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2019-02-16(Sat)

【新司】倒産法平成23年第1問

2月13日に大阪の某事務所のウィンタークラークに参加していまして,

翌日の朝には東京に戻ってきたんですが,

どういうわけか,今日(16日)の朝までずっと自宅のお布団に入りっぱなしでした。。。

別にそんなに疲れていたわけではないと思うんですが……

おかげさまで,2日を丸々無駄にしてしまいました。

アーメン

今日は平成23年の倒産法です。

まずは第1問から。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,B株式会社(以下「B社」という。)との間で,平成21年4月1日,甲土地を,期間を30年として賃貸するとの土地賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,B社は,賃借後に甲土地上に乙建物を建てて使用していた。
 本件賃貸借契約においては,
① 賃料は,月額100万円とし,毎月末日限り翌月分を前払とする。
② 賃借人が賃料の支払を3か月分以上怠ったときは,賃貸人は,賃借人に対し7日以上の期間を定めて催告の上,本件賃貸借契約を解除することができる。
との約定があった。
 その後,B社は,経営状態が悪化したことから,平成23年3月16日に破産手続開始を申し立て,同日,破産手続開始決定がされ,Xが破産管財人に選任された。

 〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.上記事例において,B社が平成23年1月分から同年3月分まで3か月分の賃料の支払をしなかったため,A社は,B社に対し,平成23年3月3日にB社に到達した内容証明郵便により10日以内に賃料を支払うよう催告したが,B社からの賃料の支払はなかった。そこで,A社は,同月17日,Xに対して本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。これに対して,Xは,「自分は,第三者的立場にあるので,A社の解除権の対抗を受けることはない。」と主張した。
 このA社による解除が認められるかについて,Xの主張に対するA社の反論も含めて,論じなさい。
2.上記事例において,B社は,平成21年7月1日に,C株式会社(以下「C社」という。)から2億円を借り入れるのと同時に,乙建物について,C社のために前記2億円の貸金債権を被担保債権とする抵当権を設定し,その設定の登記がされた。
 そして,B社は,A社に対して賃料を約定どおり支払い続け,賃料不払当の債務不履行はない状態で,破産手続開始決定に至った。
 破産手続開始後において,C社は,Xに対し,賃料の支払を継続しつつ,乙建物を売却して2億円の貸付金の一部を返済するよう求めた。乙建物及び甲土地についての借地権の時価は,合計約1億円程度であり,Xとしても,時価が被担保債権を大きく下回る状況であり,破産財団にとって月々の賃料負担が生ずる乙建物をできるだけ早く処理したいと考えたが,借地権付建物であることもあり,売却まで相当時間がかかりそうであった。
 ⑴ この状況で,Xが,破産法第53条に基づき本件賃貸借契約を解除することの当否について論じなさい。
 ⑵ Xは,本件賃貸借契約を解除せず,乙建物の買受希望者を募ったところ,破産手続開始後6か月を経過したところで,ようやくD株式会社(以下「D社」という。)が,乙建物及び甲土地についての借地権を合計1億円で買い受けたいとの意向を表明し,A社も,D社に対してであれば,賃借権の譲渡を認めてもよいと回答した。そこで,Xは,C社に対し,乙建物及び甲土地についての借地権を1億円で売却したいが,破産財団から支払った賃料合計600万円を売却代金から差し引いた額をC社に支払うことで,抵当権の設定の登記の抹消に応じてもらいたい旨を申し入れた。これに対して,C社は,賃料600万円を差し引くことは受け入れ難いと反発し,交渉は成立しなかった。
 この場合にXが採ることができる法的手段について論じなさい。また,それに対してC社が採ることができる対抗手段について述べなさい。


倒産法の問題は,年を遡るにつれて,段々問題文が短くなってきているような……

気のせいかな……

そして,問題自体も,そんなに細かいことを聞いてきているような感じでもないし……

もしかして昔の方が簡単だった……!?

簡単とか言って解けなかったら恥ずかしいので撤回します。

激ムズです

≪答案≫
第1 設問1
 1 A社の主張する解除は,B社との間でされた本件賃貸借契約に係る賃料の不払を理由とするものである。すなわち,本件賃貸借契約には,②の約定が定められているところ,B社は,平成23年1月分から同年3月分まで3か月分の賃料の支払を怠っており,これに対してA社は,10日以内に賃料を支払うよう催告をしており,それにもかかわらずB社はこれを支払っていないから,②の約定に定められた解除の要件を満たす。したがって,A社の主張する解除には,理由がある。
 2 本件賃貸借契約では,①の約定があることから,毎月末日に翌月分の賃料が支払われることとなる。そうすると,平成23年3月分の賃料は,同年2月28日が支払期日となる。その後,A社は,B社がこれの支払を怠ったことを理由に10日間の催告をしているから,同年3月10日までにはA社の解除権が発生している。
 A社が解除権を行使したのは,同月17日であるから,B社の破産手続が開始した後であるが,破産手続の開始は,相手方の契約上の地位を奪うまでの効力を有するものではないから,A社は,B社の破産手続開始後であっても,本件賃貸借契約の約定に従って,解除をすることができる。
 3⑴ それでは,A社は,上記解除を,Xにも対抗することができるか。Xが,Xの主張するような第三者的立場を,A社との関係でも主張できるかが問題となる。
  ⑵ 破産管財人は,破産手続開始と同時に,裁判所によって選任され(破産法74条1項),破産者の破産財団に属する財産の管理処分権限を取得する(同法78条1項)。そうすると,破産管財人は,破産者の破産手続開始と同時に,破産財団に属する権利義務について,破産者の地位を承継することとなる。
 一方で,破産手続が開始されると,破産債権の行使は破産手続外でなし得ないなど(同法100条1項),破産債権者による破産債権の個別行使ができなくなり,それに代替する包括的差押の性質を有し,破産管財人は破産財団の管理に関し善管注意義務を負う(同法85条1項)。そうすると,破産管財人は,破産債権者の地位をも代替する者として,第三者的地位をも有することとなる。
 以上からすると,破産管財人が第三者的立場に立つのは,破産債権者の利益を代替する場合であるから,第三者からの解除権の行使に対して破産管財人が第三者的立場を主張することができるのは,解除権の行使により破産債権者の利益が影響を受ける場合に限られる(※1)
  ⑶ これを本件についてみると,A社による解除は,解除権の発生の根拠となったB社との間の本件賃貸借契約を対象とするものであり,上記のように解除権自体は破産手続開始前に発生している以上,債権者が本件賃貸借契約上の権利を差し押さえても,A社は解除権を差押債権者に対抗することができるのであるから,A社がこれを行使しても,破産債権者の利益に影響を及ぼすものではない。
 したがって,A社の解除権の行使との関係では,Xは第三者的立場を主張し得るものではないから,B社の地位を代替するものにすぎない。
 4 よって,A社による解除は認められる。
第2 設問2
 1 小問⑴
  ⑴ 本件賃貸借契約は,A社がB社に対し甲土地の使用収益をさせ,これの対価としてB社がA社に賃料を支払うものであるから(民法601条参照),「双務契約」である。そして,本件賃貸借契約は,その期間が30年とされているから,本件賃貸借契約の締結から約2年しか経過していない現段階では,将来分の使用収益及び賃料支払がともに「履行を完了していない」場合にあたる。したがって,「破産管財人」であるXは,本件賃貸借契約の「解除」を選択し得る(破産法53条1項)。
  ⑵ もっとも,Xが本件賃貸借契約の解除を選択した場合には,B社は,甲土地を使用する権限を失い,乙建物を収去することとなるが,このとき,乙建物に設定された抵当権も消滅することとなり,抵当権者であるC社との関係で,担保価値維持義務に違反することとならないか。
 抵当権設定者であるB社は,抵当権者であるC社に対して,抵当権の設定から当然に抵当不動産である乙建物を健全に維持すべき義務を負い(※2),乙建物の担保価値を害する行為を行うことは同義務に違反するものとして許されないところ,乙建物の存続の前提となる甲土地に係る本件賃貸借契約を解除することは,乙建物の担保価値を害する行為である。そして,抵当権は破産手続において別除権として扱われ(破産法2条9項),班手続によってその効力に影響を受けないものとされており,他に抵当権設定者と抵当権者との間の法律関係が破産管財人に承継されないとする法律上の根拠もないから,Xは,B社がC社に対して負う上記義務を承継する(※3)(※4)。したがって,Xが,正当な理由に基づくことなく抵当不動産である甲土地の賃借権を解除することは,C社に対して負う上記義務に反する。
  ⑶ それでは,本件賃貸借契約を解除することが,正当な理由に基づくものであるかを検討すると(※5),Xは破産管財人として,破産財団の減少を防ぐ観点から,甲土地の賃料の負担を免れるべく,本件賃貸借契約を解除する方策も考えられるところではある。しかし,本件賃貸借契約を解除した場合には,乙建物は甲土地上に存続する権限を失い,実質的に無価値に等しい状況となり,これを売却することは困難になることが予想される。そうすると,月々100万円程度の負担から免れるために,甲土地の借地権と乙建物とを合わせた約1億円の価値を放棄することとなり,C社に対して極端に不利益を被らせることとなる。したがって,本件賃貸借契約を解除することが正当な理由に基づくものであるとは考えられない(※6)
  ⑷ よって,Xが本件賃貸借契約を解除することは不当である(※7)
 2 小問⑵
  ⑴ Xが採ることができる法的手段としては,担保権消滅の許可の申立て(破産法186条1項)が考えられる。
 乙建物は,B社が破産手続開始時に有していた財産であって(破産法34条1項),これについてC社が抵当権を設定しているから,「破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき担保権が存する場合」である。Xは,乙建物をD社に任意に売却し,C社が有する抵当権を抹消しようとしているから,「当該財産を任意に売却して当該担保権を消滅させる」場合である。
 それでは,これが「破産債権者の一般の利益に適合するとき」にあたるか。破産法186条1項は,破産財団の拡充の観点から,担保権の消滅を認め,任意売却を促進させるものであるから,「破産債権者の一般の利益に適合するとき」とは,当該財産を任意に売却し,担保権を消滅させることが,破産財団の拡充に資する場合をいう(※8)。本件では,乙建物及び甲土地の借地権を売却すれば,D社から対価として1億円の支払を受け,このうち既に破産財団から支払を行った賃料相当額の600万円を破産財団に組み入れることができるから,これによって破産財団の拡充に資することができる。したがって,「破産債権者の一般の利益に適合するとき」にあたる。
 次に,「当該担保権を有する者の利益を不当に害することとなる」かにつき検討すると(※9),乙建物及び甲土地の借地権の時価は約1億円であるのに対して,D社の買受金額も1億円であるから,任意売却が不当に廉価であることはない。また,組入金額も,売却価格である1億円のうち,600万円に過ぎないから,これが過大であるようにも思われない。さらに,Xの売却の意向はあらかじめC社に対して示されているのであるから,担保権消滅許可の申立てをしても,C社にとって不意打ちとはならない。そうすると,乙建物についての抵当権の消滅許可の申立てをすることは,「当該担保権を有する者の利益を不当に害することとなる」とはいえない。
 したがって,Xによる担保権消滅の許可の申立ては認められる。
  ⑵ これに対してC社が採ることができる対抗手段としては,担保権の実行の申立て(破産法187条1項)が考えられる。C社がこれを行うには,Xによる担保権消滅許可の申立てに係る申立書及び書面の「送達がされた日から一月以内」に,「担保権の実行の申立てをしたことを証する書面を裁判所に提出する」必要がある。
 また,C社が採ることができる対抗手段としては,買受けの申出(破産法188条)が考えられる。この場合には,上記の期間内に,C社自身又は他の者が「財産を買受ける旨の申出」をする必要がある。
以 上

(※1)「破産管財人をめぐる法律関係の解決にあたり破産管財人の立場をどのようにとらえるかについて,近時の学説では,破産管財人には,①破産者の財産の管理処分権を包括的に承継するという意味での破産者の一般承継人としての立場と,②総債権者の利益を図るための独立の機関であることに基づく立場の2つの側面があり,破産管財人の職務をめぐる法律問題を解決するための指針としては,個々の法律関係に照らしてこれらの立場のいずれを優先させるべきかを考慮すべきであるとする見解が有力となっているように思われる。この見解によれば,破産手続は,破産者からその所有財産についての管理処分権を奪い,これを破産管財人に専属させることにより,債権者に対する公平な弁済に供していくための手続であり,破産管財人は,飽くまで破産者が宣告時[破産手続開始時]に有していた財産の管理処分権を引き継ぐのであるから,破産法等の明文の規定がない限り,破産管財人を破産者の一般承継人として取り扱って法律関係を規律するのを原則としつつ,総債権者のための包括執行という破産手続の特質にかんがみ,実体法上,差押債権者が保護されるべきものとされている法律関係においては,破産管財人に差押債権者と同様の保護を与えて法律関係を規律することになろう。」最判解民事篇平成18年度(下)1370頁
(※2)抵当権設定者による抵当目的物についての担保価値維持義務については,最判平成11年11月24日民集53巻8号1899頁が,抵当不動産が不法占有されていた事例において,「抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる」と述べた上で,「抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである」と示しています。
(※3)最判平成18年12月21日民集60巻10号3964頁は,破産管財人が担保価値維持義務を負う根拠として,元々質権設定者が負っているとされる担保価値維持義務を,破産管財人が承継する点を挙げています。「債権が質権の目的とされた場合において,質権設定者は,質権者に対し,当該債権の担保価値を維持すべき義務を負い,債権の放棄,免除,相殺,更改等当該債権を消滅,変更させる一切の行為その他当該債権の担保価値を害するような行為を行うことは,同義務に違反するものとして許されないと解すべきである。(中略)また,質権設定者が破産した場合において,質権は,別除権として取り扱われ(旧破産法92条),破産手続によってその効力に影響を受けないものとされており(同法95条),他に質権設定者と質権者との間の法律関係が破産管財人に承継されないと解すべき法律上の根拠もないから,破産管財人は,質権設定者が質権者に対して負う上記義務を承継すると解される。」
(※4)前掲最判平成18年12月21日の射程について,前掲最判解民事篇平成18年度(下)1372頁は,「本判決の担保価値維持義務に関する判断は,あくまで約定担保権である債権質に関するものであって,例えば,動産先取特権のような法定担保権にその射程が及ぶものではない。」としています。本問は,約定担保権である抵当権が問題となっており,この最判解の解説によっては明示的には射程外とされていませんので,前掲最判平成18年12月21日に沿った論述をすることが誤りであるとはならないと思われます。
(※5)前掲最判平成18年12月21日は,担保価値維持義務違反の行為が「正当な理由」に基づくものであるのか否かという判断枠組みのもと検討されているように読めます。したがって,答案においても,担保価値維持義務違反行為であることを認定した上で,それが正当な理由に基づくものであったか否かという順序で論述しています。
(※6)「正当な理由」のあてはめ方は不明です。
(※7)採点実感では,「結論として,解除可能とする答案も多く,関係者の利害状況を的確に捉えるとともに,事案に即したバランスの良い妥当な結論を導くための感覚が十分に備わっていないとの感じを受けた。」との指摘があることから,結論としては,解除は不当とするのが筋であるようです。
(※8)「破産債権者の一般の利益に適合するときとは,この制度により当該財産を任意に売却し,担保権を消滅させることが,破産財団の拡充に資する場合を指す。」山本和彦ほか『倒産法概説第2版補訂版』119頁
(※9)「担保権者の利益を不当に害することとなると認められるときとしては,例えば,組入れがある場合において,組入金の額が明らかに過大であるときや,担保権者との間で組入れについて事前の協議がまったくなく担保権者に対して不意打ち的に申立てが行われたときがある。任意売却が不当に廉価であるような場合も,担保権者の利益を不当に害することとなると認められるが,この場合には,そもそも破産債権者一般の利益に適合するという要件も満たされないであろう。」前掲山本119頁


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