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2019-01-25(Fri)

【新司】倒産法平成26年第2問

引き続き第2問です。

民再です。

全く分かりません(まだ問題を読んでいない)。

≪問題≫
〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,不動産賃貸業を営む会社であり,Bはその代表者である。A社は,平成15年,同社の所有する敷地上に甲ビルを建築し,Cに対し,賃貸期間を15年,賃料を月額100万円,敷金を1000万円と定め,同ビルを貸し渡した(以下「本件賃貸借契約」という。)。また,本件賃貸借契約の締結に当たり,Cは,A社に対し,3000万円を貸し付け,A社は,平成20年3月から毎月末日限り50万円ずつ分割して同債務を弁済する旨約した。なお,A社は,甲ビルを建築するに当たって,D銀行から5億円を借り入れ,その際,甲ビル及びその敷地に同行を抵当権者とする抵当権を設定し,その登記もされたが,本件賃貸借契約は,上記抵当権設定登記を備える以前に締結され,Cは同ビルの引渡しも受けていた。また,A社は,そのころ,A社の関連会社がE銀行に対して負う借入債務を連帯保証した。
 A社は,平成20年頃から,株式取引の失敗等により経営が次第に悪化し,平成22年12月以降,甲ビル及びその敷地についてD銀行による担保権実行が避けられない状況にあった。
 そこで,A社は,平成23年3月9日,再生手続開始の申立てをし,同日,監督委員が選任され,同月14日,再生手続開始の決定がされた。同手続の開始当時の債権者は,C(Cの債権の内訳は,上記敷金の返還請求権が1000万円,上記貸金の返還請求権が1200万円であり,A社は当該貸金債権について期限の利益を喪失していない。),D銀行及びE銀行であった。
 A社は,D銀行の有する抵当権について担保権消滅の許可の申立てをすることを前提として事業を継続するとともに,スポンサーから資金提供を受けて弁済を行う旨の再生計画案の作成を予定し,各債権者にその概要を説明したところ,本件賃貸借契約の継続を希望するCは,その計画案であれば破産手続の方が貸金債権及び敷金返還請求権の回収にとって有利な事情があると考え,また,D銀行も破産手続の方が甲ビル及びその敷地を高額で任意売却できると見込んだことから,当該再生計画案に賛意を表明しなかった。このため,当該再生計画案が提出された場合には,C及びD銀行がこれに反対することが予測された。
 そこで,Bは,再生手続開始の決定後,平成23年4月15日までと定められた再生債権の届出期間の経過前に,E銀行のA社関連会社に対する上記債権の回収可能性が極めて低いことを知りながら,実価を超える価額でE銀行から同債権を譲り受け,これによってA社に対する保証債務履行請求権を取得し,更にその一部をBの親族であり,A社の取締役であるF及びGに分割譲渡した。その後,B,F及びGは,A社に対して有する債権の届出をそれぞれ行い,A社は,B,C,D銀行,F及びGの届け出た債権の全額をいずれも認め,再生債権者は届出債権について異議を述べなかった。
 最終的にA社が提出した再生計画案は,債権者にその概要を説明したものと同様の内容であり,再生会社がスポンサーとなる企業から融資を受けて,再生債権者に対し,再生計画の認可決定の確定後3か月以内に再生債権額の3%を一括で支払うというものであり,Cの有する敷金返還請求権については,民事再生法の規律に従った内容の条項が定められていた。なお,A社の予想清算配当率は1%未満であった。

〔設 問〕
1.Cが,下線  を引いた部分に示されているように,破産手続の方が貸金債権及び敷金返還請求権の回収にとって有利な事情があると考えた理由は何か。Cの有する上記敷金返還請求権に関する再生計画案の条項の内容がいかなるものであったかについても検討の上,敷金の取扱いや相殺権に関する破産法の規律と民事再生法の規律の違いを踏まえ,論じなさい。
 なお,本件賃貸借契約の終了後,Cが行うべき原状回復の費用としては100万円を要する見込みであり,また,同契約に基づく賃料の不払や遅滞がないことを前提とする。
2.上記事例において,A社の提出した再生計画案は,平成23年12月5日に開催された債権者集会において,C及びD銀行の反対にもかかわらず,届出再生債権者の過半数であり,議決権総額の2分の1以上の議決権を有するB,F及びGの同意を得て可決された。
 上記再生計画を裁判所が認可すべきかどうかについて,論じなさい。


あっ,分かんね。

特に,設問1は書き方が良く分からないですね。

単純に民再と破産を比較するだけでいいんでしょうか・・・・・・。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Cの有する敷金返還請求権に関する再生計画案の条項の内容については,民再法の規律に従ったものとされている。そうすると,Cが,再生手続開始後に弁済期の到来する賃料債務を弁済したときには,賃料6か月分である600万円の限度で,共益債権として扱われることとなるから(民再法92条3項),再生手続によらずに随時弁済を受けることができる(民再法121条1項)。一方で,残額の400万円については,再生債権となるから,再生計画に従って弁済されるにとどまるところ(民再法85条1項),再生計画では再生債権額の3%を支払うこととされているから,Cは400万円のうち12万円の弁済を受けることとなる。したがって,再生手続による場合には,Cは合計612万円の弁済を受ける。
  ⑵ 一方で,破産手続による場合には,Cは「敷金の返還請求権を有する者」にあたるから,賃料を支払うにあたり,その「弁済額の寄託を請求することができる」(破産法70条後段)。これは,賃貸借契約の終了時に敷金から清算を行った後になお敷金が残存していることを停止条件として敷金返還請求権が発生することを解除条件とする寄託請求である。ここでは,民再法の上記規定のように6か月の条件が設定されていない。したがって,Cの敷金返還請求権が発生したときには,解除条件の成就により,敷金返還請求権の額の範囲で不当利得返還請求権が発生する。これにより,Cは1000万円の優先弁済を受けることができる。
  ⑶ よって,Cとしては,破産手続による方が,敷金返還請求権について優先弁済を受けることができる額が大きいので,有利である。
 2⑴ CはA社に対して甲ビルに係る「賃料債務」を負担するから,これを受働債権とし,CのA社に対する貸金返還請求権を自働債権として,賃料の6か月分相当額において相殺することが考えられる(民再法92条2項)。しかし,相殺をするためには,両債権が相殺適状にあることが必要であるところ,上記貸金返還請求権は未だ期限の利益を喪失しておらず,弁済期が到来していない。また,民再法には将来債権の現在化の規定がない。したがって,上記貸金返還請求権は相殺適状にないため,Cは再生手続においてこれらを相殺をすることができない。
  ⑵ 一方で,破産手続による場合には,上記貸金返還請求権は,A社の破産手続開始により,弁済期が到来したものとみなされ(破産法103条3項),上記賃料債務についても期限の利益を放棄することができるから,両債権を相殺適状とすることができる。そして,破産法上の相殺では,6か月の上限が設けられていない。したがって,Cは,1200万円全額について相殺をすることができる。
  ⑶ よって,Cとしては,破産手続による方が,貸金返還請求権について相殺できる点で有利である。
第2 設問2
 裁判所は,A社の策定した再生計画が,民再法174条2項3号に該当し,不認可決定をすることが考えられる。
 そこで,この点について検討すると,民再法174条2項3号の趣旨は,再生計画案が可決されたときには,再生債権者の意思をできるだけ尊重するため,原則としてこれを認可することとしているが(同条1項),再生債権者の意思が的確に反映されていないときには,同条1項の趣旨に反するから,これを不認可事由としたものである。そこで,「不正の方法」とは,再生計画案の可決要件(民再法172条の3第1項)を充足するために,再生債権者の意思に反する働きかけがされた場合をいう。ここで,民再法172条の3第1項が,2号のみならず1号をも要件としているのは,債権額の大きい債権を有する再生債権者の意向によって,債権額の小さい債権を有するのみの債権者(以下「少額債権者」という。)の利益が害されないようにするためである。したがって,この趣旨を潜脱する形で要件が充足されたような場合には,再生債権者の意思に反する働きかけがされた場合にあたり,「不正の方法」にあたるものと考えられる。
 これを本件についてみると,再生計画案の決議に参加した再生債権者は,再生手続開始前から債権を有していたC及びD銀行に加え,再生手続開始後に債権を取得したB,F及びGの計5名である。このうち,再生債権者の頭数の過半数を超えるB,F及びGの3名が同意しており,これらの者の議決権は議決権総額の2分の1以上であるから,形式的には民再法172条の3第1項の要件を充足する。しかし,B,F及びGが取得した債権は,元々E銀行が有するものであって,このままであれば,E銀行が半数以上の議決権を有するにもかかわらず,C及びD銀行の反対により,再生計画案は可決されることはなかったといえる。この場合には,少額債権者であるC及びD銀行の意向が再生計画に反映され,その利益が保護される状態にあり,民再法172条の3第1項の趣旨が実践されていたということができる。それにもかかわらず,Bは,このような結論が実現することを回避するために,E銀行から債権を買い取り,これをF及びGに分割する形で,無理矢理頭数要件を充足させたものである。そうすると,BのE銀行からの債権の譲受は,再生計画案の可決を実現するためだけにされたものであるということができ,実質的に民再法172条の3第1項の趣旨を潜脱したものと認められる。したがって,この場合には,C及びD銀行の意思に反して,再生計画案の可決のための働きかけがされたというべきであり,「不正の方法」によって再生計画案が可決された場合にあたる。
 したがって,本件の再生計画案は,民再法174条2項3号に該当するため,裁判所は,不認可決定をすべきである。

以 上



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2019-01-25(Fri)

【新司】倒産法平成26年第1問

さて,もう1月も終わりです。

こないだ年が明けたばかりかと思いきや。

早いですね。

焦りが隠せません。

とにかく倒産法を仕上げないといけないですね。

≪問題≫
〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 Aは,先物取引に失敗したことを原因として,消費者金融からの借入れも含め約1億円の負債を負うに至り,債務の支払が不能となったことから,平成24年9月14日,破産手続開始及び免責許可の申立てをし,同月21日,破産手続開始の決定を受け(以下,同開始決定に基づく破産手続を「本件破産手続」という。),破産管財人Xが選任された。
 Aの友人であるBは,本件破産手続開始の申立て前の平成22年10月20日,Aに対し,金銭消費貸借契約書を作成することなく,現金で1000万円を貸し付けた。Bは,その当時,自宅において,内縁関係にあったCと同居していたが,その後,Cとの関係が悪化したことから自宅を出て,本件破産手続の開始時点においては外国に長期滞在していたため,同手続が開始されたことを知らなかった。他方,Cは,本件破産手続開始の通知をBの自宅において受け取ったが,同手続が開始された事実をBに知らせることなく,自らがAに上記1000万円を貸し付けたものとして破産債権の届出をした。
 破産管財人Xは,Cから届出のあった破産債権の存否及び額等についてAに確認をしたところ,Aは,B及びCは経済的に一体の関係にあり,いずれにしても1000万円を借り受けたことは事実である上,Cが資金を拠出した可能性もあると考えたことから,Cによる破産債権の届出を否定するほどのことはないと考え,破産管財人Xに対し,Cの届出内容に間違いはないと説明した。破産管財人Xは,Aの預金通帳の取引履歴についても確認したところ,平成22年10月20日に現金で1000万円の預入れがされたとの事実を確認することができ,Cの届け出た破産債権の債権者がBであることを示す資料も見当たらなかった。
 そこで,破産管財人Xは,平成24年12月10日の一般調査期日において,Cの届け出た破産債権を認め,これに対して他の破産債権者も異議を述べなかったため,当該破産債権は確定した。

〔設 問〕 以下の1から3までについては,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.上記事例において,Bは,Cの届け出た破産債権が確定した後に帰国し,本件破産手続が係属している事実及びAに対する上記貸付けについてCが自らの債権であるとして破産債権の届出をした事実を知った。Bは,Aに対して当該貸付けをしたのは自らであるとして,最後配当に関する除斥期間の経過前に,裁判所に対して破産債権の届出をすることができるかについて,論じなさい。
 また,Bが当該破産債権の届出ができるとした場合,破産管財人Xは,この届け出られた破産債権についていかなる認否をすべきかについて,論じなさい(なお,Bの破産債権届出の際に上記貸付けがBによるものであることを示す証拠が裁判所に提出されたことを前提とする。)。
2.上記事例において,Bは,最後配当の実施後に帰国し,Cが10%の最後配当(100万円)を受けたことを知った。そこで,Bは,Cに対し,不当利得返還請求権に基づき,Cが受領した配当金100万円の返還を求める訴えを提起し,Aに対する上記貸付けをしたのは自らであるから,Cが届け出た破産債権は,CではなくBに帰属すると主張した。BがCに対して当該主張をすることが許されるかについて,論じなさい。
3.上記事例において,Aは,本件破産手続開始の申立て前の平成24年8月初旬,Dから共同投資のための資金として500万円を現金で預かったが,自己の借入金の返済資金が不足したため,Dの承諾を得ることなく,当該預り金の全額を流用して自己の借入金の返済に充てた。Aとしては,保有していた投資商品Mについて同月中旬に1200万円の償還が予定されていたことから,その一部を流用した預り金に充てる心積りであり,そうすれば共同投資に支障が生じることはなく,Dに損害を与えることもないと考えていた。ところが,投資商品Mの投資先は,償還期日直前に突然倒産し,Aは1200万円の償還金を受け取ることができなくなった。その結果,Aは,上記預り金を投資資金に充てることも,Dに返還することもできなくなり,Dに対してその損害を賠償すべき債務を負うこととなった。
 Aは,本件破産手続開始及び免責許可の申立てをする際,Dに迷惑をかけたくないとの思いから,Dに対する損害賠償債務については,本件破産手続の結果にかかわらず支払おうと考え,債権者一覧表及び債権者名簿に記載しなかった。Dは,本件破産手続が開始したことを知っていたが,同手続外でAから支払を受けようと考え,Aに対する破産債権の届出をしなかった。
その後,本件破産手続は終結し,平成25年2月,Aに対する免責許可の決定が確定した。Aは,本件破産手続中に転職したこともあり,生活は楽ではなかったものの,Dに対する上記の思いから,同年3月,Dとの間で,AのDに対する500万円の損害賠償債務を目的とし,同債務を1年以内に返済することを内容とする準消費貸借契約を締結した。
 Dは,平成26年4月,Aに対し,上記準消費貸借契約に基づく債務の履行を求めたが,Aは,その当時,新しい職場での仕事がようやく軌道に乗り始めたところであり,Dに対する上記債務を返済すると経済的に困窮するおそれがあったことから,Dの請求に応じなかった。
 Dが,Aに対し,上記準消費貸借契約に基づき500万円の支払を求める訴えを提起し,Aが同契約上の義務を争った場合,Dの請求が認められるかについて,予想されるA及びDの主張を踏まえて,論じなさい。

倒産法初心者には,まず根拠条文を探すので一苦労です。

今回の問題も,条文を探すのにだいぶ時間がかかりました。

どうしたらいいんでしょうね。

もういっそのこと条文素読しますか。

そんなことより,この年の問題,なんとなく民訴っぽいにおいがしませんか?

既判力周りの議論を応用してっていう……。

まぁ,民訴の演習も久しくしていないので,もうそこらへんの議論も忘れてしまったんですがね。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Bは,破産債権の届出をすることができるか。Aの破産手続は,平成24年12月10日に一般調査期日が終了しているため,これ以降にBが破産債権を届け出るためには,破産法112条1項に該当する場合でなければすることができない。
 そこで,同項の該当性について検討すると,同項の趣旨は,破産手続の迅速な進行のため破産債権の届出期間の経過後は原則として破産債権の届出を認めないこととしつつ,破産債権者に原因なく破産債権の届出ができなかった場合にまでこれを認めないとすることは当該破産債権者の利益を著しく害するものであるから,その調和を図ったものである。そうすると,「その責めに帰することができない事由」とは,破産債権者の利益が優先される程度に帰責性がない場合をいい,破産債権者の過失なく破産手続開始の事実を知らず,一般調査期日を徒過した場合はこれにあたる
 これを本件についてみると,Aの破産手続開始当時に,Bは外国に滞在していたために同手続の開始を知るに至らなかったのであるが,Bが外国に滞在していたのは,仕事の都合上などのBの任意によらない理由によるものではなく,BがCとの関係が悪化したために自宅から出ていったという専ら私的な理由によるものである。また,BとCとは,Bの自宅において同居していたのであるから,関係の悪化を理由として別居を希望するのであれば,Cを出ていかせることもできたにもかかわらず,あえて自らが出ていったのであるから,Bの任意によってBの自宅を離れたものである。そして,別居に乗じてわざわざ外国に滞在することを任意でしている。そうすると,BがAの破産手続開始の通知を,自宅に届いた時点でBに何らかの形で知らせるような積極的な準備をしていない限り,Bには過失があるというべきである。しかし,当時自宅には,関係が悪化しているCしかおらず,そのような者に通知の到達を知らせるように手配することは期待できないのであって,Bにおいてもそれを容易に認識できるのであるから,やはり,Aの破産手続開始の事実を知らなかったことについて,Bに過失があったというべきである。したがって,Bには,「その責めに帰することができない事由」があったということはできないから,破産法112条1項に該当しない。
 よって,Bは,破産債権の届出をすることができない。
 2 仮に,Bが当該破産債権の届出ができるとした場合,Xはいかなる認否をすべきか。同債権については,既にCが自己の名義で届出をし,これが確定しているため,そのこととの関係で問題となる。
 破産債権が確定すると,これに係る破産債権者表の記載は,破産債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する(破産法124条3項)。これは,破産債権の確定がされた後に破産債権者表の記載に変更が生じると,迅速な進行が求められる破産手続の安定性が害されるため,これを争うことができないようにしたものである。したがって,真の破産債権者であっても,虚偽の届出がされた破産債権が確定した場合には,破産債権者表の記載について争うことはできないものと考える。
 これを本件についてみると,BはAに対して,Aの破産手続開始前に1000万円を貸し付けているから,これに係る1000万円の返還請求権は,「破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であり,「破産債権」にあたるため(破産法2条5項),Bは「破産債権者」である(破産法2条6項)。そして,同債権は,Cが既に届出を行い,一般調査期日において確定するに至っている。したがって,Bは,これを争うことはできない。
 よって,Xは,Bが届出をした同債権について認めないこととするべきである。
第2 設問2
 1 BのCに対する不当利得返還請求に係る主張は認められるか。前記のように破産債権の確定による破産債権者表の記載が「確定判決と同一の効力を有する」ことから,Bの主張が遮断されることとなるかが問題となる。
 ここで,既判力とは,確定判決の後訴に対する通用力ないし拘束力をいう。「確定判決」の効力には,既判力が含まれるから(民訴法114条1項),これと同一の効力を有するのであれば,破産債権者表の記載についても既判力があると考えるのが素直である。また,破産手続外であれば確定した破産債権について争うことができるとすれば,結局のところ,破産手続によって得られた結果が覆されることとなり,破産手続の安定性を害することとなるから,破産法124条3項の上記趣旨からしても,「確定判決と同一の効力」には,既判力が含まれると考える。
 そうすると,本件では,上記のようにBもAの破産手続における破産債権者であるから,破産債権者表の記載はBとの関係でも既判力を有するから,これと抵触する主張をすることはできない。そして,Aの破産手続における破産債権者表の記載では,本来BのAに対する1000万円の債権は,Cが債権者として確定しているから,この点について既判力が生じており,Bが債権者であるとの主張はこれと抵触する。したがって,Bの主張は認められないのが原則である。
 2 そうだとしても,本件では,真の債権者ではないCが,Bが海外に滞在していることを奇貨として,自己が債権者であると偽って債権の届出をしているから,既判力による主張の遮断を例外的に排斥することはできないか。
 既判力の生じる根拠は,その者に当該債権について届出を行い,これを破産管財人に認めさせ,異議のある破産債権者との間で争う機会があるという意味での手続保障があったことにある。したがって,このような機会がなかった者との関係では,そもそも既判力の生じる根拠が欠けるのであるから,既判力を生じさせるべきではない。もっとも,既判力が生じないとすることは,破産手続の安定性を害することとなるから,これとの調和の観点から,同趣旨のもと規定されたと考えられる,民訴法338条1項各号に該当する事由に比類する事由がある場合に限り,既判力を排斥することができると考える。
 これを本件についてみると,Aの破産手続における最後配当が実施されるまでの間,BはAに破産手続が開始されていたことを知らなかったのであるから,自己の破産債権の届出をする機会がなかったといえる。そして,同債権についてCが届出を行っているが,Cは自己名義により届出を行っており,Bの債権として届出をしたものではないから,これは代理人が必要な授権を欠いていたものと同視することができ,民訴法338条1項3号に規定する事由に比類する。したがって,Bは,破産債権者表の記載に生じた既判力を排斥することができる。
 よって,BはCに対して,上記主張をすることができる。
第3 設問3
 1 Aとしては,DのAに対する損害賠償請求権は,Aの免責許可決定により消滅しているから,これに係る債務を目的とした準消費貸借契約は認められないとの主張を行う。
 2 これに対して,Dは,まず,上記請求権が,非免責債権にあたるとの主張を行う。
 そこで,この点について検討すると,上記請求権が該当し得るのは,破産法253条1項2号及び6号である。
  ⑴ まず,2号の該当性から検討すると,同号の趣旨は,悪質な態様による不法行為によって損害が生じた者については,これを保護する要請が強いことから,破産手続によってもこれを免責することができないとしたものである。そこで,同号にいう「悪意」とは,単なる故意にとどまらず,積極的な害意があることを意味する
 これを本件についてみると,Aは,Dから預かっていた500万円を自己の借入金の返済に充てるという,専ら私的な用途に用いているため,Dに対する害意があるようにも思われる。しかし,その当時,Aは,近日中に500万円を大きく上回る1200万円の償還が予定されており,これを預り金に補てんする意図であったのであるから,Dの不利益にならないように配慮していたということができ,Dに対する害意があったということはできない。また,その当時において,Aは,投資先が倒産することを予見できなかったのであって,これを知りつつ借入金の返済に充てたものではないから,やはりDに対する害意はない。したがって,Aに「悪意」はあったということはできないから,2号には該当しない。
  ⑵ 次に,6号の該当性について検討すると,DはAに対する破産手続が開始したことを知っているため,「当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者」にあたり,6号から除外される。
  ⑶ したがって,Dの債権が非免責債権にあたるとするDの上記主張は認められない。
 3⑴ また,Dとしては,免責の効果として,債権が消滅するものではないから,Dの上記債権に係る債務を目的とした準消費貸借契約の締結も有効であると主張する。
 そこで,この点について検討すると,免責制度の趣旨は,破産者が破産手続によって債務を整理し,更生する機会を与えるものである。そうすると,破産者に対して当該債権の強制執行ができなくなれば,破産者に対して債権の取立てがされることはなくなり,更生する機会が与えられるのであるから,その限りで免責の目的を達成することができる。したがって,免責の効果として債務の消滅まで認める必要はない
 そうすると,Dの上記債権は,免責の対象とはなるが,免責許可決定によっても,当該債権自体が消滅することとはならない。したがって,これに係る債務を目的として締結した準消費貸借契約は有効とされる余地がある。
  ⑵ これに対して,Aとしては,準消費貸借契約の締結がAの任意によるものではないから,同契約は無効であると主張する。
 そこで,この点について検討すると,免責の効果として債務の消滅まではされないことから,債務自体は残存するものの,これを履行することを強制されれば事実上免責の効果を潜脱して債権の回収が図れることとなり,免責制度の目的が達成されなくなる。そこで,破産者が免責許可決定後に債務について処分したとしても,それが破産者の任意によらない限りは,有効とはならないと考えるべきである。
 これを本件についてみると,Aは,自己が500万円を横領したことにより,Dに対して損害賠償債務を負うこととなったため,自己の責任によりDに迷惑を掛けたくないとの思いから,準消費貸借契約を締結するに至っているため,この点をみればAの任意による処分であるともみられる。しかし,当時,Aは破産手続中に転職したことから,生活が楽ではなく,そのような中で500万円という大金の処分を行うのには,相当の覚悟が必要であって,半ば強迫観念に駆られるような状態で同契約を締結するに至ったのではないかとも考えられる。そして,Dが上記契約に基づく債務の履行を求めたころには,経済的に困窮することとなるとの理由から,これを拒んでおり,さらに経済的に困窮していたとみられる同契約締結時には,Aの真意としては500万円の支払をできればしたくはないと考えていたことを推認させる。これらの事情からすれば,同契約の締結は,Aの任意に基づくものであったということはできないのであるから,同契約は無効である。
 3 以上から,Dの請求は認められない。

以 上


これ,もしかして,長すぎて答案に書ききれないのでは……。
2019-01-21(Mon)

【新司】倒産法平成27年第2問

続いて第2問です。

頑張ります。

≪問題≫
〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 食品製造会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は,平成26年2月頃,販売する製品に虫の死がいが入っていたことが発見されたことから,生産を一時停止し,販売した製品を回収しなければならない事態となり,同年3月末の借入債務の返済及び仕入代金の支払のために発行した約束手形の決済等ができない見通しとなった。そこで,A社は,同月25日に再生手続開始の申立てをしたところ,同日,監督命令を受け,同年4月2日,再生手続開始の決定を受けた。

〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社は,再生手続開始の決定時において,現に稼働している工場及びその敷地(以下,まとめて「工場不動産」という。)並びに使用していない旧工場の跡地(以下「本件土地」という。)を所有していた。なお,工場不動産の評価額は3000万円,本件土地の評価額は5000万円であり,本問を通じて,各評価額については争いがないものとする。
 A社は,B銀行からの2億円の借入債務を被担保債権として,同銀行のために,工場不動産及び本件土地に第1順位の抵当権(共同抵当)を設定し,その登記をするとともに,金融業者C社からの1000万円の借入債務を被担保債権として,同社のために,本件土地に第2順位の抵当権を設定し,その登記をした。そして,これらの抵当権は再生手続開始の決定時において存続していた。
 A社の事業計画においては,本件土地は処分する一方,工場不動産は確保して事業を継続することとされており,本件土地の売却代金及び事業収益を再生債権の弁済等(別除権協定に基づく債務の弁済を含む。)に充てることが予定されていた。A社は,その計画の実現のため,B銀行との間で別除権協定を締結し,次のとおり合意した。

1 A社は,B銀行に対し,本件土地及び工場不動産の評価額の合計に相当する8000万円を次のとおり分割して支払う。
① 再生計画認可決定の確定後1か月以内に500万円
② 同確定後6か月以内に5000万円
③ 同確定後1年以内に500万円
④ 同確定後2年以内に500万円
⑤ 同確定後3年以内に500万円
⑥ 同確定後4年以内に500万円
⑦ 同確定後5年以内に500万円
2 1の各支払をA社が遅滞しない限り,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設定された抵当権を実行しない。
3 A社が1の各支払を遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設定された抵当権を全て抹消する。ただし,1の各支払の完了前であっても,1①及び②の支払が遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地について設定された抵当権を抹消する。

 なお,A社は,本件土地の売却代金を上記1②の5000万円の支払に充てることを予定しており,上記別除権協定の締結に先立ち,監督委員の同意を得て,D社との間で,本件土地に設定された各抵当権の抹消を条件に本件土地を5000万円で売買する契約を結んでいた。このため,A社及びB銀行は,上記3ただし書の規定を設け,上記1①及び②の支払が遅滞なく完了した場合には,本件土地について設定された抵当権を抹消することとしたものである。
 一方,A社は,C社に対しては,本件土地の価値に余剰がないことを考慮し,少額の支払と引換えに抵当権を抹消することを要請したが,C社はこれに応じなかった。そのため,A社の再生計画は平成26年10月に認可されたにもかかわらず,C社の抵当権に関しては,抹消に関する合意が成立していなかった。
 A社は,C社の抵当権を抹消することができないとすれば,B銀行との別除権協定に基づく債務を履行することができないために工場不動産について抵当権が実行され,その結果,再生計画の履行ができなくなるのではないかと考え,本件土地について担保権消滅の許可の申立てをすることとした。なお,担保権消滅の許可の申立てが認められた場合に必要となる資金については,D社から融資を受け,売買代金と相殺する予定であった。
 この場合,A社による担保権消滅の許可の申立てが認められるかどうかについて,論じなさい。
2.A社の再生計画案は可決され,平成26年10月31日に再生計画認可の決定がなされ,その認可決定は,同年11月28日に確定した。A社の再生計画の権利変更の定めは,確定再生債権の10パーセントを5回に均等分割し,これを平成27年から平成31年まで各年3月末日限り支払い,その余は再生計画認可の決定の確定時に免除を受けるという内容のものであった。
 同認可の決定の確定後,E及びFは,A社に対し,以下のとおり,A社に対する債権の弁済を求めた。
 Eは,平成20年創業の個人事業者であり,同年からA社に食品原料の納入を行っており(継続的に納入する義務を負っていたわけではないものとする。),A社の再生手続開始の決定当時,A社に対し,2か月分(平成26年2月分及び同年3月分。ただし,同月20日までに納入済みであった。)の未払売掛金債権100万円(同年2月分として60万円,同年3月分として40万円)を有していた。A社及びEは,同年2月のA社製品への虫混入事件の発覚以降,A社の要請に基づき,債務の繰延べに関する協議を行っており,A社が再生手続開始の申立てをした時点では,合意内容はほぼ固まりつつあった。ところが,A社が同申立てをしたことから,協議は中断され,再生手続の開始に伴い,Eに対して,A社の再生手続開始の決定に関する通知がされた。Eは,同年2月分の売掛金債権については,再生手続において,債権届出を行ったが,同年3月分の売掛金債権(以下「本件売掛金債権」という。)については,もともとの弁済期が再生手続開始決定後の同年4月15日であったため,再生手続の対象にならないと考え,届出をしなかった。A社も,食品原料の仕入先をEから他の事業者に切り替えていたこともあり,本件売掛金債権については失念し,認否書に記載しなかった。そのため,Eの本件売掛金債権は,再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利として明示されなかった。その後,Eは,平成27年1月,A社に対し,本件売掛金債権40万円の支払を求めた。
 Fは消費者であり,A社製造の食品をインターネット経由で継続的に購入していたところ,平成26年3月初旬,原因不明の発しんが出て病院で治療を受けた。その後,同年12月,A社が製造した食品を摂取した消費者に発しん等の健康被害が複数発生しているとの報道がされ,検査の結果,Fに生じた発しんもA社の食品を摂取したことが原因であることが判明した。そこで,Fは,A社に対し,発しんの治療費等を含む損害の賠償として100万円の支払を求めたが,A社は,Fの主張する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)は,再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利として明示されていないために,Fの求めには応じられないと回答してきた。このため,Fは,平成27年1月,A社に対し,本件損害賠償請求権に基づき,100万円の支払を求めた。
 上記事例において,Eの有する本件売掛金債権及びFの有する本件損害賠償請求権が民事再生法上どのように取り扱われるかについて,論じなさい。


え,まって。

長くね。

問題文に2頁丸々使ってるじゃん。

≪答案≫
第1 設問1
 1 A社による担保権消滅の許可の申立て(民再法148条1項)は認められるか。
 2⑴ 「再生債務者」であるA社の「財産」である本件土地には,B銀行及びC社による「抵当権」が設定されているから,「再生手続の時において再生債務者の財産につき第五十三条第一項に規定する担保権……が存する場合」にあたる。
  ⑵ それでは,本件土地は「再生債務者の事業の継続に欠くことのできないもの」にあたるか。本件土地は,D社に対して売却されることが予定されており,A社の今後の事業には用いられないものとみられることから,A社の事業の継続に不可欠であるということができるかが問題となる。
 民再法148条1項の趣旨は,再生手続外での担保権の実行により重要な財産が売却されることで,事業の継続が不可能となることは,再生債務者の再建を困難にさせ,ひいては再生債権者の一般の利益を損なうこととなるから,当該目的物の上に存する担保権を全て消滅させ,再生債務者が事業で使用収益できるようにした点にある。もっとも,担保権の消滅は,担保権者の担保権実行時期の選択権や担保権の不可分性を制限するものであるから,事業の継続に不可欠である場合に限って担保権の消滅を認めたものである。そうすると,「再生債務者の事業の継続に欠くことのできないもの」とは,担保権者の不利益を考慮してもなお債権者の一般の利益に資するための事業の継続のため必要となる目的物をいう。そして,債権者の一般の利益を目的として判断する以上,当該目的物自体が事業に用いられるか否かは重要ではなく,事業の継続を促進させる効用を有するものであれば足りる
 これを本件についてみると,本件土地については,D社との間で,設定された抵当権の抹消を条件として5000万円で売却することが予定されている。そうすると,抵当権の抹消がされない限りは,A社は本件土地を売却することができず,D社から5000万円の支払を受けることができない。ここで支払を受けた5000万円は,A社に対する別除権協定における弁済計画のうち,再生計画認可決定後6か月以内に支払う5000万円に充てられるものである。これが支払われた場合には,B銀行は,工場不動産に設定した抵当権を抹消するものとされている。工場不動産は,A社が事業を継続する場所として使用することを予定している。A社は,食品製造会社であるから,食品の製造を行うことによって利益を上げ,これを債権者に対する弁済資金とするほかない。したがって,工場不動産をA社の下で維持することが再生債権者の一般の利益に資することとなる。そうすると,工場不動産についてB銀行による抵当権が実行されるのを阻止するためには,別除権協定に定められた弁済を行うしかなく,5000万円の資金を本件土地の売却によってしか調達することができないA社としては,D社の条件に見合うように本件土地に設定された抵当権を抹消することが再生債権者の一般の利益に資することとなる。一方で,本件土地の評価額は5000万円であるところ,これに設定されたB銀行の有する第1抵当権は2億円であるから,この段階で既にオーバーローンとなっており,C社が有する第2抵当権は実行してもほぼ無価値であったということができる。したがって,本件土地に設定された抵当権を抹消することによるC社の不利益は少ないと考えられる。以上からすると,本件土地は事業の継続を促進させる効用を有し,かつ,担保権者の不利益を考慮してもなお債権者の一般の利益に資するための事業の継続のため必要となるものということができるから,「再生債権者の事業の継続に欠くことのできないもの」にあたる。
 3 よって,A社による担保権消滅の許可の申立ては,その要件を充足するから,認められる。
第2 設問2
 1 Eの有する本件売掛金債権について
 本件売掛金債権は,「再生債権」(民再法84条1項)であるから,これを再生手続において行使するためには,原則として再生計画によらなければならない(民再法85条1項)。そして,再生計画に定めがない再生債権は,「この法律の規定によって認められた権利」でない限り,免責される(民再法178条1項)。本件売掛債権が,「第百一条第三項に規定する場合において,再生債務者が同項の規定による記載をしなかった再生債権」(民再法181条1項3号)にあたる場合には,「この法律の規定によって認められた権利」にあたるから,免責されない。
 そこで,本件売掛金債権が民再法101条3項にあたる場合か否かについて検討すると,本件売掛金債権は「届出がされていない再生債権」である。「再生債務者」であるA社は,本件売掛金債権について,失念しているが,これをもって「知っている場合」にあたるかどうかが問題となる。
 民再法101条3項の趣旨は,再生手続が再生債権者の一般の利益のために行われるものであるから,届出がされていない債権であっても,再生債務者において知っている債権がある場合には,これを再生手続に組み込まなければ,当該再生債権者を不利益に扱うこととなり,再生手続の目的に反するから,再生手続に組み込むことを求めたものである。もっとも,自己の債権を届け出なかった債権者の側にも落ち度があることからすると,再生債務者に厳格に債権の調査を要求することは酷である。したがって,「知っている場合」とは,認否書を作成する手続において,再生債務者が現実にその債権の存在を知っていた場合をいう
 これを本件についてみると,A社は,認否書を作成する手続の間,本件売掛金債権について失念しており,現実にその債権の存在をしっていたものとは認められないから,「知っている場合」にはあたらない。したがって,本件売掛金債権は,「第百一条第三項に規定する場合において,再生債務者が同項の規定による記載をしなかった再生債権」にはあたらないから,「この法律によって認められた権利」ではない。
 したがって,本件売掛金債権は,免責の対象となる。
 2 Fの有する本件損害賠償請求権について
 本件損害賠償請求権も,「再生債権」である。そして,本件損害賠償請求権は再生債権者表に記載されていないから,「この法律によって認められた権利」にあたらない限り,免責の対象となる。本件損害賠償請求権が,「再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができなかった再生債権で,その事由が第九十五条第四項に規定する決定前に消滅しなかったもの」(民再法181条1項1号)にあたる場合には,「この法律によって認められた権利」にあたるから,免責されない。
 そこで,「責めに帰することができない事由」の意義について検討すると,民再法181条1項1号は同法95条4号に規定する決定前に消滅しなかったものについて免責の例外事由としている。民再法95条4項の趣旨は,債権者の責めに帰することができない事由によって届出をすることができない場合には,期間遵守を求めることができないから,決議に付す旨の決定がされるまでであれば追完を認めることとしたものである。したがって,「責めに帰することができない事由」とは,債権者の意思によっては届出期間の遵守ができない場合をいう
 これを本件についてみると,Fの発しんは,症状が出た当初は原因が不明であり,加害者を特定することができない状態にあったのであり,その後,平成26年12月になってようやく原因がA社の食品を摂取したことにあることが判明し,加害者がA社であると特定するに至っている。そうすると,損害賠償請求権は加害者が特定されなければこれを行使することができないから,平成26年12月まではFの意思によってはこれを行使することができなかったということができる。そして,この時点では,すでにA社の再生計画の認可決定が確定した段階であるから,Fは,到底届出期間を遵守することができなかったものといえる。したがって,Fの意思によっては本件損害賠償請求権について届出期間を遵守することはできなかったのであるから,「責めに帰することができない事由」にあたる。そして,この事由は付議決定時までに消滅していない。よって,本件損害賠償請求権は,「この法律によって認められた権利」であるから,変更の対象となる。

以 上


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2019-01-21(Mon)

【新司】倒産法平成27年第1問

冷静に考えてですよ?

新司本番まで4か月を切っているわけです。

しかし倒産法の勉強はまだ始まったばかりです。

破産法も民再法も条文は多いし判例も難しいものばかりです。

どう頑張っても間に合わなくないですか?

残りの期間倒産法に全振りしますか?

いいえ,そんなことはできません。

予備で刑法,刑訴でEをたたき出した私には,そんなことはできるわけがありません。

これまで新司に受かってきた先輩方は,この危難をどうやって乗り越えてきたのか。

あっ,もっと早くからやっていたんですね。

そうですよね。うん。分かります。。。

≪問題≫
〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,平成8年に設立された機械部品の製造販売を業とする会社であり,近隣の工場に製造した工作機械の部品等を卸していた。
 A社は,平成26年初め頃からの急激な円安により原材料費が急騰したため,同年8月頃から急速に資金繰りを悪化させ,同年11月末には支払不能に陥った。そこで,A社は,同年12月10日,債権者及び売掛金に弁護士受任通知を発して支払を停止した上,同月15日,破産手続開始の申立てをしたところ,同月17日,破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。

〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.上記事例において,XがA社の売掛金台帳を調査したところ,部品納入先であるBに対して,平成26年10月1日から同年11月末日分までの納入分に係る合計216万円の売掛債権(以下「本件売掛債権」という。)が未収となっていることが判明した。そこで,Xは,Bに対し,平成27年1月末日までに本件売掛債権216万円を支払うよう催告した。
 上記催告を受けたBは,Xに対し,「本件売掛債権については,平成26年12月12日,同月11日付けの確定日付のある証書により,A社からY社に譲渡された旨の債権譲渡通知を受領したため,同月15日,Y社に対して全額を支払った。」と説明した。
 そこで,Xが更に調査をしたところ,A社とY社との間においては,平成24年5月10日にA社がY社から設備投資のため1000万円の融資を受けるに当たり,A社のBに対する売掛債権について,同日,次のとおりの債権譲渡契約が締結されていることが判明した。

(債権譲渡)
1 A社は,A社がY社に対して負担する一切の債務を担保するため,A社がBに対して現に有する売掛債権及び将来取得する売掛債権をY社に包括的に譲り渡す。
(効力発生時期)
2 前項の譲渡の効力は,A社が,支払を停止したとき又は破産手続開始の申立てをしたときにその効力を生ずる。

 また,Y社は,上記債権譲渡契約の締結に当たり,将来の債権譲渡通知のために,A社から委任状等の必要書類をあらかじめ受領しており,Bが平成26年12月12日に受領した債権譲渡通知は,A社が同月10日に支払を停止したため,上記債権譲渡の効力が発生したとして,Y社がA社を代理して行ったものであることも判明した。
 この調査結果を踏まえ,Xは,Y社に対し,否認権を行使することにより,Y社がBから受領した本件売掛債権に係る売掛金216万円の返還を求めて訴えを提起しようと考えている。この場合に,Xの否認権の行使を基礎付ける法律構成としてどのようなものが考えられるか,またXの否認権の行使が認められるかどうかについて,予想されるY社の反論を踏まえて,論じなさい。
2.A社は,破産手続開始前,製造した部品を納入するため,トラック1台(以下「本件車両」といい,道路運送車両法第5条第1項の適用を受けるものとする。)を使用しており,破産手続開始時において,同車両はA社の占有下にあったが,自動車登録ファイルに登録された所有者は,自動車販売会社であるC社であった。そこで,Xは,C社に対し,登録名義の変更を求めたが,逆に,C社の系列信販会社であるZ社から,本件車両を同社に引き渡すよう求められた。
 そこで,Xが調査をしたところ,本件車両は,平成25年10月10日にC社がA社に対し代金400万円で売却したものであり,その際,C社に対して頭金64万円が支払われ,残代金である336万円(以下「本件残代金」という。)の支払等については,同日,A社,C社及びZ社の三者間において,次のとおりの契約が締結されている事実が判明した。

(本件残代金の支払等)
1 A社は,Z社に対し,本件残代金336万円を自己に代わってC社に立替払することを委託し,本件残代金に手数料である24万円を加算した360万円を平成25年10月から平成27年9月までの各月末日限り24回に分割してZ社に支払う(以下,このA社の支払債務を「本件立替払金等債務」という。)。
(所有権の留保)
2 本件車両の所有権は,C社のA社に対する本件残代金債権を担保するために,C社に留保する。
(留保所有権の移転)
3 A社は,登録名義のいかんを問わず,C社に留保されている本件車両の所有権が,Z社がC社に本件残代金を立替払することによってZ社に移転し,A社が本件立替払金等債務を完済するまでZ社に留保されることを承諾する。
(本件車両による弁済)
4⑴ A社が本件立替払金等債務の支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を失い,その場合,同社は,Z社に対する弁済のため,直ちに本件車両の保管場所を明らかにし,本件車両をZ社に引き渡す。
 ⑵ Z社は,本件車両の引渡しを受けた場合には,その評価額をもって,本件立替払金等債務の弁済に充当することができる。

 Xが更に調査をした結果,Z社が,平成25年10月15日,上記契約に基づき,C社に対し,本件残代金336万円を立替払していること,A社が,本件立替払金等債務について,平成26年11月末日分の支払を怠っていることが判明した。Z社は,Xに対して,本件車両の引渡しを求める法的根拠として上記契約の4⑴の条項を摘示した上,A社が,本件立替払金等債務について,同年11月末日分の支払を怠ったため,当然に期限の利益を失ったと主張している。
 以上の調査結果を踏まえ,Xとして,Z社からの本件車両の引渡請求に対していかなる主張をすることが考えられるか,またその主張が認められるかどうかについて,予想されるZ社の反論を踏まえて,論じなさい。

(参照条文)道路運送車両法
第5条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は,登録を受けなければ,第三者に対抗することができない。
2 (略)


えぇ……(ドン引き)

難しすぎないですか……

譲渡担保に所有権留保……

鬼畜ぅ!!!!!!!!!!!!

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Xの否認権の行使を基礎付ける法律構成としては,まず,A社がY社との間でした債権譲渡契約(以下「本件債権譲渡契約」という。)について偏頗行為否認(破産法162条1項1号)をすることが考えられる。
  ⑵ Y社からは,本件債権譲渡契約の締結は,A社が「支払不能になった後……にした行為」にはあたらないとの反論が想定される。本件債権譲渡契約は,A社が支払不能に陥った平成26年11月末よりも2年以上前に締結されたものであるから,「支払不能になった後……にした行為」にはあたらない。
  ⑶ そうだとしても,Xとしては,本件債権譲渡契約は,その効力発生時期をA社の支払停止又は破産手続開始申立ての時にかからしめており,A社の危機時期が到来した段階でY社の優先的地位を公示する手法をとっているから,偏頗行為否認を潜脱するものであって,否認の対象となる旨主張する。
 破産法162条1項1号の趣旨は,債務者に支払停止等があった時以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし,危機時期の到来後に行われた債務者による担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより,債権者間の平等及び破産財団の充実を図ろうとするものである
 債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は,その契約締結行為自体は危機時期前に行われるものであるが,契約当事者は,その契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ,これを停止条件とすることにより,危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって,これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図し,これを目的として,当該契約を締結しているものである。このような契約の内容,その目的等に鑑みると,上記契約は,破産法162条1項1号の規定の趣旨に反し,その実効性を失わせるものであって,その契約内容を実質的にみれば,上記契約に係る債権譲渡は,債務者に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであり,上記規定に基づく否認権行使の対象となると考える(※1)
 これを本件債権譲渡契約についてみると,その内容は,A社の危機時期において初めてY社に譲渡担保権者としての優越的地位を取得させる結果となるものであり,その目的は,それまでの一般債権者の責任財産であった財産をそこから逸出させることにあるということができる。そうすると,本件債権譲渡契約に係る債権譲渡は,実質的には,A社に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものである。したがって,本件債権譲渡契約については,破産法162条1項1号による偏頗行為否認を行使することができる。
 2⑴ また,Xの否認権の行使を基礎付ける法律構成としては,Y社からBに対してした債権譲渡通知(以下「本件債権譲渡通知」という。)について,対抗要件否認(破産法164条1項)をすることが考えられる。
  ⑵ 債権譲渡の対抗要件は債権譲渡通知を発することであるから(民法467条1項),平成26年12月10日のA社の支払停止後の同月12日にされた本件債権譲渡通知は,「支払の停止等があった後権利の……移転……をもって第三者に対抗するために必要な行為……をした場合」にあたる。
  ⑶ 「その行為が権利の……移転……があった日から十五日を経過した後」の起算点について,Xとしては,原因行為である本件債権譲渡契約が締結された日である平成24年5月10日との主張を行う。これによれば,本件債権譲渡通知は,本件債権譲渡契約締結から15日を経過した平成26年12月12日にされているため,対抗要件否認の要件が満たされる。
 これに対して,Y社からは,同要件の起算点について,当事者間における権利移転の効果を生じた日である本件債権譲渡契約に係る債権譲渡がされた平成26年12月10日との主張を行う。これによれば,15日を経過していないため,対抗要件否認は要件を満たさないこととなる。
 そこで,同要件の起算点について検討すると,破産法164条1項の趣旨は,対抗要件の充足行為も,本来は,破産法160条又は162条によって否認の対象となりうべきものであるが,原因行為に否認の理由がない限り,できるだけ対抗要件を具備させることとし,一定の要件を満たす場合にのみ,特にこれを否認しうることとしたものである。したがって,対抗要件否認の行使し得る場面は限定されるべきであるから,同要件の起算点は,権利移転の原因行為がされた日ではなく,当事者間における権利移転の効果を生じた日であると考える。
 そうすると,上記Y社の反論が妥当するから,Xは,本件債権譲渡通知を否認することはできない。
第2 設問2
 1 Xは,Z社が本件車両について自動車登録ファイルの登録を行っていないことを理由に,Z社からの本件車両の引渡請求を拒むことが考えられる。
 2 A社,C社及びZ社の間では,Z社がC社に本件残代金を立替払することによって本件車両の所有権がZ社に移転し,A社が本件立替払金等債務を完済するまでZ社に留保されることとされているから,Z社は本件車両について所有権留保を有する。所有権留保は,所有権の対象となる目的物に係る債権を担保するものであるから,担保権の一種であって,破産手続上は別除権(破産法2条9項)として扱われる。そして,破産管財人は,破産者の法的地位を受け継ぐ立場に立つ一方,破産債権者の利益を代表する地位にも立つから,双方の立場から独立した第三者的地位を有する。したがって,所有権留保の被担保債権にかかる物権変動について対抗要件の具備が必要である場合には,対抗要件を具備しない限り,所有権留保に基づく別除権を破産管財人に対して行使することはできない。(※2)(※3)
 3 そして,Xとしては,本件車両に付された所有権留保の被担保債権は,Z社がA社に対して有する本件立替払金等債務に係る債権であるから,別除権として行使し得るのは,本件立替払金等債務に係る債権を担保するために留保された本件車両の所有権であって,これを行使するには本件車両について登録を具備している必要があるが,Z社はこれを具備していないから,Z社からの引渡請求は拒めると主張する。
 これに対して,Z社としては,本件車両に付された所有権留保の被担保債権は,Z社が弁済による代位によって取得した原債権である本件残代金債権であるから,別除権として行使し得るのは,本件残代金債権を担保するためのC社の留保所有権であって,C社は本件車両について登録を具備しているから,Z社からの引渡請求をXは拒めないと反論する。
 そこで,この点について検討すると,本件残代金債権は336万円であるのに対し,本件立替払金債務に係る債権は360万円となっている。このとき,本件車両の留保所有権によって担保されるのが,本件残代金債権であるとすると,Z社は,336万円の範囲でしか担保されるにすぎないこととなる。これは,360万円全額の回収を前提としているZ社の合理的意思に反すると考えられる。したがって,A社,C社及びZ社の間では,Z社が立替払をした後に取得する留保所有権によって担保される債権は,本件立替払金等債務に係る債権であるという前提で合意がされていたものと考えられる。
 よって,Z社が行使する別除権の目的である留保所有権によって担保されるのは本件立替払金債務に係る債権であるから,Z社が本件車両について登録を具備しない限り,Z社はこれをXに対抗することができない。そして,Z社は,本件車両について登録を具備していないから,Xは,Z社からの引渡請求を拒むことができる。

以 上


(※1)「破産法72条2号[現行破産法162条1項1号]は,破産者が支払停止又は破産の申立て(以下「支払停止等」という。)があった後にした担保の供与,債務の消滅に関する行為その他破産債権者を害する行為を否認の対象として規定している。その趣旨は,債務者に支払停止等があった時以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし,危機時期の到来後に行われた債務者による上記担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより,債権者間の平等及び破産財団の充実を図ろうとするものである。」「債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は,その契約締結行為自体は危機時期前に行われるものであるが,契約当事者は,その契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ,これを停止条件とすることにより,危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって,これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図し,これを目的として,当該契約を締結しているものである。」「上記契約の内容,その目的等にかんがみると,上記契約は,破産法72条2号の規定の趣旨に反し,その実効性を失わせるものであって,その契約内容を実質的にみれば,上記契約に係る債権譲渡は,債務者に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであり,上記規定に基づく否認権行使の対象となると解するのが相当である。」最判平成16年7月16日民集58巻5号1744頁
(※2)採点実感(リンクはこちら)では,「登記・登録が必要な物権変動については,破産手続開始前に登記・登録を具備していなければ,破産手続との関係では,破産管財人に対してはその効力を主張することができないこと(破産管財人の第三者性)を指摘する必要がある。」ということで,破産管財人の第三者性を論じることを要求しています。
 一方で,山本和彦ほか『倒産法概説第2版補訂版』372頁では,「対抗要件の要否については,破産債権者が破産手続開始によって強制執行ができなくなり,対抗関係に持ち込む機会を失うことに配慮すれば,破産管財人の法的地位の議論にかかわらず,当然に対抗関係が生じると解される」と指摘されています。この見解によれば,本問でも破産管財人の第三者性について論じる必要はないような気もするのですが,もう全く分かりません
(※3)最判平成22年6月4日民集64巻4号1107頁で「再生手続が開始した場合において再生債権者の財産について特定の担保権を有する者の別除権の行使が認められるためには,個別の権利行使が禁止される一般債権者と再生手続によらないで別除権を行使することができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から,原則として再生手続開始の時点で当該特定の担保権につき登記,登録等を具備している必要がある」と指摘されていることとの関係も,全然分かっていません


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2019-01-18(Fri)

【新司】倒産法平成28年第2問

前の記事で遊びたいとか書きましたけど,

よくよく考えたら,年始の1月1日から北海道に思いっきり旅行に行っていました。

今回は撮りではなく乗り中心でしたが,

3月末で廃止になる夕張支線や,

来年度で廃止が発表されたばかりの札沼線の北海道医療大学以北なんかも乗れましたので,

なかなか充実していました。

また暇があれば記事にします。



ところで,選択科目なんですが,他の科目と異なる点は,

試験時間が3時間

問題が2問

鬼のような小問の数

といったところ。

3つ目は,他の科目の問題まで見ていないので,あくまで倒産法での話なんですが。

しかし,いや,どうしたのって感じです。

なんで選択科目なんかあるんですかね。

ただでさえ基本7科目だけで手いっぱいなのに。

無理です。

≪問題≫
〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 X社は,平成9年に摂理つされた建設資材の輸入・販売を業とする株式会社である。Aは,X社の代表取締役であり,同社に自己資金を貸し付け,これを運転資金に充てていた。Y社は,X社の発行済株式の70パーセントを有するいわゆる支配株主であり,同社に運転資金も融通していた。Bは,Y社の代表取締役であり,同社の発行済株式の全てを有している。Z社は,同じくBが代表取締役を務める建設会社であり,X社の得意先である。X社とZ社との取引は,Bの主導によって開始されたものであり,X社のZ社に対する平成25年3月末期の売上は,X社の総売上高の30パーセント余りを占めていた。
 X社は,平成25年末頃から始まった円安の影響を受けて業績不振に陥っていたところ,平成26年3月に入ると,Z社がBの放漫経営により破綻したため,同社に対する売掛金の回収ができなくなった。その結果,X社は,同月末日の資金繰りに窮することとなった。
 X社は,以上のような経緯から,破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとして,平成26年3月20日に再生手続開始の申立てをした。同日,X社について監督命令が発せられ,弁護士Kが監督委員に選任された。
 平成26年3月28日,X社について再生手続開始の決定がされた。

〔設 問〕
1.X社は,Z社に代わる新たな得意先を獲得する見込みの下で事業計画を作成し,この事業計画が実現可能であり,計画弁済の履行が可能であると見込まれたことから,平成26年7月7日,裁判所に対し,再生債権者の権利の変更に関する定めとして下記の条項のある再生計画案(以下「本件再生計画案」という。)を提出した。
     記

1 確定再生債権額
 元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金
     合計2億0121万7591円
 再生手続開始決定日以降の利息及び遅延損害金
     合計32万6055円及び額未定
 なお,未確定の再生債権及び不足額が確定していない別除権付債権はない。
2 権利変更の一般的基準
 ① 全ての確定再生債権につき,再生手続開始決定日以降の利息及び遅延損害金は,再生計画の認可の決定が確定した時(以下「認可決定確定時」という。)に全額の免除を受ける。
 ② 確定再生債権の元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額は,次の③及び④の確定再生債権を除き,10万円までの部分は免除を受けず,10万円を超える部分は認可決定確定時にその80パーセントの免除を受ける。
 ③ Aの確定再生債権のうち,元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額は,認可決定確定時にその全額の免除を受ける。
 ④ Y社の確定再生債権のうち,元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額は,10万円までの部分は免除を受けず,10万円を超える部分は認可決定確定時にその85パーセントの免除を受ける。
3 弁済方法
 権利変更後の金額のうち,10万円までの部分は,再生計画の認可の決定が確定した日から1か月を経過した日の属する月の末日までに支払い,その余の部分は,10回に均等分割して平成27年から平成36年まで毎年4月末日限り支払う。
4 個別条項
  (略)


 本件再生計画案の提出を受けた裁判所は,これを決議に付する旨の決定をすることができるか。本件再生計画案2①から④までの各条項について,民事再生法上の問題点を踏まえて,論じなさい。
 なお,各条項はいずれも民事再生法第174条第2項第4号には該当しないこと,Aは2③の免除に同意していること,Y社は2④の免除には同意していないことを前提とする。
2.本件再生計画案は,平成26年7月14日,決議に付する旨の決定がされ,同年9月3日に開催された債権者集会において可決された(以下,可決された本件再生計画案を「本件再生計画」という。)。同日,本件再生計画について認可決定がされ,同月29日に確定した。
 X社は,本件再生計画の認可決定が確定した後も,事業計画で見込んでいたZ社に代わる新たな得意先の獲得ができなかったことなどから,事業計画どおりには業績を上げることができなかった。そのため,X社は,平成27年4月末日までの本件再生計画に基づく弁済は何とか行ったものもの(総額520万4000円),平成28年1月末日原座い,同年4月末日の弁済の見込みは立たなかった。とりわけ,最も大口の債権を有するG銀行(確定再生債権額8000万円)に対する弁済資金の確保は困難であることが判明した。
 ⑴ 再生計画認可後の再生手続においてX社及びKが果たすべき役割について述べた上で,X社として採り得る方策を論じなさい。
 ⑵ G銀行は,本件再生計画に基づき,平成27年4月末日までに合計169万8000円の弁済を受けたものの,結局,平成28年4月末日に支払われるべき159万8000円の弁済は受けられなかった,この場合にG銀行として採り得る方策を論じなさい。


破産法はまだ何とかなりそうな気がするんですが,

民再法については問題となる条文を見つける段階,

つまり問題の所在がどこなのかを発見する段階から躓くことがあるので,

ちゃんと勉強しないといけないなあと思いながらも,

本番まであと4か月くらいしかありません。

間に合うのかなあ……。

≪答案≫
第1 設問1
 裁判所が再生計画案を決議に付する旨の決定をするためには,民再法169条1項各号に該当する事由がないことが必要である。このうち,同項3号は,同法174条2項各号の要件のいずれかに該当するものと認められるときを掲げているところ,同法174条2項1号は,再生計画が法律の規定に違反しているときを掲げている。したがって,本件再生計画案が,民再法の規定に違反する場合には,裁判所は本件再生計画案を決議に付する旨の決定をすることができない。
 本件再生計画案2の各条項は,いずれも権利変更を行うものであるから,その内容は再生債権者の間で平等であることが求められる(民再法155条1項本文)。
 そこで,各条項について検討すると,①は,全ての確定再生債権の,再生手続開始決定日以降の利息及び遅延損害金を一律に免除するというものであるから,全額を免除するものとしていない他の債権との間で区別を設けるものである。もっとも,利息部分は「再生手続開始後の利息の請求権」(同法84条2項1号),遅延損害金部分は「再生手続開始後の不履行による損害賠償……請求権」(同項2号)であるから,「第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定め」をするものであって,許される(同法155条1項ただし書)。
 ②は,10万円までの部分は免除を受けず,10万円を超える部分は80パーセントを免除するという形で,免除をする割合について区別を設けるものである。もっとも,再生債権の全体額が2億円を超えていることからすれば,その0.5パーセントにすぎない10万円の債権は「少額の再生債権」にあたるので,このような区別を設けることは許される(同法155条1項ただし書)。
 ③は,Aの確定再生債権のみを全額免除とし,全額免除を受けない他の債権との間で区別を設けるものである。もっとも,Aは③条項の免除に同意しているから,「不利益を受ける再生債権者の同意がある場合」にあたり,このような区別を設けることは許される(同法155条1項ただし書)。
 ④は,Y社の確定再生債権のうち,10万円を超える部分について85パーセントの免除を受けるという形で,その他の債権と免除率に区別を設けるものである。それでは,このような区別を設けることが「衡平を害しない場合」にあたるか。民再法155条1項ただし書が,平等原則の例外を設けたのは,事業の継続を前提とした再生手続においては,再生債権者間で形式的平等を貫徹するのは妥当ではなく,再生債権の性格に応じた柔軟な対応が必要であることから,一定の区別を設けることを許容した点にある。そうすると,「衡平を害しない場合」とは,区別を設ける再生債権の性質に照らし,当該区別を設ける必要性がある場合をいうと考える。これを本件についてみると,Y社がX社に対して有する債権は,X社の運転資金の融通として貸し付けられたものが含まれている。Y社がX社の支配株主であることからすると,上記運転資金の融通と併せてY社がX社の運営に大きく関与していたものと考えられ,X社の内部の者と類似する地位にあるということができる。ここで,Y社の代表取締役はBであり,BがY社の発行済株式の全てを有しているから,経営面においても利益帰属の面においてもBとY社とは一体のものとして捉えることができる。そして,Bは,自身が代表取締役を務めるZ社において,放漫経営を行ったことを原因として,Z社を経営破綻に陥らせている。Z社の経営破綻により,X社はZ社に対する売掛金を回収することができなくなり,再生手続に至っているが,X社とZ社との取引は,Bの主導によるものである。つまり,Bは,自己の主導のもと形成した取引関係を自己の放漫経営によって破綻させ,X社の再生手続開始に追い込んでいる。そのようなBと一体として評価されるY社についても,X社における再生手続上一定程度不利益に扱われることも甘受すべき地位にあるといえる。したがって,Y社の確定再生債権の性質に照らし,他の債権と免除率を区別する必要性がある。よって,「衡平を害しない場合」にあたるから,このような区別を設けることは許される。
第2 設問2
 1 小問⑴
 X社は,再生債務者として,業務遂行権及び財産管理処分権を有する(民再法38条1項)一方で,債権者に対し,公平誠実にこれらの権利を行使し,再生手続を追行する義務を負っている(同条2項)。したがって,再生債務者は,自らの責任において,再生計画を遂行しなければならない(同法186条1項)。Kは,監督委員として,X社が再生計画の遂行を適正に行うことについて善管注意義務を有しており(同法60条1項),X社の再生計画の遂行について監督を行うものとされている(同法186条2項)。
 X社は,G銀行に対する弁済資金の確保が困難であると考えているから,再生計画の変更を申し立てることが考えられる(同法187条1項)。同項の趣旨は,再生計画が一度決定された以上はそれに従って計画を遂行することが再生債権者の利益に資するところ,その後に生じた事由によってはむしろ計画による拘束から解放した方が再生債権者の利益の観点から妥当であることがあるため,例外的に再生計画の変更の機会を与えた点にある。したがって,「やむを得ない事由」とは,当初の再生計画の認可時にそのような事情が予想されていれば計画の内容が異なっていたであろうと認められるような客観的事由をいう。本件再生計画は,大口の取引先であったZ社に代わる新たな得意先の獲得が前提とされていたが,これはX社の経営の安定の観点からそのように取り決められていたものと考えられるから,新たな得意先の獲得ができないことは,X社の経営の安定化が実現できないことを意味する。したがって,当初の再生計画の認可時に新たな得意先が獲得できないことが予想されていれば,計画の内容が異なっていたであろうと認められる客観的事由であるといえ,「やむを得ない事由」があるということができる。そして,X社は平成28年4月末日の弁済の見込みが立たなかったのであるから,「変更する必要が生じたとき」にあたる。よって,X社は,変更の申立てをすることができる。この場合には,再生債権者に不利な影響を及ぼすものと考えられるから,改めて再生計画の可決を経ることが必要である(同条2項)。
 2 小問⑵
 G銀行としては,X社が再生計画の履行を怠ったとして,再生計画の取消しの申立てをすることが考えられる(民再法189条1項2号)。X社は,平成28年4月末日のG銀行に対する弁済を怠っているから,「再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと」に該当する。そして,再生債権の全体額が約2億円であるところ,G銀行の有する債権額は8000万円であるから,G銀行は「再生計画の定めによって認められた権利の全部……について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者」である。そして,G銀行は,平成28年4月末日に履行期限が到来した債権について履行を受けていない。したがって,G銀行は,再生計画の取消しの申立てをすることができる。
 そして,G銀行としては,再生債権者表の記載を債務名義とした強制執行を申し立てることもできる(同法180条2項,3項)。

以 上


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2019-01-17(Thu)

【新司】倒産法平成28年第1問

あけましておめでとうございます!!!

もう1月も半分以上過ぎてしまいましたがね!!!

今年はついに司法試験を受験する年となりました。

1月からもう緊張してきますね。

早く受験を終えて遊びたいです。

夏には最長片道切符の旅なんかできたらいいなと考えています。

はい。

とりあえず今は勉強ですよね。

年が明けてから気づいたんですが,

選択科目の勉強をほとんどしていなかったことが判明しました。

これね,まずいですね。

とりあえず新司解くかあ,と思いまして,

新年1発目の答案は,倒産法になりました。

≪問題≫
〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A商事株式会社(以下「A社」という。)は,長年,食品製造機械メーカーであるB社及びC社から機械を仕入れ,得意先の食品製造会社であるD社やE社らに販売していた。
 A社は,市場の縮小傾向により,徐々に経営が苦しくなり,,ここ数年は赤字決算を繰り返していたが,平成28年3月末日の資金繰りに窮し,同月25日,取締役会において破産手続開始の申立てを行う旨決議し,支払を停止した。その後,A社は,同年4月1日,破産手続開始の申立てを行い,同月5日,破産手続開始の決定を受け,破産管財人Xが選任された。

〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社は,平成27年12月10日,B社から機会αを代金1000万円で購入し,同日,その引渡しを受けたが,代金の支払期日は平成28年3月末日とされていた。A社は,この機会αの売却先を探していたところ,同月15日,D社との間で,機械αを1500万円で売却する売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結することができた。なお,機械αの引渡し及び代金の支払期日は,D社の買取り資金の調達の都合により,いずれも1か月後の同年4月15日とされ,所有権の移転時期も同日とされていた。
 A社の破産手続開始時において,本件売買契約に基づくA社及びD社の各債務は,双方とも履行されておらず,機械αはA社の自社倉庫内に保管されていた。破産管財人Xは,選任された直後,B社からは,機械αの代金1000万円を支払うか,それができないとすれば機械αを返還するよう求められ,D社からは,本件売買契約に従い機会αを引き渡すよう求められた。
 ⑴ B社は,機械αの代金1000万円を回収したいと考えている。この債権の回収につき,考えられる法的根拠及び権利行使の方法を論じなさい。なお,B社は,本件売買契約の存在を知らないこととする。
 ⑵ Xは,機械αの代金1500万円をD社から回収し,破産財団を増殖したいと考えている。Xがこの代金を回収する場合に,破産手続上必要とされる手続及び効果について,その制度の趣旨を踏まえて,論じなさい。
 ⑶ Xは,⑵の手続を経て,D社から機会αの代金1500万円を回収した。その後,この事実を知ったB社は,破産財団から優先的に機械αの代金相当額である1000万円の弁済を受けたいと考えた。B社は,破産財団から優先的に弁済を受けることができるか。予想されるXからの反論を踏まえて,論じなさい。
2.A社は,かねてからC社に運転資金の融通を求めていたところ,C社は,これに応じ,平成27年9月25日,A社に対し,弁済期を平成28年9月末日として,2500万円を貸し付けた(以下,この貸付に係る債権を「本件貸付債権」という。)。
 A社は,平成28年1月20日,C社から機械βを代金2000万円で購入し,同日,その引渡しを受けたが,代金の支払期日は同年3月末日とされていた。そこで,A社は,C社の要請に応え,この売買契約の締結と同時に,C社との間で,C社のA社に対する売買代金債権2000万円を担保するため,機械βにつき譲渡担保権を設定する内容の譲渡担保契約(以下「本件譲渡担保契約」という。)を締結した。本件譲渡担保契約には,A社が支払を停止したときは当然に期限の利益を喪失し,C社は譲渡担保権の実行として,自ら機械βを売却し,清算をするとの約定があった。
 A社の支払停止時,機械βはA社の自社倉庫内に保管されていたが,A社の支払停止を知ったC社は,本件譲渡担保契約に基づき,直ちにA社の同意を得て機械βを引き揚げた(なお,この引き揚げは適法なものとする。)。
 A社の破産手続開始後,得意先であったE社は,C社が機械βを引き揚げたとの情報を得,C社に対し,是非購入したいと申し入れた。そこで,C社は,E社に機械βを売却することとしたが,一旦商品として出荷された機械の価値は中古市場においては半減することが通常であるため,その売却価格は,A社の通常販売価格である3000万円の半額程度とされてもやむを得ないと考えていた。ところが,交渉の結果,E社への売却価格は,通常販売価格の8割に相当する2400万円となり,これによって,C社は,A社に対する売買代金債権2000万円を全額回収できた上,期待していなかった余剰金400万円が生じた。本件譲渡担保契約は,前記の約定のとおりいわゆる処分清算型とされており,C社はこの余剰金400万円をA社に返還する債務を負うこととなった。
 そこで,C社としては,A社のC社に対する余剰金返還債権400万円と本件貸付債権2500万円との相殺をしたいと考えている。C社の相殺は認められるか。破産法の条文の構造と予想されるXの反論を踏まえて,論じなさい。


相殺嫌い

こんなん分からなくないですか。

いいじゃんどんどん相殺させてあげれば。

みんな相殺の担保的機能に対する期待持ってるよ。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
 B社は,A社に対し,機械αの売買契約に基づく代金支払請求権として1000万円の債権を有している。この売買契約は,A社の破産手続開始前に締結されたものであるから,「破産債権」(破産法2条5項)である。そうすると,B社は,A社の破産手続によらなければ,上記債権を行使することができない(同法100条1項)。したがって,B社が上記債権の行使として1000万円の回収を図ろうとするのであれば,上記債権を届け出て(同法111条1項),債権調査及び確定を経て(同法115条以下),配当を受けることとなる(同法193条以下)。しかし,この方法では,上記債権の全額の満足を受けることは期待されない。
 ここで,上記債権は,機械αという動産の売買の対価として生じたものであるから,B社は機械αに対し,動産売買の先取特権(民法311条5号,321条)を有している。これは,「特別の先取特権」であるから,B社の動産売買の先取特権は,別除権として扱われる(破産法2条9項)。したがって,B社は,この別除権を破産手続によらずに行使することができる(同法65条1項)。
 別除権行使の方法は,破産管財人がその目的である財産の換価をする方法による(同法184条2項)。機械αは,A社の自社倉庫内に存在するから,執行裁判所の動産競売開始許可を得て,動産競売を行うこととなる(民執法190条1項3号,2項)
 そして,機械αの動産競売による換価を受けてもなお上記債権の満足を受けることができない場合は,弁済を受けることができない部分についてのみ破産債権者として上記債権をもって破産手続に参加することができる(破産法108条1項本文)。
 2 小問⑵
 A社は,D社との間で,機械αを代金1500万円で売却する本件売買契約を締結しているが,双務契約の双方の債務が未履行の状態である。したがって,破産管財人であるXは,本件売買契約について,履行か解除かを選択することができるが(破産法53条1項),XはD社から代金1500万円を回収したいと考えているので,履行を選択することとなる。
 ここで,平常時にA社がD社に対して履行請求をしても,D社はA社に対し機械αの引渡請求権を有していることから,同時履行の抗弁権(民法533条)が存在し,A社は単に履行請求をするのみでは代金1500万円を回収することができない。そして,当時履行の抗弁権によるD社の保護は,A社の倒産の局面においても考慮される必要がある。そこで,同法53条の趣旨は,双務契約上の当事者間の対価関係が倒産という一方的事情によって崩され,相手方はその債務につき完全な履行を強制されるのに対し,その債権については割合的な満足しか受けられないのは当事者間の衡平を欠くため,相手方の地位を保障しようとした点にあると考える。
 このような制度趣旨から,まず手続としては,破産管財人が履行請求をするにあたっては,裁判所の許可が必要である(同法78条2項9号)。これは,破産管財人の履行請求により,当事者間の衡平が害されないかを,裁判所により判断させるためである。次に,効果としては,D社の機会αの引渡請求権の完全な履行まで確保されて,はじめて当事者間の衡平が保たれるといえるから,これが財団債権として扱われることとなる(同法148条1項7号)
 3 小問⑶
 Xが機械αをD社に売却したことは「払渡し」にあたるため,この売却の前に機械αについて差押え等を行っていないB社は,小問⑴のように別除権を行使し,あるいは別除権者として物上代位権を行使することができない(民法304条1項ただし書)。そこで,別除権による優先的な債権の回収ができなくなったB社が,A社の破産財団からなお優先的に弁済を受けることができるか,すなわち,B社のA社に対する1000万円の債権を財団債権として扱うことができるかが問題となる。
 B社としては,上記債権が破産法148条1項4号に基づいて財団債権として扱われると主張する。B者側からは,上記債権は,本来B社がA社から優先的に回収し得た売買契約に基づく1000万円の代金支払請求権が,XがD社に機械αを売却したことにより行使し得なくなったのであるから,不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)に転化し,「破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権」にあたるとの主張が考えられる。これによれば,上記債権は,A社の破産手続において財団債権として扱われるから,優先的に弁済を受けることができる。
 これに対して,Xからは,XがD社に機械αを売却したことは,不法行為を構成しないとの反論が考えられる。そこでこの点について検討すると,破産管財人は破産財団に属する動産を配当の原資とすべく換価する地位にあるから,D社への機会αの売却もXの破産管財人としての権限に基づくものである。そして,物上代位権を行使するためには,代金回収前に差押えが必要であることからすると(民法304条1項ただし書),法はもともと同一の動産に対して競合する場面を想定した上で,その優劣を定めているのであるから,XがD社に機械αを売却しても,それが直ちにB社の権利を侵害したものとは評価されない。したがって,Xが機械αをD社に売却した行為は,B社との関係で不法行為を構成しない。
 よって,B社は,A社の破産財団から優先的に弁済を受けることができない。
第2 設問2
 C社が相殺しようとしている債権のうち,A社のC社に対する剰余金返還債権は,譲渡担保権を実行して被担保債権を満足させてもなお剰余金が発生することを停止条件とする債権であると考えられる。本件では,A社の破産手続開始後にC社がE社に機械βを売却したことにより,C社のA社に対する2000万円の債権の満足を受けた上で剰余金400万円が生じているため,破産手続開始後に停止条件が成就した場合の相殺の可否が問題となる。
 まず,両債権が相殺適状にあるかについて検討すると,自働債権である本件貸付金債権は,破産手続開始決定により現在化するため(破産法103条3項),弁済期が到来している。一方で,受働債権である剰余金返還債権については,破産法67条2項後段が,条件付債務についても相殺を可能としているから,停止条件付債務について,破産手続開始後に停止条件が成就した場合でも相殺は可能であるとも考えられる。
 これに対して,Xは,同法71条1項1号は破産手続開始後の債務負担について相殺禁止としているところ,破産手続開始後に停止条件が成就した場合には,破産手続開始後の債務負担とも考えられるため,同号によって相殺が禁止されると反論する。
 そこで,破産手続開始後に受働債権の停止条件が成就した場合の相殺の可否について検討すると,法67条2項後段の趣旨は,停止条件付債務に対応する債権を受働債権とし,破産債権を自働債権とする相殺の担保的機能に対して有する期待を保護しようとする点にあり,相殺権の行使に何らの限定も加えていない。そして,破産手続においては,破産債権者による相殺権の行使時期について制限が設けられていない。したがって,破産債権者は,破産手続開始後に停止条件が成就したときであっても,相殺権の濫用にあたるなどの特段の事情のない限り,相殺することが可能である
 これを本件についてみると,剰余金400万円の発生はCにとっては期待していなかったものであって,その分相殺の担保的機能に対する期待は減少しているとも考えられる。しかし,譲渡担保権に基づく清算が行われた場合に剰余金が生じたときにはこれを返還しなければならない関係にあることは予め当事者において理解されているところである。また,動産の売却代金は,不動産の場合と異なり,客観的な価格基準を設けることが困難である場合が多いことから,交渉力によっては高額での売却が可能となることも十分に想定し得るところである。したがって,剰余金400万円が発生し,停止条件が成就することも,当事者の期待には外れても,法の想定する域を出ないと考えられるから,これを受働債権として相殺をすることが相殺権の濫用にあたることはない。
 よって,C社は,剰余金返還債権と本件貸付金債権とを相殺することができる。

以 上



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