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2018-01-29(Mon)

【事例演習刑事訴訟法】設問25「伝聞法則⑶」

旧司と並行してになりますが,定評のある演習書にも目を通そうと思い,

刑訴については『事例演習刑事訴訟法』,いわゆる古江本をやることにしました。

この本をやり込んでいる人は学部でもローでも結構多い印象があります。

したがって,この本に書いてあることくらいはちゃんと書けるようにしないと,

本番で大変なことになってしまうのだろうということですね。

怖いわー。

≪問題≫
 検察官は,XのVに対する殺人の目撃者である外国人甲を取り調べ,Xの殺害行為の態様について詳細な供述調書を作成した。その後,Xは,殺人罪で起訴され,検察官は,第1回公判期日において,他の証拠とともに,甲の検察官に対する上記供述調書を,立証趣旨を「被告人のVに対する犯行を目撃した状況」として証拠調べの請求をしたが,被告人Xは当該供述調書を不同意とした。そこで,検察官は,上記供述調書の証拠調べを撤回したうえ,甲の証人尋問を請求し,裁判所は,これを採用し,第2回公判期日に甲の証人尋問が実施されることとなった。ところが,甲はオーバー・ステイで入管施設に収容され,第1回公判期日後間もなく,退去強制令書の執行により,母国である乙国に退去させられた(自費出国)。そこで,検察官は,甲の検察官に対する上記供述調書を刑訴法321条1項2号前段に該当する書面として,改めて証拠調べの請求をした。裁判所は,これを証拠として採用することができるか。

なんだか知らないですけど,古江本の問題って,日本語の文章が下手じゃないですか。

1文が長かったり,1文に主語が2つ以上あったり……

まぁそれは置いておいて,問題の検討です。

元ネタ的な判例はおそらく最判平成7年6月20日だと思います。

あの「手続的正義」とかいうワードでキメてきているやつですね。

かっこいいですね。僕も答案で書いてみたいです。「手続的正義」。

たぶんこういう視点でしか判例を読んでいないから,いつまでたっても勉強できるようにならないんでしょう。

≪答案構成≫
1.供述調書の伝聞証拠該当性
 →規範=形式説
 →該当
2.伝聞例外
 ⑴ 326条1項
  →不該当
 ⑵ 321条1項2号前段
  →該当
  but) 手続的公正の観点から問題
   →規範=最判平成7年6月20日
   →検討
3.結論

≪答案≫
1⑴ 検察官は,Xを取り調べた際に作成した供述調書(以下「本件供述調書」という。)を証拠調べ請求しているが,これが「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であれば,伝聞証拠にあたり原則として証拠能力が否定される(320条1項)。そこで,本件供述調書は伝聞証拠にあたるか,伝聞証拠の意義が問題となる。
 ⑵ 320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経ており,その各過程で誤りを生ずるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保が欠けることから,その証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
 ⑶ これを本件についてみると,①本件供述調書の内容は,公判期日外で検察官がXに対して行った取調べにおけるXの供述であるから,公判廷外の供述を内容とする証拠である。
 また,②検察官の提示した立証趣旨は「被告人のVに対する犯行を目撃した状況」とされており,これを立証することにより,XがVを殺害したことが推認される。そのため,要証事実は,被告人のVに対する犯行を目撃した状況であり,これは甲が現場において知覚し,それを記憶し,取調べにおいて表現,叙述した内容を問題とするものであるから,内容の真実性が問題となる。
 したがって,本件供述調書は伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力が否定される。
2.そうだとしても,本件供述調書について伝聞例外(321条以下)が適用され,例外的に証拠能力が肯定されないか。
 ⑴ まず,X側は,第1回公判期日において,検察官が本件供述調書の証拠調べ請求をした際に,不同意としている。したがって,326条1項の適用はない。(※1)
 ⑵ア.次に,検察官は,本件供述調書が321条1項2号前段に該当する書面として証拠調べ請求をしているので,この点について検討すると,本件供述調書は,検察官が甲を取り調べた際に作成したものであるから,「検察官の面前における供述を録取した書面」にあたる。そして,甲は,オーバー・ステイを原因として強制的に国外退去させられており,退去した日から5年間本邦に入国することができず(入管法5条1項9号ロ)(※2),継続的に,かつ,可能な手段を尽くしても公判期日に出頭させることができないから,「国外にいるため……公判期日において供述することができないとき」にあたる。そして,甲の「署名若しくは押印」があれば,321条1項2号の要件を充たす。
 そうすると,本件供述調書には,伝聞例外が適用され,例外的に証拠能力が認められるように思われる。
  イ.しかし,本件では,甲に対して実施予定であった証人尋問がされる前に,退去強制が行われ,証人尋問を実施できなくなっている。このような場合でも,本件供述調書の証拠能力を認めてもよいか。
   (ア) 刑訴法はその全体を通して手続的正義,具体的には手続的公正を要求していると考えられるところ,公判の場面においては,相手方当事者の論拠と証拠に抗弁する公正な機会が与えられることが求められる。このような機会が奪われるような場合には,手続的正義の観点から証拠能力を否定すべきである。(※3)
 具体的には,(ⅰ)検察官において供述者がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合や,(ⅱ)裁判官又は裁判所が供述者について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など,供述者の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは,これを事実認定の証拠とすることが許容されず,証拠能力が否定される。(※4)
 そして,手続的正義の観点から公正さを欠くか否かの判断は,供述者の収容の理由及び時期,強制送還の態様・時期,証人尋問請求の時期,証人尋問決定の時期,関係機関の連絡・調整状況などの諸事情を総合的に考慮して行う。(※5)
   (イ) これを本件についてみると,具体的事情が認定されていないため,仮に(ⅰ)または(ⅱ)のような事情があり,手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるような場合には,本件供述調書の証拠能力は認められない。反対に,手続的正義の観点から問題がないと認められるような場合には,本件供述調書の証拠能力は認められる。
3.よって,前者の場合には,裁判所は本件供述調書を証拠として採用することができない。後者の場合には,裁判所は本件供述調書を証拠として採用することができる。
以 上


(※1)しかし,本件では,一旦証拠調べ請求を撤回した上で,再度証拠調べ請求がされているので,前者でされた不同意が後者の方にも当然に及ぶかどうかは分かりません。まぁでも,前者で不同意としていたら後者でも不同意とするのが自然な気がするので,いちいちこの点を指摘する必要はないように思います。

(※2)入管法の記述は,古江本の解説に書いてあったので書きましたが,本番では参照条文でもあがっていない限り書けるわけがないです。ただ,書けたらめちゃくちゃドヤ顔できそうです。

(※3)古江本の解説での議論を踏まえると,このような規範になるのでしょうか。具体例の記述まで含めると,規範が長くなってしまうので,もう少しコンパクトに書ければいいなと思います。そもそも,具体例を示す必要もないような気はしますが。

(※4)判例では「これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得る……」とされているにすぎないので,本来は≪答案≫のように証拠能力が否定されると言い切ってはいけないのでしょう。しかし,答案上「あり得る」というあいまいな表現を用いるのは避けたいところなので,もう少しうまい表現がないか検討してみたいです。

(※5)この問題では具体的事情が何も書いていないので,今回は規範段階でいろいろ考慮事情をあげてみましたが(考慮事情は最判平成7年6月20日の調査官解説を参照),本番でこんなことをいちいち書いている余裕はないと思われますし,具体的事情が落ちていれば,規範で示さずとも,いきなりあてはめで考慮事情に沿った認定をするだけで足りると思います。
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