2018-07-04(Wed)

【事例で学ぶ民法演習】問題4-虚偽表示と第三者-

民法の問題演習は久しくやっておりません。

大変ですね(他人事)

≪問題≫
 Aは絵画(以下,「本件絵画」という。)を所有していたが,債務超過に陥ったため,債権者から「本件絵画を渡せ」と要求されるのを恐れ,本件絵画を親戚であるBに売ったように見せかけることで,債権者の追及を免れようと考えた。そこで,AはBに本件絵画を引き渡し,また万がーの事態に備え,AB間で虚偽の売買契約書が作成された。
 本件絵画を受け取ったBは,これをネタに一儲けしようと思い,Aに無断で友人であるCに本件絵画を売却し,BC間では売買契約書が作成されたが,実はCもAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていた。
 その後,Bから本件絵画の引渡しを受けたCは,この間の事情を全く知らないD百貨店から頼まれ,本件絵画を1か月の約束でD百貨店において開催される展覧会のために貸すことにし,CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された。しかし,Dへの引渡しはまだされていない。
 なお,賃貸借契約を締結するさい,Cは自分が本件絵画の所有者であることを示すため,AB間及びBC間の売買契約書をDに見せていた。

小問1 展覧会の期日が迫ってきたので,DはCに対して本件絵画の引渡しを求めた。Aは,ABC間の上記の事情を理由に,「本件絵画の所有者は自分〔=A〕であるから,Dに引渡しを求める権利はない(=Dは,Aとの関係では,賃借権を主張しえない)」ということができるか。

小問2 CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された後,Aの債権者であるEがAのもとを訪れ,Aに対して「お前〔=A〕の借金を棒引きしてやるから,本件絵画を渡せ」と要求した。Aは,予定のとおり,「本件絵画はBに売ってしまった」と答えたが,ABC間の関係を怪しんだEはABCを呼ぴつけ,厳しく問い詰めたところ,上記の事情が露見した。激昂したEは「本件絵画を俺に渡せ。もし渡さないと,お前たちの家族がどうなっても知らないぞ」とAらを脅し,Aの債務を帳消しにする代わりに本件絵画をEに譲渡する契約をAに結ばせたうえ,本件絵画の引渡しを受けた。このとき,Dは本件絵画の引渡しを求めることができるか。次の①と②のそれぞれの場合について答えなさい。
①AがEに対する意思表示をまだ取り消しておらず,Eが本件絵画を所持している場合。
②AがEに対する意思表示を取り消し,Eから本件絵画の返還を受けている場合。

総論の一つの山場である94条まわりの問題です。

単純な問題に見えて,考えなければならない点が多いです。

考えても分からない点もあります。

答案の下に(疑問点)という形で示しました。

誰か教えてください(懇願)

≪答案≫
第1.小問1について
 1.DはCに対して賃貸借契約に基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを求めている。これに対して,Aは,本件絵画の所有権が自己にあることを理由に,Dの上記引渡請求権を否定している。この点,AB間の売買契約は「虚偽の意思表示」(民法94条1項)であるから,無効である。また,同条2項の「第三者」とは,虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって,その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいい,Cはこれにあたるところ,「善意」とは虚偽の意思表示があったことについて知らないことをいい,CはAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていたから,これにあたらない。したがって,AはCとの関係でも,本件絵画の所有権を主張することができる。そうすると,AはCから賃貸を受けたDに対しても所有権を主張することができるようにも思える。
 2.これに対して,Dは,自己も民法94条2項の「善意の第三者」にあたることを主張することが考えられる。これは認められるか。
 民法94条2項の趣旨は,虚偽の意思表示をした者とその意思表示の存在を信じて取引関係に入った者とを比較した上で,前者の帰責性に鑑み,後者を保護する点にある。そうすると,「第三者」とは,直接の第三者に限られず,直接の第三者からの転得者も含まれると考える。
 これを本件についてみると,Dは,「第三者」であるCから転得した者であり,「第三者」にあたる。そして,Dは,ABC間の事情を全く知らないのであるから,「善意」である。したがって,Dは,Aとの関係で「善意の第三者」にあたる。
 3.よって,Aは,Dに対して,AB間の売買契約の無効を対抗することができないから,Aが本件絵画の所有権を主張して,Dの引渡請求権を否定することはできない。
第2.小問2について
 1.①について
 ⑴ まず,DはEに対し本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。ここで,DE間には直接の契約関係はなく,Dは本件絵画について物権的支配を及ぼしていないので,DがEに対し直接上記請求をすることはできない。
 ⑵ そこで,DはAのEに対する取消権を代位行使(民法423条1項)したうえで,Eに対して本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。これは認められるか。
 まず,DはAに対して,保全すべき「自己の債権」を有しているか。上記のように,DはあくまでCとの賃貸借契約に基づいて本件絵画の引渡請求権を取得しているので,これをAに対しても主張することができるかについて検討する。上記のように,Aは,Cとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができる。他方で,Aは,Dとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができない。そうすると,Dの賃借権を保護しつつ,Cとの関係における本件絵画の所有権の復帰を観念するべきであるから,CD間におけるCの賃貸人たる地位は,あたかもAに移転したものとして扱うのが妥当である。このように考えた場合には,AD間における賃貸借契約が擬制され,DはAに対して賃借権に基づいて目的物の引渡しを請求することができる。したがって,DはAに対し,保全すべき「自己の債権」を有している。
 「保全するため」とは,被代位者が無資力であることをいう。本件では明らかではないが,Dの代位行使が認められるためには,Aが無資力であることが必要である。
 しかし,強迫取消権は,強迫によって行為を行った者を保護する制度であるから,行為者本人が取消権を行使するか否かを決定すべきであって,「債務者の一身に専属する権利」にあたる。したがって,DはAの取消権を代位行使することができないのが原則である。もっとも,行為者に対する債権を保全するため必要がある場合において,行為者が強迫による取消権を行使する意思を有しているときは,強迫取消権の上記趣旨に鑑み,これを代位行使することができる。本件でも,Aが強迫により取消権を行使する意思を有していると認められる場合には,一身専属性が解消される。
 以上の要件を充たす場合には,Dの代位行使が認められる。
 そのうえで,保全の実効性確保の観点から,DはEに対し本件絵画を自己に対して直接引き渡すよう請求することができる。
 以上の場合には,DはEに対して,本件絵画の引渡を請求することができる。
 2.②について
 本問では,Aが既に上記取消権を行使し,本件絵画がAの下に復帰している。そして,上記のように,AD間には本件絵画について賃貸借契約が成立しているから,DはAに対してこれに基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを請求することができる。
以 上

(疑問点)
●賃貸人の地位の移転について
 →解説では,「Dの払う賃料はまさに本件絵画が生み出した価値であり,すると,Aを他の一般債権者と同じに扱うことには疑問がある。そこで,Dに対する賃貸人は--Cではなく--Aであると考えたほうが法律関係は簡明になり,またAがDに直接賃料を請求できる点でも望ましい解決といえよう。」とされているが,これだけでは賃貸人をAとする法的根拠に乏しい気がする。
 →要件事実的にこれを整理するとしたらどうなるのか。
●強迫による行為の取消権が債権者代位の場面での一身専属権にあたるかについて(私見のオンパレード)
 →錯誤無効を原則として第三者が主張することができないのは,錯誤無効が表意者保護の制度であるから。強迫取消も行為者保護の制度であるとすると,原則行為者のみが行使し得るのではないか。
 →錯誤無効における判例の例外法理として,保全の必要性+表意者が錯誤を認めていることが挙げられている。これと同様に強迫取消を考えるならば,保全の必要性+行為者が強迫を認めていることとなるのだろうか。しかし,錯誤の場合よりも強迫のときの方が行為者保護の要請が強く働く(行為者の帰責性の程度が低い)ことからすると,一身専属性が錯誤に比して強まり,例外的に代位行使ができる場面は狭めるべきではないかとも思える。そうすると,強迫があったことを認めているにとどまらず,これを行使する意思まで必要ではないか。
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