異にすることはやむを得ない。
第2 設問2
 1 前提として,B社の,A社の破産手続における地位について検討すると,B社は,「破産者」であるA社に対し,A社の破産手続開始前に3000万円を貸し付けているから,本件貸付債権が「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」として「破産債権」にあたるため(破産法2条5項),B社は「破産債権者」である(同法2条6項)。また,B社は,A社の「破産手続開始の時において破産財団に属する」本件建物について「抵当権」を有し,「破産手続によらないで」これを行使できるとされているから(同法65条1項),「別除権」(同法2条9項)を有する者として「別除権者」にあたる(同法2条10項)。
 2⑴ まず,B社は,上記別除権の行使として,本件抵当権を実行することができる。このときの方法としては,担保不動産競売(民執法180条1号)によって時価の1500万円を回収する方法と,担保不動産収益執行(同法180条2号)による方法とがある。
  ⑵ また,B社は,上記別除権の行使として,本件建物の賃料について本件抵当権の効力による物上代位(民法372条,304条1項)をすることが考えられる。前提として,賃料に対する物上代位も,抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げるものではないから,認められる(※5)。ここで,A社の破産手続が開始によって本件建物についても包括的差押がされているため,なお物上代位を行い得るかが問題となる(同法304条1項ただし書)。
 物上代位にあたって「差押え」が必要とされている趣旨は,これによって第三債務者がその弁済する相手方を判断し,二重弁済の危険から保護する点にある(※6)。そして,抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されていることから,「差押え」は第三債務者が先行する差押えを行った者に対して弁済を行うまでにすれば上記趣旨を害することなく,また,差押えを行った者との利害調整も図ることができる。そして,破産手続が開始した場合の効果について,一般債権者による差押と別異に考えるべき理由はないから,破産手続開始後であっても,抵当権者は物上代位権を行使することができる(※7)
 本件でも,B社は,A社が本件建物をC社に賃貸することによって得る賃料について,物上代位権を行使することができる。
 3 次に,B社は,破産債権者として,破産債権の2900万円を行使することが考えられる。
 もっとも,B社は上記のように,別除権を行使し得る地位にあるから,B社が破産債権者として権利を行使し得るのは,「別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ」となる(破産法108条1項本文)。したがって,B社が上記の担保不動産競売を行った場合には,残額である1400万円について届出を行い(同法111条以下),その調査・確定を経て(同法117条以下),配当を受けることとなる。なお,配当にあたっては,別除権者は,「担保権にの行使によって弁済を受けることができない債権の額を証明しなければならない」ため(同法198条3項),B社が除斥期間内に担保不動産競売を終結させない限り,破産債権者としての配当を受けることができなくなる。
 そこで,このような事態を避けるため,B社は,抵当権を放棄して,2900万円全額を破産債権として届け出ることもできる(同法108条1項ただし書)。
以 上

(※1)最判昭和60年2月14日判時1149号159頁
(※2)1回目の手形の不渡りの段階で「支払の停止」を認めたものとして,事例判断ではありますが,最判平成6年2月10日集民171号445頁があります。
(※3)加藤哲夫「一回目の手形不渡りが支払いの停止にあたるとされた事例」ジュリ1068号135頁(前掲最判平成6年2月10日の重判解説)は,前掲最判平成6年2月10日について,「本件判例は,一回目の手形不渡りであってもその背後にある客観的財産状態が支払不能であり一回目の手形不渡りがそれを表明しているとみられる場合に,右手形不渡りも相殺禁止との関係で支払停止になりうるとの判断を最高裁として示した点に意義がある。」と解説しています。なお,本問で,「客観的財産状態として支払不能」があるということを求めると,これが問題文の事情から認められない可能性が多分にあるため,ここは債務超過ということにしておきました。この点については,福永有利「Ⅳ 法的回収(執行・倒産)概観」金法1460号62頁が,東京地判平成6年9月26日金法1426号94頁について,「経営不振に陥り債務超過となった会社が,一回目の手形不渡を出したときは,資金の手当てを失念したというような事情がない限り,支払停止に当たるとした」としていることが参考になると思います。
(※4)平成23年第1問で書いたものをそのまま貼り付けてしまいましたが,今回の問題は明らかに破産債権者の利益を代替する場面ですので,破産管財人が第三者的立場にあることを端的に説明できれば足りるものだと思います(だったら答案も最初からそう書け。)。
(※5)「抵当権は,目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ,設定者が目的物を自ら使用し又は第三者に使用させることを許す性質の担保権であるが,抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし,抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に,右対価について抵当権を行使することができるものと解したとしても,抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから,前記規定に反してまで目的物の賃料について抵当権を行使することができないと解すべき理由はな[い]」最判平成元年10月27日民集43巻9号1070頁
(※6)「民法372条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は,主として,抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから,右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は,右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため,差押えを物上代位権行使の要件とし,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り,右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗できることができることにして,二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護する点にある」最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁
(※7)最判昭和59年2月2日民集38巻3号431頁は,破産手続開始決定があった後の先取特権者による物上代位権の行使について,「債務者が破産宣告決定を受けた場合においても,その効果の実質的内容は,破産者の所有財産に対する管理処分権能が剝奪されて破産管財人による個別的な権利行使を禁止されることになるというにとどまり,これにより破産者の財産の所有権が破産財団又は破産管財人に譲渡されたことになるものではなく,これを前記一般債権者による差押の場合と区別すべき積極的理由はない。したがって,先取特権者は,債務者が破産宣告決定を受けた後においても,物上代位権を行使することができる」と判示しています。この理由づけからすれば,抵当権による物上代位権の行使についても,同様の理が当てはまると思われます。



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