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2018-12-31(Mon)

【旧司】民事訴訟法平成21年第1問

こうなったらヤケクソです。

もう1通書きます。

≪問題≫
 Xは,自転車に乗って道路を横断中,Yが運転する乗用車と接触して転倒し負傷したために,3000万円の損害を被ったと主張して,Yに対し,3000万円のうちの2000万円の損害賠償を求める訴えを提起した。この訴訟において,Yは,請求棄却を求め,事故の原因は急いでいたために赤信号を無視したXにあると主張した。裁判所は,事故はYの過失によって発生したものであり,Xの被った全損害の損害額は2500万円であるが,整備不良のためにブレーキがきかないまま自転車を運転し赤信号の道路に飛び出したXにも5割の過失があると認めた。
 裁判所は,どのような判決をすべきか。

職権による過失相殺です。

いつまでたってもよく分かりません。

あと外側説とかの話です。

≪答案≫
1 本件の訴訟物は,XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権であるところ,裁判所は,Yの過失を認め,Xの被った全損害の損害額は2500万円であると考えている。そこでまず,裁判所が2500万円の請求認容判決をすることが考えられるので,これをすることができるか検討する。
 一個の債権の数量的な一部の請求(以下「一部請求」という。)は,民事訴訟において処分権主義(訴訟の開始,終了,訴訟物の設定を当事者の権能かつ責任とする建前をいう。)が妥当することから,認められる。この原則からすると,一部請求における訴訟物は,その数量的一部の範囲に限られるとも思えるが,何ら明示がなく訴訟物の範囲が限定されると,後に数量的な残部に係る請求(以下「残部請求」という。)がされた際に被告にとって不意打ちとなる可能性がある。そこで,一部請求における訴訟物は,それが一個の債権の数量的な一部であることが明示されている場合には,その一部に限定される。
 これを本件についてみると,Xは,3000万円のうちの2000万円であるとしてYに対して損害賠償を求める訴えを提起しているから,3000万円の損害賠償請求権という一個の債権の数量的な一部であることが明示されていると考えられる。したがって,この場合には,訴訟物は2000万円の部分に限られることとなる。
 そして,裁判所は,「当事者が申し立てていない事項」,すなわち訴訟物以外の事項について「判決することができない」から(民訴法246条),裁判所は,2000万円を限度としてしか認容判決をすることができない。したがって,本件において,裁判所は2500万円を認容する旨の判決をすることができない。そこで,裁判所としては,2500万円の心証であれば,2000万円の判決をすべきこととなる。
2 もっとも,本件で裁判所は,以上に加え,Xにも5割の過失があると認めており,過失相殺が問題となる。
 ⑴ア 本件では,Y側から事故の原因はXが赤信号を無視したことにある旨の主張がされているが,これにより過失相殺を行うべきことまでの主張はされていない。そこで,裁判所が当事者からの主張なしに過失相殺をすることができるか,弁論主義の適用との関係で問題となる。
  イ 弁論主義とは,裁判資料の収集及び提出を当事者の権能かつ責任とする建前をいい,特定の法律効果の発生や消滅が問題となる場合において,その判断に必要な事実上の主張がないときに,いずれの当事者の不利益に帰せしめるかの問題である。そうすると,過失相殺はそれによって損害賠償請求額の減額という法律効果の一部消滅を導く抗弁であるから,弁論主義の適用があり,裁判所が過失相殺の認定をするには当事者による過失相殺の主張が必要となるようにも思える。
 しかし,過失相殺は,損害賠償制度の趣旨である公平の原則と,債権関係の一般原則である信義則の表れであり,当事者の主張の有無によって過失相殺の適否が左右されるとすると,これらの原則に悖ることとなる。したがって,過失相殺は権利抗弁ではないと考えるべきであり,裁判所は当事者が過失相殺の主張をしていなくとも,これを適用することができる。(※1)(※2)
 もっとも,過失を基礎づける事実については当事者による主張・立証が必要である。過失相殺が抗弁として機能する以上は,その基礎となる事実については,弁論主義が妥当するからである。
  ウ これを本件についてみると,Yは,責任原因としての過失を争う趣旨において,Xの赤信号無視による道路進入を主張しているところ,裁判所の認定も,Xが赤信号で道路に飛び出したとするものである。そうすると,Xの行為が事故発生に寄与したことを主張する点では共通しており,これに関する事実が当事者の主張によって弁論に現れている以上,裁判所が事実を認定する際,弁論主義に反しない。そして,過失を基礎づける事実が主張・立証されている以上,過失相殺の主張なくして裁判所はこれを適用することができる。したがって,裁判所は,心証を得た通り,5割の過失相殺を行うことができる。
 ⑵ それでは,過失相殺はどの範囲で行われるべきか。前記のように訴訟物を一部請求の部分に限定したことからすれば,2000万円から5割を減額して1000万円を認容する判決をすべきようにも思われる。
 しかし,一部請求は,試験訴訟や相殺による減額を考慮した結果の少なくともこの範囲であれば認められるであろうという原告の期待のもとされるものであるから,裁判所が債権額をこれよりも大きいものと認定したときには,その全額から控除することが原告の意思に合致する。そして,減額の結果,残額が原告の訴求額よりも大きければ原告の請求を全部認容し,少なければその範囲で一部認容をすることとなる。
 本件では,裁判所はXの全損害の損害額を2500万円であると認定しているから,これから5割を減額し,1250万円の範囲でXはYに請求することが可能となる。そして,これはXの請求額である2000万円を下回るものであるから,裁判所は1250万円の限度でXの請求を認容する判決をすべきである。
以 上

(※1)最判昭和43年12月24日の調査官解説では,債務不履行に基づく損害賠償請求における職権での過失相殺を肯定する論拠として,「その趣旨とするところは,債務不履行における過失相殺が,損害賠償制度を指導する公平の原則と債権関係を支配する信義則の一顕現であり,社会生活を支配する協同精神が適用される場であることに鑑み,裁判所は,当事者の主張がなくても,職権で過失相殺をすることができるとしたのであろう」ということを挙げている。この理由付けが,債務不履行類型に着目したものではなく,損害賠償制度一般に着目したものであれば,不法行為に基づく損害賠償請求にも同様の理由づけが妥当するものと考えられる。
(※2)この考え方を推し進めると,過失相殺の判断は職権探知主義が妥当し,過失を基礎づける事実まで当事者による主張・立証が不要になるという考えにも至るような気がしますが,そうなると裁判所が損害賠償請求訴訟が提起されるたびに過失を基礎づける事実を探知することとなり不都合というか,やってらんないという話になりそうなので,あくまで過失の評価根拠事実の主張・立証は当事者に任せるぞ,くらいの利益衡量が働いているという認識でいます。間違っていたらすいません。教えてください。
(※3)藤田広美『解析民事訴訟[第2版]』413頁では,「設例の事案においては,Yは,責任原因としての過失を争う趣旨において,『Xの赤信号無視による道路進入』を主張したところ,裁判所の認定も,Xが『赤信号で道路に飛び出した』というところにあります。道路進入の原因が急いでいたこと(Yの主張)によるのか自転車の整備不良(裁判所の認定)によるものかという相違があるにすぎません。そうだとすると,Xの行為が事故発生に寄与したことを主張する点において共通しており,かかる事実が当事者の主張によって弁論に現れている以上,弁論主義違反の問題は生じません。」とされている。しかし,規範的要件における主要事実について,例えば三木浩一ほか『LEGAL QUEST 民事訴訟法第2版』では,「かつては要件事実と主要事実は明瞭に区別されず,過失それ自体が当然に主要事実であると扱われていた。しかし,そうすると,脇見運転や整備不良などの具体的な事実は,過失の存否を推認させる事実としての間接事実ということになり,仮に当事者双方が脇見運転の有無のみについて攻防を展開していたとしても,主張原則の対象は主要事実に限られるとの見解をとれば,裁判所は当事者が主張していない整備不良を認定してもよいことになって,当事者にとって不意打ちの危険が生じる。」とし,これによれば,本問では,「急いでいて赤信号を無視したこと」と「整備不良によって赤信号を無視したこと」とでは主要事実を異にするのではないかと考えられる。しかし,今はそんなことを考えていると年を越してしまうのである。



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