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2019-02-11(Mon)

【新司】倒産法平成24年第1問

2月中に倒産の過去問は全部終わらせておきたいですよね……。

という淡い希望の下,今日もひたすら過去問です。

平成24年までやってきました。

丁度折り返し地点です。

≪問題≫
〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,コンピュータ・ソフトウェアの製造及び販売を業とする会社であり,平成20年頃には,年間で50億円を超える売上げを計上するなど,順調な業績を維持していたが,平成22年末頃以降は,徐々にその経営が悪化し,平成23年9月5日には,破産手続開始の申立てをするに至り,同月15日,破産手続開始の決定を受け,弁護士Xが破産管財人に選任された。

 〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社は,平成22年12月頃,売上げの半分以上を占めていた取引先が破綻し,当該取引先からの支払が突然途絶えたため,以後は,その資金繰りが悪化した。
 そこで,A社は,メインバンクを含む金融機関に新規の融資を求めたものの,十分な額の融資を得ることができそうになかったため,取引先からの紹介を受け,いわゆる事業再生ファンドであるBアセット株式会社(以下「B社」という。)と交渉した結果,将来の他社とのM&Aを念頭に置いてB社から最大で20億円をめどに融資を受けられることとなり,まず,平成23年2月1日に5億円の融資を受ける旨の契約をB社との間で締結し,その融資は,同日,実行された(以下においては,利息については考慮せず,当該契約に基づくA社の債務額は,5億円とする。)。この契約においては,A社は,同年8月1日をもって,借入金を返済する旨の条項が含まれていた。
 A社によるスポンサー企業等の開拓は,その後も精力的に続けられたが,業界の景気の更なる悪化などのため,適当なスポンサー企業等を獲得するには至らなかった。その結果,A社の経営状況は,同年6月頃から深刻さを増したものの,B社からの上記の5億円の融資金の残りを利用することができたため,一部の金融機関に対する債務の返済計画を相手方の同意を得て変更した以外は,全ての債務を約定どおり弁済していた。
 一方,B社は,同年6月頃には,A社への上記の融資は失敗であり,その回収に向けた準備が必要であるとの判断に至ったことから,当該融資の段階でその担保のために抵当権の設定を受けていたA社所有の不動産の評価を進めたところ,2億円しか満足を受けられる見込みがないことが明らかになった。そこで,同年7月25日,B社の代表取締役らがA社を訪れ,5億円の融資の返済期日を同年9月1日に変更するとともに,その見返りとして,A社の有する複数の売掛金債権(全てが優良債権であり,その評価額は,2億円であった。)を追加担保(譲渡担保)としてB社に差し入れることを求めた。A社の代表取締役であるCは,同年7月25日,やむを得ず,これに応じて,当該売掛金債権について債権譲渡担保を設定し(以下「本件債権譲渡担保設定行為」という。),A社とB社は,同月28日に債権譲渡登記を経由した。A社は,この当時,同年8月中旬までに弁済期が到来する債務を幾つか負担し(この他には,同年8月中に弁済期が到来する債務はなかった。),その総額は,1億円に達していたが,B社に対する債務の支払の猶予を受けたことで余裕ができたため,何とか,これらの債務を全額決済することができた。ただし,CらA社の経営陣は,同年7月末時点で,A社の余裕資金はぎりぎり1億円であり,他方で,同年8月中に新たな弁済資金の調達の見込みがなかったため,同年8月中旬には弁済資金が枯渇するものと予想していた。そして,実際にも,その予想どおりに資金状況は推移し,返済期日が同年9月1日に変更されたB社に対する上記の債務の支払をすることができなかった。
 以上の場合において,A社の破産手続開始後,A社がB社のためにした本件債権譲渡担保設定行為をXが否認することができるかどうかについて,予想されるX及びB社の主張を踏まえて,論じなさい。
2.A社は,平成23年5月27日,株主総会を開催し,①取締役としてDらを選任すること,②定款を変更して,本店を移転すること,③1株当たり5000円の配当をすることをそれぞれ決議した。ところが,A社の株主Eは,同年7月29日,当該株主総会の決議の取消しの訴えを提起した。
 なお,この訴訟においては,DがA社を代表して訴訟追行をしていた。
 以上の場合において,当該訴訟は,A社に対する破産手続開始の決定によってどのような影響を受けるかについて,論じなさい。


今回は,適用される条文の特定は簡単です。





し   か   し   ・   ・   ・





中身が非常に濃い。

特に設問1。

求められていることを全部書いていたらきりがないです。

ってか,問題文で普通にM&Aとか出てきていますけど,

企業法務志望でない人には分かるんですかね……。

もう一般的な用語なんでしょうか。

≪答案≫
第1 設問1
 1 本件債権譲渡担保設定行為は,B社がA社に対して既に有する5億円の返還請求権について,A社の有する売掛金債権を担保とするものであるから,「既存の債務についてされた担保の供与に関する行為」にあたる。そこで,Xとしては,本件債権譲渡担保設定行為について,偏頗行為否認(破産法162条1項)をすることが考えられる。
 2⑴ ここで,同項1号又は2号の要件を検討する上で,A社が「支払不能」となった時期がいつであるかが問題となる。
   ア まず,B社からは,「支払不能」とは「その債務のうち弁済期にあるものにつき」弁済ができない状態とされているのであるから(破産法2条11項),「支払不能」の時期の判断にあたっては,弁済期が到来した債務についてのみ判断されるとの主張が考えられる。この見解による場合には,A社は,平成23年8月中旬までに弁済期が到来する債務については全額弁済をすることができているから,この段階では,「弁済することができない状態」には陥っていない。また,この他に,同年8月中に弁済期が到来する債務はなかったのであるから,A社は平成23年8月の間は「支払不能」とはなっていない。そして,A社は,同年9月1日に返済期日とされたB社に対する債務の支払をすることができなくなっているから,同日をもって「支払不能」に陥ったということができる。そうすると,本件債権譲渡担保設定行為は,「支払不能になった後にした行為」(破産法162条1項1号)にも,「支払不能になる前三十日以内にされたもの」(破産法162条1項2号)にも該当しないこととなるから,Xは本件債権譲渡担保設定行為について,偏頗行為否認をすることはできない。
   イ これに対して,Xからは,「支払不能」の判断は,条文の文言に沿った形式的判断によるのではなく,実質的に行うべきであるとして,近い将来の支払不能が確実に予想される時点で支払不能を認定すべきであるとの主張が考えられる。この見解による場合には,A社は,平成23年7月末時点で余裕資金は1億円程度しかなく,同年8月中に新たな弁済資金の調達の見込みもなかったにもかかわらず,同月には総額1億円の複数の債権の弁済期が到来することとなるのであるから,これの支払をすれば,A社の余裕資金は無に等しいものとなり,支払不能に陥ることが確実に予想される状態になっていたということができる。したがって,遅くとも,総額1億円の複数の債権が到来する同年8月中旬には「支払不能」に陥っていたものと認められるから,本件債権譲渡担保設定行為はそれから「三十日以内にされたもの」にあたることとなる。
   ウ そこで,両者の主張について検討すると,破産法が「支払不能」の意義を「その債務のうち弁済期にあるもの」としたのは,支払不能が外部的には判断することが困難である場合が多いため,これに一定の基準を設ける趣旨である(※1)(※2)。そうすると,「支払不能」の判断は,既に弁済期の到来している債務のみをもって形式的に判断されるべきである。したがって,「支払不能」となる時期については,B社の主張の通り考えるべきである。
  ⑵ア そうだとしても,Xからは,「支払不能」となる時期の判断について,B社の主張を前提としつつも,本件では特にA社のB社に対する5億円の債務の返済時期を変更されており,これが否認権行使を潜脱する目的とみられるから,当初の返済期日の到来をもって「支払不能」にあたるとの主張が考えられる。この主張による場合には,A社のB社に対する5億円の債務の当初の返済期日は平成23年8月1日とされており,この段階でA社の余裕資金は1億円程度しかなかったことからすれば,同日をもって支払不能となっており,本件債権譲渡担保設定行為は「支払不能になる前三十日以内にされた行為」にあたることとなる。
   イ そこで,Xの主張の当否について検討すると,「支払不能」の判断を,既に弁済期が到来している債務に限って行うこととしたのは,その明確性の観点からであるから,将来における返済期日における債務状況とは異なり,過去の返済期日を基準とした債務状況の算定は確実性という不確定要素を容れずに行うことができるのであるから,過去の返済期日を支払不能における基準とすることは明確性の要請に反しない。もっとも,返済期日の猶予が,債務者の倒産を避けるために信用の供与としたされる場合もあるから,このような場合には,信用の観点から未だ「弁済することができない状態」にあるとはいえないが,単に否認権の行使を免れるために返済期日の猶予がされた場合には,もはや信用の供与とはいえないから,当初の返済期日の時点において支払不能にあるといえる。
 これを本件についてみると,B社は,A社への融資は失敗であると判断し,これを回収する必要があると考えているところ,当初設定した抵当権によっては全額の回収が見込まれず,そのために新たに追加担保を設定するとともに返済期日を1か月猶予している。そして,単に返済の引当てを増加させようとするのであれば,追加担保の設定だけで足りるにもかかわらず,あえて支払期日の猶予まで行ったのは,B社がA社の資産状況からして8月中に弁済資金が枯渇するものと考え,そこに自社の債権まで支払期日が到来すると,A社の破産手続開始により追加担保の設定が否認されるおそれがあると考えたからであると考えられる。そうすると,B社は,専ら自己の債権を回収する目的で,追加担保の設定について否認権を行使されるのを免れる目的で,返済期日の猶予を行っているのであるから,当初の返済期日を基準に支払不能か否かを判断すべきである。したがって,上記のXの主張は妥当である。
  ⑶ 以上から,A社の支払不能時期は,平成23年8月1日であり,本件債権譲渡担保設定行為は「支払不能になる前三十日以内にされたもの」である。
 3 そして,A社とB社との当初の契約では追加担保の設定について何ら取り決めがなかったのであるから,A社はそもそも追加担保を設定する義務を負っておらず,本件債権譲渡担保設定行為は「破産者の義務に属」しない行為である。また,B社は,A社の弁済資金が平成23年8月中旬には枯渇するものと予想しており,近日中に支払不能に陥ることを知っていたのであるから,「債権者がその行為の当時他の破産債権者を害することを」知っていたものと認められる(破産法162条1項2号ただし書)。
 4 よって,Xの行使する偏頗行為否認は,その要件を満たし,認められる。
第2 設問2
 1⑴ 破産法44条1項は,破産手続開始決定により,破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は中断する旨を規定しているから,A社に係属している株主総会の決議の取消しの訴えが「破産財団に関する訴訟手続」にあたるかを検討する。
  ⑵ 破産法44条1項の趣旨は,破産手続開始により破産財団に関する破産者の管理処分権が失われ,破産管財人に帰属するため(破産法78条1項),破産者に破産財団に関する訴訟を追行させるべきではなく,これを中断させるものである。したがって,「破産財団に関する訴訟手続」とは,破産者の管理処分権が失われる財産関係に影響を及ぼす事項を対象とする訴訟を意味する。
  ⑶ア ①取締役としてDらを選任することは,会社の組織的事項を定めるものであって,これによってA社の財産関係に影響を及ぼすものではないから,「破産財団に関する訴訟手続」にはあたらない。
   イ ②定款を変更して,本店を移転することも,会社の組織的事項を定めるものであって,これによってA社の財産関係に影響を及ぼすものではないから,「破産財団に関する訴訟手続」にはあたらない。
   ウ ③1株当たり5000円の配当をすることは,A社の剰余金を減少させることを意味するから(会社法453条),A社の最三関係に影響を及ぼす事項を対象とするものであって,「破産財団に関する訴訟手続」にあたる。
  ⑷ 以上から,①及び②の決議に係る取消しの訴えは中断しないが,③の決議に係る取消しの訴えは中断することとなる。
 2⑴ ③の決議に係る取消しの訴えについては,「破産債権に関しないもの」であるから,「破産管財人」Xが「受け継ぐ」こととなる(破産法44条2項)。
  ⑵ 他方,①及び②については,従前から訴訟を追行している代表者のDがそのまま訴訟を追行することができるか。会社と取締役との関係は委任契約であるところ(会社法330条,民法643条),委任者について破産手続開始決定があったことは委任の終了事由とされているから(民法653条2号),なおDがA社の代表者としての地位を有し続けるかが問題となる。
 民法653条は,破産手続開始により委任者が自らすることができなくなった財産の管理又は処分に関する行為は,受任者もまたこれをすることができないため,委任者の財産に関する行為を内容とする通常の委任は目的を達し得ず終了することとしたものである。会社が破産手続開始の決定を受けた場合,破産財団についての管理処分権限は破産管財人に帰属するが,破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は,破産管財人の権限に属するものではなく,破産者たる会社が自ら行うことができる。そうすると,同条の趣旨に照らし,会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役との委任関係は終了するものではないから,破産手続開始当時の取締役は,破産手続開始によりその地位を当然には失わず,会社組織に係る行為等については取締役としての権限を行使し得る(※3)
 そうすると,本件でも,①及び②の決議に係る取消しの訴えについて,DはA社との間で委任関係がなお存続しているものと考えられるから,Dが訴訟を追行することとなる。
 3 以上から,①及び②の決議に係る取消しの訴えと③の決議に係る取消しの訴えとで,訴訟を追行する者が異なることとなるから,弁論を分離して,別個に審理・判断することとなる。
以 上

(※1)「支払不能は,客観的状態であって,支払停止と異なり外部的な表示を伴わない。ゆえに,一義的な明確性を確保する見地から……定義規定が設けられたのであ[る。]」粟田口太郎「25 支払不能-否認の要件⑴」伊藤眞ほか『倒産判例百選[第5版]』53頁
(※2)「支払不能が外部的な表示を伴わず,もともと不明確な要素を含んでいること,それにもかかわらず破産手続開始・否認・相殺禁止という重大な問題の結論を左右する基準であること,非義務行為の偏頗行為否認の対象は『支払不能になる前30日以内にされたもの』に拡張されており(破162条1項2号),30日起算点としての明確性を要すること……,再生手続・更生手続の開始原因は『破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがある』こと……であり,『おそれ』の対象たる支払不能概念の拡大は再生・更生手続開始原因の解釈をも曖昧としかねないことなどに照らすと,前記諸規定の基準時または外延が不明確となるような解釈の採否は,慎重な検討を要するであろう」前掲粟田口53頁
(※3)最判平成21年4月17日判時2044号74頁



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