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2019-04-05(Fri)

【基礎演習民事訴訟法】問題30「境界確定訴訟」

ついに基礎演習が解き終わります。

11日かかりましたね。

2週間かからなくてよかったです。

≪問題≫

 登記簿上,東京都三鷹市下連雀□丁目〇番△号の1の土地(以下,甲土地)と,東京都三鷹市下連雀□丁目〇番△号の2の土地(以下,乙土地)とは,隣接する関係にある。
 甲土地は,昭和47年以来Aが所有していたが,平成11年3月2日にAからBに譲渡された。平成18年6月7日にBは死亡し,Bの妻Cが甲土地を相続している。登記もそのとおり移転している。
 乙土地は,昭和47年から現在に至るまでFが所有し続けており登記簿上の名義人もFである。
 甲・乙両土地が存在する地面には,両土地の境界を示す石票として,ア・イ,ウ・エの石票の4つの石票があった(次頁図参照)。ウ・エの石票の方が古く,昭和47年以前から存在するものと考えられるが,ア・イの石票は昭和50年頃,AとFの教義により設定された石票である。
 昭和50年頃ア・イの石票が設置されて以来,Fはア・イの境界までを自己の土地と信じ,占有し続けてきた。
 ところが,CとFの間で,甲土地と乙土地の境界がア・イの線で画されるのか,それともウ・エの線で画されるのかにつき,争いが生じた(ア・イ・エ・ウ・アで画される土地を「本件係争地」とする)。
【図省略】
〔設問〕
 CがFを被告として,⑴甲・乙土地の境界がウ・エ線であることの確定を求める訴え,⑵本件係争地の土地所有権確認の訴えを提起した。
 それに対しFが,境界はア・イ線だと争った上,仮に境界がウ・エ線であるとしても,Fはア・イ線まで土地を時効取得したと主張した。
 裁判所は,甲・乙間の境界は不明だが,諸般の事情からオ・カの線で引くべきであると判断した場合,裁判所は⑴・⑵の訴えにつきいかなる判決を下すべきか。


締めくくりは境界確定。

書き方よく分かんないですね。

えんしゅう本にも境界確定の問題があった記憶がありますが,

どんな答案の書き方だったか全く記憶にないですね。

≪答案≫
第1 ⑴の訴えについて
 1⑴ Cが提起した甲・乙土地の境界の確定を求める訴え(以下「本件境界確定訴訟」という。)において,Cはその境界がウ・エ線であると主張しているのに対し,Fはウ・エ線の全部に接続する甲土地を時効取得したと主張しているため,Cに本件境界確定訴訟の当事者適格が認められるかどうかについて検討する。
  ⑵ 境界確定の訴えは,隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に,裁判によって新たに土地を区分する公法上の境界を確定することを求める訴えであり(※1)(※2),判決の確定によって境界が確定するという点では形成の訴えであるが,形成原因が定められていないため,訴訟物たる形成原因を観念することができない形式的形成の訴えである(※3)。そうすると,公法上の境界を私人の意思によって定めることはできないのであるから,裁判所が合目的的な見地から裁量を行使することによって,境界を確定することが予定されている点で,その実質は非訟事件である(※4)
 当事者適格は,特定の訴訟物について,誰が当事者として訴訟を追行し,また,誰に対して本案訴訟をするのが紛争の解決のために必要で有意義であるかという観点から決せられるところ,このような訴えにおいては,相隣接する土地の各所有者が,境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として,当事者適格を有する(※5)
  ⑶ これを本件についてみると,Fがウ・エ線の全部に接続する甲土地の一部を時効取得したと主張しているが,甲土地の全部を時効取得しない限りは,CとFとは,境界に争いがある隣接土地の所有者同旨という関係にあることに変わりはない。したがって,Cは,本件境界確定訴訟の当事者適格を失わない(※6)(※7)
 2⑴ 次に,裁判所は,甲土地と乙土地との境界について,C及びFが主張する線とは別の線が境界であるとの心証を抱いている。そこで,当事者の申し立てていない別の線を境界として定めることができるかどうかが,処分権主義と関連して問題となる。
  ⑵ 処分権主義とは,訴訟の開始,審判の対象・範囲,訴訟の終了に関する決定を当事者の権能かつ責任とする建前をいい,訴訟外の私的自治を訴訟上に反映したものである。しかし,前記のように,境界確定の訴えは,私人が自由に処分することができない境界を対象とするから,そもそも訴訟物たる権利関係が存在せず,私的自治が妥当しない。したがって,私的自治を根拠とする処分権主義は,境界確定の訴えには妥当しない(※8)。そうすると,裁判所は,当事者が主張する境界に拘束されず,自らその境界を定めることができる(※9)
  ⑶ これを本件についてみると,甲・乙土地の境界について,Cはウ・エ線,Fはア・イ線をそれぞれ主張するが,裁判所はいずれの主張にも拘束されるものではなく,自らが心証を抱いたオ・カ線を境界として定めることができる。
第2 ⑵の訴えについて
 1 CがFに対して本件係争地の所有権の確認を求める訴えを提起しているが,これは私法上の権利関係をその対象とする確認の訴えである。したがって,⑴の訴えと異なり,処分権主義が妥当する。
 2 まず,Fが本件係争地を時効取得したとの抗弁が認められる場合には,裁判所は,請求棄却判決をすべきである。
 3 Fの時効取得の抗弁が認められない場合には,C及びFの所有権界は,甲・乙土地の境界と一致することとなるが,これが不明であることから,本件係争地についてのCの所有権の存在を証明責任を超えて確信することができないため,裁判所は,請求棄却判決をすべきである。なお,裁判所がオ・カ線を境界として設定したことをもって,Cの土地所有権もオ・カ線まで認めらるとも思えるが,Cの土地所有権が及ぶのはあくまで客観的に存在していた甲・乙土地の筆界であり,裁判所が新たに設定したオ・カ線とは異なるため,オ・カ線までXの土地所有権が認められるものではない。

以 上


(※1)「土地の境界の確定を求める訴えも,土地を区分する公法上の境界(筆界)の確定を求める訴訟であると解したうえで形式的形成訴訟に属すると考えるのが判例である(最判昭和43・2・22民集22巻2号270頁等)。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』38頁
(※2)「境界確定の訴は、隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に、裁判によつて新たにその境界を確定することを求める訴であつて、土地所有権の範囲の確認を目的とするものではない。」最判昭和43年2月22日民集22巻2号270頁
(※3)「判決の確定によって法律関係が変動するという点では形成の訴えと共通するが,形成原因が具体的に定められておらず,訴訟物たる形成原因を観念することができないためにどのような判決を下すべきかが裁判官の健全な裁量に委ねられるという点で形成の訴えと異なる訴訟類型を『形式的形成訴訟』という。」前掲三木ほか38頁
(※4)「このような訴訟類型では,裁判所は事実に法を適用するというよりは,合目的的な見地から裁量を行使することになるから,形式的形成訴訟は非訟事件であるとされる。」前掲三木ほか38頁
(※5)「右訴えは、もとより土地所有権確認の訴えとその性質を異にするが、その当事者適格を定めるに当たっては、何ぴとをしてその名において訴訟を追行させ、また何ぴとに対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから、相隣接する土地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのである。」最判平成7年3月7日民集49巻3号919頁
(※6)「右の訴えにおいて、甲地のうち境界の全部に接続する部分を乙地の所有者が時効取得した場合においても、甲乙両地の各所有者は、境界に争いがある隣接土地の所有者同士という関係にあることに変わりはなく、境界確定の訴えの当事者適格を失わない。」前掲最判平成7年3月7日
(※7)「本件訴訟中の境界確定を求める訴えは、上告人が伊野町字長畑四〇九一番の土地を所有するとして、これに隣接する同所四九二番の土地の所有者である被上告人に対し、右両土地の境界の確定を求めて提起したものであるが、原審の適法に確定するところによれば、上告人の所有であった同所四〇九一番の土地全部が被上告人により時効取得された結果、上告人は右土地全部につき所有権を喪失したというのであるから、上告人は右の境界確定を求める訴えについての原告適格を失ったというべきであって、右訴えは不適法な訴えとして却下を免れない。」最判平成7年7月18日集民176号491頁
(※8)「形式的形成の訴えの訴訟上の特色としては,処分権主義および弁論主義が妥当しないことが挙げられる。処分権主義および弁論主義は,訴訟物たる権利関係について私的自治の原則が妥当することにその根拠をもつが,この訴えの場合には,訴訟物たる権利関係が存在しないので,2つの原則が妥当しない。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』163頁
(※9)「境界確定の訴えを例にとれば,原告は,隣接する土地の境界線を定めることを申し立てれば足り,確定を求める特定の境界線を示す必要はない。かりに原告が特定の境界線を示したとしても,裁判所は,その境界線を越えた境界線を定めることも許されるし,控訴審における不利益変更禁止の原則も妥当しない。」前掲伊藤163頁



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2019-04-05(Fri)

【基礎演習民事訴訟法】問題29「訴訟と非訟」

早くも本日2通目です。

午前中に2通も答案書いたのは初めてですね。

とはいえ,前回と今回はそんなに中身が重くないので,

総量的には1通に等しいですが。

≪問題≫

 A男とB子は,半年間の交際を経て挙式し,婚姻届けを出した。2人はそれぞれ別の企業の東京本社に勤めていたので,新居は東京都内に定めた。
 1年半後に,B子は大阪支社に異動になった。A男も大阪に転勤することができないか,上司に相談したが,しばらくは東京で勤務してもらいたいということであった。A男とB子は相談して,次のように取り決めた。
 大阪には,B子が単身で赴任する。月に数回,B子が東京に帰ってA男と過ごす。A男が大阪に転勤するまでこうした生活を続け,転勤が決まったところで,大阪市内に2人の新しい住居を定める。
 それからしばらくたって,B子が東京に帰ってくる回数が減るようになった。B子が電話やメールで「このところ仕事が忙しくて,週末は疲れて休んでいることが多いの。ごめんね。」というので,A男は,B子も1人で大変だなと思って納得していた。しかし,その後もB子は帰京せず,連絡もとれないことが続いたため,だんだん不安になってきた。
 ようやくB子に電話がつながったので,A男は「次の週末は帰れないか」といってみた。B子の返事は,「前にもいったけれど,今,仕事が忙しくて毎日大変なの。夫婦だからって,月に何日は一緒にいなければならないという決まりはないんだし,それぞれの家で都合のよいようにすればいいと思うの。しばらく帰れないけれど,がまんしてちょうだい」というものであった。
〔設問〕
1.A男がB子の返事に納得できない場合,どのような方法で事態を解決すればよいか。
2.A男は,裁判所に解決を求めることはできるか。その場合に,裁判所のどのような手続を利用すればよいか。


束縛が強い人は何をやらせてもダメ。

A男はクソ。はっきりわかんだね。

ところで,設問1は一体何を書けばいいのでしょうか。

裁判上の手続は全部設問2になると思うので,

設問1はマジで人生相談みたいな感じになってしまいます。

それでいいのでしょうか。

≪答案≫
第1 設問1
 話し合いによる円満な解決が望まれる。
第2 設問2
 1 まず,XはYに対し,同居を求める訴えを提起することが考えられる。この場合,裁判所は,同居義務(民法752条)の違反があると認めるときには,判決で被告に同居を命じる。しかし,その性質上,強制執行によって同居義務を実現させることはできない。
 2 もっとも,同居義務については,その具体的な内容が法によって定められていない。そこで,XはYとの間の夫婦の同居に対する審判を裁判所に求めることが考えられる(家手法39条,150条1号,別表第2第1項)。
 家庭裁判所は,当事者であるA男またはB子の申出があれば,非公開の審問の期日を開いてA男とB子の言い分を聴き,事実の調査をする(同法68条2項)。それによって判明したそれぞれの勤務の状態や東京と大阪のそれぞれの住居の事情などを勘案して,夫婦同居の審判をする。A男またはB子がこれに不服があれば,高等裁判所に即時抗告をすることができる(156条1号)。抗告審の手続については,抗告人以外の当事者には,原則として抗告状の写しを送付しなければならないものとされている(88条1項)。また,原審判を取り消す場合には,抗告人以外の当事者の陳述を聴取しなければならず(89条1項),原審判を取り消すか否かにかかわらず,即時抗告が不適法であるときまたは即時抗告に理由がないことが明らかなときを除き,抗告人以外の当事者の陳述を聴かなければならない(89条2項)。高等裁判所の裁判に対して最高裁判所に抗告をすることは,憲法違反を理由とする場合やその高等裁判所が許可をした場合でなければできない(裁判所法7条2号,家手法94条1項,97条1項)。

以 上



2019-04-05(Fri)

【基礎演習民事訴訟法】問題28「審判権の限界」

当ブログの記事数もやっと300に達した模様です。

記事番号だけなら,少し前に300を超えていますが,

どうやら昔に記事の削除とかやったっぽいです。

何の記事を消したんですかね。

さっぱり覚えてないです。

ところで,今回は,基礎演習の28問目です。

≪問題≫

 X寺は,宗派Aに属する宗教法人である(AはXを包括する宗教法人)。X寺の住職Y(法人規則により住職=法人の代表役員)は,Aから懲戒処分を受け,住職を辞めさせられたのだが,寺に住んで相変わらずの生活を続けており,全く出て行く気配がない。そこで,Xは新しい住職=代表役員b)をすえて,Yに対し,所有権に基づく寺院建物の明渡請求訴訟を提起した。
 これに対し,Yは,「自分が現在も住職で代表役員であり,寺を占有する権限がある。Yを懲戒処分にしたというのは,宗教法人Aの代表者を名乗るaという人物であるが,この者は前任者から宗教上の秘伝を授かっておらず,真の代表者ではないで懲戒権限がない」として懲戒処分の無効を主張している。そして自らも,Yが住職であり代表役員としての地位にあることの確認を求める反訴を提起した。
〔設問〕
 両者の訴えは,法を適用して調整するにふさわしい「法律上の争訟(裁判所法3条)」にあたるか。それぞれにつき訴えの利益はあるか。それぞれの請求につき本案判決を下すべきか。


法律上の争訟……

予備の憲法で出たわ……

ちょっと目まいが……

≪答案≫
1 XのYに対する所有権に基づく返還請求権としての寺院建物明渡請求訴訟(以下「本件本訴」という。)及びYのXに対する住職であり代表役員としての地位にあることの確認請求訴訟(以下「本件反訴」という。)は,民事訴訟の対象となる「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)にあたるか。
2 司法権(憲法76条1項)は,具体的な争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用である。したがって,その対象となる「法律上の争訟」とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,法令の適用によって終局的に解決できるものをいう(※1)(※2)。この点,宗教団体における宗教上の教義,進行に関する事項については,憲法上国の干渉からの事由が保障されているのであるから,裁判所はこれらの事項にかかわる紛議について厳に中立を保つべきである。そうすると,当事者間の具体的な権利に関する訴訟であっても,宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており,その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに,それが宗教上の教義,信仰の内容に深くかかわっているため,当該狭義,信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず,しかも,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には,当該訴訟は,その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして,「法律上の争訟」に当たらない(※3)
3⑴ これを本件本訴についてみると,Xの寺院の所有権に基づいて寺院建物の明渡を求めるものであり,具体的な権利の存否に関する紛争である。しかし,本件本訴の請求原因事実は,Xが寺院建物を所有していることと,Yが寺院建物を占有していることであるが,これに対してYは,懲戒権限がないaによる懲戒処分が無効であることから,寺院の占有権原が失われていないとの反論を行っている。そうすると,Yの正当占有権原の抗弁を審理する上では,aの処分権限の存否について審理しなければならないところ,ここではaが前任者から宗教上の秘伝を授かっているか否かについても立ち入らなければならない。このような事実関係の下では,aが宗教上の秘伝を授かっているか否かという宗教上の教義の内容と深くかかわる懲戒処分の効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなしており,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものであると認められる。したがって,本件本訴は,法令の適用による終局的解決に適しないものであるから,「法律上の争訟」にあたらない。
 ⑵ 次に本件反訴についてみると,Yが住職であり代表役員の地位にあることは,宗教法人法に定める法律上の地位についての確認を求めるものであり,当事者間の具体的な法律関係の存否に関する紛争である。しかし,Yのこれらの地位は,aによる懲戒処分が有効であるか否かの判断によって左右される関係にある。したがって,本件本訴と同様に,aが宗教上の秘伝を授かっているか否かという宗教上の教義の内容と深くかかわる懲戒処分の効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなしており,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものであると認められる。したがって,本件反訴は,法令の適用による終局的解決に適しないものであるから,「法律上の争訟」にあたらない。
4 したがって,裁判所は,いずれの訴訟についても却下すべきである。
 なお,このような場合にも,宗教上の教義について裁判所が判断することができないことから,主張立証責任が果たせていないと評価するにとどめて,本案判決をすべきであるとする見解もあるが,これは主張立証できない事項について主張立証責任を課すことになり,妥当でない。
 また,裁判所は,宗教団体が自律的に決めた結果を受容して処分権限を認め,認容判決をすべきであるとする見解もあるが,この場合には,相手方は公序良俗違反を理由とする以外ほとんど反論を差し挟む余地がないのであるから,宗教団体の一方的な主張を容れるに等しくなり,妥当ではない。

以 上


(※1)「裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、法令の適用により終局的に解決することができるものに限られ、したがって、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、法令の適用により解決するに適しないものは、裁判所の審判の対象となり得ないというべきである」最判平成元年9月8日民集43巻8号889頁
(※2)「司法権の内容については,一般に,具体的な争訟について,法を適用し,宣言することによって,これを裁定する国家の作用である,といった定義がされる。これには,民事訴訟(行政訴訟を含む),刑事訴訟の裁判をする権限が含まれ,裁判所法は,このことを,一切の法律上の争訟を裁判する権限と表現している(裁3条1項)。したがって,法律に別段の定めがないかぎり,法律上の争訟に該当しない事件については,裁判所の審判権は認められず,裁判所は,訴えを却下しなければならない。」「判例によれば,法律上の争訟とは,①当事者間のぐたいてきな権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,②法令の適用によって終局的に解決できるものでなければならない(最判昭和28・11・17行裁集4巻11号2760頁)。したがって,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係とは無関係に,抽象的に法令の解釈や有効性について争うことは,①の要件を欠き,審判権の対象とならない(最大判昭和27・10・8民集6巻9号783頁)。また,単なる事実の存否や,学問上の見解の当否などについての争いは,②の要件を欠くことから,法律上の争訟に当たらないとされる。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』351頁
(※3)「宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議については厳に中立を保つべきであることは、憲法20条のほか、宗教法人法1条2項、85条の規定の趣旨に鑑み明らかなところである……。かかる見地からすると、特定人についての宗教法人の代表役員等の地位の存否を審理判断する前提として、その者の宗教団体上の地位の存否を審理判断しなければならない場合において、その地位の選任、剥奪に関する手続上の準則で宗教上の教義、信仰に関する事項に何らかかわりを有しないものに従ってその選任、剥奪がなされたかどうかのみを審理判断すれば足りるときには、裁判所は右の地位の存否の審理判断をすることができるが、右の手続上の準則に従って選任、剥奪がなされたかどうかにとどまらず、宗教上の教義、信仰に関する事項をも審理判断しなければならないときには、裁判所は、かかる事項について一切の審判権を有しない以上、右の地位の存否の審理判断をすることができないものといわなければならない……。したがってまた、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっているため、右教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、右訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』に当たらないというべきである」前掲最判平成元年9月8日



2019-04-04(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題27「再審」

さて久しぶりとなりましたが,

【今日の一品】のコーナーです。

今日ご紹介する商品はこちら(通販的なノリ)

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またムタヒロですが,

月が替わって,今月の限定も新しく「サンマ―つけ麺」に替わりました。

サンマーメンというのは聞いたことがありますが,

それのつけ麺バージョンですかね。

たっぷりの野菜を餡で絡めたつけ汁は,

甘みがあって一風変わった風味が楽しめます。

野菜不足になりがちの下宿勢にはいいかもしれません。

角煮のトッピングがついていますが,

つけ汁によく合うと思います。

ただ,つけ汁がもっと熱々だったら良かったなとも思いました。

少しでも気になった方は是非国立へ。

ところで,今回は,基礎演習の27問目です。

≪問題≫

【ケース1】
 Xの妻AはX名義のクレジットカードを無断で用いてブランド物の鞄や靴を購入した。代金を立替払いしたカード会社Yは,Xを被告として立替金30万円の支払請求訴訟を提起し,その訴状および第1回期日の呼出状がX宅において実施された際,X,A共に不在であり,7才になるその娘Bが留守番をしていたので,郵便局員はBに訴状等を交付した。Bはこの訴状等を両親に渡さないでオモチャ箱にしまい込んでしまい,そのため第1回口頭弁論期日にXが欠席したままY勝訴の判決が言い渡された。この第1審判決の送達の際にはX宅にAがいたので,それがAに交付されたが,カード無断使用の事実を知られたくないAはこれを隠匿し,そのまま2週間が経過した。Yがこの確定判決に基づきXの賃金債権を差し押さえたことにより,初めてXは自分が第1審で敗訴していた事実を知った。
〔設問〕
 Bへの訴状等の補充送達の効力,無効である場合のXの救済方法のあり方を検討しなさい。
 Aへの第1審判決正本の補充送達の効力,有効または無効の場合のXの救済方法のあり方を検討しなさい。

【ケース2】
 妻AによるX名義のクレジットカードの無断使用をめぐる事案において,訴えの提起に先立ち,XとYの担当者Cとの間でやりとりがあり,その際,今後自分は勤務先の〇県△市の本店から東京支店に長期出張するので,自分宛の連絡は東京支店宛にしてほしいと伝えていた。Yが提起した立替金支払請求訴訟の訴状送達がX宅において試みられた際,Xのみならず,A,Bも上京中であったので,裁判所書記官はYに対しXの就業場所を照会したところ,上記のやり取りがあったにもかかわらず,Cは「Xの就業場所は不明」と回答したため,訴状等の郵便に付する送達が実施された。書留郵便の発送により送達の効果が生じ(107条3項),書留郵便は保管期間の満了により裁判所に返戻された。第1回期日にX欠席のままY勝訴の判決が言い渡され,その正本はX宅においてAに補充送達されたが,Aはこれを隠匿したまま2週間が経過した。Yがこの判決に基づきXの賃金債権を差し押さえたため,Xは30万円を任意弁済して差押申立てを取り下げさせた。Xは,本件確定判決はYの使用人Cが債務名義を騙取する意図で裁判所に対してした欺もう行為により成立したものであり,この行為と差押えを取り下げさせるためにXがした金30万円の支払との間には相当因果関係があると主張して,Yに対し金30万円の損害賠償の支払を求める訴えを提起した。
〔設問〕
 郵便に付する送達の効力とXの救済方法のあり方を検討しなさい。
 再審を経由しないで不法行為による救済を求めることの当否を検討しなさい。


うーん書くことたくさんな予感。

再審にまつわる論点を全部ぶち込んだ感じですね。

何時間かかるんだろうか……。

≪答案≫
【ケース1】
第1 Bへの訴状等の送達について
 1 YのXに対する立替金支払請求訴訟に係る訴状等が,被告たるXの子Bに対して送達されているが,この送達は有効か。
  ⑴ 送達は,原則として,送達を受けるべき者に送達書類を交付して行う(民訴法101条)。訴状は,被告に送達するものとされているから(同法138条1項),送達を受けるべき者は,被告たるXである。しかし,郵便局員が訴状等を,Xの就業場所以外であるX宅において実施した際に,Xは不在であったため,これを交付することができていない。
  ⑵ そうすると,「就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないとき」であるとして,郵便局員が,Xの「同居者」であるBに訴状等を交付したことが,補充送達(同法106条前段)として有効とならないか。
 「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」とは,送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することが期待することができる程度の能力を有する者をいう(※1)。Bは当時7才であって,送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することが期待することはできない。したがって,「相当のわきまえのあるもの」に対する交付があったとは認められない。
 よって,郵便局員がBに対してした訴状等の交付は,補充送達にもあたらない。
  ⑶ 以上から,本件では,被告たるXに有効な訴状の送達があったとは認められない。
 2 しかしながら,前記訴訟は,Xが欠席のままYの請求認容判決が出されているため,Xの救済方法を検討する。
  ⑴ まず,前記のように,Xに対する有効な訴状の送達がない以上,訴訟係属が存在せず,これを看過してされた判決は,訴訟行為における信義誠実の原則(同法2条)に照らし,無効である(※2)。そうすると,単に当該判決の無効確認を求める訴えを提起することはできないが,当該判決が無効であることを前提としてXがYに対して立替金債務の不存在確認を求める訴えを提起することはできる(※3)
  ⑵ 次に,Xは,再審の訴えを提起することにより,前記判決を争うことが考えられる。
   ア この点,補充送達が無効であることは,民訴法338条1項各号所定の再審事由には直接的には該当しない。しかし,同項3号が定める無権代理は,当事者本人の授権に基づかない自称代理人が追行した訴訟において成立した確定判決の不利な既判力に本人を拘束し続けることが,本人から裁判を受ける権利を実質的に奪うこととなるがゆえに,再審事由とされている。そうすると,当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていない場合には,同号を類推適用すべきである。
 これを本件についてみると,Xは前記訴訟の当事者であるにもかかわらず,その訴状等が送達されないまま,訴え提起があったことすら知らずに,判決が確定している。そうすると,Xには訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされたものであるから,同法338条1項3号の類推適用により再審事由を構成することとなる(※4)
   イ もっとも,下記のように,前記判決の判決正本がAに対して補充送達が有効にされ,Xは再審事由の存在を知ったことになる。そして,控訴期間を徒過したとしても,Xが控訴をすることができなかったのは,「その責に帰することができない事由」によるものであるから,控訴の追完をすることができる(同法97条1項)。そうすると,再審の訴えは,同法338条1項ただし書により認められないのではないかが問題となる。
 しかし,同項ただし書の趣旨は,再審の訴えが上訴をすることができなくなった後の非常の不服申し立て方法であることから,上訴が可能であったにもかかわらずそれをしなかった者について再審の訴えによる不服申立てを否定するものである。したがって,再審事由を現実に了知することができなかった場合は同項ただし書に当たらない(※5)
 これを本件についてみると,Xは,前記訴訟の訴状が有効に送達されず,その故に前記訴訟に関与する機会すら与えられなかったとの前記再審事由を現実に了知することができなかったのであるから,前記判決に対して控訴しなかったことをもって,同項ただし書に規定する場合に当たるということはできない。
   ウ よって,Xは最新の訴えを提起することができる。
第2 Aへの第1審判決正本の送達について
 1 前記訴訟に係る判決正本が,被告たるXの妻Aに送達されているが,この送達は有効か。
  ⑴ 第1の1⑴と同様に,Xは,不在であったため,交付送達をすることはできない。
  ⑵ そこで,Aに前記判決正本を交付したことが,補充送達として有効とならないか。
 前記訴訟は,AがXのカードを無断で使用したことにより,カード会社から立替金の支払を請求されているものである。そうすると,AとXとの間には,立替金の支払をめぐって利害関係の対立がある。そうすると,このような者に交付した書類を受送達者に交付することが期待できるとはいえないようにも思える。しかし,Aは前記訴訟におけるXの相手方当事者であるわけではなく,前記訴訟に関してXとの間に事実上の利害関係の対立があるにすぎないのである。そうすると,Aはなお交付した書類を受送達者に交付することが期待できる程度の能力を有する者であるということができる。したがって,Aは「相当のわきまえのあるもの」である(※6)
 したがって,Aに前記判決正本を交付したことをもって,有効な補充送達があったと認められる。
  ⑶ 以上から,Aには有効な送達がある。
 2 しかしながら,前記判決正本は,控訴期間内にXに了知されていないため,Xの救済方法を検討する。
  ⑴ 送達が有効である以上,第1の2⑴の方法をとることはできない。
  ⑵ そこで,この場合にも再審の訴えを提起することができないか。
 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるため,同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することができない場合において,実際にもその交付がされなかったときは,受送達者は,その訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならないというべきである。そうすると,上記の場合において,当該同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず,そのため,受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには,同法338条1項3号の再審事由がある(※7)
 これを本件についてみると,AとXの間には前記のような事実上の利害関係の対立があり,AからXに対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することはできず,実際にも送達のときから2週間以上前記判決正本はXに交付されていない。そのため,Xは,訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされているのであるから,同法338条1項3号の再審事由がある。
 したがって,Xは最新の訴えを提起することができる。
【ケース2】
1 YのXに対する立替金支払請求訴訟に係る訴状が,郵便に付する送達によってXに送達されているが,これは有効か。
 前記訴状の送達は,X宅において試みられているが,Xは不在であり,交付送達ができない。また,他の同居人も不在であるため,補充送達もすることができない。そこで,裁判所書記官はYに対しXの就業場所を照会しているが,Yがこれを不明との回答をしているため,就業場所における補充送達(同法106条2項)もすることができない。したがって,「前条の規定により送達をすることができない場合」にあたる。
 しかし,Yの前記回答は虚偽のものであるにもかかわらず,裁判所書記官はこれを看過して,付郵便送達を実施している。そこで,このような虚偽の回答に基づいてされた不郵便送達が無効とならないか問題となる。しかし,民事訴訟関係書類の送達事務は,受訴裁判所の裁判所書記官の固有の職務権限に属し,裁判所書記官は,原則として,その担当事件における送達事務を民訴法の規定に従い独立して行う権限を有するものである。受送達者の就業場所の認定に必要な資料の収集については,短答裁判所書記官の裁量に委ねられているのであって,短答裁判所書記官としては,相当と認められる方法により収集した認定資料に基づいて,就業場所の存否につき判断すれば足りる。担当裁判所書記官が,受送達者の就業場所が不明であると判断して付郵便送達を実施した場合には,受送達者の就業場所の存在が事後に判明したときであっても,その認定資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情がない限り,当該付郵便送達は適法である(※8)
 これを本件についてみると,裁判所書記官は,Xの住所における送達ができなかったため,原告であるYに対してXの就業場所につき照会しており,それにもかかわらずYから就業場所についての回答が得られず,これについて格別疑念を抱かせるものは認められないから,認定資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くものとはいえない。したがって,裁判所書記官がXに対してした付郵便送達は適法であり,有効である。
2⑴ しかしながら,Xは,前記訴訟に係る訴状を現実に受領していないため,訴訟追行の機会を得られていないのであるから,同法338条1項3号の再審事由が認められ,再審の訴えを提起することができるように思える。
 しかし,付郵便送達は,それが有効にされた場合であっても,被告が訴訟提起を知り得ない事態が存在することを当初から予定した制度である。そうすると,被告が訴訟提起の事実を知り得なかったことを再審事由とすることは,制度の自己否定と言わざるを得ない。したがって,被告が訴状の送達を受けられず,訴訟追行の機会が得られなかったとしても,再審事由とはならない。
 そうすると,本件でも,Xが訴訟追行の機会を得られなかったことは,再審事由を構成しないから,これを理由として最新の訴えを提起することはできない。
 ⑵ もっとも,Yが裁判所書記官からの照会に対して虚偽の回答をしたことが,刑事上罰すべき行為であるのであれば,同法338条1項5号によって,再審の訴えを提起することが可能である。
 ⑶ これと別に,XがYに対して,虚偽の回答をしたことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるかどうかについて検討する。
 この点,確定判決の既判力は再審の訴えにより取り消されるまでは有効に存在するところ,判決成立過程における不法行為を理由として損害賠償を求めることは,確定判決が当然に無効であり既判力が存在しないことを前提とするものであるから,再審の訴えを潜脱するものであって,認められないとの見解もありうる。しかし,損害賠償請求における不法行為該当事実の主張,立証は,再審の訴えにおける5号再審事由の主張,立証と同様であり,行為と損害との間の因果関係の主張,立証は,再審の本案についての主張,立証と重なり合うから,ここでの損害賠償請求は,実質的には再審の訴えと同様の機能を果たすものである。したがって,前記の損害賠償請求を認めても,再審の訴えを潜脱することにはならない。したがって,不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる(※9)
 本件でも,XはYに対し不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる。

以 上


(※1)「民訴法171条1項に規定する『事理ヲ弁識スルニ足ルヘキ知能ヲ具フル者』とは、送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することができる程度の能力を有する者をいうものと解されるから、原審が、前記二1のとおり、当時7歳9月の女子であった上告人の四女は右能力を備える者とは認められないとしたことは正当というべきである。」最判平成4年9月10日民集46巻6号553頁
(※2)「甲が乙と通謀のうえ、第三者丙に対して金銭債権を有すると称して丙に対する債務名義を騙取しようと企て、甲は、その主張する債権に関し丙あてにその住所を真実に反し乙方丙として、支払命令ないし仮執行宣言付支払命令の申立等の訴訟行為をし、裁判所がこれに応じた訴訟行為等をし、乙があたかも丙本人のように装つて、その支払命令ないし仮執行宣言付支払命令の正本等の訴訟書類を受領して、なんらの不服申立をすることなく、その裁判を確定させた場合においては、たとえ甲が丙あての金銭債権についての債務名義を取得したような形式をとつたとしても、その債務名義の効力は、丙に対しては及ばず、同人に対する関係では無効であると解するのが相当である。けだし、右のような場合には、当事者たる甲および同人と意思を通じている乙は、故意に、債務名義の相手方当事者と表示されている丙に対し、その支払命令ないし仮執行宣言付支払命令等の存在を知らせないように工作することにより、丙をしてこれに対する訴訟行為をし、その防禦をする手段方法等を講ずる機会を奪つているのであるから、訴訟行為における信義誠実の原則に照らし、甲は、丙に対し相手方当事者たる地位にもとづきその裁判の効力を及ぼしうべきものではないと解するのが相当だからである。なるほど、このような場合には、乙方丙の記載により、一応丙名義の表示がされ、一見丙あての債務名義は成立しているようであるが、前記のように、丙自身は、右の事実を全く知りえない事情にあるのであつて、甲および乙の行為に対し、防禦の訴訟行為をする機会を完全に奪われているのであるから、このような訴訟の実態にかんがみれば、単に丙がたまたまなんらかの事由により事実上訴訟行為等に関与しえなかつたときとは異なるのであつて、丙に対し、到底その裁判の効力が及ぶと解することは許されないのである。」最判昭和43年2月27日民集22巻2号316頁
(※3)上告人の本訴請求は、要するに、所論各判決の無効であることの確認を求めるというにあるのであつて、所論各判決の無効であることを前提として現在の権利又は法律関係の存否の確認を求める趣旨のものでないことは、本件記録に徴して明白である。されば、本訴は不適法として却下を免れないとした原審の判断は相当であつて、原判決には何ら違法はない。」最判昭和40年2月26日民集19巻1号166頁
(※4)「有効に訴状の送達がされず、その故に被告とされた者が訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされた場合には、当事者の代理人として訴訟行為をした者に代理権の欠缺があった場合と別異に扱う理由はないから、民訴法420条1項3号の事由があるものと解するのが相当である。」前掲最判平成4年9月10日
(※5)「民訴法四二〇条一項ただし書は、再審事由を知って上訴をしなかった場合には再審の訴えを提起することが許されない旨規定するが、再審事由を現実に了知することができなかった場合は同項ただし書に当たらないものと解すべきである。けだし、同項ただし書の趣旨は、再審の訴えが上訴をすることができなくなった後の非常の不服申立方法であることから、上訴が可能であったにもかかわらずそれをしなかった者について再審の訴えによる不服申立てを否定するものであるからである。これを本件についてみるのに、前訴の判決は、その正本が有効に送達されて確定したものであるが、上告人は、前訴の訴状が有効に送達されず、その故に前訴に関与する機会を与えられなかったとの前記再審事由を現実に了知することができなかったのであるから、右判決に対して控訴しなかったことをもって、同項ただし書に規定する場合に当たるとすることはできないものというべきである。」
(※6)「民訴法106条1項は,就業場所以外の送達をすべき場所において受送達者に出会わないときは,『使用人その他の従業者又は同居者であって,書類の受領について相当のわきまえのあるもの』(以下『同居者等』という。)に書類を交付すれば,受送達者に対する送達の効力が生ずるものとしており,その後,書類が同居者等から受送達者に交付されたか否か,同居者等が上記交付の事実を受送達者に告知したか否かは,送達の効力に影響を及ぼすものではない……。」「したがって,受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が,その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として(民法108条参照),その訴訟に関して受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には,当該同居者等に対して上記書類を交付することによって,受送達者に対する送達の効力が生ずるというべきである。」最決平成19年3月20日民集61巻2号586頁
(※7)「本件訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって,直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならない。同事由の存否は,当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならない。」「すなわち,受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるため,同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することができない場合において,実際にもその交付がされなかったときは,受送達者は,その訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならないというべきである。そうすると,上記の場合において,当該同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず,そのため,受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには,当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから,民訴法338条1項3号の再審事由があると解するのが相当である。」前掲最決平成19年3月20日
(※8)「民事訴訟関係書類の送達事務は、受訴裁判所の裁判所書記官の固有の職務権限に属し、裁判所書記官は、原則として、その担当事件における送達事務を民訴法の規定に従い独立して行う権限を有するものである。受送達者の就業場所の認定に必要な資料の収集については、担当裁判所書記官の裁量にゆだねられているのであって、担当裁判所書記官としては、相当と認められる方法により収集した認定資料に基づいて、就業場所の存否につき判断すれば足りる担当裁判所書記官が、受送達者の就業場所が不明であると判断して付郵便送達を実施した場合には、受送達者の就業場所の存在が事後に判明したときであっても、その認定資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し、あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情がない限り、右付郵便送達は適法であると解するのが相当である。」最判平成10年9月10日集民189号703頁
(※9)「判決が確定した場合には、その既判力によつて右判決の対象となつた請求権の存在することが確定し、その内容に従つた執行力の生ずることはいうをまたないが、その判決の成立過程において、訴訟当事者が、相手方の権利を害する意図のもとに、作為または不作為によつて相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行ない、その結果本来ありうべからざる内容の確定判決を取得し、かつこれを執行した場合においては、右判決が確定したからといつて、そのような当事者の不正が直ちに問責しえなくなるいわれなく、これによつて損害を被つた相手方は、かりにそれが右確定判決に対する再審事由を構成し、別に再審の訴を提起しうる場合であつても、なお独立の訴によつて、右不法行為による損害の賠償を請求することを妨げられないものと解すべきである。」最判昭和44年7月8日民集23巻8号1407頁



2019-04-04(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題26「不利益変更禁止の原則」

忘れてたんですが,

別に忘れてはないんですが,

法学セミナー4月号のモニターの感想の締め切りが,

明々後日に迫っているんですよね。

迫っているんですが,全然読んでないという問題が生じています。

モニター1発目から仕事ができない奴みたいになるのもアレなんで,

早いところ基礎演習を終わらせて,法セミを読む時間を作らないといけません。

そんなわけで,今回は,26問目です。

≪問題≫

 Xは,Yに対して,貸金1,000万円が未払いであると主張して,その支払を求める訴えを提起した。Yは,Xの貸金返還請求権の成立を争いながら,予備的にXに対する反対債権(400万円の金銭債権)を相殺の抗弁に供した。
 第1審では,Xの貸金債権とYの反対債権の両債権の成立を認め,Yの予備的相殺の抗弁を理由ありとして,600万円の支払を命じる判決が出された。
 しかし,その後Xだけが,第1審判決を不服として控訴期間内に控訴し,Yは控訴も附帯控訴もしなかった。
〔設問〕
1.この第1審判決に対し,Yは,控訴せずに,判決で命じられた金600万円を任意にXに弁済した,とする。控訴審でYの弁済の主張が認められるとき,控訴裁判所は,本件控訴をどのように審理・判決すべきであろうか。
2.控訴審で,相殺以前にYの反対債権が不存在との判断に至り,またXの訴求債権も不存在との判断に至った場合,控訴裁判所は,本件控訴をどのように審理・判決すべきであろうか。


引き続き控訴です。

不利益変更のところですね。

不利益に変更するなよっていうことが言えればいいんだと思います(小並感)

≪答案≫
第1 設問1
 1 第1審において,XのYに対する消費貸借契約に基づく貸金返還請求権(以下「本件訴求債権」という。)は,600万円の限度で認容されている(以下,この判決を「本件判決」という。)。その後,YがXに対して600万円を任意に弁済しているため,第1審において認容された額に対応する本件訴求債権が消滅している。そうすると,本件訴求債権の額は,本件判決で認容された額よりも少ない,多くとも400万円しか存在しないこととなるから,控訴審は,第1審判決を取り消し,変更するべきかどうかについて検討する。
 2 控訴裁判所は,「不服申立ての限度においてのみ」,第1審判決を変更することができるとされているから(同法304条),相手方の控訴又は附帯控訴がない限り,控訴人の不利に第1審判決の取消し又は変更をすることはできない(以下「不利益変更禁止原則」という。)(※1)
 3 これを本件についてみると,本件判決に対して控訴を提起しているのはXのみであるところ,Xが不服とするのは,本件判決のうち,本件訴求債権中400万円が不存在であるとされた部分である。そうすると,Xが不服申立てをしたのは,当該400万円の範囲に限られるのであるから,裁判所は,この範囲を超えた600万円部分について判断することはできない。したがって,裁判所は,600万円部分について判断し得ない以上,本件訴求債権が600万円を下回ってしか存在しないとの認定をすることはできない。
 よって,控訴審としては,控訴棄却判決(同法302条1項)をすべきである。
第2 設問2
 1 控訴審裁判所は,本件訴求債権が不存在であるとの心証に達しているから,本件判決を取り消して,請求棄却判決を出すべきかどうかについて検討する。
 2 まず,Xが控訴を提起したことによってどの範囲で不服申立てがされているかが問題となる。
 この点,相殺の抗弁が容れられて訴求額の全額が認容されなかった原告が控訴したときには,その不服申し立ての範囲は,反対債権の存在が認められた部分に限られるとする見解がある。この見解によれば,控訴審裁判所が審理・判断することができるのは,本件反対債権の存否にとどまり,これが存在すると認められれば控訴を棄却し,これが存在しないのであれば,本件判決を取り消して,本件訴求債権の全額に係る請求を認容する判決に変更することとなる。しかし,この見解による場合には,控訴審裁判所が本件訴求債権が存在しないとの心証に達しているにもかかわらず,これと真逆の事実認定をしなければならない点で不合理である。
 不利益変更禁止原則は,あくまで,既判力を生じる判断部分において,原判決より控訴審判決の判断内容が不利益になってはならないとするものであって,同原則から審理範囲が反対債権の存否に限られるものではない。また,相殺によって消滅した部分の訴求債権が相殺以前には存在したという原判決の判断部分には既判力が生じないため,その判断自体が不利益変更禁止原則の対象となるものではない。したがって,この場合の控訴人の不利益の範囲,すなわち相殺によって消滅した部分については,もともとの訴求債権の存否も審理対象から外れるものではない。
 これを本件についてみると,本件訴求債権のうち本件反対債権によって消滅した400万円部分が本件反対債権との相殺によって消滅する以前は存在したとの判断に既判力は生じないのであるから,控訴審裁判所はこの点についても判断することができる。
 3 その結果,控訴審裁判所は,本件訴求債権がもともと不存在であるとの事実を認定した場合には,本件反対債権について判断するまでもなく請求棄却となるはずであるが,そのように判断すると,本件判決によって本件反対債権の不存在についての既判力を喪失することとなり,控訴人にとって不利益な変更となる。
 したがって,控訴審裁判所は,控訴棄却の判決をすべきである。
以 上

(※1)「控訴裁判所は,不服申立ての限度でのみ,第1審判決の取消しおよび変更をすることができる(304条)。控訴裁判所は,不服申立ての範囲を超えて控訴人に有利に第1審判決の取消しまたは変更をすることができず,また,相手方の控訴または附帯控訴がないかぎり,控訴人の不利に第1審判決の取消しまたは変更をすることはできないということである。前者を『利益変更禁止の原則』といい,後者を「不利益変更禁止の原則」という。」前掲三木ほか606頁



2019-04-04(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題25「上訴の利益」

あと6問……

あと6問……

明日までに終わらせたい……

≪問題≫

 Xは,同郷の友人Aに対して,1,000万円を貸していたが,その後,Aが死亡した。Aは,亡妻との間に,2人の子(YおよびB)をもうけていた。YはAとともに家業を営んでおり,Bは独立して家を出ていた。Xは,Aとの間では,利息は取らない,特に返済期限は設けないというAに有利な条件で貸していたが,Aの子らとはむしろ疎遠であったので,とりあえずAの家業を継いだYを被告として,Yの法定相続分にあたる500万円の支払を求める訴え(本件訴訟という)を提起した。Yは,AがXから1,000万円も借りるはずがないと主張して,請求棄却判決を求めた。
 ところで,Bは,その後,家庭裁判所に相続の放棄の申述をし,受理の審判がされた(民938条,家事201条・別表第一の95参照)。その結果,YはAの遺産全部を相続することになった。この当時,本件訴訟は第1審に係属中で,Bが相続放棄をした事実は,訴訟手続外で進行していたX・Y間の和解交渉において,YからXに告げられたため,Xの知るところとなったが,Xは請求を拡張しなかった。
 本件訴訟の第1審裁判所は,Xの請求を全部認容する判決(【例1判決】という)を言い渡した。
〔設問〕
 Yは,【例1判決】に対して控訴の利益を有するか。
 Xは,請求を500万円拡張するために,控訴を提起することができるか。


控訴の利益です。

TKC模試でバリバリ聞かれましたね。

形式的不服説の例外をうろ覚えだったので大変でした。

≪答案≫
1 X及びYは,本件訴訟の第1審判決(以下「本件判決」という。)に対して控訴(民訴法281条1項)を提起しようとしている。そこで,X及びYが控訴のための要件を満たしているかどうかについて検討する。
2 控訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,控訴をする者に,控訴を提起する正当な利益があることが必要である(以下,この利益を「控訴の利益」という。)(※1)。そして,当事者の申立てと判決とを比較し,前者が後者より大きい場合には控訴の利益が認められる(※2)
3 これを本件についてみると,Yは本件訴訟において,Xの請求を全部棄却する判決を申し立てているが,本件判決はXの請求を全部認容している。そうすると,Yの申立てが本件判決を上回る関係にあるから,Yには控訴の利益が認められる。したがって,Yは,控訴期間(同法285条)内に控訴状を第1審裁判所に提出することによって(同法286条1項)控訴を提起することができる。
 これに対して,Xは,「Yは,Xに対し,500万円を支払え」との判決を申し立てているが,本件判決はXの請求を全部認容しているから,Xの申立てと本件判決が一致している。そうすると,Xには控訴の利益は認められないように思われる。
4 しかし,特別の政策的理由から別訴の提起が禁止されている場合には,別訴で主張できるものも,同一訴訟手続内で主張しておかないと,訴訟上主張する機会か奪われてしまうという不利益を受けるので,それらの請求については,同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要があり,また,この不利益は,全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決の確定を妨げることによってしか排除し得ないので,例外として,これらの場合には,訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴をする利益を認めるべきである。この理は,別訴が既判力によって遮断される場合にも同様である(※3)(※4)
 これを本件についてみると,一個の債権の数量的な一部を求める一部請求において,当該一部についてのみ判決を悖る趣旨が明示されていないときには,請求額を訴訟物たる債権の全部として訴求したものとして扱われ,ある金額の支払を請求額の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後,別訴において,当該請求を請求権の一部である旨主張してその残額を訴求することは,既判力に抵触し許されないこととなる。そうすると,一部請求についての確定判決は残額の請求を遮断し,債権者はもはや残額を訴求する機会を失ってしまうことになる。したがって,黙示の一部請求につき全部勝訴の判決を受けた当事者についても,例外として請求拡張のための控訴の利益を認めるべきである。
 よって,Xも本件判決に対して控訴の利益を有していることになるから,Xは控訴期間内に控訴状を第1審裁判所に提出することによって,控訴を提起することができる。

以 上


(※1)「上訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,不要な上訴は排除しなければならない。そこで,上訴を提起する正当な利益を有する者による上訴のみが適法な上訴とされる。この利益のことを『上訴の利益』といい,控訴については,『控訴の利益』という。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』604頁
(※2)「通説は,申立において求めた判決を得られた当事者には控訴の利益は認められないとする。このように申立てと判決とを比較し,前者が後者より大きければ控訴の利益を認め,そうでなければ認めないという考え方を『形式的不服説』という。これによると,全部敗訴した当事者また一部敗訴した当事者には控訴の利益が認められるのに対して,全部勝訴した当事者が判決理由中の判断とは別の理由による勝訴判決を求めて控訴を提起したとしても控訴の利益を認められない(最判昭和31・4・3民集10巻4号297頁)。なお,被告は申立てを明治しないこともあるが(たとえば,いわゆる欠席判決の場合),このような被告にも請求認容判決に対する上訴を認める必要はある。形式的不服説においては,このような被告についても,形式的不服説の定式を適用する際には,請求棄却判決の申立てがなされているという前提で控訴の利益の有無を判断することになる。」前掲三木ほか604頁
(※3)「全部勝訴の判決を受けた当事者は、原則として控訴の利益がなく、訴えの変更又は反訴の提起をなすためであっても同様であるが、人事訴訟手続法九条二項(別訴の禁止)、民事執行法三四条二項(異議事由の同時主張)等の如く、特別の政策的理由から別訴の提起が禁止されている場合には、別訴で主張できるものも、同一訴訟手続内で主張しておかないと、訴訟上主張する機会か奪われてしまうという不利益を受けるので、それらの請求については、同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要があり、また、この不利益は、全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決の確定を妨げることによってしか排除し得ないので、例外として、これらの場合には、訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴をする利益を認めるべきである。」「そして、その理由を進めて行くと、いわゆる一部請求の場合につき、一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨か明示されていないときは、請求額を訴訟物たる債権の全部として訴求したものと解すべく、ある金額の支払を請求権の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後、別訴において、右請求を請求権の一部である旨主張しその残額を訴求することは、許されないと解されるので(最高判昭和三二年六月七日民集一一巻六号九四八頁参照)、この場合には、一部請求についての確定判決は残額の請求を遮断し、債権者はもはや残額を訴求する機会を失ってしまうことになり、前述の別訴禁止が法律上規定されている場合と同一となる。したがって、黙示の一部請求につき全部勝訴の判決を受けた当事者についても、例外として請求拡張のための控訴の利益を認めるのが相当ということになる。」名古屋高金沢支判平成元年1月30日判タ704号264頁
(※4)「形式的不服説によれば,黙示の一部請求を全額認容された当事者に控訴の利益が認めらるかは,この場合が前記例外[原判決が確定した場合に当事者に失権効が働くような場合には,例外的に,全部勝訴の当事者にも控訴の利益を認める]にあたるかどうかによって決まる。」「法律上別訴を提起することが許されず,当該訴訟手続内での訴えの変更によらなければ残額を請求できないとして,例外的に控訴の利益を肯定すべき場合の一つにあたるとするのが多数説である……。」「それでは,形式的不服説において,当事者が原審で請求拡張しえたのにしなかった場合にも,請求拡張のための控訴の利益が認められるか。」「小室教授は,例外として請求拡張のための控訴が許されるのは原告が過失なくして残額の請求をなしえなかった場合に限られるとされる……。ただし,債権が法律上不可分な場合に一部請求を認めない見解に立って,右の場合に公訴の利益を認めないと実体的正義が害されるとするものである。この考え方では,一部請求につき判例通説の見解に立つと,一層例外の承認に厳しくなろう。なぜなら,原告が残部請求の存在を認識できる場合には,一部請求であることを明示しさえすれば残部の請求を遮断されることはないはずであって,請求認容の一審判決で紛争を終了させようとして不服を申し立てなかった被告を犠牲にしてまで,原告に請求拡張のための控訴を許す必要があるかは疑問となるからである……。」「これに対して,前記多数説は,この場合にも控訴の利益を認めるもののようである。これは,権利実現のための裁判制度の利用の途をできるだけとざさないようにしようという考慮が背後にある。そして,前記の点は攻撃防御方法の提出,訴えの変更の制限において評価すべきことになろう……。」「黙示の一部請求における残部請求の遮断は,政策による制限というより当事者の意思による権利不行使の結果とみれなくもないから,別訴禁止が法定されている他の例外の場合と処理を異にすることには合理性がないわけではない。とはいえ,原審で残部請求しえた場合を排除する立場では,原告が原審において残部請求の存在に気付いていたかという不明確な和嘘に控訴の適法性が左右されることになり……,控訴の利益の有無をできるだけ明確な基準によろうとする立場からは不都合な難点がある。」「なお,多数説によっても,原告が原審において残部を請求しないと釈明するなど,その原審における態度に基づき,控訴の提起が信義則違反あるいは権利濫用として許されない場合があることは否定されまい。」判タ735号293頁



2019-04-04(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題24「訴訟承継」

早く家帰って寝ないと,

明日も寝坊してしまう。

今日の最後の一問です。

≪問題≫

 Aは,愛知県T市に住む資産家である。Aは,マンションやアパート,戸建てといった不動産を所有してこれらを賃貸するほか,所有地を事業用に貸し出していた。
 Bは,妻Cの助けを借りて同市内でスーパーを経営していた。Bは,ちょうど借り手を探していたA所有の土地を借り受けてここに新店舗を出すことにした。新店舗はの経営は順調で,Bは手狭であった旧店舗を閉店して新店舗の経営に集中することにした。
 ところが,順調であったBのスーパーの経営は,数年後,近隣に大手資本のショッピングモールが進出してきたころから,大きく傾き始めた。Bは,経営上様々な努力を試みたものの,大手資本の前には思うような効果をあげることができず,スーパーの業績は一気に落ち込んでしまった。やがて,Aに対する地代の支払も滞るようになった。
 AはBに対して何度となく地代の支払を催促したが,Bはただ,「もうしばらく待って欲しい」というだけで,いっこうに払おうとしなかった。ついには,Aは内容証明郵便をもって,未払賃料の支払を求めるとともに,支払がない場合には土地の賃貸借契約を解除する旨を伝えたが,これに対してBは何の反応もしなかった。
 そこでAはBを被告として,賃貸借契約の解除を理由に建物収去土地明渡しと,未払賃料および明渡しまでの損害賠償の支払を求めて名古屋地裁に訴えを提起した。
 この訴訟が第1審に係属中に,Bはそれまでの心労がたたったのか,急逝し,唯一の相続人である妻CがBを相続することになった。
 他方,Aのもとには,本件土地を売却して欲しいというDが現れた。AはDに本件土地をめぐって訴訟が係属していることを告げたが,Dから係争中でも構わないので譲って欲しいと懇請されたため,結局,本件土地を係争中のままで売却することにした。DからAに売買代金が支払われるとともに,所有権移転登記がなされている。
 スーパーの経営を受け継いだCは,その事務所と倉庫の一部を教室風に改造して,学習塾を経営するEにこれを賃貸することにした。Eは賃借した部屋を教室にして学習塾を開講している。
〔設問〕
1.AB間に係属していた訴訟は,当事者Bの死亡によってどのような影響を受けるのか。
2.Aは訴訟の係属中に係争物である土地を売却したが,これは許されるのか。また,許されるとしたら,土地の売却によって訴訟はどのような影響を受けるのか。Aは係属している訴訟の原告であり続けるのか。また,Dは係属している訴訟の原告になることができるのか。
3.Cは訴訟の係属中に係争物である建物の一部をEに賃貸したが,これは許されるのか。許されるとした場合,Eは係属している訴訟の当事者となりうるのか。


訴訟承継です。

全く分かりません。

答案もたぶん今までで一番ひどいと思います。

≪答案≫
第1 設問1
 1 当事者が死亡した場合には,訴訟手続は中断し,相続人等が従前の訴訟手続を受継する(民訴法124条1項1号)。これは,相続人等の意思にかかわらず,当然に訴訟承継がされるものである。そのため,相続人等の受継の準備のため,その間の訴訟手続が中断されている。なお,相続人は,相続の放棄(民法938条)をすることができる間は,受継することができない(民訴法124条3項)。
 本件では,Bが死亡することにより,AのBに対する建物収去土地明渡,未払賃料支払,損害賠償請求訴訟(以下「本件訴訟」という。)は中断し,Bの唯一の相続人であるCが受継することとなる。
 2 もっとも,Bに訴訟代理人がいる場合には,訴訟代理人は新しい当事者となった相続人の訴訟代理人として訴訟行為をなすことができるから(※1),相続人等に受継する準備の期間を与える必要がないため,訴訟手続は中断しない(同条2項)。
第2 設問2
 1 Aは,本件訴訟における係争物である土地(以下「本件土地」という。)をDに売却しているが,本件訴訟を提起しただけでは当事者恒定効は生じないから,AがDに対して本件土地を売却することができる。この場合,Aが原告である以上,本件土地の移転を禁止する仮処分(民保法23条1項)の発令をCが求めることはできない(※2)
 2 係争物が譲渡された場合について,当該係争物に係る訴訟手続が中断の上,当該係争物の譲受人に当然に承継される旨の規定は,民訴法上にはないから(同法124条1項参照),AC間における訴訟手続が続行されることとなる。しかし,AのDに対する本件土地の譲渡は,本件訴訟の口頭弁論終結前にされているから,本件訴訟の既判力はDには及ばない(同法115条1項3号参照)。そのため,本件訴訟の当事者をA及びCとしていても,直截的な紛争の解決につながらない可能性がある。
 3 そこで,Dとしては,本件訴訟について権利者として参加承継(同法49条)をすることが考えられる。参加承継が認められるためには,Dが「訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたこと」が必要である。
 民訴法上,訴訟承継が規律されているのは,訴訟係属中に訴訟の目的たる権利又は義務が移転したときには,当該権利又は義務を譲り受けた者に対して請求を向け替えなければ,当該訴訟の目的を達成することができない。そして,当該訴訟の目的を達成する上では,単なる当事者適格の移転にとどまらず,請求に関連する係争物が移転されたにすぎない場合であっても,従前の訴訟状態を譲受人に引き継がせるべき必要性があることは否定できない。そこで,訴訟承継における権利又は義務の移転とは,紛争の主体たる地位が移転したといえるか否かによって判断する。このように判断することは,原告が第三者を相手どって新訴を提起する代わりに,既存の訴訟を第三者に引き受けさせて争いの解決を得ようとすることは,通常の場合,第三者の地位が被告の従前の主張と証拠関係に依存するとともに,原告も被告との関係で提出した反対の訴訟資料を転用できるものである以上,正当な要請として是認すべきである。(※3)(※4)(※5)
 これを本件についてみると,本件訴訟は,AがCに対して賃貸借契約の終了を理由として,本件土地の明渡しを求めるものであるところ,本件土地がDに移転したことにより,DもCに対して所有権に基づいて本件土地の明渡しを求めることとなる。そうすると,Cに対して本件土地の明渡しを求める部分は,DがAから本件土地の所有権を承継することによって,土地所有者の土地占有者に対する明渡請求権の存否に関する紛争という型態をとって,両者間に移行し,Dは当該紛争の主体たる地位をAから承継したということができる。したがって,Dは「訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けた」者であるから,参加承継の申立てをすることができる。
第3 設問3
 1 Eに対して係争中の建物を賃貸することができるのは,前記の通りである。
 2 Eは,本件訴訟について,参加承継をすることが考えられる(民訴法50条1項)。義務承継人の参加承継の申立てには,「訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を譲り受けたこと」が必要である。
 土地賃借人であるDが契約の終了に基づいて土地賃貸人であるAに対して負担する地上建物の収去義務は,当該建物から立ち退く義務を包含するものであり,当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は,第三者であるEが土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによつて,EのAに対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとって,両者間に移行し,Eは当該紛争の主体たる地位をDから承継したということができる。したがって,Eは「訴訟の係属中訴訟の目的である義務の全部又は一部を譲り受けた」者であるから,参加承継の申立てをすることができる。
以 上

(※1)「当事者が死亡するときは、死亡の事実の発生とともに、当然に訴訟関係の承継を生ずるが、Dには訴訟代理人滝逞があつたのであるから、本件は、訴訟関係の承継が生じたにかかわらず、手続の中断を生じなかつた場合であつて、訴訟手続を受継すべき余地はなかつたのである。かかる場合には、被相続人の訴訟代理人であつた者は、訴訟承継の結果、新たに当事者となつた相続人らの訴訟代理人として訴訟行為をなすことができるものと解さなければならない。」最判昭和33年9月19日民集12巻13号2062頁
(※2)「わが国においては,訴訟係属中に訴訟物について原告または被告となることを適切なものとするような実体法上の地位の承継があった場合,このことを訴訟に反映させるという規律が採用されている。これは『訴訟承継主義』と呼ばれるが,これについては限界も指摘されている。訴訟係属中に以上のような地位の承継があったとしても,これが相手方当事者に認識されないかぎり,相手方当事者は無意味な訴訟追行をせざるを得ないからである。たとえば,所有権に基づく土地明渡請求訴訟において,被告から第三者への土地占有の移転を認識できなければ原告は引受承継の申立てをなし得ず,その後原告が勝訴したとしてもその判決の効力を占有を承継した第三者に及ぼすことはできない。」「そこで,外国の法制の中には,訴訟係属中に前述のような意味での承継が生じた場合も,被承継人によるさらなる訴訟追行を認めるとともに,被承継人が受けた判決の効力を承継人に拡張するという規律を採用するものもみられる。これを『当事者恒定主義』という。」「また,わが国においても訴訟承継主義を前提としつつ,当事者恒定主義に接近させるための仕組みが民保法において用意されている。たとえば,原告は所有権に基づく土地明渡請求訴訟提起前に占有移転禁止の仮処分(民保62条)を取得しておけば,訴訟係属中に係争不動産の占有が第三者に移転したとしても,その事実は本案審理の中では考慮されず,被承継人に対する勝訴判決に基づいて承継人に対し,明渡しの強制執行をすることができるのである。ただし,仮処分を利用できるのは原告に限定されるため,原告側で承継が生じることによって被告が無意味な訴訟追行を続けることになるリスクはなお十分に対応されないまま残されている。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』596頁
(※3)「賃貸人が、土地賃貸借契約の終了を理由に、賃借人に対して地上建物の収去、土地の明渡を求める訴訟が係属中に、土地賃借人からその所有の前記建物の一部を賃借し、これに基づき、当該建物部分および建物敷地の占有を承継した者は、民訴法七四条にいう『其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタル』者に該当すると解するのが相当である。けだし、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによつて、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとつて、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解されるからである。これを実質的に考察しても、第三者の占有の適否ないし土地賃貸人に対する退去義務の存否は、帰するところ、土地賃貸借契約が終了していないとする土地賃借人の主張とこれを支える証拠関係(訴訟資料)に依存するとともに、他面において、土地賃貸人側の反対の訴訟資料によつて否定されうる関係にあるのが通常であるから、かかる場合、土地賃貸人が、第三者を相手どつて新たに訴訟を提起する代わりに、土地賃借人との間の既存の訴訟を第三者に承継させて、従前の訴訟資料を利用し、争いの実効的な解決を計ろうとする要請は、民訴法七四条の法意に鑑み、正当なものとしてこれを是認すべきであるし、これにより第三者の利益を損うものとは考えられないのである。そして、たとえ、土地賃貸人の第三者に対する請求が土地所有権に基づく物上請求であり、土地賃借人に対する請求が債権的請求であつて、前者と後者とが権利としての性質を異にするからといつて、叙上の理は左右されないというべきである。されば、本件土地賃貸借契約の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中、土地賃借人であつた第一審被告亡小能見唯次からその所有の地上建物中の判示部分を賃借使用するにいたつた上告人富永キクエに対して被上告人がした訴訟引受の申立を許容すべきものとした原審の判断は正当であり、所論は採用できない。」最判昭和41年3月22日民集20巻3号484頁
(※4)「土地引渡請求訴訟の係属中,目的物の占有が被告から第三者に移転した場合には,原告は第三者に対し請求を向き替えなければ,請求権本来の内容(物の占有の原告への移転)を実現できない。すなわち,当該請求権が物権的請求権であるときは,被告が占有を喪失すれば請求権自体が消滅し,原告は敗訴する。当該請求権が債権的請求権であるときは,被告が占有を喪失しても請求権は消滅しないが,原告が訴訟をそのまま維持して勝訴の判決を得たところで,右判決の執行によって請求権本来の内容を実現するに由ない。したがって,あくまで物の占有を取得しようとする原告は,いきおい,第三者に対し引渡請求権を差し向けなければならない。この場合に,原告が第三者を相手どって新訴を提起する代わりに,既存の訴訟を第三者に引き受けさせて争いの解決を得ようとすることは--通常の場合,第三者の地位が被告の従前の主張と証拠関係(訴訟資料)に依存するとともに,原告も被告との関係で提出した反対の訴訟資料を転用できるものである以上--正当な要請として是認すべきである。第三者としても,従前の訴訟資料を利用できる点において,新訴を提起されてはじめて訴訟資料を蒐取提出すべき立場におかれる場合と比較してはるかに利益である。そして,右の結論を是認することは訴訟経済の観念にも適合する。以上述べたことは,原告が土地明渡とともに(ないし土地明渡の手段として)地上建物の収去を請求する場合において,⒜地上建物の所有権が被告から第三者に移転し,敷地の占有の承継があったとき,または,⒝被告が第三者のために地上建物に賃借権を設定し,建物および敷地の占有の承継があったとき,原告は訴訟の引受の方法により第三者に対し,建物収去(⒜の場合),建物からの退去(⒝の場合)を求めうるかについても同様である。」「右のような基本的な考え方のもとに,第三者をして訴訟を引き受けさせるための法律構成上の問題は,いかにして被告適格の承継を認めるかにある。この点につき,判旨は,第三者が,賃貸借終了に基づく建物収去,土地明渡義務に包含される退去義務に関する紛争の主体たる地位が被告から第三者に移転したものとなし,これをもって被告適格の承継ありとみる。そして,右の紛争の主体たる地位の移転なるものを敷衍して次のようにいう。すなわち,退去義務の存否に関する紛争は,第三者において被告から建物(本件ではその一部)を賃借し,建物およびその敷地の占有を承継したことを契機として,『第三者の土地賃貸人〔=原告〕に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとって右両者間に移行する』のだというのである。右の場合において,被告の建物収去(ならびに退去)義務は賃貸借の終了を発生原因とし,第三者の退去義務は建物を占有することによって原告の所有土地を占有する事実を発生原因とするものであるから,前者の義務が被告から第三者に承継されるということは(第三者が建物賃借に伴い退去義務につき債務の引受をしたというきわめて稀有の事例を除き)法理論上ありえないことである。それにもかかわらず判旨が紛争の移行があるというとき,該紛争は,前法律的な,建物の支配を廻る経済的利害の対抗関係として把握されているものとみるほかない。紛争をそのようなものとみることによって,はじめて建物退去にかかわる原被告間の紛争が原告第三者間に移行すると考えうるであろう。したがって,判旨のいわゆる紛争の主体たる地位とは,もはや実体法上の権利義務の帰属点として理解されているのではなく,むしろ前記経済的利害対抗関係の当事者として観念されているものということができる。右の見地からすれば,原被告間の訴訟が債権的請求権,これに対応する義務を対象としていることは,第三者に対する被告適格の承継の有無を判断するうえにおいて決定的な意義をもたないこととなる。判旨が『たとえ土地賃貸人〔=原告〕の第三者に対する請求が土地所有権に基づく物上請求であり,土地賃借人〔=被告〕に対する請求が債権的請求権であって,前者と後者が権利としての性質を異にするからといって,叙上の理は左右されない』と述べているのは,右の趣旨に出たものと解せられる。」最判解民事篇昭和41年度594頁
(※5)「参加・引受承継の原因について法は,訴訟の目的である権利の譲受け,または義務の承継を規定するが,この文言は訴訟物より広く,訴訟物の基礎たる権利義務を含み,その承継によって訴訟物についての当事者適格の移転をもたらすものを意味する。承継の原因も,法律行為,競売などの国家行為,または法の規定によるかを問わない。たとえば,建物収去土地明渡請求訴訟中に訴訟物たる収去明渡請求権の基礎をなす原告の土地所有権や被告の建物所有権が第三者に譲渡された場合には,第三者に当事者適格が移転するし,また,上記訴訟において被告から第三者が建物を賃借した場合も,被告の土地占有権原の一部を承継したことによって,その者に対して当事者適格が移転したものとみなされる。」「さらに,原被告間の建物収去土地明渡請求訴訟において,土地賃貸借の終了が争われており,その訴訟の係属中に建物の占有が第三者に譲渡された事案においては,訴訟物たる賃貸借契約の終了にともなう収去明渡義務が被告から第三者へ移転したとはいえないことはもちろん,前訴の訴訟物たる収去明渡請求権が土地賃貸借契約終了にもとづく債権的請求権であり,第三者に対する訴訟物たる退去請求権が土地所有権にもとづく物権的請求権であることを考慮すれば,占有の承継にともなって,当事者適格の一部の移転があったとみることも困難である。なぜならば,当事者適格は,訴訟物を基準として決定される以上……,被告の当事者適格の一部が第三者に移転したとみることはできないからである。」「しかし,原告が第三者たる建物占有者に対して退去請求を定立した場合に,第三者が,建物所有者たる被告の土地占有権原を自らの権限を基礎づけるものとして援用する可能性がある以上,被告の土地占有権原,すなわち賃貸借の終了に関して形成された訴訟状態を第三者に引き継がせるべき必要性を否定することはできない。昭和41年判決が,当該紛争の主体たる地位を承継したとの理由から,訴訟引受けの申立てを許容すべきものとしたのは,このような必要性を満たすために他ならない。したがって,ここでいう紛争の主体たる地位とは,訴訟物だけではなく,それをめぐる主要な攻撃防御方法を包括する概念として用いられており,被告と第三者との間の土地建物の占有の承継にともなって,主要な攻撃防御方法を共通にする結果となった場合には,紛争の主体たる地位の移転があるとするものと考えられる。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』670頁



2019-04-03(Wed)

【基礎演習民事訴訟法】問題23「補助参加人の権限と判決効・訴訟告知の効力」

ローライブラリーに昨年の短答の解説が掲載されたようなので,

昨年の短答を解かないといけないですね。

基礎演習を終えたら短答を始めないと間に合わないですよね。

あと1か月で,短答にどれくらい振るべきなのか悩みどころです。

短答弱者としては残り1か月短答に全振りしたいところですが,

まだ憲法民法商法の論文の演習を残していることに鑑みると,

それは無謀であり,浅はかであるように思えます。

なんでこんなことになってしまったのか……

≪問題≫

 Zは,甲市内に自分が所有しかつ居住する家屋の周囲にコンクリートブロック塀を設けることにし,A建設会社に工事を請け負わせて,塀は完成した。それから5年後,Zは,転勤のため転居する必要が生じ,その家屋をそっくりYに賃貸して,乙市内に移り住んだ。それから数年後に,甲市で地震があり,甲市内は震度5を記録した。その地震により,Yの居住する家屋の周囲のブロック塀が倒壊し,その横をたまたま通りかかったXがその下敷きになって重傷を負い,身体に重大な後遺症を負った。そこで,Xは,Yを相手に,ブロック塀は民法717条1項の土地の工作物に当たり,その設置または保存に瑕疵があったとして,甲地方裁判所に損害賠償を求める訴えを提起した。
 訴訟において,Yは,ブロック塀の設置または保存に瑕疵があったことを争うとともに,かりに瑕疵が認められるとしても自分は必要な注意義務を尽くしていたから損害賠償の責任を負わないと主張した。Xは,かりにYが主張するとおり,Yが必要な注意義務を尽くしていたならば,民法717条1項ただし書により,Yは損害賠償責任を免れ,むしろZが責任を負う可能性があることから,XY間の訴訟に利害関係のあるZに訴訟告知をした。これに対して,Zは,XY間の本件訴訟にX側に補助参加した。Zの補助参加後,本件訴訟の審理が進み,結局,裁判所は,ブロック塀の設置または保存に瑕疵があったことは認めたものの,Yは必要な注意義務を尽くしていたとして,Xの請求を棄却する判決を言い渡した。
〔設問〕
1.Xの請求を棄却する判決に対して,補助参加人のZは,自己の名において控訴を提起することができるか。もし控訴ができるなら,控訴期間はいつから進行するか。
2.Xの請求を棄却する判決がそのまま確定したとする。そのあとで,XがZを被告として民法717条1項ただし書に基づいて損害賠償請求の訴えを提起した場合,Zは,Yが必要な注意義務を尽くしていなかったから損害賠償責任はYが負うべきで,自分は負わないと争うことはできるか。
3.かりにXの訴訟告知に対してZがX・Yのいずれの側にも補助参加をしなかったとする。XY間の訴訟が,Yが必要な注意義務を尽くしたことを理由にXの請求棄却判決で終結し,そのまま判決が確定したあとでXがZに対して損害賠償請求の訴えを提起した場合,ZはXに対して,Yが必要な注意義務を尽くしていなかったから損害賠償責任はYが負うべきで,自分は負わないと争うことができるか。


参加的効力って一番よく分からないですよね。

予備論文の民訴でここらへんを聞かれたような記憶がありますが,

さっぱり分からず何も書けませんでしたね(ドヤ顔)

≪答案≫
第1 設問1
 1 Zは,XのYに対する占有者の工作物責任に基づく損害賠償請求訴訟(以下「本件前訴」という。)に補助参加(民訴法42条)をしているが,前提として,Zが補助参加の利益(同法44条1項)を有しているかどうかについて検討する。
 補助参加の利益は,「訴訟の結果について利害関係を有する」場合に認められる(同法42条)。ここで,「訴訟の結果」とは判決理由中の判断を含み,「利害関係」とは専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合であって,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう。
 本件前訴では,ブロック塀の設置または保存の瑕疵がなかったとしてYが勝訴すれば,ZはXからの損害賠償請求を免れることができるから,私法上の法的地位に影響を及ぼすおそれがあり,訴訟の結果について法律上の利害関係を有する。したがって,Zには,本件訴訟に補助参加する利益が認められる。
 2 補助参加人Zは,「上訴の提起」をすることができる(同法45条1項本文)。もっとも,補助参加人の上訴の提起は,補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができない場合(同項ただし書),又は被参加人の訴訟行為と抵触する場合(同条2項)にはすることができない。これは,補助参加人は,自ら固有の請求を持たずに,当事者間の訴訟に参加する従たる当事者に過ぎないため(※1),被参加人のできない行為についてまで独自の地位を主張して訴訟行為をすることを制限したものである。そうすると,既に被参加人において上訴期間が経過している場合には,被参加人はもはや上訴の提起をすることができないのであるから,補助参加人が上訴の提起をすることができるのは,被参加人の上訴期間に限られる(※2)(※3)(※4)(※5)
 これを本件についてみると,Zは自己の名において控訴を提起することができるが,その控訴期間は,Xの控訴期間が進行するとき,すなわち,Xが判決書の送達を受けた日(同法285条)からである。
第2 設問2
 1 XのZに対する所有者の工作物責任に基づく損害賠償請求訴訟(以下「本件後訴」という。)において,本件前訴に補助参加したZが,本件前訴において認定されたYが必要な注意義務を尽くしていたとの事実を争うことは,民訴法46条柱書所定の裁判の効力(以下「参加的効力」という。)により遮断されないか。
 2 補助参加の制度は,補助参加人が,被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため,被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度である。そうすると,補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し,または,これに協力し得たにもかかわらず,被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至ったときには,その敗訴を責任を補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきである。したがって,参加的効力とは,既判力とは異なる,判決確定後補助参加人が被参加者に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力である。また,参加的効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけでなく,その前提として判決の理由中でなされた,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などの事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断にも及ぶ(※6)(※7)
 3 これを本件についてみると,Zは本件前訴においてXを被参加者として補助参加をし,共同して訴訟追行をしたにもかかわらず,X敗訴の判決が出されているから,その責任を分担することになる。そして,本件前訴の訴訟物は占有者の工作物責任に基づく損害賠償請求権であって,Yが必要な注意義務を尽くしたときには,当該請求権行使の障害となる抗弁事実となるのであるから,Yが必要な注意義務を尽くしていたことは,本件前訴の判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定であるということができる。したがって,当該認定については,本件前訴における参加的効力が及ぶため,参加的効力を受けるZは,本件後訴において,この点を争うことができない。
 よって,Zは,Yが必要な注意義務を尽くしていなかったから損害賠償責任はYが負うべきで,自分は負わないと争うことはできない。
第3 設問3
 1 本件前訴において,XがZに対して訴訟告知(民訴法53条1項)をしているにもかかわらず,ZはX及びYのいずれにも補助参加をしていない。そして,Zは,本件後訴において,Yが必要な注意義務を尽くしていないことを主張しようとしているが,これは民訴法53条4項所定の参加的効力により遮断されないか。
 2 民訴法53条4項は同法46条を準用しているから,参加的効力が及ぶ範囲は,同法46条柱書所定の参加的効力と同様に解釈されるべきである。そうすると,被告知者に補助参加の利益が認められる以上は,その者が参加しなかった場合であっても,告知者の敗訴の責任を分担すべきであるから,この者にも参加的効力が及ぶ(※8)(※9)(※10)(※11)
 3 そうすると,前記のように,Zは補助参加の利益を有しているのであるから,参加的効力が及ぶ。したがって,Zは,Yが必要な注意義務を尽くしていなかったから損害賠償責任はYが負うべきで,自分は負わないと争うことができない。

以 上


(※1)「補助参加人は自らの固有の請求を持たない。したがって,判決の名宛人となることはない。その意味で,補助参加人は真の意味での当事者ではなく,従たる当事者と呼ばれることもある。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』563頁
(※2)「補助参加人は、独立して上訴の提起その他一切の訴訟行為をなしうるが、補助参加の性質上、当該訴訟状態に照らし被参加人のなしえないような行為はもはやできないものであるから、被参加人(被告・控訴人・上告人)のために定められた控訴申立期間内に限つて控訴の申立をなしうるものと解するを相当とする……。所論は、これと異る見解を前提とするものであつて、採用できない。」最判昭和37年1月19日民集16巻1号106頁
(※3)「判決が主たる当事者および補助参加人されざれに送達されることを前提として,補助参加人独自の上訴期間を認めるかどうかについては,考え方の対立がある。しかし,訴訟物たる権利についての訴訟追行権が主たる当事者に帰属していることを考えれば,主たる当事者が上訴権を失っているにもかかわらず,補助参加人独自の上訴期間にもとづいて上訴を認めるのは行き過ぎである。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』642頁
(※4)「もともと請求は,被参加人と相手方との間のものであって,これを前提に非当事者として介入・干渉しているにとどまる補助参加制度においては,補助参加人の独立性も,基本的前提である従属性を掘り崩さない限度で認められるにすぎないはずです。被参加人ができなくなった上訴を補助参加人に認める必要はないというべきでしょう。被参加人との間に協調関係が存在しないことなどから被参加人に対する判決送達時期を知り得ないとしても,自ら独自に判決の送達を受けている以上,速やかに裁判所に対して被参加人に対する送達時期を確認した上で,前記のような反対説が危惧する場合であればなおさら被参加人の上訴期間を頼みにせずに,直ちに自ら上訴を提起すべきであると考えられます。このようなところから,補助参加人の上訴を被参加人の上訴期間内に限定する通説・判例……が支持されます。」藤田広美『解析民事訴訟〔第2版〕』477頁
(※5)補助参加とは異なり,共同訴訟的補助参加の場合には,上訴期間を補助参加人独自に計算することを前提としたものとして,最決平成28年2月26日判タ1422号66頁があります。この点について,ジュリ1505号143頁によれば,「補助参加人に判決効が及ぶ場合には,通常の補助参加とは異なり共同訴訟的補助参加として扱うことが判例(最判昭和40・6・24民集19巻4号1001頁,最判昭和45・1・22民集24巻1号1頁など)・学説上認められており,補助参加人の従属的な性格は否定され,必要的共同訴訟人と同様の規律(民訴40条)が妥当するとされている。このことから,共同訴訟的補助参加に該当する場合には,補助参加人の上訴期間は被参加人のそれとは別に計算されるとするのが通説的見解である」とされています。
(※6)「民訴法70条[現行民訴法46条柱書]の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法70条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法78条[現行民訴法53条]が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法70条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。」最判昭和45年10月22日民集24巻11号1583頁
(※7)「旧民訴法70条[現行民訴法46条柱書]所定の効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく,その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが……,この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし,ここでいう判決の理由とは,判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい,これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして,その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。」最判平成14年1月22日集民205号93頁
(※8)「旧民訴法78条[現行民訴法53条4項],70条[現行民訴法46条柱書]の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条[現行民訴法42条]にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される」前掲最判平成14年1月22日
(※9)受験生の多くが使っているような民訴の教科書を一通り見てみたところ,判例のように補助参加の利益があれば参加的効力を及ぼすことができるとする見解を採っているものは見当たりませんでした。したがって,ここのところは学説にのって,補助参加の利益だけでは足りず,実体法上のより強い結びつきを要求する立場を採ってもいいかもしれません。その場合には,補助参加の参加的効力の場合の理由づけ(第2の2の部分)で「補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し,または,これに協力し得たにもかかわらず」の後半部分は削る必要がある気がします。
(※10)「伝統的通説は補助参加の利益で足りるという立場を採用しているが,有力説は,これに加えて,被告知者による告知者に対する協力が正当に期待できることが必要であると説く。参加的効力の根拠は,実際に訴訟追行した参加人も被参加人とともに敗訴の責任を負担するのが衡平であるという点に求められるのであるから,実際に参加していない被告知者に参加的効力を及ぼすためには,それを正当化するさらなる理由が必要であるというのである。そして,有力説は,被告知者による告知者に対する協力が正当に期待できる場合とは,告知者が敗訴した場合,それを直接の原因として告知者が被告知者に対して求償ないし賠償を求め得るような実体関係がある場合である,と論じる。告知者が敗訴した場合に告知者の求償に応じなければならないような者は,告知者勝訴に向けて協力すべきであると考えられるからである。たとえば,債権者から保証債務の履行を求められた保証人による訴訟告知を受けた主債務者は,保証人敗訴の際は求償に応じなければならないから,参加して告知者に協力すべきであり,それをしなかった以上,参加的効力が生じてもやむを得ないといいやすいであろう。なお,判例は伝統的な通説に親和的な判断を示したことがあるが……,傍論的な判断であり,その立場が明確になっているとはいえない。」前掲三木ほか572頁
(※11)学説による場合の論証((※10)を参照)「この点,判例は,補助参加の利益を有する者であれば,民訴法53条4項所定の効力を及ぼすことができるとしている。しかし,補助参加における参加的効力と異なり,訴訟告知における参加的効力は,実際に参加をしていない被告知者にこれを及ぼすものであるから,被告知者による告知者に対する協力が正当な期待できる場合でない限り,参加的効力を及ぼすことを正当化することはできない。そこで,告知者が敗訴した場合,それを直接の原因として告知者が被告知者に対して求償ないし賠償を求め得るような実体関係がある場合に限って,被告知者による告知者に対する協力が正当に期待できる場合であるということができ,参加的効力を及ぼすことができる。」



2019-04-03(Wed)

【基礎演習民事訴訟法】問題22「補助参加の利益」

朝起きれない日々が続きます。

最近また朝寒いですよね???

そりゃ布団から出れないっすわ。

≪問題≫

 Aは,ある海沿いの岸壁に腰をかけて釣りをしていた。そこに,Bが運転する自動車が突っ込んできて,Aは跳ね飛ばされた。Aは救急車で救急病院に搬送され,手術を受けたが,翌日死亡した。他方,Bはそのまま車ごと海に転落し,水死した。
 そこで,Aの遺族である妻Cは,Bの遺族である子Dを相手方に,不法行為に基づく損害賠償請求権として1億円の支払を求めて訴えを提起した(甲訴訟)。その訴訟手続において,Dは,Bの過失を認めたが,Aが死亡したことについては,Aの搬送されたE病院における手術に過誤があったためであり,適切な措置がとられていればAは救命されていたはずであるとして,Aの死亡に起因する損害については,賠償義務を争った。このような状況を知って,E病院を経営するE医療法人は,Aの手術について過誤はなく,Aが死亡したのはBの加害に基づくものであると主張して,原告Cを補助するため参加の申出をした。
 他方,Bは生前,F社およびG社との間で生命保険契約を締結していた。そこで,Dは,F社を被告として,死亡保険金5,000万円の支払を求めて訴えを提起した(乙訴訟)。それに対し,F社は,Bの死亡は自殺であると主張し,保険契約者の自殺について保険会社は免責される旨の契約上の条項を援用して,保険金の支払義務を争った。このような状況を知って,将来同様に保険金の支払請求訴訟をDから起こされることを懸念するG社は,やはり事故が自殺による旨を主張して,被告F社を補助するため参加の申出をした。
〔設問〕
1.甲訴訟において,E医療法人の補助参加の申出について,被告Dが異議を述べた。裁判所はどのように判断すべきか。
2.乙訴訟において,G社の補助参加の申出について,原告Dが異議を述べた。裁判所はどのように判断すべきか。


補助参加です。

事実上の利害関係ではダメっていうところと,

法的利益に対する事実上の影響で足りるっていうところが,

毎回混ざりそうになってよろしくないです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 CのDに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟(以下「甲訴訟」という。)に,Eが補助参加の申出をしている(民訴法42条)のに対して,Dが異議を述べている(同法44条1項)から,裁判所は,Eの「補助参加の許否」,すなわちEに補助参加の利益があるかどうかについて判断する必要がある。そこで,Eに補助参加の利益が認められるかどうかについて検討する。
 2 補助参加の利益は,「訴訟の結果について利害関係を有する」といえる場合に認められる(※1)
  ⑴ そもそも補助参加は当事者の一方を勝訴させることを通じて自らの法的利益を保護する機会を補助参加人に与えることを目的としてされるものである(※2)。そうすると,法的利益に対する影響は,判決主文中の判断であろうと判決理由中の判断であろうと違いがないから,「訴訟の結果」とは判決理由中の判断も含まれる(※3)(※4)
  ⑵ 次に「利害関係」とは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない。そして,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう(※5)(※6)(※7)
 3 これを本件についてみると,Dの主張によれば,Bが自動車でAに衝突した事故(以下「本件交通事故」という。)についてBの過失があったことは認められるが,Aの死亡結果はEが適切な措置を採らなかった事故(以下「本件医療事故」という。)が介在したために生じたものかどうかが争われている。本件交通事故がAの死亡を招来せしめるものであるとすれば,本件交通事故と本件医療行為のいずれもがAの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって,本件交通事故における運転行為と本件医療行為における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たる。そうすると,この場合に,DとEは,Aの被った損害の全額について連帯して責任を負うこととなる(※8)
 ここで,Eが補助参加をするに当たっては,本件医療事故が単独でAの死亡を招来させたというDの主張を排斥するために,①Aの死亡についてBの行為が寄与しているとの主張か,②Eには過誤がなかったとの主張をすることが考えられる。
 まず①の場合についてみると,CD間の訴訟においては,D自身の損害賠償義務について争われているところ,Dが責に任ずるべき損害額の範囲は,Eの医療過誤の有無やそれのAの死亡結果に対する影響度などを加味して決定されるから,Eの医療過誤についての事実認定が判決理由中においてされることが想定される。このとき,甲訴訟の結果いかんによってEのCに対する損害賠償責任に消長をきたすものではないが,甲訴訟においてDのCに対する損害賠償責任が認められれば,EはCに対しDと各自損害を賠償すれば足りることとなり,自ら損害を賠償したときにはDに対し求償し得ることになるのであるから,甲訴訟の判決がEの私法上の法的地位に影響を及ぼすおそれがある場合にあたる。したがって,Eは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有するということができるから,Eには補助参加の利益が認められる。よって,この場合には,Eは甲訴訟に補助参加をすることができる(※9)
 次に②の場合についてみると,原告Cとしては,①の認定さえ得られればDに対する全部勝訴判決を得られることができるのであり,②の認定は甲訴訟との関係では傍論となる部分である。そうすると,そもそも判決理由中にも現れない可能性があるため,補助参加の利益が認められない。
第2 設問2
 DのFに対する保険契約に基づく保険金支払請求訴訟(以下「乙訴訟」という。)において,Dの請求が認められるか否かは,Bの死亡が自殺によるものであるか否かによって決せられることとなる。したがって,乙訴訟の判決理由中の判断には,Bが自殺によって死亡したのか偶然の事故によって死亡したのかが示されることとなる。しかし,DとFとの間の保険契約による法律関係と,DとGとの間の保険契約による法律関係とは,ともにBにつき死亡を原因とする保険金を給付する同種の保険契約関係というにすぎないものであり,相互に損害を補填し合う関係にある旨の主張立証はないから,何ら法的関連や関係がない。乙訴訟において,Bに生じた本件交通事故が偶然な外来の事故に当たるか否かが決せられたとしても,GとDとの間で,本件交通事故によるBの死亡についての保険金支払い義務の存否に付き法律上何ら影響するものではなく,Gの私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に何ら影響することはなく,ただ,同一の争点に対する判断として参考にされ,事実上影響することがありうるというにすぎない。したがって,Gには法律上の利害関係があるということはできないため,補助参加の利益が認められない。したがって,Gは乙訴訟に補助参加することができない(※10)

以 上


(※1)「補助参加の利益は,『訴訟の結果について』『利害関係を有する』場合に認められる(民訴法42条)。補助参加の利益の判断は,判決における『何に関する判断』が補助参加人の『いかなる利害関係』に『どの程度影響するか』という,3点に分けて考察することができる。すなわち,⑴ 『訴訟の結果』の意義,⑵ 『利害関係』の内容及び⑶ その程度が問題となる。」最判解民事篇平成13年度(上)63頁
(※2)「補助参加の趣旨は,当事者の一方を勝訴させることを通じて自らの法的利益を保護する機会を補助参加人に与えることである。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第3版〕』558頁
(※3)「補助参加人自身の法律上の地位が争われる場合に事実上不利な影響が生じるという点では,判決主文中の判断であろうと理由中の判断であろうと違いはないはずであり,また,補助参加人を当事者とする後訴の審理の内容を考えると,事実上不利な影響を生じるのは,判決主文の判断ではなく,理由中の判断以外に考えられない。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』639頁
(※4)「『訴訟の結果』には,訴訟物たる権利又は法律関係のみならず判決理由中の判断も含まれ,判決理由中の判断に付き法律上の利害関係が認められる場合にも補助参加の利益を認めるべきであるとする説であり,近時有力に主張されるようになり,第1説と逆転して多数説を形成するに至ったとも評価されている。その根拠に関しては,次の2つの見解がある。」「参加人の具体的な権利義務への影響から考える見解……は,補助参加の対象となった訴訟の判決が,補助参加人が当事者となった後訴に対して影響が生じるという点では,判決主文における判断と判決理由中の判断に違いはないとして,判決理由中の判断について利害関係を有する者についても利害関係があるとする。」「いかなる場合に判決理由中の判断に対する法律上の利害関係があるとするかについては,論者によって多少の違いがある。ⅰ 井上治典教授は,一方当事者の敗訴した理由によって,第三者が一定の請求を受け若しくは訴えられる蓋然性があり,第三者を当事者とする第2の訴訟で,当該第1の訴訟の判決理由中の判断が参考にされて第三者に不利益な判断がなされる蓋然性がある場合であるとする。ⅱ 新堂幸司教授,高橋宏志教授は,その訴訟の主要な争点についての判断を前提にして参加人の権利義務その他法的地位が決められる関係にあることから,被参加人の受ける判決の判断によって参加人の法的地位が事実上不利な影響を受けるおそれがある関係がある場合であるとする。ⅲ 飯倉一郎教授は,訴訟物及び請求原因について利害関係を有する場合であるとする。ⅳ 奈良次郎元判事は,原告又は被告の主張に従えば,参加人の法的地位に変動,影響を生じ,これに伴う将来の法的紛争の顕在化が十分予想されることから,その法的関係を未然に明確化し紛争を予防又は法的に簡明化することが妥当な場合であるとする。」「当該手続内における手続保障から考える立場[は,]補助参加する訴訟の後訴への影響とは無関係に,当該手続内における補助参加の利益を考える立場である。」「この立場に立つ井上治典教授は,結果志向から過程志向へ支店を転換すべきであり,参加の利益にとってより本質的なファクターは,当該訴訟の後訴への影響ではなく,その訴訟において第三者が紛争主体として自らの立場から主張立証を行う利益と必要性があるかという点であるとし,補助参加の許否を導く基本的視点は,第三者がその訴訟の中で自ら主張・立証を試みることを必要とするほどにその紛争が広がりを持ち,第三者の関与を是認できるほどにその地位の不安定・不利益が現実化しているのか,あるいはこの訴訟を契機として第三者が正面に立たなければならない紛争が顕在化するおそれがどの程度あるのかであると述べる。」「また,伊藤眞教授は,判決の後訴への影響力を認めることは,補助参加人の裁判を受ける権利を害するものであり,これを認めるべきではないとした上で,補助参加を認める必要があるのは,補助参加の対象となる訴訟の結果たる判決主文または理由中の判断において補助参加人自身の法律上の地位そのもの,またはその前提となる法律関係あるいは事実関係についての判断がされ,それが補助参加人に事実上の不利益を及ぼすからであるとする。そして,かかる観点から,判決主文中の判断及び判決理由中の判断が補助参加人たるべき者の法律上の地位と論理的関係にある限り,補助参加の利益が認められるとする。」前掲最判解民事篇平成13年度(上)63頁
(※5)「民訴法42条所定の補助参加が認められるのは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない……。そして,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。」最判平成13年1月30日民集55巻1号30頁
(※6)「『利害関係』の程度については,法律上の利害関係があれば,必ずしも判決が直接に補助参加人の権利義務に影響を及ぼすべき場合に限られず,判決の効力(既判力や執行力)が直接参加人に及ぶ必要はない。判決の効力が及ぶ場合は,共同訴訟的補助参加になる。訴訟の結果を前提にして補助参加人の権利義務その他法的地位の決定に参考なるおそれ,すなわち事実上の影響があればよいとされている。この点は,第1の訴訟における判断が第2の訴訟で事実上影響力を及ぼすことで足りると説明され,① 被参加人が敗訴すれば,参加申出人が求償・損害賠償その他一定の訴えを提起される関係にある場合,② 第1の訴訟が第2の訴訟の先決関係にある場合,③ 当事者の一方と同様の地位・境遇にある者が補助参加を申し出る場合等に認められるとされる(ただし,③の場合にはこれを否定する学説もある。)。」前掲最判解民事篇平成13年度(上)66頁
(※7)「本決定[前掲最判平成13年1月30日]は,判例及び多数説の立場に立って利害関係が法律上の利害関係でなければならないことを確認したものである。」「さらに,本決定は,『法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。』旨判示して,法律上の利害関係の意義ないし内容及び程度……を明らかにしたものである。」前掲最判解民事篇平成13年度(上)69頁
(※8)「原審の確定した事実関係によれば,本件交通事故により,Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,事故後搬入された被上告人病院において,Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから,本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,Aの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって,本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから,被害者との関係においては,各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し,各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし,共同不法行為によって被害者の被った損害は,各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして,各不法行為者はその全額を負担すべきものであり,各不法行為者が賠償すべき損害額を案分,限定することは連帯関係を免除することとなり,共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し,これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり,損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。」最判平成13年3月13日民集55巻2号328頁
(※9)「記録によれば、被上告人は、本訴により、補助参加人の保有し運転する自動車と上告人成田精吉の保有し同下山正二の運転する自動車が交差点で衝突した反動により傷害を負ったことに基づき、補助参加人及び上告人らを共同被告として損害賠償を請求したが、第一審においては補助参加人に対する請求はほぼ全部認容され、上告人らに対する請求は棄却されたところ、補助参加人が、自己に対する第一審判決については控訴しなかったが、上告人らもまた右事故につき損害賠償責任を免れないとして、被上告人のため補助参加を申し立てると同時に、原審に対し被上告人を控訴人とする控訴を提起したことが認められる。右の場合においては、被上告人と上告人らの間の本件訴訟の結果いかんによって補助参加人の被上告人に対する損害賠償責任に消長をきたすものではないが、本件訴訟において上告人らの被上告人に対する損害賠償責任が認められれば、補助参加人は被上告人に対し上告人らと各自損害を賠償すれば足りることとなり、みずから損害を賠償したときは上告人らに対し求償し得ることになるのであるから、補助参加人は、本件訴訟において、被上告人の敗訴を防ぎ、上告人らの被上告人に対する損害賠償責任が認められる結果を得ることに利益を有するということができ、そのために自己に対する第一審判決について控訴しないときは第一審において相手方であった被上告人に補助参加することも許されると解するのが、相当である。」最判昭和51年3月30日集民117号323頁
(※10)「一審被告と抗告人らとの間の基本事件保険契約による法律関係と、補助参加申出人と抗告人らとの間の本件保険契約による法律関係とは、同一被保険者につき死亡を原因とする保険金を給付する同種の保険契約関係というにすぎないものであり、相互に損害を補填し合う関係にある旨の主張立証はないから、何ら法的関連や関係がない。基本事件において、争点である被保険者である太郎に生じた本件事故が偶然な外来の事故に当たるか否かが決せられたとしても、補助参加申出人と抗告人甲野花子との間で、本件事故による太郎の死亡についての保険金支払義務の存否につき法律上何ら影響するものではなく、補助参加申出人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に何ら影響することはない。ただ、同一の争点に対する判断として、これが参考にされ、事実上影響することがあるというにすぎないのであり、このような影響を与える関係を法律上の利害関係ということはできない。」「基本事件において、補助参加申出人に一審被告への補助参加を認めても、上記事実上の影響以外には何ら法律的な関係がない以上、両者間に参加的効力を観念する余地はなく、抗告人らとの間でも何らかの法的効果を考える余地はなく、補助参加申出人には補助参加制度が前提とする法律上の利害関係がないことは、このことからも明らかというべきである。また、補助参加を認めることによる紛争解決の一回性を考えるとしても、それは事実上のものにすぎず、補助参加申出人に対し何ら法的拘束力が生じない以上、法的な拘束力等によってもたらされる紛争解決効は存しないのであるから、紛争解決の一回性を理由に補助参加の是非を考えることもできない。」東京高決平成20年4月30日判タ1301号302頁



2019-04-03(Wed)

【基礎演習民事訴訟法】問題21「独立当事者参加」

さて,基礎演習もあと10問。

さっさと終わらせましょう。

今回は,21問目です。

≪問題≫

 ABCの三者間で金員の貸し借りを巡って紛争を生じ,AがBに対して貸金の支払を求める訴えを提起したところ,Cが,Bに金員を貸し付けたのは自分であると主張し,Aに対しては自己の貸金債権の確認を,Bに対してはその支払を求めて,独立当事者参加の申出をした。
〔設問〕
1.この訴訟において,AがBに金員を渡したことを主張し,Bはこれを認めたが,Cは争っている場合,どのように扱われるか。
2.この訴訟において,AB間で,従前から別途争われていた商品の問題も含めて,「AはBに対して債権を有しないことを確認する。BはAの倉庫にある商品〇〇がAの所有に属することを確認する」旨の合意が成立した場合,どのように扱われるか。
3.この訴訟の第1審において,Aの請求認容,Cの両請求棄却の判決が下されたのに対して,Cのみが控訴し(Bは控訴も附帯控訴もせず),控訴審が貸金債権はCに帰属すると判断する場合,どのような判決をすべきか。


独当です。

いろんな論点があって難しいです。

本問では問われていませんが,

上訴してない人が上訴人なのか被上訴人なのかという,

もうそんなのどうでもよくないかと思ってしまうような論点とか,

そういうのがたくさんありますよね。

マジでどうでもいいと思います。

≪答案≫
第1 設問1
 1 AのBに対する消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟に,Cが独立当事者参加の申出をしているが,Bに金員を貸し付けたのは自分であると主張していることから,権利主張参加(民訴法47条1項後段)の申出をしているものと考えられる。そこで,前提として,Cについて権利主張参加の要件を満たしているかについて検討する。
 権利主張参加は控訴審においてもすることができ,また,その審理には同法47条4項が準用する同法40条の適用があることから,権利主張参加ができる場合については一定程度限定するべきであるため,原告の請求と参加人の定立する請求とが論理的に両立しないことが要件となる(※1)。CがBに対して請求する貸金返還請求権は,AがBに対して請求する貸金返還請求権と同一の債権であって,債権者という地位が一人に決定されるはずである以上,両請求は論理的に両立しないから,Cは同請求を立てて権利主張参加をすることができる。
 2 独立当事者参加が認められる場合には,前記のように,民訴法47条4項が準用する同法40条の適用がある。これは,第三者が当事者間の訴訟によって不利益を被ることを避けるため,当事者間の訴訟追行を牽制する権限を認めたものである。そうすると,本件では,Bは,Aから金員を借り受けた点について自白しているが,同条1項により,その効力は認められない(※2)
第2 設問2
 AとBとの間では,AがBに対して債権を有しないとの確認をしているが,これは原告が訴訟係属後期日においてその請求について理由がないことを認めて訴訟を終了させるものであるから,請求の放棄である(民訴法266条1項)(※3)。そこで,一当事者を除外して,訴訟物を処分する行為をすることができるかについて検討する。
 前記の通り,独立当事者参加において,民訴法47条4項が準用する同法40条の適用があるのは,参加人の不利益回避のために当事者間の訴訟追行を牽制する権限を認めた点にある。そうすると,参加人に不利益とならない訴訟行為であれば,参加人にこれに対する牽制権を認める必要はないから,参加人の不利益にならない訴訟物の処分行為であれば,当事者間においてこれをすることができる(※4)
 これを本件についてみると,AのBに対する債権とCのBに対する債権とは,論理的に両立しない関係にあることからすると,AのBに対する債権が不成立であることは,Cにとってその競合する債権者がいなくなることを意味するから,Aの請求の放棄はCの利益にこそなれ不利益になることはない。したがって,AはBとの間で,その債権の請求の放棄をすることができる。
 したがって,民訴法40条1項にかかわらず,裁判所において,Aが請求を放棄したものとして扱われる。
第3 設問3
 1 Cは第1審において全部敗訴しているから,控訴の利益を有し,控訴をすることができる(民訴法281条1項)。
 2⑴ 控訴裁判所は,CのBに対する貸金債権が認められるものと判断しているため,第1審において請求棄却とされた部分を取り消して,これを認容する判決をする(同法304条)。しかし,第1審では,AのBに対する貸金債権が認容されているから,これを請求棄却の判決に変更しなければ,両請求が認容されることとなり,合一確定がされないこととなる。そこで,AのBに対する貸金債権について請求棄却判決に変更することができるかどうかについて検討する。
  ⑵ 前提として,AのBに対する請求については,AもBも控訴していないため,これが控訴審に移審しているか問題となるが,独立当事者参加においては,請求間において合一確定の要請が働くから,Cのみの控訴によってAのBに対する請求を認容する部分は遮断され,控訴審に移審する。
  ⑶ 控訴裁判所は,「不服申立ての限度においてのみ」,第1審判決を変更することができるとされているから(同法304条),控訴人の不服申立ての範囲を超えて控訴人に有利に第1審判決を取消しまたは変更することができない(以下「利益変更禁止原則」という。)(※5)。そうすると,Cの控訴は,あくまで,自己の債権が認められなかったことを不服とするものであるから,当該債権が認容されれば不服申立ての範囲における判断は達成されるということができる。したがって,控訴裁判所が,AのBに対する貸金債権についてもこれを棄却する判決に変更することは,利益変更禁止原則に反するように思われる。
 しかし,利益変更禁止の原則は,処分権主義に由来するものであるところ(※6),処分権主義は相手方の不意打ちを防止する機能を有している(※7)。この点,独立当事者参加においては,合一確定の必要が認められる以上,控訴の不服申立ての範囲に含まれない請求に関する判決と,控訴の不服申立ての範囲に含まれる請求に関する判決とが矛盾する場合には,控訴の不服申立ての範囲に含まれない請求に関する判決であっても,これを変更する必要がある。この場合の変更を認めても,合一確定に資する限りにおいて第1審の勝訴当事者には不意打ちはないということができる(※8)。したがって,独立当事者参加がされている場合には,その上訴があったときには,利益変更禁止原則に優先して独立当事者参加における合一確定の要請を図るために,勝訴当事者の請求に関する判決を変更することができる。
 これを本件についてみると,第1審におけるAのBに対する貸金債権を認容する判決は,CのBに対する貸金債権を認容する判決と矛盾抵触するものであるから,後者を認容する限りにおいて,前者を棄却する必要がある。したがって,控訴裁判所は,AのBに対する貸金債権に関する第1審判決を取消して,棄却判決に変更することができる。
 3 よって,裁判所は,原判決を取り消して,AのBに対する請求を棄却し,CのBに対する請求を認容する判決をすべきである。

以 上


(※1)「権利主張参加は,原告の請求と参加人の定立する請求とが論理的に両立しない場合に限りすることができる。」「47条1項の文言自体は,原告と参加人の請求が相互に両立し得ないことを明示的に要求していないが,権利主張参加は控訴審においてもすることができ,また,その審理には40条が準用されるという強い規律を伴うものであることを考えると,一定の限定解釈を施すことにも理由がある。」「原告と参加人の請求が相互に両立不可能であるか否かを判断する際に,狭義の訴訟物の次元でのみ両立不可能性を考える立場と,判決内容の実現可能性の次元まで含めて両立不可能性を考える立場(この立場は,請求の趣旨の次元での両立不可能性を要件とするものと表現されることもある)とがある。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』575頁
(※2)「40条1項は,共同訴訟人の1人の訴訟行為は全員の利益においてのみその効力を生ずると定める。これによれば,共同原告の1人が請求原因事実を主張し,または相手方の主張を争った場合には,それは利益なものとして全員に対して効力が生ずる一方で,裁判上の自白は1人で行っても効力を生じず,裁判所は自白をした当事者についても自白に反する事実を認定できる,ということになる。訴訟資料を統一する趣旨である。」前掲三木ほか553頁
(※3)「請求の放棄とは,原告が,訴訟係属後,期日において,その請求について,その理由がないことを認めて訴訟を終了させようとする訴訟行為である。」前掲三木ほか494頁
(※4)「判決の合一性を確保するために当事者の1人がなす訴訟行為は,参加人の不利益になる限りその効力を生じない(40Ⅰ)。参加人のなす訴訟行為についても同様である。不利益になる訴訟行為の例としては,自白や請求の放棄・認諾が挙げられる。」「ただし,不利益になるかどうかは,当事者と参加人との間に共同関係がないので,一律には決定されない。たとえば,所有権確認および所有権にもとづく明渡請求訴訟に,真の所有者であると主張する者が参加した場合において,原告がその請求を放棄することは,参加人にとって不利益になるとは言い難い……。これに対して,被告が原告の請求を認諾することは,参加人にとって不利益な行為と評価される。損害賠償請求権発生原因事実についての被告の自白も,損害保険会社が詐害防止参加をしているときには,その効力を生じない。岐阜地判平成24・1・17判時2159号134頁。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』680頁
(※5)「控訴裁判所は,不服申立ての限度でのみ,第1審判決の取消しおよび変更をすることができる(304条)。控訴裁判所は,不服申立ての範囲を超えて控訴人に有利に第1審判決の取消しまたは変更をすることができず,また,相手方の控訴または附帯控訴がないかぎり,控訴人の不利に第1審判決の取消しまたは変更をすることはできないということである。前者を『利益変更禁止の原則』といい,後者を「不利益変更禁止の原則」という。」前掲三木ほか606頁
(※6)「利益変更・不利益変更禁止の原則は処分権主義に由来すると解するのが多数説であるが,このような理解によれば処分権主義の妥当しない局面においてはこれらの原則も妥当しないということになる。」前掲三木ほか607頁
(※7)「[処分権主義は]原告の意思を尊重するという意義を有するが,それと同時に,全部敗訴した場合の危険の限度を予告し,それによって訴状送達を受けた段階で,被告がかかる危険を考慮したうえで訴訟追行の仕方を決めることを可能にする,という機能も認められる。」前掲三木ほか57頁
(※8)「本判決[最判昭和48年7月20日民集27巻7号863頁]は,利益変更禁止原則の基礎とされる処分権主義に対して,独立当事者参加の制度趣旨である合一確定の要請の優先を認めたものということができる。実質的に見ても,合一確定を求める上訴当事者の利益,または附帯上訴等をしなくても二重敗訴を免れる他の敗訴当事者の利益……を図ることができ,他方で,そのような変更を認めても,合一確定に資する限りにおいて勝訴当事者にも不意打ちはないと言えよう」高橋宏志ほか『民事訴訟法判例百選〔第5版〕』223頁



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