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2018-01-31(Wed)

【旧司】刑事訴訟法昭和61年度第2問

今日も今日とて証拠法。

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≪問題≫
 甲乙両名は,共謀の上丙を殺害したとして起訴された。甲に対する証拠として,乙の「甲に頼まれて丙を射殺した。」という検察官面前調書がある。しかし,乙は,公判廷ではあいまいな供述をするのみであった。一方,甲は,終始,乙に依頼したことを否認している。
 この場合において甲の有罪を認定する上での問題点を論ぜよ。


問題点を論ぜよって何だよ。

≪答案≫
1.甲は,丙に対する殺人罪の共謀共同正犯として起訴されている。ここで,乙が実行共同正犯であるとみれるから,甲の有罪を認定するためには,乙との共謀の事実の存在を立証する必要がある。共謀の事実は,共謀共同正犯の認定にあたり「罪となるべき事実」(335条1項)であるから,これを認定するためには,適法な証拠調べを経た証拠能力のある証拠によらなければならない(317条)。
2⑴ア.そこで,乙の「甲に頼まれて丙を射殺した。」という検察官面前調書(以下「本件調書」という。)を,甲乙間の共謀の事実の認定に際して証拠に供することはできないか。本件調書が「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であれば,伝聞証拠として原則証拠能力を有さないこととなる(320条1項)。そこで,本件調書は伝聞証拠にあたるか,伝聞証拠の意義が問題となる。
  イ.320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経ており,その各過程で誤りを生ずるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保が欠けることから,その証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
  ウ.これを本件についてみると,①本件調書は,検察官が乙の取調べ段階で作成したものと考えられるから,公判廷外での供述を内容とするものである。
 また,②本件の公訴事実は,甲の丙に対する殺人罪の共謀共同正犯である。そして,甲は,終始,乙に依頼したことを否認しているから,公判廷での争点は,甲の殺人罪の共謀共同正犯としての構成要件該当性である。そして,検察官は,本件調書を,「共謀の事実の存在」を立証趣旨として提出することが考えられる。本件調書中の「甲に頼まれて」という部分が立証できれば,甲乙間で意思連絡があったことが認定できる。そして,その意思連絡に基づいて「丙を射殺した」ということであれば,丙の殺害について共謀があったことが推認できるから,上記立証趣旨が要証事実となる。そして,上記推認は,乙の供述の内容が真実でなければ成立しないものであるから,要証事実との関係で供述内容の真実性が問題となるものである。
 したがって,本件調書は,伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力を有しない。
 ⑵ そうだとしても,本件調書について伝聞例外(321条以下)が適用され,例外的に証拠能力が肯定されないか。
  ア.まず,甲側が,検察官による本件調書の証拠調べ請求について「同意し」,「その書面が作成され……たときの情況を考慮し相当と認めるとき」は,本件調書を証拠とすることができる(326条1項)。しかし,甲は,終始,乙に依頼したことを否認していることからすると,甲が上記同意をすることは考えにくい。
  イ(ア) そこで,上記同意がない場合であっても,本件調書は,取調べ段階で乙が検察官に対し供述した内容を記録したものであるから,「検察官の面前における供述を録取した書面」(321条1項2号)にあたる。そこで,同号該当性を検討する。
   (イ) 検察官としては,乙が公判廷であいまいな供述しかしないことから,より明確な供述が得られている本件調書を証拠調べ請求するものと考えられるが,このことをもって「公判期日において前の供述と……実質的に異なつた供述をしたとき」(同号後段本文)にあたるか。
 同号後段本文が,同項1号書面の場合と異なり,「実質的に異なつた」としている趣旨は,一方当事者である検察官の面前における供述は,公平中立な裁判官の面前での供述に比して信用性が劣るため,より高度な信用性を要求した点にある。そうすると,「実質的に異なつた供述」とは,要証事実との関係でその認定につき異なった結論を導く可能性のある供述をいう。
 これを本件についてみると,乙があいまいな供述しかしていない場合には,それ自体から甲乙間の共謀の事実を認定することは困難であり,他の証拠によって認定されない限り,甲乙間の共謀の事実は立証されない。そうすると,甲の殺人罪の共謀共同正犯としての構成要件該当性が欠けるため,甲の有罪を認定できなくなる。しかし,本件調書中の「甲に頼まれて」という部分が立証できれば,甲の殺人罪の共謀共同正犯としての構成要件を充足するから,甲の有罪を認定することができることとなる。したがって,本件調書は,その内容が,要証事実との関係でその認定につき異なった結論を導く可能性がある供述であるから,「公判期日において前の供述と……実質的に異なつた供述をしたとき」にあたる。
   (ウ) また,同号後段本文に該当する場合には,「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存する」こと(以下「特信情況」という。)が必要である(同号後段但書)。このとき,特信情況は,前の供述と比較し相対的に認められるか否かで判断する。そして,この判断にあたり,供述内容の信用性を考慮すると証明力を評価しなければならず,証拠評価に混乱を生ずるおそれがあるから,当該供述のなされた際の外部的付随事情を基準として判断する。ただし,外部的付随事情を推知させる資料として,供述内容を考慮することはできる。
 本件調書についても,特信情況が認められる必要がある。
   (エ) また,本件調書に,乙の「署名若しくは押印」があることが必要である(321条1項柱書)。
   (オ) 以上の要件を充たしていれば,本件調書は,321条1項2号後段により,例外的に証拠能力が認められる。
3.以上のように,本件調書の証拠能力がみとられるとしても,本件調書の内容は,共犯者である乙自身の犯罪を認める旨の陳述であり,自白にあたる。そこで,共犯者の自白のみで他の共犯者の有罪を認定することは許されるか,共犯者の自白が「本人の自白」(憲法38条3項)にあたり,補強法則(同項,刑訴法319条2項)の適用があるかが問題となる。
 たしかに,共犯者の自白が第三者の自白と異なり,引っ張り込みの危険性があることに鑑みれば,共犯者の自白は「本人の自白」に含まれ,これのみで有罪とすることは補強法則に反し,許されないようにも思える。しかし,自白とは,被告人本人が自分の犯罪事実を認める供述のことであるから,共犯者の自白は,一体不可分とはいえ,本人にとっては第三者の供述に過ぎない。また,補強法則は自由心証主義の制限であるから,この規定を拡張して解釈するのは妥当ではない。したがって,共犯者の自白は,「本人の自白」には含まれない。
 本件でも,乙の供述は,甲との関係では「本人の自白」ではないから,補強法則の適用はない。
4.よって,本件調書の証拠能力が認められる場合には,裁判所はそれのみをもって,甲の有罪の認定に用いることができる。
以 上
 


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