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2019-02-17(Sun)

【新司】倒産法平成30年第1問

倒産法の平成29年と平成30年をまだ掲載していませんでした。

こちらについては,随分前に書いておりまして,

その随分前に書いた答案が発掘されましたので,

こちらをそのまま掲載することにします。

随分前に書いたことから,答案の中身が,

これちょっとどうなの?みたいなのが混じっていますが,

そこは大目に見てください。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
1 A株式会社(以下「A社」という。)は,複数のビルを所有して不動産賃貸業を営む株式会社であり,その代表取締役はBである。
 A社は,平成20年夏頃,甲ビル及びその敷地(以下「本件不動産」という。)を購入することとし,C銀行から3億円を借り入れ,その担保として本件不動産にC銀行を1番抵当権者とする抵当権を設定し,その旨の登記がされた。
 A社は,平成23年4月1日,Dに対し,賃貸期間を10年,賃料を月額100万円と定めて,甲ビルを貸し渡した(以下,この契約を「本件賃貸借契約」という。)。その際,Dは,A社に対し,敷金1000万円を交付した。
2 A社は,平成27年頃から,借り手のつかない所有ビルが多くなってきたことや,かねてより手掛けていた株式取引の失敗等が重なったことにより,次第に経営が悪化し,所有するビルのメンテナンス費用の捻出や借入金の返済にも窮するようになった。そこで,A社は,平成28年秋頃,E信用金庫から5000万円を借り入れ,その担保として本件不動産にE信用金庫を2番抵当権者とする抵当権を設定し,その旨の登記がされた。
 しかし,A社は,その後も一向に経営状態が好転せず,平成30年1月末には,従業員に対する給料も支払えない事態に陥った。また,A社は,同年2月末日を支払期日とする多数の取引先に対する債務の弁済に充てる資金がない状態にあることが判明した。そこで,A社は,同月26日,裁判所に破産手続開始の申立てをした。
 申立てを受けた裁判所は,同月27日,破産手続開始の決定を行い,A社の破産管財人としてXを選任した。
 A社が破産手続開始の決定を受けた時点におけるC銀行が有する貸金債権の額は2億5000万円,E信用金庫が有する貸金債権の額は4000万円であり,他方で,本件不動産の評価額は2億円であった。

〔設問1〕
⑴ A社の破産手続が開始された後も,本件賃貸借契約は継続され,Dは,そのまま甲ビルを使用していた。この場合に,Dは,A社に対して有する敷金返還請求権を自働債権として,毎月の賃料債務と相殺することができるか,論じなさい。また,相殺することができないとした場合に,敷金返還請求権の保全のためにDが採ることのできる法的手段として,どのようなものがあるか,論じなさい。
⑵ 上記⑴のとおり,A社の破産手続開始後も本件賃貸借契約が継続されていたところ,C銀行が,A社のDに対する賃料債権を物上代位により差し押さえた。この場合に,Dは,⑴で論じた敷金返還請求権の保全のための法的手段を採ることができるかどうかについて,理由を付した上で論じなさい。

〔設問2〕
⑴ A社の破産管財人Xは,本件不動産を除き,破産財団に属する財産の換価を終了した。Xは,本件不動産をそのまま管理していても,担保余剰がなく,固定資産税や管理費用が掛かるだけで破産債権者にとって何のメリットもないため,本件不動産を破産財団から放棄した上,早期に配当を実施したいと考えている。この場合に,Xは,本件不動産を破産財団から放棄するために,どのような手続を採る必要があるか,また,破産財団から放棄された本件不動産は,誰に帰属するか,説明しなさい。
⑵ Xは,上記⑴の手続を行って,本件不動産を破産財団から放棄した。その後,E信用金庫は,本件不動産からは到底その貸金債権4000万円を回収する見込みはないと考えた。この場合に,E信用金庫がA社の破産手続に参加して配当を受けるためには,どのような手続を採る必要があるか。破産手続開始の時において破産財団に属する不動産に抵当権を有する者が,破産手続において行使することができる破産債権の額についての原則,及び,E信用金庫が採るべき手続の相手方に触れつつ,論じなさい。


こんな問題でしたねえ。

自由財産とか,もう忘れたよっていう感じです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
  ⑴ Dは,A社に対して有する敷金返還請求権を自働債権として,毎月の賃料債務と相殺することができるか。敷金返還請求権の法的性質と関連して問題となる。
 敷金は,賃貸借関係にある賃借人が賃貸人に対して債務を負担する場合に,この関係を終了するにあたって残債務にこれを充当し清算する目的で賃借人から賃貸人に対して交付される金銭である。したがって,敷金返還請求権は,これらの清算が終わった後,なお残額がある場合にはじめて発生するものとするのが当事者の意思であるから,その法的性質は,賃借人の負担する債務が清算された後になお残額があることを停止条件として発生する債権である(※1)
 そこで,このような停止条件付債権を自働債権とする相殺が破産手続上認められるかについて検討すると,破産法67条1項でいう相殺は,同条2項との対比から,破産債権者の有する債権が条件や期限が付されていないものである場合に限られるため,同項の要件を満たさない。また,同条2項には,解除条件付債権については規定されているものの,停止条件付債権については規定されていない。したがって,同項の要件も満たさない。よって,停止条件付債権は,破産手続上認められる自働債権とならないから,これをもって相殺することはできない。これを本件についてみると,Dの有する敷金返還請求権は,停止条件付債権であるから,相殺の要件を満たさず,これを自働債権とする相殺は認められない。
  ⑵ そこで,Dは,「敷金の返還請求権を有する者」であるから,「破産者」であるA社に対して,「賃料債務を弁済する」にあたり,敷金返還請求権の「額の限度において弁済額の寄託を請求する」こととなる(破産法70条後段)。
 2 小問⑵
  ⑴ まず,C銀行は,本件不動産に抵当権を有しており,破産手続上別除権者となる(破産法65条1項)。そこで,C銀行は,破産手続によらないで,別除権を行使することもできるが,民法372条が同法304条1項を準用し,実体法上抵当権に基づく物上代位をすることができるから,破産手続上もC銀行はA社のDに対する賃料債権も物上代位により差し押さえることができる。
  ⑵ そうすると,Dが寄託請求をすることができるとした場合には,A社はDから賃料を支払われることがないにもかかわらず,寄託にあてる額を破産財団から捻出しなければならないこととなる。A社がこのような不利益を受ける場合にも,Dが寄託請求をすることができるか問題となる。
 破産法70条後段の趣旨は,敷金返還請求権の上記法的性質から,破産手続の終結までに条件成就するか不明の債権による相殺は認めることはできないが,救済的に寄託を請求できるとして相殺の機会を与えた点にある。そうすると,同条の適用にあたっては,前提として破産財団から必要以上に財産が流出しないように解釈すべきであるから,「賃料債務を弁済する場合」には,物上代位権が行使され賃貸人以外の者に賃料が支払われる場合は含まれない(※2)
 これを本件についてみると,C銀行がA社のDに対する賃料債権に対して物上代位をしたことにより,当該賃料はA社ではなくC銀行に支払われることとなるから,「賃料債務を弁済する場合」にあたらない。
 したがって,DはA社に対して,寄託請求をすることができる。
第2 設問2
 1 小問⑴
  ⑴ 「破産管財人」であるXが本件不動産を破産財団から放棄するためには,裁判所の許可が必要である(破産法78条2項12号),また,本件では,「破産者」であるA社に意見を聴いても「遅滞を生ずるおそれ」が生じるものと考えられる事情はなく,「第三項各号に掲げる場合」にもあたらないから,Xは,A社の「意見を聴」く必要がある(同条6項)。
  ⑵ それでは,A社の破産財団から放棄された本件不動産は誰に帰属するか。法人であるA社にも自由財産が認められるかどうかと関連して問題となる。
 自由財産は,自然人との関係においては,その生活上の必要から破産手続に組み込まれない財産として,その者の手元に残しておく趣旨で認められるものである。一方で,法人の場合には,独立して生活を営むものではないことから,上記の趣旨はあてはまらない。しかし,上記の趣旨は,破産財団の範囲を確定する上で要請されるものにすぎず,後に破産管財人が破産財団から放棄した財産を自由財産に組み入れることを禁止するまでの趣旨を有するものではないと考えられる。したがって,法人であっても,破産管財人が破産財団から財産を放棄した場合のような限定的な場合にあっては,自由財産が認められる
 これを本件についてみると,Xは,本件不動産を破産財団から放棄しているため,本件不動産はA社の自由財産となる。したがって,本件不動産は,A社に帰属することとなる。
 2 小問⑵
  ⑴ 破産手続開始の時において破産財団に属する不動産を有する者は,破産手続において,破産債権のうち,「別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ」権利行使することができる(破産法108条1項本文)。もっとも,「当該担保権によって担保される債権の全部又は一部が破産手続開始後に担保されないこととなった場合には,その債権の当該全部又は一部の額」について,権利行使することができる(同項ただし書)。この場合に,別除権者が最後配当手続に参加するためには,除斥期間内に破産管財人に対し,「担保権によって担保される債権の全部若しくは一部が破産手続開始後に担保されないこととなったことを証明」することが必要である(同法198条3項)。E信用金庫としては,本件不動産からは回収が見込めないと考えているが,別除権を有している間は,上記の108条1項本文の適用を受けるから,これを放棄し,除斥期間内に,Xに対し,上記証明をすることで,A社の破産手続に参加して配当を受けることができる。
  ⑵ それでは,E信用金庫は,上記手続のうち,別除権の放棄は,誰を相手方としてすることができるか。
 破産手続が開始すると,破産管財人に会社の総財産の管理処分権が専属することとなり,取締役は財産に関する管理処分権を失う。別除権の放棄は,会社の財産に付着した権利の放棄であって,財産関係に関する処分である。したがって,この場合,取締役は,管理処分権を有しないから,別途清算人(会社法477条1項)を置き,それに対して意思表示をすることとなる(※3)
 これを本件についてみると,E信用金庫は,別除権を放棄するにあたっては,A社の取締役は管理処分権を有しないから,清算人を相手方としてする必要がある。これに伴い,E信用金庫は,清算人の選任を「利害関係人」として申し立てる必要がある(会社法478条2項)。

以 上


(※1)「家屋賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が貸借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するものと解すべきであり、本件賃貸借契約における前記条項もその趣旨を確認したものと解される。」最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁
(※2)「破産財団に属する賃料債権について賃貸不動産の抵当権者が物上代位権を行使し,賃借人が抵当権者に対し賃料債務の弁済をする場合に寄託請求ができるかについては議論が分かれている。寄託請求は弁済金が破産財団に入ることを前提とするものであり,寄託請求が認められるとしても,賃借人の抵当権者に対する支払によって破産財団が利益を得た部分に限られよう。抵当権者による賃料債権に対する物上代位については,それ自体批判が多く,この局面において,賃借人の敷金返還請求権よりも抵当権者による物上代位を否定すべきであるとする見解も有力である。また,寄託請求の局面でも,賃借人による寄託請求を全面的に認めるべきであるという見解や寄託請求が認められる暫定的な性質の弁済であることに照らして,停止条件が成就したときには賃借人は弁済の失効を理由として抵当権者に対する不当利得返還請求ができるとする見解がある。」山本和彦ほか『倒産法概説〔第2版補訂版〕』252頁
(※3)「破産管財人が賃貸物件を放棄すると,当該物件は,破産者の『自由財産』となる。それに伴い,賃貸人の地位もまた破産者の『自由財産』に属することとなる。したがって,修繕請求や解約申入れ・契約解除など賃貸借契約上の請求や意思表示は,破産者に対して行うことになる。破産者が会社である場合には,財産関係については,従前の取締役が当然に清算人となるものではなく,定款の定めや株主総会による選任があった場合を除き,利害関係人の請求により裁判所が清算人を選任するとされ(最判昭和43年3月15日民集22巻3号625頁,最決平成16年10月1日判時1877号70頁[百選59事件]),一方,組織法的事項については,従前の取締役がその地位を維持し,その任務を遂行する(最判平成21年4月17日判時2044号74頁[百選16事件],最判平成16年6月10日民集58巻5号1178頁[百選15事件],概説362-363頁参照)。これによれば,賃貸借契約上の請求や意思表示の相手方は,清算人であり,それが存しないときは,賃借人は利害関係人としてその選任を申し立てるべきことになる。」山本和彦ほか『倒産法演習ノート〔第3版〕』208頁


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