2018-02-03(Sat)

【事例演習刑事訴訟法】設問26「伝聞法則⑷」

少し間が空きました。

証拠法に飽きて,民訴に逃げていました。

反省しています。

≪問題≫
⑴ 被告人XのVに対する殺人被告事件の公判において,被告人Xは犯人性を否認したので,検察官は,犯行の目撃者である甲が行方不明のため,乙の手帳について,立証趣旨を「甲との会話の状況」としてその取調べを請求した。乙の手帳は,乙自身が記載したものであり,「甲から,『XがVを包丁で刺し殺すのを目撃した。どうすべきか』との相談を受けた。甲とXとは親友のようで悩んでいるようだ。知合いの弁護士に相談するようにアドバイスを予定」と記載されていた。なお,乙は,その後,交通事故で死亡した。Xの弁護人は乙の手帳の取調べにつき不同意の意見を述べたので,検察官は,当該証拠調べ請求を撤回したうえ,乙の死亡事実を証明して,321条1項3号を根拠に,上記の立証趣旨のまま上記手帳の取調べを請求した。裁判所は,これを採用することができるか。
⑵ また,甲がXからV殺害の告白を聞いた事実が記載された甲の検察官面前調書の場合は,どうか。


再伝聞っていうらしいです。

伝聞を2回挟んでいるそうです。

324条とかを類推適用するらしいです。

伝聞例外も2回検討しないといけないようです。(ここまで全部伝聞)

答案もかなり長くなるようです。(これは他人事)

先に言っておくと,最後の方は力尽きて,適当な論証になっています(はじめの方が特段力を入れているわけでもない。)。

≪答案≫
第1.設問⑴について
 1⑴ア.検察官が取調べを請求した乙の手帳(以下「本件手帳」という。)は,乙が専ら自己の記憶喚起のために作成されたものであると考えられるが,これが「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であれば,伝聞証拠として原則証拠能力を有しないこととなる(320条1項)。そこで,本件手帳は伝聞証拠にあたるか,伝聞証拠の意義が問題となる。
   イ.320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経ており,その各過程で誤りを生ずるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保が欠けているから,その証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
   ウ.これを本件についてみると,①本件手帳は,乙が公判期日外で甲からの相談内容を記載したものであるから,乙の公判廷外の供述を内容とする証拠である。
 また,②本件の公訴事実は,XのVに対する殺人罪(刑法199条)である。そして,Xは犯人性を否認していることから,公判廷での争点は,Xの犯人性である。ここで,検察官の主張する立証趣旨は,「甲との会話の状況」であるが,本件では甲がXの犯行を目撃したかどうかが問題となっているのであって,甲乙間の会話の存在自体を立証しても無意味である。そこで,本件手帳は,XがVを殺害したことの立証に用いてこそ意味があり,すなわち,甲が,XがVを殺すところを見た旨を乙に相談したことによって,Xが殺人罪の実行行為を行ったことを推認し,もってXの犯人性を立証するものである。したがって,要証事実は,「XがVを殺害した状況」である。そして,上記推認は,本件手帳の記載内容が真実でなければ成立しないから,要証事実との関係で供述内容の真実性が問題となる。
 よって,本件手帳は,伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力を有さない。
  ⑵ そうだとしても,本件手帳について伝聞例外(321条以下)が適用され,例外的に証拠能力が認められないか。
   ア.まず,X側が,検察官による本件手帳の取調べ請求について,不同意の意見を述べているので,326条1項の「同意」がなく,同項の適用はない。
   イ.検察官は,321条1項3号を根拠に本件手帳の取調べ請求をしている。そこで,同号の適用について検討する。
    (ア) 本件手帳は,「被告人以外の者」(321条1項柱書)である乙が自身で作成したものであるから,「前二号に掲げる書面以外の書面」にあたる。
    (イ) 乙は,本件手帳作成後,交通事故により「死亡……しているため……公判期日において供述することができ」ない(以下「供述不能要件」という。)。
    (ウ) 「その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」とは,必ずしも他の適法な証拠では同一の立証目的を達し得ない場合に限定されないが,犯罪事実の証明にために実質的に必要と認められなければならない(※1)。Xが犯人性を否認している状況の下では,目撃者である甲の証言がXの犯人性を立証する唯一の証拠となり得る。しかし,甲は行方不明となっており,甲から直接証言を得ることは困難であるから,甲の証言が残された本件手帳は,犯罪事実の証明のために実質的に必要であるということができる。したがって,本件手帳は,「その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」といえる。
    (エ) 「その供述が特に信用すべき情況の下にされたものである」かどうか(以下「特信情況」という。)は,証拠能力の要件であるから,供述のなされた際の事情,供述の動機,態様等を総合考慮して判断する。本件手帳には,甲から相談を受けた旨及びこれに対してアドバイスをする旨のメモが記載されている。これらの記載からは,乙としては,甲から相談を受けた際に,自らが甲に対してとるべき行動を手帳に控えておく意図で,本件手帳を作成したものと考えられる。そうすると,本件手帳は,外部に公開されることが予定されておらず,他人には知られないという意図で記載されたものと考えられ,乙があえて虚偽のメモを残すような働きかけはなかったということができる。したがって,本件手帳は,特信情況の要件を充たす。(※2)
    (オ) そして,本件手帳に乙の「署名若しくは押印」(321条1項柱書)があることが必要である。
    (カ) これらの要件を充たしていれば,本件手帳は,321条1項3号により,例外的に証拠能力が認められる。
 2⑴ ところが,本件手帳中の記載には,甲の供述(以下「本件供述」という。)が別に含まれている。そこで,本件供述も伝聞証拠にあたらないか。
 ①本件供述は,甲が乙に対して私的に相談した際の発言内容であって,公判廷外の供述を内容とする証拠である。また,②上記要証事実との関係では,「XがVを包丁で刺し殺すのを目撃した」のが真実でなければ推論が成立しないから,要証事実との関係で供述の真実性が問題となる。
 したがって,本件供述は伝聞証拠であり,原則として証拠能力が認められない。
  ⑵ア.そこで,伝聞例外について検討するに,本件供述は,伝聞証拠たる本件手帳に含まれる供述であるため,再伝聞証拠である。しかし,再伝聞証拠について証拠能力を認める規定は存在しないため,再伝聞証拠にも証拠能力が認められるかが問題となる。
   イ.この点,本件供述は,「被告人以外の者」である甲の「供述」ではあるが,本件手帳は「公判期日における供述」ではないから,324条2項の直接適用により,証拠能力が認められることはない。
 しかし,再伝聞証拠において,1つ目の伝聞証拠について321条以下の伝聞例外の要件を充たす場合には,当該証拠は,「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合(320条1項)にあたるため,「公判期日における供述」と同程度の証拠能力を有するものと考えられる。そこで,このような場合には,2つ目の伝聞証拠について324条を類推適用し,再伝聞証拠に信用性の状況的保障と必要性が認められれば,伝聞例外の適用と同様に,例外的に証拠能力が認められる。
   ウ.これを本件についてみると,本件手帳は,上記のように321条1項3号により証拠能力が認められる可能性がある。そうすると,本件手帳については「公判期日における供述」と同様に取り扱うことができる。そこで,本件供述についても324条2項を類推適用し,321条1項3号の規定が準用され,この要件を充たすときには,証拠能力が認められる。
    (ア) そこで,本件供述につき,同号の要件を検討するに,本件供述は「前二号に掲げる書面以外の書面」である。
    (イ) 供述不能要件については,これらの事由が,例外的に伝聞証拠を用いる必要性を基礎づけるものであるから,死亡以外の場合には,一時的な供述不能では足りず,その状態が相当程度継続して存続していることが必要である。甲は,行方不明になっているが,これが相当程度継続している場合には,「所在不明」にあたる。
    (ウ) 上記のように甲の目撃証言が,Xの犯人性を立証するための唯一の証拠となり得るから,本件供述は,犯罪事実の証明のために実質的に必要であるということができる。したがって,本件供述は,「その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」といえる。
    (エ) 本件供述は,甲がXの親友であり,悩んでいたことから,弁護士の知人をもつ乙に対して相談した際にされたものである。そうすると,甲としては乙に対して真意を伝えて,Xに対する援助方法を考えたいねらいであったと考えられるから,この場合にも,甲が虚偽の供述をするような働きかけはなかったということができる。したがって,本件供述は,特信情況の要件も充たす。
    (オ) そして,本件供述にも,甲の「署名若しくは押印」が必要である。
    (カ) これらの要件を充たしていれば,本件供述は,324条2項の類推適用により,例外的に証拠能力が認められる。
 3.以上から,本件手帳及び本件供述にそれぞれ証拠能力が認められる場合には,裁判所は,これを証拠として採用することができる。
第2.設問⑵について
 1⑴ 検察官が取調べを請求した甲の検察官面前調書(以下「本件調書」という。)は,伝聞証拠にあたるか。
 ①本件調書は,検察官が甲を取り調べる段階で作成したものと考えられるから,公判廷外の供述を内容とする証拠である。また,②設問⑴と同様に,本件の公訴事実は,XのVに対する殺人罪であり,公判廷での争点は,Xの犯人性である。そして,検察官の主張する「甲との会話の状況」という立証趣旨では無意味である。本件調書は,XがVを殺害したことの立証に用いてこそ意味があり,すなわち,甲が,XがVを殺すところを見た旨を検察官に対して供述し,Xが殺人罪の実行行為を行ったことを推認し,もってXの犯人性を立証するものである。したがって,要証事実は,「XがVを殺害した状況」である。そして,上記推認は,本件調書の記載内容が真実でなければ成立しないから,要証事実との関係で供述内容の真実性が問題となる。
 したがって,本件調書は,伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力が認められない。
  ⑵ア.そして,X側は,検察官による本件手帳の取調べ請求について,不同意の意見を述べているので,326条1項の「同意」がなく,同項の適用はない。
   イ(ア) 本件調書は,検察官が甲を取り調べる段階で作成したものと考えられるから,「検察官の面前における供述を録取した書面」(321条1項2号)にあたる。そこで,同号該当性を検討する。
    (イ) 上記のように,甲は行方不明となっているが,これが相当程度継続している場合には,「所在不明」(同号前段)にあたる。
    (ウ) そして,本件調書に甲の「署名若しくは押印」が必要である。
    (エ) これらの要件を充たしていれば,本件調書は321条1項2号前段により,証拠能力が認められる。
 2⑴ ところが,本件調書中の記載には,Xの告白(以下「本件告白」という。)が別に含まれている。そこで,本件告白も伝聞証拠にあたらないか。
 ①本件告白は,Xが甲に対して私的にした発言内容であって,公判廷外の供述を内容とする証拠である。また,②上記要証事実との関係では,Xの発言が真実でなければ推論が成立しないから,要証事実との関係で供述の真実性が問題となる。
 したがって,本件告白は,伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力が認められない。
  ⑵ 本件告白は,伝聞証拠である本件調書中に含まれているものであるから,再伝聞証拠にあたる。
 上記のように,本件調書が321条1項2号前段により証拠能力が認められる場合には,本件調書は「公判期日における供述」と同程度の証拠能力を有することとなる。そして,本件告白は,「被告人」であるX「の供述」であるから,324条1項を類推適用し,322条1項の規定が準用され,この要件を充たすときには,証拠能力が認められる。
   ア.そこで,本件告白につき,同項の要件を検討するに,本件告白は「被告人の供述」である。
   イ.本件告白は,Xが自己の犯罪事実を認める陳述であるから,Xに「不利益な事実の承認」である。
   ウ.そして,本件告白についても,Xの「署名若しくは押印」が必要である。
   エ.これらの要件を充たしていれば,本件告白は,324条1項により,例外的に証拠能力が認められる。
 3.以上から,本件調書及び本件告白にそれぞれ証拠能力が認められる場合には,裁判所は,これを証拠として採用することができる。
以 上


(※1)東京高判昭和29年7月24日

(※2)絶対的特信情況のあてはめ方は全く分かりません。相場観としては,(ⅰ)最決平成12年10月31日(日本からの捜査共助の要請に基づいて,米国に在住する者が,黙秘権の告知を受け,同国の捜査官及び日本の検察官の質問に対して任意に供述し,公証人の面前において,偽証罪の制裁の下で,供述内容が真実であることの言明と署名を付して作成された供述書について,特に信用すべき情況の下にされた供述に当たるとした事例。)や,(ⅱ)最決平成15年11月26日(大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述を拒否することができる旨を告げられた上でした供述を記載した公判調書は,特に信用すべき情況の下につれた供述を録取した書面に当たるとして事例。)などからすると,その書面が作成されたときの手続面を重視しているようにみえます。他方で,(ⅲ)東京地決平成3年1月16日(捜査機関に対して匿名で犯罪事実を密告する投書は,作成者がその文面について責任を負わず反対尋問などにより追及する機会もないから,作成者の知覚等に誤謬が介在したり,あるいは被告人を罪に陥れるなどの意図に基づいて虚言を交える可能性は,他の供述調書と比べて格段に高いというべきところ,本件投書は,その作成目的に疑問があり,また記載内容と客観的事実が一部符合していてもそれは被告人が本件に関与しているとの記載部分の信用性を何ら裏付けるものではないから,特に信用すべき情況の下で作成されたものとはいえないとした事例。)は,(ⅰ)及び(ⅱ)と同様に手続面の保障の程度を前提としつつ,作成目的という主観的事情も考慮に入れているように読めます。そこで,供述のなされた際の事情,供述の動機,態様などを中心にあてはめていけばいいのかと思います。今回の問題では具体的事情が落ちいていませんが,手帳に書かれたメモの場合には,一般的には,外部非公開性を推していけば,手帳に真実ではないことをわざわざ書き残すというインセンティブは働かないようにも考えられるので,その場合には,供述目的の正当性が肯定される方向になるかと思います。
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