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2018-05-29(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題8

国賠多少はとか言いながら,万が一出されると怖すぎるため,

結構がちがちにやってしまっています。

こういう恐怖心から解放された自由な人生を送りたかった。

≪問題≫
次の事例を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲県の乙市立中学校は,乙市が設置し管理する中学校である。乙市立中学校は県内ではとりわけ音楽等の文化活動が盛んであり,構内の体育館(以下「本件体育館」と呼ぶ)は,今から10年前に建築されたが,体育の授業や課外のクラブ活動によるスポーツだけではなく,コンサートや文化的なイベントも開催することができるように,当時の最新の設備を備えていた。その設備の1つとして,舞台前面の床面が可動式になっており,コンサートを行う場合には,床面を下げて,オーケストラピット(舞台上でオペラ等の公演を行う場合,オーケストラが入るためのスペースとして舞台前面に設けられ,通常観客の視線を遮らないよう客席より低い位置になる)を作ることができるようになっていた。ただし,床面を下げた場合,本件体育館の床面とオーケストラピットの床面との間に隙間があく構造となっていた。オーケストラピットの下は地下の機械室につながっており,体育館の床面から機械室の床面の差は4mほどであった。また,体育館の床もオーケストラピットの床も,通常の体育館で使われる素材を使ったフローリングとなっていた。
 乙市立中学校では,例年,文化祭の行事の一部として,音楽系のクラブが中心となって,本件体育館でコンサートを開催していた。コンサートは,地域では有名な行事となっており,中学校の関係者だけではなく,地域住民も参加できるようになっていた。特に,プログラムの内容は小学生や幼稚園児に適した内容とされていた。そのため,例年,コンサートにおいては,同中学校の中学生だけではなく,周辺の地域の小学生や幼稚園児がそれぞれの小学校や幼稚園の行事の一環として参加していた。
 文化祭の日には舞台前の床を約0.7m下げて,オーケストラピットを設定していた。オーケストラピットを設定していたのは,ピット内でオーケストラが演奏するためではなく,当日は乙市立中学校の生徒だけではなく小学生や幼稚園児も多数来場することから,舞台上の生徒が落ち着いて演奏できるように,観客席と舞台の間にスペースを設けるためであった。観客席とオーケストラピットの境界には,高さ0.8mで幅1.6mほどのプラスチックと金属製の防護柵(以下「本件防護柵」と呼ぶ)が数センチ間隔で並べられており,観客が過ってオーケストラピットに転落しないようにされていた(【オーケストラピットおよび部隊の断面図】参照)。

Ⅰ コンサートが休憩時間に入ったとき,観客の1人として来ていた小学1年生のAが,オーケストラピットの中を見ようとして,本件防護柵によじのぼって乗り越えようとしたが,バランスを崩して,オーケストラピット内に転落し,さらに,勢いがついていたため,体育館床面とオーケストラピットの隙間をすり抜け,3m以上下の地階にまで転落し,両足を骨折するという重症を負った。

Ⅱ また,文化祭のコンサートについては,乙中学の生徒は正課の授業の一環として全員鑑賞することになっていた。しかし,休憩時間に,会場の後方で何人かの生徒が遊びはじめ,生徒Bが,止めに入った生徒Cをふざけて柔道の投げ技で投げたところ,Cは体育館の床面で背中を強打し脊椎を損傷する重症を負った。

 AとCはいずれも国家賠償請求を行う意思を示していることから,甲県の担当者Dと乙市の担当者Eは,弁護士であるFに対応を相談することとした。

〔設問1〕
 Aが,乙市に対して,国賠法2条1項に基づく国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。

〔設問2〕
1.Cが,乙市に対して国賠法2条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。
2.Cが,乙市に対して国賠法1条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。また,この場合,Cが甲県に対する国家賠償請求をできるとすればその法的な根拠はどのような点になるか,Cの立場から説明しなさい。

2条と3条を総ざらいというような問題ですね。

≪答案≫
第1.設問1
 1.Aの乙市に対する国賠法2条1甲に基づく国家賠償請求は認められるか。
 2⑴ 「公の営造物」とは,広く公の目的に供せられる物的施設をいう。本件体育館は,市立中学校の体育館として,地方公共団体である乙市が設置して同校の生徒やそれ以外の地域の小学生らも利用しているものであるから,公の目的に供せられている物的施設である。したがって,本件体育館は,「公の営造物」にあたる。
  ⑵ 「瑕疵」とは,当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。その判断にあたっては,①危険の存在,②予見可能性,③結果回避可能性などを考慮する
 これを本件についてみると,①Aが重症を負ったのは,地階にまで転落したことによるところ,観客席とオーケストラピッチとの間には本件防護柵が設置されていたことから,転落の危険はなく,仮に転落した場合を想定してオーケストラピッチの深さを0.7mとしていたのであるから,本件体育館には転落によって重症を負うような危険は存しなかったようにも思える。しかし,小学生や幼稚園児がオーケストラピッチの中を見ようと行動した場合には,本件防護柵が0.8mの高さであっても簡単に乗り越えることができる。またオーケストラピッチに転落した場合には,観客席との柿間が0.4m程度しかなくても,体の小さい生徒や児童であれば,この隙間を通ることは可能であるから,ここからさらに地階へ転落する危険が存在する。そうすると,建物1階分とほぼ同じ4mの高さから人が転落すれば,骨折などの重傷を負う危険が存在する。②文化祭のコンサートには,地域の小学生や幼稚園児が多数参加していたところ,これらの者が好奇心からオーケストラピッチの中を見ようとすることは十分想定できるのであって,このときにバランスを崩してオーケストラピットに転落することも考えられる。そして,体の小さい生徒や児童が転落した場合には,観客席とオーケストラピッチとの隙間から地階へ転落することも予見することができる。その場合,その者が重症を負うことも想定されるところである。③コンサートの支障となることとの関係から本件防護柵をこれ以上高くすることができないとしても,教職員または生徒を係員としてオーケストラピット周辺に配置しておくことによって,上記危険の発生を防止することができたと考えられる。
 以上からすると,本件体育館は,通常有すべき安全性を欠いているというべきであって,「瑕疵」がある。
  ⑶ Aは両足を骨折する重傷を負っているから「損害」があり,上記「瑕疵」に起因するものであるから,因果関係も認められる。
 3.よって,Aの上記請求は認められる。
第2.設問2
 1.小問1
  ⑴ Cの乙市に対する国賠法2条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
  ⑵ア.本件体育館が「公の営造物」にあたるのは上記のとおりである。
   イ.Cが脊椎損傷の重症を負ったことの原因として,本件体育館の床に衝撃を吸収する特殊素材(以下「本件特殊素材」という。)を用いていなかった点がある。しかし,本件特殊素材が開発されたのは,本件体育館設置後である。そこで,営造物が設置された後に開発された安全設備を設けていないことが「瑕疵」にあたるか問題となる。
 安全設備が後から開発された場合には,それを必ず設置しなければ「瑕疵」であるとすると管理者に酷である。しかし,当該安全設備が同様の営造物において一般的に使用されている場合には,通常人は当該営造物にも当該安全設備が設置されていることを前提とすると考えられ,この場合には通常有すべき安全性を欠くということができる。そこで,当該安全設備を設置していないことが「瑕疵」にあたるか否かの判断にあたっては,①安全設備の普及率,②安全設備の設置の必要性,③安全設備の設置の困難性などを考慮する
 これを本件についてみると,①本件特殊素材は,通常の学校の体育館にはほとんど使用されておらず,普及率は低いものとみられる。②本件特殊素材は,主に格闘技などを行うスポーツ施設に導入されるなど,床に体を衝撃することが多く想定される場所では設置が必要であると考えられるが,本件体育館ではその用に供されることは想定されていない。また体育の授業ではマットを用いるなどしていることからしても,本件特殊素材を設置する必要性は低い。③本件特殊素材の設置には,費用や工事のための時間がかかるため,設置には困難が伴う。
 以上からすると,本件特殊素材を設置していないことは,本件体育館が通常有すべき安全性を欠くものとは認められず,「瑕疵」にあたらない。
  ⑶ よって,Cの上記請求は認められない。
 2.小問2
  ⑴ 乙市に対する請求
   ア.Cの乙市に対する国賠法1条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
   イ(ア) 「公権力の行使」とは,国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国賠法2条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用をいう。乙中学では,文化祭のコンサートは正課の一部とされており,学校教育活動の一環であることが認められるから,「公権力の行使」にあたる。
    (イ) 学校教員には,一般的に,学校での教育活動から生じる危険から生徒を保護する義務があるところ,正課として位置づけられている文化祭の場面において,かつ,以前から生徒が悪ふざけをして騒ぐことがよくあったことが指摘されている本件においては,学校教員としては,より厳格な注意義務を負う。上記のような本件の事情の下では,文化祭においても生徒間で悪ふざけがをすることが予想され,悪ふざけが高じて生徒がけがを負うような事態が生じることも予見可能であったといえる。そうすると,教員としてはこれを防止する策を積極的に講じるべきであったのにもかかわらず,これを怠っている。そうると,学校教員には,上記注意義務違反があり,「過失」が認められる。
    (ウ) Cは脊椎損傷の重大な「損害」を被っており,上記過失との間に因果関係が認められる。
   ウ.よって,Cの上記請求は,その要件を満たすため,認められる。
  ⑵ 甲県に対する請求
 Cは,甲県が「費用を負担する者」にあたるとして,国賠法3条1甲に基づく国家賠償請求をすることが考えられる。
 上記のように乙市は国賠法2条1項に基づく責任を負うから,「前二条の規定によって……公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合」にあたる。
 学校教育法5条は,学校の経費の負担をすべき者を「学校の設置者」としているから,乙市が費用負担者であって,甲県は「費用を負担する者」にはあたらないようにも思える。しかし,乙市立中学校の教員は,市町村立学校職員給与負担法1条1項の職員に該当し,その給与については甲県が負担することとなる。そうすると,甲県は,乙市立中学校の教員の給料等の人件費を負担しているのであるから,「費用を負担する者」にあたる。
 「損害」については上記のとおりである。
 したがって,Cの上記請求は認められる。
以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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