【事例研究行政法】第2部問題17
12日中に終わらせたいという願望はかないませんでしたが,
まだ13日になったばかり。
人が起きてから寝るまでが1日であることからすれば,
まだ12日です。
目標達成ですありがとうございました!!!!!!!(知能指数が著しく低いコメント)
≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。
Aは,2006年7月31日,BとC(共にM国籍)の子としてM国で出生し,M国籍を有する。
Aは,2011年8月30日,B,Cと共に「短期滞在」の在留資格,「90日」の在留期間を認められて日本に入国し,日本に滞在するCの兄Dの住居に同居した。2ヶ月後,BはM国に帰国したが,AとC(以下「Aら」という)はDのもとにとどまった。さらに3ヶ月後,Dと日本人Eが婚姻したことから,Aらは,Dと共にEの居宅に同居することとなった。この間,Aらは3回にわたり在留期間更新許可を受けたが,2012年3月28日に在留期間更新不許可処分を受けた後は更新許可申請をしていない。
一方,DとEは,2012年3月17日,家庭裁判所に対し,AをDとEの普通養子とする縁組の許可を求める申立てをした。Aが6歳になるまでに普通養子縁組が成立すれば,Aは日本人の普通養子で6歳未満の者として,「定住者」の在留資格を得ることが可能であったが,Bが養子縁組に同意しなかったことから,縁組は成立しないままAは6歳となった。しかし,将来の縁組成立を前提に,Aの養育は引き続きCとD,Eが共同で行った。Aらは,2012年8月29日,入国管理局に出頭して出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)違反事実を申告した。入国警備官は2013年5月19日,Aらにつき主任審査官から収容令書の発付を受け,同月23日に同収容令書を失効するとともに,Aらを入管法24条4号ロ(不法残留)該当容疑者として入国審査官に引き渡した。入国審査官は同日,Aらに対する違反調査をし,Aらが入管法24条4号ロに該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし(入管47条3項),これに対しAらは特別審理官による口頭審理を請求した。Aらは同日仮放免(54条)を許可された。
特別審理官は,2015年1月7日,Aらに係る口頭審理をした結果,入国審査官による上記認定に誤りがない旨の判定をした(入管48条8項)。これに対し,Aらは法務大臣に対し異議の申出をしたが(入管49条1項),2015年2月5日,Aらの異議の申出は理由がない旨の裁決がなされ(入管49条3項),同月12日,裁決の通知とともに,M国を送還先とする退去強制令書の発付処分がAらに対してなされた(同法49条6項)。なお退去強制令書の執行に際しても収容がなされるが,Aらは同日仮放免を許可された。
その数日後,2014年にBとの離婚が成立したCがAの単独親権者となったことから,ようやく家庭裁判所の養子縁組許可が得られ,Cの代諾によりAとD・Eとの間で普通養子縁組が成立した。
〔設問〕
1.Aが退去強制によりM国に送還されないようにするためには,どのような法的手段によるべきか。行訴法に定められた法的手段(仮の救済の手段を含む)について,訴訟については訴訟要件,仮の救済の手段については申立の認容要件を含めて論じなさい。
2.Aが退去強制によりM国に送還されないようにするため,Aは,設問1で解答された訴訟においてどのような主張をすべきか。
【資料】(略)
あんまり処分を連続させないでほしいですよね。
混乱してしまうので。
あと,弁護士同士の会話のところに違法性の承継の話が書いてありましたけど,
解説で明示的に触れられていませんでした。
答案で示さなくていいのかなあ……。
≪答案≫
第1 設問1
1 まずAとしては,入国審査官がしたAを退去強制対象者に該当するとの認定(以下「本件認定」という。)の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
しかし,Aは,2012年3月28日に在留期間更新不許可処分を受けた後は更新許可申請をしていないのであるから,出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)24条4号ロに該当することは明らかであり,本件認定の違法性を争うことは困難である。
したがって,Aは本件認定の取消訴訟を提起すべきではない。
2⑴ 次にAとしては,法務大臣がしたAらの異議(以下「本件異議」という。)の申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)の取消訴訟を提起することが考えられる。
本件裁決は,法務大臣が優越的地位に立って一方的にAらの異議が申出は理由がないとの判断をし,Aが退去強制対象者であるとの判断を維持し,Aが強制退去すべき義務を形成する行為であるから,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。Aは,本件裁決の名あて人であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)である。本件裁決をしたのは,法務大臣であるから,被告は国である(同法11条1項1号)。出訴期間は徒過していない(同法14条)。
したがって,本件裁決の取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
⑵ Aとしては,本件裁決の取消訴訟と併せて,本件裁決手続の続行の停止を申し立てる(同法25条2項本文)。
強制送還は,一般にそれまでの生活の基盤を奪うものであり,退去強制処分に対する訴訟追行を困難にするだけでなく,取消判決後の損害の回復も難しいという事情がある一方,送還の執行停止を認めても送還が先送りになるだけで公益に格別の支障はない。したがって,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」にあたる。
また,Aについては仮放免(法54条)が認められるものと判断されており,Aを送還しないことによって「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」とは考え難く,また後記の通り,少なくとも「本案について理由がないとみえるとき」とはいえない(行訴法25条4項)。
したがって,本件裁決手続の続行の停止は,その認容要件を満たす。
3⑴ またAとしては,主任審査官がしたAの退去強制令書の発付(以下「本件発付」という。)の取消訴訟を提起することが考えられる。
本件発付は,主任審査官が優越的地位に立って一方的にAの退去強制の執行の基となる退去強制令書を発付するものであり,これによりAは退去強制を執行される地位に立たされるから,Aの義務を形成する行為であって,取消訴訟の対象となる「処分」である。Aは,本件発付の名あて人であるから,「法律上の利益を得する者」である。本件発付は,主任審査官がしたものであるから,国が被告となる。出訴期間は徒過していない。
したがって,本件発付の取消訴訟は,その訴訟要件を満たす。
⑵ Aとしては,本件発付の取消訴訟と併せて,本件発付の執行の停止を申し立てる(同法25条2項本文)。
そして,前記2⑵の通り,この認容要件は満たす。
4⑴ さらにAは,法務大臣をしてAの特別在留の許可(以下「本件許可」という。)の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起することが考えられる。
この点,本件異議が「申請」にあたるとし,本件裁決が在留特別許可をしないという処分であると考え,同法3条6項2号の義務付け訴訟を提起することも考えられる。この場合には,本件裁決の取消訴訟を併合提起することとなる(同法37条の3第3項2号)。ここで,取消訴訟の違法判断の基準時は当該処分時であるのに対し,義務付け訴訟の基準時は口頭弁論終結時である。そうすると,本件発付の後に,AとD・Eとの普通養子縁組が成立したという事情を,本件許可の義務付け訴訟においては考慮することができるものの,本件裁決の取消訴訟においては考慮することができないのであるから,併合提起した取消訴訟に「係る請求に理由があると認められ」ない可能性がある。そこで,本件裁決の取消訴訟の併合提起が必要となる,同法3条6項2号に基づく義務付け訴訟によらず,同項1号に基づく義務付け訴訟を提起すべきである。
本件許可は,法務大臣が優越的地位に立って一方的にAに特別に在留を許可する行為であり,これによりAは日本に滞在する資格を得ることとなるから,直接国民の権利を形成するものであって,「一定の処分」にあたる。また,在留特別許可が認められない場合には,送還によりAのそれまでの生活が根本的に変わり,送還先での苦難が予想されるから,「重大な損害が生ずるおそれ」がある。また,Aが退去強制を免れるための個別法による救済規定はないから,「他に適当な方法がないとき」にあたる。そして,Aは,本件許可の名あて人となるべき者であるから,「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)である。本件許可をするのは,法務大臣であるから,国が被告となる(同法38条,11条1項1号)。
したがって,本件許可の義務付け訴訟は,その訴訟要件を満たす。
⑵ Aとしては,本件許可の義務付け訴訟と併せて,本件許可の仮の義務付けを申し立てる(行訴法37条の5第1項)。
本件許可が認められない場合には,前記のようにAの生活に多大な影響を及ぼすこととなるから,「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ」る。また,Aの養子縁組成立を主張した場合には,「本案について理由があるとみえるとき」にあたると考えられる。
したがって,本件許可の仮の義務付けは,その認容要件を満たす。
第2 設問2
1 Aは,本件許可がされないことについて,法務大臣に認められた裁量権の逸脱・濫用があり,違法であるとの主張を行う。
2 憲法上外国人が日本に在留する権利を保障されておらず法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ日本に在留し得る地位を認められているにすぎず,在留特別許可をするにあたっては,その性質上広く情報を収集し,その分析を踏まえて時宜に応じた専門的・政策的判断が必要であることからすると,本件許可をするにあたっては法務大臣に広範な裁量権が認められている(※1)。
もっとも,法務大臣が,法の与えた裁量権の趣旨に反して,裁量権を逸脱・濫用した場合には,違法である。
3 これを本件についてみると,Aは保護者と行動を共にする未成年の子どもであり,その不法滞在については本件許可の消極要素として重視すべきではない。そして,Aは本件発付時において8歳であり,直後に日本人の養子となっているが,法務省告示により日本人の6歳未満の養子であれば定住者としての在留資格を得られたはずであり,不法在留といっても非難の程度は相当低いということができ,消極要素は極めて軽微である。
他方で,6歳未満の養子として在留資格を認められたとして場合,8歳になっても基本的に在留期間更新を認められると考えられるが,Aは本件発付直後に養子縁組が成立しているのであるから,6歳未満から養子縁組に近い実態があったうえで養子縁組が成立したということかでき,在留資格が認められる場合に限りなく近い。そうすると,在留特別許可を認める有力な積極要素があるということができる。
これらの事情に照らせば,強制送還というAに重大な不利益を課すことは,比例原則に違反するものであり,法務大臣に認められた裁量権を逸脱・濫用するものである。
4 よって,法務大臣が本件許可をしないことは,違法である。以 上
(※1)「憲法は、日本国内における居住・移転の自由を保障する(二二条一項)にとどまり、外国人が本邦に入国し又は在留することについては何ら規定しておらず、国に対し外国人の入国又は在留を許容することを義務付ける規定も存在しない。このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される。したがって、憲法上、外国人は、本邦に入国する自由を保障されていないことはもとより、本邦に在留する権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されているものでもなく、入管法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ本邦に在留し得る地位を認められているものと解すべきである(最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日大法廷判決・民集三二巻七号一二二三頁、最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)。そして、入管法五〇条一項四号は、『特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき』と規定するだけであって、文言上その要件を具体的に限定するものはなく、入管法上、法務大臣が考慮すべき事項を掲げるなどしてその判断を羈束するような規定も存在しない。また、このような在留特別許可の判断の対象となる者は、在留期間更新許可の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に入管法二四条各号の退去強制事由に該当し、本来的には退去強制の対象となるべき地位にある外国人である。さらに、外国人の出入国管理は、国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の国益の保持を目的として行われるものであって、その性質上、広く情報を収集し、その分析を踏まえて、時宜に応じた専門的・政策的な判断を行うことが必要であり、高度な政治的判断を要する場合もあり得るところである。以上を総合勘案すれば、入管法五〇条一項四号に基づき在留特別許可をするか否かの判断は、法務大臣等の極めて広範な裁量にゆだねられており、その裁量権の範囲は、在留期間更新許可の場合よりも更に広範であると解するのが相当であって、法務大臣等は、上述した外国人の出入国管理の目的である国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の国益の保持の見地に立って、当該外国人の在留の状況、特別に在留を求める理由の当否のみならず、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲等の諸般の事情を総合的に勘案してその許否を判断する裁量を与えられているものと解される。したがって、同号に基づき在留特別許可をするか否かについての法務大臣等の判断が違法となるのは、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるものというべきである」
【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部
問題1/問題2/問題3/問題4/問題5/問題6/問題7/問題8
第2部
問題1/問題2/問題3/問題4/問題5/問題6/問題7/問題8/問題9/問題10/
問題11/問題12/問題13/問題14/問題15/問題16/問題17