【旧司】民事訴訟法平成20年第2問
2018年も終わってしまいます。
こんな年の暮れはたいてい故郷で過ごすものです。
ローの同級生もほとんどの人たちが実家に帰ったようで,
自習室も研究室もしーんとしています。
という状況を把握しているということは,
私はまだローに残っているということです。
しーんとした研究室で民訴の答案を書きました。
何が好きで年の暮れに民訴の答案なんか書いてるんでしょうかね。
久々に旧司を解きました。≪問題≫
債権者Xの保証人Yに対する保証債務履行請求訴訟に,主債務者Zは,Yを補助するため参加した。
1 第一審でY敗訴の判決が言い渡され,その判決書の正本が平成20年7月3日にYに,同月5日にZに,それぞれ送達された。Yはこの判決に対して何もしなかったが,Zは同月18日に控訴状を第一審裁判所に提出した。この控訴は適法か。
2 Y敗訴の判決が確定した後,Yは,Zに対し,求償権請求の訴えを提起した。
仮に,Yが,主債務の存在を疑わしめる重要な証拠であってZの知らないものを所持していたにもかかわらず,XY間の訴訟において,その証拠の提出を怠っていた事実が判明した場合,Zは,YZ間の訴訟において,主債務の存在を争うことができるか。
この年は補助参加まわりの論点を重点的に聞いてきています。
キモいですね。
参加的効力とかたぶん一生理解できないまま死んでいくんじゃないかと思います。
幸い今回はそこまで込み入った話は出てきません。
たぶん。。。
≪答案≫
第1 設問1
1 本問におけるZのする控訴(民訴法281条1項。以下「本件控訴」という。)は適法か。Zは,XY間訴訟のYを被参加人とする補助参加人(同法42条)であるところ,補助参加人がそもそも控訴をすることができるかにつき,同法45条1項本文はこれをすることができる旨規定している。
2⑴ それでは,本件控訴は,控訴の要件を満たすか。控訴は,「判決書……の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない」とされているところ(同法285条),Yに判決正本が送達された日を基準とすると,控訴期間は平成20年7月17日までであって,同月18日にした本件控訴は不適法となるが,Zを基準とすれば未だ控訴期間内である。そこで,補助参加人の控訴期間の起算点がいつからであるかが問題となる。
⑵ この点について,同法45条1項本文の規定する補助参加人の独立性から,補助参加人が自己の名と費用で訴訟に参加する地位にあることに鑑み,補助参加人の控訴期間は,被参加人のそれとは別個に計算すべきであるとする見解がある。これによれば,補助参加人の控訴期間は,補助参加人の受送達日を基準として計算することとなる。たしかに,補助参加人にも被参加人とは別個の期日呼出状や判決書が送達されることから,補助参加人が被参加人への送達がいつあったかを必ずしも知ることはできないため,補助参加人の保護の観点からは妥当であるようにも思われる。
しかし,同法45条1項ただし書及び同条2項は,補助参加人の従属性について規定している。すなわち,補助参加制度は,そもそも被参加者とその相手方との間における請求を前提として,補助参加人が非当事者として介入,干渉する訴訟形態にすぎない。したがって,補助参加人の地位は,あくまで,当事者たる被参加人に従属するものにすぎない。このような補助参加制度に照らせば,補助参加人の独立性は,基本的前提である従属性を害しない程度においてしか認められないと考える。そうすると,補助参加人は,被参加人のなし得ない行為はもはやできないのであるから,補助参加人の控訴期間は,被参加人の受送達日を基準として計算すべきである。
このように考えたとしても,補助参加人は,自ら独立に判決の送達を受けている以上,速やかに裁判所に対して被参加人に対する送達時期を確認した上で,直ちに自ら控訴すべきであるといえるから,反対説の批判はあたらない。
⑶ これを本件についてみると,Zが控訴を提起したのは,Yの受送達日から二週間が経過した後であるから,Zの控訴は,控訴期間経過後のものである。
3 したがって,本件控訴は不適法である。
第2 設問2
1 XY間訴訟においてY敗訴の判決が確定した後に,Zは,YZ間訴訟において,主債務の存在を争うことができるか。
まず,YZ間訴訟が前訴確定判決の既判力に抵触しないかにつき検討すると,前訴の訴訟物はXのYに対する保証契約に基づく保証債務履行請求権である。主債務と保証債務は別個の債務であって,主債務の存否は理由中の判断であるから,「主文に包含するもの」(民訴法114条1項)にあたらない。また,Zは前訴当事者ではなく(同法115条1項1号),その他の拡張事由(同項2号以下)にもあたらないため,前訴既判力は,YZ間訴訟には及ばない。
2⑴ そうだとしても,Zは,XY間訴訟に補助参加していたのであるから,その「効力」(同法46条柱書)が及ばないか。「効力」の意義が問題となる。
⑵ 同条柱書の趣旨は,補助参加人が被参加人に協力して訴訟追行したにもかかわらず,被参加者が敗訴した場合にその責任を共同分担すべきとの衡平の原則を定めた点にある。そして,補助参加は,他人間の訴訟の理由中の判断により事実上影響を受ける者にも認められると考えることから,その「効力」も判決主文中のみならず,理由中の判断にも及ぶと考えるべきである。そこで,「効力」とは,被参加人が敗訴した場合に,判決理由中の判断を含めて,補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力をいう。
⑶ これを本件についてみると,保証債務履行請求においては,その請求原因において,主債務が存在することが要求されるから,これが認容された場合には,判決理由中において主債務が存在することが示される。したがって,XY間訴訟の判決理由中にもZのXに対する主債務が存在することが示されているから,当該訴訟に補助参加していたZにもその効力が及び,Zは後訴において主債務のら存否を争うことができないのが原則である。
3⑴ しかし,本件では,Yが,前訴において,重要な証拠(以下「本件証拠」という。)の提出を怠っていた事実が判明している。このような場合には,同法46条4号の適用により,「効力」がZに及ぶことを否定することができないか。
⑵ Yが所持していた証拠は,Zの知らないものであって,Zがこれを代わりに提出することはできないから,この証拠の提出は「補助参加人のすることができない訴訟行為」である。
それでは,Yが本件証拠の提出を怠ったことが「過失」にあたるか。上記の「効力」が及ぶ趣旨に照らすと,被参加人の訴訟活動が稚拙な場合には,敗訴の責任を補助参加人に分担させるのは衡平の観点から妥当ではない。したがって,このような場合には,補助参加人に「効力」を及ぼすべきではなく,被参加人に「過失」があったというべきである。これを本件についてみると,Yは,主債務の存在が否定されれば,自己の保証債務の存在も否定されることになるから,主債務の存在を疑わしめる重要な証拠は,本来Yが積極的に提出すべきものである。それにもかかわらず,Yがその証拠の存在を知りながら,これを提出することを怠った場合には,「過失」があるというべきである。
⑶ したがって,Yが本件証拠を提出しなかったことは,民訴法46条4号に該当するから,Zに対して前訴の「効力」は及ばない。
4 よって,Zは,YZ間の訴訟において,主債務の存在を争うことができる。
以 上