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2018-07-04(Wed)

【事例で学ぶ民法演習】問題4-虚偽表示と第三者-

民法の問題演習は久しくやっておりません。

大変ですね(他人事)

≪問題≫
 Aは絵画(以下,「本件絵画」という。)を所有していたが,債務超過に陥ったため,債権者から「本件絵画を渡せ」と要求されるのを恐れ,本件絵画を親戚であるBに売ったように見せかけることで,債権者の追及を免れようと考えた。そこで,AはBに本件絵画を引き渡し,また万がーの事態に備え,AB間で虚偽の売買契約書が作成された。
 本件絵画を受け取ったBは,これをネタに一儲けしようと思い,Aに無断で友人であるCに本件絵画を売却し,BC間では売買契約書が作成されたが,実はCもAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていた。
 その後,Bから本件絵画の引渡しを受けたCは,この間の事情を全く知らないD百貨店から頼まれ,本件絵画を1か月の約束でD百貨店において開催される展覧会のために貸すことにし,CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された。しかし,Dへの引渡しはまだされていない。
 なお,賃貸借契約を締結するさい,Cは自分が本件絵画の所有者であることを示すため,AB間及びBC間の売買契約書をDに見せていた。

小問1 展覧会の期日が迫ってきたので,DはCに対して本件絵画の引渡しを求めた。Aは,ABC間の上記の事情を理由に,「本件絵画の所有者は自分〔=A〕であるから,Dに引渡しを求める権利はない(=Dは,Aとの関係では,賃借権を主張しえない)」ということができるか。

小問2 CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された後,Aの債権者であるEがAのもとを訪れ,Aに対して「お前〔=A〕の借金を棒引きしてやるから,本件絵画を渡せ」と要求した。Aは,予定のとおり,「本件絵画はBに売ってしまった」と答えたが,ABC間の関係を怪しんだEはABCを呼ぴつけ,厳しく問い詰めたところ,上記の事情が露見した。激昂したEは「本件絵画を俺に渡せ。もし渡さないと,お前たちの家族がどうなっても知らないぞ」とAらを脅し,Aの債務を帳消しにする代わりに本件絵画をEに譲渡する契約をAに結ばせたうえ,本件絵画の引渡しを受けた。このとき,Dは本件絵画の引渡しを求めることができるか。次の①と②のそれぞれの場合について答えなさい。
①AがEに対する意思表示をまだ取り消しておらず,Eが本件絵画を所持している場合。
②AがEに対する意思表示を取り消し,Eから本件絵画の返還を受けている場合。

総論の一つの山場である94条まわりの問題です。

単純な問題に見えて,考えなければならない点が多いです。

考えても分からない点もあります。

答案の下に(疑問点)という形で示しました。

誰か教えてください(懇願)

≪答案≫
第1.小問1について
 1.DはCに対して賃貸借契約に基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを求めている。これに対して,Aは,本件絵画の所有権が自己にあることを理由に,Dの上記引渡請求権を否定している。この点,AB間の売買契約は「虚偽の意思表示」(民法94条1項)であるから,無効である。また,同条2項の「第三者」とは,虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって,その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいい,Cはこれにあたるところ,「善意」とは虚偽の意思表示があったことについて知らないことをいい,CはAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていたから,これにあたらない。したがって,AはCとの関係でも,本件絵画の所有権を主張することができる。そうすると,AはCから賃貸を受けたDに対しても所有権を主張することができるようにも思える。
 2.これに対して,Dは,自己も民法94条2項の「善意の第三者」にあたることを主張することが考えられる。これは認められるか。
 民法94条2項の趣旨は,虚偽の意思表示をした者とその意思表示の存在を信じて取引関係に入った者とを比較した上で,前者の帰責性に鑑み,後者を保護する点にある。そうすると,「第三者」とは,直接の第三者に限られず,直接の第三者からの転得者も含まれると考える。
 これを本件についてみると,Dは,「第三者」であるCから転得した者であり,「第三者」にあたる。そして,Dは,ABC間の事情を全く知らないのであるから,「善意」である。したがって,Dは,Aとの関係で「善意の第三者」にあたる。
 3.よって,Aは,Dに対して,AB間の売買契約の無効を対抗することができないから,Aが本件絵画の所有権を主張して,Dの引渡請求権を否定することはできない。
第2.小問2について
 1.①について
 ⑴ まず,DはEに対し本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。ここで,DE間には直接の契約関係はなく,Dは本件絵画について物権的支配を及ぼしていないので,DがEに対し直接上記請求をすることはできない。
 ⑵ そこで,DはAのEに対する取消権を代位行使(民法423条1項)したうえで,Eに対して本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。これは認められるか。
 まず,DはAに対して,保全すべき「自己の債権」を有しているか。上記のように,DはあくまでCとの賃貸借契約に基づいて本件絵画の引渡請求権を取得しているので,これをAに対しても主張することができるかについて検討する。上記のように,Aは,Cとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができる。他方で,Aは,Dとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができない。そうすると,Dの賃借権を保護しつつ,Cとの関係における本件絵画の所有権の復帰を観念するべきであるから,CD間におけるCの賃貸人たる地位は,あたかもAに移転したものとして扱うのが妥当である。このように考えた場合には,AD間における賃貸借契約が擬制され,DはAに対して賃借権に基づいて目的物の引渡しを請求することができる。したがって,DはAに対し,保全すべき「自己の債権」を有している。
 「保全するため」とは,被代位者が無資力であることをいう。本件では明らかではないが,Dの代位行使が認められるためには,Aが無資力であることが必要である。
 しかし,強迫取消権は,強迫によって行為を行った者を保護する制度であるから,行為者本人が取消権を行使するか否かを決定すべきであって,「債務者の一身に専属する権利」にあたる。したがって,DはAの取消権を代位行使することができないのが原則である。もっとも,行為者に対する債権を保全するため必要がある場合において,行為者が強迫による取消権を行使する意思を有しているときは,強迫取消権の上記趣旨に鑑み,これを代位行使することができる。本件でも,Aが強迫により取消権を行使する意思を有していると認められる場合には,一身専属性が解消される。
 以上の要件を充たす場合には,Dの代位行使が認められる。
 そのうえで,保全の実効性確保の観点から,DはEに対し本件絵画を自己に対して直接引き渡すよう請求することができる。
 以上の場合には,DはEに対して,本件絵画の引渡を請求することができる。
 2.②について
 本問では,Aが既に上記取消権を行使し,本件絵画がAの下に復帰している。そして,上記のように,AD間には本件絵画について賃貸借契約が成立しているから,DはAに対してこれに基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを請求することができる。
以 上

(疑問点)
●賃貸人の地位の移転について
 →解説では,「Dの払う賃料はまさに本件絵画が生み出した価値であり,すると,Aを他の一般債権者と同じに扱うことには疑問がある。そこで,Dに対する賃貸人は--Cではなく--Aであると考えたほうが法律関係は簡明になり,またAがDに直接賃料を請求できる点でも望ましい解決といえよう。」とされているが,これだけでは賃貸人をAとする法的根拠に乏しい気がする。
 →要件事実的にこれを整理するとしたらどうなるのか。
●強迫による行為の取消権が債権者代位の場面での一身専属権にあたるかについて(私見のオンパレード)
 →錯誤無効を原則として第三者が主張することができないのは,錯誤無効が表意者保護の制度であるから。強迫取消も行為者保護の制度であるとすると,原則行為者のみが行使し得るのではないか。
 →錯誤無効における判例の例外法理として,保全の必要性+表意者が錯誤を認めていることが挙げられている。これと同様に強迫取消を考えるならば,保全の必要性+行為者が強迫を認めていることとなるのだろうか。しかし,錯誤の場合よりも強迫のときの方が行為者保護の要請が強く働く(行為者の帰責性の程度が低い)ことからすると,一身専属性が錯誤に比して強まり,例外的に代位行使ができる場面は狭めるべきではないかとも思える。そうすると,強迫があったことを認めているにとどまらず,これを行使する意思まで必要ではないか。
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2018-07-03(Tue)

【事例で学ぶ民法演習】問題3-法人-


≪問題≫
A漁業協同組合(以下,「A漁協」と略すことがある。)は,A町で漁業権を持つ者を構成員(組合員)とする,公益法人の認定を受けていない非営利法人である。A漁協の定款では,A漁業協同組合の目的は,A町の漁業の振興,および,組合員間の相互扶助だとされている。理事長には,かつての網元の子孫であるBが就任している。定款には,A漁協は組合員の住居建設・漁業経営のための資金の貸付けを行うという規定がある。さらに,A漁協の代表権は理事長だけが持つが,金融機関などから融資を受けるには,理事会の承認を要するという規定もあった。以上を前提に,次の小問に答えよ。なお,各小問は独立した問いである。

小問1 B理事長はA漁協を代表して,非組合員Cに弁済期3年後,年利10%で3000万円を融資し,C所有の甲土地に抵当権を設定した。しかし,3年が経過した後も,Cは債務を弁済しない。そこで,Aが抵当権を実行しようとすると,Cは「A漁協の自分への消費貸借は定款に違反しているから無効であり,したがって,抵当権の実行もできない」と抗弁している。このCの主張は認められるか。

小問2 理事長は理事会の承認なしに,A漁協を代表して,D銀行から弁済期3年後,年利10%でA漁協がA港に建築する予定の冷凍倉庫の建築費用5000万円の融資を受けた。3年後に,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求できるか。
 もしD銀行がA漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容は知っていたが,B理事長が理事会の承認書を偽造してD銀行に提示したため,Bが適法にAを代表できるとDが信じていた場合はどうか。
 また,融資を受けることに関する理事の代表権の制限が,A漁協の定款によるものではなく,仮に,水産業協同組合法に「理事長は組合を代表して第三者から融資を受けることはできない」という規定があったときはどうか。

小問3 小問2で,B理事長がA漁協を代表してD銀行と締結した消費貸借契約が,A漁協に効果帰属せず,しかも,D銀行から借り受けた5000万円をB理事長が,A町の町長選挙に立候補し,A町への原子力発電所の誘致を選挙公約にした友人Eの選挙運動に使用していたときは,D銀行はA漁協に対して何か請求することができるか。



≪答案≫
第1.小問1について
 1.非営利法人であるA漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」(民法34条)であるといえるか。
 営利法人が営利を目的とすることから,法人の利益となる可能性があるものについては広く「目的の範囲内」とされるのに対し,非営利法人は営利を目的とする活動が認められていないことから,「目的の範囲内」か否かは,法令や定款に照らして厳格に判断すべきである。
 これを本件についてみると,A漁協のような水産業協同組合は,「その行う事業によってその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを目的とする」ものであり(水産業協同組合法4条),組合員に出資させる出資組合は「組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付け」ができることとされている(法11条1項3号,2項)。そうすると,法は,組合員でない者に対して資金の貸付けを行うことは想定していないというべきである。また,法のこれらの規定を受けて,A漁協の定款では,その目的はA町の漁業の振興,および,組合員の相互扶助であるとし,組合員の住宅資金・漁業資金の貸付けを行うと定めている。そうすると,A漁協定款も,組合員でない者に対して資金を融資することは想定していないというべきである。これらの規定に照らすと,A漁協の目的には,組合員でない者に対する資金の融通は含まれない。したがって,A漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」に含まれない。
 2.「目的の範囲内」ではない行為の効力はどうなるか。
 民法34条の文言からすると,「目的の範囲」は,法人の権利能力の範囲を画するものであると考えられる。したがって,「目的の範囲内」ではない行為は,法人に効果帰属しない。
 これを本件についてみると,上記のように,A漁協が非組合員Cに対して融資をすることは,目的の範囲内ではないから,無効となる。
 3.A漁協の非組合員Cに対する融資が無効であるとして,これに伴ってされた抵当権の設定も無効となるか。
 たしかに,原因となる契約が無効となれば,それに伴ってされた抵当権の設定も原因を失うから,無効となるとも思える。しかし,原因となった契約に基づいて金銭が交付された場合には,これが無効となることによって,不当利得返還義務を新たに負うこととなり,結局債務のあることにおいて変わりはない。そして,当該抵当権も,その設定の趣旨からして,経済的には,債権者の有する不当利得返還請求権の担保たる意義を有するとみることができる。そこで,この場合の債務者は,当該債務を弁済せずして,原因となる契約の無効を理由に,当該抵当権の無効を主張することは,信義則(民法1条2項)に照らして許されない。
 これを本件についてみると,非組合員Cは漁協Aから5000万円を借り入れているが,この借入れの原因となる消費貸借契約が無効となっても,5000万円の不当利得返還義務を負うこととなるから,結局漁協Aに対して債務を負うことには変わりない。したがって,非組合員Cが消費貸借契約の無効を理由として抵当権の無効を主張することは,信義則に照らして許されない。
第2.小問2について
 1.前段について
 D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することはできるか。A漁協とD銀行間の消費貸借契約は,A漁協の代表者であるB理事長がA漁協を代表して締結しているが,A漁協の定款には,金融機関から融資を受けるには,理事会の承認が必要とされているから,これを経ずにしたB理事長の行為の効果がA漁協に及ぶかが問題となる。
 BはA漁協の「代表理事」(法39条の3第1項〔一般法人法77条3項〕)であり,包括的代理権を有している(法39条の3第2項〔一般法人法77条4項〕)。しかし,これについて上記定款による「制限」(法39条の4第2項,会社法349条5項〔一般法人法77条5項〕)がされているから,D銀行は原則としてこの制限に反した行為の効力を会社に対して主張することはできない。しかし,D銀行が「善意の第三者」にあたる場合には,会社に対して対抗することができる。ここに,「善意」とは,理事の代表権に制限が加えられていることを知らないことをいう。したがって,D銀行が,A漁協の定款による制限を知らないときは,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができる。
 2.中段について
 D銀行は,A漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容を知っているから,「善意の第三者」にあたらない。そうすると,D銀行は,A漁協に対して貸金の返還を請求することができないように思える。しかし,D銀行は,B理事長が理事会の承認書を偽造して提示したことから,B理事長がA漁協を適法に代表できると信じ,貸付けを行うことを決めている。そこで,このような場合に,D銀行が保護されないか。
 B理事長は,代表権を有するものの,それに制限が加えられているにすぎず,「権限外の行為をした場合」(民法110条)にはあたらない。しかし,110条の趣旨は,相手方が正当な取引権限を有する外観を信じて取引に入ったことを保護する点にあるから,この趣旨は代表権に制限が加えられていた場合にも妥当する。したがって,代表理事の代表権に制限が加えられている場合に,代表理事がその制限に反して取引行為をした場合に,第三者において代表理事が理事会の承認を受けていると信じ,かつこのように信じることについて正当の理由があるときには,民法110条を類推適用するべきである。
 これを本件についてみると,B理事長は理事会の承認書を偽造して提示しており,D銀行においてこれが偽造であるか否かを判別することは容易ではないことからすると,D銀行はB理事長がA漁協理事会の承認を受けていると信じ,かつ,このように信じることについて正当の理由があるというべきである。したがって,D銀行は,A漁協に対して,貸金の返還を請求することができる。
 3.後段について
 法によって代表理事の代表権が制限されている場合には,はじめから代表理事には代表権がなかったと考えるべきである。そうすると,B理事長の行為の効果はA漁協には帰属せず,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができない。
 そして,110条の類推適用について検討すると,法の不知は許されない以上,「正当の理由」がないといわざるをえない。したがって,D銀行は,A漁協に対し,貸金の返還を請求することができない。
第3.小問3について
 D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求(法39条の4第2項,会社法350条〔一般法人法78条〕)をすることができないか。
 A漁協は「水産業協同組合」であり,B理事長は「代表理事」である。ここで「職務を行うについて」とは,行為の外形から観察して,それが理事の職務に属するか,あるいは,職務の執行と適切な牽連関係に立つことをいう。B理事長は,代表理事としてA漁協の行為の包括代理権を有していることから,B理事長がA漁協の代表としてする行為は,その外形からして,理事の職務に属するか,職務の執行と適切な牽連関係に立つものとみることができる。しかし,代表理事の行為が法人に効果帰属しない場合において,それとは別に不法行為責任を認めたときには,実質的に代表理事の行為が法人に効果帰属したのと変わらないことになる。そこで,理事の行為が法人の職務に属さないことを相手方が知っていたか,知らなかったことにつき重過失がある場合には,法人は不法行為責任を負わない。したがって,D銀行が,B理事長の行為がその職務に属さないことを知っていたか,,知らなかったことにつき重過失がある場合には,A漁協は不法行為責任を負わない。この場合,D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求をすることができない。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題5

刑訴ぉ……

≪問題≫
 甲は,勤務していた会社(以下「A社」という)の上司V1から10年問にわたり執拗なパワーハラスメントを受け続けた挙句,同社から退職勧告を受け,やむなく雀の涙ほどの退職金を受領して自ら退職した。甲は,退職後1年以上を経過し,再就職口もなかなか決まらずに焦燥感を募らせていた平成26年11月15日,A社に同期で入社していたB(人事部に所属していた)に街中で遭遇し,2人で昼食を摂っていたところ,Bから「お前の退職勧告はおかしい」「V1が明らかに不当な査定をして,それを人事側上層部が鵜呑みにした結果お前は切られた」などと聞かされた。
 そこで甲は,その事実を確認するべく同日午後10時ころV1宅に赴き,呼び鈴を押したところ,V1がインターホンで応じたため,「1年前の退職勧告の件で話があるので出てきてほしい」と言った。ところが,V1が「何を今頃言っているんだ。お前と話すことは何もない。もう来るな。来たら警察を呼ぶ」 などと言って全く応じる様子がなかったため,甲は憤慨し,家の中に入って事実を確認した上で,事と次第によっては少しV1を痛めつけてやろうと考え,門扉を開けてV1宅の敷地内に侵入して裏庭に回り,その場に落ちていた石を用いて裏庭に面した部屋の窓のクレセント錠付近のガラスを割り,手を差し込んで錠を回して内部に侵入し,窓ガラスが割れる音を開いて当該部屋(リビングルーム)に駆け込んできたV1およびその妻V2に対し,甲の退職勧告までの経緯について確認した。すると,当初は驚いてひるむ様子を見せていたV1が次第に落ち着きを取り戻し,最終的にはへラヘラと笑いながら「お前のことは入社当初から気に入らなかったんだ」,「仕事もろくにできないくせに給料をもらおうなんて都合がよすぎる」,「そんなものは泥棒と大して変わらない」などと言い,さらに,V2もそんな夫をいさめるどころか「V1の言うとおりよ。甘ったれるのもいい加減にしなさい。あんたなんかが勤めるところはどこにもないわ」などと言うにいたった。
 そこで,甲は,平成26年11月15日午後11時ころV1宅内において,日頃から護身用に持ち歩いていた携帯用小型ナイフで,V1およびV2の大腿部や背部を突き刺し,失血多量等によりその場で両名を死亡せしめたとの2つの傷害致死の事実(以下V1に対する傷害致死の事実について「V1事実」,V2に対する傷害致死の事実について「V2事実」という)で同年12月20日に起訴された(「前訴」という。なお,検察官は,手持ちの証拠に照らし,V1宅への侵入行為があることも明らかであるものの,犯罪に見合った処罰の確保の観点からすれぱ,2件の傷害致死のみで起訴するのが相当であると判断した)。
 甲側は,平成27年4月に開催された第1回公判期日において,「本件各事実は,同一の住居侵入行為たるV1宅への侵入行為を手段として犯されたものであり,V1事実も,V2事実も,住居侵入を含めて起訴されれぱ一罪として処断されるべき犯罪行為の一部を構成するものであるから,こうした形での公訴の提起は,検察官の訴追裁量権の逸脱に当たる。本件公訴はいずれも棄却されなけれぱならない」と主張した上で,証拠調べの段階においても,「住居侵入の事実の存在等」を立証するためのものであることを明示して,関係証人,証拠物,証拠書面の取調べを請求した。
 受訴裁判所は,これらの証拠調べ請求をいずれも却下したが,関係証人の証言や,被告人質問の内容において住居侵入の事実の存在が明らかであったことから,その存在およびそれと本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で,有期懲役刑を選択し,併合罪処理によるならば24年の刑を宣告すべきところ,16年の刑を宣告するにとどめた。

〔設問〕 本事例における①検察官の公訴提起の適否,②裁判所の措置の適否を論じなさい。

一部起訴ですが,その中でも,いわゆる「かすがい外し」についてです。

論点は明確ですが,何をどの順番で論じればいいのか,かなり迷います。

≪答案≫
1.検察官の公訴提起の適否について
 甲は,V1宅への住居侵入,V1事件及びV2事件を行っており,これらがいずれも認定される場合には,科刑上一罪となる関係にある。これに対して,検察官が起訴した事実は,V1事件及びV2事件のみであって,V1宅への住居侵入については起訴していない。そこで,このような一罪の一部の起訴が認められるか。
 検察官には広範な訴追裁量権が認められており(刑訴法248条),一罪の全部の事実を不起訴とすることもできる以上,一部を起訴し残部を起訴しないという一部起訴も許される。しかし,一罪の一部起訴が検察官に認められた訴追裁量権の逸脱となる場合には,これをすることは許されない。
 これを本件についてみると,V1宅への住居侵入の事実が認められると,いわゆる「かすがい理論」によって,V1事件とV2事件とで科刑上一罪になるところ,かすがいを外すことによって,V1事件及びV2事件を併合罪として起訴している。併合罪の場合には,懲役刑の長期が1.5倍となるから(刑法45条前段),被告人にとって量刑上不利益となるため,かすがいを外した起訴は検察官の訴追裁量権を逸脱しているとも思える。しかし,被告人に科刑上の不利益が生じないように量刑上の配慮をすればこの点は問題とならないから,かすがいを外した起訴自体を不適法とする必要はない。また,裁判所が検察官の訴追裁量権の適否を判断するためには,検察官がかすがいを外した理由が合理的なものかを判断しなければならないところ,下記のように裁判所は訴因外の事実に立ち入って審査することはできないから,かすがいを外したことの合理性について審査することができない。そうすると,かすがいを外して公訴提起したことについて,それが検察官の訴追裁量権の逸脱であると積極的に認定することはできない。したがって,検察官は,上記のような一部起訴をすることができる。
2.裁判所の措置の適否について
 裁判所が甲のV1宅への住居侵入の事実の存在及び本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で16年の刑を宣告したことは適当か。裁判所が訴因外の事実に立ち入って審理することが許されるかが問題となる。
 当事者主義を採用している現行法下では,審判対象は検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であり,裁判所は訴因の範囲で審判しなければならない。したがって,原則として,裁判所は訴因外の事実に立ち入って審理することは許されない。もっとも,訴因外の事実が訴因に係る犯罪の成立を否定する事実である場合や公訴提起を無効にする事実である場合には,実質的には訴因の範囲内ということができ,例外的に裁判所はこれについて審理することができる。
 これを本件についてみると,科刑上一罪とされる場合であっても,それを構成する個々の犯罪事実に対応する犯罪は成立していることから,V1宅への住居侵入の事実に基づく住居侵入罪の存否にかかわらずV1に対する傷害致死罪及びV2に対する傷害致死罪はそれぞれ成立する。そうすると,訴因外のV1宅への住居侵入の事実をもって上記2つの傷害致死罪の成立は否定されない。また,上記のように,検察官の訴追裁量権の逸脱はないのであるから,V1宅への住居侵入について公訴提起しなかったことをもって公訴提起は無効とはならない。したがって,裁判所は,訴因外の事実であるV1宅への住居侵入の事実に立ち入って審理することはできない。
 そうすると,裁判所がV1宅への住居侵入の事実を審理できない以上,これを量刑事情として考慮することも許されないから,裁判所がこれについて付随的に心証を形成し,16年の刑を宣告したことは不適当である。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題4

すげぇ遊びてぇ

という気持ちを抑えつつ(抑えきれているとは言っていない)

今日は,捜索差押です。

≪問題≫
 A警察署刑事課は,覚せい剤取締法違反で逮捕した甲から,同署管内に居住する乙が自宅で覚せい剤を恒常的に密売しており,自分も乙から覚せい剤を購入したとの供述を得た。そこで,乙の自宅を捜索して証拠品を押収しようと考え,乙に対する覚せい剤取締法違反(営利目的所持・譲渡)容疑で,乙宅を捜索すべき場所,「覚せい剤,覚せい剤計量器具類,覚せい剤分包紙袋類,覚せい剤取引関係文書,手帳,メモ類,パーソナルコンピュータ及びその付属機器類,電磁的記録媒体,被疑者使用の携帯電話及び付属の充電器等」 を差し押さえるべき物とする捜索差押許可状の発付を受けた上,同課所属のB・Cら計6名の警察官をその捜索等のために乙宅に赴かせた。
 Bらは,乙宅の玄関先で,応対に出た乙に対し,インターフォン越しに,自らの身分を名乗り,覚せい剤取締法違反の容疑で捜索に赴いた旨を伝えたところ,乙は「今,寝起きなので,服を着るのに数分間だけ待ってくれ」と言ったのみで,特段抵抗することなく,それから2~3分後に玄関ドアを開けた。そこで,Bらが室内に入ったところ,乙と同居している乙の内妻丙が,髪の毛はボサボサでノーメイクのまま,ブランド物のショルダーバッグを肩から提げて外出しようとしていた。 Bは,女性である丙が容姿も整えずにブランド物のバッグだけを持って外出しようとする不自然さのほか,その外出のタイミングから,丙が乙の指示を受けて覚せい剤等の証拠品を持ち出そうとしている疑いが極めて濃厚だと考え,丙に対し,そのショルダーバッグの中を見せるように求めたところ,丙はそのショルダーバッグを抱え込んだまま廊下にしゃがみ込み,その中を見せることを頑なに拒否した。
 また,Bが丙にショルダーバッグの中を見せるように説得を始めたところ,宅配業者が乙宛ての荷物を届けに来たことから,Bは乙にそれを受け取らせた上,その中を見せるように乙に求めたが,乙もその荷物を抱え込んで,中を見せるのを頑なに拒否した。
 そこで,BおよびCは,室内の捜索は他の警察官に任せ,Bは丙に対し,Cは乙に対し,それぞれショルダーバッグ,宅配荷物の中を見せるように説得を重ねたが,乙・丙の両名は説得には一切耳を貸さず,その要請を頑なに拒否し続けたことから,B・Cの両名は,これ以上の説得は時間の無駄であり,前記捜索差押許可状に基づき,乙・丙の抵抗を排除してでもこれらの中を捜索するしかないと考え,室内を捜索していた他の警察官の応援を得て,ショルダーバッグを抱えている丙の手,宅配荷物を抱えている
乙の手をつかんでそれぞれショルダーバッグ・宅配荷物から外し,それらを開被して内容物を確認した。
 その結果,丙が持っていたショルダーバッグの中からは覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋2袋,CD-R1枚および乙の高校卒業時のクラス名簿1冊(数名について氏名の脇に丸印が付されているもの)の計4点が,乙が受け取った宅配荷物からはクッション材に包まれた覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋10袋がそれぞれ発見されたことから,Bは,いずれも被疑事実である乙の前記覚せい剤取締法違反罪に関係する証拠物であるとして,直ちにこれらを差し押さえた。なお,CD-Rについては,乙宅室内にあったパソコンが故障して再生できなかったため,差押えの時点ではその内容を硫認していない。
 その後,Bは,白色結晶粉末等を発見されたことで観念した乙・丙の承諾を得て,ショルダーバッグおよび宅配荷物にそれぞれ入っていたポリ袋のうち各1袋を開封し,それらに入っていた白色結晶について覚せい剤の簡易試験をしたところ,いずれも覚せい剤の反応を示したことから,乙・丙の両名を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)の現行犯人として逮捕した。後日,A警察署刑事課において,押収したCD-Rおよびクラス名簿に関して捜査を遂げたところ,CD-Rには,今回の情報提供者である甲を含め,これまで乙が覚せい剤を販売した者の携帯電話番号の一覧表,乙の覚せい剤仕入先である暴力団事務所の名称と住所,取引を担当している構成員の氏名と携帯電話番号などがそれぞれ記録されていたほか,クラス名簿については,氏名に丸印が付されている者が継続的に乙が覚せい剤を販売している相手であることが判明した。

〔設問〕B・Cの捜索・差押えは適法か。

論点がいろいろあって面倒です。

そのような感想を抱きました。

あと問題文長すぎ。

≪答案≫
第1.捜索について
 1.乙に対する覚せい剤取締法違反容疑にかかる捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)は,その「捜索すべき場所」を乙宅としているが,これをもって,丙という人が所持するショルダーバッグ(以下「本件ショルダーバッグ」という。)を捜索することができるか,すなわち,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」である乙宅に含まれるか。
 捜索にあたり令状が必要とされている(憲法35条1項,刑訴法218条1項)趣旨は,捜索という対象者に対して重要な権利侵害を伴う処分については,令状裁判官による「正当な理由」についての事前審査を要求することで,国民の権利利益を保護した点にある。したがって,場所に対する捜索令状の効力が及ぶ範囲は,令状裁判官の事前審査が及んでいる範囲をいう。具体的には,当該捜索場所について認められる総体としての権利利益に包摂され,これと一体を成す関係にある場合には,令状の効力が及び,捜索をすることができる。
 これを本件についてみると,丙は,その捜索場所である乙宅に居住する乙の内縁の妻であって,その場所内の物を自由に移動・保管できる立場にある。また,捜索対象となったショルダーバッグは,丙か手に持っていたにすぎず,着衣等身体に密着させて所持していた物とは異なり,乙宅内に存在する物についてのプライバシーを離れた丙の身体という別個に保護されるべきプライバシーを侵害するものとまではいえない。そうすると,本件ショルダーバッグは,乙宅について認められる総体としての権利利益に包摂されているというべきである。
 したがって,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」に含まれるから,本件捜索差押状をもって本件ショルダーバッグの捜索をすることができる。
 2.B・Cは,乙から宅配荷物(以下「本件宅配荷物」という。)を取り上げて,開扉し,内容物を確認している。しかし,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状発付時には,乙宅に存在しなかったものであるから,これについても令状の効力が及ぶか。
 令状発付時に裁判官が対象場所におけね具体的な物品の存否を把握することは困難であるうえ,対象場所の管理者は令状発付後も物品を自由に移動できる状況にある。それにもかかわらず,刑訴法は捜索差押許可状について有効期間を定め(同法219条1項),幅のある時間内の令状執行を許容していることに照らすと,裁判官は,有効期間内に捜索対象となる場所で行われる物品の移動をも考慮して捜索差押許可状を発付しているとみるべきである。そうすると,捜索差押許可状の効力は,有効期間内にある限り,令状発付後に搬入された物も含めて,当該強制処分の際に対象場所に存在するすべての対象物に対して及ぶと考える。
 これを本件についてみると,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状が執行されている途中で搬入されたものであるから,本件捜索差押許可状の有効期間内に乙宅に搬入されたものとみられる。そうすると,本件捜索差押許可状の執行の際に対象場所たる乙宅に存在したものであるということができるから,本件捜索差押許可状の効力は本件宅配荷物についても及ぶ。
第2.差押えについて
 1⑴ Bは,乙の高校卒業時のクラス名簿(以下「本件クラス名簿」という。)1冊を差し押さえているが,これと覚せい剤取締法違反の被疑事実との関連性は認められるか。
 被疑事実と差し押さえるべき物との関連性は,被疑事実の内容・態様,差し押さえようとする物の内容・性質等を考慮して個別具体的に判断する。
 これを本件についてみると,被疑事実となるのは覚せい剤の営利目的所持及び譲渡であって,その性質上行為の相手方を必要とするものである。そして,客観的には,本件クラス名簿は,覚せい剤を販売する相手方が記載された物とみることができるから上記被疑事実を裏付ける証拠ということができるから,関連性が認められる。また,覚せい剤の販売をする際に,自己の人間関係を利用してその譲渡先を探すことも十分あることや,上記被疑事実と無関係なクラス名簿であれば覚せい剤と思われる物と一緒に本件ショルダーバッグにしまわれていることは考えにくい。さらに,捜索がまさに始まろうとする段階で捜索場所に居住する人間が慌てて持ち出そうとした行為に照らせば,本件クラス名簿は,一部が覚せい剤の密売人の住所録代わりに使用されていたものとの疑いがあるということができる。以上に照らせば,捜査機関が判断できる程度に,本件クラス名簿と被疑事実との関連性は認められる。
  ⑵ そうだとしても,本件クラス名簿は,本件捜索差押許可状に列記された差押対象物に含まれるか。
   ア.そもそも本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」の記載は,これをもって特定しているといえるか。
 令状主義(憲法35条1項,刑訴法218条1項)の趣旨は,令状審査にあたり「正当な理由」(憲法35条)の存在についての令状裁判官による実質的認定を確保する点及び捜索の実施にあたり捜査機関の意のままにあらゆる場所が無差別的に捜索されることを防止する点にある。しかし,令状発付時に差押対象物は必ずしも明らかになっていないことから,厳密な差押物件の特定は不可能であり,ある程度概括的なものにならざるをえない。そこで,裁判官が特定の物の類型について「正当な理由」をはんだすることができ,捜査機関が令状の記載自体から何が令状に記載された差押対象物件なのか判断できる程度に記載されていれば足りる。
 これを本件についてみると,本件捜索差押許可状の差押対象物は「等」とされているが,これは「覚せい剤,覚せい剤計量器具類」などの具体的な物件の例示に付加されている物であって,このような例示からして捜査機関としても差押対象物件か否かの判断は可能であるといえる。したがって,本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」は特定されている。
   イ.それでは,本件クラス名簿は,「等」に含まれるか。
 上記のように差押対象物の記載が概括的なもので足りることからすると,令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であれば,「等」に含まれる。
 これを本件についてみると,仮に本件クラス名簿の丸印の者が抜き書きされて別文書に一覧として記録されていた場合には,その文書は取引先関係者の一覧表であると強く疑わせるものとして,「覚せい剤取引関係文書」に該当すると考えられる。そうすると,加工前の原典についても,本来であれば「覚せい剤取引関係文書」に記載されるべきものの加工の手間が省かれているだけであるから,「覚せい剤取引関係文書」に準ずるものとして扱うことができる。したがって,本件クラス名簿は令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であるといえるから,「等」に含まれる。
 2.BはCD-R(以下「本件CD-R」という。)の内容を確認しないままこれを差し押さえているが,関連性を判断せずに証拠品を差し押さえることはできるか。
 令状主義の上記趣旨に照らすと,差し押さえるべき物と被疑事実との関連性については,捜査機関もこれを審査すべきであるから,これを審査しない包括的差押は原則として許されない。しかし,関連性の判断は,被処分者の利益と捜査の必要性との比較衡量に基づく規範的なものであるから,関連性の程度は,令状執行の際の具体的な状況により変動する。したがって,被疑事実と関連する蓋然性が認められ,包括的差押の必要性がある場合には,包括的差押も認められる。
 これを本件についてみると,本件CD-Rは,覚せい剤と思われる物や本件クラス名簿と一緒に,捜索現場の居住者である丙が,捜索開始後に慌てて持ち出そうとしていた本件ショルダーバッグの中に入っていたものである。そして,本件ショルダーバッグの中には,これらのもの以外には入っていなかったことも併せて考えると,丙が被疑事実である覚せい剤取締法違反の証拠品を持ち出してその押収を免れようとしていたとの疑いが濃厚である。したがって,本件CD-Rが被疑事実と関連する蓋然性は認められる。そして,本件CD-Rは,可視性・可読性がなく,その内容をそのまま確認することはできない。また,丙が上記のように本件CD-Rを乙宅から運び出そうとしていることからすると,証拠隠滅が行われる可能性が高く,その場で内容を確認している間にも隙を見て証拠隠滅が図られるおそれがある。そこで,本件CD-Rについて内容を確認しないまま差押えをする必要性は高い。以上から,本件CD-Rの内容を確認しないままこれを差し押さえた行為は適法である。
以 上



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