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2019-02-22(Fri)

【新司】倒産法平成18年第2問

ついに




つ  い  に




倒産法の過去問が解き終わります!!!!!


いやー全年度分答案を作るのは結構大変でした。

やっぱり他の科目よりも勉強経験が浅い分,

何をどこまで書けばいいのかといった相場観が出来上がっておらず,

答案をどう構成するかというレベルでの悩みが多かった気がします。

でも,やっぱり13年分も解けば,それもなんとなくは分かってきたかなあ……

……

…………

……………………………………

そうでもないかもなあ……

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次に掲げる事例について,以下の設問に答えなさい。
【事 例】
 A社は,建設工事を業とする株式会社であったが,折からの不況で,資金繰りが悪化していた。そこで,B信用金庫から1000万円の借入れをしようとしたところ,B信用金庫からは,A社の代表者であるCと,さらにもう1人十分な資力を有している者の計2名の連帯保証と不動産担保とがない限り,融資はできないと言われた。A社はいわゆる同族会社であり,その株式の70%はCが保有しており,代表者であるCのほか,親族である2名の取締役がいるが,業務はCが全面的に執り行っており,他の取締役には十分な資力がなかった。そこで,Cは,高校時代からの友人であり,以前若干の資金援助をしたこともあるDに「絶対に迷惑をかけることはないから。」と懇願し,連帯保証人となるとともに,Dの所有する山林を担保に提供することに同意してもらった。その結果,平成17年10月20日,B信用金庫は,C及びDを連帯保証人とし,D所有の山林に抵当権の設定を受けて,A社に対し1000万円を貸し付けた。なお,C及びDは,連帯保証や物上保証をするに際して保証料を受領していない。
 しかし,その後,A社の主要な受注先である大手建設株式会社が同年11月15日,突然更生手続開始の申立てをし,従来の下請関係を抜本的に見直す措置がとられたため,A社の売上高は大幅に減少した。その結果,平成18年2月24日,A社は,ついに振り出した約束手形を決済できず,当該手形が不渡りになってしまった。そして,3月3日,A社は,破産手続開始の申立てをし,同月10日,開始決定がされた。また,A社の代表者であるCも,多額の連帯保証債務を弁済できない状態になり,3月3日,自ら破産手続開始の申立てをし,同月10日,開始決定がされた。Dは,このような状況の推移に驚いていたが,4月初めになって,B信用金庫の担当者から連帯保証債務の即時の履行を強く請求された。ところが,D自身,自己の経営しているコンビニエンス・ストアについて,近くに24時間営業のスーパーマーケットが出店したことなどから急激にその売上げが落ち込んでいたところであり,そこにこのような連帯保証債務の履行の請求がされれば事業の継続は困難になると判断して,4月14日,再生手続開始の申立てをし,同月28日,開始決定がされた。
 B信用金庫は,A社の破産手続において1000万円の貸付債権について届出をし,Cの破産手続において1000万円の連帯保証債務に係る債権について届出をするとともに,D所有の山林に対する抵当権を近く実行する旨をDに通知した。ところが,Cの破産手続における債権調査では,Cの破産管財人Eは,上記連帯保証契約を否認する旨を主張して,B信用金庫の破産債権を認めない旨の認否をしたので,B信用金庫は破産債権査定申立てをした。また,B信用金庫がD所有の山林に対する抵当権を実行しようとしているので,Dの再生手続の監督委員Fは,否認権を行使する権限の付与を受け,上記抵当権設定契約を否認する旨を主張して,抵当権不存在確認の訴えを提起した。

〔設 問〕
1.あなたがFであるとして,B信用金庫に対する抵当権不存在確認訴訟において,否認権の行使を基礎づけるため,どのような主張をすることが考えられるか。想定されるB信用金庫からの反論も指摘しながら論じなさい。
2.あなたがB信用金庫の代理人であるとして,Cの破産手続における破産債権査定の手続において,Eの否認権の主張に反論するため,どのような主張をすることが考えられるか。CがA社の代表者であるという点を考慮に入れて,想定されるEからの反論も指摘しながら論じなさい。


どいつもこいつも倒産しやがってという感じの問題です。

破産も再生もどっも出てくるのでこんがらがりそうです。

それにしても,全体を通じて,最判昭和62年7月3日の判示をめちゃくちゃ聞いてきますね。

構造的に反対意見についても言及せざるを得ない問題になっています。

第1問との難易度の差が大きすぎではないですかね……

≪答案≫
第1 設問1
 1 Fとしては,DがB信用金庫のために抵当権を設定することを内容とする抵当権設定契約(以下「本件抵当権設定契約」という。)について,無償行為否認(民再法127条3項)をすることが考えられる。
 2⑴ Dは,平成18年4月14日に再生手続開始の申立てをしているから,平成17年10月20日にされた本件抵当権設定契約は,「支払の停止等の前六月以内」にされた行為である。
  ⑵ それでは,本件抵当権設定契約の締結は「無償行為」にあたるか。
 「無償行為」とは,「これと同視すべき有償行為」との対比から,外形的に対価を一切伴わない行為をいう(※1)。本件抵当権設定行為は,DがA社から保証料を支払われることなく,A社のために,A社のB信用金庫に対する1000万円の債務(以下「本件貸金債務」という。)について物上保証をして,対価なくDの所有する山林(以下「本件山林」という。)を担保に供するものであるから,「無償行為」にあたる。
 これに対して,B信用金庫は,債権者の立場からすれば,A社に対する出捐をしているのであり,Dもこの出捐を目的として保証をしているのであるから,両者は相互に密接に関連しており,一体として観察されるべきであり,A社にも。そして,Dは,本件抵当権設定契約をした時点では,自らは何らの出捐をしていないのであり,抵当権が実行されたときにはじめて出捐をするのであって,この場合には,実質的対価としての求償権を取得するのであるから,全く対価のない無償行為ということはできないと反論することが想定される(※2)
 しかし,無償行為が否認の対象となる根拠は,その対償たる破産者の行為が対価を伴わないものであって破産債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため,破産者及び受益者の主観を考慮することなく,専ら行為の内容及び時期に着目して特赦な否認類型を認めたことにある。したがって,その無償性は,専ら破産者について決すれば足り,受益者の立場において無償であるか否かは問わない(※3)。また,求償権は,物上保証人が弁済をしたことに対する補てんを主たる債務者に求めるものにすぎず,物上保証をすることの対価としての性質を有するものではないから,無償行為であることに変わりはない(※4)。そうすると,本件抵当権設定契約については,Dについてのみその無償性を判断すれば足りる。そして,上記のように,Dとの関係では,何ら対価なく本件抵当権設定行為がされているのであるから,「無償行為」にあたる。
 3 よって,Fとしては,本件抵当権設定契約を無償行為否認することができる。
第2 設問2
 1 前提として,Eの主張する否認権は,CがB信用金庫のためにした連帯保証契約(以下「本件連帯保証契約」という。)が無償行為であるとする無償行為否認(破産法160条3項)である。
 2 これに対しては,B信用金庫としては,A社がいわゆる同族会社であって,Cはその代表者であるから,実質的には無償行為にはあたらないと反論することが想定される。一方で,Eからは,CとA社とは別人格であって,これを別個に判断すべきであるとの反論が想定される。
 そこでこの点について検討すると,CがA社に対する善管注意義務(会社法330条,民法644条)ないし忠実義務(会社法355条)を履行するとともに自己の出資の維持ないし増殖を図るために保証をしたものといえるときには,C自ら直接ないし間接に経済的利益を受け破産財団の保全に資したものとして対価関係が認められるため,無償行為にはあたらない(※5)。CはA社の株式を70%保有しており,A社の利益の大部分がCに還元されることとなっているとともに,CはA社の業務を全面的に執り行っているから,その業績を左右させる地位にある。そうすると,Cとしては,A社の代表者として,その資金繰りを安定化させるべ義務を有しており,その履行としてB信用金庫からの借入れを行っており,その結果として,自己の出資の維持ないし増殖にも資する構造となっている。また,CはA社の破産手続開始の申立てと同日に自己の破産手続開始の申立てをしていることから,その利害が密接に関連していたとものと考えられ,A社の資金繰りの維持がC自らの経済的利益に直結していたことが推認される。そうすると,Cは,A社に対する補償をすることによって,自ら直接ないし間接に経済的利益を受け。破産財団の保全に資したものと認められるから,対価関係を肯定することができる。
 したがって,Cが本件連帯保証契約を締結したことは,無償行為にはあたらない。
 3 よって,B信用金庫は以上の主張をすることによって,Eの否認権の主張は認められないこととなる。

以 上


(※1)「『無償行為と同視すべき有償行為』とは,『破産者が対価を出捐したが名目的な金額に過ぎず経済的には対価としての意味を有しない行為を指す』(東京高判平成9年3月25日判時1621号113頁)。したがって,『無償行為』とは外形的に『対価』を伴わないいわば『純粋の無償行為』であり,民法上の無償契約性の判断とは必ずしも一致しない。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』291頁
(※2)「多数意見は、破産者が保証等の行為をしたとしても、それだけでは破産者自身が反対給付を受けることはなく無償行為に当たると解するのであるが、債権者の立場からすれば、主たる債務者に対する出捐をしているのであり、破産者自身債権者の右出捐を目的として保証等の行為をしているのである。両者は相互に密接に関連しており、一体として観察されるべきであつて、別々に切り離して評価することは許されない。もちろん、破産者は、右行為の時点では、債権者から反対給付を受けることはないが、自らは何らの出捐をすることもなく、単に債務の負担をするだけであり、将来保証債務を履行し若しくは担保権を実行された場合にはじめて出捐をすることとなるのであつて、この場合には破産者は実質的対価としての求償権を取得する。したがつて、贈与のような、全く対価のない無償行為ということはできない。なおまた、担保の供与についてみるに、破産者が右のように他人の債務について担保の供与をした場合ではなく、破産者が自己の債務について破産債権者に担保を供与した場合には、破産法七二条二号ないし四号の危機否認の規定が適用されることになるのであるが、ここでは受益者の悪意が否認の要件となる。同じく破産者が担保の供与をした場合であつても、自己の債務についてしたときには主観的要件が必要とされるのに、他人の債務についてしたときにはこれを要しないというのでは、両者の均衡がとれず、甚だ不合理であるといわざるをえない。この二つの場合とも、別除権の対象となりうる点では同じである。」最判昭和62年7月3日民集41巻5号1068頁島谷六郎裁判官反対意見
(※3)「同号[現行破産法160条3項]にいう無償行為として否認される根拠は、その対象たる破産者の行為が対価を伴わないものであつて破産債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、破産者及び受益者の主観を顧慮することなく、専ら行為の内容及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにあるから、その無償性は、専ら破産者について決すれば足り、受益者の立場において無償であるか否かは問わない」前掲最判昭和62年7月3日多数意見
(※4)「破産者が取得することのあるべき求償権も当然には右行為[破産者の保証等の行為]の対価としての経済的利益に当たるとはいえない」前掲最判昭和62年7月3日多数意見
(※5)「主たる債務者が破産者及びその一族の所有かつ経営にかかるいわゆる同族会社であり、破産者がその代表者で名実ともにこれを支配しうる経営者であるような関係にあつて、債権者が破産者の保証若しくは担保の供与(以下「保証等」という。)があればこそ会社に対して出捐をしたものであり、かつ、会社が右出捐を得られないことになれば、その営業の維持遂行に重大な支障を来たすため、破産者自らこれに代わる措置を講ずることを余儀なくされたなどの事情があつて、実質的に、破産者が会社に対する善管注意義務ないし忠実義務を履行するとともに自己の出資の維持ないし増殖を図るため保証等をしたものといえるときには、破産者自ら直接ないし間接に経済的利益を受け破産財団の保全に資したものとして、右行為は無償行為には当たらないものと解するのが相当である。けだし、右の経済的利益の有無は、具体的事案に即して実質的に考察すべきものであつて、多数意見が引用している大審院の判例も、対価関係の存否の判断については破産者の意思をも参酌しうるものとし、破産者自ら経済的利益を受けたといえる場合の例示として、主たる債務者の扶養義務者である破産者が保証等をすることにより債権者の出捐がされたため破産者の右義務の履行が緩和された場合、あるいは一種の企業形態である匿名組合において匿名組合員たる破産者が相手方の営業上の債務につき保証等をした場合を挙げているところ、その趣旨とするところは、前者にあつては、主たる債務者が債権者から出捐を得られなければ、それによる経済的不利益が破産者に帰するため、破産者のする保証等が右の不利益を免れさせる意義を有することとなり、また、後者にあつては、破産者が相手方の営業のために出資しその営業より生ずる利益の分配請求権を有する地位にあるため、自己のする保証等が利益分配請求権及び出資の維持ないし増殖に資するからにほかならないからであり、以上の理は、前述のような場合にも等しく妥当するものというべきである。」前掲最判昭和62年7月3日林藤之輔裁判官反対意見



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2019-02-22(Fri)

【新司】倒産法平成18年第1問

今朝はとても早起きをして,京王ライナー2号の1番列車に乗ってきました。

1年前の下り京王ライナーのデビュー時のような華々しさはありませんでしたが,

調布の上り通過など見どころは多かったと思います。

初日ということで,座席は満席近く埋まっていたようですが,

今後利用者がどのように推移していくか注目したいところですね。

ちなみに,上りの調布通過シーンは,YouTubeにて公開しています。

2号は乗務員室のカーテンを閉めていたので,

前面展望で上り調布通過を拝めたのは4号が初ということになります。


ところで,今日は平成18年第1問です。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 甲建物を所有するA社から同建物を賃借しているBが,次のような事情の説明及び質問をしてきたとする。Bの説明の中の事実関係はすべて証拠によって証明できるものと仮定して,Bの1から4までの質問にどのように回答すべきか検討しなさい。
 なお,回答に際しては,仮にA社について破産手続が開始された場合,A社にはある程度の財産があることから異時廃止になる見込みはなく,破産手続は7,8か月くらいで最後配当を経て終結するであろうことを前提としなさい。

【Bによる事情の説明】
 私は,甲建物の2階全部を所有者であるA社から賃借していて,現在事務所として使っています。賃貸借期間は3年,賃料は毎月50万円で,敷金として300万円(賃料6か月分)を差し入れています。
 賃貸借の開始からもうすぐ2年8か月が経過しますが,A社の債権者からの申立てに基づいて,間もなくA社について破産手続開始の決定がされるようです。約定期間の満了まであと約4か月ありますが,その残り4か月間は,私はまだ甲建物で仕事を続ける必要があります。ただ,賃料がほぼ同額でもう少し広い賃貸物件が見つかったので,約定期間が満了したら賃貸借契約は更新せずに,別の建物に事務所を移すつもりでいます。
 私は,今まで賃料の支払を怠ったことはなく,A社が破産したとしても,A社の社長のCには昔から世話になっていることから,取りあえず残り4か月分も約定どおりに支払うつもりでいます。なお,敷金については,今後万一賃料の不払等があれば格別,そうでなければ控除の対象となる損害金等は現時点ではない旨をCに確認済みです。

【Bの質問】
1.A社の破産管財人がA社の破産を理由として私に甲建物からの即時の退去を求めることはできますか。
2.A社の破産手続開始の決定後も私が賃料を支払い続けることを前提にして,後で敷金相当額を幾らかでも回収する方法はないのでしょうか。
3.A社の破産手続において敷金返還請求権を行使しなければならないとして,その行使はどのようにすればよいのでしょうか。また,どのように支払を受けることができるのでしょうか。
4.Cによると,A社は再生手続開始の申立てをすることを検討中であるとのことです。仮にA社について再生手続が開始されても,私は賃料を支払い続けるつもりですが,この場合,敷金返還請求権をどのように行使することができるでしょうか。


えっ……!!?!??!?!?!?!???

なんというか,

平和すぎじゃないですか???

込み入った論点は特にないように思うんですが……

え……逆に,この13年間で司法試験委員会に一体何があったんでしょう……

それくらい問題の難易度の差がすごいと感じました。

≪答案≫
第1 質問1
 1 A社とBとの間では,甲建物2階部分についての賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)が締結されている。これに基づいて,A社はBに対して甲建物を使用収益させ,BはAに対してこれの対価を支払う義務を負うこととなるから(民法601条),双務契約である。そして,約定の賃貸借期間は満了していないため,残期間分の双方の義務が未履行の状態となっている。この状態で,A社は破産手続が開始されようとしている。したがって,本件賃貸借契約は,双方未履行双務契約として,破産法53条の規律に従うこととなるのが原則である。
 この場合,A社の破産管財人は,本件賃貸借契約を「解除」するか,これを継続して「履行を請求する」かを選択することとなる(同条1項)。
 2 もっとも,本件賃貸借契約について,破産法56条1項の適用がある場合には,同法53条の適用はなくなり,本件賃貸借契約が係属することとなる。
 そこで,本件賃貸借契約について,同法56条1項の適用があるかについて検討すると,建物賃貸借の対抗力は建物の引渡しによって生ずるところ(借地借家法31条),BはA社から既に甲建物2階部分の引渡しを受けているから,Bは甲建物の賃借権について対抗力を有している。したがって,「賃借権を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき第三者に対抗することができる要件を備えている場合」にあたるから,破産法56条1項の適用がある。
 したがって,本件賃貸借契約について,同法53条1項の適用はないから,本件賃貸借契約が破産管財人によって解除されることはない。
 3 したがって,Bに対しては,A社の破産管財人はA社の破産を理由として甲建物からの即時の退去を求めることはできないであろうと回答することとなる。
第2 質問2
 1 BはA社に対して,本件賃貸借契約に付随する敷金契約に基づいて,敷金返還請求権を有する。前提として,敷金返還請求権の法的性質について検討すると,敷金は賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し,賃貸借終了後建物明渡がなされた時において,それまでに生じた一切の被担保債権を控除しなお残額があることを停止条件として,その残額につき敷金返還請求権が発生する(※1)
 2⑴ そうすると,敷金返還請求権は,停止条件付債権であるから,これを自働債権として相殺をすることは原則としてできない(破産法67条1項,2項前段)。
  ⑵ もっとも,敷金返還請求権の上記性質に照らすと,賃借人としては,敷金を賃貸人に差し入れたときから,敷金と賃料とを相殺することに対する期待を少なからず有しており,賃貸人が破産した場合には特にそのような期待を強く有しているということができる。
 そこで,破産法70条後段は,賃借人は賃貸人に対し,賃料債務に弁済について,弁済額の寄託を請求することができるものとしている。Bは「敷金の返還請求権を有する者」であり,本件賃貸借契約に基づいて「賃料債務を弁済」する場合であるから,「弁済額の寄託を請求することができる」。
 この方法により,Bは,本件賃貸借契約に係る残賃貸期間分の賃料債務として支払う200万円分の寄託を請求することができ,本件賃貸借契約が終了したときに200万円の回収を図ることができる。
 3 したがって,Bに対しては,寄託請求により200万円の回収をすることができると解答することになる。
第3 質問3
 1 上記のように,BがA社に対して有する敷金返還請求権は,本件賃貸借契約に付随して締結された敷金契約に基づくものである。この敷金契約は,A社の破産手続開始前にされたものであるから,上記敷金返還請求権は,「破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるとして「破産債権」として扱われる(破産法2条5項)。
 2 破産債権は,破産手続によらなければ,これを行使することができない(同法100条1項)。上記敷金返還請求権は,停止条件付債権であるが,そうであっても破産手続に参加することはできる(同法103条4項)。したがって,Bは,上記敷金返還請求権を,破産債権として届出をする必要がある(同法111条1項)。その後,上記敷金返還請求権について,調査がされ(同法117条以下),異議等がなければ確定する(同法114条1項)。
 3 上記敷金返還請求権が確定すれば,A社の破産財団から配当を受けることとなるのが原則である(同法193条1項)。もっとも,上記敷金返還請求権は停止条件付債権である以上,その条件が成就するとは限らないから,本来的に配当を受ける基礎が不安定な状態である。そこで,停止条件付債権については,除斥期間内に条件が成就したことを証明しなければ,最後配当を受けることができない(同法198条2項)。
 したがって,Bとしては,A社の最後配当に関する除斥期間内に,上記敷金返還請求権の停止条件が成就したことを証明しなければならない。
第4 質問4
 1 A社が再生手続を開始した後に,Bが本件賃貸借契約に基づいて賃料を支払った場合には,Bが有する敷金返還請求権は,「賃料の六月分に相当する額の範囲内におけるその弁済額を限度として,共益債権」として扱われる(民再法92条3項)。そうすると,本件賃貸借契約の残賃貸借期間は4か月であるから,200万円を限度として,共益債権として扱われる。
 共益債権は,再生手続によらないで,随時弁済を受けることができる(同法121条1項)。
 2 Bの敷金返還請求権のうち,残部の400万円の部分(以下「本件残部債権」という。)については,A社の「再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるから「再生債権」として扱われる(同法84条1項)。
 再生債権は,再生計画の定めによらなければ弁済を受けることができない(同法85条1項)。そこで,Bとしては,本件残部債権について届出をする(同法94条1項)。そのうえで,これについて調査を受け(同法100条以下),異議等がなければ確定する(同法104条1項)。そして,再生手続においては,破産手続と異なり,弁済を受けるための除斥期間が設けられていないため,再生計画内で条件が成就すれば足りる。

以 上


(※1)「家屋賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が貸借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するものと解すべきであり、本件賃貸借契約における前記条項もその趣旨を確認したものと解される。」最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁


2019-02-21(Thu)

【新司】倒産法平成19年第2問

こんばんは。

明日は,平成31年2月22日。

そうです。

京王電鉄のダイヤ改正が行われる日です。

明日の改正では,朝の時間帯に,京王八王子・橋本から新宿方面への京王ライナーが設定されます。

ついにきたかという感じですね。

ただ,京王八王子・橋本から,それぞれ2本ずつということで,

夜の新宿からの京王ライナーに比べれば,本数は少なめです。

やはり,ラッシュ時にライナーをねじ込むことができるほど線路容量に余裕はなさそうです。

どうせ明大前で団子運転する羽目になるでしょうし。

ちなみに私は,明日の京王八王子発の1番列車に乗車する予定です。

席は既に確保してあります。

あとは朝起きれるかどうかの問題です。

心配ですね。

ところで,倒産法平成19年第2問を解きます(唐突)(恒例)

≪問題≫

[第2問](配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 Aは,宅地建物取引主任者の登録を経た上,宅地建物取引業の免許を受けて自ら不動産仲介業を営んでいたが,平成10年に購入したマンションの住宅ローンの返済のためや,平成15年ころから始めた株取引及び商品先物取引により生じた2000万円余りの損失の処理のために,いわゆる消費者金融業者からも借入れを繰り返すようになった。その結果,平成19年1月当時,Aの負債は,住宅ローンの残債務1600万円のほか,損失処理のための借入債務も,知人及び消費者金融業者からの借入れを主なものとして合計1500万円に達していた。他方,その当時のAのめぼしい財産としては,住宅ローンを被担保債権とする抵当権が設定されている時価1500万円のマンション,平成18年5月にBに絵画を時価相当額である50万円で売却したことにより生じた売買代金債権及び時価40万円の中古自動車があるだけであった。その上,収入が安定せず,その額もかろうじて生活費を賄える程度に減少していたので,Aは,弁済期にある債務を継続的に支払えない状況に陥った。そこで,Aは,平成19年1月下旬,債務の整理について,自治体が主催する法律相談を受けたこともあったが,その時は,破産手続を選択する決断ができなかった。
 Aは,その後も負債の返済に窮していたため,平成19年2月初旬,消費者金融業者に借入れを申し込む際,申込書の「他の業者からの借入額」を記載する欄に,正直に記載すると借入れを断られるとの思いから100万円と記載した。Aは,応対した従業員から「本当にこれ以上の負債はないのですか。」と尋ねられたものの,「他にはありません。」と答え,50万円を借りたが,この借入れについては,わずかの返済しかできなかった。
 また,Aは,借入先を探している際,クレジットカードを利用して家電量販店でパソコンを購入し,それを送ってくれれば購入価格の半額程度で買い取るとの情報をある業者から得た。藁にもすがる思いであったAは,平成19年3月上旬,クレジットカードを利用して家電量販店において60万円でパソコンを3台購入し,直ちにその業者に送って30万円を得た。しかし,その金員は他の返済に費消され,クレジットカード会社へはほとんど弁済することができなかった。
 平成19年3月下旬,返済の督促に耐えきれなくなったAは,弁護士Cに相談の上,同年4月6日,破産手続開始及び免責許可の各申立てをし,同月11日,破産手続が開始され,裁判所により破産管財人Dが選任された。

 〔設 問〕
1.Aは,自治体が主催した法律相談を受けた際,担当弁護士が説明してくれた小規模個人再生手続にも関心を持ったが,「不動産仲介業の収入が減って生活費を賄うのがやっとの状態だから,小規模個人再生手続を利用することは難しいと思う。」との説明を受けた。
 破産手続との比較において小規模個人再生手続の利点を指摘するとともに,担当弁護士が「小規模個人再生手続を利用することは難しい。」と判断した理由を簡潔に説明しなさい。
2.Bから次のような相談を受けた弁護士Eは,Bに対して,どのように答えるのが適切か検討しなさい。
【Bの相談】
 私は,平成18年5月にAから絵画1点を代金50万円で購入し,その引渡しを受けましたが,贋作ではないかとの疑いもあって代金を支払っていませんでした。その後,平成19年4月下旬に至り,本物であることが判明したので,Aに対し,50万円を支払いました。ところが,同年5月中旬になって,Aの破産管財人と称するDから,50万円をDに支払うように求められました。
 私は,Dの求めに応じなければならないのでしょうか。
3.破産手続開始の申立てを受任した弁護士Cは,Aから次の質問を受けた。どのように答えるのが適切か検討しなさい。
【Aの質問】
 私は,破産手続が開始された後は,業者から委託を受けて化粧品や健康食品の訪問販売の仕事に従事して生計を立てようと考えています。仕事をするためには自動車があった方が便利ですし,公共交通機関が乏しい地方であることから,高齢の母の通院の介助や日用品の買物といった日常生活の場面でも自動車が不可欠です。そこで,中古自動車を保有し続けることができるのであればありがたいのですが,それは可能でしょうか。
4.Aの免責許可の申立てについて裁判所が判断する際に検討すべき事項を指摘して説明しなさい。ただし,設問2及び3に現れた事実は考慮しないものとする。

(参照条文) 宅地建物取引業法
 (試験)
第16条第1項 都道府県知事は,国土交通省令の定めるところにより,宅地建物取引主任者資格試験(以下「試験」という )を行わなければならない。 。
 (取引主任者の登録)
第18条第1項 試験に合格した者で,宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは,国土交通省令の定めるところにより,当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。ただし,次の各号のいずれかに該当する者については,この限りでない。
 一,二 (略)
 三 破産者で復権を得ないもの
 四~八 (略)
 (登録の消除)
第68条の2第1項 都道府県知事は,その登録を受けている取引主任者が次の各号の一に該当する場合においては,当該登録を消除しなければならない。
 一 第18条第1項第1号から第5号の2までの一に該当するに至つたとき。
 二~四 (略)


なんだか,一大論点!!みたいなところはなく,

最初から最後まで,つらつらと平凡なことを書いて終わりな問題な気がします。

とりあえず条文を見つけるのを頑張ろうねという感じです。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ 破産手続による場合は,自由財産又は差押禁止財産を除いて破産手続開始時に有する一切の財産が破産財団とされ(破産法34条1項,2項),裁判所による免責許可(同法252条1項)によって免責がされない限り(同法253条1項本文),破産財団から破産債権者のために配当が行われることとなる(同法193条1項)。したがって,破産者の手元には,自由財産又は差押禁止財産しか残らないこととなる。
 一方で,小規模個人再生による場合は,再生手続であるから,再生債務者が再生計画案を策定し(民再法154条以下),再生債権者による可決の決議(同法172条の3)及び裁判所による認可(同法174条)を経れば,その再生計画に従って弁済をすれば足り,自由財産又は差押禁止財産以外にも財産を手元に残すことができる。
  ⑵ 破産手続による場合には,免責不許可事由(破産法252条1項各号)が存する場合には,免責を受けることができないところ,Aには後述のように免責不許可事由が存すると判断される可能性がある。この場合には,上記のように破産手続による財産の換価配当がされることとなる。
 一方で,小規模個人再生による場合には,再生債務者に破産法上の免責不許可事由が存する場合であっても,上記のように,再生計画による弁済を完了すれば,その他の責任は免れることができる。
  ⑶ また,本問では特に,Aが宅地建物取引主任者であるところ,破産手続が開始した場合には,復権(破産法255条以下)を得ない限り,その登録が消除される(宅建業法68条の2第1項1号,18条1項3号)。そうすると,Aは,従来の職を続けることができなくなり,収入減が断たれることとなる。
 一方で,小規模個人再生による場合には,再生手続の開始は宅建業法上の登録の消除事由とされていないから,Aは従前どおり,不動産仲介着を得を営むことができる。
  ⑷ さらに,Aは住宅ローンとして1600万円の債務を負っているところ,小規模個人再生であれば,住宅資金特別条項を付することができ(民再法198条,199条),マンションを従前どおり使用し続けることができる。
 2 小規模個人再生が認可されるためには,再生計画の不認可事由(民再法174条2項,231条2項)がないことが必要である。
 そこで,Aが小規模個人再生を選択した場合に,再生計画に不認可事由が存在しないかについて検討すると,Aが自治体主催の法律相談を受けた当時,損失処理のための借入債務が計1500万円に達していたのであるから,これが「無異議債権」または「評価済債権」とされた場合には,同法231条2項4号の事由に該当しないことが必要である。しかし,当時Aは,不動産仲介業の収入が減って生活費を賄うのがやっとの状態であって,収入を原資として弁済をすることは困難である。そうすると,Aが弁済原資に充てられるのは,50万円の絵画の売買代金債権と40万円の中古自動車(以下「本件自動車」という。)だけであるから,「基準債権の総額の五分の一」である300万円を準備することができないものと考えられる。
 したがって,Aは小規模個人再生を利用することが難しいものと考えられる。
第2 設問2
 Bは,Aとの間で,絵画の売買契約(民法555条)を締結し,平成19年4月下旬に,当該契約に基づく代金支払債務の履行として50万円の支払をしている。しかし,これよりも前である同月11日に,Aは破産手続を開始している。そうすると,Bは,Aについて破産手続の開始があったことを「知らないで」弁済したのでなければ,支払をした全額についてAの破産手続との関係で効力を主張することができない(破産法50条1項)。
 そして,破産手続開始について公告がされた後には,Bは,Aの破産手続開始の事実を知っていたものと推定されるところ(同法51条),破産手続開始の公告はAの破産手続開始決定のあと直ちにされるから,Bが上記支払をした時点ではAの破産手続開始の公告はされていたものと考えられる。したがって,Bは,Aの破産手続開始の事実を知っていたものと推定される。
 よって,Bは,Aの破産手続開始の事実を知らなかったことを反証しない限り,全額の支払について効力を主張することができず,反証に失敗した場合には,Aの破産財団が受けた利益の限度でしか効力を主張することができず,その余の部分についてDに支払をしなければならない。
第3 設問3
 1 本件自動車は,「破産手続開始の時において有する一切の財産」に含まれるものであるから,破産財団に属するのが原則である(破産法34条1項)。したがって,Aは本件自動車を保有し続けることができないのが原則である。
 2⑴ 本件自動車は,差押禁止動産(民執法131条)には該当しないため,当然に自由財産になるものではない(破産法34条2項)。
  ⑵ もっとも,裁判所の決定により,破産者の自由財産の範囲を拡張することはできる(同条4項)。そこで,裁判所が,本件自動車について自由財産とすることの裁判をすることができるかについて検討する。
 「破産者の生活状況」としては,Aの生活地域は,公共交通機関の乏しいところで,日常生活に自動車が不可欠とされる状況にある。したがって,Aの生活状況からすると,本件自動車が必要であるといえる。「財産の種類及び額」としては,本件自動車は,中古車であって,その価値も40万円とさほど高額ではない。そうすると,これを換価して配当に充てても,破産債権者の満足に資する程度は低い。したがって,本件自動車を自由財産としても,破産手続上の弊害は小さいと考えられる。そして,「収入を得る見込み」としては,Aは現在,破産手続開始により宅地建物取引主任者としての資格が制限され,無職の状態である。そこで,Aとしては収入の安定化を図るために早期に再就職する必要があるところ,Aは訪問販売の仕事を始めようと考えている。これを始めるにあたっては,自動車があった方が便利であるとされている。したがって,本件自動車は,Aの収入の安定化のためにも,必要であると考えられる。また,「その他の事情」としては,Aの高齢の母の通院の介助のためにも本件自動車が必要である。
 以上からすると,本件自動車を自由財産とすべき必要性が高く,その場合の弊害も小さいのであるから,裁判所としては,本件自動車を破産財団に属しないこととする決定をすることができる。
 3 したがって,Cとしては,Aに対して,裁判所に対して上記決定をすることの申立てをすることによって,本件自動車を破産財団に属しないこととすることができる可能性がある旨を伝えるべきである。
第4 設問4
 1 裁判所は,Aの免責許可の申立てについて判断する際に,免責不許可事由(破産法252条1項)の存否について検討する。
 2⑴ まず,Aが株取引及び商品先物取引により2000万円の損失を生じさせたことが,「浪費行為」(同項4号)にあたらないか。
 Aは,平成10年にマンションを購入し,多額の住宅ローンの返済債務を負っていたのであるから,宅地建物取引主任者としての収入等に照らして堅実な返済方法をとるべきであったにもかかわらず,株式投資や商品先物投資を行い,その結果2000万円もの過大な債務を負担したものであるから,「浪費行為」にあたる(※1)。したがって,Aには,免責不許可事由が存する。
 もっとも,この場合にも裁判所は,裁量的に免責許可の決定をすることができるが(破産法252条2項),Aは上記の損失を出したあとも,消費者金融業者から借入れを繰り返すなど,その場しのぎの借財を行うなどして,結局自己の債務を増やすような行動に出ているのであるから,一切の事情を考慮しても免責許可の決定はできないように思われる。
  ⑵ また,Aが,消費者金融業者に借入れを申し込む際に,自己の借入額をについて虚偽の申告をしたことが,「詐術」にあたらないか。
 「詐術を用いて」とは,破産者が信用取引の相手方に対し自己が支払不能等の破産原因事実のないことを信じさせ,あるいは相手方がそのように誤信しているのを強めるために,資産若しくは収入があることを仮装するなどの積極的な欺罔手段を取った場合若しくはこれと同視すべき場合をいい,破産者が破産原因事実があることを黙秘しただけでは足りない(※2)。しかし,Aは,従業員から,記入した額以上の債務がないことについて念押し的に確認されているにもかかわらず,これに対して虚偽の回答をするなどして,Aが借入額が100万円程度しかなく,Aに破産原因事実がないものとの従業員の誤信を強めているから,「詐術を用いて」にあたる。したがって,Aには,免責不許可事由が存する。
 そして,Aには,特に裁量免責を認めるべき事情が存しないから,裁量免責もされない。
  ⑶ さらに,Aが60万円でパソコンを購入し,それを30万円で業者に売却したことが,「著しく不利益な条件で処分した」ものとされないか。
 Aは,当該パソコンを購入してから直ちに業者に売却しているから,購入から売却までの間に当該パソコンの価値が半減するはずがなく,当初から,クレジットを現金化することのみを目的としてされた転売行為であるといえ,「著しく不利益な条件で処分」したことにあたる。したがって,Aには,免責不許可事由が存する。
 そして,Aには,裁量免責が認められるべき事情はないから,裁量免責はされない。

以 上


(※1)東京高決平成8年2月7日判時1563号114頁は,借金をして株式投資を行ったもののこれに失敗し多額の債務を負担したため,再度株式投資を行ってこれを返済しようと計画して,新たな借金をして株式投資を行ったものの,株価の暴落により大きな損失を被った者の免責不許可決定の抗告事件において,「抗告人は、投資顧間会が倒産したことにより株式投資により得た利益を失い、債務を弁済するために再度株式投資を始めた昭和六二年には、約三〇〇〇万円の借財をしていたのであるから、銀行員としての収入等に照らして堅実な返済方法をとるべきであったにもかかわらず、再度株式投資を計画し、当時の抗告人の財産状態に照らして不相応な計三六五〇万円もの多額な借入れを行って、その大部分をもとに株式投資を再開し、その結果過大な債務を負担したものであって、その行為は、破産法三七五条一号所定の浪費行為に該当するというべきである。」と述べて,浪費行為該当性を肯定しています。
(※2)「『詐術ヲ用ヒ』たとは、破産者が信用取引の相手方に対し自己が支払不能等の破産原因事実のないことを信じさせ、あるいは相手方がそのように誤信しているのを強めるために、資産もしくは収入があることを仮装するなどの積極的な欺罔手段をとった場合もしくはこれと同視すべき場合を指すのであって、破産者が単に支払不能等の破産原因事実があることを黙秘して相手方に進んで告知しなかったことのみでは『詐術ヲ用ヒ』た場合に当たらないものと解するのが相当である」大阪高決平成2年6月11日判時1370号70頁



2019-02-21(Thu)

【新司】倒産法平成19年第1問

ついに平成10年代に入りました。

あと2年分です。

長い道のりでした。

気付いたら,今月書いた記事の数は,既に20を超えていました。

当ブログ開設以来初めての更新頻度です。

当ブログを開設した当初は,

まさかこんな司法試験の答案をひたすら掲載するだけのブログに成り下がるとは,

到底思ってもみなかったでしょう。

人生何が起きるか分かりませんね。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社は,かねてから代表取締役Bの親友であるCの経営するD社に無担保で貸付けをしていたところ,この貸付金の回収が不能になったことから,経営状況が著しく悪化した。いち早くA社が支払不能の状況にあると判断した同社の取引債権者であるE社は,平成19年3月2日,裁判所に対し,A社についての破産手続開始の申立てをし,同月23日,破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。破産管財人Xは,調査の結果,Bに資産があることが判明したので,A社がD社に対して有する債権のうち回収不能になった3000万円について,Bに対して役員としての損害賠償責任を追及したいと考えている。
 他方,E社は,A社に対して500万円の債権を有していたので,A社に対する破産手続において破産債権の届出をしたが,Bの妻であるFは,平成18年10月に当該債権につきE社との間で連帯保証契約を締結していたことから,E社からの求めに応じ,同社が破産債権の届出をた後,当該連帯保証債務の全額につき弁済した。

〔設 問〕
 以下の小問1から3までについては,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.⑴ 破産管財人XによるBの責任追及のための手続について説明しなさい。
  ⑵ 破産手続開始前から,D社への無担保の貸付けを理由として,A社の株主GからBに対し,回収不能分である3000万円について,適法に株主代表訴訟(会社法第847条第3項)が提起されていた場合には,破産管財人Xは,Bの責任追及のためにどのように対応すべきか。⑴で説明した手続との関係にも留意しながら解答しなさい。
2.Bは,A社に対し平成17年に2000万円貸し付けたとして,A社に対する破産手続において当該貸付金について破産債権の届出をしたが,取引債権者の多くは,A社の破綻の原因を作ったBが他の破産債権者と同様の配当を受けることに不満を持っている。他方で,Bは,以前から資産をはるかに上回る多額の債務を負っており,近々自己破産の申立てをすると噂されている状況にある。破産管財人Xとしては,Bが届け出た破産債権について,どのように対応することが考えられるか。
3.Fは,破産手続開始の直前まで,A社所有名義の建物につき,A社との間で賃貸借契約を結んで居住していたが,賃料債務については合計600万円が未払状態になっていた。Fは,E社に対する連帯保証債務についての弁済に係る以下の⑴⑵の債権を自働債権,上記賃料債務に係る債権を受働債権として,相殺しようとしている。⑴⑵のそれぞれの場合について相殺は認められるか。
 ⑴ 弁済による代位によって取得した原債権
 ⑵ 求償権


役員責任査定の申立ては,どっかの年でも出題されていましたね。

どの年だったか忘れてしまいましたが。

やっぱり繰り返し出題されるんですね。

一方で,45条を類推適用するとかいう考えは,正直すぐには思いつきませんでした。

言われてみれば,株主代表訴訟も債権者代位も法定訴訟担当ですもんね。

似てる似てる。

最後は委託保証ですが,無委託保証の有名な判例が出たのは平成24年。

したがって,当該判例の知識を使うことは求められていない,というか無理ですね。

しかし,当該判例が委託保証も含めていろいろ判示してくれているので,

それに乗っかってしまえば少しは楽にはなります。

≪答案≫
第1 小問1
 1 ⑴について
  ⑴ A社は,「取締役」であるBがD社に対して無担保で貸付を行うなどして,その回収不能によりA社の経営状況を悪化させたとして,任務懈怠責任に基づく損害賠償請求権(会社法423条1項)を有しているものと考えられる。したがって,A社の破産管財人であるBとしては,直接この損害賠償請求権を行使するため,通常の民事訴訟を提起することが考えられる。
  ⑵ もっとも,Xは,役員責任査定決定の制度(破産法177条以下)を利用することもできる。これは,役員に対する責任追及の実効性を上げるため,より簡易な決定手続によっても責任追及を可能としたものである(※1)
 Xが役員責任査定の申立て(同法178条1項)を行うためには,「その原因となる事実」として,BがD社に対して無担保で貸付けを行った任務懈怠の事実を疎明しなければならない(同条2項)。この申立てがあって場合には,裁判所は,「役員」であるBを審尋した上で(同法179条2項),理由を付して役員責任査定決定または役員責任査定の申立てを棄却する決定をする(同条1項)。
 裁判所において役員責任査定決定があった場合に,Bが「不服がある者」として,異議の訴えを提起してくる可能性がある(同法180条1項)。このとき,被告は「破産管財人」であるXとなるから(同条2項),Xは当該異議訴訟を追行する必要がある。
 Bが前記異議の訴えを提起せず,または提起したが却下されたときは,役員責任査定決定は,給付確定判決と同一の効力を有する(同法181条)。したがって,Xは,これを債務名義(民執法22条7号)として,Bの財産に対して強制執行を行うことができる。また,Bが前記異議の訴えを提起した場合に,役員責任査定決定を認可した場合にも,強制執行との関係で給付確定判決と同一の効力を有するから(同法180条5項),これを債務名義として強制執行を行うことができる。
 なお,一連の手続の間,Bが財産を逸失させることを防止するために,Xは,Bの「財産に対する保全処分をすることができる」(同法177条1項)。
 2 ⑵について(※2)
  ⑴ GがBに対し提起した株主代表訴訟は,A社がBに対して有する任務懈怠責任に基づく損害賠償請求権をGがA社に代わって行使する形態のものであり,その性質は法定訴訟担当である(※3)。そうすると,債権者が債務者に代わって第三債務者に対して権利を行使する債権者代位(民法423条1項)と,その性質,構造を同じくするものである。
  ⑵ この点,債権者代位訴訟の係属中に債務者が破産手続を開始した場合には,その訴訟手続は中断する(破産法45条1項)。これは,債権者代位の目的となる被代位債権が,債務者の破産手続開始により,債務者の破産財団に属することとなる(同法34条1項)と同時に,その管理処分権が破産管財人に専属することとなるため(同法78条1項),これに係る訴訟手続を中断させて,破産管財人に当該訴訟を受継するか否かを判断させるものである(※4)
 株主代表訴訟においても,会社が役員に対して有する損害賠償請求権は,会社の破産手続の開始と同時に,その破産財団に属することとなり,破産管財人にその管理処分権が専属することとなる点は,債権者代位の場合と異なる所はない(※5)。そうすると,破産法45条の規律は,株主代表訴訟の場合にも及ぶと考えることができるから,株主代表訴訟の係属中に会社が破産手続を開始した場合には,破産法45条の類推適用を受けるものと考える(※6)
  ⑶ そうすると,GがBに対して提起した株主代表訴訟は,A社の破産手続開始により,中断する(同法45条1項)。そして,Xは,これを受継することができる(同条2項)。
 なお,Xとしては,これとは別個に役員責任査定の申立てをすることができるが,Gの提起した株主代表訴訟の進捗を見て,これが短期間で完結する見込みであれば受継することとし,他方でこれが当分の間完結しない見込みであれば,受継をせずに別途役員責任査定の申立てをすべきである(※7)
第2 小問2
 1 BがA社に対して有する2000万円の貸金返還請求権は,A社の「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるから,「破産債権」である(破産法2条5項)。
 2 まず,Xとしては,Bが届け出た破産債権を,劣後的に取り扱うことが考えられる。
 しかし,破産手続においては,破産債権を平等に取り扱うことが要請され(同法194条2項),民再法155条1項ただし書のように権利変更を行うことができる旨の規定を置いていない。また,破産手続において特定の破産債権を劣後的に取り扱うための合意は,破産手続開始前にされている必要がある(同法99条2項)。そうすると,破産手続において,特定の破産債権を,破産手続開始後に劣後化することはできない。
 したがって,Xは,Bが届け出た破産債権を劣後的に取り扱うことはできない。
 3 次に,Xは,Bが有する破産債権と,A社がBに対して有する「破産財団に属する債権」である損害賠償請求権とを相殺することが考えられる(同法102条)。
 「破産債権者の一般の利益に適合するとき」とは,破産管財人による相殺が配当以外の方法により破産債権の満足を図る例外的な方法であることから,それによって破産債権の満足を程度を増加させることができる場合を意味する。本件では,Bが資産をはるかに上回る多額の債務を負っており,近々自己破産の申立てをすると噂されるに至っていることからすると,A社がBに対して損害賠償請求権を行使したところで,全額の回収は見込まれない。そうすると,Bを破産債権者としてA社の破産手続に入れた上で,Bからわずかながら上記の損害賠償請求権に対する配当を受け,これを配当原資に組み入れるよりも,上記相殺を行った方が,A社の破産手続における配当割合を増加させることができる。そうすると,破産債権に対する満足の程度を増加させることができるのであるから,「破産債権者の一般の利益に適合するとき」にあたる(※8)
 したがって,Xは,Bが有する破産債権と,A社のBに対する損害賠償請求権とを相殺することができる。
第3 小問3
 1 ⑴について
  ⑴ Fは,A社のE社に対する500万円の債務を連帯保証しているため,FがE社に弁済をした場合には,A社に対して求償権を取得することとなる(民法459条1項)。したがって,Fは,「破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者」であり,FはA社の破産手続開始後にE社に対して全額の弁済をしているから,E社がA社に対して有していた500万円の債権を「破産債権者として行使することができる」(破産法104条4項)。したがって,Fは,「破産債権者」である。
 そして,Fは,A社に対して,未払賃料債務として600万円の「債務を負担」している。
 したがって,Fは,A社に対する500万円の債権と,600万円の債務とを相殺することができるのが原則である(同法67条1項)。
  ⑵ もっとも,上記代位取得は,「破産者に対して債務を負担する者」であるFが,A社の「破産手続開始後」の平成18年10月にしたものであって,これによって「他人の破産債権」であるA社に対する500万円の債権を取得したものである。したがって,両債権は,相殺が禁止される(同法72条1項1号)(※9)
  ⑶ よって,Fは,弁済による代位によって取得した原債権を自働債権として相殺をすることはできない。
 2 ⑵について
  ⑴ FのA社に対する求償権(以下「本件求償権」という。)が「破産債権」にあたるかについて検討すると,保証人は弁済をした場合,民法の規定に従って主たる債務者に対する求償権を取得する関係にある。そうすると,保証人の弁済が破産手続開始後にされても,保証契約が主たる債務者の破産手続開始前に締結されていれば,当該求償権の発生の基礎となる保証関係は,その破産手続開始前に発生しているということができるから,当該求償権は,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,「破産債権」にあたる(※10)
  ⑵ 本件求償権は,Fが代位弁済を行うことを法定の停止条件として発生する事後求償権であるところ,A社の破産手続開始時には停止条件が成就していないから,相殺適状にない。
 しかし,破産法67条は,相殺の担保的機能に対する破産債権者の期待を保護することは,債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする破産制度の趣旨に反するものではないことから,原則として破産手続開始時において破産者に対して債務を負担する破産債権者による相殺を認めたものである。したがって,破産手続開始後に破産債権者の有する破産債権に係る停止条件が成就した場合であっても,それが破産債権者の期待として保護に値し得るものであれば,これを自働債権として相殺することができる(※11)
 これを本件についてみると,FがA社の破産手続開始前にA社の委託を受けて保証契約を締結し,同手続開始後に弁済をして本件求償権を取得した場合には,本件求償権を自働債権とする相殺は,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである(※12)
  ⑶ よって,Fは,求償権を自働債権として相殺することができる(※13)(※14)

以 上


(※1)「破産した企業の取締役・執行役・監査役等の役員が違法な行為を行い,法人に対して損害賠償義務を負っている場合が少なくない。このような場合には,破産管財人はそのような法人役員の責任を通常の訴訟手続で追及することができるが,破産法は,このような責任追及を実効的なものとするため,より簡易な決定手続でも責任追及を可能としている。それが役員責任査定決定の制度である……。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』388頁
(※2)「株式会社について倒産手続が開始した場合に株主は株主代表訴訟を提起することができるか,係属中の株主代表訴訟はいかに処理されるかという問題がある。前者の問題については,株式会社の破産後には株主代表訴訟の提起は不適法とされ,また,会社更生手続の開始後に株主が株主代表訴訟を提起できるかという問題についても裁判例及び多数説は消極に解している。後者の問題については,係属中の株主代表訴訟は中断し,破産管財人又は更生管財人が株主の地位を受継することができるとされている。これらの裁判例や学説の根拠とされているのは,次のような点である。①破産財団又は更生会社の財産の管理処分権は破産管財人又は更生管財人に専属すること……②破産財団に関する訴え又は更生会社の財産関係の訴えについて,破産管財人又は更生管財人が当事者適格を有することになること……③既に係属している訴訟は中断し……,破産管財人又は更生管財人と相手方との間で受継されること……」最判解民事篇平成15年度(上)351頁
(※3)三木浩一ほか『(LEGAL QUEST)民事訴訟法[第2版]』125頁
(※4)「債権者代位訴訟(民423条)……についても,破産手続開始により訴訟手続は中断し,破産管財人が選択して樹形することになる。債権者代位については,破産財団の管理処分権が破産管財人に一元化することを根拠とする。」前掲山本ほか364頁
(※5)「会社が破産手続開始の決定を受けると,訴訟目的物ため損害賠償請求権の管理処分権は破産管財人に専属し,訴訟追行権限も会社から破産管財人に専属するので,まずその前提が欠ける。また会社財産に対して株主より優先する債権者ですら個別的権利行使等が禁じられるのであるから,劣後する株主にも会社財産に関する個別的権限を禁止するのが相当である。また破産管財人が取締役等との特殊な関係から損害賠償請求権の行使を怠ることはありえないので,株主代表訴訟を認めるべき実質的な根拠もないと解される。従前の訴訟手続も当然終了とはせず,破産管財人による受継を認めた方が,訴訟資料の利用を通じて訴訟経済に資することになると考えられる。これらの事情は,債権者代位訴訟における状況と同じであるので,株主代表訴訟につき本条の類推適用を認めて,中断および破産管財人による受継を認めるのが相当である。」伊藤眞ほか『条解破産法[第2版]』372頁
(※6)「株主代表訴訟は,取締役の責任追及の実効性を確保するため,株主が会社に代位して取締役に対する損害賠償請求権を行使するものであり,債権者代位訴訟とその性質を同じくする訴訟である。ところで,債権者代位訴訟は,債権者が債務者の第三債務者に対する権利について管理処分権を行使するものであるところ,破産手続の開始後は,破産管財人が総債権者の利益を代表して破産財団の保全,回復にあたることが予定されているものであり,破産者の債権者や株主との関係においても,破産財団の管理処分権は破産管財人が専有するところ,破産財団に属する権利を行使する債権者代位訴訟の原告は,債務者の破産により代位行使している当該権利に対する管理処分権を喪失して当該訴訟にかかる当事者適格を喪失すると解するのが相当である。次に,原告が当事者適格を喪失した後に破産管財人が訴訟を受継することが認められるべきか,訴訟は当然に終了するかが問題となる。この点,前述のとおり破産管財人は債権者代位訴訟の訴訟物の処分権者であり当該訴訟を継続させるかどうかの判断は,その時点における当該訴訟の状況等を考慮した上での破産管財人の判断に委ねるのが相当なこと,破産管財人が新訴を提起するよりも破産管財人の受継を認める方が訴訟経済に資するといえる面もあることから,債権者代位訴訟において,債務者が破産した場合には,民事訴訟法125条1項,破産法86条1項の準用により中断し,破産管財人においてこれを受継できると解することが相当である。右に述べたところは,債権者代位訴訟とその性質を同じくする株主代表訴訟にも当てはまるものであるところであり,したがって,株主代表訴訟の訴訟追行中において,会社が破産した場合,当該損害賠償請求権は破産財団に属する権利であるから,会社の破産によって訴訟は中断し,破産管財人においてこれを受継することができると解すべきである。」東京地判平成12年1月27日金判1120号58頁
(※7)ここは全くの想像で書きましたが,査定の申立ての趣旨が簡易の方法による責任追及であるということからすれば,従前の株主代表訴訟を利用するのと査定を申し立てるのとでどちらが便宜にかなうかという視点で選択することになるのではないかなあと思いました。
(※8)「破産管財人による相殺が破産債権者の一般の利益に適合する場合としては,相手方(破産債権者)も破産しているような場合の用に破産財団所属の債権の実価が破産債権の実価よりも低下している場合(破産財団が相手方の破産手続における配当によって回収できる分よりも,破産財団から配当する分が大きい場合)がある。」前掲山本ほか266頁
(※9)「保証人が破産手続開始後に弁済して取得することとなった原債権は保証人が破産手続開始後に取得した債権であり,保証人がその原債権を自働債権として相殺することは許されない(破産法72条1項1号)。本判決[最判平成24年5月28日民集66巻7号3123頁]も,このことを前提として,本件求償権を自働債権とすめ相殺がゆるされるか否かを論じていると解される。」最判解民事篇平成24年度(下)608頁
(※10)前掲最判平成24年5月28日は,無委託保証人の事後求償権の破産債権該当性について,「保証人は,弁済をした場合,民法の規定に従って主たる債務者に対する求償権を取得するのであり(民法459条,462条),このことは,保証が主たる債務者の委託を受けてされた場合と受けないでされた場合とで異なるところはない(以下,主たる債務者の委託を受けないで保証契約を締結した保証人を『無委託保証人』という。)。このように,無委託保証人が弁済をすれば,法律の規定に従って求償権が発生する以上,保証人の弁済が破産手続開始後にされても,保証契約が主たる債務者の破産手続開始前に締結されていれば,当該求償権の発生の基礎となる保証関係は,その破産手続開始前に発生しているということができるから,当該求償権は,『破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権』(破産法2条5項)に当たるものというべきである。」としており,委託の有無を問わないとしているため,委託保証人の事後求償権についても破産債権該当性が認められることになると思われます。
(※11)「相殺は,互いに同種の債権を有する当事者間において,相対立する債権債務を簡易な方法によって決済し,もって両者の債権関係を円滑かつ公平に処理することを目的とする合理的な制度であって,相殺権を行使する債権者の立場からすれば,債務者の資力が不十分な場合においても,自己の債権について確実かつ十分な弁済を受けたと同様の利益を得ることができる点において,受働債権につきあたかも担保権を有するにも似た機能を営むものである(最高裁昭和39年(オ)第155号同45年6月24日大法廷判決・民集24巻6号587頁参照)。上記のような相殺の担保的機能に対する破産債権者の期待を保護することは,通常,破産債権についての債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする破産制度の趣旨に反するものではないことから,破産法67条は,原則として,破産手続開始時において破産者に対して債務を負担する破産債権者による相殺を認め,同破産債権者が破産手続によることなく一般の破産債権者に優先して債権の回収を図り得ることとし,この点において,相殺権を別除権と同様に取り扱うこととしたものと解される。」前掲最判平成24年5月28日
(※12)「破産者に対して債務を負担する者が,破産手続開始前に債務者である破産者の委託を受けて保証契約を締結し,同手続開始後に弁済をして求償権を取得した場合には,この求償権を自働債権とする相殺は,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである。」前掲最判平成24年5月28日
(※13)「本判決[前掲最判平成24年5月28日]は,主債務者の委託がある場合(委託保証)の法律関係を直接説示するものではない。もっとも,法定意見には,『(委託保証の場合の事後)求償権を自働債権といる相殺は,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本減速とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである。』との説示があり,この求償権を自働債権とする相殺ができることを前提としていると解される。」前掲最判解613頁
(※14)「破産法72条1項1号の類推適用の場面において,本判決[前掲最判平成24年5月28日]は,本件求償権を自働債権とする相殺について『破産者の意思に基づくことなく』との点を強調している。委託保証の場合には『破産者の意思に基づく』ということができ,状況が違うと考えているのではないかと考えられる。」前掲最判解618頁




2019-02-20(Wed)

【新司】倒産法平成20年第2問

何やら今日は夕方に雨が降るようですね。

洗濯物を干しているので,早く答案を書きあげないと大変なことになってしまいます。

そんなデッドラインを勝手に設けながら,平成20年第2問です。

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。設問の各問いは相互に独立したものとして答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)の従業員B及びCは,平成20年3月31日付けでA社を退職した。退職時にB及びCの給料はすべて支払われていたものの,A社の退職金規程に従えば,Bの退職金額は退職時の月給の5か月分相当額,Cの退職金額は退職時の月給の2か月分相当額であるところ,BにもCにも退職金はまだ支払われていない。A社は同年2月1日に貸金業者Dより500万円を,同日貸金業者Eより300万円を,いずれも弁済期は同年3月31日かつ無担保という約定で,A社の代表取締役Fの個人保証付きで借り入れていた。

 〔設 問〕
1.B及びCは,平成20年4月に入ってからFが会社財産の隠匿を始めていると疑っており,退職金の支払を確保するためにA社の財産を保全したいと考えている。Bは,A社について破産手続開始の申立てをすることができるか。また,Cは,A社について破産手続開始の申立てをすることができるか。B及びCの有する権利の破産手続上の地位を明らかにした上で理由を付して説明しなさい。
2.A社について平成20年5月1日に破産手続が開始された後,債権調査期日において,Dが届け出た貸金返還請求権について,既にFが弁済したことを理由に全額について異議が述べられた。以下の⑴⑵のそれぞれの場合に,述べられた異議がDの貸金返還請求権の確定を妨げるかどうかについて,理由を付して説明しなさい。Dの貸金返還請求権にはほかに異議等がないものとする。
 ⑴ 異議を述べたのは,貸金返還請求権について債権届出をしたEであった。
 ⑵ 異議を述べたのは,退職金請求権について債権届出をしたBであった。
3.平成20年4月に入ってからもA社はDに返済をしなかったため,同月7日にDがA社について破産手続開始の申立てをしたところ,この申立てに対する裁判がされる前である同月10日になって,A社は再生手続開始の申立てをした。この場合,A社の破産手続及び再生手続の帰すうについて説明しなさい。


何やら,設問1と設問2は,二者間の対比を求めているような形になっていますね。

これまで,破産と民再との対比はさんざんさせられましたが,

同手続内での対比はあまりさせられなかった気がしますね。

なので,少し動揺させられました。

というより,書き方が固まっていないので,困惑したという感じでしょうか。

その一方で設問3はバリバリの手続です。

これはとにかく手続をたくさん挙げていけばいいのでしょうかねえ……

羅列してもしょうがない気がしますが,

如何せん問題文に事情が落ちていないので,

細かく検討することもできないというか,求められていないのでしょう。

そういうことにしておきます。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Bは,A社に対し,退職時の月給の5か月分相当額の退職金請求権を有している。A社は未だ破産手続が開始されていないから,Bは「破産手続の終了前に退職した破産者の使用人」であって,上記退職金請求権は,その「退職手当の請求権」である。そうすると,「退職前三月間の給料の総額に相当する額」は「財団債権」として扱われる(破産法149条2項)。したがって,B社の有する上記退職金請求権のうち,退職時の月給の3か月分相当額の部分は財団債権となるから,当該部分についてBは「財団債権者」としての地位を有する(同法2条8項)。
 一方で,上記退職金請求権のうち,残部である退職時の月給の2か月分相当額に部分については,BがA社とA社の破産手続開始前に締結した雇用契約(民法623条)に基づいて生じた債権であるから,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,上記の財団債権に関する規律の適用を受けず「財団債権に該当しないもの」であるから,「破産債権」にあたり(破産法2条5項),Bは「破産債権者」としての地位を有する(同条6項)。なお,上記請求権は,「雇用関係」に基づいて生じていることから,BはA社に対し一般の先取特権を有しており(民法306条2号,308条),優先的破産債権として扱われる(破産法98条1項)。
  ⑵ Cは,A社に対し,退職時の月給の2か月分相当額の退職金請求権を有している。そして,これは「退職前三月間の給料の総額に相当する額」の範囲内であるから,「財団債権」として取り扱われ,Cは「財団債権者」としての地位を有する。
 2 それでは,B及びCは,A社の破産手続開始の申立てをすることができるか。
  ⑴ 破産手続開始の申立てをすることができるのは「債権者及び債務者」とされている(破産法18条1項)。この文言からすると,破産者に対して何らかの債権を有する債権者であれば,当然に破産手続開始の申立権者となるようにも思える。
 しかし,破産手続が,債権者の個別執行を包括的に禁止し,債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることを目的とした手続である(破産法1条)ことに照らすと,このような手続によって利益を享受することができる者に限って,破産手続開始の申立権を認めるべきである。
  ⑵ これを本件についてみると,Cは財団債権者としての地位のみを有する者である。
 この点,財団債権者は,破産手続によらずとも随時弁済を受けることができ(同法2条7項),破産手続による利益を享受するものではない。したがって,破産手続開始の申立権者としての「債権者」には,財団債権者は含まれない(※1)
 そうすると,財団債権者であるCは,「債権者」にあたらないから,A社の破産手続開始の申立をすることができない。
  ⑶ 一方,Bは,財団債権者であるとともに,破産債権者でもある。
 この点,破産債権者は,破産手続によらなければ,これを行使することができないため(同法100条1項),破産手続によって配当を受けるという利益を享受することができる。優先的破産債権であっても,他の破産債権に優先する効力を有するに過ぎないのであって,あくまでその行使は破産手続による必要があるのであるから,上記の理は,優先的破産債権にも妥当する。したがって,破産債権者は,「債権者」にあたる。
 そうすると,破産債権者であるBは,「債権者」にあたるから,A社の破産手続開始の申立てをすることができる。
第2 設問2
 1 前提として,Dの貸金返還請求権は,DがA社の破産手続開始前に500万円を貸し付けたことにより生じたものであるから,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって「破産債権」にあたるため,Dは「破産債権者」としての地位を有する。なお,当該破産債権については,特に優先的地位は認められていない(破産法98条1項参照)。
 2 小問⑴
  ⑴ Eは,A社の破産手続開始前に,A社に対し300万円を貸し付けているから,これに基づく貸金返還請求権は「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって「破産債権」にあたるため,「破産債権者」としての地位を有する。
  ⑵ Eは,貸金返還請求権について債権届出をしているから,「届出をした破産債権者」である。したがって,一般調査期日において,届出がされた「破産債権」であるDの有する貸金返還請求権について,「異議を述べることができる」(同法121条2項)。
  ⑶ 届出がされた破産債権について異議が述べられると,その破産債権に係る認否書記載事項は,確定が妨げられる(同法124条1項参照)。
 3 小問⑵
  ⑴ Bは,上記のように,財団債権者としての地位及び破産債権者としての地位を有している。したがって,Bが破産債権者としての地位を併存的に有している以上,退職金請求権について債権届出を行えば,「届出をした破産債権者」にはあたる。
  ⑵ もっとも,「異議」の制度は,他の債権者が実際の債権額よりも多い額で手続に参加すると,自分の配当額が減少する関係にあるために,他の破産債権者に対して異議を述べることができるとするものである(※2)。そうすると,異議の対象となる破産債権に対して優先的地位を有する者は,「異議」を述べる利益がないというべきである。
  ⑶ まず,Bの財団債権者としての地位についてみると,財団債権は手続外で随時弁済を受けるのであるから,他の債権者が実際よりも多い額を届け出たところで,自分の弁済を受ける額に影響しない。したがって,Bの財団債権部分については,「異議」を述べる利益を有しない。
 また,Bの破産債権者としての地位についてみると,上記のように,Bの有する破産債権は優先的破産債権である一方,Dの貸金返還請求権は優先権のない破産債権であるから,Bの破産債権はDの破産債権よりも優先的に弁済を受けることができる。したがって,Dの届け出た破産債権の額の多寡は,Bの受けることができる配当の多寡に影響を及ぼさないため,Bは「異議」を述べる利益を有しない。
 したがって,Bはいずれの地位によっても「異議」を述べる利益を有しないから,Bが異議を述べても,Dの貸金返還請求権の確定は妨げられない。
第3 設問3
 1 A社については,破産手続開始の申立てがされた後に再生手続開始の申立てがされている。
 まず,再生手続については,「破産手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき」,すなわち清算価値保障原則の観点から破産配当利率が再生手続による弁済率を上回るときには,再生手続開始の申立てが棄却されることとなる(民再法25条2号)。
 2 次に,再生手続開始の申立てがされた場合には,裁判所は,破産手続の中止命令を発令することができる(同法26条1項1号)。
 3 そして,再生手続開始の決定がされたときは,破産手続は中止する(同法39条1項)。
 4 再生計画認可の決定が確定すると,破産手続はその効力を失う(同法184条)。
 5 一方で,再生手続が終了した場合には,裁判所は,職権で,破産手続開始の決定をすることができる(同法250条1項)。

以 上


(※1)「申立権を有する債権者は,開始した破産手続において破産債権者の地位を認められる債権者である(手続開始後財団債権者となるべき債権者には申立権は認められない)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』350頁
(※2)「各破産債権者は,他の債権者が実際の債権額よりも多い額で手続に参加すると,自分の配当額が減少する関係にあるので,他の破産債権者に対して異議を述べる利益が認められる。」前掲山本ほか381頁



2019-02-20(Wed)

【新司】倒産法平成20年第1問

昼飯を食べすぎてめちゃくちゃ気持ち悪いんですが……

頑張って今日も答案を書きます……

平成20年代最後になります。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)は,取引先の倒産を契機として経営状態が著しく悪化した。A社のメインバンクとして,同社の全債務3億円のうち2億5000万円について貸付けを行っていたB銀行は,平成19年12月になり,債権全額についてA社から回収することは困難であると考え,A社との間で再建計画を作成し,弁済期の到来した2億5000万円の債務について期限を猶予した。しかし,その後A社の経営状態に不安を抱いたB銀行が経理状況を改めて調査したところ,A社には,実際は,総額1億円の簿外債務が存在することが判明した。B銀行は,A社の破たんはいずれ避けられないものと判断して再建計画に基づく協力を取りやめることを決定し,平成20年1月25日にはその旨をA社に告げて再建計画を破棄した。
 他方,以前からB銀行を抵当権者とする抵当権が設定されていたA社所有の甲土地については,周辺地域の再開発計画が発表され,地価が上昇したことから,2000万円分の担保余剰が生じた。そこで,A社は,平成20年2月1日,これに抵当権を設定して資金を調達すべく,C銀行に融資を申し込み,C銀行は,同月4日,A社の救済策として,甲土地について第2順位の抵当権を設定して,2000万円を貸し付けた。しかし,A社の破産は必至であると考えていた同社の代表者Dは,融資を受けるに当たり,貸付金を妻のEに贈与することを意図しており,その後貸付金はEに交付された。
 また,F株式会社(以下「F社」という。)は,A社に対して無担保の債権3000万円(以下「S債権」という。)を有していたが,B銀行が再建計画を破棄したことを知り,平成20年2月5日,A社から,同社所有の土地のうち唯一担保の設定されていない乙土地(価格3000万円)を代金3000万円で買い受け,同日,既に弁済期の到来していたS債権をもって乙土地についての売買代金債権と相殺する旨の意思表示をした。
 その後資金繰りに窮したA社は,平成20年3月3日に裁判所に対し自ら破産手続開始の申立てをし,同月10日に破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。

 〔設 問〕
1.破産管財人Xは,甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができるか。
2..破産管財人Xは,F社に対してどのような請求をすべきか。


問題文は短めです。

しかし,その割には,検討事項が多そうです。

否認のオンパレードという感じです。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Xは,A社がC銀行のために甲土地に抵当権を設定した行為(以下「本件抵当権設定行為」という。)が「担保の供与」にあたるとして,偏頗行為否認(破産法162条1項)を行使することが考えられる。
  ⑵ もっとも,本件抵当権設定行為は,C銀行がA社に対して2000万円を貸し付ける行為(以下「本件貸付行為」という。)と引き換えにされているから,同時交換行為であるとして,「既存の債務についてされた担保の供与」とはいえないのではないか。
 破産法162条1項が既存の債務についてされた担保の供与を否認の対象としたのは,本来の優先関係を潜脱する抜け駆け的回収を否定するためである。これに対して,同時交換的行為は,当初から優先的地位が付与された債権が与えられるため,既存の優先関係を潜脱するものではない。そのため,同時交換的行為にあたる場合には,「既存の債務についてされた担保の供与」にはあたらない(※1)
 そこで,本件抵当権設定行為が同時交換的行為であるかについて検討すると(※2),本件抵当権設定行為は,甲土地の地価の上昇により2000万円の担保余剰が生じたことから,本件貸付行為を行う前提としてされたものである。そうすると,本件抵当権設定行為は,取引通念に照らして,本件貸付行為と同時に行われたものであるから,同時交換的行為であるといえる。したがって,本件抵当権設定行為は,「既存の債務についてされた担保の供与」にはあたらない。
  ⑶ よって,本件抵当権設定行為について,偏頗行為否認をすることはできない。
 2⑴ そこで,Xとしては,本件抵当権設定行為について,相当対価処分行為否認(破産法161条1項)を行使することが考えられる(※3)
  ⑵ア 本件抵当権設定行為は,「破産者」であるA社の「有する財産を処分する行為」である(同項柱書)。
   イ 本件抵当権設定行為は,甲土地の交換的価値をもって,2000万円の貸付けを行わせるものであり,「当該処分による財産の種類の変更」を生じさせている(※4)。そして,総債務者の共同担保としての確実性の高い不動産の価値を,費消隠匿しやすい金銭に換えるものであるから,「破産者において破産債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるもの」である(同項1号)。
   ウ 「破産者」であるA社は法人であるから,その「隠匿等の処分をする意思を有していた」かどうかは,その代表者Dの意思をもって判断すべきところ,Dは本件抵当権設定行為の「対価として取得した」貸付金2000万円を妻のEに贈与することを意図しており,「無償の供与」として「隠匿等の処分をする意思を有していた」ということができる(同項2号)。
   エ 本件抵当権設定行為の「相手方」であるC銀行は,A社の救済策として本件貸付行為を行うに至っているから,貸付金がDを通じてEに贈与されるものと考えていた可能性は低い。また,銀行という性質上,貸付を行うにあたっては,厳格な審査が行われるはずであり,Dが貸付金をEに贈与する意図を有していることを知っていれば,本件貸付行為は行われていなかったと考えられる。そうすると,C銀行が,本件抵当権設定行為の「当時」,A社が「隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていた」とは考えにくい(同項3号)。
   オ 以上からすると,本件抵当権設定行為について,相当対価処分行為否認の要件を満たさない。
  ⑶ したがって,Xは,相当対価処分行為否認を行使することはできない。
 3 よって,Xは,甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができない。
第2 設問2
 1⑴ まず,Xとしては,乙土地をF社に売却した行為(以下「本件売却行為」という。)について相当対価処分行為否認を行使し,乙土地の返還を請求することが考えられる。
  ⑵ア 本件売却行為は,「破産者」であるA社の「有する財産を処分する行為」である(破産法161条1項柱書)。
   イ 本件売却行為により,「不動産」である乙土地が3000万円の「金銭への変換」がされており,上記のように,不動産に比して金銭は費消隠匿がしやすいから,「破産債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるもの」である(同項1号)。
   ウ もっとも,本件売却行為の当時,A社としては,S債権を弁済する手段として乙土地を売却することにより生ずる売買代金請求権と相殺することを認識していたにとどまるものと考えられるから,「対価として取得した金銭について,隠匿等の処分をする意思を有していた」とは認められない。
   エ 以上からすると,本件売却行為について,相当対価処分行為否認の要件を満たさない。
  ⑶ したがって,Xは,本件売却行為について,相当対価処分行為否認を行使することはできない。
 2⑴ 次に,Xとしては,本件売却行為がS債権を消滅させるものとして偏頗行為否認(破産法162条1項)を行使し,乙土地の返還を請求することが考えられる。
  ⑵ア 本件売却行為は,「既存の債務」であるS債権に係る債務を相殺によって「消滅」させる行為である(同項柱書かっこ書)。
   イ 本件売却行為の時点で,A社が「支払不能」の状態にあったかを検討すると,A社は平成19年12月の時点で,B銀行の貸付金2億5000万円の弁済期が到来しており,一旦はB銀行による再建計画のもと期限が猶予されたが,平成20年1月25日にB銀行が当該再建計画を放棄したことによって,期限の猶予も放棄されたこととなるから,2億5000万円の債務の弁済期が到来している状態にある。しかし,A社がこれを弁済するのは困難な状況にあるから,「その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態」にあるということができる(同法2条11項)。したがって,A社は,平成20年1月25日の時点で「支払不能」の状態にある。そうすると,本件売却行為は,「支払不能になった後にした行為」である(同法162条1項1号本文)。
   ウ F社は,B銀行が再建計画を放棄したことを知っているから,これによってA社が「支払不能」の状態に陥っていることを「知っていた」と考えられる(同項1号ただし書イ)。
   エ 以上からすると,本件売却行為について,偏頗行為否認の要件を満たす。
  ⑶ したがって,Xは,本件売却行為について偏頗行為否認を行使し,乙土地の返還を請求することができる。
 3⑴ また,Xとしては,本件売却行為により生じた売買代金債権とS債権との相殺は,相殺禁止にあたると主張して,売買代金の支払を請求することが考えられる。
  ⑵ア S債権は,A社の「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,「破産債権」(破産法2条5項)にあたるから,F社は「破産債権者」である(同条6項)。
   イ 上記のとおり,本件売却行為の時点でA社は「支払不能」に陥っているから,本件売却行為に係る契約(以下「本件売買契約」という。)は「支払不能になった後」の契約である。これによって,F社は,売買代金として3000万円を支払う「債務」を負担している。F社は,本件売買契約に基づいて乙土地を買受けるのと同日に,売買代金債権とS債権とを相殺する旨の意思表示をしているが,F社がこのような行動に出たのは,B銀行が再建計画を破棄したことを知り,A社が支払不能に陥ったことを認識したことから,自社の早期な債権回収を図る目的があったものと考えられる。そうすると,F社が本件売買契約を結んだのは,「専ら破産債権をもってする相殺に供する目的」があったものと認められる(※5)。このような目的のもと,F社は,乙土地の「処分を内容とする」本件売買契約を締結しているということができる。
 そして,F社は,上記のように,「当該契約の締結の当時」,A社が「支払不能であったことを知っていた」ものと認められる(破産法71条1項2号)。
   ウ 以上からすると,本件売却行為により生じた売買代金債権とS債権との相殺は,相殺禁止に該当する。
  ⑶ したがって,Xは,F社に対し,上記売買代金の支払を請求することができる。
 4 そこで,Xとしては,乙土地の返還と,上記売買代金の支払と,どちらを請求すべきかが問題となる。乙土地の返還を受けたところで,結局のところ,これを換価することとなるし(破産法184条以下),これが時価相当額で売却できるかは不明であるから,売買代金の支払を受け,3000万円を確実に破産財団に組み入れる方が妥当であると考える(※6)
 したがって,Xは,F社に対して,本件売買契約に基づき売買代金の支払を請求すべきである。

以 上


(※1)「偏頗行為否認が問題とするのは,本来の優先関係を潜脱する『抜け駆け的』回収であるのに対し,担保供与を前提として行われる新規融資の場合は当初から担保の付与された優先的な地位が付与された債権であり,既存の優先関係を潜脱するとは評価できない。また,このような行為が否認されると,経済的窮境にある債務者に対しその債権を図るために行われる融資(「救済融資」と呼ばれる)が,否認リスクのために萎縮し,倒産を加速させかねない。そのため,同時交換的行為は明示的に偏頗行為否認の対象から除外されている(破162条1項柱書かっこ書,160条1項柱書かっこ書)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』300頁
(※2)「担保提供と『同時』といえるかどうかは取引通念に照らして判断される。その観点から担保提供を前提とした融資であるといえるならば『同時』と評価される。」前掲山本ほか301頁
(※3)「同時交換的行為が否認の対象から除外されるのは,担保提供について偏頗行為否認を問題とする場合であり,およそ同時交換的行為が否認の対象とならないわけではない。担保提供と新規融資を全体として捉えれば,担保の対象となった財産の処分行為とみることができる。したがって,清算義務が課されている限りは相当の対価による処分行為の否認の規律(破161条)が適用され,例えば,新規融資による融資金の使途が財産の隠匿や無用の費消のためである場合には,同条の要件のもとで否認が可能である……。また,清算義務が課されないような場合には,端的に財産減少行為となる。」前掲山本ほか301頁
(※4)「新たに担保権を設定して借入れを行う行為……も,全体としてみると担保権の設定の客体である財産の換価行為であり,財産の種類の変更をもたらす処分に該当しうる。」前掲山本ほか288頁
(※5)「『契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的』とは,契約の目的が『専ら』相殺による債権回収を目的とすることをいう。例えば,支払不能を知って,(ⅰ)代物弁済の実を図るために破産者の財産を買い受け,さして感覚を置かずに相殺をする場合や,(ⅱ)将来の相殺による債権回収のために預金の積み増しを求め,それに応じて積み増しが行われた場合は,これに該当する。『専ら』は幅のある概念であり,相当に評価の余地がある。一般的にいえば,事業や取引関係の平常の過程から突出した債権回収のための行為は『専ら』相殺による債権回収を目的とするものと判断される。」前掲山本ほか258頁
(※6)出題趣旨では,「否認と相殺制限の優先関係や得失等についても言及することが求められる。」と書かれているので,最後に簡単に触れてはいますが,果たしてこの結論が通るのかは分かりません。



2019-02-20(Wed)

【新司】倒産法平成21年第2問

最近胸のあたりがとても痛むんですが,

肋間神経痛なんじゃないかと思いますね。

よく期末試験の直前とかに発症していたんですが,

どうやらストレスが原因のようです。

ストレスはなるべく発散しながら生活しているつもりなんですが,

やっぱり司法試験となると違うものがあります。

もう勉強しない方がいいんじゃないかな。

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A男とB女は婚姻し,夫婦で飲食店を営んでいた。その後,Aは,家業の飲食店をBに任せ,自らは中古車販売業を始めた。しかし,Aは,仕事上のトラブルから,次第に仕事もせずに昼間から飲酒をするなどの状態になり,Bに対しても,暴言を吐いたり,暴力を振るうことが多くなった。そこで,AとBは,ついに協議により離婚したが,当時AとBには10歳の子Cがおり,CはBに引き取られることになった。

 〔設 問〕
   以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.【事 例】において,Aは,離婚の約1年ほど前から,中古車販売業に関連して多額の負債を抱えるようになり,離婚から約半年後に自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
 ⑴ 離婚した当時,Aは,既に無資力の状態にあったが,A名義の唯一の財産ともいうべき時価1000万円のマンション(以下「甲マンション」という。)を,財産分与として,Bに譲渡していた(以下「本件財産分与」という。)。甲マンションについては,本件財産分与の後,直ちに所有権移転登記がされ,Bが単独で所有権の登記名義人となっている。なお,甲マンションは,Aが中古車販売業を始めてしばらくした後に,Aが家族の住居として購入し,Aが単独で所有権の登記名義人となっていたものである。しかし,Aは,中古車販売によって得た利益のほとんどを酒代等の遊興費に充てていたので,甲マンションについては,そのローンの支払を含め,実質的な購入資金は,すべてBが一家の生計を立てていた飲食店の利益から支払われ,離婚の当時,既にローンは完済されていた。
 その後,Aについて破産手続が開始され,破産管財人が選任された。破産手続開始当時,本件財産分与については,Aの破産債権者であるDが詐害行為取消訴訟を提起し,係属中であった(以下「本件詐害行為取消訴訟」という。)。本件詐害行為取消訴訟は,破産手続開始決定によってどのような影響を受け,これに対して,破産管財人は,どのような対応を採ることが考えられるか。本件財産分与について否認が可能かどうかという点を踏まえて検討しなさい。
 ⑵ Aは,離婚したころからE社で働き始め,E社から給与を支給されていたところ,Cの養育費について,離婚の当時,AB間で話合いが行われたが,協議は進まず,Bが家事調停を申し立てた。その結果,毎月末日にAがBに対して5万円を支払うことが合意され,その旨の調停調書が作成された。
 その後,Aは,自ら破産手続開始の申立てをするとともに,免責許可の申立てをし,Aについて破産手続が開始されることになったが,破産手続開始当時,養育費について2か月分が未払の状態であった。そこで,Bは,破産手続が終了した後に,前記調停調書に基づいて,AのE社に対する給料債権を差し押さえようと考えている。Bによる強制執行の申立てが,破産手続終了後,①免責許可決定確定前にされる場合と,②免責許可決定確定後にされる場合とに分けて,その可否を検討しなさい。
2.【事 例】において,Bは,離婚後も飲食店の経営を続けていたが,原材料費の高騰によって経営は悪化し,生活費を消費者金融業者等からの借入れで賄うようになり,離婚から約半年後,自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
 ところで,Bは,婚姻中にAから度々受けた暴行及び虐待により,精神的苦痛を被ったとして,離婚後,Aに対して,不法行為を理由に慰謝料の支払を求める訴えを提起していた(以下「本件慰謝料請求訴訟」という。)。
 本件慰謝料請求訴訟の係属中に,Bについて破産手続が開始され,破産管財人が選任された。
 ⑴ Bは,破産手続開始後も,本件慰謝料請求訴訟を追行することができるか。
 ⑵ 破産手続開始後,本件慰謝料請求訴訟について慰謝料200万円の支払を命じる判決が確定した場合,破産管財人は,Aに対して,その履行を求めることができるか。


誰ですかこの問題作ったのは。

訴訟手続受継マニアでしょ絶対。

丸々1問受継の話だけで完結させることなんか凡人には不可能ですよ。

この年の受験生はさぞかし大変だったんだろうなと思います。

ほんとに,この年じゃなくてよかった。。。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
  ⑴ 本件詐害行為取消訴訟は,「破産債権者」であるDが,「民法第四百二十四条の規定により提起した訴訟」であって,Aの「破産手続開始当時係属」しているから,Aの破産手続開始によって中断する(破産法45条1項)。破産管財人は,この訴訟を受け継ぐことができるが(同条2項前段),受継をした場合には,本件詐害行為取消訴訟は否認の訴えに変更されることとなる(※1)。そこで,本件詐害行為取消訴訟が,否認権の要件を充足するかについて検討する。
  ⑵ AがBに甲マンションを譲渡する行為は,Aの唯一の財産を手放すものであって,これによってAには見るべき財産がなくなっている。そうすると,本件財産分与は,Aが債権者の引き当てとなる財産を逸失させる行為であって,「債権者を害する」行為であるということができる。そこで,破産管財人は,破産法160条1項1号に規定する詐害行為否認によって,本件財産分与を否認することが考えられる。
  ⑶ もっとも,否認権を行使するためには,その一般的要件として,その行為が不当性を有することが必要である(※2)。そこで,本件財産分与が不当性を有する行為であるといえるかについて検討する(※3)
 離婚における財産分与(民法768条1項)の額及び方法を定めるにあたっては,一切の事情を考慮するものとされており(同条3項),離婚の際に分与者が財産を分与すれば無資力になるという事情も,財産分与の額及び方法を定めるにあたって考慮される一事情になるにすぎない。したがって,分与者が当該財産分与によって一般債権者に対する協同担保を減少させる結果になるとしても,それが民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産分与である認めるに足りるような特段の事情のない限り,不当性を有する行為であるとはいえないものと考える(※4)
 これを本件についてみると,たしかに甲マンションは,Aの唯一の財産であって,これがBに譲渡されることによって,Aはほぼ無資力となる。しかし,甲マンションのローンの支払を含め,その実質的な購入資金は,すべてBが一家の生計を立てていた飲食店の利益から支払われ,これによってローンの完済も行われていたのであるから,甲マンションが夫婦の共有財産になるとはいえ(民法762条参照),その実質的な所有者はBであったということができる。そうすると,本件財産分与によって,甲マンションをBに譲渡したことは,実質的には所有者であるBにこれを返還したものと同視することができ,民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であるとはいえない。したがって,本件財産分与は,不当性を有する行為であるとは認められないから,否認権行使の対象とならない。
  ⑷ よって,本件詐害行為取消訴訟は,否認権の要件を満たすものではないから,Aの破産管財人は,これを受継しないこととすべきである。一方で,「相手方」であるB(※5)から受継の申立て(破産法45条2項後段)があった場合には,これを受継した上で,裁判所の許可を得て(同法78条2項12号),請求を放棄すべきである。
 2 小問⑵
  ⑴ Bは,Aとの間で,Cの養育費について毎月5万円の支払を受ける旨の合意を調停により取り付けているので,Aに対してCの養育費として5万円の債権を有している。上記調停は,Aの破産手続開始前にされたものであるから,上記債権は「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であり,「破産債権」にあたる(破産法2条5項,253条1項本文)。そして,養育費の定めは,「民法七百六十六条の規定による子の監護に関する義務」の一つであるから,上記債権は,非免責債権となる(同法253条1項ただし書4号ハ)。
  ⑵ 免責許可決定確定前について
 Aは「免責許可の申立て」をしており,破産手続が終了しているが,Bの上記債権は「破産債権」であるから,これに基づく「強制執行」は,「することができない」(同法249条1項)。もっとも,Bの上記債権は,非免責債権であるから,免責許可の決定の効力によってもAは責任を免れないため,これに基づく強制執行を禁止する必要はないようにも思える。しかし,簡易迅速性が求められる執行手続において,当該債権が,免責債権か非免責債権かを判別するは困難である。したがって,非免責債権であっても,同条に基づいて強制執行が禁止される(※6)
 よって,Bによる強制執行の申立ては,免責許可決定確定前にされた場合には,認められないこととなる。
  ⑶ 免責許可決定確定後について
 上記のように,Bの有する債権は非免責債権であり,かつ,免責許可決定の確定により強制執行の禁止は解除されるから(破産法249条2項),Bによる強制執行の申立ては認められる。
第2 設問2
 1 小問⑴
 破産手続開始の決定がされると,破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は中断し(破産法44条1項),このうち破産債権に関しないものについては破産管財人が受継することができる(同条2項)。
 そこで,本件慰謝料請求訴訟が「破産財団に関する訴訟」に含まれるかについて検討するにあたり,本件慰謝料請求訴訟に係る慰謝料請求権(以下「本件慰謝料請求権」という。)が破産財団に属するかについて検討すると,慰謝料請求権は,その具体的金額自体が成立と同時に客観的に明らかとなるわけではなく,被害者の精神的苦痛の程度,主観的意識ないし感情,加害者の態度その他の不確定的要素をもつ諸般の状況を総合して決せられるべき性質を有している。そうすると,当該請求権の具体的な金額が客観的に確定しない間は,被害者の請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから,当該請求権に係る請求をする権利は一身専属性を有するものといえる。したがって,当該請求権は,差押えの対象とならない自由財産であるというべきであって,破産財団に含まれない。よって,慰謝料請求権に係る訴訟は,「破産財団に関する訴訟」にはあたらない(※7)(※8)
 本件慰謝料請求権についても,Bの破産手続が開始した段階では,未だ客観的に額が決まっていない以上,その後も請求意思を貫くかどうかはBに委ねられているのであるから,一身専属性を有するものであって,未だ自由財産に含まれる請求権に係る訴訟としての性質を有するにすぎない。したがって,本件慰謝料請求訴訟は,「破産財団に関する訴訟」にはあたらない。
 よって,本件慰謝料請求訴訟は中断しないから,Bは,破産手続開始後も,これを追行することができる。
 2 小問⑵
 本件慰謝料請求訴訟について慰謝料200万円の支払を命じる判決が確定した場合,その履行を破産管財人が求めるためには,本件慰謝料請求権が破産財団に属している必要がある。
 そこで,本件慰謝料請求権が未だに一身専属性を有しているかについて検討すると,加害者が被害者に対し,一定額の慰謝料を支払うことを命ずる債務名義が成立し,具体的な金額の慰謝料請求権が客観的に確定したときは,あとはその現実の履行を残すだけであり,その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねる必要はない。そうすると,慰謝料請求権は,上記債務名義の成立をもって,一身専属性を失うから,もはや自由財産に属する権利ではなく,破産財団に属することとなる(※9)
 本件慰謝料請求権も,判決が確定した時点で,200万円の支払を命じる債務名義が成立したこととなるから(民執法22条1号),あとはその現実の履行をまつだけであって,Bの自律的判断が必要となる部分は残されていないのであるから,一身専属性を失い,破産財団に属する権利となる。
 したがって,破産管財人は,Aに対して,慰謝料200万円の支払の履行を求めることができる。

以 上


(※1)「詐害行為取消しについては,手続開始後は否認権に一元化するために,手続は中断する。破産管財人が受継を選択した場合には,否認訴訟に訴えを変更して訴訟手続が続行されることになる(管財人は,相手方からの申立て(破45条2項後段)があっても,受継を拒絶して否認の請求を申し立てることもできる)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』364頁
(※2)「否認権の対象となる行為は,有害性と不当性を備えるものでなければならない。……不当性とは,受益者など否認をめぐる利害関係人の利益と破産債権者の利益を考量してなおその行為が相当性を欠くことをいう。……不当性は,有害性を備えた行為であっても,破産者の生活の維持費用を捻出するための財産の売却であるとか,仕掛品を完成させ事業を継続いるために下請人に対する通常の業務に属する債務を支払うといったように,行為の内容,目的,動機等に照らして,正当視される,つまり破産債権者の利益を犠牲にしてもより保護すべき利益が認められる場合があることを前提として,そのような場合に否認を否定するための概念として論じられてきた。不当性の欠缺が否認阻却事由となるという構造である。」前掲山本ほか279頁
(※3)本件財産分与の否認可能性について検討するに当たって,採点実感は「本件における財産分与の否認可能性については,否認のうちどの類型のものが問題となるのか,その要件のうちのどの要素が問題となるのかといった視点から整理した上で,具体的事実を丁寧に拾い上げることが期待されたが,そのように丁寧に論じる答案は少なく,事実の拾い上げが不十分であるもの,単に財産分与と詐害行為取消しに関する判例の見解に基づき結論を示すにとどまるもの等が相当数見られた。」と指摘しているため,答案上も否認の類型及び要件と本件財産分与との位置付けを示す必要があると思われます。しかし,正直,本件財産分与をめぐる問題が,否認権のどの要件の問題なのか,よく分かりません。色々解説を見たり,参考答案を見たりもしましたが,この点を明確にしているものはありませんでした(有料の解説とかも見れば何かしら触れられているかもしれませんが。)。上の答案では,不当性という一般的要件の問題であるとして逃げることにしました。
(※4)「離婚における財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するとともに、離婚後における相手方の生活の維持に資することにあるが、分与者の有責行為によつて離婚をやむなくされたことに対する精神的損害を賠償するための給付の要素をも含めて分与することを妨げられないものというべきであるところ、財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮すべきものであることは民法七六八条三項の規定上明らかであり、このことは、裁判上の財産分与であると協議上のそれであるとによつて、なんら異なる趣旨のものではないと解される。したがつて、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によつて、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であつてもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。そうであるとするならば、分与者が既に債務超過の状態にあつて当該財産分与によつて一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」最判昭和58年12月19日民集37巻10号1532頁
(※5)廣尾勝彰「倒産法 論文式試験問題の解説と解答例」別冊法セ200号333頁では,ここでの「相手方」をDとしていますが,Dは請求している側であって相手方はBではないかと思いました。間違っていたらすいません。
(※6)「ここでいう破産債権の中には,非免責債権も含まれる。非免責債権であるか免責債権であるかを執行手続内で判別するのが困難であると予想されるからである(特に253条1項2号・3号の債権についてこのことがいえる)。」栗田隆「破産免責」『破産法学習ノート』(http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/hasan2/lecture/discharge.html
(※7)「名誉を侵害されたことを理由とする被害者の加害者に対する慰藉料請求権は、金銭の支払を目的とする債権である点においては一般の金銭債権と異なるところはないが、本来、右の財産的価値それ自体の取得を目的とするものではなく、名誉という被害者の人格的価値を毀損せられたことによる損害の回復の方法として、被害者が受けた精神的苦痛を金銭に見積つてこれを加害者に支払わせることを目的とするものであるから、これを行使するかどうかは専ら被害者自身の意思によつて決せられるべきものと解すべきである。そして、右慰藉料請求権のこのような性質に加えて、その具体的金額自体も成立と同時に客観的に明らかとなるわけではなく、被害者の精神的苦痛の程度、主観的意識ないし感情、加害者の態度その他の不確定的要素をもつ諸般の状況を総合して決せられるべき性質のものであることに鑑みると、被害者が右請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、右権利はなお一身専属性を有するものというべきであつて、被害者の債権者は、これを差押えの対象としたり、債権者代位の目的とすることはできないものというべきである。」最判昭和58年10月6日民集37巻8号1041頁
(※8)前掲最判昭和58年10月6日は,慰謝料請求権一般について判示してものではなく,名誉棄損による慰謝料請求権について判示してものであり,理由中にも,名誉毀損による慰謝料請求権の性質に着目した部分が多分に含まれています。そのため,この判例の射程が,他の慰謝料請求権にも及ぶかが問題となるところではあります。この点について,山本和彦「21.よろめくコピーライター」山本和彦ほか『倒産法演習ノート[第3版]』451頁は,「上記判決[前掲最判昭和58年10月6日]は,名誉毀損の特殊性(名誉という被害者の人格的価値が毀損されたこと)をも1つの理由としており,本件のように身体が毀損された場合の慰謝料とは区別する考え方も成立しうる。これによれば,本件の場合は金額確定前でも破産財団に帰属する(したがって訴訟手続は中断する)という理解も成り立つ。しかし,判旨は他方で,その金額について,被害者の苦痛の程度・感情,加害者の態度等の不確定要素をもつ諸般の事情の総合検討を要するとの点も理由としてあげており,これは交通事故の慰謝料にも同様に妥当する者であり,判旨の射程が及ぶという理解もまた十分成立しうる(名古屋高判平成元年2月21日判タ702号259頁も,生命侵害による近親者の慰謝料について同旨を認めている)。」としています。上の答案では,後者の考え方に基づいて,慰謝料請求権一般について射程が及ぶことを前提としています。
(※9)「加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払を命ずる債務名義が成立したなど、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的に確定したときは、右請求権についてはもはや単に加害者の現実の履行を残すだけであつて、その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねるべき特段の理由はないし、また、被害者がそれ以前の段階において死亡したときも、右慰藉料請求権の承継取得者についてまで右のような行使上の一身専属性を認めるべき理由がないことが明らかであるから、このような場合、右慰藉料請求権は、原判決にいう被害者の主観的意思から独立した客観的存在としての金銭債権となり、被害者の債権者においてこれを差し押えることができるし、また、債権者代位の目的とすることができるものというべきである。」前掲最判昭和58年10月6日


2019-02-19(Tue)

【新司】倒産法平成21年第1問

さて,平成21年まできました。

あと4年分です。

模試までにはなんとか終わらせることができそうです。

願わくば,模試までに2周目も終わらせたいところですが,

さすがに他の科目との兼ね合いがあるので難しそうです。

忘れてましたが,刑訴ノータッチなんですよね。

予備論文Eだったのに。

こっちの方が先にやらなきゃいけないような気がしてきましたね。。。

とりあえず,倒産を終わらせてから考えますね()

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
1.A株式会社(以下「A社」という。)の代表者Pから次のような相談を受けた弁護士として,以下の設問に答えなさい。Pの相談内容は,すべて証拠により裏付けられる事実であるとする。
【Pからの相談内容】
 私はA社の代表取締役をしておりますPと申します。
 A社は旅館業を営むことを業としております。A社が経営している旅館は,温泉町の一角にあります木造2階建ての温泉旅館です。私の祖父の代からの老舗で,建物は築50年にもなろうとしておりますが,昔からの従業員による家庭的なもてなしと敷地内に温泉が出ること,ちょっとした散策ができる和風庭園があることが好評で,ひいきにしていただいているお客様もいて,これまでやってきておりました。祖父の跡を継いだ父が2年前に急死してからは,それまで東京で会社勤めをしていた長男の私が呼び戻されて,代表取締役として経営に携わってきました。
 しかし,さすがに施設が老朽化して,度々の修繕に費用が掛かることもあり,苦しい経営を続けていましたところ,今般の経済情勢の厳しさから,とうとう手元資金がほとんどなくなり,直近の支払のめども立たなくなってしまいました。民事再生というものを申し立てることにより,破産という最悪の事態を避けることができると聞いて,この度御相談に伺った次第でございます。A社の他の取締役である私の母親と妻も賛成してくれており,裁判所に納める予納金として必要なお金は,何とか工面してまいりました。
 A社の財務の概要を御説明いたします。まず,最大の債権者はB銀行で,債権額は約2億円です。A社の唯一の資産であります旅館の土地建物に,第1順位の抵当権を有しております。
 仕入れその他の取引業者の債権者は15社,債権総額は約3000万円です。それから,お恥ずかしい話ですが,法人税,社会保険料等の公租公課の未納分が約2000万円たまっており,また,従業員の過去1か月分の給料合計約200万円も遅配となっております。負債は以上のとおりです。
 資産としては,先ほども申し上げましたとおり,唯一のものが旅館の土地建物で,B銀行の2億円の抵当権がついております。この土地建物についている担保権はこれだけです。この土地建物の時価は,温泉が出ることを考慮してもせいぜい1億円ではないかと,幾つもの不動産業者が査定を出しており,間違いのないところだろうと考えられます。しかし,B銀行は,この不動産の時価は1億5000万円は下らないはずであり,そのような前提で支払条件を示さない限り,抵当権の実行も辞さないと,強く主張しています。
 この土地建物のほかには特段の資産はなく,裁判所への予納金を支払うと,手元の資金はわずかしか残っていない状態です。
 こうした現状から,A社単独での再生は困難であり,どこかにスポンサーを見付けて支援をしていただかなければならないことは,私も理解しております。そこで,八方手を尽くして探しましたところ,ようやく1社だけ,支援を引き受けていただける会社が見付かりました。この会社は,同じ県内で幾つも旅館を経営しておりますQ社です。援助の条件といたしましては,出せる金額は1億5000万円が上限で,Q社自らが主体となって施設と従業員を引き受けて経営することを希望していますが,負債や抵当権の負担は引き継がないことを支援の条件としています。私どもも,旅館の経営者としての能力には限界を感じており,Q社に旅館を引き継いでいただけるのは有り難いと思っております。Q社としては,これからのシーズンを控えて,できるだけ早く引継ぎをすることを強く希望しておりまして,私としても,従業員を引き止めるにももう限界で,一刻も早くQ社に入っていただかなければならないと感じております。
 ただ,A社の株主構成としては,私が株式の60%を有しているほか,遠方に住む2名の弟がそれぞれ20%を保有しておりますところ,弟たちは,民事再生を申し立てることには理解を示してくれましたが,旅館を人手に渡すことについては強く反対しており,簡単に納得してくれそうにありません。
 このような現状ですが,どうかよろしくお願いいたします。

 〔設 問〕
 ⑴ 弁護士としてA社を代理して再生手続開始の申立てをし,その手続中において,Q社に対し,同社の希望する条件で,A社の事業を承継させる方針を立てたとする。その場合に再生手続開始決定後に採るべき手続について述べなさい。
 ⑵ 下線  を引いた部分で示したB銀行の方針に対して,A社として採り得る対応策について述べなさい。
 ⑶ 再生手続開始直後,Pから以下のような相談を受けた。考えられる対処方法について論じなさい。
  【Pからの相談内容】
   昔から旅館の日本庭園の手入れをお願いしている庭師のCさんへの昨年秋の庭木の剪定の代金30万円が未払になっています。Cさんから,この30万円を直ちに支払ってもらわない限り,今後の作業はしないとの通告がありました。Cさんは大変な腕利きですし,うちの庭園のことは熟知していますので,他の業者に代えるのは大きなマイナスです。これからの行楽シーズンに向けて,すぐにでも庭園の手入れをしてもらう必要があるのですが,手元にあるお金で未払金を支払ってあげることはできないでしょうか。

2.前記1の相談内容に係る事案において,再生手続開始決定前,A社は建築業者D社に対して,旅館の離れの建物の改修工事を請負代金200万円で発注し,代金の一部として120万円を支払っており,再生手続開始決定時点において,工事は出来高2割の状態であったとする。A社とD社との間の請負契約が再生手続開始決定後にどのように処理されることになるのかについて説明しなさい。


なんだか,形式が違いますね。

相談内容を受けましたという形になっていますが,

こっちの方が個人的には読みやすいですね。

ですます調だからでしょうか。

それよりも,当事者の意向が明確に示されているので,

採るべき手段を考えやすいという面がありますね。

こういう形式に戻してくれないかなあ。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
  ⑴ A社がQ社に事業を承継させるにあたっては,Q社から,負債や抵当権の負担は引き継がないことを条件とされているから,これらの引継ぎを回避しつつその他の財産等を引き継がせるため,事業譲渡(会社法467条1項2号)を行うこととなる。
  ⑵ 事業譲渡については,再生計画での作成・遂行を待っていては事業の価値が低下するおそれがあるため,早期にこれを行う必要がある一方,これを無制限に認めれば,債権者の利益を無視した事業譲渡がされる危険もあるため,裁判所の許可が必要とされている(民再法42条1項1号)(※1)(※2)
 そこで,同項の要件について検討すると,A社が営む旅館業をA社が単独で再生することは困難であるとされ,Q社にこれを譲渡することで事業の再生が期待されるところ,旅館業の営業に必要な不可欠な旅館の土地建物にはB銀行の抵当権が設定されている。そして,B銀行としては,当該不動産の時価が1億5000万円を下らないと主張しているため,抵当権の実行を避けるためには同額の支払が必要となるところ,Q社は1億5000万円の支払を条件として提示しており,これをB銀行に対する返済に充てることができる。そうすると,Q社への事業の譲渡により,当該旅館業が引き続き継続され,その再建を図ることができるものと考えられるから,「当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合」にあたる(※3)
 したがって,事業譲渡に係る裁判所の許可の要件を満たす。
  ⑶ もっとも,事業譲渡を行うには,株主総会の特別決議が必要となるところ(会社法309条2項11号,第7章,467条1項2号),A社の株主のうち40%は,旅館を人でに渡すことについては強く反対してすることから,事業譲渡の決議に反対することが予想され,「議決権の三分のニ以上に当たる多数」の賛成を得られない可能性がある。
 そこで,A社としては,裁判所による代替許可(民再法43条1項)を申し立てる必要がある。これは,債務超過にある会社では,株主権が実質的に無価値であることから,株主の意向を尊重する必要性が低下していることから正当化される(※4)
 その要件を検討すると,A社は,計2億5200万円の負債を抱えている中で,土地建物以外に特段の資産がなく,裁判所への予納金を支払うと手元の資金はわずかしか残らない状況であるから,「再生債務者がその財産をもって債務を完済することができないとき」にあたる。また,上記のように,A社の営む旅館業をQ社に譲渡すれば,旅館業の継続が期待できる上,B銀行に対する債務も弁済が完了し抵当権の実行のおそれもなくなるから,「当該事業等の譲渡が事業の継続のために必要である場合」にあたる。
 したがって,裁判所の代替許可の要件を満たすため,A社は以上の手続によってQ社へ事業を承継させることができる。
 2 小問⑵
  ⑴ B社は,A社所有の不動産について抵当権を有する者として,再生手続上「別除権者」として扱われるから(民再法53条1項),本来,再生手続によらないでこれを行使することができる(同条2項)。
  ⑵ A社としては,上記抵当権が実行されれば,旅館の営業に必要な土地建物が失われ,Q社に事業を譲渡することができなくなるため,B銀行による抵当権の実行を止めさせなければならない。
 そこで,A社は,B銀行との間で,A社が一定期間内に別除権の評価額を分割して支払うことによって担保目的物を受け戻す内容の別除権協定を結ぶことが考えられる(※5)。別除権の目的である財産の受戻しには,裁判所の許可を得る必要がある(民再法41条1項9号)。
 別除権協定の協議を行うためには,その間の担保権の実行を止めておく必要があるから,A社としては,事前に,担保権の実行手続の中止命令(同法31条1項)の申立てをしておく必要がある(※6)。A社が現在有している資産としては,土地建物のみであり,これの評価額が1億円とされている一方,A社が旅館業をQ社に譲渡する方法で再生手続を進めれば,1億5000万円の対価を受領することができ,その資産価値を増殖することが可能である。そして,土地建物が,A社の旅館業に不可欠な資産であることからすれば,これを失うことを防ぐために,B銀行の有する抵当権の実行を中止させることは,「再生債権者の一般の利益に適合」する。また,B銀行は,抵当権の実行を中止し,A社の事業譲渡を進めさせることにより,B銀行の有する別除権の評価額相当額の支払を受けることができるのであるから,「競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがない」といえる。したがって,担保権実行手続の中止命令の発令要件を満たすため,A社はこれを申し立てて,裁判所による中止命令の発令を得ることができる。
  ⑶ 上記の別除権協定の協議が整わない場合には,A社としては,担保権消滅の許可の申立て(民再法148条1項)をすることとなる(※7)
 A社の所有する土地建物について,B銀行の抵当権が設定されているから,「再生手続開始の時において再生債務者の財産につき第五十三条第一項に規定する担保権が存する場合」である。
 また,当該土地建物は,上記のように,A社の旅館業を営む上でなくてはならないものであり,これをQ社に譲渡するにあたっても不可欠であるから,「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるとき」にあたる。
 したがって,担保権消滅許可の申立ての要件を満たすため,A社はこれを申し立てて,裁判所の許可を得ることができる。
 3 小問⑶
  ⑴ Cは,A社との間で,昔から庭木の剪定をすることを内容とする契約を締結しているから,その代金は「再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるとして「再生債権」にあたる(民再法84条1項)。
  ⑵ A社としては,Cの有する代金債権が少額の再生債権であるとして,これの弁済をすることの許可(同法85条5項)を裁判所に申し立てることが考えられる。
 A社の負債は,上記のように,全体で2億5200万円であるところ,Cの有する代金債権は30万円程度に過ぎないから,負債全体に占める割合はごくわずかであって,「少額の再生債権」である(※8)
 A社の営む旅館は,ちょっとした散策ができる和風庭園があることが好評を博しており,その庭園の庭木の剪定を従前からCが行っていたのである。そして,Cが大変な腕利きと評されていることからすると,A社の営む旅館が売りにする庭園風景の維持を図るためには,Cによる剪定が従前どおり行われることが必要である。したがって,Cに対して弁済を行うことは,事業の継続にとって必要不可欠であるといえる。そして,Cは30万円の支払を受けなければ今後の作業を中断するとしているから,30万円の支払をすれば今後も作業にあたってもらうことができると見込まれる。そうすると,「少額の再生債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来たすとき」にもあたる(※9)
 したがって,A社は,裁判所の許可を得て,Cに対し30万円の弁済をすることができる。
第2 設問2
 1 A社とD社との間の改修工事に係る契約は請負契約(民法632条)であるところ,仕事の完成と報酬の支払が対価関係となる「双務契約」であって,そのうち,A社は80万円の支払を,D社は工事の8割部分の完成を,それぞれ「履行を完了していない」から,双方未履行双務契約として,民再法49条の規定に従って処理される。なお,本件では,注文者であるA社について再生手続が開始しているが,民法642条は破産手続を対象とした規律であるから,再生手続である本件では適用がない。
 2 A社は,契約を「解除」するか,「債務の履行を請求」するかを選択することができる。
  ⑴ A社が「解除」を選択した場合には,解除の効果は既履行部分には及ばないから(※10),未履行部分である8割の部分について原状回復がされる。そのため,2割部分の出来高についてはA社に帰属し,その対価である40万円は報酬としてD社に帰属する。一方,A社はD社に対し既に120万円を支払っているが,前記40万円を超える80万円の部分は,A社に返還されることとなる。また,D社がこれによって損害を受けた場合には,再生債権者として損害賠償請求権を行使することができる(民再法49条5項,破産法54条1項)。
  ⑵ Aが「履行」を請求した場合には,D社が工事を継続し,その報酬として未払の80万円部分の債権は共益債権となる(民再法49条3項)。共益債権は,再生手続によらないで,随時弁済を受けることができる(同法121条1項)。仕事が完成した場合の工事の結果は,A社に帰属することとなる。

以 上


(※1)採点実感では,「そもそも再生手続開始後の早い段階での事業譲渡をすることが相当である理由……については,これらを丁寧に論ずる答案と,記述が不十分な答案とに分かれた。」との指摘がありますので,民再法42条の趣旨に触れる必要があるように思います。
(※2)「このような営業ないし事業の譲渡については,再生計画の中で定めることも可能であるが,再生計画の作成・遂行を待っていたのでは事業が陳腐化するなどして,その資産としての価値が低くなってしまうことがあるので,再生手続の進行中に実施することを認めるのが望ましい。他方,再生計画によらないで営業譲渡の効力を無制限に認めるならば,必要性や相当性を欠く営業譲渡がされて,債権者の利益が害されたり,再生債務者または当該事業の再生につながらなかったりする事態が生ずるおそれがある。そこで,民事再生手続においては,再生債務者が,再生手続開始後に,裁判所の許可を得て,営業ないし事業の譲渡をすることが可能とされているのである(民再42条1項。その手続について同条2項・3項参照。民再42条4項が41条2項を準用しており,許可を得ないでした譲渡は無効であるが,善意の第三者には対抗できない)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』420頁
(※3)「許可の要件は,『当該再生債務者の事業の再生のために必要である』ことである(民再42条1項後段)。これは,再生債務者自身が経済的に再生するために当該事業を譲渡することが必要である場合のほか,再生債務者から当該事業を切り離すことによって,当該事業が譲受人のもとで再生することが見込まれるという意味で事業譲渡が必要な場合を含む。これは,民事再生法が,営業ないし事業の全部譲渡をも想定しており,必ずしも再生債務者のもとでの事業再生のみを目的としているわけではないこと……から正当化される。」前掲山本ほか421頁
(※4)「会社法上の原則では,株式会社が事業の全部または重要な一部の譲渡や子会社の株式等の一定の譲渡をするには株主総会の決議による承認が必要であるが(会社法467条1項1号・2号・2号の2),経済的に窮境に陥った株式会社の株主は,その会社の経営や再生に関心を失っているため,株主総会決議の成立が困難となる場合が多く,他方,債務超過会社の株主の株主権は実質的に価値を失っているのでこれを尊重する要請が低いといえる。そこで,民事再生手続では,事業の価値を維持しながら,適時適切に事業譲渡を行うことができるようにするため,当該事業譲渡が事業の継続のために必要であることを要件として,裁判所が,株主総会の次による承認に代わる許可(代替許可)を与えることができるとされている(民再43条1項)。」前掲山本ほか421頁
(※5)「実務上は,担保権消滅許可の精度を用いずに,事業の継続に必要な財産について,別除権者(担保権者)と再生債務者との間で,一定の条件のもとでの別除権の不行使を個別に約束することも多い。このような別除権不行使の約束は『別除権協定』と呼ばれている……。別除権協定の内容としては,別除権を評価した額を再生債務者が一定の期間内に分割して支払うことで担保目的物を受け戻す(担保権の抹消を受ける)ことができることとし,その期間内は,別除権者が別除権を行使しない代わりに,再生債務者が約定の分割払いを(例えば3回分)怠ったときには別除権を行使するといったものが骨子となる。担保の受戻を内容とすることから,裁判所または監督委員の許可を要する行為とされうるものであり(民再41条1項9号,54条2項),実務上の多くの取扱いでは,監督委員の同意を要するものとされている……。」前掲山本ほか443頁
(※6)「中止命令の可能性があることは,実際上,再生債務者が担保権者と交渉して担保権実行を控えてもらうための手段として機能している。」前掲山本ほか412頁
(※7)「担保権消滅許可申立ての要件は,①再生手続開始の時において再生債務者の財産につき民事再生法第53条第1項に規定する担保権が存すること,②当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであること(不可欠性要件)である。……なお,財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付することは,担保権消滅の実体的効果が生ずるための要件であって,担保権消滅許可決定の要件ではないが,この点を混同している答案が少なくなかった。」平成27年採点実感
(※8)「当該債権額が『少額』であるかどうかは,……再生債務者の規模,債務の総額,弁済能力,弁済の必要性等を考慮して決せられる。」前掲山本ほか419頁
(※9)「少額債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来すときとはどのような場合をいうのかが問題となるが,単に,再生債権者が『弁済しなければ取引を継続しない』と主張しているというだけでは足りず(それだけで弁済を認めていては,手続の平等性や構成が保たれない),その取引先が事業の再生のために不可欠であって,当該弁済をすればその取引先の協力が得られる見込みがあり,その弁済をすることが,再建への寄与,手続の平等性,公正等の観点から合理性があることといった要件が必要となろう。」前掲山本ほか418頁
(※10)「[解除]の効果が出来高には及ばないことに触れることが期待される。」平成25年採点実感


2019-02-18(Mon)

【新司】倒産法平成22年第2問

昨日は鉄道博物館に行っていました……

っていう話はもう昨日の記事でしたんですよね。

はい。

今日の1本目は,昨日疲れて書けなかった,倒産法平成22年第2問です。

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 精密機械の製造業を営むA株式会社(以下「A社」という。)は,不況による売上高の低迷によって資金繰りに窮し,これから満期を迎える約束手形の決済資金の確保が困難な状況となった。
 そのため,A社は,平成22年4月1日に民事再生手続開始申立てを行い,同月8日に民事再生手続開始決定を受けた。

 〔設 問〕
  以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社の再建のためには,部品の継続的供給契約(以下「本件契約」という。)を締結しているB株式会社(以下「B社」という。)が従前どおりに取引に応じることが不可欠であった。本件契約では,B社がA社に対して部品の供給を反復継続的に行い,代金については,毎月末日締めで翌月末日に支払う約定であった。そのため,B社は,民事再生手続開始申立ての時点において平成22年3月末日締めの売掛金1000万円を有していた。
 また,本件契約には「A社が民事再生手続開始の申立てを行ったときには,B社は本件契約を解除することができる。」との条項が定められていた。
 B社は,高い品質の部品を製造していることから,他社からの引き合いも多い会社であったため,今後の取引継続についての態度は強硬であり,民事再生手続開始決定直後の協議において,次のとおり主張した。
 「A社が民事再生手続開始申立てを行った以上,本件契約を解除する。ただし,4月末日までに売掛金全額を支払った場合には,解除せず今後の取引を継続してもよい。」
 この場合,A社は,B社との取引を継続するため,どのような主張を行うべきか,B社の主張に対する反論も含めて,検討しなさい。
2.C銀行は,A社に対し,5000万円の貸付債権(以下「本件貸付債権」という。)を有していたところ,A社の財務状況の悪化に伴い,追加担保の差入れを要求していた。
 そこで,平成22年3月1日,A社は,C銀行との間で,D株式会社が売掛金の支払のためにA社に対して振り出した額面金1000万円の約束手形2通(以下「甲手形」及び「乙手形」という。)につき,取立委任契約を締結し,C銀行に甲手形と乙手形を裏書譲渡した。A社とC銀行は,銀行取引約定書に基づき銀行取引約定を締結していたが,これらの取立委任契約は,この取引約定の規定に基づくものであった。
 その後,同年4月5日に甲手形の満期が到来したため,C銀行は,甲手形につき1000万円の手形金を取り立てた。
 次に,A社の民事再生手続開始決定後に,乙手形の満期が到来したため,C銀行は,乙手形につき1000万円の手形金を取り立てた。
 A社は,その後,C銀行に対し,甲手形及び乙手形の取立金である2000万円の返還を求めたところ,C銀行は,その返還債務と本件貸付債権を対当額で相殺する旨の意思表示をし,返還を拒絶した。
 なお,C銀行は,同年4月2日には,A社の民事再生手続開始申立ての事実を認識しており,この申立てにより,A社は,本件貸付債権の期限の利益を喪失していた。
 本件で,甲手形及び乙手形について,それぞれC銀行の相殺の主張が認められるか否かを,相殺権に関する民事再生法の規律と破産法の規律の違いを踏まえて検討しなさい。


倒産解除特約は,今となっては判例もあって有名な論点になっていますが,

その判例が出たのは平成20年でして,

この年の2年前なんですね。

そんな直近の判例から出題がされたらたまったもんじゃないですね。

それから,設問2はがっつり相殺ですけど,

乙手形の方は,説得的な論述ができる自信がありません。

辛いですね。

≪答案≫
第1 設問1
 1 A社は,B社との取引を継続するため,本件契約が双方未履行双務契約であるとして,履行を請求することが考えられる(民再法49条1項)。本件契約は,B社がA社に対し部品を供給する債務を負い,A社がB社に対しその対価を支払うことを債務とすることを内容とするものであるから,「双務契約」である。そして,A社の「再生手続開始の時において」,B社は部品の供給を,A社は1000万円の支払を「共にまだその履行を完了していない」から,民再法49条1項に定める要件を満たす。
 2⑴ これに対して,B社は,本件契約に含まれる,A社の民事再生手続開始の申立てを原因とする解除の規定(以下「本件倒産解除特約」という。)を理由として,本件契約の解除を主張する。
 A社としては,本件倒産解除特約は民再法の趣旨に反するため,無効であるとの主張を行うことが考えられる。
  ⑵ そこで,本件倒産解除特約の有効性について検討すると,民再法49条は,再生債務者の財産を一体として維持し,再生計画の下で全債権者との間の権利関係を調整を図ろうとする民事再生手続の趣旨・目的(民再法1条参照)の下で,双務契約に基づく対価関係にある当事者の衡平を図るべく,再生債務者に履行又は解除の選択を行うことができることとし,再生債務者の主導の下で権利関係を調整しようとしたものである。そうすると,倒産解除特約が付された場合には,実質的には,当該双務契約の履行又は解除の選択を再生債権者が行うことができることとなるから,再生債務者の主導の下これを選択することができるとした民再法49条の趣旨に反する(※1)(※2)。したがって,このような倒産解除特約は,無効であると考えられる。
  ⑶ これを本件倒産解除特約についてみると,A社が民事再生手続を開始したことを原因として,B社が本件契約を解除することができるとし,実質的に本件契約の消長がB社の選択により左右されることを認めるものであるから,民再法49条の趣旨に反するものとして無効である。
 したがって,Bが本件倒産解除特約を根拠に,本件契約を解除するとの主張は,認められない。
 3⑴ そうすると,A社としては,民再法49条1項に基づき,B社に対して,履行の請求をすることとなる。これに対して,B社は,A社が未だ平成22年3月末日締めの1000万円を支払っていないため,同時履行の抗弁権(民法533条)を行使して,その履行を拒絶するとの主張を行う。
 A社としては,本件契約が,継続的給付を目的とする双務契約(民再法50条1項)であるとして,B社の主張を排斥することが考えられる。
  ⑵ そこで,本件契約が,継続的給付を目的とする双務契約に該当するかについて検討すると,民再法50条の趣旨は,継続的給付契約の中には,再生債務者が事業を行う上で必要不可欠となるインフラや原材料の供給が含まれており,これらの供給が断たれると,再生債務者の再建を図ることは著しく困難となり,民事再生手続の趣旨・目的を達成することができなくなるため,例外的に同時履行の抗弁権を排斥したものである。そうすると,同条にいう「継続的給付」とは,再生債務者が事業を継続する上で必要不可欠となるものを目的とする継続的な供給を内容とするものをいう。
  ⑶ これを本件契約についてみると,B社はA社に対し部品を供給するのであって,A社が精密機械の製造業を営む者であることからすると,部品の供給がされなくなれば,精密機械の製造をすることはできなくなる。そして,A社が再建するためには,B社から当該部品が従前どおり供給されることが不可欠であるとされていることからしても,A社の事業の継続にとって,当該部品の供給が必要不可欠となるものと考えられる。したがって,本件契約は,A社が事業を継続する上で必要不可欠となる当該部品を目的とする継続的な供給を内容とするものであるから,「継続的給付」にあたる。
 したがって,B社は,A社から未だ1000万円の「弁済がないことを理由として」,当該部品の供給を拒絶することはできない。
 4 この場合,B社が既に有している1000万円の債権は,「再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」として「再生債権」として扱われる(民再法84条1項)。一方,A社が再生手続の申立てを行った以降にB社が部品を供給したことの対価として取得する債権は,「共益債権」となる(再生手続開始前の部分について民再法50条2項,再生手続開始後の部分について民再法119条5号)。
第2 設問2
 1 甲手形について
  ⑴ C銀行は,甲手形の取立てにより1000万円の返還債務をA社に対して負っているが,これを本件貸付債権と相殺しようとしている。そこで,まず,これらが相殺適状にあるかについて検討すると,本件貸付債権は,A社が民事再生手続開始申立てを行ったことにより,期限の利益を喪失しているから,「双方の債務が弁済期にあるとき」にあたり(民法505条1項本文),相殺適状にある。したがって,C銀行は,上記相殺の主張をし得る。
  ⑵ もっとも,C銀行が上記返還債務を負担したのは平成22年4月5日であるところ,A社の民事再生手続開始の申立てがあったのは同月1日であるから,上記返還債務の負担は「再生手続開始の申立てがあった後」にされたものであり,同月2日までにはC社は「負担の当時」そのことを「知っていた」のであるから,民再法93条1項4号に該当する。
  ⑶ そうだとしても,C銀行が上記返還債務を負担したのは,同年3月1日に,A社が取立委任契約に基づいてC社に取立を委任したためである。そこで,民再法93条2項2号に該当するものとして,相殺が許されないか。
 同号の趣旨は,債務者の財産状況の悪化について再生債権者が知る前に債務負担の基礎がすでに存在し相殺の担保的機能に対する信頼がある場合に相殺を認める点にある。したがって,「前に生じた原因」といえるためには,債務負担の原因が具体的な相殺期待を生じさせる程度に直接的なものであることを要する(※3)
 これを本件についてみると,A社がC銀行に対してした取立委任は,銀行取引約定書に基づく銀行取引約定に基づくものであって,A社とC銀行の間では取立委任によってC銀行が返還債務を負担することが予定されていたものとみることができる。そうすると,ここでの取立委任は,C銀行がA社との銀行取引によって生ずる債権の回収の手段の一方法として手形の取立て委任を受け,この返還債務と当該債権とを相殺することを予定するものであるということができるから,C銀行がA社に対して負う返還債務の原因である取立委任の段階で,具体的な相殺期待が両者間に生じているものと認められる。したがって,A社がC銀行に対してした取立委任は,「前に生じた原因」にあたる(※4)
  ⑷ よって,C銀行は,甲手形の取立てによって負担した返還債務と本件貸付債権とを相殺することができる。
  ⑸ なお,破産手続においても,同様に取り扱われる(破産法71条1項4号,2項2号)。
 2 乙手形について
  ⑴ C銀行は,乙手形の取立てにより1000万円の返還債務をA社に対して負っているが,甲手形におけるのと同様に,本件貸付債権と相殺適状にある。
  ⑵ もっとも,C銀行が上記返還債務を負ったのは,A社の民事再生手続開始決定後であるから,「再生手続開始後に再生債務者に対して債務を負担した」ものとして,相殺禁止に該当するように思われる(民再法93条1項1号)。また,これについて同条2項の適用はない。
  ⑶ そうだとしても,乙手形の取立てについても,甲手形と同様の取立委任に基づいてされている以上,相殺の合理的期待の程度に差異はない。そこで,乙手形についても,相殺を認めることができないか。
 この点,破産法では,67条2項後段が相殺の担保的機能に対する期待を保護するものであるとして,破産手続開始後に破産債権者の負担する債務に付された停止条件が成就した場合てあっても,71条1項1号にかかわらず相殺をすることができるとされている(※5)
 民再法では,92条1項後段が,条件付債務について規定していないことから,破産法におけるのと同様の解釈をすることができるかが問題となるが,開始された手続が破産手続か再生手続かによって手続開始時における相殺の合理的期待の有無に変わりはない。そして,民再法上も上記のように相殺の合理的期待に対する一定の保護を与えた規定が存することからすれば,民再法92条1項後段が,条件付債務を明示していないことは,これを排除して相殺を認めない趣旨まで有するものではないと考えられる。もっとも,再生手続においては,相殺適状及び総裁の意思表示の期間が制限され,相殺の認められる範囲が限定されていることからすると,債権届出期間満了までに停止条件が成就し相殺適状に達したときは,なお相殺が認められると考える(※6)
 これを本件についてみると,取立委任契約に基づく返還債務は,取立がされることを停止条件とする債務であるところ,C銀行が乙手形の満期が到来したことによりこれを取り立てたことによって停止条件が成就している。そして,これはA社の再生手続における債権届出期間の満了までに成就したものとみられる。
  ⑷ よって,民再法92条1項後段の趣旨から,C銀行は,乙手形の取立てによって負担した返還債務と本件貸付債権とを相殺することができる。

以 上


(※1)最判平成20年12月16日民集62巻10号2561頁は,ファイナンスリース契約中の倒産解除特約の有効性について,「民事再生手続は,経済的に窮境にある債務者について,その財産を一体として維持し,全債権者の多数の同意を得るなどして定められた再生計画に基づき,債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整し,債務者の事業又は経済生活の再生を図るものであ[る](民事再生法1条参照)」とした上で,「民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約による解除を認めることは,……リース物件を,一債権者と債務者との間の事前の合意により,民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ,民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることにほかならないから,民事再生手続の趣旨,目的に反する」と,民事再生手続の趣旨,目的から結論を導出する判示を行っています。しかし,直接的に問題となる条文が存在する場合には,その条文の趣旨との関係から,当該倒産解除特約の有効性を論じた方が説得的であるように思われます。採点実感が「有効性を否定する理由として,民事再生法の趣旨(第1条)又は同法第50条の趣旨のみを挙げ,第49条の趣旨と関連付けて論じていない答案が相当数見られた。」と指摘しているのは,そういうことを言っているのではないかと思います。
(※2)最判解民事篇平成20年度594頁は,倒産解除特約を無効とする見解の論拠として,「倒産手続の開始に至るまでに必ず発生する事由を解除事由とし,その解除によって取戻権を発生させ,特定債権者だけが完全な満足を受けるという事態を防止する必要がある。また,倒産解除特約を有効とすると,倒産法が双務契約について破産管財人等に解除権を与えた趣旨を無にすることになる。再建型のみならず,清算型の倒産手続においてもこのような特約は無効とすべきである。」ということを挙げています。上記の採点実感は,この点を踏まえて指摘されているものであると考えられます。
(※3)山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』260頁
(※4)破産債権者が、支払の停止及び破産の申立のあることを知る前に、破産者との間で、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者が占有する破産者の手形等を取り立て又は処分してその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結したうえ、破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止又は破産の申立のあることを知ったのち破産宣告前に右手形を取り立てた場合には、破産債権者が破産者に対して負担した取立金引渡債務は、法104条2号但書にいう『前ニ生ジタル原因』に基づき負担したものに当る……。けだし、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合には、対立する両債権は相殺できることにより互いに担保的機能をもち、当事者双方はこれを信頼して取引関係を持続するのであるが、その一方が破産宣告を受けた場合にも無制限に相殺を認めるときは、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることになるので、同号は、本文において破産債権者が支払の停止又は破産の申立のあることを知って破産者に対して債務を負担した場合に相殺を禁止するとともに、但書において相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合に相殺を禁止しないこととしているものと解されるところ……、破産債権者が前記のような取引約定のもとに破産者から個々の手形につき取立を委任されて裏書交付を受けた場合には、破産債権者が右手形の取立により破産者に対して負担する取立金引渡債務を受働債権として相殺に供することができるという破産債権者の期待は、同号但書の前記の趣旨に照らして保護に値するものというべきだからである。」最判昭和63年10月18日民集42巻8号575号
(※5)「旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの。以下「法」という。)99条後段は、破産債権者の債務が破産宣告の時において期限付又は停止条件付である場合、破産債権者が相殺をすることは妨げられないと規定している。その趣旨は、破産債権者が上記債務に対応する債権を受働債権とし、破産債権を自働債権とする相殺の担保的機能に対して有する期待を保護しようとする点にあるものと解され、相殺権の行使に何らの限定も加えられていない。そして、破産手続においては、破産債権者による相殺権の行使時期について制限が設けられていない。したがって、破産債権者は、その債務が破産宣告の時において期限付である場合には、特段の事情のない限り、期限の利益を放棄したときだけでなく、破産宣告後にその期限が到来したときにも、法99条後段の規定により、その債務に対応する債権を受働債権とし、破産債権を自働債権として相殺をすることができる。また、その債務が破産宣告の時において停止条件付である場合には、停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく、破産宣告後に停止条件が成就したときにも、同様に相殺をすることができる。」最判平成17年1月17日民集59巻1号1頁
(※6)「破産手続の場合と異なり,②債務が条件付または将来の請求権に関するものであるときに,相殺をすることができる旨の明文はない。規定の不在をめぐっては,(ⅰ)条件の成就・不成就による利益・機会を放棄して相殺をすることを否定する趣旨か,(ⅱ)停止条件が債権届出期間の満了までに成就しても相殺はできないこととする趣旨か(特に相殺禁止に関する民再93条1項1号との関係で問題が生じる。……)という問題がある。破産手続との違いを強調するならば,いずれも相殺を否定する趣旨であると解することになる。しかし,(ⅰ)については,民法上の相殺の拡大であるならば明文なくして認めることは困難であろうが,条件に関する利益の放棄が民法上妨げられるものではないと解される……。(ⅱ)については,開始された手続が破産手続か再生手続かによって手続開始時における相殺の合理的期待の有無に変わりはなく,再生手続においては相殺適状および相殺の意思表示の期間が制限され,相殺の認められる範囲が限定されていることからすると,債権届出期間満了までに停止条件が成就し相殺適状に達したときはなお相殺が認められると解すべきではないか。その場合にも,『相殺の合理的期待』の認められないときは相殺は当然禁止される……。」前掲山本ほか268頁



2019-02-18(Mon)

【新司】倒産法平成29年第2問

随分前に書いたシリーズもこれにて終結。

平成29年第2問です。

どんな問題だったか,全く覚えてません。

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A社は,精密部品の製造及び販売を業とする株式会社である。Bは,A社の代表取締役であり,その発行済株式の全部を有していた。A社は,優秀な技術をいかして研究を重ねた結果,競合する他社に勝る品質と価格を実現し,主要取引先である甲社及び乙社に対し,それぞれの仕様に応じた製品を供給して,順調に事業を営んでいた。
 ところが,平成28年10月末,甲社向けの製品に仕様と異なる多数の欠陥品が生じたことから,同年11月末に甲社との取引が打ち切られた。そのため,A社は,売上げがほぼ半減し,平成29年1月末日の資金繰りに窮することとなった。
 そこで,A社は,弁護士Cを代理人として,平成29年1月25日に再生手続開始の申立てをした。同日,A社について弁済禁止の保全処分(ただし,金5万円以下の債務の弁済は,その対象外とされた。)及び監督命令が発せられ,弁護士Kが監督委員に選任された。
 平成29年2月7日,A社について再生手続開始の決定がされた。同決定時のA社の負債の総額は約3億円,債権者総数は50名である。

〔設 問〕
1.再生債権の弁済に関する原則に触れつつ,以下の小問に解答しなさい。
 ⑴ 再生債権者のうち,債権額3万円未満の者は12社であり,その債権の総額は30万円,その弁済期はいずれも平成29年2月20日であった。同年2月10日までに,そのうち3社からA社に連絡があり,いずれも全額の弁済を強く求めた。他の9社は,特段の要求をせず,債権届出書の作成中であることが判明した。
 A社は,弁済を求めている3社に対して支払をすることができるか。C弁護士の立場に立って,そのための方策を根拠とともに述べなさい。また,他の9社については,どうすべきか。
 ⑵ 再生債権者のうち,製造工程の一部を受注していた者は5社であり,その債権額は70万円から300万円までであった。Bは,申立ての直後からこれら各社を回り,再生手続の遂行について理解を求めたところ,D社を除く4社はおおむね協力的であり,再生債権の届出を行い,従来どおりに取引を継続することを了解した。
 一方,D社(債権額100万円,弁済期平成29年2月10日)は,同月15日,債権全額の支払がない限り,今後一切A社との取引をしないと通告してきた。A社は,近時開発した製品αに不可欠なパーツβの製作を全てD社に発注していた。製品αは,A社の戦略商品であり,再生手続開始の申立て後も主要取引先である乙社から安定した出荷の継続を要請され,乙社との取引の継続に必須であるのみならず,将来の取引先拡大など発展の要としても位置付けられている。
 しかし,A社にパーツβの在庫はほとんど残っておらず,D社がパーツβを納品しない限り,A社は製品αの生産ができなくなる。
 A社は,D社に対して支払をすることができるか。C弁護士の立場に立って,そのための方策を根拠とともに述べなさい。
2.A社について管理命令が発せられ,弁護士Lが管財人に選任された場合と比較しつつ,以下の小問に解答しなさい。
 ⑴ A社は,本社の近くに丙土地(担保設定なし)を所有していた。その隣地に居住していたEは,「近々2台目の乗用車を買おうと思っており,その駐車場に丙土地がちょうどよい。お隣同士だから50万円くらいなら買ってもよい。」とBに持ち掛けた。Bは,申出に応じることとし,平成28年10月15日,A社は,Eに対し,丙土地を売却して代金50万円を受領した。おって,その所有権移転登記手続を行う予定であったが,同月末に生じた欠陥品問題の対応にBが追われた事情もあり,登記手続が行われないまま,再生手続開始の申立てに至った。
 Eは,平成29年2月10日,A社に対し,丙土地の所有権移転登記手続を求める訴えを提起した。
 Eの所有権移転登記手続の請求は認められるか。A社の反論を踏まえて,論じなさい。
 ⑵ F社は,中古機械の販売等を業とする株式会社であるが,その代表取締役Gは,平成28年9月末の決算期に合わせて在庫の台数を調整し,架空の売上げを計上しようと考え,旧知のBに協力を要請した。A社は,中古機械を必要としていなかったが,Bは,Gの意図を理解し,両社が通謀の上,平成28年9月末日,A社は,F社から中古機械(市場価格300万円程度)を500万円で購入する契約を締結した。同日,F社は,当該中古機械をA社に引き渡したが,打合せどおりF社は代金を請求せず,A社も支払をしなかった。当該中古機械は,A社内に据え置かれたまま,再生手続開始の申立てに至った。
 F社は,平成29年2月20日,当該中古機械の売買契約は,通謀虚偽表示(民法第94条)により無効であるとして,A社に対し,その引渡しを求める訴えを提起した。
 F社の引渡請求は認められるか。A社の反論を踏まえて,論じなさい。


あー……

こんな問題あったな……

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問⑴
 A社は,弁済を求めている3社に対して支払をすることができるか。これらの3社がA社に対して有する債権は「再生債権」(民再法84条1項)とされているところ,再生債権については,再生手続開始後は,再生計画外で弁済をすることができない(同法85条1項)のが原則である。
 そこで,C弁護士としては,これらの3社に対する弁済をすることを許可することを裁判所に求めることが考えられる(同条5項前段)。A社の負債総額は約3億円であるところ,これらの3社の再生債権はいずれも3万円未満いのものであり,負債総額の0.03%に満たないから,「少額の再生債権」である。そして,A社に対する債権者総数は50名であって,比較的人数が多い。そこで,再生手続を進める上では,人数が多いことによる手続の煩雑が想定されるが,特にこれらの3社については弁済を強く求める態度に出ている。そうすると,今後の再生計画の策定などにおいて,これらの3名が決議において反対するなど,その早期な再生手続の阻害となり得る。したがって,これらの3社に弁済をすることで,「想起に弁済することにより再生手続を円滑に進行することができる」と認められる。以上から,A社は,弁済を求めている3社に対し支払をすることができる。
 また,他の9社についても,C弁護士は,弁済の許可を裁判所に求める。上記同様「少額の再生債権」を有するにすぎず,人数の多い本件の再生手続においては,再生債権者数を減らすことで,費用を軽減することもでき,「再生手続を円滑に進行」することができる。したがって,A社は,他の9社についても,その債務の弁済をすることとなる。
 2 小問⑵
 C弁護士としては,D社に対する弁済を許可するよう裁判所に求めることが考えられる(民再法85条5項後段)。
 D社がA社に対して有する債権額は100万円であり,負債総額の約0.3%にすぎず,「少額の再生債権」である。A社がD社としていた取引の内容としては,A社が戦略商品としている製品αに不可欠なパーツβの政策をD社が行うというものである。製品αは,主要取引先である乙社から安定した出荷の継続を要請されており,乙車との取引の継続に火っすとされている。そして,A社は,これまで主要取引先としてきたのは,甲社及び乙社であったが,甲社との取引が打ち切られた現在では,乙社との取引が継続されなければ事業の継続が不可能となる。したがって,製品αの供給をとめるわけにはいかないところ,この不可欠なパーツβは,A社に在庫がほとんどなく,D社がパーツβを納品しない限り製品αの生産はできない。また,甲社との取引がなくなった現在では,他社との取引を拡大することも視野に入れる必要があるところ,これもD社からの供給がなければ行うことができない。以上からすると,D社が再建全額の弁済がない限り,A社との取引をしない旨通告している状況の下では,「弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来す」ということができる。そして,通告があった段階で弁済期を徒過しているから,「早期に弁済」する必要がある。
 以上から,A社はD社に対して支払をすることができる。
第2 設問2
 1 小問⑴
 Eの所有権移転登記手続の請求は認められるか。AE間では,丙土地の売買契約が締結され,EはAに500万円を支払っているから,Eは丙土地を所有している。そして,Aが限最゛も丙土地の所有権移転登記を具備している。したがって,Eの請求は認められるようにも思える。ここで,Aとしては,再生手続開始決定により,再生債務者としての地位を取得したことによって「第三者」(民法177条)にあたるため,Eの請求は認められない旨反論する。
 ここで,A社について管理命令が発せられ,管財人Lが選任されている場合には,A社の財産の管理処分権がLに移る結果(民再法66条),Lがあたかも差押債権者と同様の地位を取得するため,「第三者」にあたり,Eとの間で対抗関係になる。
 他方で,A社について監督命令が発せられているにすぎない本問では,A社の財産の管理処分権は未だA社に残っている(同法38条1項)。そうすると,A社が「第三者」にあたることを主張する結果,自己が行った土地の売却について相反する態度をとることになる。しかし,再生債務者は,再生債権者との間で公平誠実義務を負うから(同法38条2項),それまでの地位と独立した再生債務者固有の地位を取得することとして,相反する態度をとらせても問題ない
 したがって,A社は「第三者」にあたり,Eとの間で対抗関係に立つところ,Eは所有権移転登記を具備しておらず,したがって,Eの請求は認められない。
 2 小問⑵
 F社の引渡請求は認められるか。AF間の中古機械の売買契約は無効とされることから,その所有権はF社に帰属する。そして,A社がこれを占有している。したがって,F社の請求は認められるようにも思える,ここで,A社としては,自己が「善意の第三者」(民法94条2項)にあたるため,F社の請求は認められない旨反論する。
 ここで,管財人Lが選任されている場合には,管財人が再生債権者の利益を代表して選任される以上,「善意」の判断は,再生債権者を基準として行う。そして,再生債権者の中に一人でも「善意」の者がいる場合には,その者を保護する必要があるから,「善意」であると判断される
 他方で,監督命令が発せられているにすぎない場合には,A社が「善意の第三者」にあたるかを判断することとなるが,A社は自ら虚偽表示に基づく取引に加担した者である。しかし,法は再生債務者に管理処分権を残しながら公平誠実義務を課していることからすると,再生手続開始後は,再生債務者であっても再生債権者を代表する地位にあるといえる。したがって,この場合にも,再生債権者を基準として「善意」の判断をすることとなる。
 本件では,F社で架空計上がされるなど,外部から虚偽表示であることが認識できない態様で取引されているから,再生債権者に少なからず「善意」の者がいると考えられる。したがって,F社の引渡請求は認められない。

以 上



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||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
お疲れ様です。

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