2018-01-25(Thu)

【旧司】刑事訴訟法平成21年第2問

遅くなりましたにもほどがありますが,あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

私の今年の,というより春休み中の目標の1つに,

証拠法を勉強する

というのがあります。

これは,どういうことか。

新司で周りに差をつけることができるようなテクニックを学ぶちゃんとした勉強をするとか,

誰も研究していない未知の論点について深く勉強するとか,

そういうことではないです。

あろうことか,私は,もうロースクールも半分が終わろうとしているのに,

まだ生まれてこの方一度も証拠法を勉強したことがないのです。


入学した当初は,証拠法もやってない奴がよくロースクールに受かったなくらいで笑い話にしていたわけですが,

司法試験まで残り1年ちょっととなってくると,さすがに焦ります。

選択科目もちゃんと勉強し始めないといけないのに,基本7法ですら未完成だったとは。

おそるべし。

ということで,これから証拠法をちゃんと真剣に勉強していきます。

その過程で,旧司や新司の問題も解いていこうと思いますので,その際に書いた答案をここに掲載していこうと思います。

というわけで,第一弾は,自白の問題。

旧司の平成21年第2問です。

≪問題≫

 警察官Aは,強盗殺人の被疑事実で勾留中の甲を取り調べたが,その際,黙秘権の告知をしなかった。甲は,当初,アリバイを主張して犯行を否認したが,Aが「犯行現場の防犯カメラにあなたの顔が写っていた 。」旨の虚偽の事実を告げたところ,甲は犯行を自白し,被害品を友人宅に隠匿していることも供述したので,その内容を録取した供述調書①が作成された。そこで,Aは,供述調書①を疎明資料として捜索差押許可状の発付を受けて甲の友人宅を捜索したところ,被害品が発見されたので,これを差し押さえた。その後,別の警察官Bが,黙秘権を告知して取り調べたところ,甲が犯行を再度自白したので,その内容を録取した供述調書②が作成された。
 裁判所は,供述調書①,甲の友人宅で差し押さえられた被害品及び供述調書②を証拠として採用することができるか。

勉強したところによると,自白法則についてはいろんな説が対立しているようです。

どれがいいのかわからないので,とりあえず,人権擁護説はないなくらいのスタンスでいようと思います。

早速答案を……

≪答案≫

第1.供述調書①の証拠としての採否について
 1.警察官Aは,甲の取調べにあたり,黙秘権の告知を行わず,また虚偽の事実を告げており,これに引き続いて供述調書①を作成している。このような状況下で作成された,供述調書①は「任意にされたものでない疑のある自白」(319条1項)にあたり,証拠として採用することができないのではないか。
 2⑴ 自白法則(憲法38条2項,刑訴法319条1項)の趣旨は,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがある状況下でされた自白を予め排除することで,誤判の防止を図る点にある。そこで,「任意にされたものでない疑のある自白」か否かは,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったか否かによって判断する。
  ⑵ これを本件についてみると,黙秘権の告知は取調べによる心理的圧迫から被疑者を解放するためになされるところ(※1),これがされないことにより,甲が心理的圧迫を感じ,正常な判断能力に支障をきたすことで,冷静な供述をすることができなくなるおそれを生じている。このような状況のもと,Aは犯行現場の防犯カメラに甲の顔が写っていた旨の虚偽の事実を告げている。そうすると,甲としては,アリバイ主張が否定され,もはやどのような弁解をしても無駄であると考えるにいたるおそれがある。そして,黙秘権の告知がないことと相俟って,甲は何らかの供述をしなければならないと考え,事実に反して犯行をした旨の供述をしてしまうおそれがある。
 以上から,供述調書①の作成におよぶ取調べの段階では,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったと認められる。
  ⑶ したがって,供述調書①は,「任意にされたものでない疑のある自白」にあたる。
 3.よって,供述証拠①は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
第2.被害品の証拠としての採否について
 1.被害品については,供述調書①を疎明資料として発付を受けた捜索差押許可状に基づく捜索により発見,差押を受けたものである。そこで,供述調書①と同様に「任意にされたものでない疑のある自白」として証拠能力が否定されないか検討するに,被害品自体は供述ではなく,虚偽が混入するおそれがないから,これにあたらない。
 しかし,供述調書①の取調べにおいては,上記のように黙秘権の告知を行わなかったという198条2項に反する法令違反がある。そこで,このような違法な手段によって収集された証拠は,証拠能力が否定されないか。
 2⑴ 違法な手続によって獲得した証拠を採用することは,司法の無瑕性と将来の違法捜査抑止の観点から問題がある。もっとも,獲得手続に軽微な違法があるにすぎない場合にも証拠能力を否定してしまうことは,かえって司法の無瑕性が害される。そこで,①憲法および刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法があり(※2),②これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑止の見地からして相当でないと認められる場合には,その証拠物の証拠能力は否定されるべきである。
  ⑵ これを本件についてみると,①198条2項で要求される黙秘権の告知は,憲法上規定されているものではなく,これに違反したことをもって直ちに重大な違法があるということはできない。しかし,Aは,黙秘権の告知を行わなかったことに加えて,虚偽の事実によって自白を獲得している。このような一連のAの取調べ態様からすると,Aが黙秘権の告知を行わなかったのは,単にそれを失念していたにとどまらず,あえてそれを行わないことにより,Aの心理状態を圧迫し自白を促すことを狙っていた可能性が高い。そうすると,198条2項に反する法令違反は,Aが刑訴法の基本原則を潜脱する意図のもと行われたものと認められる。したがって,上記手続違反は刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法ということができる。
 また,②Aが特段の理由なくこのような態度に出たことからすれば,今後も違法な取調べを繰り返し行う可能性はかなり高いと考えられる。そして被害品は,違法な取調べによって作成された供述調書①を疎明資料として発付された捜索差押許可状に基づく捜索によって発見され,差し押さえられたものであるから,違法手続と被害品との間には関連性がある。この点,捜索差押許可状の発付段階で裁判所による審査を経てはいるものの,疎明資料には供述調書①が提出されたのみで,裁判所としてはそれに基づいて審査を行っていることからすれば,違法手続と被害品との間の関連性は密接である。そうすると,違法手続と被害品獲得との因果性は強いということができる。したがって,被害品を証拠として許容することは,将来における違法な捜査の抑止の見地からして相当でないと認められる。
 3.よって,被害品は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
第3.供述調書②の証拠としての採否について
 1.供述調書②は,警察官Bが黙秘権の告知を行ったうえでされた取調べによって作成されており,それ自体の手続違反は認められない。しかし,ここでの甲の供述内容は,供述調書①におけるのと同様であるから,このような自白についても「任意にされたものでない疑のある自白」にあたり,証拠として採用することができないのではないか。
 2⑴ 自白法則の上記趣旨に照らし,先行する取調べによって獲得された自白が虚偽であるおそれがある場合の,後行の取調べによって獲得された自白の任意性は,同様に,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったか否かによって判断する。
  ⑵ BがAと同じ警察官という立場にあることからすれば,Aに対して弁解しても無駄であればBに対して同じことをしても無駄であろうと考えても自然である(※3)。そうすると,Bが積極的にAの取調べによる心理的圧迫を遮断するような措置を講じない限り,Bによる取調べにおいても類型的に虚偽の自白を誘発するおそれが継続していると言わざるを得ない。そして,Aによる取調べとBによる取調べとは時間的間隔があまりないと考えられるうえ,BはAの指摘した事実は虚偽である旨を説明したうえで,再度供述内容を考えなおさせる等,積極的にAの取調べによる心理的圧迫を遮断するような措置を講じていない。
 以上からすると,Bによる取調べにおいても類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあるといえる。
  ⑶ したがって,供述調書②は,「任意にされたものでない疑のある自白」にあたる。
 3.よって,供述調書②は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
以 上



(※1)浦和地裁平成3年3月25日判決(刑訴百選10版72事件)のかっこ書部分参照。
(※2)違法収集証拠排除法則の1つ目の要件は,判例では「憲法35条及びこれを受けた刑事訴訟法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり」とされていますが,本件では取調べの態様を問題としており,「令状主義」の話にそもそもならないため,このような言い回しに代えています。古江刑訴でも触れられていたかと思います。
(※3)はじめにこの部分を「……と考えるのが通常である」としていましたが,本当にそれが通常かどうかわからないですし,仮にマイナーな考えであったとしたら,採点実感でキレられるので(過去に変なことを欠いた答案に対して常識を疑うみたいな記述をしていた気がします。),まぁこう考えてもおかしくはないよね???くらいの記述にとどめました。
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