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2019-03-13(Wed)

【事例研究行政法】第2部問題17

ついに,最後の問題にたどり着きました。

12日中に終わらせたいという願望はかないませんでしたが,

まだ13日になったばかり。

人が起きてから寝るまでが1日であることからすれば,

まだ12日です。

目標達成ですありがとうございました!!!!!!!(知能指数が著しく低いコメント)

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 Aは,2006年7月31日,BとC(共にM国籍)の子としてM国で出生し,M国籍を有する。
 Aは,2011年8月30日,B,Cと共に「短期滞在」の在留資格,「90日」の在留期間を認められて日本に入国し,日本に滞在するCの兄Dの住居に同居した。2ヶ月後,BはM国に帰国したが,AとC(以下「Aら」という)はDのもとにとどまった。さらに3ヶ月後,Dと日本人Eが婚姻したことから,Aらは,Dと共にEの居宅に同居することとなった。この間,Aらは3回にわたり在留期間更新許可を受けたが,2012年3月28日に在留期間更新不許可処分を受けた後は更新許可申請をしていない。
 一方,DとEは,2012年3月17日,家庭裁判所に対し,AをDとEの普通養子とする縁組の許可を求める申立てをした。Aが6歳になるまでに普通養子縁組が成立すれば,Aは日本人の普通養子で6歳未満の者として,「定住者」の在留資格を得ることが可能であったが,Bが養子縁組に同意しなかったことから,縁組は成立しないままAは6歳となった。しかし,将来の縁組成立を前提に,Aの養育は引き続きCとD,Eが共同で行った。Aらは,2012年8月29日,入国管理局に出頭して出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)違反事実を申告した。入国警備官は2013年5月19日,Aらにつき主任審査官から収容令書の発付を受け,同月23日に同収容令書を失効するとともに,Aらを入管法24条4号ロ(不法残留)該当容疑者として入国審査官に引き渡した。入国審査官は同日,Aらに対する違反調査をし,Aらが入管法24条4号ロに該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし(入管47条3項),これに対しAらは特別審理官による口頭審理を請求した。Aらは同日仮放免(54条)を許可された。
 特別審理官は,2015年1月7日,Aらに係る口頭審理をした結果,入国審査官による上記認定に誤りがない旨の判定をした(入管48条8項)。これに対し,Aらは法務大臣に対し異議の申出をしたが(入管49条1項),2015年2月5日,Aらの異議の申出は理由がない旨の裁決がなされ(入管49条3項),同月12日,裁決の通知とともに,M国を送還先とする退去強制令書の発付処分がAらに対してなされた(同法49条6項)。なお退去強制令書の執行に際しても収容がなされるが,Aらは同日仮放免を許可された。
 その数日後,2014年にBとの離婚が成立したCがAの単独親権者となったことから,ようやく家庭裁判所の養子縁組許可が得られ,Cの代諾によりAとD・Eとの間で普通養子縁組が成立した。

〔設問〕
1.Aが退去強制によりM国に送還されないようにするためには,どのような法的手段によるべきか。行訴法に定められた法的手段(仮の救済の手段を含む)について,訴訟については訴訟要件,仮の救済の手段については申立の認容要件を含めて論じなさい。
2.Aが退去強制によりM国に送還されないようにするため,Aは,設問1で解答された訴訟においてどのような主張をすべきか。

【資料】(略)


あんまり処分を連続させないでほしいですよね。

混乱してしまうので。

あと,弁護士同士の会話のところに違法性の承継の話が書いてありましたけど,

解説で明示的に触れられていませんでした。

答案で示さなくていいのかなあ……。

≪答案≫
第1 設問1
 1 まずAとしては,入国審査官がしたAを退去強制対象者に該当するとの認定(以下「本件認定」という。)の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
 しかし,Aは,2012年3月28日に在留期間更新不許可処分を受けた後は更新許可申請をしていないのであるから,出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)24条4号ロに該当することは明らかであり,本件認定の違法性を争うことは困難である。
 したがって,Aは本件認定の取消訴訟を提起すべきではない。
 2⑴ 次にAとしては,法務大臣がしたAらの異議(以下「本件異議」という。)の申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)の取消訴訟を提起することが考えられる。
 本件裁決は,法務大臣が優越的地位に立って一方的にAらの異議が申出は理由がないとの判断をし,Aが退去強制対象者であるとの判断を維持し,Aが強制退去すべき義務を形成する行為であるから,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。Aは,本件裁決の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)である。本件裁決をしたのは,法務大臣であるから,被告は国である(同法11条1項1号)。出訴期間は徒過していない(同法14条)。
 したがって,本件裁決の取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
  ⑵ Aとしては,本件裁決の取消訴訟と併せて,本件裁決手続の続行の停止を申し立てる(同法25条2項本文)。
 強制送還は,一般にそれまでの生活の基盤を奪うものであり,退去強制処分に対する訴訟追行を困難にするだけでなく,取消判決後の損害の回復も難しいという事情がある一方,送還の執行停止を認めても送還が先送りになるだけで公益に格別の支障はない。したがって,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」にあたる。
 また,Aについては仮放免(法54条)が認められるものと判断されており,Aを送還しないことによって「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」とは考え難く,また後記の通り,少なくとも「本案について理由がないとみえるとき」とはいえない(行訴法25条4項)。
 したがって,本件裁決手続の続行の停止は,その認容要件を満たす。
 3⑴ またAとしては,主任審査官がしたAの退去強制令書の発付(以下「本件発付」という。)の取消訴訟を提起することが考えられる。
 本件発付は,主任審査官が優越的地位に立って一方的にAの退去強制の執行の基となる退去強制令書を発付するものであり,これによりAは退去強制を執行される地位に立たされるから,Aの義務を形成する行為であって,取消訴訟の対象となる「処分」である。Aは,本件発付の名あて人であるから,「法律上の利益を得する者」である。本件発付は,主任審査官がしたものであるから,国が被告となる。出訴期間は徒過していない。
 したがって,本件発付の取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
  ⑵ Aとしては,本件発付の取消訴訟と併せて,本件発付の執行の停止を申し立てる(同法25条2項本文)。
 そして,前記2⑵の通り,この認容要件は満たす。
 4⑴ さらにAは,法務大臣をしてAの特別在留の許可(以下「本件許可」という。)の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起することが考えられる。
 この点,本件異議が「申請」にあたるとし,本件裁決が在留特別許可をしないという処分であると考え,同法3条6項2号の義務付け訴訟を提起することも考えられる。この場合には,本件裁決の取消訴訟を併合提起することとなる(同法37条の3第3項2号)。ここで,取消訴訟の違法判断の基準時は当該処分時であるのに対し,義務付け訴訟の基準時は口頭弁論終結時である。そうすると,本件発付の後に,AとD・Eとの普通養子縁組が成立したという事情を,本件許可の義務付け訴訟においては考慮することができるものの,本件裁決の取消訴訟においては考慮することができないのであるから,併合提起した取消訴訟に「係る請求に理由があると認められ」ない可能性がある。そこで,本件裁決の取消訴訟の併合提起が必要となる,同法3条6項2号に基づく義務付け訴訟によらず,同項1号に基づく義務付け訴訟を提起すべきである。
 本件許可は,法務大臣が優越的地位に立って一方的にAに特別に在留を許可する行為であり,これによりAは日本に滞在する資格を得ることとなるから,直接国民の権利を形成するものであって,「一定の処分」にあたる。また,在留特別許可が認められない場合には,送還によりAのそれまでの生活が根本的に変わり,送還先での苦難が予想されるから,「重大な損害が生ずるおそれ」がある。また,Aが退去強制を免れるための個別法による救済規定はないから,「他に適当な方法がないとき」にあたる。そして,Aは,本件許可の名あて人となるべき者であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)である。本件許可をするのは,法務大臣であるから,国が被告となる(同法38条,11条1項1号)。
 したがって,本件許可の義務付け訴訟は,その訴訟要件を満たす。
  ⑵ Aとしては,本件許可の義務付け訴訟と併せて,本件許可の仮の義務付けを申し立てる(行訴法37条の5第1項)。
 本件許可が認められない場合には,前記のようにAの生活に多大な影響を及ぼすこととなるから,「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ」る。また,Aの養子縁組成立を主張した場合には,「本案について理由があるとみえるとき」にあたると考えられる。
 したがって,本件許可の仮の義務付けは,その認容要件を満たす。 
第2 設問2
 1 Aは,本件許可がされないことについて,法務大臣に認められた裁量権の逸脱・濫用があり,違法であるとの主張を行う。
 2 憲法上外国人が日本に在留する権利を保障されておらず法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ日本に在留し得る地位を認められているにすぎず,在留特別許可をするにあたっては,その性質上広く情報を収集し,その分析を踏まえて時宜に応じた専門的・政策的判断が必要であることからすると,本件許可をするにあたっては法務大臣に広範な裁量権が認められている(※1)
 もっとも,法務大臣が,法の与えた裁量権の趣旨に反して,裁量権を逸脱・濫用した場合には,違法である。
 3 これを本件についてみると,Aは保護者と行動を共にする未成年の子どもであり,その不法滞在については本件許可の消極要素として重視すべきではない。そして,Aは本件発付時において8歳であり,直後に日本人の養子となっているが,法務省告示により日本人の6歳未満の養子であれば定住者としての在留資格を得られたはずであり,不法在留といっても非難の程度は相当低いということができ,消極要素は極めて軽微である。
 他方で,6歳未満の養子として在留資格を認められたとして場合,8歳になっても基本的に在留期間更新を認められると考えられるが,Aは本件発付直後に養子縁組が成立しているのであるから,6歳未満から養子縁組に近い実態があったうえで養子縁組が成立したということかでき,在留資格が認められる場合に限りなく近い。そうすると,在留特別許可を認める有力な積極要素があるということができる。
 これらの事情に照らせば,強制送還というAに重大な不利益を課すことは,比例原則に違反するものであり,法務大臣に認められた裁量権を逸脱・濫用するものである。
 4 よって,法務大臣が本件許可をしないことは,違法である。

以 上


(※1)「憲法は、日本国内における居住・移転の自由を保障する(二二条一項)にとどまり、外国人が本邦に入国し又は在留することについては何ら規定しておらず、国に対し外国人の入国又は在留を許容することを義務付ける規定も存在しない。このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される。したがって、憲法上、外国人は、本邦に入国する自由を保障されていないことはもとより、本邦に在留する権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されているものでもなく、入管法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ本邦に在留し得る地位を認められているものと解すべきである(最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日大法廷判決・民集三二巻七号一二二三頁、最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)。そして、入管法五〇条一項四号は、『特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき』と規定するだけであって、文言上その要件を具体的に限定するものはなく、入管法上、法務大臣が考慮すべき事項を掲げるなどしてその判断を羈束するような規定も存在しない。また、このような在留特別許可の判断の対象となる者は、在留期間更新許可の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に入管法二四条各号の退去強制事由に該当し、本来的には退去強制の対象となるべき地位にある外国人である。さらに、外国人の出入国管理は、国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の国益の保持を目的として行われるものであって、その性質上、広く情報を収集し、その分析を踏まえて、時宜に応じた専門的・政策的な判断を行うことが必要であり、高度な政治的判断を要する場合もあり得るところである。以上を総合勘案すれば、入管法五〇条一項四号に基づき在留特別許可をするか否かの判断は、法務大臣等の極めて広範な裁量にゆだねられており、その裁量権の範囲は、在留期間更新許可の場合よりも更に広範であると解するのが相当であって、法務大臣等は、上述した外国人の出入国管理の目的である国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の国益の保持の見地に立って、当該外国人の在留の状況、特別に在留を求める理由の当否のみならず、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲等の諸般の事情を総合的に勘案してその許否を判断する裁量を与えられているものと解される。したがって、同号に基づき在留特別許可をするか否かについての法務大臣等の判断が違法となるのは、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるものというべきである」


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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2019-03-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題16

23時をまわってしまいました。

今日中に事例研究を終わらせるという夢はついに潰えました。

儚い夢であった……。

ところで,私事ですが,今年度の法学セミナーの読者モニターになりました。

毎月法学セミナーが送られてくるので,これの感想だったり意見だったりを,

色々書いて送るという作業を1年を通してやるみたいです。

一応法学セミナーが無料で1年分手に入るので,

隙間時間に感想書くくらいであれば割には合うのではないでしょうか。

いいものを見つけましたね。

ところで,第2部問題16です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ 食品衛生法によれば,食品添加物は「人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては」販売等を行うことができない(食衛10条)。そして食品衛生法施行規則12条は,食品衛生法「法第10条の規定により人の健康を損なうおそれのない添加物を別表第1のとおりとする」として,製造・販売等できる添加物をリストアップしている。
 物質Sは,1970年から別表第1に加えられ,飲料水等の人工着色料として利用されてきた物質である。ところが,2013年1月になって,アメリカで,物質Sについて発ガン性を疑う研究結果が,ある医学雑誌に公表され,その安全性をめぐって議論が生じていた。そこで,「食品の安全を考える会」の会長であるAは,2013年4月に,アメリカにおける実験データを記載した当該雑誌記事コピーなどを添付して,物質Sを施行規則12条の別表第1のリストから除外すべきであるという意見書を厚生労働省に提出した。この意見書に対して,厚生労働省内で検討した結果,わが国ではこれまで物質Sの利用を認めてきて特段の以上も報告されていないこと,Aが送付してきた雑誌記事コピーは学術的にさほど重要な雑誌記事とはいえないこと,わが国では物質Sの利用を認めても問題ないとする科学者が大半であることなどを考慮して,直ちに物質Sを禁止する必要はないとの結論に達した。そこで,2013年8月に,その旨を厚生労働大臣名で,Aに返答として通知した。
 しかし,Aこの回答にとうてい納得がいかない。食品の安全を確保するという立場からすれば,少しでも安全性を疑うようなデータが出ている維持用は使用を禁止すべきではないかというのが,Aの考えである。そこで,Aは,訴訟を通じて,物質Sを施行規則12条の別表第1のリストから除外させることはできないものか,2013年9月1日に,知り合いの弁護士Bに相談することにした。
 以下は,B弁護士事務所内での対話の一部である。Aの知り合いの弁護士Bのほかに,修習を終えて弁護士として勤め始めたばかりの若手弁護士Cも,相談の場に同席している。

対話(略)

〔設問1〕
 Aの意向を受けて,物質Sをリストから除外することを法的に強制する方法はあるだろうか。あなたがAから依頼を受けた弁護士Cであるとして,どのように助言すべきか。考えられる法的手段と予想される法的な論点,ならびに,勝訴の見込みについて,答えなさい。

Ⅱ 物質Sの安全性に関しては,その後も議論が続いていた。2015年8月末には,アメリカでの研究結果を検証するD大学のE教授による研究成果が発表された。それによれば,発ガン性があるとは断定できないが,一定の条件の下では,ガンの要因となる可能性があるということであった。そこで,厚生労働大臣は,物質Sを添加物リストから削除すべきかどうかについて,薬事・食品衛生審議会に諮問することにした。薬事・食品衛生審議会では,物質Sに関する内外のデータを検証した後,「削除が妥当である」との答申をまとめて厚生労働大臣に提出した。そこで厚生労働大臣は,2016年4月1日,物質Sを施行規則12条の別表第1のリストから外すことを内容とする施行規則改正(案)をまとめ,意見公募手続(行手38条~45条参照)に付した。
 意見公募手続においては,物質Sの危険性に鑑みて削除は当然とする賛成意見から,物質Sは安全かつ有益であるので削除すべきでないという反対意見まで広く種々の意見が寄せられたが,2016年6月1日,厚生労働省では,原案どおり,物質Sを添加物リストから削除する規則改正を決定した。規則改正の経過を発表する記者会見(6月2日)で,厚生労働大臣は,物質Sについて,「発ガン性の疑いが全くないわけではない」と,改正の必要性を主張した。ただ,物質Sは,飲料水メーカーを中心にかなり広く使用されていたので,改正された施行規則の附則において,施行の際に現存する食品のうち清涼飲料水については2016年8月31日まで,その他の食品については同年9月30日まではなお従前の例による旨を規定していた。ところが,施行規則の改正および記者会見の様子が新聞等で報道され,物質Sは発ガン性物質であるという風評が広まったために,物質Sを含む清涼飲料水の売れ行きは改正直後から極端に減少し,飲料水メーカーなどに多大な損害が出た。
 飲料水メーカーであるXは,そもそも,物質Sについて有害性が十分に立証されていないのにリストから外した厚生労働大臣の措置は違法であり,安全性を完全に証明しない限り使用を認めないというような態度はメーカーに不可能を強いるもので認められないと考えている。また,仮に,国民が安心するために物質Sの使用を認めないというのがわが国の政策として適法であるというのであれば,狂牛病にかかっている可能性のある国内産牛肉を国の費用で買い取った例にならって,在庫品をすべて国が買い取るべきではないかとも考えている。

〔設問2〕
 このようなXの意向を受けて,施行規則改正によってメーカーに生じた損害を補填することを法的に求める方法はあるだろうか。2016年6月5日段階で,あなたがXから依頼を受けた弁護士であれば,どのように助言すべきか。考えられる法的手段と予想される法的な論点,ならびに,勝訴の見込みについて,答えなさい。


あ??????????????

急に難易度上がりすぎじゃない??????

今までの問題は,提起する訴え,問題となる訴訟要件,本案での主張内容などは,

問題文を読んだ段階でなんとなくこれかなぁというのは思いつきましたが,

今回の問題は,そういうぼんやりとした思考では,

なかなか適した解答が得られないような気がします。

解説を読んで,はぇ~っていう感じになりました。

こんなのを出されたら虐殺になるんじゃないですか……

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ まずAとしては,国に対して,物質Sを食品衛生法施行規則(以下「規則」という。)12条別表第1から除外すること(以下「本件規則改正行為」という。)の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起することが考えられる。
  ⑵ア 本件規則改正行為は,義務付け訴訟の対象となる「処分」にあたるか。
 「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件規則改正行為は,規則の所轄官庁の行政庁である厚生労働大臣が,その優越的地位に立って,国民に対して一方的に行う行為であるから,公権力の主体たる国が行う行為である。また,規則の制定は,食品衛生法(以下「法」という。)10条に基づくものであるから,法律上認められている行為である。
 もっとも,規則の名あて人は国民一般であり,その内容も国民一般が守るべき法規範として示されていることから,本件規則改正行為によっても直接に特定人の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することにはならないようにも思える。しかし,本件規則改正行為は,規則12条別表第1に掲げられることにより列挙された添加物を使用できるようになるところを,ここから削除することより当該添加物の使用をできなくするものである。そうすると,物質Sは1970年から別表第1に加えられ,その後使用が認められ続けてきた食品添加物であるので,本件規則改正行為の時点で,既に相当数存在しているはずの物質Sを使用した食品を製造,販売している食品会社が,これまで適法に使用を許されていた物質の使用を禁止されたのと同様の法効果をもつ。そうすると,本件規則改正行為は,単に国民一般に対する規則の改正にとどまらず,これまでに物質Sを使用してきた食品会社に対して特に法効果を有する者であるから,特定人に対して直接権利義務の範囲を確定する行為であるということができる。
 したがって,本件規則改正行為は,義務付け訴訟の対象となる「処分」である。
   イ 前記のように本件規則改正行為の性質を考えた場合,Aは物質Sを現在のところ使用する者ではないから,本件規則改正行為によって直ちに影響を受けるような地位にない。そこで,Aが,「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)にあたるかどうかが問題となる。
 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと考えられる場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたる。
 ここで,Aが本件規則改正行為を求めているのは,物質Pが引き続き食品添加物として使用されることにより,知らないうちにこれを摂取して自己の健康を害することを防ぐためである。そこで,Aの健康という利益が,法律上保護された利益といえるかについて検討する。
 規則12条別表第1の制定は,法10条に関連して厚生労働大臣が行うものとされているところ,法10条,規則12条はともに,食品添加物の使用を許すにあたり「人の健康を損なうおそれ」を考慮することとしている。法が「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し,もって国民の健康の保護を図ることを目的と」していることからすると(1条),法10条及び規則12条別表第1は,飲食に供せられる食品添加物について,人の健康に与える影響を考慮し,人の健康を損なうおそれのない食品添加物と認定された場合に限り,これの使用を許すとすることにより,人の健康を保護する趣旨に出たものであると考えられる。したがって,法10条及び規則12条は,人の健康という利益を一般的公益として保護するものである。
 そして,人の健康という利益は,他の利益には代えられ難い高次の利益ということができる。このような利益に対する直接的な侵害の可能性がある場合には,それが国民一般と同質のものであっても,当該個人にとっては個別的利益として位置づけられるべきである(※1)。そして,Aは,物質Sが食品添加物として食品の加工に使用され続ける限り,これを食して健康を害する危険が存するのであるから,Aの健康は,法10条及び規則12条によって個別的利益として保護されているというべきである。
 したがって,Aの健康という利益は,法律上保護された利益であって,Aは「法律上の利益を有する者」にあたる。
   ウ もっとも,物質Sの有害性については,現段階では,アメリカの一部の学者が研究結果として発表しているにすぎず,根拠として十分であるとはいえない。さらに,物質Sは,1970年以来使用されてきたが特段の異常も報告されていない。したがって,Aの健康に対する侵害としては,未だ抽象的な危惧の域を出ないのであって,本案においてAの健康に対する侵害の危険性を実質的に判断すべき程度には至っていないというべきである(※2)
 したがって,「重大な損害が生ずるおそれ」があるとは認められない。
  ⑶ よって,Aは,上記義務付け訴訟を提起することができない。
 2 またAとしては,規則12条別表第1に物質Sを登載した行為(以下「本件登載行為」という。)について,無効確認訴訟(行訴法3条4項)を提起することが考えられる。
 しかし,本件登載行為は,物質Sを使用する潜在的可能性を有する業者に対する関係でも,物質Sを使用した食品を食べる可能性のある国民に対する関係でも,本件登載行為時点において国民に対する直接的な法効果を及ぼすものではない。したがって,本件登載行為は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為であるとはいえず,無効確認訴訟の対象となる「処分」にあたらない。
 よって,Aは上記無効確認訴訟を提起することができない。
 3⑴ そこでAとしては,厚生労働大臣が規則12条別表第1から物質Sを除外する義務化あることの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起することが考えられる。
 確認訴訟においては,訴訟要件としての確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である。
 これを本件についてみると,①Aは,現在物質Sが掲げられている規則12条別表第1について,これを改正することを求めているのであるから,現在の法律関係に関する訴訟であると認められ,確認対象としては適切である。また,②前記のように本件規則改正行為又は本件登載行為に処分性が認められない以上,Aとしては規則12条別表第1の改正を求める方法がその他にあるとは認められないから,方法選択としても適切である。しかし,③物質Sの危険性を指摘するのは学説の一部にすぎず,1970年から使用されてきて特段の問題も生じていないというのであるから,Aの主張する危険は,単なる危惧にとどまるというべきである。
 したがって,Aの上記確認訴訟は,確認の利益を欠くため,これを適法に提起することはできない。
第2 設問2
 1 まずXとしては,国に対して,本件規則改正行為が違法であるとして,国家賠償請求訴訟(国賠法1条1項)を提起することが考えられる。
 本件規則改正行為は,厚生労働大臣が行う行為であって,「国の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて」したものである。
 「違法」とは,公務員としての職務上の注意義務に違反することをいう。しかし,本件規則改正行為の根拠となる法10条は,人の健康を損なうおそれがある食品添加物の使用を制限するという構造ではなく,人の健康を損なうおそれがないとの認定を受けた食品添加物について例外的に使用を許す構造となっている。また,その規制が,人の健康という他の利益に代えがたい工事の利益を保護する目的の下されているものであることからすると,法10条は,食品添加物の有毒性が十分に立証されなくとも,有毒性を有するとのリスクを一定程度有している場合には,これを規制する予防原則を明確にする趣旨に出たものと考えられる。そうすると,厚生労働大臣においては,当該食品添加物に有害性が存するリスクが一定程度見込まれる場合には,これを規則12条別表第1から除外すべきであって,有害性を立証する義務までは負わないのであるから,厚生労働大臣が一定のリスクのある食品添加物を同別表から除外しても,職務上の注意義務に違反したということはできない。
 これを本件についてみると,物質Sについては,一定の条件の下では,ガンの要因となる可能性が指摘されている以上,厚生労働大臣としては,これを規則12条別表第1から除外すべき責務を負っているといえ,物質Sが発ガン性を備えていることの立証まで義務として課されるものではないから,厚生労働大臣は,職務上の注意義務に違反したということはできない。したがって,本件規則改正行為は「違法」であるとはいえない。
 よって,Xの上記国家賠償請求訴訟は適法に提起することができない。
 2 次にXは,厚生労働大臣が記者会見において風評被害を招くような発言をした行為が違法であるとして,国家賠償請求訴訟を提起することが考えられる。
 厚生労働大臣は,食品衛生法の趣旨に則り,本件規則改正行為に伴って,これを国民に周知する責務を負っているところ,この際に必要以上に物質Sの危険性を強調する行為は,物質Sに対する国民の過剰な警戒を招くこととなるため,物質Sの有害性について適切な公表を行うべき注意義務を有しているものと考えられる。そして,厚生労働大臣は,記者会見において,物質Sについて,発ガン性の疑いが全くないわけではないとして規則改正の必要性を強調したにとどまり,物質Sに発ガン性があると断言したものではなく,客観的事実に基づく限りで物質Sに関する情報を提供したにすぎない。そうすると,厚生労働大臣は,物質Sの有害性について適切な公表を行うべき注意義務に違反したということはできないから,その職務上の注意義務に違反したということはできない。
 よって,Xは上記国家賠償請求訴訟を提起することができない。
 3 またXは,本件規則改正行為が適法であることを前提に,これによって物質Sを使用した飲料水について生じた損害を補填するため,損失補償請求訴訟を提起することが考えられる。
 前提として,食品衛生法には,損失補償を認める規定は存在しないが,憲法29条3項に基づいてこれを請求することができる(※3)
 本件規則改正行為により,それまで適法に使用が可能であった物質Sのしようが禁止されることになるため,メーカーの財産権行使に制限を加えたものであるということができ,「公共のために用ひる」場合にあたる。
 「特別の犠牲」に当たるか否かは,①規制目的,②規制対象の特定性,③損害の程度,④規制の態様などから判断する(※4)。②本件規則改正行為は,国民一般を対象とする規則の改正であるものの,これによって影響を受けるのは物質Sを使用しているメーカーのみであって,実質的には特定人に対する財産権の制限であるとの面を有している。また,③メーカーの飲料水の発売自体を制限するものではないものの,物質Sを使用した飲料水に代替する商品を新たに開発するなどの負担がかかることに鑑みれば,特定の飲料水について財産権の販売停止を求めるものであって,発生する損害の程度は小さいとはいえない。さらに,④物質Sの使用を一律に禁止するものであるから,これを使用した飲料水の販売も一律に禁止されることとなり,現状の積極的変更を加えるものとして規制の態様は強度である。もっとも,①本件規則改正行為は,国民の健康の保護の目的からされたものであるから,消極目的であるようにも思われるが,そもそも法10条及び規則12条は,前記のように予防原則を明確にする趣旨に出た規定であり,国民の信頼を保護するべく過剰規制になることも許容する政策的な規制としての側面をも有するものである。そうすると,本件規則改正行為の目的は,一律に消極目的であると認定することはできず,政策的目的をも併せ持つ性質のものである。以上からすると,本件規則改正行為は,単に財産権に内在する制限であるとはいえず,国民の受任すべき限度を超えた財産権に対する規制であるということができるから,「特別の犠牲」にあたる。
 以上から,Xの上記損失補償請求は認められる。

以 上


(※1)解説の見解
(※2)第2部問題14の解説では,直接型義務付け訴訟の重大な損害要件の判断にあたり,「生命・身体の安全ないし健康については,抽象的な危惧があるにすぎない場合は別として,一般に,その侵害の具体的内容や侵害の蓋然性如何は,後述する原告適格判断の場合と同じく,むしろ本案の問題となる,と考えるべきである」としている一方,本問の解説では,重大な損害要件は満たされないものとしていますので,おそらくは「抽象的な危惧があるにすぎない場合」であると捉えているのではないかと思われます。
(※3)「同令[河川附近地制限令]四条二号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといつて、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令四条二号およびこの制限違反について罰則を定めた同令一〇条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」最判昭和43年11月27日刑集22巻12号1402頁
(※4)「一般に『特別の犠牲』に当たるかどうかは,①規制目的(警察・消極目的か,政策・積極目的か),②規制対象の特定性(国民一般か,特定人か),③損害の程度(財産権の行使に対する軽度の制限か,財産権の剝奪・利用禁止のような本質的制限か),④規制のタイプ(現状維持か,現状の積極的変更か)など多様な角度から判断される(それぞれ,かっこの中の全社であれば,損失補償を否定する方向で考えられ,後者であれば損失補償を肯定する方向で考慮される)。」本問の解説


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-03-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題15

予定よりも1通答案作成が遅れています。

なんとしても今日中に事例研究を終わらせたかったのですが,

果たしてどうなることやら……

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲市では,2000年頃から,市役所内にごみ減量対策本部を設置し,資源ごみ,不燃ごみ,可燃ごみの分別収集を進め,ごみの減量や再資源化を推進してきた。このような取組みは一定の成果をあげ,甲市のごみの量は漸減傾向にある。しかし,甲市は海に面した町ではなく,また,市の面積も狭くその多くが宅地であることから,ごみ焼却処理施設から排出されたご焼却灰や不燃ごみを埋立処分するための処分場を新設することができず,一層のごみの減量を図る必要があった。一方で,甲市の財政状況も悪化していたこともあり,ごみ減量対策本部では,家庭系ごみの収集を有料化することを提言し,既に有料化を行っている他市の状況を調査した。その結果,家庭ごみの収集を有料化しても,料金が廉価な場合にはそれほどの効果がなく,有料化実施直後はごみの量が減少するが,後にごみの量が元に戻ることがあることがわかった,そこで,ごみ減量対策本部では,有料化する場合,既に有料化を実施している他市より,料金を高めに設定することを提言した。
 甲市では,ごみ減量対策本部の提言に基づき,家庭系ごみの収集を有料化することとし,「甲市廃棄物の減量化,資源化及び適正処理等に関する条例」(以下「本件条例」という)を制定し,料金については別表で定めた(いずれも【資料2】参照)。甲市に居住するXは,家庭系ごみ収集の有料化に反対であり,本件条例は違法であると考えている。そこで,Xは訴訟で争うことを決意し,弁護士Aのもとを訪れた。弁護士BはA弁護士の事務所の若手弁護士である。

〔設問〕
1.Xは,どのような訴訟を提起して争うことが適切と考えられるか,検討せよ。なお,行訴法に規定があるものに限り,仮の救済については検討する必要はない。
2.Xは,上記の訴訟において,本件条例の違法性につきどのような主張をすることができるか,甲市の反論を考慮しながら,検討せよ。

【資料】(略)


条例制定行為の処分性です。

処分性のお勉強をしていれば必ず見聞きするところです。

保育所廃止条例の判例が異色を放ちすぎているという気もするので,

同判例には何かしらの形で触れておいた方がよいのでしょう。

本案は,知らない of 知らない。

≪答案≫
第1 設問1
 1 まずXとしては,甲市長が本件条例を制定した行為(以下「本件条例制定行為」という。)の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
 そこで,本件条例制定行為が取消訴訟の対象となる「処分」にあたるかどうかについて検討すると,「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。条例制定行為は,一般に,その条例の適用のある地域のすべての者を対象とするものであるから,特定人の具体的権利義務に直接影響を及ぼすものではなく,処分性が認められない(※1)(※2)。もっとも,判例には,保育所廃止条例の制定に処分性を肯定したものがある。同判例は,⑴保育所廃止によって法的効果が直接的に生じること,⑵対象が特定されていること及び⑶救済方法としての合理性が認められることから,処分性を肯定したものであると考えられる(※3)。これを本件条例制定行為についてみると,たしかに⑴ごみ袋の有料化によって,他の行政庁の処分を待つことなく,家庭系ごみの収集を求める者に対しては,ごみ袋の購入による金銭の負担を直接生じさせるものではあるが,⑵その対象となる者は甲市に居住して家庭系ごみの収集を求める者のすべてであり,将来の住民も本件条例の適用を受けることになるはずであるから,対象の特定性に欠けるうえ,⑶Xがごみ収集の費用を払わなければすむようにすればそれでよいのであって,判決の第三者効を強調する必要性もなく,救済方法としての合理性が認められるものではない。したがって,本件条例制定行為は,処分性が認められない(※4)
 よって,Xは,本件条例制定行為の取消訴訟を提起することはできない。
 2 そこでXとしては,本件条例制定行為が無効であることを前提として,甲市が指定の収集袋によらないでXが排出した一般廃棄物を収集する義務が存在することの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起することが考えられる。
 確認訴訟においては,訴訟要件としての確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である
 ①本件条例制定行為により,Xはすでにごみの収集に際して有料の指定ごみ袋を使用することが義務付けられているから,これを使用せずに甲市がごみを収集することは,現在の法律関係であって,確認対象として適切である。②前記のように,Xは本件条例制定行為自体の取消訴訟を提起することができず,具体性を欠く本件条例制定行為について無効確認訴訟を提起することも確認対象の適切性を欠くものと考えられるから,その他に適切な争う方法がないといえ,方法として適切である。③前記のように,本件条例制定行為により,Xにはすでに有料でなければごみを回収してもらえないことによる法的地位に対する危険が現に生じているため,即時確定の利益が認められる。したがって,Xの上記義務存在確認訴訟は,確認の利益が認められるため,適法にこれを提起することができる。
第2 設問2
1 Xは,本件条例が,地方自治法227条に違反し違法であるとの主張を行う。
 地方自治法227条は,普通地方公共団体が「特定の者のために」事務をする場合に手数料を徴収することができるとしている。ここにいう「特定の者のため」とは,一私人の要求に基づき主としてその者のために行う事務をいい,その事務は一私人の利益又は行為のため必要になったものであることを要し,もっぱら普通地方公共団体の行政上の必要のためにする事務はこれに含まれない。
 これを本件についてみると,たしかにごみを出してそれを市に収集してもらうことは,ごみを出す市民の利益のために市がごみを収集していると考えることができ,「特定の者のため」の事務であるようにも思われる。しかし,廃棄物処理法(以下「法」という。)は,自分でごみを処理することを努力義務としている(6条の2第4項)が,一方で,原則として自分でごみを焼却処理することは許さないものとしている(16条の2)。そうすると,甲市の市民は,通常,家庭系ごみを市に収集してもらわざるを得ないのであり,ごみの収集事務は甲市の市民一般を対象としていると考えられる。また,法は,一般廃棄物の収集等を市町村の義務としている(6条の2第1項)から,専ら普通地方公共団体自体の行政上の必要のためにする事務であると考えられる。そうすると,廃棄物処理手数料は,「特定の者のため」の手数料であるとはいえない。
 さらに,旧法は,条例で手数料を定めることができるとしていた(6条の2第6項)ところ,これは本来手数料ではないものを手数料として扱うことを可能にする創造的な規定であったというべきであり,同規定が削除された以上は,家庭系ごみの収集等につき「手数料」を徴収することは許されない。
 以上からすると,本件条例は,地方自治法227条に違反するものであるといえ,違法である。
 2 またXは,仮に本件条例が地方自治法227条に違反していなくとも,本件条例28条1項別表第1に定めるごみ袋の金額が他の市町村のそれに比して約3倍という高額な金額になっている点が,平等原則に反するとの主張を行う。
 これに対して,甲市は,そもそも手数料の料金をどのように定めるかは甲市がその合理的な裁量に基づいて決定することであり,著しく不合理な料金設定でない限り,当不当の問題を生じるとしても,違法であるとの判断には至らない上,本件条例施行規則では経済的に支払いが難しいものに対する対応もされているから合理性を保っていると反論することが想定される。
 しかし,前記のとおり,家庭系ごみの収集は本来普通地方公共団体の事務とされており,その実施に係る費用について,法は普通地方公共団体が負担すべきであることを前提としていると考えられる。そうすると,その費用負担を市民に転嫁させるような料金の設定は,合理性を欠くものである。さらに,本件条例施行規則をもってしても,Xのような年金生活者等への対応は十分であるとはいえず,なお合理性を欠くものであると考えられる。
 したがって,本件条例28条1項別表第1は,平等原則に反し,違法である。

以 上


(※1)「行政立法を定立する行為や,条例制定行為は,一般的には,特定人の具体的権利義務に直接影響を及ぼすものではなく,処分性は否定される。」櫻井敬子=橋本博之『行政法[第4版]』285頁
(※2)「地方公共団体の議会の固有の立法作用に基づく条例の制定行為をもって,『行政庁』の行為と解することには,文言解釈として疑問があるといわざるを得ない。実質論としても,違憲又は違法な条例は当然に無効とされるべきであり,条例の制定行為に行政処分に一般的に認められている公定力(当該行政庁が権限のある機関により取り消されない限り有効なものとして扱われるという通用力)や不可争力(取消訴訟の出訴期間の経過により当該行政処分の効力が争えなくなるという効力)を認めることは相当でない。実効的な権利救済という観点からしても,違憲又は違法な条例による権利侵害に対しては,通常の場合,当該条例が無効であることを前提とした当事者訴訟や民事訴訟を提起することにより十分な権利救済を図ることができるものであり,また,確認の利益が認められる限りは,当事者訴訟又は民事訴訟としての条例の無効確認の訴えも許されるものと解されるから,条例の制定行為の無効確認を求める訴訟を抗告訴訟として認める必要性は認め難い。以上のことからすると,条例の制定行為は抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないと解するのが相当であるように思われるが,仮に例外的にその処分性を肯定する余地があり得るとしても,条例の制定行為の処分性が肯定されるのは,当該条例によって限られた特定の者に対してのみ具体的な効果が生ずることが規定上明らかにされている場合や要件等の規定の仕方は一応抽象的になっているものの実際には特定の者に対してのみ効果を生じさせることを目的として条例が制定され,他の者に適用される可能性がない場合など,その条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することができるような極めて例外的な場合に限られるというべきであろう。」最判解民事篇平成18年度(下)814頁
(※3)特定の保育所の廃止を定める条例を制定した行為の処分性を肯定した最判平成21年11月26日民集63巻9号2124頁では,その理由として,「①その制定行為が行政庁の処分と実質的に同視し得るものであることと,②その制定行為の適法性を取消訴訟において争い得るとすることに合理性があること(救済方法としての合理性)を挙げて」います(最判解民事篇平成21年度(下)863頁)。その上で,「上記①の理由づけの部分は,更に,ⓐ本件改正条例が,他に行政庁の処分を待つことなく,その施行により保育所廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及び保護者の法的地位に直接変動をもたらすものである旨(法的効果とその直接性)を述べる部分と,ⓑ本件改正条例が,本件各保育所の廃止のみを内容とし,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者の法的地位にのみ具体的な効果を生じさせるものである旨(対象の特定性)を述べる部分とに分けて理解すべきものと考えられる」とされています(前掲平成21年度(下)863頁)。したがって,条例制定行為の処分性を肯定する方向に議論をするにあたっては,⑴法的効果とその直接性,⑵対象の特定性,⑶救済方法としての合理性の観点から検討することになると思われます。
(※4)自分の勉強のために長々と書きましたが,実際の答案でこんなに欠く必要はないでしょう。他のことを書く時間がなくなってしまいます。


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2019-03-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題14

毎日答案を書いているだけの人生なので,

もうここで書くことも何もないんですよね。

早く試験終わんねえかな。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 2011年3月31日,株式会社A(以下「A社」という)は,廃棄物処理法(以下「法」という)15条1項にいう産業廃棄物処理施設として,汚泥,廃油等の焼却処理施設W1,および最終処分場たる施設W2の設置許可を,甲県の知事から受けた。続いて同年4月22日,A社は,法14条1項・6項に基づき収集・運搬,処分業の許可を得たうえで,汚泥,廃油の搬入,W1による焼却処理,W2への残滓の埋立てを開始した。
 A社の元代表取締役のBは,弁護士であったが,2013年にA社および同業他社の確定申告に関わり法人税法違反により刑事訴追を受け,同年12月20日にはその有罪判決(4年の執行猶予付きの懲役および罰金刑)が確定したことから,弁護士資格を喪失した。Bは,その判決の言渡し直前に取締役を辞任している。ところが,A社の新たな代表取締役に就任したのは,Bの法律事務所で事務員をしていたCである。Cは,Bの指示のもと,その事務所の残務整理にもあたっていた。1年に1回開催されている,A社への近隣住民の苦情や疑問に関する話合いの席には,Cのほかに,肩書上は取締役でない部長となったBが,従前と変わらず常に同席して発言している。さらに,A社の取締役会は,Bの代表取締役在任中と同様,元弁護士事務所の部屋でBも同席して開かれており,同車の意思決定は,なおも実質的にはBによって行われているとみられる。以上のことは,話合いを仲介してきた県の職員も認識している。
 Pら10名(以下「Pら」という)は,W1・W2の敷地の周囲300m以内に居住して農業に従事している者であり,飲用を含む生活用水や農業用水に,近隣の地下水脈や河川につながる井戸や用水路を利用している。Pらが,W1・W2の操業開始から半年後,度宅の井戸および用水路の水質検査を専門の機関に依頼したところ,重金属等の有害物質の検出はなかったため,当初,Pらは施設の法令適合性に疑いをもたなかった,しかし,上記の刑事事件を契機に,Pらは,A社が上記の法人税法違反により重加算税の賦課を受けて業界の信用を損ない,違反の引き金となった経営悪化が一層進んでいると知り,同時にBの遵法意識に疑いを抱いた。そこでPらが,2015年に至り,再度,検査を依頼したところ,施設の放流水からは「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令」の濃度上限未満ではあるが鉛が検出され(上限の0.5倍),周縁地下水からも濃度上限未満ではあるがやはり検出された(上限の0.2倍。前記省令の別表第1・第2によると,鉛の含有限度は,放流水につき1ℓ中0.1mg以下,周縁地下水につき同0.01mg以下)。他の発生源は考えられず,A社を2015年末に退職した元従業員Dからは,「2013年以降,施設の点検は定期的に行われておらず,焼却炉の排気フィルターの不調や,地下水への残滓成分漏出を防ぐ遮水シートの亀裂が発見されても,社としては費用を惜しみ,それらを修復しないままである。また,収益を増すため,W1の処理能力を超えた量の廃棄物を受け入れ投入することもしばしばある」,との証言が得られた。2016年初頭,甲県職員の立入検査により,Dの証言を裏付ける資料が収集された。
 Pらは,W1・W2の操業に関わり法に基づく適切な権限の行使を甲県知事になさしめることにより,被害の発生を防ぎたい,と希望している。2016年半ば,県側がA社に対して改善指導を続けるにとどめている段階で,Pらの依頼を受けた弁護士Lは,「現時点までの検査では,放流水・地下水において有害物質の濃度は制限を下回り,検出されてはならないPCBなどの特に有害な物質は検出されていないことから,県知事の措置命令(法19条の5第1項により,支障の除去等を産業廃棄物処分業者等に命じる処分。その要件は,法に基づく政令たる産業廃棄物処理基準に適合しない処理の発生,および「生活環境の保全上支障が生じ,又は生ずるおそれがあると認められる」こと)の要件は未だ満たされていない」と考え,法に基づく他の処分の発動を県知事に求めることができないか,検討することとした。

〔設問〕
1.Pらは,上記「他の処分」に関し,甲県を被告とする抗告訴訟としては,どのような訴訟を提起すればよいか。Lの立場に立ち,甲県の主張も想定しながら,訴訟要件の充足について論じなさい。
2.Pらは,上記の訴訟の本案について,どのような主張をなすべきか。Lの立場に立ち,甲県の主張も想定しながら論じなさい。その際,Pらの主張のうち,行訴法10条1項にいう主張制限がかかる部分はないのか,という点についても検討しなさい。

【資料】(略)


難しいです。

義務付け訴訟にも主張制限を及ぼす議論は初耳です。

研究者の方々におかれては,法文に準用するって書いてないんだから,

それでもあえて準用しようだなんて余計なことを思わないでほしいところです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Pらは,主位的に,A社の産業廃棄物処理施設(以下「本件産廃施設」という。)の設置許可(以下「本件設置許可」という。)の取消処分(以下「本件取消処分」という。)の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を,予備的に,A社に対する本件産廃施設についての改善命令又は使用停止命令(以下「本件改善命令等」という。)の義務付け訴訟を提起することが考えられる。
 2⑴ 「一定の処分」(行訴法3条6項1号)とは,義務付けの対象となる処分の種別と内容につき,根拠法条と具体的事実とを併せ,裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されていれば足りる
 本件取消処分は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)15条の3第1項又は第2項に基づくものであって,裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されている。本件改善命令等は,改善命令又は使用停止命令の選択につき都道府県知事が選択をすることができる余地があるものの,法15条の2の7に基づくものであって,Pらの主張する事実と併せて裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されているといえる。したがって,いずれも「一定の処分」にあたる。
  ⑵ 「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の2第1項)について検討すると,本件産廃施設の放流水及び周縁地下水からは鉛が検出されており,これらを生活用水又は農業用水とするPらにとって,これらを飲用に供した場合にはPらの生命及び健康を害する危険を有し,類型的に回復の困難な保護の必要性の高い法益に対する侵害が認められる。したがって,本件取消処分又は本件改善命令等がされないことにより「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。
  ⑶ 法には,Pらが上記損害を避けるための手段が用意されていないから,「他に適当な方法がないとき」にあたる。
  ⑷ア もっとも,Pらは,本件取消処分又は本件改善命令等の名あて人となるべき者ではないため,これらの処分を求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)にあたるかどうかが問題となる。
   イ 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益が侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうそして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと考えられる場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたる
   ウ これを本件についてみると,Pらとしては,本件取消処分又は本件改善命令等がされないことにより,自己の生命・健康への危害を受けるおそれがある。そこで,これらの利益が,法律上保護された利益であるといえるかについて検討する。
 本件取消処分は法15条の3に基づいて,本件改善命令等は法15条の2の7に基づいて,それぞれ行われるものである。法15条の2の7各号及び法15条の3第1項・2項は,許可基準を示す法15条の2第1項に掲げる基準に反したことを要件として掲げている。そこで,法15条の2第1項の基準をみると,「周辺地域の生活環境」への配慮がみられる(同項2号)。また,法15条の2の7第4号及び法15条の3第2項は,法15条の2第4項の条件に違反したときを掲げているが,ここにいう条件においても,「生活環境の保全」が図られている。また,法1条は,「生活環境の保全」を目的としており,法全体を通じて生活環境への配慮がされることを要求している。そうすると,法15条の3及び法15条の2の7は,周辺地域の生活環境を一般的法益としてこれを保護しているものと考えられる。
 そして,生命・健康という法益は,他には代えられない高次の利益であるということができ,法はこれを特に保護する趣旨に出たものであると考えられる。産業廃棄物処理施設による生命・健康に対する危害は,当該施設の周辺において特に影響を及ぼすものであるから,当該施設の周辺住民であれば,その生命・健康を特に保護する必要性が高く,法はこれらの者の生命・健康を個別的利益として保護しているものであると考えられる。当該施設の周辺住民であるといえるか否かについては,当該施設の稼働により直接改変を受ける地域に居住する者か否かによる(※1)
 Pらは,本件産廃施設の立地するW1及びW2の敷地の周囲300m以内に居住して農業に従事している者であり,引用を含む生活用水や農業用水に近隣の地下水脈や河川につながる井戸や用水路を使用している。そして,これらの井戸及び用水路の水質検査によれば,鉛の含有が検出されており,本件産廃施設によって直接改変を受けている。そうすると,Pらの生命・健康という法益は,法によって個別的利益として保護されている。
 したがって,Pらの生命・健康は,法律上の利益にあたるから,Pらは「法律上の利益を有する者」である。
 3 以上から,上記義務付け訴訟はいずれもその訴訟要件を満たすから,Pらは,上記義務付け訴訟を適法に提起することができる。
第2 設問2
 1 本件改善命令等及び本件取消処分のうち法15条の3第2項に基づくものについて
  ⑴ 本件改善命令等を定める法15条の2の7第1項及び本件取消処分のうち法15条の3第2項のものは,ともに「できる」という文言を使用しており,その性質上行政庁の専門技術的な判断が必要となるから,甲県知事に効果裁量が認められている。そこで,Pらは,本案として,甲県知事が本件改善命令等及び本件取消処分等を行わないことが,「裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となる」ことを主張する(行訴法37条の2第5項)。
  ⑵ まず,本件改善命令等及び本件取消処分の要件充足性について検討すると,本件産廃施設では,収益を増やすためW1の処理能力を超えた量の廃棄物を受け入れ投入しており,また,焼却炉の排気フィルターの不調や地下水への残滓成分漏出を防ぐ遮水シートの亀裂が発見されても修復されていないのであるから,廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)12条の6第2号及び4号に適合しておらず,したがって,法15条の2第1項1号の「技術上の基準」に適合しておらず,法15条の2の7第1号及び法15条の3第2項に該当する。
 また,A社は法人税法違反の事件を起こすほど経営悪化が進んでいるため,規則12条の2の3第2号にいう「経済的基礎」を有しておらず,したがって,法15条の2第3号にいう「申請者の能力」が適合しておらず,法15条の2の7第2号及び法15条の3第2項に該当する。
 したがって,甲県知事は,本件改善命令等及び本件取消処分をすることができる。
  ⑶ それでは,甲県知事が本件改善命令等及び本件取消処分をしないことは,裁量権の逸脱・濫用となるか。
 たしかに,本件産廃施設の周辺での水質調査によれば,有害物質の漏出は未だ基準違反には至っておらず,未だPらの健康被害のおそれは生じていないため,本件改善命令等や本件取消処分をせずに,改善指導にとどめることも違法な権限不行使ではないとも思える。
 しかし,Pらの生命・健康の保護を図るためには,甲県知事の上記権限が適時にかつ適切に行使される必要がある。水質調査における有害物質の含有量が基準値以下であっても,現に有害物質の漏出がある上,立入検査の結果に照らしても,技術上の基準違反が見られるので施設の維持管理改善の必要があることは明白であることからすると,現時点において本件改善命令等又は本件取消処分がされなければ,さらなる有害物質の漏出によりPらに健康被害が発生するおそれがある。そうすると,このような状況を看過して,本件改善命令等又は本件取消処分を行う時期を逸失することは,甲県知事の裁量権の逸脱・濫用である。
 したがって,甲県知事が,本件改善命令等又は本件取消処分を行わないことは違法である。
  ⑷ これに対して,甲県知事は,PらがA社の経理的基礎要件を欠くことを主張することはできないと反論することが想定される。すなわち,行訴法10条1項は同法38条1項によって準用されていないが,Pらが本件設置許可の取消しを求める場合と,本件設置許可の取消し・停止等の義務付けを求める場合とでは,利益状況が同じであるから,上記義務付け訴訟について行訴法10条1項の準用を認めるべきであるという主張である。
 この主張による場合には,処分の相手方以外の者が原告となる場合,一般に,原告適格の根拠とされた法令の規定についての違反以外に違法の主張を認められていないため,Pらは経理的基礎要件に関する違法事由を主張することができないように思われる。
 しかし,A社の経理的基礎の悪化は,それにより前記排気フィルターや遮水シートの修復の懈怠を招いており,施設の部分的欠陥をもたらしている。そうすると,近い将来,Pらの健康被害の発生に至る可能性が十分にあるということができるから,本件ではA社の経理的基礎要件は主張制限にはかからない。
 したがって,この点における甲県知事の反論は失当である。
 2 本件取消処分のうち法15条の3第1項に基づくものについて
  ⑴ 本件取消処分のうち法15条の3第1項に基づくものは,「取り消さなければならない」との文言を使用しており,法が危険性の評価を定型的に行うべきであるとする趣旨であると考えられるから,甲県知事に本件取消処分をすることについての効果裁量は認められない。そこで,Pらは,本案として,甲県知事が本件取消処分を行うべきであることが「その処分の根拠となる法令の規定から明らかである」ことを主張する。
  ⑵ 本件取消処分の要件充足性について検討すると,A社では法人税法違反により刑事訴追を受けたBが同社の取締役会に同席し,同社の意思決定は実質的にBによって行われていると見られているから,Bは法14条5項2号ニにいう「役員」にあたり,法15条の3第1項1号に該当する。
 したがって,甲県知事は本件取消処分をしなければならない。それにもかかわらず,甲県知事が本件取消処分を行わないことは,違法である。
  ⑶ もっとも,甲県知事は,名あて人への権利侵害の程度が高い不利益処分の発動に関わる場合には,裁量の余地のない文言にもかかわらず,比例原則がなお妥当し,本件取消処分も義務的に行われる必要がない旨の反論をすることが想定される。
 しかし,Bの欠格事由該当性は,A社の経営の危うさを示す犯罪に関わり,特別の反証があれば格別,そうでない限りは,施設稼働に高い危険性があることを推認させるものである。そして,形だけのBの辞任以後,同社が漸次高めている危険を考慮すれば,文言通りの処分発動は妨げられないというべきである。
 したがって,この点に係る甲県知事の反論は失当である。
  ⑷ また,甲県知事は,Bの欠格事由は,事業者の一般的適正を確保する公益的要請に応えるものであって,周辺住民の個別的利益の保護に仕える要件ではないから,主張制限にかかると反論することが想定される。
 しかし,具体的な事実関係において安全性低下と密接に結びつく欠格事由違反については,主張制限は及ばないというべきであり,本件では,前記の通りBの欠格事由該当性がA社の安全性と密接に結びつくのであるから,この点について主張制限は及ばない。
 したがって,この点に係る甲県知事の反論は失当である。

以 上


(※1)個別的利益として保護される者の範囲の限定については,資料に基準となりそうなものがなく,問題文中にも何も書いていないので,環境アセスメントにおいて対象となる地域を参考としました。環境アセスメントは,「調査対象となる情報の特性、事業特性及び地域特性を勘案し、対象事業の実施により環境の状態が一定程度以上変化する範囲を含む地域又は環境が直接改変を受ける範囲及びその周辺区域等」についてされることとされているようです(環境影響評価法に基づく基本的事項(環境庁告示第八十七号))。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-03-11(Mon)

【事例研究行政法】第2部問題13

事例研究行政法もやっと終わりが見えてきました。

この問題を含めてあと5問です。

明日2問,明後日2問やれば終わりです。

なんだかんだで時間がかかってしまいましたねえ……。

他にもやらなきゃならぬ科目があるというのに……。

短答も……。

あっ,TKCの短答は,自己採点によると134点でした。

周囲を見る限り,刑法ができなかったという方が多数発生しているのですが,

逆に自分は刑法が一番点数が高かったです。

41点でした。

まぁでも結果が返ってくるまではこの出来がいいのか悪いのかは何ともいえません。

とはいえこれだけは言えますが,

刑訴は爆死した(2回目)

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 Aは,産業廃棄物処理施設の設置許可を申請しようとして,B県の担当部署に相談した。担当部署の職員は,「B県産業廃棄物処理指導要綱」に従い,Aに対して,周辺住民の同意書を取得したうえで,B県との事前協議を行うように指導した。Aは,周辺住民に対する説明会を十数回にわたって行い,同意書を得ることを試みたが,Aの処理施設による大気汚染や水源汚染等を心配する周辺住民が反対運動を展開したため,同意書を得ることはできなかった,そこで,Aは,同意書の取得を断念し,B県との事前協議を経ずに,産業廃棄物処理施設の設置許可申請書をB県の担当部署に提出した。

〔設問〕
 次の各場合に,B県知事のとった措置が違法であるとして,AがB県に対して行訴法に基づく訴訟を提起するとすれば,それぞれ,どのような訴訟を提起し,どのような主張をすることが考えられるか。必要に応じて,B県側の反論を想定したうえで,論じなさい。
1.B県知事は,Aの周辺住民の同意書を取得せず,B県との事前協議を経ていないことを理由に,申請書を一切審査せず不受理とし,Aに対して返戻した。
2.B県知事は,申請内容を審査した結果,技術上の基準(廃棄15条の2第1項1号)および申請者の能力に関する基準(同項3号)には適合していると判断したが,周辺住民の同意が得られていないことを理由に,不許可処分をした。
3.B県知事は,申請内容を審査した結果,廃棄物処理法15条の2第1項各号が定める基準のいずれにも適合しているとの判断に至った。しかし,周辺住民の反対運動が激化してきたため,Aに対して,話し合いによる紛争解決を指導し,紛争が解決されるまで,許可を留保することとした。Aは,市道に応じて,周辺住民との話し合いを試みたが,住民側は交渉のテーブルに就こうとしなかった。そこで,Aは,住民を交渉のテーブルに就かせることを狙って,B件に対し,「本件申請に対して速やかに何らかの作為をせよ」との趣旨の要望書を提出した。これに対し,B県知事は,紛争が未解決であることを理由に,許可の留保を継続した。

【資料】(略)


第1部問題2と似たような問題ですね……

設問3は品川マンション事件によせていくことになるんでしょうが,

この判例嫌いなんですよね……。

読み方いまいち分かんないし……。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Aは,B県の担当部署に産業廃棄物処理施設(以下「産廃施設」という。)の設置許可申請書(以下「本件設置許可申請書」という。)を提出したにもかかわらず,B県知事が産業廃棄物処理施設の設置の許可決定(以下「本件許可決定」という。)又は不許可決定(以下「本件不許可決定」という。)をしないことについて,不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)を提起し,これと併せて,本件許可の義務付け訴訟(同条6項2号)を提起することが考えられる。
 2⑴ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)は,産廃施設の設置にあたっては行政庁である都道府県知事の許可を受けなければならないとしており(15条1項),そのために産廃施設を設置しようとする者は,所定の申請書を提出しなければならず(同条2項),都道府県知事において諾否の応答をすべきこととされている。したがって,産廃施設を設置しようとする者がする産廃施設の設置許可の申請は,行手法上の「申請」(同法2条3号)であって,「法令に基づく申請」(行訴法3条5項)にあたる。そして,Aは,B県の担当部署に対して,本件設置許可申請書を提出しているから,これをもってB県の事務所に到達したものとみることができ,「申請をした者」であるといえる(※1)
 したがって,Aの上記不作為の違法確認訴訟は,訴訟要件を満たす。
  ⑵ 法は産廃施設の設置申請について,その申請権者を限定していないから,Aにはこの申請権がある。
 Aは,B県知事が本件設置許可申請書を不受理として返戻した行為(以下「本件返戻行為」という。)が,行手法7条に違反し違法であると主張する。行政庁は,申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならないところ(行手法7条),本件返戻行為は事実上の行為にすぎず,法的にはB県知事が審査を怠って処分をしていない状態となる。したがって,本件返戻行為の後も,B県知事は本件設置許可申請書について審査を行い相当期間内に応答をしなければならないところ,B県知事はこれをしていないから,行手法7条に違反し違法である。
 これに対し,B県知事は,本件返戻行為は,周辺住民の同意書(以下「本件同意書」という。)が「申請書に必要な書類」として添付されている必要があるところ,これがないため,補正を求めた行為であると反論する。しかし,「必要な書類」とは「法令に定められた申請の形式上の要件」であるところ,本件同意書を取得すべきことは,行政指導の基準となる要綱であるB県産業廃棄物処理指導要綱(以下「要綱」という。)2条に定められているにすぎず,法令に定められているわけではない。また,本件同意書は,「当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類」にもあたらない。したがって,本件同意書の添付がないことは,「法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない」とはいえないから,本件返戻行為は行手法7条に違反し違法である。
 3⑴ 本件許可決定又は本件不許可決定は,行政庁である都道府県知事が行う「一定の処分」であるところ,Aはこれを求める旨の「法令に基づく申請」をしている。そして,B県知事は,「その処分をすべきであるにかかわらず」これをしていない(行訴法3条6項2号,37条の3第1項1号)。Aは,「法令に基づく申請をした者」である(同条2項)。したがって,Aは,本件許可の義務付け訴訟を,上記不作為の違法確認訴訟に併合提起する(同条3項1号)。
  ⑵ しかし,この訴訟に係る請求が認容されるためには,Aは,法15条の2第1項各号に掲げる基準のいずれにも適合していることを主張立証しなければならないところ,当該基準は専門技術的判断が必要となるにもかかわらず,B県知事は現時点でこれらの適合性について全く審査していない。そうすると,Aにおいて,これらの主張立証を行うことには困難であると考えられる。
 そこで,裁判所としては,上記不作為の違法確認訴訟についてのみ判決をし,上記義務付け訴訟については判決をしないこととすることが考えられる(行訴法37条の3第6項)。
第2 設問2
 1 Aは,本件不許可決定の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起し,併せて,本件許可決定の義務付け訴訟を提起することが考えられる。
 2⑴ 本件不許可決定は,前記のようにAの本件設置許可申請書の提出が「申請」にあたることから,これに対する応答として申請に対する処分(行手法第2章)にあたり,「処分」(行訴法3条2項)にあたる。Aは,本件不許可決定の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(同法9条1項)として原告適格を有する。本件不許可決定は,B県知事がしたものであるから,被告はB県である(同法11条1項1号)。出訴期間は未だ徒過していない(同法14条)。したがって,Aの提起する上記取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
  ⑵ Aは,法は周辺住民の同意を得ることを許可基準として規定していないから(15条の2),B県知事が周辺住民の同意が得られていないことを理由として本件不許可決定をしたことは違法であると主張する。
   ア これに対して,B県知事は,法15条の2第1項の文言上,同項各号のいずれにも適合していると認めるときであっても,不許可とする余地は排除されていないから,周辺住民の同意を得ていないことを理由に不許可とすることも,B県知事の裁量の範囲内であると反論することが想定される。
 しかし,産廃施設の許可制度(法15条)は,本来自由であるはずの財産権の行使を,衛星や生活環境保全の見地から制限するものであるから,行政庁は,許可基準として法定されていない基準の不充足を理由に不許可とすることは許されない。これを本件についてみると,周辺住民の同意は,法15条の2の要件には掲げられていないところ,それにもかかわらずB県知事は,法定されていない基準としての周辺住民の同意の不充足を理由に本件不許可決定をしている。したがって,本件不許可決定は,違法となる。
   イ また,B県知事からは,法15条の2第1項各号の該当性を認定するにあたっては,都道府県知事に専門技術的な裁量が認められるところ,同項2号の「周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮」がなされているかどうかを判断するための基準として,周辺住民の同意を得ることを求めているのであり,このような基準を定めることは,都道府県知事の裁量の範囲内であると反論することが想定される。
 しかし,本件不許可決定が裁量権の行使としてされたことを前提として,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。生活環境の保全の見地から周辺住民の意見を許可の判断に反映させる手続きは,法15条6項に規定されている。この手続を超えて周辺住民の同意を許可の要件とすることは,周辺住民に拒否権を与えることになる。生活環境の保全について適正な配慮が十分になされていても,必ずしも周辺住民の同意が得られるとは限らないことを考えると,これは,法15条の2第1項2号の基準該当性を判断するための審査基準として不合理である。そうすると,仮に同号該当性の認定に都道府県知事の裁量が認められるとしても,そのような不合理な審査基準に基づく不許可決定は,裁量の範囲を逸脱するものである。したがって,本件不許可決定は違法である。
 3⑴ 本件不許可決定は,Aが「法令に基づく申請」をしたのに対して,B県知事がこれを「棄却する旨の処分」をしたものであって,前記のようにこれは「取り消されるべきもの」である(行訴法37条の3第1項2号)。Aは,「法令に基づく申請をした者」である(同条2項)。したがって,Aは,上記取消訴訟とともに,上記義務付け訴訟を併合提起する(同条3項2号)。
  ⑵ 本件設置許可申請書については,B県知事において,法15条の2第1項1号及び3号に適合することを既に示している。したがって,Aは,本件設置許可申請書が,同項2号にも該当することを主張する。これが認められれば,B県知事が本件許可決定をすることが「法令の規定から明らかであると認められ」ることとなる(同条5項)。
第3 設問3
 1 Aは,B県知事が,本件許可決定又は本件不許可決定をしないことの不作為の違法確認訴訟を提起し,これと併せて,本件許可決定の義務付け訴訟を提起する。
 2⑴ Aの上記不作為の違法確認訴訟が訴訟要件を満たしていることは,前記の通りである。
  ⑵ Aは,B県知事が行政指導を理由に本件許可決定の留保をしていることが,行手法33条及び7条に違反し違法であるとの主張を行う。
 地方公共団体は,地域における環境の整備保全を責務の1つとしており,法も生活環境の保全を目的の1つとしている(1条)ことからすると,関係地方公共団体において,当該地域の生活環境の保全を図るために,産廃施設の許可申請者に対し,一定の譲歩・協力を求める行政指導を行い,申請者が任意にこれに応じている場合には,社会通念上合理的と認められる期間許可を留保し,行政指導の結果に期待することがあったとしても,直ちに違法な措置であるとまではいえない(※2)。もっとも,このような許可の留保は,申請者の任意の協力・服従の下に行政指導が行われていることに基づく事実上の措置にとどまる。したがって,四囲の客観的状況により,申請者において行政庁に対し,許可を留保されたままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明していると認められる場合には,行政指導に対する申請者の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情が存在しない限り,許可の留保は違法となる(※3)
 これを本件についてみると,Aは,「本件申請に対して速やかに何らかの作為をせよ」との意思を,行政庁に対する要望書という形で,真摯かつ明確に表明しており,かつ,Aは,申請前から既に行政指導に従って周辺住民の同意を求めて十数回の説明会を行っており,申請後も指導に応じて周辺住民との話し合いを行うべく努力を重ねたにもかかわらず,周辺住民は交渉のテーブルに就こうとすらせずに反対運動をエスカレートさせていることからすると,話し合いによる紛争解決に至らなかったことがAのみの責任であるということはできず,前記特段の事情があるとはいえないから,要望書提出以降の許可の留保は違法である。
 これに対して,B県知事は,Aによる要望書の提出は,住民との交渉上の駆け引きの手段として行われたものであって,紳士な意見表明とはいえないと反論することが想定される。しかし,前記のようなAの度重なる努力にもかかわらず,周辺住民が交渉のテーブルにすら就こうとしないことからすると,紛争の長期化に伴う許可の遅延によってAが莫大な損害を被るおそれがある。このような客観的状況の下でのAによる要望書の提出は,真摯な意思表明であるということができる。
 したがって,B県知事が本件許可決定を留保したことは,違法である。
 3⑴ Aが提起する上記義務付け訴訟が訴訟要件を満たしていることは,前記の通りである。
  ⑵ 前記のように,B県知事が本件許可決定の留保をしたことは違法であるから,上記不作為の違法確認訴訟に「係る請求に理由があると認められ」,B県知事が本件許可決定をすべきことが「法令の規定から明らかであると認められ」る。

以 上


(※1)「行政事件訴訟法(以下単に「行訴法」という。)一二七条[現行行訴法37条]は、不作為の違法確認の訴えの原告適格について『処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。』と規定するが、ここに『処分又は裁決についての申請をした者』とは、申請権限の有無を問わず、当該訴訟の対象となつている不作為の内容である処分裁決について現実に申請した者であることを要し、かつ、それをもつて足りるものと解すべきである(即ち、現実に申請した者が法令に基づく申請権を有しない場合には、行政庁はその申請に対して応答することを義務づけられていないから行政庁の不作為は実体法上違法とならず、本案において請求は理由がないものとして棄却されることになるのであつて、要するに申請権限の有無は本案の判断事項であつて原告適格の問題ではない。」金沢地判昭和46年3月10日行裁22巻3号204頁
(※2)「普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止その他の環境の整備保全に関する事項を処理することをその責務のひとつとしているのであり(地方自治法二条三項一号、七号)、また法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的として、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定める(一条)、としているところであるから、これらの規定の趣旨目的に照らせば、関係地方公共団体において、当該建築確認申請に係る建築物が建築計画どおりに建築されると付近住民に対し少なからぬ日照阻害、風害等の被害を及ぼし、良好な居住環境あるいは市街環境を損なうことになるものと考えて、当該地域の生活環境の維持、向上を図るために、建築主に対し、当該建築物の建築計画につき一定の譲歩・協力を求める行政指導を行い、建築主が任意にこれに応じているものと認められる場合においては、社会通念上合理的と認められる期間建築主事が申請に係る建築計画に対する確認処分を留保し、行政指導の結果に期待することがあつたとしても、これをもつて直ちに違法な措置であるとまではいえないというべきである。」最判昭和60年7月16日民集39巻5号989頁
(※3)「もつとも、右のような確認処分の留保は、建築主の任意の協力・服従のもとに行政指導が行われていることに基づく事実上の措置にとどまるものであるから、建築主において自己の申請に対する確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には、かかる建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない筋合のものであるといわなければならず、建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、当該建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法であると解するのが相当である。したがつて、いつたん行政指導に応じて建築主と付近住民との間に話合いによる紛争解決をめざして協議が始められた場合でも、右協議の進行状況及び四囲の客観的状況により、建築主において建築主事に対し、確認処分を留保されたままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているものと認められるときには、他に前記特段の事情が存在するものと認められない限り、当該行政指導を理由に建築主に対し確認処分の留保の措置を受忍せしめることの許されないことは前述のとおりであるから、それ以後の右行政指導を理由とする確認処分の留保は、違法となるものといわなければならない。」前掲最判昭和60年7月16日


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2019-03-10(Sun)

【事例研究行政法】第2部問題12

TKC模試が終わりました。

刑訴爆死です。

行政法が終わったら刑訴やります。

今言えるのはそれだけです。

今日は第2部問題12です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,若手弁護士Lの立場に立って,以下の設問に答えなさい。

 産業廃棄物の収集,運搬,処理および再生に関する事業等を目的とする会社であるAは,甲県乙市内の山林9,818㎡の土地の所有権を売買により取得し,甲県知事から廃棄物処理法15条による許可を受けて,同所に産業廃棄物処理場(以下「本件処分場」という)を設けた。さらに,Aは,本件処分場に産業廃棄物を搬入するための目的で,乙市長に対し,林道丙線(以下「本件林道」という)の使用許可を申請した。
 本件林道は,乙市が開設した総延長3,648m,幅員4mの林道で,乙市林道台帳に登載され,乙市長によって管理されている。本件林道の起点には,鉄製の大きな門扉が設置され,右門扉にはかんぬきがかけられているが,施錠はされていない。乙市長は,乙市林道台帳に登載された林道の維持管理に関する事項を,訓令である乙市林道維持管理規程(以下「本件規程」という)によって定める。
 本件規程によれば,林産物,土石その他の物品を運搬するため,林道を使用する者は,乙市長の許可を受けなければならず(本件規程3条1項),乙市長は,使用者が,⑴本件規程に違反したとき,⑵林道の使用方法が適正を欠き,林道の維持に支障をきたすおそれがあると認められるとき,⑶林道の維持修繕のため必要があるとき,のいずれかに該当する場合には,三木使用許可を取り消し,または,林道の使用を停止することができる(本件規程9条)。なお,上の使用許可の規程は,⑴林道沿線等の居住者の日常生活のための林道利用,⑵公共事業等のための林道利用および占有,⑶併用林道規定に係る国有林野の産物の買受人および国有林野事業の請負人の併用林道利用および占有,⑷不特定の一般利用者のいずれかに該当する場合には,適用されない(本件規程12条)。また,使用者は,林道の設置,補修,林道の維持管理等の経費に充てるため,分担金を納付しなければならない(本件規程11条)。
 Aの申請の内容は,運搬物の種類を産業廃棄物(安定5品目)および重機とし,1ヵ月あたり15tないし20tをダンプカーにより運搬することとし,使用区間を本件林道の起点付近から2kmとするものであったが,乙市長は,本件林道の使用を不許可とする決定(以下「本件不許可」という)をし,Aに通知した。不許可の理由は,本件林道は,森林法に基づき,林産物の運搬,林業営業および森林管理のために必要な交通の用に供する趣旨で解説されたものであるところ,産業廃棄物が搬入されると,山林は破壊され,汚水は浸透して地下水を汚染し,下流住民の健康を蝕むことになるし,トラックが日常侵入するようになると,道路が破壊され,林産物の搬出や森林管理のための車両の通行にも支障を来すことになる,というものであった。
 Aの代表者であるBは,本件不許可の通知を受けてから約1週間後に,本件林道を使用するための訴訟について検討するため,弁護士JおよびKと面談した。

〔設問〕
1.Aが本件林道の使用許可を得るために提起すべき訴訟(行訴法に規定されたものに限る)について述べなさい。なお,仮の救済について触れる必要はない。
2.Aが本件不許可の違法性について行うべき主張について述べなさい。

【資料】(略)


設問は素直です。

とりあえず処分性は,地方自治法をこねくり回してどうにかするという感じですね。

こんな問題がいきなり出されても,地方自治法をひける自信はありません。

資料に載っている判例をどう答案に活かすかもポイントになりそうですね。

よく分からないです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Aは,本件不許可決定の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起し,これと併合して,本件林道の使用の許可決定(以下「本件許可決定」という。)の義務付け訴訟(同条6項2号)を提起することが考えられる。
 2⑴ 本件不許可決定が抗告訴訟の対象となる「処分」にあたるか。
 「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたしその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件林道は,乙市において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した財産であるから,「行政財産」である(地方自治法238条4項)。そうすると,本件許可決定は,同法238条の4第7項に基づいて行われることとなる。ここで,目的外使用許可は,その実質は,乙市がAとの間で本件林道について賃貸借関係を設定するものともいえるため,目的外使用許可を契約締結の申込みに対する承諾とみることもできる。この場合には,対等当事者間における契約関係の設定にすぎず,乙市において優越的地位が認められないから,公権力性を有しない行為であるとして,処分性が否定される。
 しかし,同法238条の4は,行政財産について用いる「許可」(同条7項)ないし「許可を取り消す」(同条9項)という文言を使用しているところ,このような文言は通常行政処分に対するものとして用いられるものである。一方で,同法238条の5は,普通財産については「貸付」(同条1項)ないし「契約の解除」(同条4項)という文言を使用しており,これらは通常の契約関係の設定の場面で用いられるものである。さらに,同法238条の4は,行政財産については貸付や私権の設定を禁止し(同条1項),例外的に貸付け等ができる場合を列挙しているが(同条2項),これらの規定とは別個に目的外使用許可についての定めを置いている。以上のような地方自治法の規定からすると,同法は,目的外使用許可を,単なる契約関係の設定とは区別した上で,行政庁が公権力をもって行う行為であることを承認しているということができる。したがって,目的外使用許可の一環としてされる本件許可決定も,公権力性が肯定される。
 もっとも,行政財産の目的外使用許可については,地方自治法上,申請制度について規定されていない。そうすると,行政財産の目的外使用を行おうとする者には,その申請権が認められておらず,これの不許可決定がされたとしても,国民の権利義務を形成しまたはその範囲が確定されたとはいえないともみられる。
 しかし,行政財産の目的外使用許可は,申請者の申請なしになされることはおよそ考えられないのであるから,地方自治法は,申請者により申請がなされることを当然の前提としているものとみるべきである。そして,申請に対して許可がされると,これにより申請者は,行政財産を適法に使用収益する具体的権原を有することとなるのであるから,そのような許可を求める申請者の地位は,一種の権利ないし法律上の地位ということができる。そうすると,これに対してされる不許可決定は,申請者の前記権利ないし地位について,権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものであるということができる。したがって,本件不許可決定は,国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものである。
 本件不許可決定は,地方自治法238条の4第7項に基づいて,乙市長が行ったものであるから,法律上認められている行為である。
 以上から,本件不許可決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」である。
  ⑵ Aは,本件不許可決定の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)として,原告適格を有する。本件不許可決定を行ったのは,乙市長であるから,被告は乙市となる(同法11条1項1号)。出訴期間は満たされている。
 3 よって,Aは,本件不許可決定の取消訴訟を適法に提起することができる。また,Aとしては,本件許可決定がなされることを望んでいると考えられるから,本件許可決定の義務付け訴訟を併合提起する(同法37条の3第3項2号)。同訴えについても,訴訟要件を満たすため,適法に提起することができる。
第2 設問2
 1 行政庁が行政財産について目的外使用許可をするにあたっては,その用途又は目的を妨げないことが求められており(地方自治法238条の4第7項),その判断にあたっては,当該行政財産の性質や目的外使用の内容など諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠である。そうすると,このような判断は,これを決定する乙市長の広範な裁量に委ねられている。
 もっとも,本件不許可決定が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。
 2⑴ Aは,乙市長が,産業廃棄物が搬入されることによる山林破壊を本件不許可決定の理由としたことは,他事考慮であって違法であるとの主張を行う。
 行政財産の目的外使用の不許可をするための理由は,当該行政財産の用途又は目的を妨げるおそれがある場合に限られるところ(地方自治法238条の4第7項),産業廃棄物の搬入による環境破壊は,本件林道の設置の用途又は目的とは無関係である。したがって,乙市長が本件不許可決定にあたって,この事情を考慮したことは,考慮すべきでない事情を考慮したものであり,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるから,本件不許可決定は違法である。
  ⑵ Aは,乙市長が,地下水質汚濁による下流住民の健康被害を本件不許可決定の理由としたことは,考慮不尽であって違法であるとの主張を行う。
 森林法が「森林の保続培養と森林生産力の増進」を目的としていること(同法1条)(※1)や,住民の生命・健康という法益の重要性に鑑みて,環境破壊のおそれを考慮しうるとしても,搬入されるのは安定5品目のみであるから,環境破壊が発生するおそれはない。したがって,乙市長が本件不許可決定にあたって,これらの事情を考慮したことは,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くものであって,その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められるから,本件不許可決定は違法である。
  ⑶ Aは,乙市長が,トラックが日常進入することによる道路破壊,他の車両の通行上の支障を本件不許可決定の理由としたことは,考慮不尽であって違法であるとの主張を行う。
 Aにおいて予定している搬入量はそれほど大量ではないため道路が傷む可能性は小さい上,必要があれば通過車両の重量や通行量を制限することもできる。また,道路が傷んでも分担金によって補修することも可能である。さらに,本件林道は,元々利用者が少ないことから,本件林道の本来の目的のための利用にとって支障になるおそれはない。したがって,乙市長が本件不許可決定にあたって,これらの事情を考慮したことは,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くものであって,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるから,本件不許可決定は違法でである。
 3 また,Aは,乙市長が本件不許可決定の理由として挙げた事情の外にも,本件許可決定がされなければAが得た本件処分場の設置許可が無意味となるから,この点を考慮しなかった点に違法があるとの主張を行う。
 判例(※2)では,行政庁が,桟橋を設けることが採石場において採石業を行うために不可欠である点を考慮しなかった点について,考慮不尽を理由に違法としたものがある。この判例からすれば,正当な目的を達成するために,使用許可が必要不可欠である場合には,これらの点を十分に考慮せずになされた不許可決定は違法となる可能性がある。
 これを本件についてみると,Aは許可を受けて本件処分場を設置しているところ,本件林道が本件処分場に産業廃棄物を搬入する唯一のルートであって,本件林道を使用できなければ適法に設置された本件処分場を使用することがほぼ不可能となる。また,本件林道の利用態様も,他の利用者と同様に,一時的に通行するだけであるし,道路という施設の本来の目的に近い利用方法である。これらの点からすれば,Aは,本件処分場の使用という正当な目的を達成するために,本件林道の使用許可が必要不可欠であるということができる。したがって,乙市長がこれらの点を考慮しなかったことは,考慮すべき事情を考慮しないことによりその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められるから,本件不許可決定は違法である。

以 上


(※1)(参照条文)森林法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進とを図り、もつて国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的とする。
(※2)最判平成19年12月7日民集61巻9号3290頁


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-03-04(Mon)

【事例研究行政法】第2部問題11

何度も言っていますが,明日模試なんですよね。

答案書いてないで早く寝ろよって感じですよね(23時10分を示す時計を見ながら)

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲市の乙商店街では,日頃から多くの買物客が来るため,多くの店舗が道路上に商品を並べて営業している。この道路は幅員8mであるが,道路の両側に商店が並ぶため,午前9字から午後8字までは歩行者専用として使用され,その時間中は許可を受けた商品搬送車のみが通行できる。なお,この道路にほぼ平行して片側1車線で歩道がついた道路が約100m離れた場所を通過している。このため商店街の道路は専ら商店街利用者その他の歩行者や自転車のための道路として利用され,自動車については,平行して走る道路が利用されてきており,この2本の道路により交通需要に十分に対応できる状況である。
 この商店街の道路を毎日通学利用しているK大学法科大学院の学生A(甲市の住民である)は,この道路上での商品の展示により,道路幅が狭まるとともに買物客の多いお昼頃から夕方にかけては自転車と歩行者が衝突しそうになることもたびたびあるし,また,自己の所有地でもない道路を商売に使うことはおかしいと考え,まず,甲市役所の道路管理課に商品の撤去を命令するよう要望した。
 これに対して,道路管理課の職員は,「たしかにあの商店街は,道路上に物を置いていますね。町さのうえ,危険があるようでしたら,対処します」と回答した。
 その後甲市の道路管理課と商工課の職員は,実際に状況を調査するために,買物客が集まる午後3時から4時にかけて現場に赴き,商店主,および買物客にも事情を聞いた。商店主は,「みんなやっているし,お客さんを呼び込むためには,目玉商品をよく見える道路上に並べることが必要だ」と回答した。また,買物客からは「道路上に多少商品が並べられても気にならないし,品定めをしたり,各店の店員と話をするには店内の奥に商品があるよりも,手前にある方がよい」との回答が多かったが,中には通行の邪魔になるし危険だという回答も複数あった。
 そこで,甲市役所内で検討会議をした。会議では,商工課の職員がこの商店街が市の中心部の経済を支える役割を担っていることを挙げて,多少の陳列行為は摘発しないよう求めたが,道路管理課は,摘発は控えるものの,法令上の禁止行為等については住民に知らせるべきだと説明した。そこで甲市役所の道路管理課長は,職員を派遣して,商店主たちに「道路上の通行の妨げになるような商品陳列は控えるように」という,口頭での指導をした。
 ところが,その後も商店の道路上への商品の陳列はとどまらず,最近では,毎日,開店前の朝9時過ぎから,夕方6時頃まで,幅員8mの道路のおよそ半分程度は商品で占拠される状況が続いている。
 Aは,このようなことは許されないと考え,法的手段をとりうるか否かを検討することとした。

〔設問〕
1.甲市は,このような道路上の商品展示をやめさせるため,行政指導以外に,道路法上どのような法的手段をとることができるか,検討しなさい。
2.乙商店街の店舗の経営者は,道路上に多少の商品を置いても,通行が危険な状態にならない限り,規制されるのはおかしいし,また,この商店街は市の経済を支えているし,市の商工課からも頑張って欲しいと言われているのだから,これを一方的に規制することはおかしいと考えている。また,道路上にものを置いているのは,商店街の店舗だけでなく,商店街の入り口にある鋼板では看板を道路上に置いているし,電柱も道路上に設置されている。このような状況で,商店街だけ狙い打ちで帰省するのはおかしい,しかも看板や電柱は24時間道路上にあるが,道路上の商品陳列行為は朝9時から夜8時までで,朝の通勤・通学時間は置いていない。夕方はむしろ買い物に便利である,とも考えている。
 これらの商店主たちの言い分について,設問1で検討した甲市の手段に対する反論の法的主張として構成できるか検討しなさい。また上記言い分以外に,例えば,適法に展示をするため適切な反論が可能であれば,これも説明しなさい。
3.Aは,道路上に商品がはみ出しているのは違法であるので,何とかしてこのような違法行為をやめさせたいと考えている。Aのこの希望を実現するために,Aが,甲市に対して,何らかの法的手段をとるよう求める訴訟を提起することができるかどうかを検討しなさい。
4.Aは,問題の道路は甲市の市道であるので,このような違法状態を放置することは甲市の財産管理としても許されないと考えており,また,商店主が公共の財産を私物化して利益を得ていることに疑問を感じている。Aが,住民訴訟で甲市の管理責任を追及することは可能かどうかを検討しなさい。
 なお,本件では,道路交通法の問題は解答の範囲外とする。


ついに出ました,住民訴訟。

でも,そんなにがつがつ聞かれているようなわけではなさそうですね。

安心しました。

あとは,そんなに難しいことはないですかね。

設問2が変わった形式だなあとは思いましたけれども。

≪答案≫
第1 設問1
 1 甲市は,道路管理者として,道路法71条に基づく監督処分をすることが考えられる。
 2⑴ 道路法32条1項6号は,「露店,商品置場その他これらに類する施設」を道路上に設けるにあたり,道路管理者の許可を必要とする。乙商店街の商店主ら(以下「Yら」という。)が道路上に並べる商品(以下「本件商品」といい,本件商品を道路上に並べる行為を「本件陳列行為」という。)は,ここでいう「類する施設」にあたるから,道路管理者である甲市の許可を受ける必要があるところ,Yらはこの許可を受けていない。したがって,Yらは,道路法に「違反している者」(同法71条1項1号)として,監督処分の対象となる。
  ⑵ 道路法43条2号は,「みだりに道路の交通の支障を及ぼす虞のある行為」をすることを禁止している。本件陳列行為によって,幅員8mの道路のおよそ半分程度は本件商品で占拠される状態となっている。そうすると,商店街の性質上,本件商品を眺めている買物客が周囲をよく確認せずに道路上へ進出することも想定されるところ,4mの幅員では乙商店街を通行する自転車と接触する危険を安全に回避することが困難であると考えられるから,本件陳列行為は,「みだりに道路の交通の支障を及ぼす虞のある行為」であると認められる。このことは,本件陳列行為が午前9時過ぎから午後6時頃までに限って行われるものであったとしても,乙商店街の利用者のピークが昼頃から夕方にかけてであり,その間が特に前記の危険が高まっているということができるから,異なるものではない。したがって,Yらは,道路法に「違反している者」として,監督処分の対象となる。
 3 監督処分は,Yらが本件陳列行為を行うことを制限するものであるから,「不利益処分」(行手法2条4号本文)にあたる。したがって,甲市がYらに対して監督処分を行うには,弁明の機会を付与し(同法13条1項2号),その理由を提示する必要がある(同法14条1項)。
 4 なお,監督処分は「法律に基づき行政庁により命ぜられた行為」(行政代執行法2条)であるが,甲市が撤去命令をする場合には,Yらは毎日午後6時頃には本件商品を道路上から片付けているのであるから,これをもって義務が履行されていると評価され,代執行を行うことはできない。また,甲市が本件商品の展示の禁止命令をする場合には,非代替的不作為義務を課すものであって,代執行の対象とならない。したがって,甲市はいずれの監督処分についても,行政代執行を利用することはできない。
第2 設問2
 1 まずYらは,甲市がする監督処分は,その要件を欠き違法であるとの主張を行う。
 道路法32条1項本文では,「工作物,物件又は施設を設け」と定め,同項6号も「露店施設」と定めているから,これらの規定は一定の施設を規制対象とするものであるから,単に道路上に商品を置くことをこれに含めることはできない。したがって,本件陳列行為は,道路法32条1項6号に該当しない。
 また,道路法32条1項7号は,1号ないし6号の規定を,道路の構造または交通に支障を及ぼすものの例示としていると考えられる。前記のように,本件陳列行為を施設の設置とみることはできない上,本件陳列行為は交通の激しい朝の通勤・通学時間には避けられ,乙商店街の道路が午前9時から午後8時までの歩行者用に規制された際にしかされていない。当該時間には,許可された自動車しか通行することができないため,一般的に自動車の通行を阻害しているものとは認められない。さらに,これまでのところ,特に事故が起こったことはないものと考えられ,昼間や買い物の時間では商品が多少道路上にあっても特に問題を生ずるものではない。そして,甲市が午後3時から4時頃にかけて調査を行ったところ,本件陳列行為を問題視する回答は少なく,むしろ肯定的な回答が多かったのである。したがって,本件陳列行為は,「交通に支障を及ぼす虞」があるということはできないため,本件陳列行為は道路法32条1項7号に該当しない。
 さらに,前記のことからすると,本件陳列行為は道路法43条2号にも該当しない。
 以上からすると,本件陳列行為について甲市がする監督処分は,その要件を欠くため,違法である。
 2 またYらは,本件商品を適法に展示するために,甲市から占用許可を得ることが考えられる。
 甲市は監督処分を行う前提として,本件陳列行為が道路法32条1項6号にいう「これらに類する施設」にあたると主張しているから,これ自体に対する反論は行わず甲市に対して占用許可を申し立て,これを得れば,Yらは適法に本件陳列行為を行うことができる。
 3 さらにYらは,甲市がする監督処分が行手法上の弁明の機会の付与及び理由提示を欠いてされた場合には,この手続上の違反を主張することができる。
 4 なお,Yらが,市の商工課から頑張って欲しいと言われていること,交番では道路上に看板が立てられていること,電柱が設置されていることは,甲市が行う監督処分に対する反論を構成しない。
第3 設問3
 1 Aは,甲市が監督処分を発令することの義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起することが考えられる。
 2⑴ 前記のように,監督処分は「不利益処分」であるから,義務付け訴訟の対象となる「処分」にあたる。
  ⑵ もっとも,Aは,甲市がする監督処分の名あて人ではないから,「法律上の利益を有する者」(同法37条の2第3項)にあたるかが問題となる。
 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた根拠法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,これを個々人の個別的利益としても保護する趣旨であると考えられる場合には,このような利益も法律上保護された利益であるということができる。
 この点,Aは,乙商店街の道路を自由に通行かることができる状態を権利として主張するものてあると考えられる。しかし,道路法は,私人に対して道路の排他的使用権を認めているものではない。そうすると,道路法上,私人が道路を通行する利益は,道路の供用開始によって事実上受ける反射的利益に過ぎないものとして扱われているというべきであり,このような利益をそもそも一般的公益としても保護する趣旨ではないと考えられる。
 したがって,Aは,「法律上の利益を有する者」にはあたらないため,原告適格を有しない。
 3 よって,Aは上記義務付け訴訟を適法に提起することはできない。
第4 設問4
 Aは,甲市がその財産管理を怠る事実が違法であることの確認を求める請求(地自法242条の2第1項3号)及びYらに対し損害賠償または不当利得返還請求をすることを甲市市長に求める請求(同項4号)をする。
 道路法4条は,道路上において私権を行使することはできないとし,同法32条1項は,道路に広告塔その他これに類する工作物等を設け,継続して道路を使用しようとする場合においては,道路管理者の許可を受けなければならないと定めている。その上で,同法71条1項は,道路上に許可なく工作物を設置した者に対して監督処分をすることができる旨を規定している。そうすると,甲市は,Yらが本件陳列行為をしていることが同法32条1項に違反し,前記監督処分をすることができるにもかかわらず,これを行使しないのであるから,甲市がこれを発令しないことは,違法である。したがって,Aは,甲市がその財産管理を怠る事実が違法であることの確認を求める請求をすることができる。
 また,前記の道路法32条1項の規定にの併せ,同法39条1項は,道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収することができる旨を定めており,この規定に基づく占用料は,都道府県道に係るものにあっては道路管理者である都道府県の収入となる(道路法施行令19条の4第1項)。そうすると,道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから,道路が権原なく占有された場合には,道路管理者は,占有者に対し,占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得する(※1)。したがって,Aは,甲市市長はYらに対し,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有していることから,これを行使するように求める請求をすることができる。

以 上


(※1)「道路法32条1項は,道路に広告塔その他これに類する工作物等を設け,継続して道路を使用しようとする場合においては,道路管理者の許可を受けなければならないと定めている。そして,同法39条1項は,道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収することができる旨を定めており,この規定に基づく占用料は,都道府県道に係るものにあっては道路管理者である都道府県の収入となる(道路法施行令19条の4第1項)。このように,道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから,道路が権原なく占有された場合には,道路管理者は,占有者に対し,占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得するものというべきである。」最判平成16年4月23日民集58巻4号892頁


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第2部
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2019-03-04(Mon)

【事例研究行政法】第2部問題10

さて,明日は模試です。

つらいですね。

今日はとにかく早く寝ることを心がけたいと思います。

その前に第2部問題10です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 四肢機能に障害を有するAは,甲県乙市の私立幼稚園に通っていた5歳の時に甲県から身体障害者手帳の交付を受けた。その後,小学校入学に際してはAの保護者Bが特別支援学校ではなく小学校へのAの入学を強く希望したことから,乙市教育委員会は乙市立S小学校の入学期日を通知し,AはS小学校に入学した。S小学校ではAの入学に際して3階建ての校舎にスロープや多目的トイレ等が設置されたほか,乙市の予算て介助員2名が雇用され,登下校や構内移動の際に車椅子を利用するAの介助にあたっていた。
 A,BはS小学校卒業にあたり,乙市教育委員会から卒業後の進路について意見を聴かれ,乙市の唯一の市立中学校であるT中学校への入学を希望する旨を伝えたが,乙市教育委員会からは,T中学校の校舎は4階建てで階段が多くエレベーターやスロープも設置されておらず,また,1年生の教室は4階になるが障害者用トイレは1階にしかないなどの事情から,A本人もしくは介助員の安全を確保することが難しいとの説明がなされた。
 小学校卒業が近づき,Aの同級生の保護者らには乙市教育委員会からT中学校の入学期日が通知されたが,Bには何ら通知がされず,しばらく経って,甲県教育委員会からBに対して肢体障害のある者等を対象とする県立U特別支援学校への就学通知書が送付され,同校の入学期日が通知された。A,BはU特別支援学校への入学には納得がいかず,Aが4月から同級生らとともにT中学校に通うことを強く希望している。

〔設問〕
1.Aが4月からT中学校に通うために,A,Bはどのような法的手段を利用すべきか。法的手段の相手方,利用が認められるための要件を含めて説明しなさい。
2.AのT中学校入学が認められるためにはどのような主張が考えられるか,A,Bの立場に立ったうえで説明しなさい。

【資料】略


まず,法律の仕組みを読み解く段階ですげえハードです。

司法試験でもこんなに難しいのは出ないんじゃないですか?

知らんけど。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Xは,乙市教育委員会の認定特別支援学校就学者の認定(以下「本件認定」という。),甲県教育委員会の特別支援学校入学の通知(以下「本件特別支援学校入学通知」という。)及び乙市教育委員会の中学校入学の通知(以下「本件中学校入学通知」という。)が,それぞれ抗告訴訟の対象となる「処分」に該当するとの主張を行う。その上で,本件認定及び本件特別支援学校入学通知についてはそれらの取消訴訟(行訴法3条2項)を,本件中学校入学通知についてはその義務付け訴訟(同法3条6項1号)を,それぞれ提起することが考えられる。
 2⑴ まず本件認定の取消訴訟の訴訟要件について検討する。
   ア 「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件認定は,乙市教育委員会が,学校教育法施行令(以下「施行令」という。)5条1項に基づいて,その優越的地位に立って一方的に行うものであるから,公権力の主体たる公共団体が行う行為であって,法律上認められているものである。
 本件認定は,乙市教育委員会がAに対して本件特別支援学校入学通知をするか本件中学校入学通知をするかの選択のため,Aが認定特別支援学校就学者であることの認定を内部的に行うものであって,これ自体が外部に表示されるわけではないから,国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものではないようにも思える。しかし,Aが進学すべき学校が公立中学校か特別支援学校かを実質的に決定しているのは本件認定にほかならないうえ,その決定にあたっては保護者の意見を聴くことが要求されるなど(施行令18条の2),事前手続が定められている。そうすると,本件認定は,乙市教育委員会の内部的行為にとどまるものではなく,直接子ども及び保護者に向けられた行為であるということができる。したがって,本件認定は,Aが進学先を自由に決定することができなくなる点において,直接国民の権利義務の範囲を確定するものである。
 以上から,本件認定は,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。
   イ Aは,本件認定の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)にあたり,原告適格を有する。
   ウ 本件認定は,乙市に属する乙市教育委員会が行ったものであるから,乙市が被告となる(同法11条1項1号)。
   エ 出訴期間は徒過していないものと考えられる。
   オ よって,本件認定の取消訴訟は,その訴訟要件を満たし,適法にこれを提起することができる。
  ⑵ 次に,本件特別支援学校入学通知の取消訴訟の訴訟要件について検討する。
   ア 学校教育法(以下「法」という。)138条は,同法17条1項又は2項の義務の履行に関する処分で,同条3項の政令で定めるものについて,行手法の「不利益処分」に係る規定を適用しないものとしている。当該政令として,施行令22条の2は,施行令5条1項並びに14条1項の規定による処分を掲げており,本件特別支援学校入学通知は施行令14条1項に掲げる処分に該当する。そうすると,法及び施行令は,本件特別支援学校入学通知が行手法上の「不利益処分」であることを前提とするものであると認められる。
 したがって,本件特別支援学校入学通知は,当然に,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。
   イ Aは,本件特別支援学校入学通知の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」として原告適格を有する。
   ウ 本件特別支援学校入学通知は,甲県に属する甲県教育委員会が行ったものであるから,甲県が被告となる。
   エ 出訴期間は徒過していないものと考えられる。
   オ よって,本件特別支援学校入学通知の取消訴訟は,その訴訟要件を満たし,適法にこれを提起することができる。
  ⑶ さらに,本件中学校入学通知の義務付け訴訟の訴訟要件について検討する。
   ア 前記の法及び施行令の仕組みからすると,施行令22条の2がいう施行令5条1項の処分とは,本件認定ではなく,本件中学校入学通知を指すものと解釈することができる。したがって,法及び施行令は,本件中学校入学通知が,行手法上の「不利益処分」であることを前提とするものであると認められる。
 したがって,本件中学校入学通知は,当然に,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。
 また,本件中学校入学通知は,根拠法条が特定され,裁判所において判断可能な程度に特定されているから,「一定の処分」(行訴法3条6項1号)であるということができる。
   イ 本件中学校入学通知は,乙市内の「就学予定者」に該当するか等の判断を経た上で,就学先の学校入学の期日を通知するのであるから,入学希望者が就学希望先の中学校に対して「申請」等をするものではなく,「次号に掲げる場合」(同号かっこ書)にはあたらない。
   ウ 「重大な損害を生ずるおそれ」の有無について検討すると,Aが本件中学校入学通知がされないことにより被る損害は,学校教育を受ける権利という憲法上の権利であるところ(憲法26条1項),教育はその者の発達に応じて適切な時期に行われるべきものであり,時機を逸した場合に損なわれた権利を償うことは困難である。法は,中学校と特別支援学校としで異なる教育が行われることを予定しており,本件中学校入学通知がされないことにより自らに適した教育が行われないとすれば,Aはその権利を償うことが困難となるから,「損害の回復の困難の程度」は高いというべきであり,「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。
   エ また,本件中学校入学通知がされるか否かにかかわらず,T中学校の授業は4月の学期初めから始まるのであり,本件中学校入学通知によってT中学校へ通うことが認められない限りは,その間の授業を受けることができなくなるのであるから,これを義務付けることしか「適当な方法がない」というべきである。
   オ Aは,本件中学校入学通知の名あて人となるべき者であるから,「法律上の利益を有する者」にあたり,原告適格を有する(行訴法37条の2第3項)。
   カ 本件中学校入学通知は,乙市に属する乙市教育委員会が行うものとされているから,乙市が被告となる(同法38条1項,11条1項1号)。
   キ よって,本件中学校入学通知の義務付け訴訟は,その訴訟要件を満たし,適法にこれを提起することができる。
 3 続いて,仮の救済について検討すると,Aとしては,4月から始まるT中学校での授業に出席することができなければ意味がないから,本件中学校入学通知の仮の義務付け(行訴法37条の5第1項)の申立てをする。
  ⑴ Aは,前記のように,本件中学校入学通知の義務付け訴訟を提起することができるから,「義務付けの訴えの提起があった場合」にあたる。
  ⑵ 前記のように,学校教育では,入学が認められなければ教育を受ける貴重な機会が毎日奪われることとなるから,「償うことのできない損害」が生じるものと認められる。
  ⑶ 入学時期が間近に迫っていることからすると,「緊急の必要」があると認められる。
  ⑷ 後記のように,「本案について理由があるとみえるとき」にもあたる。
  ⑸ よって,本件中学校入学通知の仮の義務付けは,その申立要件を満たし,これを適法に申し立てることができる。
第2 設問2
 1 A及びBは,本件認定は,乙市教育委員会の裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであり違法であるとの主張を行う。
 2⑴ 認定特別支援学校就学者の認定は,施行令5条1項に掲げる事由を踏まえた上で,諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の裁量にゆだねられている。
  ⑵ もっとも,裁量権の行使であっても,その基礎とされた事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる(行訴法30条参照)。
 障害者基本法は,障害を理由とした差別を禁止し(4条1項),社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないとし(同条2項),そのうえで,教育につき可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮することを国及び地方公共団体に求め(16条1項),児童及び生徒,その保護者の意向を可能な限り尊重すべきこと,人材の確保や施設の整備などの環境の整備に努めることを求めている(同条2項以下)。加えて,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律7条及び高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律16条においても同趣旨の定めがされている。
 そうすると,施行令の定めは,以上の法律の定めを踏まえて解釈されなければならないのであり,児童及び生徒,その保護者が小学校若しくは中学校への就学を希望する場合には,そのための人材の確保,施設の整備等の環境の整備に伴う負担が過重でない限り,教育委員会は小学校若しくは中学校への就学を認めなければならないとの解釈がされるべきである。したがって,
 これを本件についてみると,A及びBは,甲県立U特別支援学校への就学ではなく,T中学校への就学を希望している。そこで,乙市としては,そのための負担が過重でない限りAのT中学校への就学を認めなければならない。この点,乙市教育委員会は,Aが4階建ての後者を移動するのには,介助員を同伴させても危険であることを指摘するが,このような危険は1年生の教室を1階に移動させれば解消されるのであり,教室の移動自体は,学期替わりの際に,人数調整のための机や椅子の移動を行うだけで完了するのであるから,特段乙市の負担となるものではない。また,介助員を同伴させることについては,地方財政措置がとられているため,財政面でも乙市の負担となるものではない。さらに,Aは,同様の措置を小学校においてもとられていた間,特段の支障を生じていなかったのであるから,別途乙市にとって負担となるべき事情は存しないというべきである。したがって,乙市教育委員会にとって過重の負担をかけるものではないから,乙市教育委員会は,A及びBをT中学校に就学させることを認めなければならない。それにもかかわらず,乙市教育委員会は,これらの事情を考慮することなく,Aを認認定特別支援学校就学生に認定しているのであるから,その基礎とされた事実に対する評価が明らかに合理性を欠き,また判断過程において考慮すべきことを考慮していないといえ,その内容が社会通念に照らし著しく合理性を欠くというべきである。
 3 したがって,本件認定は,乙市教育委員会が,その裁量権の範囲を逸脱・濫用して行ったものであるから,違法である。

以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-03-03(Sun)

【事例研究行政法】第2部問題9

ついに模試が明後日に迫っております。

もうお分かりの通り,模試までに事例研究の第2部を終わらせることは達成できません。

まぁまだ明日1日あるから分かんないですけどね。

もしかしたらものすごい勢いで残りの8問を

終わらすことができるかもしれなできません

現実から目を背けるな


司法試験までになんとかします。

ところで今回は第2部問題9です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ 法科大学院生S1は,その子S2について乙市立A保育所での保育を認められてきたところ,修了の近い2011年1月,下記の通知の理由と同趣旨の説明を乙市の担当者から受けたうえ,児童福祉法33条の4に基づいて意見を聴取された。その際,S1は,法科大学院生の修了生に特有の事情,すなわち,司法試験合格のためには修了後も在学時に劣らず日々長時間の勉学を続ける必要があることを,十分に主張したつもりであった。しかし,乙市の担当者は,同市の保育所入所基準要綱が,「乙市保育の実施に関する条例」2条7号に関し,「保護者が現に求職活動または起業準備を行っている場合や,学校教育法にいう学校または職業訓練校等に在籍し常に通学している場合には本号に該当する」と定めていることを重視し,同年2月末に至り,「あなたは,来月末に法科大学院を修了されますので,以後は通学し出席すべき学校がなく,乙市保育の実施に関する条例2条7号に該当しなくなります」という理由を付した書面により,3月末日をもって保育の実施を解除する,とS1に通知した。しかし,S1は,司法試験のために,修了後も引き続き大学院のキャレルと図書館等を在学時と同様に使用できる研修生となる予定であり,4歳児のS2に関し,4月以降もA保育所における保育を必要としている。

〔設問1〕
1.S1は,保育の実施の解除について訴えを提起する場合,誰を被告として,どのような訴訟を提起すべきか。なお,仮の救済について触れる必要はない。
2.S1は,上記の訴訟において,どのような違法事由を主張すべきか。

Ⅱ 乙市は,保育所に入所する児童数の増加とコストダウンの要請に応えるため,2012年9月3日,乙市保育所条例2条1項に基づき,社会福祉法人Bを乙市立A保育所の指定管理者として指定した(以下,この指定を「本件指定」という。指定管理者の精度については,自治244条の2第3項以下を参照)。BによりA保育所が管理される指定期間は,Bの職員が乙市職員による保育の実施に参加する研修を含む,2012年度末3ヶ月間の引継ぎ作業を経た後の,2013年4月1日から向こう5年間とされている。しかし,A保育所で子どもの保育の実施を受けてきた保護者P1~P10(以下「Pら」という)は,慣れ親しんだ市職員の保育士らに代わり,比較的経験の浅いBの保育士らが引き継ぐこと,近隣の市でBが指定管理者となった保育所における子どもの傷害事故の報道があったこと等の事情から,保育環境の悪化が起こることを強く懸念している。Pらは,2012年9月中旬の時点において,行政事件訴訟を提起して,本件指定の違法性を主張・立証したいと考えている。
 なお,Pらは,児童福祉法24条2項によりA保育所を希望する申込書を提出し,保育所入所承諾通知書を受領していた。その通知書の「保育の実施期間」の欄には,その子らが小学校に入学する前日まで(2015年3月末日まで)の期間が記載されている。

〔設問2〕
 Pらは,2013年4月1日からのBによるA保育所運営をやめさせ,従前どおり乙市に直接運営させるためには,誰を被告として,どのような素子用を提起すべきか。あなたがPらの依頼を受けた弁護士であるとして,Pらがその訴訟に関し原告適格を有する理由を付して答えなさい。なお,本案や仮の救済の問題について触れる必要はない。

【資料】略


もう難しい問題は嫌だ!!!!!!!!!!!!

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
  ⑴ S1は,乙市福祉事務所長が行った保育の実施の解除(以下「本件解除」という。)について,取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
  ⑵ア 「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件解除の法的性質が契約の解除にすぎない場合には,対等当事者間における一方的な意思表示となるから,公権力性が欠けることとなり,「処分」にはあたらなくなる。しかし,本件解除は児童福祉法(以下「法」という。)33条の4に基づいてされるものであるところ,法33条の5は,保育の実施の解除について行手法第3章の規定を適用しないこととしている。当該解除の法的性質が契約の解除であれば,そもそも行手法の適用はないことからすると,あえて本規定を置いていることは,当該解除が「不利益処分」(行手法2条4号本文)であることを前提としているものと考えられる。また,法56条10項は,保育費用の強制徴収について規定しており,単なる契約の債務不履行責任の追及にとどまらず,強制的な徴収をすることができるとする点で,行政庁の優越的地位を肯定しているものと考えられる。また,実施規則第4号様式には,備考欄に,解除決定については行審法による審査請求の教示(同法82条1項参照)が記載されているから,当該解除が処分であることを前提としている。これらの規定からすれば,本件解除にあたっては,乙市福祉事務所長は,対等当事者にとどまらず優越的地位に立って一方的に意思表示をするものであるから,公権力の主体たる公共団体が行う行為であって,法律上認められているものである。
 また,本件解除がされると,S1は,保育の実施を受けることができなくなり,その権利を剝奪される効果を受けることとなる。したがって,本件解除は,直接国民の権利義務を形成するものである。
 したがって,本件解除は「処分」にあたる。
   イ S1は,本件解除の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)にあたり,原告適格を有する。
   ウ 本件解除を行ったのは,乙市に属する乙市福祉事務局長であるから,その被告適格は乙市が有する(同法11条1項1号)。
   エ 本件では,出訴期間は徒過していないものと考えられる(同法14条)。
   オ したがって,S1の提起する本件解除の取消訴訟の訴訟要件を満たす。
  ⑶ よって,S1は本件解除の取消訴訟を提起すべきである。
 2 小問2
  ⑴ S1は,本件解除は,解除事由がないにもかかわらずされたものであって,違法であるとの主張を行う。
  ⑵ 保育の実施の解除について定める法33条の4は,その文言上,解除事由が掲げられていない。そこで,法がどのような場合に当該解除を許容することを想定しているかについて検討すると,法24条1項及び39条1項は,「保育に欠ける」に乳幼児の保育を保育所において日々継続することを予定している。そうすると,法は,当該乳幼児が「保育に欠ける」状態ではなくなったときには,保育の実施を解除することができることを想定しているものと考えられる。
 次に,「保育に欠ける」の意義について検討すると,乙市保育の実施に関する条例(以下「実施条例」という。)2条は「保育に欠ける」の類型を列挙している。その上で,乙市保育の実施に関する条例施行規則(以下「実施規則」という。)4条は,実施条例2条列挙事由に該当しなくなったときには保育の実施を解除するものとしている。
 以上からすると,本件解除の解除事由の存否は,S1について実施条例2条列挙事由が存在するか否かによって判断される。
  ⑶ そこで,この点について検討すると,S1は同条1号ないし6号の事由には該当しないから,同条7号の該当性を主張することとなる。ここで同条1号にいう「常態」の意義が明らかではなく問題となるが,法24条及び39条が乳幼児を対象としており,乳幼児とは小学校就学の始期に達するまでの者をいうところ(4条1号,2号),これらの者はその生活上特に大人による保育を必要とすることから,その代替的な手当てを与える趣旨であると考えられる。したがって,それを踏まえた実施条例2条1号にいう「常態」とは,乳幼児が必要とする最低限の保育すら与えられない程度に労働をする場合をいうと考えられ,少なくとも,定職に就きフルタイムで働いている場合には,これにあたる。
 法科大学院生は,司法試験の合格を一つの目的としており,その目的の達成のためには,フルタイムの労働者の平均的労働時間を超えてでも勉学時間を確保しなければならない。そうすると,法科大学院生は,定職に就きフルタイムで働いている者に匹敵する程度に勉学に集中しなければならないため,それと同等に乳幼児に対する保育を与えることができない。そして,このことは,法科大学院を修了し,研修生となった後であっても,司法試験合格までは状況が変わらないのであるから,法科大学院修了後にも同様に妥当するものである。法科大学院生は,実施条例2条1号に「類する状態にある」ということができる。
 したがって,法科大学院生であるS1は,その修了後も,研修生である間は実施条例2条7号に該当する者であるから,未だ「保育に欠ける」者であるということができる。
  ⑷ よって,本件解除は,解除事由がないにも関わらずされたものであって,違法である。
第2 設問2
 1 Pらは,本件指定について,取消訴訟を提起することが考えられる。
 2⑴ 本件指定は,地自法244条の2第3項及びこれを具体化した乙市保育所条例(以下「保育所条例」という。)3条に基づいてされたものであるところ,「法人その他の団体」に対して「公の施設の管理」を行う諸権限を与える行為であり,当該権限の中には住民等に対する行政処分である利用許可の権限が含まれているのであるから,単純な対等当事者間における契約としての権限委託とは性質を異にし,乙市市長の優越的地位に基づいて権限を委託したものであって,公権力の主体たる公共団体が行う行為であって,法律上認められるものである。
 本件指定により,Bは指定管理者としての地位を有し,住民等に対する行政処分である利用許可を行うことができるようになるから,直接国民の権利義務を形成するものである。
 したがって,本件指定は,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。
  ⑵ Pらは,本件指定の名あて人ではないため,「法律上の利益を有する者」に該当するか問題となる。
 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,これを個々人の個別的利益としても保護する趣旨であると考えられる場合には,このような利益も法律上保護された利益にあたる。
 これを本件指定についてみると,指定管理者の指定に関する一般的根拠規定である地自法244条の2第3項は,「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」との要件を定めており,地自法244条1項ないし3項にいう住民一般の利用機会を保護する目的を指すものと考えられる。次に前記要件を具体化した保育所条例3条2号には,「管理経費の縮減」が掲げられてはいるものの,その一方で「保育園の効用を最大限に発揮する」ことをも要請しており,前記地自法の利用者保護をさらに強調する趣旨であると考えられる。また,法24条2項及び3項は,入所する保育所の選択について保護者の希望を尊重する趣旨であると考えられ,実施規則2条1項にいう「第1号様式」の記入欄様式も同様の趣旨に出たものである。これらの規定に照らすと,本件指定の要件規定は,指定管理者による運営に関わり,保育所利用者一般の具体的利益を少なくとも公益的見地から保護する趣旨であるとみることができる。
 保育所利用者は,自らの選択に基づき継続的に安定した内容の保育を受ける利益を有するところ,指定管理者の指定により,園長その他の職員が総入れ替えになれば,保育所の根本的な変更が加えられ,保育所利用者が当初選択した保育所とは実質的には異なるものとなってしまうことから,保育所利用者の保護が図られないこととなる。そうすると,前記利益は,前記の指定の要件規定と関連する法令,条例,規則により,個別的にも保護されているというべきである。したがって,前記利益は法律上保護された利益であるということができるため,自らの選択に基づいて当該保育所を利用する者は,指定管理者の指定の取消訴訟を提起する「法律上の利益を有する者」にあたる。
 Pらは,自らの選択に基づいてA保育所を選択した者であるから,本件指定の取消訴訟について「法律上の利益を有する者」にあたり,原告適格を有する。
  ⑶ 本件指定を行ったのは乙市市長であるから,乙市が被告適格を有する。
  ⑷ 出訴期間は徒過していないものと考えられる。
  ⑸ Pらとその子どもは,他の市町村に転居するなどの事情が生じない限り,保育所入所承諾通知書に記載の保育実施期間が終わるまで,訴えの利益を有する。
  ⑹ したがって,本件指定の取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
 3 よって,Pらは,本件指定の取消訴訟を提起すべきである。

以 上


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
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2019-03-03(Sun)

【事例研究行政法】第2部問題8

司法試験まで残りわずかとなってまいりましたが,

先日,某事務所の司法試験壮行会というものに参加させていただきました。

やはり,ここ数日は(比較的)勉強詰めになっていたような気もするので,

息抜きの機会を頂けてとてもよかったです。

特にお料理がとてもおいしかったですね!!!

このような点でも予備試験に受かっておいてよかったなと思うのであります。

ところで今日は第2部問題8です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,弁護士Cから指示を受けた弁護士Dの立場に立って,以下の設問に答えなさい。

 A社は,道路運送法に基づく許可を受けて,甲市域交通圏を営業区域としてタクシー事業を営んでいる。
 甲市域交通圏を管轄する乙地方運輸局長Bは,甲市域交通圏における自動認可運賃(以下「本件自動認可運賃」という)を設定・工事していた(自動認可運賃制度については,【資料1】を参照)。その内容は,例えば中型車の初乗運賃(1.6km)について,上限を730円,下限を670円(初乗距離を1.2kmとする場合は,上限620円,下限570円)とするものであった。A社は,2009年の開業以来,本件自動認可運賃を下回る運賃で認可を受けて,タクシー事業を行ってきたところ,2014年1月8日付けで,同月14日から2015年1月13日までの間,運賃の設定(例えば中型車の初乗運賃〔1.2km〕が520円)につき認可を受けた(以下「本件認可」という)。
 国土交通大臣は,2014年1月24日,甲市域交通圏を「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(以下「特措法」という)3条の2所定の準特定地域に指定した。同日,特措法16条・16条の4および17条の3の規定に基づく国土交通大臣の権限を委任されているBは,以下の内容の「運賃変更命令等に関する公示」(以下「本件処分基準」という)を行った。すなわち,①事業者が特措法16条の4第1項に基づき届け出た運賃が同法16条1項に基づき指定された公定幅運賃の範囲内にない場合,当該事業者に対し,公定幅運賃に適合する運賃を届け出るよう指導を行う(状況に応じて複数回行う)。②上記指導後,正当な理由なく公定幅運賃の範囲内の運賃に設定した運賃変更届出がされない場合には,15日以内に運賃変更届出を行わなければ運賃変更命令の対象となることを勧告する。③上記勧告後15日を経過しても運賃変更届出を行わない場合には,運賃変更命令を発動することを前提に行手法に基づき当該事業者に対し弁明書の提出の通知を行ったうえで,運賃変更届出書の提出期限として15日程度の期限を付して,運賃変更命令を発令する。④上記期限までに運賃変更届出書を提出しない場合には,再度,運賃変更届出書の提出期限として15日程度の期限を付して,運賃変更命令を発令する。⑤1回目の運賃変更命令に違反した場合,60日車(「日車」とは,日数と自動車の台数との積をいう)の自動車の使用停止処分を行う。⑥再度の運賃変更命令に違反した場合,事業認可取消処分を行う。
 Bは,同年2月28日,特措法16条1項に基づき,適用日を同年4月1日として,甲市域交通圏におけるタクシー運賃の範囲(以下「本件公定幅運賃」という)を指定し,公示した(以下「本件指定」という)。本件公定幅運賃は,本件自動認可運賃とほぼ同じ金額(消費税増税分のみ上乗せ)になっていた。A社は,同年3月28日,特措法16条の4第1項に基づき,本件認可による運賃と同一の金額をBに届け出た(以下「本件届出」という)。同年4月3日以降,BはA社に対し,電話等により,運賃を本件公定幅運賃の範囲内に変更するよう複数回の行政指導を行ったが,A社は,本件公定幅運賃は著しく不合理であると考えており,指導に従わなかった。A社は,このままではBから様々な不利益処分を受けるおそれがあるのではないかと考え,同車の社員は同月10日,弁護士Cに相談した。

〔設問〕
1.A社がBから不利益処分を受けることを予防し,本件届出に係る運賃によって営業を続けるためには,どのような訴訟を提起し,どのような仮の救済を申し立てるべきか。考えられる手段を複数挙げ,それらが訴訟要件・申立要件を満たすか否かを検討しなさい。
2.A社は,本件指定,運賃変更命令,自動車の使用停止処分および事業許可取消処分の違法事由として,どのような主張をすることが考えられるか。想定されるBの主張も踏まえて,論じなさい。


もうお馴染みの訴訟類型と訴訟要件の検討,そして本案で裁量の検討という流れです。

大枠の流れは特に変わったことはないと思います。

ただ,最判平成24年の国歌斉唱義務の判例,

あれをちゃんと知っているか知っていないかで,

答案の書きやすさはだいぶ違うんだろうと思います。

僕もとてもあやふやでしたので,

この機会に判例を見直すことができてよかったです。

あと,本案のところで憲法適合的解釈とか言い出した時には,

呆然としました。

もうがっつり憲法ですよね……

≪答案≫
第1 設問1
 1 まずA社は,本件指定の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起し,併せて本件指定の効力の執行停止(同法25条2項)を申し立てることが考えられる。
 「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件指定は,国土交通大臣が,特措法16条1項に基づいて,その優越的地位に立って一方的に行う行為であるから,公権力の主体たる国が行う行為であって,法律上認められているものである。本件指定は,特措法16条1項に基づきされるものであり,本件指定が公表されてその効力を生ずると,本件指定に係る地域においては,指定された運賃の範囲内で運賃を定めて届けてなければならないことになるから(同法16条の4第1項,2項),本件指定が当該地域内のタクシー事業者に特措法上新たな制約を課し,その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できない。しかし,かかる効果は,あたかも新たに上記の制約を課す法令が制定された場合におけるのと同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず,このような効果を生ずるということだけから直ちに当該地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったということはできない。したがって,本件指定は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないため,「処分」にはあたらない(※1)
 2⑴ 次にA社は,Bがする運賃変更命令,自動車使用停止処分及び事業認可取消処分(以下「運賃変更命令等」という。)のそれぞれにつき,差止訴訟(行訴法3条7項)を提起し,併せて仮の差止め(同法37条の5第2項)の申立てをすることが考えられる。
  ⑵ア 運賃変更命令等は,いずれも抗告訴訟の対象となる「処分」であって,裁判所が判断可能な程度に特定されているということができるから,「一定の処分」にあたる。
   イ 運賃変更命令等がされる蓋然性について検討すると,BがA社に対してしようとする処分は,本件処分基準によれば,事業者の届出運賃が公定幅運賃の範囲内にない場合,①行政指導,②勧告,③運賃変更命令,④再度の運賃変更命令,⑤運賃変更命令違反に対する60日車の自動車使用停止処分,⑥再度の運賃変更命令違反に対する事業認可取消処分となっている。本件指定は2014年2月28日に,適用日を同年4月1日としてされたものであって,A社がこれに従わないことを理由とするBによる運賃変更命令等は,適用後初めて行われるものであるから,従来の処分の程度が定まっていない事例である。しかし,②③④については,それぞれ15日程度の期限が付されることから,15日程度で違反状態が生じ,次の処分手続きに移行することとなる。また③④⑤については弁明の機会の付与(行手法13条1項2号),⑥については聴聞手続(同項1号イ)をとらなければならないが,比較的短期間で次の処分が課されることとなっている。そして,本件処分基準の文言上,違反事実と一定期間の経過のみを基準として処分が行うこととされており,Bは本件公定幅運賃の適用日の直後からA社に対し繰り返し指導を行い,近日中に勧告を行う旨を告げるなど,本件処分基準を積極的に適用する姿勢を見せている。他方で,A社は,本件公定幅運賃が著しく不合理であると考えており,運賃変更命令が発せられても従う可能性が低いことからすると,A社に対する運賃変更命令等がされる可能性をうかがわせる事情が存するということができる。したがって,運賃変更命令等がされる蓋然性は認められる(※2)
   ウ 「重大な損害を生ずるおそれ」とは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡との調和から,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する(※3)
 これを本件についてみると,前記のとおり,本件処分基準に従うと,運賃変更命令の発令から同命令の違反状態が生じるまでの期間が15日と短く,同期間をもって同命令に違反したことを理由としてそれに引き続く自動車使用停止処分と事業許可取消処分がされることとなる。また,運賃変更命令に違反して運賃を収受した場合には,刑事罰が科されることが規定されている(特措法20条の3第3号)。そうすると,短期間のうちに,本件処分基準に従って不利益処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況にあるということができる。また,A社のタクシー事業の遂行が相当期間禁止されれば,事業回復は困難となり,その期間が伸びるほど困難度は増し,不利益処分及び刑事罰を受けることによるA社に対する社会的信用の失墜も生じる。そうすると,一連の累次の処分がされることによりA社に生ずる損害は,処分された後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえず,処分がされる前に差止を命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができる。したがって,運賃変更命令等の差止訴訟については「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。(※4)
   エ 前記のように運賃変更命令等は,その取消訴訟等及び執行停止を求めただけでは容易な救済を行うことが困難であることからすると,補充性の要件(行訴法37条の4第1項ただし書)を欠くものではない。以上の外,運賃変更命令の予防を目的とする事前救済の争訟方法として他に適当な方法があるとは考えられないから,運賃変更命令等の差止訴訟は,補充性の要件を満たすものということができる。(※5)
   オ なお,本件指定の影響を受けるA社が運賃変更命令等の差止めを求める訴えである以上,A社にその差止めを求める法律上の利益(同法37条の4第3項)が認められることは明らかである。
   カ 以上によれば,国に対する(行訴法38条1項,11条1項1号,特措法18条)運賃変更命令等の差止訴訟は,適法というべきである。
  ⑶ア 前記のように,A社は運賃変更命令等の差止訴訟を適法に提起することができるから,「差止めの訴えの提起があつた場合」である。
   イ 前記のように,運賃変更命令等により,A社に事業回復が困難となり,社会的信用も失墜するような損害が生じることから,「償うことのできない損害」が生じる。
   ウ 前記のように,運賃変更命令等は,短期間のうちに反復継続的かつ累積加重的にされる危険が生じているから,前記損害を「避けるため緊急の必要があ」る。
   エ 後記のように,運賃変更命令等の差止訴訟は,「本案について理由があるみえる」ということができる。
   オ 本件において,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」とは認められない。
   カ 以上によれば,運賃変更命令等の仮の差止めの申立てを適法にすることができる。
 3⑴ またA社は,本件届出に係る運賃によって適法に営業を行い得る地位を有することの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起し,併せて,同地位を仮に定める仮処分(民保法23条2項)を申し立てることが考えられる。
  ⑵ 確認訴訟においては,訴訟要件として,確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である。①A社は,既に届け出た本件届出に係る運賃によって現在適法に営業を行い得る地位を有することの確認を求めているから,現在の法律関係を対象とするものであり,確認対象として適切である。②本件確認訴訟は,将来の運賃変更命令等の予防を主たる目的とする訴えではなく,本件届出に係る運賃によって営業が行えないことによる損害の発生・拡大の予防を主たる目的とする訴えと捉えることができるから,法定抗告訴訟を提起することができず,方法選択として適切である(※6)。③A社は,特に近距離の運賃を低く抑えることで,従来あまりタクシーを利用しなかった顧客を開拓して業績を伸ばしており,従前の運賃を維持することは経営戦略上不可欠であるところ,本件指定により,公定幅運賃内への運賃値上げを義務付けられ(特措法16条の4第2項),連日行政指導されたうえ,近日中に本件処分基準に従った勧告の手続に移行することを通告されて,従前の運賃で営業するというA社の法的地位に現実的かつ具体的な危険が及んでいる。A社が本件指定による公定幅運賃内への運賃値上げを余儀なくされ,その状態が継続すると,A社は経営戦略の核心を奪われ,これまで開拓してきた顧客を失うという損害が発生し拡大していくことにより,A社の倒産にも至りかねず,事後的な損害の回復が著しく困難になる。したがって,即時確定の利益が認められる。
 よって,本件確認訴訟は,その訴訟要件を満たし,適法に提起することができる。
  ⑶ア まず,行訴法44条は,公権力の行使に関わらない当事者訴訟には適用されないため,A社の同地位を仮に定める仮処分を認めることは,同条に反しない。
   イ 前記のとおり,A社に生ずる損害に照らせば,「著しい損害」が生じ,同仮処分を認める必要性も認められる。
   ウ よって,A社の上記地位を定める仮処分の申立ては,これを適法にすることができる。
第2 設問2
 1 本件指定の違法性について
  ⑴ A社は,本件指定は,Bに認められた裁量権の範囲を逸脱・濫用するものであり,違法であるとの主張を行う。
  ⑵ 特措法は,タクシー事業について,特定地域及び準特定地域における適正化及び活性化を推進し,地域交通の健全な発達に寄与すべきこと等の基本理念の下で(1条),標準的なタクシー事業に係る適正な原価に適正な利潤を加えた運賃を標準とし(16条2項1号),タクシー事業者間で不当競争を引き起こすこととなるおそれがないものであることとし(同項3号),国土交通大臣がタクシー事業に係る旅客運賃の範囲を指定するものとされているところ(同条1項),タクシー事業に係る旅客運賃の範囲の指定に当たっては,当該地域に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的見地から判断することが不可欠である。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられているというべきである(※7)
  ⑶ もっとも,本件指定がBの裁量権の行使としてされたことを前提として,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる(行訴法30上参照)(※8)
 自動認可運賃は,道路運送法上の認可基準に適合することが合理的に推認される一定の範囲内の運賃については,申請が出されれば自動的に認可することとした行政運用上の措置にすぎず,自動認可運賃の範囲内にない運賃であっても法令に則り個別に審査してその適否の判断がされていたのに対し,公定幅運賃は,減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争を防ぐため,公定幅の範囲内にない運賃による営業を,行政処分やその違反に対する罰則によって厳しく禁じるものである。しかしながら,本件指定は,このような両者の趣旨や法的位置づけの差異を踏まえておらず,自動認可運賃の下限を下回る運賃が減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争の原因になるかどうかを考慮することなく,自動認可運賃の範囲を公定幅運賃の範囲にスライドさせたものであり,判断要素の選択や判断過程が合理性を欠く。その結果,Bの判断は,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合にあたるから,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであって,違法である。
 2 運賃変更命令等の違法性について
  ⑴ A社は,本件処分基準は,その内容が合理性を欠き,これに基づいてする運賃変更命令等は違法であるとの主張を行う。
 本件処分基準は,それ自体に国民に対する法的拘束力を認め得るものではないため(※9),行政規則としての性質を有する裁量基準である。裁量基準に不合理な点があり,行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められ,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる(※10)
  ⑵ 公定幅運賃制度は,減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争を防ぐ趣旨とであること,及び同制度がタクシー事業者の営業の自由と抵触するおそれがあるものであり,同制度を憲法適合的に解釈する必要があることからすると,公定幅運賃の下限を下回る届出をした事業者に対して,個別の事情を考慮せずに一律に運賃変更命令を発するのではなく,当該届出に係る運賃が減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争の原因となるかどうかを個別的に判断したうえで,運賃変更命令を発するか否かを決定すべきである。そうすると,本件処分基準が公定幅運賃の下限を下回る届出をした事業者に対して一律かつ機械的に運賃変更命令を発するものとしている点で,裁量権行使の基準として合理性を欠く。
 そして,A社は,特に近距離の運賃を低く襲えることで,従来あまりタクシーを利用しなかった者を開拓しているのであり,限られた需要を同業他社から奪うための運賃値下げ競争とは性質が異なる。したがって,このような事情を考慮していない点からすると,Bは専ら前記のように合理性を欠く本件処分基準に依拠して運賃変更命令等の判断をしていると認められるから,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められる。
  ⑶ よって,Bがする運賃変更命令等は,裁量権の範囲を逸脱・濫用するものであって,違法である。

以 上


(※1)都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法八条一項一号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法四八条七項、五二条一項三号、五三条一項二号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法六条四項、五項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があつたものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もつとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとつても格別の不都合は生じないというべきである。」最判昭和57年4月22日民集36巻4号705頁
(※2)「本件差止めの訴えに係る請求は,本件職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求めるものであり,具体的には,免職,停職,減給又は戒告の各処分の差止めを求める請求を内容とするものである。そして,本件では,第1の2(3)ウのとおり,本件通達の発出後,都立学校の教職員が本件職務命令に違反した場合の都教委の懲戒処分の内容は,おおむね,1回目は戒告,2回目及び3回目は減給,4回目以降は停職となっており,過去に他の懲戒処分歴のある教職員に対してはより重い処分量定がされているが,免職処分はされていないというのであり,従来の処分の程度を超えて更に重い処分量定がされる可能性をうかがわせる事情は存しない以上,都立学校の教職員について本件通達を踏まえた本件職務命令の違反に対しては,免職処分以外の懲戒処分(停職,減給又は戒告の各処分)がされる蓋然性があると認められる一方で,免職処分がされる蓋然性があるとは認められない。そうすると,本件差止めの訴えのうち免職処分の差止めを求める訴えは,当該処分がされる蓋然性を欠き,不適法というべきである。」最判平成24年2月9日民集66巻2号183頁
(※3)「行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から,そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。したがって,差止めの訴えの訴訟要件としての上記『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。」前掲最判平成24年2月9日
(※4)「本件においては,前記第1の2(3)のとおり,本件通達を踏まえ,毎年度2回以上,都立学校の卒業式や入学式等の式典に際し,多数の教職員に対し本件職務命令が繰り返し発せられ,その違反に対する懲戒処分が累積し加重され,おおむね4回で(他の懲戒処分歴があれば3回以内に)停職処分に至るものとされている。このように本件通達を踏まえて懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況の下では,事案の性質等のために取消訴訟等の判決確定に至るまでに相応の期間を要している間に,毎年度2回以上の各式典を契機として上記のように懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされていくと事後的な損害の回復が著しく困難になることを考慮すると,本件通達を踏まえた本件職務命令の違反を理由として一連の累次の懲戒処分がされることにより生ずる損害は,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえず,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができ,その回復の困難の程度等に鑑み,本件差止めの訴えについては上記『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるというべきである。」前掲最判平成24年2月9日
(※5)「また,差止めの訴えの訴訟要件については,『その損害を避けるため他に適当な方法があるとき』ではないこと,すなわち補充性の要件を満たすことが必要であるとされている(行訴法37条の4第1項ただし書)。原審は,本件通達が行政処分に当たるとした上で,その取消訴訟等及び執行停止との関係で補充性の要件を欠くとして,本件差止めの訴えをいずれも却下したが,本件通達及び本件職務命令は前記1(2)のとおり行政処分に当たらないから,取消訴訟等及び執行停止の対象とはならないものであり,また,上記イにおいて説示したところによれば,本件では懲戒処分の取消訴訟等及び執行停止との関係でも補充性の要件を欠くものではないと解される。以上のほか,懲戒処分の予防を目的とする事前救済の争訟方法として他に適当な方法があるとは解されないから,本件差止めの訴えのうち免職処分以外の懲戒処分の差止めを求める訴えは,補充性の要件を満たすものということができる。」前掲最判平成24年2月9日
(※6)「本判決後に現れた最二小判平成25・1・11民集67巻1号1頁の原審(東京高判平成24・4・26民集67巻1号221頁)は,省令の規定により特定の事業を禁止されている事業者が当該規定の無効を主張して当該事業を行うことができる地位の確認を求める訴えについて,公法上の当事者訴訟(公法上の法律関係に関する確認の訴え)として,確認の利益及び法律上の争訟性が肯定され,適法であるとしており(その第1審・東京地判平成22・3・30民集67巻1号45頁も同旨),上記確認の訴えの適法性については,上告受理申立ての論旨で争われていなかったこともあり,同最二小判は判断を示していないが,事案や事柄の性質等に鑑み,当該事件における当該訴えの適法性を肯定する原審(上掲東京高判平成24・4・26)の判断が是認できるものであることを前提として当該訴えにつき本案の判断がされたものと解される。しかるところ,上記事件の原審は,上記確認の訴えにつき,当該省令の規制によって,当該事件の1審原告(控訴人)らは,当該省令の規定の適用を受けるとすると,営業活動の制限を受け,その営業活動によって得ていた利益を得ることができなくなり,継続的に損害が拡大していくこととなるから,当該訴えは,『その不利益を排除しかつ予防すること』を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,その目的に即した有効適切な争訟方法であるということができるので,当該事件においては,その確認の利益を肯定することができると判示している。なお,上記事件の原審は,これに続けて,1審原告らが当該規定の効力を争う方法としては,その規制に違反した営業活動を行うことによって課される行政処分に対する抗告訴訟を提起することが可能であるが,そのような行政処分を受けることによる『経済的,社会的不利益』を回避する必要が認められる当該事件のような事案においては,行政処分を受けない段階における公法上の法律関係に関する確認の訴えである当事者訴訟による争訟が認められるべきことになるとも判示しているが,上記の判決理由の判示や事案の内容等に照らすと,上記事件の原審は,上記確認の訴えにつき,上記のような営業損害の発生・拡大という不利益の予防を主たる目的とする訴えと捉えたものと解され,行政処分の予防を主たる目的とする訴えと捉えて適法性を肯定した事例ではなかったものとみるのが相当であろう。」最判解民事篇平成24年度(上)147頁
(※7)「都市計画法は,都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず,当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号),このような基準に従って都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている」最判平成18年11月2日民集60巻9号3249頁
(※8)「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」前掲最判平成18年11月2日
(※9)「もともと国民に対する法的拘束力を認め得るものではないため,法律のお墨付きを直接得る必要もなく制定される行政立法のことを,『行政規則』という。」曽和俊文ほか『現代行政法入門[第3版]』37頁
(※10)「原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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