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2019-02-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題1

突然ですが,行政法をやります。

事例研究の第2部まではせめてやっておこうということで,

今週中には終わらせたいところです(n回目の淡い希望)。

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照ながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ 甲県の住民であるAは,「甲県情報公開条例」に基づき,甲県土木部用地室が道路拡幅工事用地として買収した土地に関して作成された文書Pの公開を求めた。文書Pは,甲県内の道路Qの拡張工事のために,甲県土木部用地室が土地所有者から土地を取得した情報のうち,買収地と買収価格を記録した文書であり,以下の項目についての個別情報が記録されていた。
① 買収の対象となる土地の土地所有者の名前,住所または所在地
② 上記土地の所在,地番,地目および面積
③ 各土地の買収価格と単価
 公開請求を受けて,甲県土木部用地室では公開の是非を検討した結果,①と②の部分は,不動産登記簿で既に公開されている情報であるので公開することにして,③の部分を非公開とすることにした。公共事業用地の買収は,損失補償基準に基づき土地を手放したくない土地所有者に対して公共事業への理解を求め,何度も足を運んで納得してもらって買収に至るという,短答公務員にとっても気の重い仕事であり,買収価格が明らかになると,今後の同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想されたからである。道路Qの拡幅工事のための買収はほとんど終わっていたが,一部にまだ交渉中の土地も残っていた。また,今後同種の道路工事を近くでも予定していた。そこで,甲県土木部用地室は,「③の部分は,条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」との理由を付したうえで,③の部分を黒塗りにして,文書Pを部分公開とする決定をした。これに対して,Aは,③の部分を含めた全部の公開を求めて,部分公開決定の取消訴訟(非公開部分についての非公開処分の取消訴訟。以下では「本件取消訴訟」という)を提起した。

〔設問1〕
1.あなたが,Aから依頼を受けた弁護士であるとしたら,本件取消訴訟において,非公開処分の違法性として,いかなる主張をすべきか。
2.あなたが,甲県土木部用地室から依頼を受けた弁護士であるとしたら,本件取消訴訟において,非公開処分の適法性として,いかなる主張をすべきか。なお,必要ならば,設問1-1の主張に対する反論も考えなさい。
3.上記の③の部分が,「条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」か否かについて,証明責任(立証責任)を負担するのは,原告か,被告か。理由とともに答えなさい。

Ⅱ 本件取消訴訟が開始されてから,甲県土木部用地室ではさらに検討を重ねた結果,③の部分については,条例8条1項4号署ていの非公開情報に該当するばかりではなく,条例9条1号所定の個人情報にも該当するのではないかという議論が強くなった。そこで,本件取消訴訟において,「③の部分は,条例9条1号所定の非公開情報に該当する」との理由を新たに非公開決定の理由として追加したいと考えた。

〔設問2〕
1.本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきではない,という主張をする場合に,いかなる理由が考えられるか。
2.本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきである,という主張をする場合に,いかなる理由が考えられるか。
3.もしも,本件取消訴訟と同時に公開処分の義務付け訴訟が併合提起されていた場合には,理由の追加の是非についての結論に違いはあるのか。
4.もしも,本件取消訴訟での新たな理由の追加は認められず,さらに,「③の部分は,条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」という当初の非公開理由も認められなかった場合には,取消訴訟が認容されることになるが,その場合,Yは,「③の部分は,条例9条1号所定の非公開情報に該当する」との新たな理由に基づいて,再度,非公開決定を出すことができるのか。行訴法33条の拘束力との関係も考えながら,答えなさい。


問題を見た瞬間,

「えっ……なんかこれどっかで見たことある……」

ってなったんですけど,

ロースクールの某行政法絡みの期末試験で,

ほぼそっくりそのままの問題が出題されていました。

なんでもっと早く見ておかなかったのか……!!

大変悔やまれます。

事前にこの問題の解説を読んでいれば,

さぞかし素晴らしい答案が書けていたことでしょう。

ちなみに評価はAでした。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
  ⑴ A側としては,非公開処分が条例8条1項4号に基づいてされているが,これは同号の解釈を誤ったものであるとして,違法であるとの主張を行う。
 甲県土木部用地室は,買収価格が明らかになると,今後の同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想されるとの理由から,「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」があるものと判断している。しかし,公共事業用地の買収は,損失補償基準に基づき,土地の客観的評価に基づいて行われるのが通常であって,過去の買収価格が公開されても将来の買収が困難になるということはない。また,本件では,道路拡幅のための買収はほとんど終わっており,買収価格を公表しても,今後の買収において「著しい支障」であるとは考えにくい。さらに,道路工事の態様や土地の特性は工事ごとに異なるのであるから,今回の買収価格の公開が今後の同種の工事に対して「著しい支障」を与えるというのは,単なる憶測にすぎないというべきである。そうすると,本件において,甲県が文書Pのうち各土地の買収価格と単価を公表したとしても,「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」があるとはいえないから(※1),これを理由としてされた非公開処分は,条例8条1項4号の解釈を誤った違法がある。
  ⑵ また,A側としては,非公開処分にあたり,その処分がされた理由の提示が不十分であるから条例13条3項1号に違反するものとして,違法であるとの主張を行う。
 条例13条3項1号が,行政文書の一部開示決定をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,何人も行政文書の公開を請求することができるところ(条例6条),その権利を制限するという一部開示決定の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものである(※2)。そして,どの程度の記載をなすべきかは,処分の性質と理由付記を命じた法令の趣旨・目的に照らして決定すべきである(※3)(※4)(※5)
 これを本件についてみると,条例8条1項4号は「著しい支障」といった抽象的な文言を用いており,その判断に関して条文から一義的に決定されるものではない(※6)。そうすると,条例13条3項1号で要求される理由提示の程度としては,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知しうるものでなければならない。しかし,本件では,条例8条1項4号に該当するというように,抽象的に処分の根拠規定を示すにすぎないのであるから,理由提示の程度として不足している。
 したがって,非公開処分に際してされた理由の提示が不十分であるから,条例13条3項1号に違反し,違法である。
 2 小問2
  ⑴ 甲県側としては,A側の主張するような,条例8条1項4号の解釈の誤りはないとの主張を行う。
 A側の主張するように,公共事業用地の買収は損失補償基準によるものではあるが,実際には,土地にはそれぞれ個性があり,個別の交渉に委ねられるものである。そうすると,他者に対する買収価格が公表されると,既に買収に応じた者もそれを見て不満をもつ場合があり,またこれから買収交渉を行う相手との関係でも交渉における柔軟性を失わせることも考えられる。したがって,他者に対する買収価格の公表は,買収事務への「著しい支障」となる。また,道路Qの拡幅工事が完了した後でも,今後同種の道路事業が行われるのであるから,本件道路工事に関する買収価格が公開されると,今後の同種の道路工事の遂行においても買収が困難になることが予想される。したがって,「著しい支障」となることが認められる。
 よって,非公開処分には,法令の解釈適用を誤った違法はないというべきである。
  ⑵ア また,甲県側は,非公開処分にあたって提示した理由は,その程度として不十分ではなかったと主張する。
 単に抽象的に処分の根拠規定を示すものであっても,それによって当該規定の適用の原因となった具体的事実関係をも当然に知り得るような場合には,理由提示の程度として問題ない(※7)。本件では,処分時に該当条文を明確にしており,通常の理解力があれば,買収価格の公開による買収事務への支障という非公開理由は十分に理解できるはずであって,本件では理由の提示の程度が不十分であるとはいえない(※8)
   イ さらに,甲県側は,仮に非公開処分での理由の提示の程度が不十分であるとしても,本件訴訟において,条例8条1項4号に該当する所以を詳しく述べているのであるから,非公開という結論は変わらないとの主張を行う。そうすると,結論に影響が出ない手続的瑕疵は,処分の取消事由たり得ないのであって,本件訴訟は棄却されるべきである。
 3 小問3
 甲県情報公開条例において,不開示情報該当性(条例8条,9条)の証明責任を負うのは被告である甲県側である。
 なぜならば,条例6条は,何人も行政文書の公開を請求することができる旨を規定しており,情報の公開を原則としつつ,非公開事由に該当するときだけ例外的に非公開とすることができるという形式を採用しており,このような条例の構造からすれば,例外に当たることを主張することとなる甲県が,その例外に当たることを証明すべきであるからである。また,対象公文書を現実に所持しているのは甲県であり,その内容について判断できるのも甲県であるから,甲県が当該文書の内容に即して非公開事由に該当することを証明すべきである。
 したがって,文書Pに記載の項目のうち③の部分が条例8条1項4号署ていの非公開情報に該当するか否かについて証明責任を負うのは,被告である甲県である(※9)
第2 設問2
 1 小問1
  ⑴ 本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきではないとする理由としては,理由提示の趣旨との関係が挙げられる。すなわち,上記のように理由提示が要求される趣旨は,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるところにある。そうすると,訴訟の段階で処分時には主張されなかった理由を持ち出すことを許せば,処分時までの行政庁の恣意の抑制は図れないし,処分の名宛人の不服申立ての便宜にも資さなくなる。したがって,新たな理由の追加は,理由提示の趣旨に反するものであるから,これを許すことはできない。
  ⑵ また,新たな理由に基づく再処分を禁止することも理由として挙げられる。新たな理由の追加を許すべきと主張する側からは,紛争の一回的解決の要請が主張されるが,行政処分時の決定基礎資料から無理なく構成できたであろう理由については,その理由を事後的に持ち出して同一内容の処分を行うことは許されるべきではない。したがって,新たな理由に基づく再処分が禁止されることから,本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することは許されない。
 2 小問2
  ⑴ 本件取消訴訟の途中で,新たに理由を追加することを許すべきであるとする理由としては,訴訟物との関係が挙げられる。すなわち,取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であるから,処分の違法性を支える理由は口頭弁論終結時まで事由に主張できるのが民事訴訟における原則である。したがって,処分の同一性を保持している限り,理由の追加・変更は認められるべきである。本件では,対象文書を公開すべきか否かが争われており,非公開事由ごとに別個の処分がされる性質のものではないから,処分の同一性を害するものではなく,新たに理由を追加することが許される。
  ⑵ また,紛争の一回的解決の要請との関係も,理由として挙げられる。すなわち,新たな理由の追加が許されず,そのために本件取消訴訟で請求認容判決がなされても,被告としては,訴訟で主張することが認められなかった新たな理由に基づいて再度非公開処分をすることになる。そうすると,本件では,紛争の一回的解決のためにも,理由の追加を認めるべきである。
  ⑶ さらに,新たな理由の追加を認めるべきではないと主張する側のような,理由提示の趣旨に反するものではない。すなわち,理由提示の趣旨である行政庁の恣意の抑制と処分の名宛人の不服申立ての便宜は,非公開理由を具体的に記載して通知させること自体をもってひとまず実現される。そうすると,一度理由の提示を行った以上,理由提示の趣旨は達成されるのであって,これと別個に実施機関が当該理由以外の理由を非公開処分決定の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むものではない。したがって,取消訴訟で新たな理由を追加することは許される(※10)(※11)
 3 小問3
 文書の公開処分の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が併合提起された場合,義務付け訴訟の審理にあたり,裁判所は,文書を公開すべきか否かについて判断すべき要素をすべて考慮した上で判断することが求められることとなる。そうすると,義務付け訴訟においては,行政庁が新たな非公開理由を主張してきた場合には,それを審理・判断することが当然に求められているということができる。したがって,仮に取消訴訟では理由の追加が許されないとしても,義務付け訴訟においてはこれが認められることとなる。
 本件でも,甲県は,③の部分は条例9条1号所定の非公開情報に該当するとの理由を当然に主張することができる。
 4 小問4
 行訴法33条1項は,取消判決は,行政庁を「拘束する」と規定しているが,これは,反復禁止効と取消判決の趣旨に従って改めて措置をとるべき義務が生ずる積極的効力を意味する。
 もっとも,拘束力は,取消訴訟の権利救済の実効性を高めるために行政庁に対して取消判決に従うという実体法上の義務を課す特殊な効力であるところ,取消判決によって確定された違法事由を超えてその効力を及ぼすものではない。そこで,行政庁が異なる理由に基づいて同一内容の処分をすることは,取消判決の拘束力に反するものではない。
 したがって,本件において甲県は,条例9条1号所定の非公開理由に該当するという新たな理由に基づいて,再度同一内容の非公開処分をすることができる。
以 上

(※1)「大阪府における事業用地の取得価格は,『公共用地の取得に伴う損失補償基準』等に基づいて,公示価格との均衡を失することのないよう配慮された客観的な価格として算定された価格を上限とし,正常な取引価格の範囲内で決定され,公社による代替地の取得価格及び譲渡価格は,公示価格を規準とし,公示価格がない場合又はこれにより難い場合は近傍類地の取引価格等を考慮した適正な価格によるものとされているというのである。そうすると,当該土地の買収価格等に売買の当事者間の自由な交渉の結果が反映することは比較的少ないというべきである。……上述したところによれば,上記部分に関する情報を公開することによって,大阪府における今後の用地買収事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるということはできないから,上記情報は,いずれも本件条例8条4号所定の非公開情報に該当しないというべきである。」最判平成18年7月13日判時1945号18頁
(※2)理由提示の趣旨について,行手法14条について判示したものですが,最判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁は,「行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。」としています。
(※3)最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁
(※4)この点,前掲最判平成23年6月7日は,「上記のような本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して」どの程度の理由を提示すべきかを決定すべきであるとしていますが,これはあくまで行手法14条との関係で示されたものですので,直ちに他の理由提示の場面(特に法令上処分基準の設定が義務どころか努力義務にもなっていない場合)でも使えるかは分かりません。
(※5)ここで,一般的基準として,最判昭和49年4月25日民集28巻3号405頁が判示した「そこにおいて要求される附記の内客及び程度は、特段の理由のないかぎり、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の原因となつた具体的事実関係をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記として十分でないといわなければならない。」を示す参考答案がありますが,この基準については,「49年判例は,侵害処分の理由定時についての一般的な要求水準を示したものであるので,38年判例がいうように『処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らして』,その都度調整される必要があると考えられる」(北島周作「理由呈示の程度と処分基準」法教373号52頁)と指摘されているように,あたかも理由提示全般の一般的基準として用いるのは危ないかもしれません。ちなみに,前掲最判昭和49年4月25日も,前記基準を導き出すにあたり,「旧法人税法二五条は、その八項において、青色申告書提出承認の取消し(以下、単に承認の取消しという。)の事由を一号ないし五号に掲げる五つに限定したうえ、その九項において、右取消しをしたときは、その旨を当該法人に通知し、その通知の書面には取消しの基因となつた事実が同条八項各号のいずれに該当するかを附記しなければならないものと定めている。同法が承認取消しの通知書にこのような附記を命じたのは、承認の取消しが右の承認を得た法人に認められる納税上の種々の特典(前五事業年度内の欠損金額の繰越し、推計課税の禁止、更正理由の附記等)を剥奪する不利益処分であることにかんがみ、取消事由の有無についての処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、取消しの理由を処分の相手方に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与えるためであり、この点において、青色申告の更正における理由附記の規定(同法三二条)その他一般に法が行政処分につき理由の附記を要求している場合の多くとその趣旨、目的を同じくするものであると解される。」と,法令の趣旨等を斟酌しています。
(※6)この点について,当初は,条例8条が「公開しないことができる」という文言になっていることから,行政庁の裁量的判断が認められているとの趣旨の答案を書いていましたが,事例研究の解説には「そもそも,行政裁量を付与した規定であるのかどうかは,文言(多義的概念や公益判断などにより行政機関に判断の余地を認めていると解されるかどうか)だけではなく,裁量を認める実質的な理由(行政の判断を尊重すべしとする国会・議会の判断があること,さらに行政判断を尊重する必要性や根拠があること)によっても決せられるべきである。既に本文で述べたとおり情報公開制度では行政文書は原則として公開されることになっており,非公開にするか否かの行政裁量は否定されているのが原則である。」とドストレートに指摘されていましたので,書き直しました。
(※7)前掲最判昭和49年4月25日
(※8)前掲最判平成23年6月7日那須弘平裁判官反対意見は,「指摘されるような構造基準に達しない設計や構造計算書における偽装が存在したことを前提とすれば,上記各設計行為につき建築の専門家である建築士の職責(建築士法2条の2)の本質的部分に関わる重大な違法行為及び不適切な行為があったことは明らかである。本件免許取消処分通知書には,これらの違法行為及び不適切な行為の具体的事実が示され,また処分の根拠となった法令の条項も示されているのであり,その違法・不適切な行為の重大性とこれによって生じた深刻な結果とを直視することにより,本件懲戒規定の定める3種類の処分の中から最も重い免許取消処分が選択されたことがやむを得ないものであることは,専門家ならずとも一般人の判断力をもってすれば,容易に理解できるはずである。」と指摘した上で,「本件と同様な事案において,仮に処分基準がない場合を想定してみると,処分通知の事実記載自体から免許取消しという結論に至ったことに格別の違和感を持たず,これを了解する者が大半を占めるのではないか。結論として,裁量権の逸脱・濫用等の誤りないしこれに関する手続違背の主張を容れなかった原審判断を支持したい。」としています。
(※9)事例研究の解説によると,このような解釈が判例・通説であるとされています。これに対して,行政機関が行政文書を保有していることの証明責任については,最判平成26年7月14日集民247号63頁は,「情報公開法において,行政文書とは,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいうところ(2条2項本文),行政文書の開示を請求する権利の内容は同法によって具体的に定められたものであり,行政機関の長に対する開示請求は当該行政機関が保有する行政文書をその対象とするものとされ(3条),当該行政機関が当該行政文書を保有していることがその開示請求権の成立要件とされていることからすれば,開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。」としています。
(※10)「[理由提示の]目的は非公開の理由を具体的に記載して通知させること(実際には、非公開決定の通知書にその理由を付記する形で行われる。)自体をもってひとまず実現されるところ、本件条例の規定をみても、右の理由通知の定めが、右の趣旨を超えて、一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である。したがって、上告人が本件処分の通知書に付記しなかった非公開事由を本件訴訟において主張することは許されず、本件各文書が本件条例五条(2)アに該当するとの上告人の主張はそれ自体失当であるとした原審の判断は、本件条例の解釈適用を誤るものであるといわざるを得ない。」最判平成11年11月19日民集53巻8号1862頁
(※11)なお,前掲平成23年6月7日の調査官解説(最判解民事篇平成23年度(下)519頁)は,「一般に,処分基準の適用関係についても,処分の同一性を失わない限り,その差替えは原則として自由であると解されるが,行政庁が自ら定めた処分基準の適用関係を訴訟において差し替えなければならないような事態はほめられたことではなく,処分時の慎重な判断に基づく処分基準の適用とその名宛人への提示を通じて,そのような事態の生じないようにすることが求められているといえよう。」と指摘しており,これは理由の追加・差替え一般について言えることができるのではないかと思われます。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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