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2018-05-29(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題8

国賠多少はとか言いながら,万が一出されると怖すぎるため,

結構がちがちにやってしまっています。

こういう恐怖心から解放された自由な人生を送りたかった。

≪問題≫
次の事例を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲県の乙市立中学校は,乙市が設置し管理する中学校である。乙市立中学校は県内ではとりわけ音楽等の文化活動が盛んであり,構内の体育館(以下「本件体育館」と呼ぶ)は,今から10年前に建築されたが,体育の授業や課外のクラブ活動によるスポーツだけではなく,コンサートや文化的なイベントも開催することができるように,当時の最新の設備を備えていた。その設備の1つとして,舞台前面の床面が可動式になっており,コンサートを行う場合には,床面を下げて,オーケストラピット(舞台上でオペラ等の公演を行う場合,オーケストラが入るためのスペースとして舞台前面に設けられ,通常観客の視線を遮らないよう客席より低い位置になる)を作ることができるようになっていた。ただし,床面を下げた場合,本件体育館の床面とオーケストラピットの床面との間に隙間があく構造となっていた。オーケストラピットの下は地下の機械室につながっており,体育館の床面から機械室の床面の差は4mほどであった。また,体育館の床もオーケストラピットの床も,通常の体育館で使われる素材を使ったフローリングとなっていた。
 乙市立中学校では,例年,文化祭の行事の一部として,音楽系のクラブが中心となって,本件体育館でコンサートを開催していた。コンサートは,地域では有名な行事となっており,中学校の関係者だけではなく,地域住民も参加できるようになっていた。特に,プログラムの内容は小学生や幼稚園児に適した内容とされていた。そのため,例年,コンサートにおいては,同中学校の中学生だけではなく,周辺の地域の小学生や幼稚園児がそれぞれの小学校や幼稚園の行事の一環として参加していた。
 文化祭の日には舞台前の床を約0.7m下げて,オーケストラピットを設定していた。オーケストラピットを設定していたのは,ピット内でオーケストラが演奏するためではなく,当日は乙市立中学校の生徒だけではなく小学生や幼稚園児も多数来場することから,舞台上の生徒が落ち着いて演奏できるように,観客席と舞台の間にスペースを設けるためであった。観客席とオーケストラピットの境界には,高さ0.8mで幅1.6mほどのプラスチックと金属製の防護柵(以下「本件防護柵」と呼ぶ)が数センチ間隔で並べられており,観客が過ってオーケストラピットに転落しないようにされていた(【オーケストラピットおよび部隊の断面図】参照)。

Ⅰ コンサートが休憩時間に入ったとき,観客の1人として来ていた小学1年生のAが,オーケストラピットの中を見ようとして,本件防護柵によじのぼって乗り越えようとしたが,バランスを崩して,オーケストラピット内に転落し,さらに,勢いがついていたため,体育館床面とオーケストラピットの隙間をすり抜け,3m以上下の地階にまで転落し,両足を骨折するという重症を負った。

Ⅱ また,文化祭のコンサートについては,乙中学の生徒は正課の授業の一環として全員鑑賞することになっていた。しかし,休憩時間に,会場の後方で何人かの生徒が遊びはじめ,生徒Bが,止めに入った生徒Cをふざけて柔道の投げ技で投げたところ,Cは体育館の床面で背中を強打し脊椎を損傷する重症を負った。

 AとCはいずれも国家賠償請求を行う意思を示していることから,甲県の担当者Dと乙市の担当者Eは,弁護士であるFに対応を相談することとした。

〔設問1〕
 Aが,乙市に対して,国賠法2条1項に基づく国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。

〔設問2〕
1.Cが,乙市に対して国賠法2条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。
2.Cが,乙市に対して国賠法1条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。また,この場合,Cが甲県に対する国家賠償請求をできるとすればその法的な根拠はどのような点になるか,Cの立場から説明しなさい。

2条と3条を総ざらいというような問題ですね。

≪答案≫
第1.設問1
 1.Aの乙市に対する国賠法2条1甲に基づく国家賠償請求は認められるか。
 2⑴ 「公の営造物」とは,広く公の目的に供せられる物的施設をいう。本件体育館は,市立中学校の体育館として,地方公共団体である乙市が設置して同校の生徒やそれ以外の地域の小学生らも利用しているものであるから,公の目的に供せられている物的施設である。したがって,本件体育館は,「公の営造物」にあたる。
  ⑵ 「瑕疵」とは,当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。その判断にあたっては,①危険の存在,②予見可能性,③結果回避可能性などを考慮する
 これを本件についてみると,①Aが重症を負ったのは,地階にまで転落したことによるところ,観客席とオーケストラピッチとの間には本件防護柵が設置されていたことから,転落の危険はなく,仮に転落した場合を想定してオーケストラピッチの深さを0.7mとしていたのであるから,本件体育館には転落によって重症を負うような危険は存しなかったようにも思える。しかし,小学生や幼稚園児がオーケストラピッチの中を見ようと行動した場合には,本件防護柵が0.8mの高さであっても簡単に乗り越えることができる。またオーケストラピッチに転落した場合には,観客席との柿間が0.4m程度しかなくても,体の小さい生徒や児童であれば,この隙間を通ることは可能であるから,ここからさらに地階へ転落する危険が存在する。そうすると,建物1階分とほぼ同じ4mの高さから人が転落すれば,骨折などの重傷を負う危険が存在する。②文化祭のコンサートには,地域の小学生や幼稚園児が多数参加していたところ,これらの者が好奇心からオーケストラピッチの中を見ようとすることは十分想定できるのであって,このときにバランスを崩してオーケストラピットに転落することも考えられる。そして,体の小さい生徒や児童が転落した場合には,観客席とオーケストラピッチとの隙間から地階へ転落することも予見することができる。その場合,その者が重症を負うことも想定されるところである。③コンサートの支障となることとの関係から本件防護柵をこれ以上高くすることができないとしても,教職員または生徒を係員としてオーケストラピット周辺に配置しておくことによって,上記危険の発生を防止することができたと考えられる。
 以上からすると,本件体育館は,通常有すべき安全性を欠いているというべきであって,「瑕疵」がある。
  ⑶ Aは両足を骨折する重傷を負っているから「損害」があり,上記「瑕疵」に起因するものであるから,因果関係も認められる。
 3.よって,Aの上記請求は認められる。
第2.設問2
 1.小問1
  ⑴ Cの乙市に対する国賠法2条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
  ⑵ア.本件体育館が「公の営造物」にあたるのは上記のとおりである。
   イ.Cが脊椎損傷の重症を負ったことの原因として,本件体育館の床に衝撃を吸収する特殊素材(以下「本件特殊素材」という。)を用いていなかった点がある。しかし,本件特殊素材が開発されたのは,本件体育館設置後である。そこで,営造物が設置された後に開発された安全設備を設けていないことが「瑕疵」にあたるか問題となる。
 安全設備が後から開発された場合には,それを必ず設置しなければ「瑕疵」であるとすると管理者に酷である。しかし,当該安全設備が同様の営造物において一般的に使用されている場合には,通常人は当該営造物にも当該安全設備が設置されていることを前提とすると考えられ,この場合には通常有すべき安全性を欠くということができる。そこで,当該安全設備を設置していないことが「瑕疵」にあたるか否かの判断にあたっては,①安全設備の普及率,②安全設備の設置の必要性,③安全設備の設置の困難性などを考慮する
 これを本件についてみると,①本件特殊素材は,通常の学校の体育館にはほとんど使用されておらず,普及率は低いものとみられる。②本件特殊素材は,主に格闘技などを行うスポーツ施設に導入されるなど,床に体を衝撃することが多く想定される場所では設置が必要であると考えられるが,本件体育館ではその用に供されることは想定されていない。また体育の授業ではマットを用いるなどしていることからしても,本件特殊素材を設置する必要性は低い。③本件特殊素材の設置には,費用や工事のための時間がかかるため,設置には困難が伴う。
 以上からすると,本件特殊素材を設置していないことは,本件体育館が通常有すべき安全性を欠くものとは認められず,「瑕疵」にあたらない。
  ⑶ よって,Cの上記請求は認められない。
 2.小問2
  ⑴ 乙市に対する請求
   ア.Cの乙市に対する国賠法1条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
   イ(ア) 「公権力の行使」とは,国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国賠法2条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用をいう。乙中学では,文化祭のコンサートは正課の一部とされており,学校教育活動の一環であることが認められるから,「公権力の行使」にあたる。
    (イ) 学校教員には,一般的に,学校での教育活動から生じる危険から生徒を保護する義務があるところ,正課として位置づけられている文化祭の場面において,かつ,以前から生徒が悪ふざけをして騒ぐことがよくあったことが指摘されている本件においては,学校教員としては,より厳格な注意義務を負う。上記のような本件の事情の下では,文化祭においても生徒間で悪ふざけがをすることが予想され,悪ふざけが高じて生徒がけがを負うような事態が生じることも予見可能であったといえる。そうすると,教員としてはこれを防止する策を積極的に講じるべきであったのにもかかわらず,これを怠っている。そうると,学校教員には,上記注意義務違反があり,「過失」が認められる。
    (ウ) Cは脊椎損傷の重大な「損害」を被っており,上記過失との間に因果関係が認められる。
   ウ.よって,Cの上記請求は,その要件を満たすため,認められる。
  ⑵ 甲県に対する請求
 Cは,甲県が「費用を負担する者」にあたるとして,国賠法3条1甲に基づく国家賠償請求をすることが考えられる。
 上記のように乙市は国賠法2条1項に基づく責任を負うから,「前二条の規定によって……公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合」にあたる。
 学校教育法5条は,学校の経費の負担をすべき者を「学校の設置者」としているから,乙市が費用負担者であって,甲県は「費用を負担する者」にはあたらないようにも思える。しかし,乙市立中学校の教員は,市町村立学校職員給与負担法1条1項の職員に該当し,その給与については甲県が負担することとなる。そうすると,甲県は,乙市立中学校の教員の給料等の人件費を負担しているのであるから,「費用を負担する者」にあたる。
 「損害」については上記のとおりである。
 したがって,Cの上記請求は認められる。
以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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2018-05-29(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題7

公法演習の期末試験がつらいです。

まじで何が出るか分からないのつらいな。

全範囲ってなんだよ。

情報公開法とかも入るの???どうなの???

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 A県内の飲食店Pにおいて食事をした客Fが,嘔吐・下痢等の食中毒症状を訴えて,病院で入院する事故が起こり,Fを診察した医師からA県の保健所に通報があった。保健所の職員であるBが,原因を調査したところ,Fの食中毒の原因となった病原菌は発見されず,Pの提供した食事が食中毒の原因になったかどうかは明らかにならなかった。しかし,Pの施設の検査の結果,調理場や調理器具の清掃ないし洗浄が不十分であり,また,十分な容量の冷蔵・冷凍保管庫が設けられていないなど,施設の管理ないし設備が食品衛生法50条および51条に基づき同法施行令および同法施行条例で定められた基準に適合していないことが明らかになった。
 Bが以上の調査結果を保健所長Cに報告したところ,Cは,Pが,これまでに食中毒事故を理由に食品衛生法上の営業禁止等の処分を受けたことはなかったこと,今回も,F以外に食中毒事例の報告がいなこと,また,Pの経営者が,直ちに施設の管理ないし設備を改善すると言明していることなどを考慮し,Pに対し,施設の管理ないし設備を改善してから営業を再開するようにとの行政指導をするにとどめ,それ以上の対処は行わず,以上の経緯をA県知事に報告した。ところが,Pは行政指導を無視して営業を再開し,1ヵ月後,このような経緯を知らずにPで食事をしたXらに,Pの施設の管理ないし設備の不備が原因となった重症の食中毒が発生し,Xの長男で幼児であったGが死亡した。

〔設問〕
 Xは,A県知事がPに対して適切な規制をしなかったために,食中毒被害を受けたとして,A県知事を相手取って,国賠法1条1項に基づき,損害賠償を求める訴えを提起しようとしている。Xはこの訴えにおいてどのような主張をすべきか。

【資料】(略)

国賠も,多少はね?

≪答案≫
1.XのA県に対する国家賠償請求(国賠法1条1項)は認められるか。
2⑴ A県知事は「公共団体の公権力の行使に当る公務員」であり,食品衛生法上の営業施設に対する規制はA県知事の権限とされているから(同法55条,56条),Pに対して適切な規制をすることは,「その職務」に含まれる。
 ⑵ア.A県知事がPに対して適切な規制をしなかったことは「違法」であるといえるか。
 食品衛生法55条,56条は,都道府県知事に対して,その規制権限について「できる」という文言を用いており,営業に対する規制にあたっては専門的・技術的観点からの検討が必要であることに照らせば,都道府県知事の規制権限の行使又は不行使は,その裁量的判断に委ねられるべきものである。したがって,都道府県知事の規制権限の不行使は,国賠法上ただちに違法とはならない。もっとも,法令の趣旨・目的や権限の性質に照らして権限の不行使が著しく合理性を欠く場合には,権限の不行使は国賠法上違法の評価を受ける。この判断にあたっては,①危険の存在,②予見可能性,③結果回避可能性,④補充性,⑤期待可能性などを考慮する。
  イ.これを本件についてみると,食品衛生法55条,56条は,公衆衛生等に配慮した同法6条,51条等に違反した場合に規制をすることができるとしていること,同法58条が食中毒に関する調査・報告義務を課していること,同法1条が「国民の健康の保護」を趣旨として掲げていることを併せ考えれば,同法の目的は,衛生基準を満たさない施設を規制して食中毒事故を防ぐ点にあると考えられる。したがって,A県知事は,この権限を,被害の防止のために適切に行使する義務を負う。
 そして,①Pの施設は,調理場や調理器具の清掃ないし洗浄が不十分であるなど,衛生面での整備が行き届いていない点が見受けられる点からすると,客観的に生命・健康に対する危険が存在していたということができる。②上記のような整備不良があり,しかもこれが法令上の基準を満たしていない点からすれば,Pがこれを改善しないまま営業を再開した場合には宿中毒をはじめとする新たな被害を生じるおそれがあることは,A県の担当者において予見することが可能であったといえる。③Pの施設は,食品衛生法50条及び51条に違反している事実があったことから,A県知事は同法55条ないし56条に基づく規制権限を行使することが可能であり,これによって改善命令や営業停止処分がされていれば,被害の発生を防ぐことはできたものと考えられる。④XおよびGは,これまでの経緯を知らずにPにおいて食事をするに至っているから,A県知事による上記処分がされなければ,被害を回避することはできなかったということができる。⑤A県知事において,上記規制権限を行使するのに障害となるような事実は存在しないから,A県知事に上記権限の行使を期待することができたといえる。
 以上の点からすれば,食品衛生法の趣旨・目的に照らして,A県知事の規制権限の不腰は著しく合理性を欠く。なお,保健所長CがPの経営者に対して行政指導をしている事情は,侵害されるおそれのある法益が生命・健康という重要なものであることに照らせば,上記の結論を左右するものではない。
  ウ.したがって,A県知事がPに対して適切な規制をしなかったことは「違法」である。
 ⑶ A県知事が上記権限を行使しなかった点について,少なくとも「過失」が認められる。また,Gが死亡していることから,「損害」も発生している。
3.よって,Xの上記請求は,その要件を満たすため,認められる。
以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2018-05-28(Mon)

【事例研究行政法】第1部問題5

ひたすら事例研究……。

期末はもう明日に迫ってきているのですが,

果たして間に合うのでしょうか……。

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。
Ⅰ 砂利採取法にいう砂利採取業者であるAは,甲県内の砂利採取場で認可の日から1年間砂利採取を行うことを内容とする採取計画を定め,2016年4月,砂利採取法16条に基づく認可の権限を有する甲県知事に認可を申請した(以下「本件申請」という)。本件申請にかかる砂利採取場(以下「本件砂利採取場」という)の周辺には,自家用井戸を設置して地下水を生活用水として使用している住宅がある。本件申請に係る採取計画では,本件砂利採取場においては土地の掘削に係る跡地の埋戻しを行い,埋戻しに使用する土砂としては県外のマンション建設現場から出た残土を使用するものとされていた。本件申請があったことを知った周辺住民らは,埋戻しに建設残土を使用することは地下水を汚染するおそれがあると主張して,甲県に対し,本件砂利採取場における砂利採取には反対である旨の陳情をした。そこで甲県の担当者は,Aに対し,埋戻しには建設残土を使用しないことを求める行政指導を行った。Aは,埋戻しに使用する予定の建設残土のサンプル分析を専門業者Bに依頼し,環境省の定める土壌汚染に係る環境基準所定の有害物質に関しては,いずれも基準値を下回っているとの調査結果を得た。Aは,この調査結果に係る書類を甲県に提出し,本件申請を速やかに認可するよう求めた。
 ところが甲県知事は,2016年8月22日,本件申請を認可しない旨の処分(以下「本件不認可処分」という)をした。翌日Aが受け取った本件不認可処分に係る通知書では,処分の理由として,「砂利採取場周辺の井戸水の利用に悪影響を与えないとはいえず,他人に危害を及ぼし,公共の福祉に反すると認めるので,砂利採取法19条の不認可自由に該当する」と記載されていた。Aが甲県に苦情を申し出たところ,甲県の担当者は,Bによる調査結果に疑問があるわけではないが,調査されたもの以外の建設残土が混入することなどにより,地下水が汚染される可能性が全くないとはいえず,地域住民の不安が解消されていないので,本件不認可処分がなされたという説明をした。
 甲県のウェブサイトでは,砂利採取計画の認可に係る審査基準が講評されており,その中には「掘削箇所への地下水の浸透,地下水位の低下その他の地下水の変化により,砂利採取場周辺の井戸水,農業用水その他の水の利用に悪影響を与えないように行うものであること」という定めがある。なおAは,これまで砂利採取法に違反する行為を行ったことはない。

〔設問1〕
1.本件不認可処分に不服があるAは,訴訟も辞さないとして,2016年9月1日に弁護士に相談した。あなたが弁護士の立場であるとして,どのような争い方がありうると答えるか(仮の救済については触れなくてよい)。
2.本件不認可処分が違法であるとする主張としては,どのようなものが考えられるか。

Ⅱ 乙県知事から砂利採取業の登録を受けているCは,乙県内の砂利採取場で2016年7月25日から翌年7月24日までの間砂利採取を行うことを内容とする採取計画を定め,砂利採取法16条に基づく認可の権限を有する乙県知事に認可を申請した。乙県知事はCの申請を認可する旨の処分をした(以下これを「本件認可」という)。乙県における砂利採取計画の認可に係る審査基準では,隣接地等の崩壊を防止するため,最低2mの保安距離を隔てたうえで掘削を行うものでなければならないという定めがあったが,本件認可に係る採取計画では,隣接地から最低4mの保安距離を置くものとされていた。しかしながら2016年9月上旬,隣接地との距離が2m以上4m未満の場所(以下これを「本件場所」という)でCが掘削を行った事実が発覚した。そこで乙県の担当者は,同月15日,Cに対して,本件場所における掘削を中止し,月末までに本件場所を原状回復することを指導するとともに,改善がみられない場合には本件認可の取消しもありうること警告した。Cは本件場所における掘削は中止したものの,原状回復は月末までには行われなかった。同年10月3日,本件場所の原状回復が行われていないことが確認されたため,乙県知事は,直ちに本件認可を取り消す処分をした(以下これを「本件取消処分」という)。翌日Cが受け取った本件取消処分に係る通知書では,処分の理由として,「貴殿は,認可に係る採取計画に違反して砂利採取を行った。砂利採取法21条違反が認められるので,同法26条の規定に従い,認可を取り消した」と記載されていた。
 乙県では,同法26条に基づく認可の取消し等の処分については,処分基準は作成されていない。Cは本件以前において砂利採取法に違反する行為を行ったことはなく,目下のところ本件場所およびその付近における災害は発生していない。

〔設問2〕
1.本件取消処分に不服があるCは,2016年中に取消訴訟を提起した。その後,裁判所の判決が出る前に本件認可に係る掘削期間が経過してしまった場合には,訴えの客観的利益は消滅するか。
2.本件取消処分が違法であるとする主張としては,どのようなものが考えられるか。

【資料】(略)


≪答案≫
第1.設問1
 1.小問1
  ⑴ 本件不許可処分は,砂利採取法(以下「法」という。)16条の規定による処分であるところ,これに不服がある者は,公害等調整委員会に対して裁定の申請をすることができる(法40条)。この場合,裁定を申請することができる事項に関する訴は,裁定に対してのみ提起することができるとされているから(土地利用調整手続法50条),本件不許可処分に対する取消訴訟を提起することはできない。したがって,Aの弁護士としては,まず,公害等調整委員会に対する裁定の申請を行う。
 なお,裁定の申請期間について,Aが本件不認可処分があったことを知った日は2016年8月23日であるところ,Aが弁護士に相談した同年9月1日では,未だ「3月を経過」していないから(土地利用調整手続法25条1項),適法である。
  ⑵ 上記裁定について,棄却裁定がされた場合には,Aとしては認容裁定を望んでいるものと考えられるため,Aの弁護士としては棄却裁定の取消訴訟を提起した上で,認容裁定の義務付け訴訟を併合提起する(行訴法37条の3第7項)。
 2.小問2
  ⑴ 実体的違法
   ア.甲県知事が,本件不認可処分の理由として,他人に危害を及ぼすおそれを挙げている点に違法はないか。
 採取計画の認可にあたっては,法19条の事由(以下「不認可事由」という。)が存する場合には不認可処分をしなければならないところ,不認可事由には「他人に危害を及ぼし」や「公共の福祉に反する」といった抽象的文言が用いられている。そうすると,同条の趣旨としては,不認可事由に該当するか否かについては,専門的・技術的判断が必要であるから,甲県知事に要件裁量を認めているものと考えられる。したがって,甲県知事が不認可事由の該当性を判断するにあたっては,要件裁量が認められる。もっとも,裁量権に逸脱・濫用がある場合には,それによってされた処分は違法である(行訴法30条)。
 これを本件についてみると,甲県では,採取計画の認可にあたっての審査基準(以下「本件審査基準」という。)が作成されているところ,その中では「砂利採取場周辺の井戸水……の利用に悪影響を与えないように行うものであること」が規定されている。砂利採取の結果,周辺の地下水の利用に悪影響が生ずることは,通常あり得る事態であって,それを原因として地下水を飲用している者の健康が害されるなど,その利益に影響を及ぼすことも想定されるところである。したがって,本件審査基準の定めるところは合理性を有しており,甲県知事が採取計画の認可を判断するにあたって地下水への影響を考慮することは許される。しかし,Aは,埋戻しに使用する予定の建設残土については,環境基準に違反しないとの調査結果を得ているうえ,Aがこれまで法に違反する行為を行ったことは認められていない。そうすると,Aが砂利の採取にあたって不正を行うおそれがあることを認定することはできず,調査された建設残土以外のものを使用する危険性があるとも認められない。さらに,有害物質を含む建設残土が埋戻しに使用されることを防止するためには,認可に条件を附すことにより対処することができる(法31条)。以上からすると,本件不認可処分にあたっては,甲県知事は,Aが他人に危害を及ぼすおそれがないのにもかかわらず,これがあるものと誤認している点で,裁量権の逸脱・濫用がある
 したがって,本件不認可処分は,違法である。
   イ.上記のように,他人に危害を及ぼすおそれがないとしても,甲県知事は,公共の福祉に反する点のみをもって本件不認可処分を維持する可能性がある。
 しかし,法19条の文言に照らすと,「公共の福祉に反する」ことは,それ単独として不認可事由を構成するものではなく,これと併せて「他人に危害を及ぼし,公共の用に供する施設を損傷し,又は他の産業の利益を損じ」ることのいずれかが認められる必要がある。そうすると,「他人に危害を及ぼ」すおそれがなく,その他の不認可事由も認められない本件においては,「公共の福祉に反する」ことのみをもって,不認可処分をすることはできない。
 したがって,本件不認可処分は違法である。
  ⑵ 手続的違法
 本件不認可処分は,「申請に対する処分」(行手法2章)にあたるから,これをするにあたっては理由の提示が必要である(同法8条)。同条の趣旨は,行政庁の処分に関する判断の慎重・公正を確保しつつ,処分の相手方がこれに対して不服申立てをする際の便宜を図る点にある。そこで,理由の提示は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分を行ったかを,申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならない
 これを本件についてみると,本件不認可処分に係る通知書に記載された処分の理由は,審査基準で用いられている文言と法19条の文言をつなぎ合わせたものにすぎず,実質的に法律の規定と審査基準を示すにとどまるものである。この記載からは,Aが使用する建設残土について環境基準違反がない旨の調査結果が得られているにもかかわらず,なぜ周辺の井戸水の利用に悪影響を与えないとはいえないと判断されたのかが理解できない。そのため,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して本件不認可処分を行ったかが,理由の記載自体から了知することができない。
 したがって,本件不認可処分には,行手法8条違反の違法がある。
第2.設問2
 1.小問1
 訴えの客観的利益とは,当該処分を取り消す実際上の必要性をいう。
 本件認可に係る採取計画では,採取期間を2017年7月24日までと定めているから,同期日を経過すれば採取を行うことはできなくなる。そうすると,本件取消処分を取り消しても,引き続き採取することはできないのであるから,本件取消処分を取り消す実際上の必要性はないようにも思える。しかし,法26条により認可を取り消された場合,都道府県知事はその砂利採取業者の登録を取り消し,又は6月以内の期間を定めてその事業の全部若しくは一部の停止を命ずることができるとされている(法12条1項5号)。そうすると,Cは本件取消処分を原因としてこれらの処分を受けるおそれがなおも残存するから,これを除去すべく本件取消処分を取り消す実際上の必要性が認められる
 したがって,本件取消処分の取消訴訟の訴えの客観的利益は,採取期間の経過をもっても消滅しない。
 2.小問2
  ⑴ 実体的違法
 Cとしては,本件取消処分は,比例原則に反し,違法であると主張することが考えられる。
 法26条は「できる」という文言を採用している点に鑑み,認可を取り消すか否かの判断に際しては,これを取り消さなければならない事情や取り消した場合の影響等を詳細に考察する必要があり,専門的・技術的診断が必要であるから,認可の取消処分をするか否かには乙県知事に効果裁量が認められる。もっとも,裁量権の逸脱・濫用がある場合には,当該処分は違法となる。
 これを本件についてみると,たしかに本件場所は,採取計画に定められた4mの保安距離を下回る場所であり,Cの掘削はこの点に違反している。しかし,本件場所は,乙県の審査基準との関係では,これに違反している点はないのであり,また,実際に災害が発生したという事実はない。さらに,Cが過去に法に違反する行為を行ったことはない。そうすると,Cが本件場所で掘削を行ったことは,21条違反であるとしても,重大な違法とはいえない。このような本件の性質に照らせば,法26条に定める処分のうち最も重い取消処分としたのは,比例原則に反する
 したがって,本件取消処分は違法である。
  ⑵ 手続的違法
 本件取消処分は,「不利益処分」(行手法2条4号,3章)であり,そのうち「許認可等を取り消す不利益処分」(同法13条1項1号)であるから,聴聞手続が必要である。しかし,本件取消処分をするにあたって,Cの聴聞手続がとられていない。また,本件場所およびその付近において災害が発生していないことからすれば,「公益上,緊急に不利益処分をする必要がある」ともいえない(同条2項1号)。 したがって,本件取消処分は,行手法13条1項1号に違反している。
 よって,本件取消処分は,違法である。
以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
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2018-05-28(Mon)

【事例研究行政法】第1部問題4

公法演習とかいう科目の期末試験が迫ってきています。

つらいです。

仕方ないので,行政法のお勉強をします。

憲法は知りません。

≪問題≫
株式会社であるAは,甲市内において地上15階建,戸数140戸,高さ約45mの分譲マンション(以下「本件マンション」という)を建設するため,都計法上の都市計画区域内にある面積6,300㎡の平坦な土地(以下「本件開発区域」という)につき,甲市長に,都計法29条1項に基づき,予定建築物の用途を「共同住宅(分譲)」とする開発行為(以下「本件開発行為」という)を受けた。なお,開発行為とは,主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更(都計4条12項)である。Bは,本件開発区域から約10m離れた場所に土地および同土地上に木造2階建ての建物を所有して居住しており,本件マンションは,本件開発区域内の,Bの土地・建物から約20m離れた場所に建設されることになっている。Bは,⑴本件開発区域は,市街地に残された貴重な緑地であり,これが開発によって破壊されると住環境が悪化すること,および,⑵本件開発区域外の周辺の地域は道路が狭隘な箇所が多く,そのような場所で大規模な開発を行い,本件マンションを建設した場合には,周辺地域での交通事故が多発するおそれがあるし,災害時に本件開発区域に緊急自動車が円滑に進入できない可能性が高く,無謀な開発であることを理由に,本件開発行為に反対している。

〔設問〕
Bに,本件開発許可の取消訴訟の原告適格が認められるか。

【資料】(略)



≪答案≫
1.Bは本件開発許可の相手方ではないが,Bにこの取消訴訟の原告適格が認められるためには,Bが「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)にあたることが必要である。
 ここで,「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがある者をいう。そして,当該処分を定めた根拠法規が,不特定多数者の具体的利益を,専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,これを個々人の個別的利益としても保護する趣旨であると認められる場合には,ここにいう利益も法律上保護された利益にあたる。このとき,行訴法9条2項の考慮要素を参照する。
2.Bが主張する利益としては,要するに,①緑地保存による良好な住環境の維持,②交通の安全及び③緊急車両の通行すなわち周辺住民の生命,身体であると考えられる。
 ⑴ ①について
 本件開発許可の根拠法規は,都計法(以下「法」という。)29条であって,当該許可の基準は法33条に定められている。法33条1項9号は,「政令で定める規模」すなわち「1ヘクタール」(法施行令(以下「令」という。)23条の3本文)「以上の開発行為」を行う場合に,「開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存」等の措置を要件としている。同号が適用される開発規模は,条例で「0.3ヘクタール」まで引き下げることができるから(令23条の3ただし書),本件開発区域の6,300㎡についても適用対象となる余地がある。そうすると,都計法は,①の利益を,不特定多数者の具体的利益として保護することとしていると考える余地はある。
 しかし,①の利益は,生命,身体又は財産等の具体的な利益とは性質が異なるうえ,不利益が及ぶ範囲も明確ではない。そうすると,このような利益は,あくまで公益として保護されるべきものであって,法律に特にこれを保護する規定がない限り,これを個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることはできない。
 したがって,①の利益を主張する場合には,Bの法律上保護された利益と認めることができず,Bは「法律上の利益を有する者」にあたらない。
 ⑵ ②について
 まず,法33条1項2号は,「通行上の安全」という文言を用いているが,ここにいう「通行上の安全」とはあくまで開発区域内の交通に関わるものであると考えられる。したがって,当該規定から直接的に開発区域外の交通の安全を保護する趣旨は読み取れない。
 次に,同号は,「開発区域内の主要な道路が,開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていること」を要件としている。加えて令25条1号は「開発区域外の道路の機能を阻害すること」がないことを,また同条4号は「開発区域内の主要な道路は,開発区域外の幅員9メートル……以上の道路」と接続していることを,それぞれ要件としている。これらの規定からすれば,法は,開発許可をするにあたっては,開発区域外の道路についても配慮すべきことを規定しているものと考えられる。そうすると,法は,②の利益を,不特定多数者の具体的利益として保護しているものと考えられる。
 しかし,道路は不特定多数者によって自由に利用されるものであるうえ,交通事故等による被害は,開発許可によって直接生じるものではなく,第一次的には道路交通法等の規制によって対処されるべきものである。そうすると,法は,②の利益を,個々人の個別的利益としても保護する趣旨までは含んでいないものと考えられる。
 したがって,②の利益を主張する場合には,Bの法律上保護された利益と認めることができず,Bは「法律上の利益を有する者」にあたらない。
 ⑶ ③について
 法33条1項2号は,「開発区域の……周辺の状況」を「勘案して……災害の防止」に支障が出ないことを要件としており,加えて,上記のように,開発区域外の道路との接続等について規定している。そうすると,法は,緊急車両が通行が円滑に行われることを想定しているものと考えられる。そして,火災などの災害時には,予定建築物の倒壊や開発区域外への延焼により,開発区域外にも被害が拡大することが容易に想定される。そして,法が上記のように「周辺の状況」を考慮すべきものとしていることからも,法は単に緊急車両の通行だけにとどまらず,さらに周辺住民の生命,身体の安全についても保護対象としているものと考えられる。
 そして,災害時には,開発区域外の,開発区域に近接する地域に居住する住民に,直接的に生命,身体にかかる重大な被害が及ぶおそれがある。そうすると,法は,開発区域内における予定建築物の火災等の災害により直接的被害が及ぶことが予想される範囲の地域に居住する住民の利益を,個別的利益として保護する趣旨を含んていると考えられる。
 これを本件についてみると,Bは,高さ45mの予定建築物から約20mの場所に居住しており,予定建築物の倒壊や延焼により,Bの生命,身体等に直接被害が及ぶことが想定される。したがって,Bは,法が個別的利益として保護することを予定している範囲に含まれるものということができる。
 したがって,③の利益を主張する場合には,Bの法律上保護された利益と認めることができ,これを必然的に侵害されるおそれもあるから,Bは「法律上の利益を有する者」にあたる。
3.よって,Bは,本件開発許可の取消訴訟の原告適格が認められる。
以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
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2018-05-24(Thu)

【旧司】憲法平成15年度第2問

憲法をやろうと思ったという記事を前回書きましたが,

憲法には,人権だけではなく,統治分野もあるということが,

最近の研究によって明らかになりました。

したがって,当地の問題も解かないといけないようです。

つらい。

≪問題≫
政党が民主政党において重要な役割を果たしていることにかんがみ,政党助成金の交付を受けるためには「党首を党員の選挙によって選出しなければならない」との条件を法律で定めたと仮定する。この法律の合憲性について論ぜよ。

なぜこの問題を選んだのか。

そう思ったのは,あなただけではありません。

私もです。

別にこの問題がやりたかったわけではなく,

たまたま開いたページにこの問題が載っていたというだけのこと。

それ以上でもそれ以下でもないわけです。

≪答案≫
1.「党首を党員の選挙によって選出しなければならない」との条件(以下「本件条件」という。)を法律で定めることは,政党の自律権を侵害するものとして,憲法21条1項に反し,違憲とならないか。
2.政党とは,共通の政治的思想を持つ者が,その政治的思想を実現するために組織した政治団体をいう。
 かかる政党は,私的かつ自発的に結成された団体であり,結社の自由(憲法21条1項)による保障を受ける。また,憲法の定める議会制民主主義(憲法43条1項)は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできない。そうすると,憲法は,政党の存在を当然に予定しているものというべきであり,政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素である。
 ただ,あくまでその本質は結社の自由により保障される私的団体であるため,その自律権が強く保障されなければならない。
3.政党の公的役割に鑑みると,代表民主制(憲法43条1項)が正常に機能するためには,党内が民主的に運営されていることが望ましいといえ,党首の選出方法についての規制を認めるべきともいえる。
 しかし,上記のように,政党が結社の自由の保障を受ける私的団体であることに照らせば,その内部をいかに組織し,運営するかについては自律権が認められるべきである。そして,党首の選出は,政党の組織,運営の根本的な営みであり,政党の方針などに直接かかわる重要性の高い事項であるということができるから,特に強い自律権が尊重されるべきである。
 また,代表民主制の維持については,国民の選挙によって実現されているから,党内においてこれとは別に民主主義的構造を要求する必要性は乏しい。そうすると,これを法制化する必要性は低いということができる。
 以上からすると,党首の選出方法についての規制は,訓示的規定として法制化することは許されるが,それを超えて強制力を伴う場合には憲法21条に反すると考える。
4.本件条件は,政党助成金の交付を受けるための条件として設けられているものである。したがって,政党の存立自体を直接規律するものではない。
 しかし,政党の活動規模が拡大し,それに伴う費用が増大している中で,政党助成金の交付を受けるか否かによって,政党の活動に与える影響は大きいものと考えられる。そうすると,特に小規模で資金力の乏しい政党にとっては,政党助成金の交付を断念してまで政党内の民主主義的手続を設定しないという選択肢は事実上取り得ない。
 したがって,本件条件は,実質的には,政党の存立条件としての機能を有しており,その範囲で強制力を伴うものである。
5.よって,本件条件を伴う法律は憲法21条1項に反し違憲である。
以 上

これを解く意味があったのか。

それは試験本番になるまでは分からない。

2018-05-24(Thu)

【旧司】憲法昭和56年第1問

予備短答が終わりました。

伊藤塾,辰巳,LECでそれぞれ自己採点をしてみましたが,

三者三様の解答を公表しているおかげで,どこも合計点が違うということが起きています。

しかしそれでも,180点は超えているようですので,一安心です。

ちなみに短答を通過した(かどうかは分かりませんが)のは,今回が初めてです。やったね。

ということで,論文の勉強を始めないといけないわけですが,

とりあえず,ローの期末が迫ってきている公法系からやります。

勉強方法は,やはり旧司を解くということにします。

≪問題≫
 Aバス会社は,バス運転手としてBを採用するか否かを決定するに当たり,Bの交通違反及び交通事故の前歴を調査することとし,犯罪歴に関する記録を保管するC官庁に対し,公的機関のもっている情報は,国民に広く利用されるべきであるとの理由により,Bの右前歴を教示するように求めた。
 このAの要求について,憲法上の論点を指摘して説明せよ。

オリジナルの問題は以上ですが,今回は新司を意識して,

Bの前歴がCからAに教示されてしまったことを前提に,

主張反論形式で答案を構成したいと思います。

≪答案≫
第1.Bの主張
 1.Bは,CがBの前歴をAに対して教示したことは,Bの前歴を知られない自由を侵害するものであり,憲法13条に反し違憲であるとの主張を行う。
 2.憲法13条は,「幸福追求に対する国民の権利」について保障している。これは,国民が原則としてその私生活へ他者から干渉されることなく自由に行動できることを保障したものである。そうすると,同条は,国民の私生活上の自由が公権力に対しても保護されるべきことを規定している。そして,自らが知られたくない情報を他者に知られるおそれがある場合には,国民が自由に行動することができなくなるから,同条は,個人の私生活上の自由として,自己の情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を保障していると考えられる。
 前歴もその人の情報であるから,前歴を知られない自由は,自己の情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由として,同条により保障される。
 3.前歴は,人の名誉,信用に直接かかわる事項であって,これを他人に知られないことの要保護性は強い。したがって,これに対する制約が認められるか否かは,厳しく判断される必要がある。
 また,自己の前歴が開示された場合には,それによって,就職の場面で不利益な因子になるなど,社会生活を営む上で,大きな不利益となるおそれがある。そうすると,前歴が公開された場合における上記自由に対する制約の程度は強いということができる。そこで,これが憲法に適合するか否かは,厳しく判断される必要がある。
 したがって,上記事由に対する制約は,やむにやまれぬ利益の実現を目的とするものであり,その目的を達成するための手段として必要最小限度のものと認められない限りは,違憲である。
 4.そもそもAがCに対して,Bの前歴を教示するように求めたのは,バス運転手として採用するか否かの決定に際しての判断材料として用いるためである。そうすると,Bの前歴の公表は,AがBを雇い入れるか否かの判断材料を増やす目的しか有していないのであり,生命身体に対する危害を防止するといった高次の利益を有さず,単なる企業活動の一環に用いられるにとどまる。したがって,CがBの前歴をAに教示することは,やむにやまれぬ利益の実現を目的としていない。
 また,そもそもAがBをバス運転手として採用するか否かにあたって交通事故の前歴を材料にするのは,バス運転手としての適格を判断するためであると考えられる。運転技能は,経験と比例して向上する傾向にあることに照らせば,過去の交通事故の前歴をもって採否を決定するのではなく,運転免許の要件を厳格にするなどして対応すれば足りる。したがって,仮に目的がやむにやまれぬ利益の実現にあると認められるとしても,それを達成する手段が必要最小限度ということはできない。
 5.以上から,CがBの前歴をAに対して教示したことは,憲法13条に反し,違憲である。
第2.Cの反論及び私の見解
 1⑴ Cからは,前歴は公的情報であって,私的情報とは区別され,これを公表されない自由は,個人の私生活上の自由としての自己の情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由としては保障されないとの反論が想定される。
  ⑵ 上記のように,憲法13条の保障根拠は,個人の私生活領域を保護する点にある。前科のような公的情報であっても,時間の経過とともに公開されないことが合理的に期待される事項については,個人の私生活領域に含まれるということができるから,これを公表されない自由は,個人の私生活上の自由としての自己の情報をみだりに第三者に開示又は公開されない自由として保障される。
 2⑴ Cからは,前歴にかかる情報は公的情報としての側面があることには違いないから,それに伴い,開示又は公表されない自由の保障される必要性は一定程度減少し,Bの前歴を公表されない自由の制約の程度は小さく,情報公開の必要性があり,それが相当の範囲にとどまっていれば,正当化されるとの反論が想定される。
  ⑵ しかし,前歴は,それが他人に知られた場合の不利益に鑑み,個人の情報として最も知られたくないものの一つであり,それが開示又は公表されないことの必要性は非常に高いということができる。したがって,前歴を公表することの正当性を被告の主張するような緩い審査によって認めることはできない。
 3⑴ Cからは,AがBをバス運転手として雇用するにあたって交通事故の前歴を教示することは,それによって事故を起こすようなバス運転手を雇い入れることを阻止して,ひいてはバスの乗客の生命身体の安全を確保する目的を有するから,その意義はやむにやまれぬ利益を実現する点にあるとの反論が想定される。
  ⑵ バスの運転手としての採否を判断するにあたって交通違反及び交通事故の前歴を判断材料とするのは,その者がバスを運転することによって交通事故を起こすおそれがあるか否かを判断するためであると考えるのが自然である。そして,バス会社にとって,バスを安全に運行することは最も重要な事項であるから,バスの運転手の採否にあたり,その判断材料の中でも前歴の有無は重要度が高い。これらからすると,Cがする前歴の教示は,バスの乗客の生命身体の安全の保護にあると考えることもでき,やむにやまれぬ利益を実現する目的による制約であるということができる。
 4⑴ Cからは,前歴の教示の範囲はAに限られており,不特定多数者に広く公開するものではないから,必要最小限度の制約であるとの反論が想定される。
  ⑵ しかし,前歴の公開によって生じる不利益は,単に公開される範囲によって決まるものではなく,自己の情報を知られたくない人に知られれば,それのみをもって前歴を知られない自由に対する侵害があったと認められるものである。そして,Bの前歴がAに知られた場合には,Aに雇用されないおそれが大きいから,Bの負う不利益の程度が著しく大きいといえる。したがって,これを必要最小限度の制約ということはできない。
 5.以上から,CがAに対してBの前歴を公開したことは,憲法13条に反し,違憲である。
以 上


憲法の答案の書き方は,いまだによく分かっていません。

特に被告の反論と私見の部分ですね。

いやー原告の言う通りだろとか思っちゃうわけですよね。

複眼的な視点とかなんとかって言いますけれども,

そんなこと言われてもなぁという感想しかないです。

なんとかします。
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お疲れ様です。

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