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2019-03-01(Fri)

【事例研究行政法】第2部問題7

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ3月になっちゃったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 A社は,海上運送法による許可を受けて,九州のP島とQ市との間でフェリー事業を営んでいる事業者であるが,2016年4月25日付けで,九州運輸局長E(国の行政機関で,国土交通大臣から適法に権限の委任を受け,九州での海上運送法に基づく許可等の権限を有する)から事業停止処分を受けた。このような処分を受けると事業をできなくなってしまうことから,A社の担当者であるFはA社の顧問弁護士であるCとDの事務所に赴いて法的な対応を検討することとした。
 また,A社によるフェリー事業がストップするのは困ると考えていたP島の観光業者らは,急遽「R号運行停止を回避する会」という団体を結成していたが,同団体の代表であるBもFに同行してCらの事務所を訪れた。なお,BはP島に居住しており,P島で観光業を営んでいる。

日時 2016年4月26日
場所 Cの事務所

C:それでは,始めましょう。Eが,昨日の4月25日付けで法(海上運送法。以下同じ)16条に基づいてA社の一般旅客定期航路事業の事業停止処分(以下では「本件処分」と呼ぶことがある)を行ったということでしたね。
F:そうです。そのため,当社で運行しているP島とQ市の間の高速船R号の運行ができなくなってしまいました。
C:Dさん,海上運送法の規定はどうなっていましたか。
D:A社のようにフェリーや高速船の運航を行う場合,海上運送法に基づく許可が必要になります。
C:法3条の許可ですね。
D:そうです。もともとは,免許制になっておりまして,需給調整の規定が入っていたのですが,昨今の規制緩和により法改正され,免許制から許可制になりました。今は,法4条の基準さえ満たせば,新規に事業参入できるようになったのです。
C:それと,サービス基準というのは……
D:規制緩和がされると,不採算路線は切り捨てられる危険がありますよね。しかし,そうなると,島で生活している人の生活が大きく影響を受けることがあるかもしれません。そこで,法2条11項の指定区間では,法4条6号に基づいて事業に一定の制約をつけて許可をすることになったのです。
C:4条6号を具体化したのがサービス基準ということですね。
F:そうです。P島とQ市の間ですと,人だけを乗せるのではなく,車を乗せるフェリーがP島に住む人の生活上必要不可欠だからです。
C:そこで,【資料2】のサービス基準で,人だけではなく車も運ぶように要求されているのですね。【資料2】のサービス基準は公になっているのですか。
D:行手法5条に基づく審査基準の一種ですから公になっています。インターネット上でも見ることはできます。
C:そこで,A社の事業免許が停止されることになったそうですが,その理由をお聞かせ下さい。
F:はい。当社では,もともと高速船R号とフェリーの2種の船を保有して,事業を行ってきました。しかし,フェリーはあまり収益があがらないので,フェリーを外して高速船のみにしました。
C:そうするとサービス基準を満たさなくなりますね。
F:そこで,Eから許可を得て,同じ航路を運行しておられるS社と協定を結んでフェリーの共同運行をしておりました。しかし,昨年新規にT社がP島とQ市の間の航路に参入してきました。T社は大きな会社でしたので,自前でフェリーと高速船の両方を保有して事業を始めたのです。ところが,その後,S社の経営が悪化してしまい,S社はEに対して2015年6月1日に同年12月1日に廃業する旨の事業廃止届けを提出しました。
C:法15条2項が半年前の予告を要求しているからですね。
F:はい。しかし,S社が営業を廃止されますと,こちらとしては何とかしてサービス基準を満たさないといけなくなります。S社から2015年の4月には廃業について連絡を受けていましたので,代わりの船や共同運行の相手を探していたのですが,見つかりませんでした。また,代わりの船を見つけても改装する手間も必要です
。そうこうしているうちに,S社は営業を廃止されましたので,いかたなく,R号のみ運行していたところ,Eから,行手法30上に基づく弁明の機会の付与の通知が来ました。Eは,当社の状態がサービス基準に違反する違法な状態であるとして,監督処分権限の発動を考えていたのです。
 そこで,弁明書を用意してEに提出しました。ちょうどその時期U社からフェリーに使える適当な船を2016年夏に入手する契約を進めておりましたのでその旨を記載しました。
C:Eはどのような対応をしましたか。
F:今年の2月9日付で,「速やかに指定区間『P島』のサービス基準を満たすよう事業計画および船舶運航計画を是正すること」という,法19条に基づく改善命令がありました。そこで,当社は契約を急ぎ,当初は9月を予定していました,新しいフェリーの就航を今年の6月末にすると回答しましたが,Eは,それでは「速やか」とは言い難いとして,法16上に基づく許可の取消しや営業の停止を検討すると言ってきました。そして,昨日,Eから本件処分が通知されました。
D:突然ですか。
F:法45条の6に基づく聴聞の手続や必要な法令上の手続は事前に行われました。また,処分が出ること自体は予想していました。2月9日の段階から,ずいぶん厳しく指導を受けましたので。通知書には,法16条1号に該当するということと,それは,6月末に改善されるとしてもそれでは改善命令に従っていないからである旨の理由がついていました。
C:停止期限はいつまでですか。
F:期限はサービス基準を充足するまで,です。当社が新しい船を使えるのが6月末ですから,それまでは,R号の運行を行うことができなくなりました。たった2ヵ月ほどですが,かき入れ時のゴールデンウィークを挟んでいますので1万人以上の予約が既に入っています。料金が片道5,000円ですので,料金収入だけで大体1億円近い損害です。
C:会社としては大丈夫ですか。
F:当社は,他の事業も行っていますので,これだけで会社が倒産することはありません。しかも,停止期間もそれほど長くはないので。もっとも,経営上は甚大な被害を受けます。お客さんの信用を失いかねませんし,今はT社というライバル社がありますから。
C:ところで,Bさんはこの件にどのように関わっておられるのですか?
B:私たち観光業者としては特にゴールデンウィークの観光客が1万人も減れば死活問題です。T社もありますが,あそこだけだと便数が減るので,観光客の数にはかなり影響が出ます。そこで,「R号運行停止を回避する会」を作って何とかA社の運行停止を回避したいと考えています。それに,商売は別にして,私はP島に住んでいますので,A社の高速船が使えないと大変生活が不便になります。
F:当社としては,ゴールデンウィークに営業をすることが一番の目標ですのでその方向で適切な手段を考えていただきたいのです。6月末になれば停止処分は解除されるのは確実ですので。
C:それでは,適切な対応を考えましょう。

〔設問1〕
1.A社の顧問弁護士であるCの立場で,A社が,本件処分によって営業停止に陥ることを阻止するためいかなる法的手段(行訴法に規定されているものに限る)をとることができるかについて,それを用いる場合の要件を中心に論じなさい。また,訴訟を提起する場合の被告を明示しなさい。
2.同じくCの立場で,A社が本件処分は違法であると主張するためには,どのような主張ができるか検討しなさい。なお,サービス基準は適法なものであるとする。

〔設問2〕
 Bが独自に訴訟を提起する場合どのような訴訟を提起することができるか(行訴法に規定されているものに限る),また,Bの立場から,当該訴訟について,訴訟要件を充足しているとの主張を検討しなさい。

【資料】略


執行停止と原告適格をがっつり聞く問題です(突然の冷静な態度)

執行停止をこんなにじっくり考えたことがなかったので,

答案もしっかりと書くようにしました。

原告適格についてはやっぱり何度書いてもうまい書き方が分からず,

がっかりとした気持ちになりました。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
  ⑴ A社は,本件処分の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起し,併せて本件処分の効力について執行停止(同法25条2項本文)を申し立てることが考えられる。
  ⑵ア 本件処分は,国土交通大臣から適法に権限の委任を受けた(※1)「行政庁」である九州運輸局長Eが,海上運送法16条1号に基づき,A社を「名あて人として」フェリー事業の停止を命じて,その「権利を制限する処分」であるから,「不利益処分」(行手法2条4号)にあたる。したがって,本件処分は,当然に,取消訴訟の対象となる「行政庁の処分」(行訴法3条2項)にあたる。
   イ A社は,本件処分の名あて人であるから,「当該処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者」(同法9条1項)として,原告適格を有する。
   ウ 本件処分を行ったのは,直接的にはEであるが,前記のようにEは国土交通大臣から権限の委任をうけてこれを行っているから,被告適格を有するのは,本件処分の権限の委任元である国土交通大臣の所属する国である(同法11条1項1号)。
   エ CがA社から相談を受けたのは,本件処分があった日の翌日であるから,出訴期間も満たされる(同法14条)。
   オ したがって,A社は,適法に上記取消訴訟を提起することができる。
  ⑶ 取消訴訟の提起だけでは,処分の効力は妨げられないから(同法25条1項),A社は本件処分について執行停止まで申し立てる必要がある。ここで,本件処分は,執行が行われる処分ではなく,手続の続行が予定されているわけでもないから,本件処分に対する執行停止としては,その効力の執行停止を申し立てる必要がある(同法25条2項ただし書)。
   ア 前記のように,A社は本件処分の取消訴訟を適法に提起することができるから,「処分の取消しの訴えの提起があった場合」にあたる。
   イ(ア) 本件処分によりA社はフェリー事業を営むことができなくなり,フェリーの運航による収益を上げることができなくなるとともに,既に予約を入れていた利用客が利用できなくなることによるA社に対する信用の低下を招くという損害を受けることとなる。
 収益が得られなくなることは,経済的損害にすぎず,事後的な金銭賠償による補てんが可能であるから,「回復の困難の程度」は低いものではある。しかし,本件処分は,利用者のピーク時であるゴールデンウィークを挟んでその事業を停止させるものであり,その損害は1億円にも上り,フェリー事業にとってその「損害の程度」はかなり大きいものであると考えられる。
 A社に対する利用客の信用が低下することは,一度信用が低下すればこれを回復させることは容易ではなく,競合他社であるT社が存在することも併せ考えれば,利用客があえてA社に対する信用を回復させることは見込み難い。そうすると,「回復の困難の程度」は大きいということができる。
    (イ) さらに,本件処分がされた場合には,P島の住民がA社フェリーを利用することができなくなる。
 海上運送法は,「海上運送の利用者の利益を保護する」ことを目的とし(1条),特に船舶以外の交通機関が発達していない地域における船舶の運行区間を「指定区間」とし(2条11項),当該区間における船舶の運行を許可するにあたっては,離島住民の日常生活に必要な船舶の輸送を確保することを基準として設けている(4条6号)。これらの規定に照らせば,海上運送法は,離島住民の便宜を図るために,船舶事業を適切に営まれることを保障する趣旨に出たものであると考えられる。
 それにもかかわらず,本件処分がされれば,P島の住民がA社フェリーを利用することができなくなり,またT社フェリーをもってのみではP島の住民の需要が満たされないのであるから,P島の住民の生活上不便を来たすことは明らかである。そうすると,本件処分の「内容及び性質」は,海上運送法及びサービス基準の趣旨に反するものであるということができる。
    (ウ) 以上からすれば,本件処分によって生じる損害は「重大な損害」であると認められる。
   ウ 本件処分がされたのは,2016年4月25日であって,ゴールデンウィークの直前であるから,「緊急の必要がある」と認められる。
   エ 本件処分の効力の執行停止について,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」はなく,「本案について理由がないとみえる」ともいえないから(同法25条4項),消極要件を満たす。
   オ よって,A社は,適法に上記執行停止を申し立てることができる。
 2 小問2
  ⑴ まずXは,本件処分が,その要件を満たしておらず,違法であるとの主張を行う。
 本件処分は,海上運送法16条1号を根拠としてされたものである。ここでは,「法律に違反したとき」として,EがA社に対してした事業計画及び船舶運航計画の改善命令(同法19条1項3号,4号。以下「本件改善命令」という。)にA社が違反した事実が認定されている。本件改善命令の内容は,速やかに指定区間「P島」のサービス基準を満たすよう是正することである。
 そこで,A社が本件改善命令に違反したかにつき検討すると,たしかにA社はS社が廃業の連絡を受けた時点で,フェリーの共同運行をすることができなくなり,サービス基準を満たさなくなることを知っていたのであって,既に同時点から1年近く経過している上,本件改善命令からも2か月以上が経過しているにもかかわらず,A社は未だサービス基準に適合していない。しかし,A社はその間,これを放置して何ら対応を行わなかったのではなく,代替となる船や共同運行を行う事業者を探していたのであり,サービス基準に適合するよう努力を続けていたのである。また,本件改善命令を受けてからは,A社は,新しいフェリーの就航時期の前倒しを図るなど,サービス基準への対応時期を早める努力をしており,その旨をEにも連絡している。そうすると,就航させる船の改装の時間なども考え併せれば,A社の対応は「速やか」に行われたものというべきであり,本件改善命令に違反する事実はない。
 したがって,A社は,本件改善命令に違反しておらず,「法律に違反したとき」にはあたらないから,本件処分はその要件を欠くものであって,違法である。
  ⑵ またXは,Eが行った本件処分は,その裁量を逸脱・濫用したものであり,違法であるとの主張を行う。
 前記のように,海上運送法は,離島住民の便宜を図るために,船舶事業が適切に営まれることを保障するものであるところ,船舶事業が当該目的にかなうように適切に運営されているかどうかの判断は,専門的・技術的側面があり,これを改善させる手段をとるにあたっても,専門的・技術的見地からの判断が必要であるから,同法16条における処分を行うことについては,行政庁に効果裁量が認められる。もっとも,行政庁が法の認めた裁量の範囲を逸脱・濫用して処分を行った場合には,その処分は違法である(行訴法30条参照)。
 本件処分は,A社フェリー事業の停止を命じるものであって,前記のように,法の趣旨に反してP島の住民の生活上不便を来たすものである。したがって,このような処分が行われるには,抑制的であるべきであり,慎重な判断が必要であるところ,前記のように,A社はサービス基準に適合するように一定の努力をしており,比較的短期間でサービス基準に反している状態は解消されることが見込まれている。そうすると,あえて,現段階で法の趣旨に反するような処分を行うことは,法の予定していない裁量権の行使であるということができる。したがって,本件処分は,Eの裁量の範囲を逸脱・濫用したものである。
 よって,本件処分は,違法である。
第2 設問2
 1 Bは,本件処分の取消訴訟を提起,併せて本件処分の効力の執行停止を申し立てる。
 2⑴ 本件処分が取消訴訟の対象となる「処分」であって,国が被告適格を有し,出訴期間を徒過していないものと考えられる点は,設問1と同様である。
  ⑵ア もっとも,Bは,本件処分の名あて人ではないから,原告適格を有するかどうかが問題となる。
   イ 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含む場合には,このような利益も法律上保護された利益にあたる。
   ウ(ア) 本件処分の根拠規定は海上運送法16条1項1号であるところ,同条の趣旨は,前記の通り,同法の関係規定とあいまって,離島住民の生活上の便宜を図るために,船舶事業が適切に営まれることを保障する点にあるから,離島住民の生活上の便宜という利益は,不特定多数者の具体的利益として保護されている。
    (イ) そして,特に他の交通機関が発達していない離島においては,前記のように法が特に船舶の運行を保障する趣旨に出ていることに鑑みれば,指定区間に属する船舶が運行されている離島の住民の生活上の便宜という利益は,海上運送法によって特に保護されているとみることができる。離島の住民は,本島との連絡手段がなければ本島との往来が遮断され,例えば本島の公的機関を利用することや必要な物資の供給を受けることもままならず,その生活上必要な行為ができなくなり,生存活動という高次の利益に対する制約が生じることとなる。そうすると,船舶の運行が停止されることにより直接的な被害を受ける離島住民の生活上の便宜と言う利益は,海上運送法がこれを個別的利益としても保護する趣旨に出たものであると考えられる。したがって,当該利益は,法律上保護された利益であるということができる。
    (ウ) これを本件についてみると,Bは①団体「R号運行停止を回避する会」の代表としての地位,及び②P島の住民としての地位をそれぞれ有している。
 このうち,①の地位は,P島の観光業者を代表して,その観光業に対して生じる損害を回避することを利益として主張するものである。しかし,上記法の趣旨に照らし,団体による当該利益の主張が法律上保護された利益とされるものとは考えにくい(※2)。また,後述のように,BはP島の住民としての地位のみをもって本件処分の原告適格を有するものと考えられるから,独自に団体に原告適格を認める必要性は乏しい。したがって,①の地位をもってしては,原告適格は認められない。
 次に②の地位についてみると,BはP島の住民である以上,A社フェリーの運行停止による被害を直接的に受けるのであるから,その生活上の便宜という利益は,海上運送法16条による個別的保護を受ける。
 したがって,Bには,本件処分について「法律上の利益を有する」から,Bに原告適格が認められる。
 3 よって,Bは,手基本に上記取消訴訟を提起することができる。

以 上


(※1)「権限の委任とは,ある行政機関の権限の一部を,別の行政機関に委任して行使させることをいう。法律によって与えられた権限の一部が移動し,委任機関はその権限を失う一方,受任機関は自己の名と責任においてその権限を行使する。法律に定められた権限が移動するため,法律の根拠が必要となる。」櫻井敬子=橋本博之『行政法[第4版]』45頁
(※2)前掲櫻井=橋本297頁では,「最高裁は,処分により影響を受ける者が特定できないような被侵害利益について,原告適格を否定する。地方鉄道事業者に対する特急料金改定の認可処分について,その鉄道路線沿線に居住して通勤定期券を購入するなどしていた利用者,文化財保護法・県文化財保護条例に基づく史跡指定解除処分に対し,その指定史跡を研究対象としてきた学術研究者について,原告適格は否定されている。一般消費者,文化財の研究者などは,行政法令の解釈上,個別的な法的地位を持つ者として切り分けて保護されていると解釈することには困難がある。しかし,個別性の点で拡散した利益であっても,司法の行政に対するチェック機能が全く果たされないのは,立法政策上適切でないと考えられる領域もある。立法論としては,消費者団体・環境保護団体など,個別の政策判断により,『薄まった利益』を適切に代表する団体に訴権を与えることが考えられる。」との記載があり,団体に原告適格を認める政策的判断をする方向性を基礎付けるものとして,個々人の個別の利益が薄まってしまっているかどうかが挙げられています。そうすると本問では,BのP島の住民という地位をのみをもってして原告適格が認められるレベルまで個別の利益が高まっているため,あえて団体に原告適格を認める必要はないという方向に議論が進みそうです。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-02-28(Thu)

【事例研究行政法】第2部問題6

行政法のお勉強が進んでいなさすぎて,

答案構成に時間がかかるんですよね。

1日のほとんどが事例研究1問だけで終わってしまいます(大問題)

そして,今日1日かけて解いた問題はこちらです。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲県に所在する乙市においては,パチンコ店の立地については,風営法に基づく規制と自主条例である「乙市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等に関する条例」(以下「乙市条例」という)による規制とが行われている。
 まず,風営法に基づく規制は以下のとおりである。風営法は,パチンコ店等の風俗営業を都道府県公安委員会の許可にかからしめるとともに(風営3条1項),立地にかかる許可要件は,政令(風営法施行令)が定める基準に従って都道府県条例によって具体化する,という仕組みを設けている(風営4条2項2号)。甲県は,風営法4条2項2号に基づく条例として,「甲県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」(以下「甲県条例」という)を定め,「第1種地域」での営業を禁止している。「第1種地域」とは,風営法施行令6条1号イにいう「住居集合地域」を具体化したものであり,第1種低層住居専用地域をはじめとする,都計法上の住居系用途地域が,第1種地域に指定されている(甲県条例別表〔第1条関係〕を参照)。なお,乙市内の用途地域は,都計法および同法施行令により,甲県が定めるものとされている。
 他方,乙市は,ベッドタウンとして知られる都市であり,都計法上の住居系用途地域以外の地域であっても住宅の比率が高いことから,乙市の良好な住環境の保全のためには,より広範な地域に風俗営業の規制を及ぼす必要があると考え,独自に,「乙市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等に関する条例」(以下「乙市条例」という)を制定し,甲県条例にいう第1種地域に当たらない地域についても,パチンコ店等の建築等を規制している。
 Xは,乙市内における,都計法上の準工業地域に当たる地域において,パチンコ店を開業しようと考え,乙市条例による乙市市長Pの同意を求めたところ,Pは,Xに対し,2010年3月に,同条例4上により同意することはできない旨の通知をした。これに対し,Xが,Pの同意を得ないままパチンコ店の建築工事を開始したため,Pは,Xに対し,建築を中止するよう指導し,Xがこれに応じないため,乙市条例8上に基づき建築の中止を命じたが,Xはこれを無視して建築を続け,公示を完成させた。
 乙市条例に基づく規制を無視してパチンコ店の建築を強行した者はXが初めてであり,Xの建築・営業を放置しておくと乙市条例による規制が骨抜きになってしまうおそれがあること,また,条例を遵守している他の業者や市民による批判も高まってきたことから,Pは,Xに対して強硬な姿勢で臨むことにし,同年7月,Xが建築したパチンコ店用の建築物につき,乙市行政手続条例が定める手続を経て,1ヵ月の履行期限を定めて,乙市条例8条に基づき,原状回復措置としてパチンコ店の建物の除却を命じた。Xがこれに従わなかったため,Pは,除却命令の代執行をすることを決意し,同年8月に,1ヵ月の履行期限を定めて,行政代執行法(以下「代執行法」という)3条1項に基づく戒告を行った。

〔設問〕
1.Xが代執行を阻止するためには,行政機関のいかなる行為を捉えて,いかなる訴訟を提起すべきか。仮の救済の手段も含めて論じなさい(いずれも,行訴法に定められたものに限る)。
2.Xが勝訴するためには,本案においてどのような主張をすべきか。複数の訴訟を提起しうると考える場合には,それぞれの訴訟ごとに検討せよ。なお,乙市条例が都計法・建基法に違反するという主張も考えられるが,この点については論じなくてもよい。


半分憲法

そういう印象です。

特に法令と条例の関係のくだり。

実際の試験で解いたことないんですよね。

いざ出されたら木端微塵になりそうです。

この問題で触れられてよかったですね。

≪答案≫
第1 設問1
 1 まずXは,乙市条例3条による乙市市長Pの同意の求めに対してしたPによる不同意(以下「本件不同意」という。)の取消訴訟(行訴法3条2項)及びPが当該同意をすべきことの義務付け訴訟(同条6項2号)を併合提起し(同法37条の3第3項2号),Pが当該同意をすべきことの仮の義務付け(同法37条の5第1項)を申し立てることが考えられる。
 もっとも,このような訴訟によっては,目前に迫った代執行を阻止するための救済手段としては,迂遠であり現実的ではない。したがって,本件不同意の取消訴訟及び同意の義務付け訴訟の提起は適切ではない。
 2 次にXは,Pのした乙市条例8条に基づく原状回復命令(以下「本件原状回復命令」という。)の取消訴訟を,乙市を被告として提起し(同法11条1項1号),その執行停止(行訴法25条2項)を申し立てることが考えられる。
 本件原状回復命令は,Pがその優越的地位に立って一方的にXの建築したパチンコ店(以下「本件パチンコ店」という。)の原状回復というXの財産権に制約を加える行為であるから,「処分」にあたる。Xは本件原状回復命令の名宛人であるから原告適格を有し(同法9条1項),出訴期間(同法14条)も問題ないものと考えられる。したがって,本件原状回復命令の取消訴訟は,これを適法に提起することができる。
 本件原状回復命令がされた場合には,一度完成させた本件パチンコ店をすべて取り壊すこととなり,工事途中での原状回復と比してもその損害の程度が大きい(※1)。また,本件原状回復命令を受けることで,本件パチンコ店の取引先等との業務上の信頼関係等の毀損も生じかねず,このような損害は回復が困難であると認められる(※2)。したがって,本件原状回復命令によって生じる「損害の困難の程度」を考慮し,「損害の程度」を勘案すると,Xが負担する損害は「重大な損害」であるといえる。また,Xに対しては,既に行政代執行の手続が開始されているから,上記の損害を「避けるため緊急の必要がある」と認められる。以上から,上記本件原状回復命令の執行停止の申立ては,これを適法にすることができる。
 3 またXは,Pのした行政代執行法3条1項に基づく戒告(以下「本件戒告」という。)の取消訴訟を,乙市を被告として提起し,その執行停止を申し立てることが考えられる。
 「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。本件戒告は,Pが優越的地位に立って一方的にする行為であって,公権力の主体たる公共団体が行う行為である。本件戒告は,それ自体によってXに新たな義務を課すものではない事実行為であるが,代執行の前提要件として代執行手続の一環をなすとともに,代執行が行われることをほぼ確実に示す表示でもある。そして,戒告がされてから事前に代執行をとどめる手段がないことからすれば,戒告は後に続く代執行と一体的な行為である。その結果,本件戒告はXの権利義務を形成するものであるということができる。したがって,本件戒告は「処分」にあたる。(※3)(※4)Xは「義務者」として本件戒告を受けた者であるから原告適格が認められ,出訴期間も徒過していないものと考えられる。したがって,Xは本件戒告の取消訴訟を適法に提起することができる。
 そして,本件原状回復命令の取消訴訟におけるのと同様に,本件戒告により「重大な損害」が生じ,Xはこれを「避けるため緊急の必要がある」と認められるから,本件戒告の執行停止の申立ても,これを適法にすることができる。
 4 さらにXは,Pが行政代執行法3条2項に基づいてする通知(以下「本件通知」という。)又は同法2条に基づいてする代執行(以下「本件代執行」という。)の差止訴訟(行訴法3条7項)を提起し,これらの仮の差止め(同法37条の5第2項)を申し立てることが考えられる。
 もっとも,Xとしては,上記のように本件戒告の取消訴訟を提起することができ,その方が要件が緩和されているのであるから,あえて本件通知及び本件代執行の差止訴訟を提起する実益がなく,また,「その損害を避けるため他に適当な方法があるとき」(行訴法37条の4第1項ただし書)にあたる可能性がある。したがって,Xが本件通知及び本件代執行の差止訴訟を提起するのは,適切ではない。
第2 設問2
 1 本件原状回復命令の取消訴訟について
  ⑴ まずXは,乙市条例が風営法並びにその委任を受けた同法施行令及び甲県条例に違反し,条例制定権の限界(憲法94条)を超え違法であるとの主張を行う。
 条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく,それぞれの趣旨,目的,内容及び効果を比較し,両者の間に矛盾抵触があるかどうかを判断する。(※5)
 乙市条例は良好な環境を確保することを目的としている一方,風営法は善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し少年の健全な育成を目的としているから,少なからず良好な環境を確保する点も含んでいると考えられ,両者は同一の目的に出たものであると考えられる。風営法は,具体的な規制の基準を都道府県条例に委任しており(風営法4条2項2号),その限りで地方の実情に応じた規制を予定しているとも思える。しかし,当該委任は,都道府県条例によって基準を具体化し,都道府県公安委員会が執行することによって実現されるものであり,市町村条例が上乗せ規制をすることは予定していないというべきである。また,風営法による規制は,営業の自由に対する強力な規制を施すものである上,風営法施行令6条3号は制限地域の指定を良好な風俗環境を保全するため必要な最小限度とすることを定めていることからすれば,風営法に基づく規制を超える規制をすることを同法は予定していない。したがって,風営法の規制に上乗せして規制を置く乙市条例は,風営法と矛盾定食するものである。
 そうすると,乙市条例は,憲法94条に違反するから,無効となる。
 よって,本件原状回復命令は,その根拠を有しないから,法律による行政の原理に反し違法である。
  ⑵ またXは,仮に風営法が,地方の実情に応じた規制を容認する趣旨であるとしても,乙市条例は都計法上の商業地域以外の地域においてパチンコ店の建築を例外なく不同意にするという仕組みを設けていることは,営業の自由に対する過剰な制約であって,憲法22条1項に違反する疑いのある,合理性を欠くものであって,憲法94条に違反し無効であると主張する。その結果,本件原状回復命令は,その根拠を有しないから,違法である。
  ⑶ 次にXは,仮に乙市条例が憲法94条に違反するものではなくとも,乙市条例8条の文言は,建築の前または工事中の命令権限について定めたものであり,完成した建物の除却を命ずることはその要件外であるから,同条を根拠として本件原状回復命令をすることはできないと主張する。その結果,本件原状回復命令は,その根拠を有しないから,違法である。
  ⑷ さらにXは,仮に乙市条例8条を根拠として本件原状回復命令をすることができるとしても,本件パチンコ店は都計法・建基法に違反していないうえ,乙市条例の実質的な目的は営業を阻止することにあると考えられるから,その目的のために完成した建物の除却を命じるのは財産権の過剰な侵害であって,比例原則に反すると主張する。その結果,本件原状回復命令は,比例原則に反し,違法である。
 2 本件戒告の取消訴訟について
  ⑴ 本件原状回復命令の取消訴訟におけるのと同様に,乙市条例が憲法94条に違反し無効である結果,Xが従うべき義務が存在せず,これを強制執行する代執行の前提となる本件戒告もその前提を欠くから,「法律に基づき行政庁により命ぜられた行為」(行政代執行法2条)の要件を欠き,違法である。
  ⑵ またXは,本件パチンコ店は準工業地域(都計法9条10項)に立地するため,その周囲の状況から本件パチンコ店が存在することで直ちに良好な環境が害されることになるとは考えにくく,「その不履行を放置することが著しく公益に反する」とはいえないから,本件戒告はその要件を欠き,違法である。

以 上


(※1)「改正法における『重大な損害』の文言は,損害の『性質』のみに着目した要件から,損害の『程度』ないし『量』に着目した要件に改め,執行停止について個別・具体的な紛争状況に即した適切な判断を担保することを目的としている。」櫻井敬子=橋本博之『行政法[第4版]』332頁
(※2)最決平成19年12月18日判時1994号21頁は,弁護士が所属弁護士会から懲戒処分を受けた事例で,「上記懲戒処分によってXに生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が同条[行訴法25条]2項に規定する『重大な損害』に当たるものと認めた原審の判断は,正当として是認することができる。」として,「社会的信用の低下」,「業務上の信頼関係の毀損」等も「重大な損害」の要素となることを指摘しています。
(※3)「もつとも戒告は代執行そのものではなく、またこれによつて新な義務ないし拘束を課する行政処分ではないが、代執行の前提要件として行政代執行手続の一環をなすとともに、代執行の行われることをほぼ確実に示す表示でもある。そして代執行の段階には入れば多くの場合直ちに執行は終了し、救済の実を挙げえない点よりすれば、戒告は後に続く代執行と一体的な行為であり、公権力の行使にあたるものとして、これに対する抗告訴訟を許すべきである。」大阪高決昭和40年10月5日行集16巻10号1756頁
(※4)「戒告,代執行令書の通知は,いずれも事実行為であり,義務者に新たな義務を課したり権利を制約するものではない。しかし,行われようとしている代執行が要件を充足していない等違法なものである場合に,義務があるとされた者には事前にこれをとどめる手段がないことから,戒告・代執行令書の通知について,救済の見地から処分性を認め,取消訴訟の対象とするのが通説・判例である。」前掲櫻井=橋本181頁
(※5)最判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁は,法律と条例との抵触について,「地方自治法一四条一項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法二条二項の事務に関し条例を制定することができる、と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。」と判示していますが,さすがにどう考えてもこれを全部答案に示すことは不可能ですし不要だと思われ,どうにかしてコンパクトにする必要があるんですが,どこまで書けばいいのかもよく分からないところです。とりあえず,「例えば」以下の部分は,単なる例示であって規範ではないと思われるため,答案上はごっそり切り落とすことにしました。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-02-27(Wed)

【事例研究行政法】第2部問題5

行政法は予備論文の手応え的に,

出来はそんなに良くないけど,周りも出来ていないためか,

評価は良いという感じだったので,

極端に沈むということはないんでしょうけど,

予備は憲法とセットという点で新司と事情が違うので,

行政単体にかける時間が平等になると,

周りの人がどこまで行政の点を伸ばしてくるかが心配になります。

そういうことを考えるとやっぱり行政も手を抜くことはできないですね。

なので早いところ事例研究を終わらせておきたいです。

今日は問題5です。

≪問題≫

 大規模小売店舗の規制については,かつては「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律」(以下では「大店法」という)により,小規模小売店舗の保護のため,既存商店の経営を圧迫するような新規出店を制限するように需給調整されていた。しかし,この法律は,中小企業の利益を保護する目的で,かえって消費者の権利を制限するものであり,また商業者の自由な商業活動を規制するものであるとの指摘を受けて廃止され,代わって新たに,「大規模小売店舗立地法」(平成10年法91号,以下「大店立地法」または単に「法」という)が制定された。
 大店立地法の運用に関して,次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ 大店立地法の規制だけでは中心市街地の衰退化を防げないと考えた甲県では,「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する指導要綱」を策定し,大店立地法による規制手段が始まる前段階から事業者を行政指導することにした。
 この要綱に基づき,甲県は,2016年2月1日,乙市の市街地の外れの工場跡地に大規模小売店(スーパーマーケット)を出店しようとしている事業者Xに対して,出店構想段階での情報提供を求めるとともに,乙市中心市街地の商店街が衰退しないように,地元商店街や関係地方公共団体から意見を聴くこと,地元との軋轢を避けるため営業規模を縮小し,営業時間を短縮して深夜に及ばないようにすることを求める行政指導をした。Xは,出店構想の情報は提供したものの,大店立地法ではこのような営業規模の規制は認められないはずだと主張して,行政指導に従うことを拒否し,大店立地法5条により義務付けられた届出の書類を県に提出した。これに対して県知事Aは,上記の行政指導を拒否したことを理由に届出書類を返戻した。

〔設問1〕
 Aが届出書類を返戻したことに対して,Xは不服である。この場合,Xはどのような訴訟を提起して争うことができるか。なお,本案については検討しなくてもよい。

Ⅱ Ⅰの場合とは異なり甲県が事前の行政指導をしなかった場合について考える。事業者Xが,大店立地法に基づく届け出を提出した。住民説明会では届出内容の説明がなされたが,周辺住民から,計画地である工場跡地付近は,道路が狭く,違法駐車が多い地域なのでこれ以上違法駐車が増えるようなスーパーの進出には反対であり,24時間営業は深夜の静穏な環境を破壊するとの意見が多数寄せられた。
 甲県が,この届出の内容を検討したところ,狭く交通量も多い道路であるにもかかわらず,車で来店いる場合には,右折入出庫を前提とする計画で道路交通上も危険があり,24時間営業は騒音問題を含め,地域の生活環境を悪化するおそれがあると判明した。そこで,甲県は,Xに対して①道路路に面した敷地に左折での入庫待ちのスペースを確保すること,②交通上の危険防止のため右折入出庫をやめ,入出庫は左折のみに限定するか,右折入出庫のためアンダーパスまたはオーバーブリッジを道路管理者と協議のうえ設置すること,③24時間営業は深夜の車両騒音で環境基準を超えるため午後10時から早朝6時まで駐車場の半数を利用中止とすることの3点を内容とする大店立地法8条4項に基づく意見を述べた。
 ところが,Xは,たしかに騒音は環境基準を超えてはいるが,超過はわずか2dBにすぎず,この程度では被害の発生はないと主張し,また,それ以上の対策は採算上問題があり,また,左折入出庫に限定すると自動車での来店が限定されることとなって売り上げが確保できない可能性があるし,アンダーパスやオーバーブリッジ設置は莫大なコストの増大につながること等を指摘して,甲県の意見は,事業者の営業に過度に介入する過大な要求であるとして,意見には対応しない旨,甲県知事Aに通知をした。
 このため甲県は,大店立地法9条1乞うに基づき,Xに対応し,上記の状況を改善するため必要な措置を講ずるよう勧告した。勧告の内容は,上記意見と同様であり,①入庫待ちスペースの確保,および②来客者の左折入出庫の徹底,③アンダーパスまたはオーバーブリッジ設置,④駐車場の深夜早朝に関する利用規制であった。しかし,Xは,この勧告内容は商業活動を不当に制限し,営業上の損害を与えるものとして,特に計画を変更しない旨を届け出た。

〔設問2〕
1.上記の大店立地法8条4項に基づく意見と大店立地法9条1項に基づく勧告に対して,Xは,これらの意見,勧告は,正当な理由なく事業者の営業活動に対する過剰な介入を測ろうとするものであり,従う必要がないと考えている。これらの意見や勧告の違法性を争うためには,Xはいかなる訴訟を提起することができるのか,検討しなさい。なお,本案については検討しなくてもよい。
2.Xが韓国に従わないために,甲県は,大店立地法9条7乞うに基づいて,勧告に従わない旨の事実を公表しようと考えている。しかしXは,勧告に従わないことには正当な理由があり,公表は違法であると考えている。公表がされる前に事情を説明する機会も与えられていないことにも不満がある。さらに,公表によって,企業イメージが大幅にダウンし,営業上大きな損失を受けることも予想される。そこで,公表の違法性を公表前に訴訟で争いたい。どのような訴訟を提起すればいいのか。勝訴の可能性についても検討しなさい。
3.また,公表されてしまってからはどのような訴訟が考えられるか。勝訴の可能性についても検討しなさい。


なんか,しれっと国賠入れ込んできてますけど,

国賠に対するセンサーが養われていないため,

あからさまに国賠聞いてきてんなみたいな問題でないと,

なかなか気付けないような気が,この問題を解いていてしました。

こんな形で国賠が放り込まれるよという意味ではいい機会だったように思います。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Aは,大店立地法5条1項に基づいて甲県に出店届出(以下「本件届出」という。)を行ったのに対し甲県がこれを返戻したことについて不服としているが,前提として,この届出の法的性質について検討する。
 「届出」とは,行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって,法令により直接に当該通知が義務付けられているものであって(行手法2条7号),「申請」との対比から,当該通知に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
 大店立地法5条に基づく出店届出は,届出後,都道府県は届出内容に対する審査を行うものの,当該審査に基づいた許認可などは予定されておらず,当該審査はその後8か月の間に(大店立地法5条4項),意見(同法8条4項)又は勧告(同法9条1項)などの行政指導を行うためのものであり,それに事業者が任意の服従をなすことが期待されている。そうすると,大店立地法5条に基づく出店届出は,その届出の後,都道府県知事による諾否の応答が予定されていないものであるから,行手法上の届出にあたる。
 したがって,本件届出は,行手法上の届出である。
 2 Xとしては,本件届出に対して,甲県知事が届出書類を返戻した行為(以下「本件返戻行為」という。)について,Xが届出義務を履行したことの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起することが考えられる。
 確認訴訟においては,訴訟要件として,確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である。
 ①Xは,現に届出義務を履行したか否かについての確認を求めているのであって,Xと甲県との現在の法律関係を確認対象とするものであるから,確認対象として適切である。②本件届出が行手法上の届出あることからすると,これが甲県の提出先に到達したときに義務が履行されたこととなるから(行手法37条),甲県知事による不受理行為は観念され得ず,返戻行為を「処分」と捉えることはできない。そうすると,Xは甲県知事が返戻した行為について取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することができず,その他にXの不服を争う適切な方法が存在しないから,届出義務を履行したことの確認訴訟は,その方法として適切である。③Xが届出義務を履行しないものとされたまま店舗の新設を行った場合には,刑罰が科せられるおそれがあるから(大店立地法17条1号),Xには既に法的地位に対する危険を負っており,現時点において届出義務を履行したか否かを確定させておく必要がある。したがって,即時確定の利益も認められる。
 よって,Xが届出義務を履行したことの確認訴訟は,その確認の利益を有するから,訴訟要件を満たし,Xはこれを適法に提起することができる。
第2 設問2
 1 小問1
  ⑴ 大店立地法8条4項に基づく意見
   ア Xは,甲県がした大店立地法8条4項に基づく意見(以下「本件意見」という。)が「処分」にあたるとして,取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
 「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件意見が述べられた場合には,①本件意見は公告・縦覧に供され(大店立地法8条6項),②Xはこれに対して変更の届出又は変更しない旨の通知をし,その後2か月間店舗の新設が制限されることとなる(同条9項)。
 そこで,これらの効果により,Xの権利義務が形成され又はその範囲が確定するといえるかについて検討すると,①本件意見はそもそもXの任意の服従を期待するものにすぎず,Xが本件意見に従うかどうかは自由である。公告・縦覧により,本件意見が広く住民に知られることになるが,それは単なる情報提供にとどまるものであり,Xはその内容に不服があれば独自に反論をすることができる。そうすると,本件意見が公告・縦覧に供されることによって,Xの権利義務に対して何らの影響を及ぼすものではないから,公告・縦覧に供されることをもってXの権利義務が形成され又はその範囲が確定されるものではない。
 次に②新設の期間制限については,その間にXが店舗の新設を行うことができなくなり,これに違反した場合には罰則が科せられるため(同法18条),Xの権利義務を形成するものであるとも思える。しかし,新設の期間制限は,都道府県が市町村の意見を聴いて事業者に行政指導を行う期間を確保するため,大店立地法が直接事業者に課したものであるとみることができる。そうすると,大店立地法上,当該期間は新設することができないのが原則であって,都道府県が意見を有しない場合に例外的にこれらの制限を解除するという仕組みになっているのであり(同法8条9項),都道府県の意見が新設の期間制限の効果を生じさせるものではない。したがって,甲県が本件意見を述べたことによってXが新設の期間制限を受けるものではないから,Xの権利義務が形成され又はその範囲が確定されたとはいえない。
 したがって,本件意見は「処分」にあたらないため,Xはこれの取消訴訟を提起することはできない。
   イ もっとも,甲県が不当な目的をもって意見を述べるなど,意見を述べること自体が違法である場合には,2か月の新設制限も違法となるから,新設が2か月遅延したことによって生じた賠償を求める国家賠償請求訴訟(国賠法1条1項)を提起することが考えられる。
  ⑵ 大店立地法9条1項に基づく勧告
 Xは,甲県がした大店立地法9条1項に基づく勧告(以下「本件勧告」という。)が「処分」にあたるとして,取消訴訟を提起することが考えられる。
 本件勧告は,Xがこれに従わなくとも,罰則が科されるものではなく,その旨の公表がされるにすぎない(同法9条7項)。そうすると,本件勧告は,Xの法的地位を直接変動させる性質のものではない。したがって,本件勧告は,Xの権利義務を形成し又はその範囲を確定するものでなく,「処分」にあたらない。
 よって,Xは本件勧告の取消訴訟を提起することができない。
 2 小問2
  ⑴ 前提として,甲県が大店立地法9条7項に基づいて行う公表(以下「本件公表」という。)の法的性質は,公権力性がない事実行為である。そうすると,本件公表は「処分」にはあたらないため,Xは抗告訴訟として本件公表の差止訴訟(行訴法3条7項)を提起することはできない。
  ⑵ そこで,Xは,民事訴訟として,人格権に基づく本件公表の差止訴訟を提起することが考えられる(※1)。人格権に基づく差止請求が認められるためには,①違法な侵害が発生する蓋然性があること,②受忍限度を超える損害が発生する可能性があること(※2)(※3),③差止の必要性があることが必要である。
 ①大店立地法9条7項に基づく勧告は,事業者の出店計画が「周辺の地域の生活環境に著しい悪影響を及ぼす事態の発生を回避することが困難であると認めるとき」(同条1項)に出されるものである。Xの出店計画の下では,営業上生じる騒音は,環境基準からわずか2dBを超えるにすぎないものであり,周辺の地域の生活環境に与える影響はわずかであるから,本件公表はその要件を満たしていない。また,「勧告の内容は,同項に規定する事態の発生を回避するために必要な限度を超えないものであり,かつ,届出をした者の利益を不当に害するおそれがないものでなければならない」(同条2項)とされている。甲県がXに対して行った騒音対策案は,その採算上問題であって,Xの利益を不当に害するおそれがあり,本件公表はそのようけんを満たしていない。したがって,本件公表は,違法なものであって,その発生の蓋然性が認められる。
 ②もっとも,本件公表によりXの企業イメージが低下し,その営業上の損失が生ずるおそれがあるとしても,Xはこれに反論する意見を表明することができ,企業イメージの低下等の程度を抑えることができる。そうすると,本件公表は,社会生活上受忍すべき程度を超えてXが企業イメージを保持するという利益を侵害しているということはできない。したがって,受忍限度を超える損害が発生する可能性は認められない。
 したがって,Xは人格権に基づいて本件公表の差止請求をしても,それが認められる可能性は低い。
 3 小問3
  ⑴ Xとしては,A県に対して国家賠償請求訴訟(国賠法1条1項)を提起することが考えられる。
  ⑵ア A県知事は「公共団体の公権力の行使に当たる公務員」である。
   イ 公表は都道府県が行うものとされ(大店立地法9条7項),A県知事はA県の行政庁として本件公表を行う権限を有しているから,本件公表はA県知事の「職務を行うについて」されたものである。
   ウ 「違法」とは,公務員としての職務上の注意義務に違反することをいう(※4)。上記のように,本件公表は,A県知事が大店立地法9条1項の要件を逸脱し,また同条2項の要件にも違反するものであって,誤った事実認定によってXの営業の自由等を不当に制限するものであるから,A県知事が適正な事実認定に基づいて法令を遵守すべき義務に違反する。
 またXとしては,公表された事実認定に誤りがあり,またXがあたかも法律に違反しているというような情報を公表する手続としては,公表前に十分にXの言い分を聴く機会を与えるべきであるにもかかわらず,それを与えていない点で,A県知事がとるべき職務上の注意義務に違反していると主張することも考えられる。しかし,大店立地法上,意見を聴く機会を与えることは手続として要求されておらず,これを特に条理で規定している場合などは格別,そうでない限りは意見を聴く機会を与えなかったことが直ちに公務員の職務上の注意義務に違反したものであるとはいえない。
 したがって,A県知事が本件公表を行ったことは,A県知事が適正な事実に基づいて法令を遵守すべき義務に違反した限度で「違法」である。
   エ 本件公表により,Xは,名誉,信用が侵害され,企業としてのイメージが低下したものとして「損害」があったと認められる。
  ⑶ よって,Xが提起する国家賠償請求訴訟は認められる可能性が高い。

以 上


(※1)「公表は,義務履行確保の手段として高い効果が期待される半面,氏名を公表される当該個人ないし企業に深刻な不利益を与える可能性があり,また,いったん誤った情報が公にされると原状回復が事実上困難であるという点に,特徴がある。そこで,義務履行確保のための公表制度を設けるためには法律の根拠が必要というべきであり,公表に先立って直接の利害関係者に意見書提出を認める等の事前手続を整備するのが妥当である。公表により自己の権利利益が侵害されると考える者には,公表の前提となる義務賦課行為を取消訴訟(さらに執行停止申立て)で争うこと,人格権を根拠に公表の差止請求をすることなどの対抗手段があり得る。」櫻井敬子ほか『行政法[第4版]』188頁
(※2)この要件について判断したと思われるものとして,例えば最判平成22年6月29日集民234号150頁があります。「これらの事情を総合考慮すると,被上告人が,被上告人建物2階の各居室等から,本件葬儀場に告別式等の参列者が参集する様子,棺が本件葬儀場建物に搬入又は搬出される様子が見えることにより,強いストレスを感じているとしても,これは専ら被上告人の主観的な不快感にとどまるというべきであり,本件葬儀場の営業が,社会生活上受忍すべき程度を超えて被上告人の平穏に日常生活を送るという利益を侵害しているということはできない。」
(※3)「人格的利益をめぐる不法行為の成否に関する判断基準としては,学説上は,被侵害利益の性質と侵害行為の態様との相関関係において総合的に判断するという相関関係説が通説である。受忍限度論は,上記相関関係説を基礎として,人格的利益ないし人格権を侵害する行為の違法性の判断基準として発展したものであり,その内容は,事案の諸要素を比較検討して総合的に判断し,上記の侵害が一般社会生活上受忍すべき限度を超えるものかどうかによって判断するというものである。」最判解民事篇平成23年度(下)574頁
(※4)「民法709条とは異なり,国家賠償法1条は,『故意又は過失』とは分けて,『違法』を要件として明記しているが,公務員の公権力の行使は,どのような場合に『違法』と評価されることになるのであろうか。行政活動と法との関係は,多様であるから,国家賠償法における違法の意味も,一義的ではない。まだ,パトカー自己における警察官による運転や学校事故における教員による監督などを考えると,こうした例においては,事故を避けるために運転手や教員がなすべき行為について,法令が具体的なルール(行為規範)を定めているわけではない。したがって,こうした場合の運転手や教員の行為が違法とされるのは,たとえば道路交通法や学校教育法といった個別の法令の規定に違反するからではなく,より一般的に,公務員としての職務上の注意義務(安全に運転する義務,あるいは,生徒の安全を確保する義務)に違反する場合ということになる。そして,この注意義務違反の有無は,事故の予見可能性や回避可能性によって判断されることになるから,結局のところ,先に述べた客観化された過失としての回避義務違反と同義ということになる。」曽和俊文ほか『現代行政法入門[第3版]』367頁


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2019-02-26(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題4

やべぇ……

このペースだと模試までに事例研究解きおわんねえ……

どうしようかな……

やるしかないか……

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ Aは,甲県の山林内の谷地にある土地(以下「本件土地」という)に土砂を搬入して,最終的にはこれを農地にすることを計画した。本件土地は,山林内の谷地のままの自然な状態に置かれていたものであり,一部においては樹木が生い茂っている。本件土地の地目は山林とされており,本件土地および周辺の山々においては,これまでのところ果樹園等の農地に利用されている様子はない。本件土地は,甲県知事により宅地造成等規制法(以下「宅造法」という)3条に基づき指定された宅地造成工事規制区域の中にある。
 Aは,本件土地における農地の造成が宅造法等による規制の対象になるかどうかについて,甲県の担当者と事前相談を行った。その際甲県の担当者は,農地の造成はそもそも宅造法による規制の対象外であり,本件土地に土砂を搬入して農地を造成する場合,面積1,000㎡程度であれば他の法令や条例による規制も受けない旨の回答をした。そこでAは,本件土地において土砂の搬入を開始した。Aはその後,断続的に土砂を本件土地に搬入し,土砂の埋立面積は500㎡を超えた。しかしながら本件土地は,土砂の搬入が開始されてから約5年が経過した時点においても,農地として提供できる状態には至っておらず,施工完成の時期がいつになるかさえ明らかでないという状況であった。
 この事態を知った甲県の担当課では,Aが本件土地で農地を造成するというのは単なる口実であって,Aは本件土地を土砂の堆積場として利用しているだけではないのか,本件土地への土砂の搬入が農地の造成に当たらないとすると,これを宅造法によって規制することができるのではないかという意見が出されるようになった。そこで甲県は,Aによる本件土地への土砂の班に雄(以下「本件土砂搬入」という)は宅造法2条2号にいう「宅地造成」に該当するという解釈を前提として,Aに対して本件土砂搬入を直ちに停止すること,および同法8条1項本文の許可を申請することを求める行政指導を行い,Aがこれに応じない場合には同法14条2項に基づく監督処分のほか刑事告発を検討するという方針を決定した。この方針に従って甲県の担当者がAに対して行政指導を行ったところ,Aは,本件土砂搬入が同法2条2号にいう「宅地造成」に該当すると判断されたことには不服があり,訴訟提起も辞さない意向である旨を表明した。

〔設問1〕
1.甲県の立場から,本件土砂搬入が宅造法2条2号にいう「宅地造成」に該当することを主張しなさい。
2.上記の甲県の主張に異論があるAとしては,行政訴訟を提起して争う場合,どのような訴訟を提起すれば良いか。訴訟要件充足性に注意して,複数の訴訟を検討しなさい。

Ⅱ 乙県では,「宅地造成等規制法第8条第1項本文に基づく宅地造成に関する工事の許可に係る事務取扱要綱」が作成されている。この要綱中には,上記許可の申請者は,宅地造成に伴う災害により被害を受けるおそれがある者との間で,災害の発生を防止するための措置,災害発生時の原状回復および補償に関する協定(以下単に「協定」という)を締結するよう努めなければならず,申請者が正当の理由なく協定を締結しない場合には許可を与えないという定めがある(以下この定めを「本件協定条項」という)。
 Bは,乙県知事により宅造法3条に基づいて指定された宅地造成工事規制区域の中にある土地において宅地造成に関する工事を行うことを計画し,乙県の担当者と事前相談を行った。その際乙県の担当者は,本件協定条項を示して,当該土地に隣接する場所にある土地(以下「本件隣接地」という)を所有しているCとの間で協定を締結するよう求めた。本件隣接地に住宅はなく,Cは同署に居住しているわけではないが,そこで樹木を植栽している。樹木の管理はCの親族であるDが行っており,Dは本件隣接地を頻繁に訪れている。
 Bは協定の締結について交渉するためCの自宅を訪問したが,その際Cは,Bが計画している工事によって土砂が流出し,本件隣接地および同所で植栽されている樹木が被害を受けるおそれがあると主張して,協定の締結を拒否した。Cとの間で協定を締結することは困難であると感じたBは,協定の締結は宅造法8条1項本文の許可を受けるための絶対条件ではないのではないかと考えるようになった。そこでBは,協定を締結しないまま,乙県知事に対して同許可を求める申請をした。しかしながら乙県知事は,Bの申請に係る工事に伴って土砂が流出した場合には本件隣接地が被害を受ける可能性があり,Cとの間で協定を締結しないことについて正当の理由は認められないとして,Bに対して不許可処分をした(以下「本件不許可処分」という)。
 CおよびDの住所は本件隣接地の付近にはない。Bが協定を締結するためにCの自宅を訪問したのはこれまで1回のみである。

〔設問2〕
1.本件不許可処分は適法化。反対説の主張にも留意しつつ検討しなさい(本件不許可処分に手続上の違法はないものとする)。
2.仮に乙県知事がBの申請を認めて許可処分をした場合,CおよびDはその取消訴訟を提起することができるか。原告適格に絞って検討しなさい。


1問でいろんなこと聞いてきすぎなんですよね。

だから答案を書くのにめちゃくちゃ時間かかるんですよね。

本当に困ります。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
 本件土砂搬入が「宅地造成」(宅造法2条2号)にあたるか。
 本件土地は,山林内にあり,一部においては樹木が生い茂っていることに加えて,地目としても山林とされているのであるから,「森林」(同法2条1号)にあたる。そうすると,本件土地は,「宅地以外の土地」にあたる。
 本件土砂搬入は,本件土地を,Aの相談のような農地造成のために用いるものではなく,土砂の堆積自体を目的として行われるものである。土砂の堆積場は,「農地,採草放牧地及び森林並びに道路,公園,河川その他政令で定める公共の用に供されている土地」にはあたらないから,それら以外の土地として「宅地」にあたる。そうすると,本件土砂搬入は,「宅地以外の土地を宅地にする」行為である。
 本件土砂搬入により,本件土地内に土砂が堆積されていることから,当該行為は「盛土」にあたる。これにより,土砂の埋立面積は500㎡を超えているから,「盛土であって,当該盛土をする土地の面積が500平方メートルを超えるもの」にあたり(宅造法施行令3条4号),「土地の形質の変更で政令で定めるもの」にあたる。
 したがって,本件土砂搬入は「宅地造成」にあたる。
 2 小問2
  ⑴ Aとしては,甲県知事が宅造法14条2項に基づいてする命令(以下「本件命令」という。)の差止訴訟(行訴法3条7項)を提起することが考えられる。
 本件命令は,Aに本件土砂搬入を停止させるものであるから,甲県知事がその優越的地位によって一方的にAの権利義務を形成するものであって,法律上認められているものであるから,「処分」にあたる。
 「一定の処分」とは,裁判所において判断が可能な程度に特定された処分を意味する。本件命令は,宅造法14条2項に基づくものであるから,その根拠法規が特定されている。この点,同項には,工事施行停止命令と措置命令とが予定されているが,Aは本件土砂搬入に宅造法が適用されないことを理由として本件命令の差止めを求めているから,両者を区別する意味はない。したがって,宅造法14条2項に基づく処分であることが特定されたことをもって,裁判所において判断が可能な程度に処分が特定されているということができる。
 また,甲県は,Aが行政指導に応じない場合には本件命令を行うことを予定しており,既にAはこの行政指導に不服であることを表明しているから,本件命令が発令される蓋然性が認められ,「処分がされようとしている場合」にあたる。
 「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の観点から,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟(行訴法3条2項)等を提起して執行停止(同法25条1項)の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する(※1)。これを本件についてみると,本件命令によりAに生ずる損害は財産上の損害にすぎないから,金銭賠償による損害の回復が可能であって,直ちに回復困難な損害が生ずるものとは認められない。また,本件命令がされた後に,Aは本件命令の取消訴訟を提起し,その執行停止の決定を受ければ,損害の発生を避けることができる。したがって,本件命令によりAに「重大な損害を生ずるおそれ」があるとはいえない。
 よって,Aは本件命令の差止訴訟を提起することはできない。
  ⑵ そこで,Aとしては,本件土砂搬入が「宅地造成」にあたらないことの確認を求める当事者訴訟(行訴法4条後段)を提起することが考えられる。
 確認訴訟においては,訴訟要件として,確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である。
 ①Aは,本件土砂搬入が「宅地造成」に該当するとの甲県の主張に異論があるため,本件土砂搬入が「宅地造成」に該当しないことを確認することが直截的である。そして,これは現在の法律関係に関するものであるから,確認対象として適切である。
 ②Aとしては,上記のように,差止訴訟を適法に提起することができないため,その他にとりうる手段がなく,方法選択の適切性が認められる。
 ③Aと甲県との間では,宅造法の適用をめぐる具体的な紛争が発生しており,本件土砂搬入に宅造法が適用されると本件命令がされるか否かに関わらず,Aによる本件土地の利用が制限され(宅造法8条),これに違反した場合には刑事罰も科される危険がある(同法27条3号)。そうすると,Aには既にその法的地位に具体的な危険が生じており,現時点において裁判所による確認を求める必要があるといえるから,即時確定の利益が認められる。
 したがって,上記当事者訴訟においては,確認の利益が肯定される。
 よって,Aは,本件土砂搬入が「宅地造成」にあたらないことの確認を求める当事者訴訟を適法に提起することができる。
第2 設問2
 1 小問1
  ⑴ 本件不許可処分は,BがCとの間で,乙県が作成した「宅地造成等規制法第8条第1項本文に基づく宅地造成に関する工事の許可に係る事務取扱要綱」(以下「本件要綱」という。)中に規定されている協定(以下「本件協定」という。)を締結していないことに正当な理由がないことを理由としてされたものである。
 そこで,前提として,本件要綱の法的性質について検討すると,宅造法では,宅地造成工事規制区域内における宅地造成工事については,都道府県知事の許可を受けなければならず(8条1項本文),申請に係る宅地造成工事計画が9条の規定に適合しないと都道府県知事かが認めるときには,許可がされない(同条2項)。そして,9条1項は,宅地造成工事が,政令または都道府県の規則で定める技術的基準に従い,宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものであることを要求している。また,宅造法施行令15条2項は,都道府県知事が規則で技術的基準を強化・付加することを認めている。申請に係る工事計画がこの規定に従っていない場合には,宅造法8条1項本文の許可は与えられない。
 しかし,本件協定条項は,甲県の規則の形式で定められたものではなく,内容面からみても,宅造法に言う技術的基準に当たるということはできない。したがって,本件協定条項は,行政規則(※2)の性質を有する審査基準である。
  ⑵ そこで,本件協定条項を設ける本件要綱の合理性について検討する。
 この点,Bとしては,本件要綱は,内容において不合理であると主張する。すなわち,宅造法8条1項本文に定める許可にあたって不許可事由を定める同法9条は,工事が技術的基準に従っているか否かにのみ着目していること,及び宅地造成に関する工事をすることは本来自由であることに鑑みれば,技術的基準に適合する工事については必ず許可が与えられなければならない。しかし,本件協定条項は,そのような工事であっても不許可処分をすることを認めるものであり,宅造法8条1項本文の許可の制度趣旨に反するものである。さらに,本件協定条項は宅地造成に伴う災害により被害を受けるおそれがある者に事実上工事に対する拒否権を与えるものであって,法が予定するところではない。したがって,本件協定条項を定める本件要綱は,その内容が不合理であるため,これに基づく本件不許可処分は違法である。
 しかし,宅造法8条2項は,同法9条の規定に適合する計画は必ず許可しなければならないとは規定しておらず,むしろ宅造法は宅地造成に伴う災害を防止し,国民の生命および財産の保護を目的としているから(1条参照),そのような災害により被害を受けるおそれのある者との間で災害防止に関する協定を締結することは同法の目的に反しない。また,本件協定条項は,正当な理由がある場合には,協定を締結することを強制しておらず,申請者に過度な負担を課すものではない。したがって,本件要綱は,その内容が不合理であるとは認められない。
  ⑶ 次に,本件協定条項の適用にあたり,「正当な理由」が存在するか否かについて検討する。
 この点,Bとしては,協定の締結に努力したにもかかわらず,Cが工事に反対しているため協定を締結することができなかったのであり,協定不締結についてBに責任はないといえるため,「正当な理由」があると主張する。
 しかし,Bは協定を締結するためにCの自宅を訪問したのは1度のみであって,未だに両者の間で協定が締結される可能性が全くないということはできない。また,Bの真正に係る工事に伴って土砂が流出した場合には,本件隣接地が被害を受ける可能性があり,協定を締結する必要性は未だ失われていない。そうすると,本件協定条項の適用にあたり「正当な理由」はない。
  ⑷ よって,本件不許可処分は適法である。
 2 小問2
  ⑴ C及びDは,乙県知事がBに対してした許可処分(以下「本件許可処分」という。)の取消訴訟を提起するための原告適格を有しているか。
  ⑵ 処分の取消訴訟の原告適格は「法律上の利益を有する者」に認められるところ(行訴法9条1項),「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含む場合には,このような利益も法律上保護された利益にあたる(※3)
 本件許可処分の根拠法規は宅造法8条1項本文であり,この許可を行うにあたっては,宅地造成工事が技術的基準に従い,宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置を講ぜられたものでなければならない(9条1項)。また,都道府県知事は,工事の施工に伴う災害を防止するため必要な条件を許可に付することができる(8条3項)。これらの規定は,いずれも宅地造成工事に伴う災害を未然に防止しようとする趣旨に出たものである。加えて,宅造法1条は,宅地造成に伴う崖崩れまたは土砂の流出による災害の防止のため必要な規制を行うことにより,国民の生命および財産の保護を図ることを目的としており,同法3条は宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの大きい地域を宅地造成工事規制区域に指定するものとしている。これらの規定を併せて考えれば,宅造法8条1項本文は,宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事に伴って崖崩れまたは土砂の流出による災害が発生することを防止し,国民の生命および財産を少なくとも一般的公益として保護しているものであると考えられる。
 そして,宅地造成に伴う崖崩れまたは土砂の流出による災害が発生した場合には,当該宅地造成に関する工事が行われる土地に近接する一定の範囲において,生命や身体,財産に関する直接的な被害が生ずることが予想される。このような被害の内容,性質等に鑑みれば,宅地造成に関する工事の許可についての宅造法の規定は,当該許可にかかる工事に伴う災害により直接的な被害を受けるおそれのある個々の生命・身体および財産を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと考えることができる。
 これを本件についてみると,Cは,その財産である本件隣接地を所有している者であり,宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂流出が生じれば,本件隣接地に対する直接的な侵害を受けるから,本件隣接地はCの個別的利益として宅造法8条1項本文によって保護される。したがって,Cは「法律上の利益を有する者」として,原告適格を有する。
 また,Dは,本件隣接地を所有する者ではないが,同場所に頻繁に訪れ樹木の管理を行っている。そうすると,Dは,同場所に定住している者にも匹敵し得るほど本件隣接地に強い結びつきを有する者であるということができる。そして,宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂流出にDが巻き込まれる可能性があり,その生命・身体に対する侵害を直接的に受ける可能性があるから,Dの生命・身体は,Dの個別的利益として宅造法8条1項本文によって保護される。したがって,Dは「法律上の利益を有する者」として,原告適格を有する。

以 上


(※1)「差止めの訴えの訴訟要件については,当該処分がされることにより『重大な損害を生ずるおそれ』があることが必要であり(行訴法37条の4第1項),その有無の判断に当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている(同条2項)。行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から,そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。したがって,差止めの訴えの訴訟要件としての上記『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。」最判平成24年2月9日民集66巻2号183頁
(※2)「委任命令にせよ執行命令にせよ,法規命令と見なされて国民に対する法的拘束性を認められるには,明示的であれ黙示的であれ法律のお墨付きを得たものでなければならない。これに対し,もともと国民に対する法的拘束力を認め得るものではないため,法律のお墨付きを直接得る必要もなく制定される行政立法のことを,『行政規則』という。行政規則には,『通達・訓令』と呼ばれるもの,『公営造物規則』と呼ばれるもの,『裁量基準』と呼ばれるもの等がある。」曽和俊文ほか『現代行政法入門[第3版]』37頁
(※3)「行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。」最判平成17年12月7日民集59巻10号2645頁
(※4)原告適格の書き方例(一般的公益の認定)として,平成28年公法系科目第2問の優秀答案はこのような書き方をしています。「本件例外許可の根拠法規は法48条1項但書であり,それによれば,良好な住環境を害するおそれがないと認める場合に例外許可ができると定めており,また,本文においては,別表2(い)に掲げる建築物以外の建築を禁じている。そして,同項は建築確認(法6条)がなされる際の『建築基準法令の規定』の一つに位置付けられているところ,同じく『建築基準法令の規定』の一つに,建築物の敷地,構造または建築設備に関する法律として,都市計画法が存在する。すなわち,同法は『目的を共通にする関係法令』に位置付けられるため,同法の規定についても見る。ここで,同法8条1項1号において第一種低層住居専用地域を定義し,3項2号イにおいては建築物の容積率や敷地面積の最低限度等,市街地の環境を確保するための規定が置かれ,また,ロにおいては,建築物の建ぺい率や建築物の高さの限度等,第一種低層住居専用地域における良好な環境を保護するための規定が置かれている。これらの目的を共通にする関連法令の規定から,48条1項但書は,低層住宅にかかる良好な住環境を保護していることが推察でき,加えて法1条においては,国民の生命や健康の保護が目的として掲げられている。以上のことから,48条1項但書は,第一種低層住居専用地域における住民の良好な住環境を少なくとも公益として保護していると解される。」辰巳法律研究所編『平成28年司法試験論文合格答案再現集』6頁
(※5)原告適格の書き方例(個別的利益の認定)として,前掲優秀答案はこのような書き方をしています。「続いて,個別的法益としてもこれを保護しているかどうかについてみるに,本件例外許可がなされた場合には,自動車の騒音や排ガス,ライトグレア等による被害が発生しうる。そして,本件スーパー銭湯は年中無休で,しかも午前10時から午後12時までほぼ終日営業されており,また,土日休日には1日に約550台もの自動車が出入りするというのであるから,これらの被害の蓄積により重大な健康被害が生じるといえる。しかも,かかる被害は施設に近づけば近づくほど大きくなるという関係にある。また,48条14項は,利害関係人に対して公聴会を設ける旨定めている。そして,ここにいう『利害関係人』の意義は法からは明らかではないが,行政庁自ら要綱として申請建築物から一定の距離内の土地建物の所有者に対し案内書を送付するとしていることからすれば,同項にいう利害関係人には申請建築物の近隣住民が含まれていると解すべきである。以上より,近隣住民にとっての健康被害が重大なうえ,法も近隣住民に対する公聴会参加の機会を保障していることからして,上記利益は個々人の個別的利益としても保護されているといえる。そして,どの範囲の近隣住民まで認められるかについて検討するに,上記要綱は法令ではないものの,これを参考にし,申請建築物の50メートル内に居住し,重大な健康被害が生じうる者について,原告適格が認められると考える。」前掲辰巳6頁


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-02-25(Mon)

【事例研究行政法】第2部問題3

今日からまた行政法を進めます。

一刻も早く事例研究を終わらせてしまわないといけません。

第2部は先がまたまだ長いです。

続きの問題3からです。

ちなみに先に言っておくと,同問題については,

平裕介先生によるとても参考になる答案が既にWeb上に公開されていますので(→こちら),

当ブログの答案を見る必要は1ミリもありません。

もっとも,平先生のブログは,さすが研究者ともあって,

方々の文献に当たられていますが,

こちらは所詮一受験生が書いた者にすぎないので,

たぶん多くの受験生が使用しているであろう一般的な基本書と,

事例研究の解説のみを使って答案を書いています。

その意味では,実際に答案に示すことができる

現実的な答案に近いものが示せているのではないかと思います。

(とはいえ平先生の答案が答案政策上とびきり現実的でないことを書いているわけでもありませんが。)

≪問題≫
 次の文章を読んで,資料を参照しながら,あなたが,Mの依頼を受けたP法律事務所の若手弁護士Qであるとして,以下の設問に答えなさい。

 Mは,介護保険法に基づく居宅介護支援事業などを目的として設立された株式会社である。2009年4月26日,Mは,甲県乙市内にある本件土地をBから購入し,そこに,老人デイサービスセンターを設置することを計画した。
 本件土地は市街化調整区域にあり,通常は開発が抑制されているところであったが,老人福祉施設である老人デイサービスセンターの経営は第2種社会福祉事業に該当し,その施設は「当該開発区域の周辺地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物」(都計34条1項1号)に該当するので,法制度上は開発許可を得て建設することができるものであった。そこでMは,甲県知事から都計法29条に基づく開発許可を得るための準備を始めた。
 ところで,開発許可申請を行うについては,当該開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意(都計32条)が必要とされている。本件土地の東側には,開発行為に関係がある公共施設として市道丙号線および水路が存在していた(なお,本件で「関係がある」と言えるかどうかも問題となりうるが,この点につき「関係がある」ことについて争いがないものとする)。そこでMは,本件道路および水路の管理者である乙市の市長に対して,公共施設管理者の同意願を提出した。
 乙市市長は,Mに対して,2009年8月20日付けで,本件同意願に対して同意しない旨の通知をした。しかし,Mとしては,この不同意通知にはとうてい納得がゆかなかった。市道丙号線は,老人デイサービスセンターが設置された場合の送迎車両等の頻繁な通行に対しても十分な幅員を有しており,市道との関係で乙市市長が不同意をする理由はないはずであった。また,Mが計画している老人デイサービスセンターでは,法律の規制に適合した合併浄化槽を設置することを計画しており,飲用に耐えうる水質の排水がされ,汚水等が流れる可能性は全くないように工夫されていた。それゆえ本件開発行為による水路への排水によって放流先である水路の適切な管理に何ら支障も弊害も生じるおそれがないはずであった。
 そこでMは,2009年10月13日付けで,甲県開発審査会に対して本件不同意通知についての審査請求を行った。しかし,甲県開発審査会は,公開による口頭審理を実施したうえ,2010年1月6日付けで,本件審査請求を却下する旨の裁決を行った。却下裁決の理由は,開発審査会に与えられた権限が都計法50条に掲げる処分は存在せず,法32条の同意ないしこれを拒否する行為は,法50条に掲げられた行為に当たらないことから,これに対する審査権限を有しないというものであった。
 Mは,開発審査会に対する審査請求と並行して,2009年10月19日付けで,甲県知事に対して,乙市の同意書のないままに本件開発行為に係る開発許可を申請した。しかし,甲県知事は,2010年1月15日付けで,本件開発行為に関係のある公共施設の管理者である乙市の同意を得たことを証する書面が開発許可申請に添付されていないことを理由として不許可処分を行った。
 Mは,乙市の不同意通知に対して強い不満があり,また,同意書がないことを理由とする甲県知事の開発不許可処分に対しても納得がゆかない。そこで,訴訟を提起して,これらの違法性を争いたいと考えて,2010年1月20日,P法律事務所を訪ねた(P法律事務所でのやりとりの一部については後掲【資料1】を参照)。

〔設問1〕
1.不同意の違法性を争い,公共施設管理者の同意を得るためには,いかなる訴訟を提起すればいいのか。また,その場合に,訴訟要件において特に留意すべきことは何か。
2.不許可処分の違法性を争い,開発許可を得るためには,いかなる訴訟を提起すればいいのか。また,その場合に,訴訟要件において特に留意すべきことは何か。

〔設問2〕
 上記の設問1-1,1-2の訴訟の本案において,被告の行為の違法性をどのように主張すればいいのか。

【資料】略


最高裁を叩くだなんておこがましいこと,僕にはできません!!

っていうか,そんな知恵は僕にはありません!!

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
  ⑴ Mは,乙市市長がした公共施設管理者としての不同意(以下「本件不同意」という。)について争おうとしている。この点,判例では,公共施設管理者の不同意について処分性(行訴法3条2項)を否定したものがある(※1)。そこで,本件不同意について,処分性を否定する場合と,これを肯定する場合とに分けて検討する。
  ⑵ 本件不同意の処分性を否定する場合
 Mとしては,乙市を被告として,同意義務があることの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起することが考えられる。確認訴訟においては,訴訟要件として,確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である(※2)
 これを本件についてみると,①同意義務の有無の確認は現在の法律関係の確認であるから,確認対象として適切である。②同意の処分性が否定される場合には,抗告訴訟によってこれを争うことができず,他に適切な救済手段がないから,方法選択として適切である。③同意が得られない場合には開発許可申請をすることができず,同意義務の有無を現時点で確認することが紛争の解決に必要であるから,即時確定の必要性もある。したがって,同意義務があることの確認訴訟は,その確認の利益を有し,訴訟要件を満たす。
 よって,Mは,同意義務があることの確認訴訟を適法に提起することができる。
  ⑶ 本件不同意の処分性を肯定する場合
   ア Mとしては,乙市を被告として(行訴法11条1項1号,38条1項),本件不同意の取消訴訟(同法3条2項)及び同意の義務付け訴訟(同条6項2号)を併合提起することが考えられる(同法37条の3第3項2号)。
   イ まず本件不同意の取消訴訟の訴訟要件について検討する。
 「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(※3)
 これを本件についてみると,本件不同意は,乙市市長が都計法32条1項によって認められた優越的地位に基づいて一方的に行うものであって(※4),公権力の主体たる公共団体が行う行為である。
 判例によれば,公共施設管理者の同意の要件があってはじめて開発行為を認める法効果が生じるのであって,公共施設管理者の不同意は,開発行為を禁止又は制限する効果をもつものではなく,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものではないとされている(※5)
 しかし,都計法30条2項及び32条1項によれば,開発許可の申請にあたっては,公共施設管理者の同意書面を添付する必要があり,この同意がないと開発許可の申請ができない構造となっており,公共施設の管理者がこの同意をしない場合には,開発許可の適否の判断を受ける機会自体が得られないこととなる。自己の所有地において開発行為を行うのは,憲法29条によって保障された財産権の行使であり,当該法令上の制限に適合しているのか否かの判定を受ける機会は保障されるべきであることからすると,公共施設管理者の不同意は,開発許可申請を適法に行う地位を侵害するものである(※6)。また,公共施設管理者による不同意の処分性を肯定しない場合には,開発行為の許可を求める国民は,開発行為の途を閉ざされることとなるから,その者の実効的な権利救済の観点からも,処分性が肯定されるべきである。そうすると,本件不同意は,国民の権利義務を形成またはその範囲を確定するものである。
 したがって,本件不同意は,「処分」にあたる。
 Mは本件不同意の相手方であるから,原告適格が認められる(行訴法9条1項)。
 本件不同意が通知されたのは2009年8月20日であるから,2010年1月20日現在では,出訴期間を徒過していない(同法14条1項)。
 よって,本件不同意の取消訴訟は,その訴訟要件を満たすから,適法に提起することができる。
   ウ 次に同意の義務付け訴訟に係る訴訟要件について検討すると,公共施設管理者による同意は,Mの開発行為を行う地位を付与するための一要件として機能し,裁判所に判断可能な程度に特定されているから,「一定の処分」(行訴法3条6項2号)にあたる。
 Mは,都計法32条1項による同意を得るための申請をしているから,「法令に基づく申請」(同法37条の3第1項2号)をしている。
 また,Mは,本件不同意の取消訴訟を適法に提起することができるから,これを併合提起することとなる(同法37条の3第3項2号)。
 よって,同意の義務付け訴訟は,その訴訟要件を満たすため,適法に提起することができる。
 2 小問2
 Mは,甲県を被告として,甲県知事がした不許可処分(以下「本件不許可処分」という。)の取消訴訟及び許可の義務付け訴訟を併合提起する。
 本件不許可処分は,甲県が都計法29条1項に基づいてした処分であって,「第50条第1項に規定する処分」にあたるから,これに対する処分の取消しの訴えを提起するにあたっては,開発審査会の裁決を経る必要がある(都計法52条)。したがって,Mは,上記訴え提起する前提として,甲県開発審査会に対して審査請求を行わなければならない点に留意すべきである。
第2 設問2
 1 設問1小問⑴の訴えとの関係
  ⑴ まず,Mとしては,本件不同意は,その要件を欠くため,違法であるとの主張を行う。
 本件不同意は,都計法32条1項の規定に基づいてされているところ,同条3項は同意の前提となる協議について,「公共施設の適切な管理を確保する観点から」行うものとしている。前提として,この点について乙市市長に裁量が認められるかについて検討すると,同意があることは開発許可申請の前提となっていることに鑑みると,不同意は公共施設の適切な管理に支障がある場合に限定されるべきであり,裁判所がその支障の有無について独自に判断できることからすると,司法審査との関係で認められる行政裁量はないというべきである(※7)
 そこで,Mが計画している老人デイサービスセンター(以下「本件センター」という。)の設置についてみると,本件センターからの排水は合併処理浄化槽で浄化された清水であり,放流先である水路の適切な管理に何らの支障も弊害も生じるおそれはないものである。また,市道丙号線は,本件センターへの送迎車両等の頻繁な通行に対しても十分な幅員を有しているので市道の適切な管理に対する支障もないということができる。したがって,本件センターの設置にあたり,開発行為に関係がある公共施設については,いずれもその適切な管理に支障を及ぼすおそれがないのであるから,都計法32条3項の指針に従えば,本件不同意はその要件を欠くこととなる。
 したがって,本件不同意は違法である。
  ⑵ なお,乙市からは,本件不同意は,都計法が都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市開発に伴う公共施設への影響を考慮して,これの適切な管理を確保する観点から,開発許可申請者と公共施設管理者との間で協議を行うものとしているところ(32条3項),このような観点からの判断をするには,当該施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地からの判断が不可欠であるため,その同意にあたっては,行政庁の広範な裁量にゆだねられているとの反論が想定される(※8)(※9)
 そこで,Mとしては,仮に乙市市長に裁量が認められる場合であっても,本件不同意は,その裁量を逸脱・濫用したものであって,違法であるとの主張を行う(行訴法30条)。そして,乙市市長が本件不同意をすることの判断の内容が社会通念上著しく妥当性を欠く場合には,裁量の逸脱・濫用が認められる(※10)(※11)
 これを本件不同意についてみると,丙町協議会の排水同意は都計法上要求されておらず,これがないことを不同意の理由とすることはできない。また,同意は「公共施設の適切な管理を確保する観点から」行われるべきであり,地元団体からの反対署名があることを考慮して不同意とすることは,考慮すべきでない事情を考慮したものである。さらに,公共施設の適切な管理の支障が認められるかについて,客観的事実に照らして検証・検討することなく,住民団体の反対を理由に不同意とすることは,公共施設管理者としての責任を放棄したものである。以上に照らすと,乙市市長が本件不同意をすることの判断の内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものということができるから,乙市市長が本件不同意をしたことは,その裁量を逸脱・濫用したものである。
 したがって,本件不同意は違法である。
 2 設問1小問⑵の訴えとの関係
  ⑴ 本件不同意の処分性が否定される場合
 Mとしては,本件不許可処分は,公共施設管理者である乙市市長の同意がないことによるから,上記のように本件不同意が違法であるとされる以上,乙市市長は同意をすることとなり,甲県のすべき許可処分の要件を満たすこととなる。したがって,本件不許可処分は,許可処分の要件を満たすにもかかわらず,これがされなかったものであるから,違法である。
 これに対して,甲県は,都計法上公共施設管理者の同意書を開発許可申請の添付資料としているのは(30条2項),同意・不同意の判断を公共施設管理者に委ね,知事としては同意書の有無の形式審査をするだけで足りるとする趣旨であるから,甲県知事の審査権限は同意・不同意にまで及ぶものではなく,裁判所の審査も同意・不同意にまで及ぶものではないとの反論をすることが想定される。
 しかし,甲県知事の審査権限と裁判所の審査範囲とは,必ず一致する必要があるものではなく,裁判所は独立して実体的判断をすることができる。したがって,裁判所は,本件不同意の違法性を理由として,本件不許可処分が違法であるとすることができる。
  ⑵ 本件不同意の処分性が肯定される場合
 Mとしては,乙市市長の同意は,甲県知事がする開発許可と一連の手続を形成しているから,本件不許可処分の取消訴訟の中で,本件不同意の違法性を主張することができるとの主張を行う。
 先行処分に係る違法性を後行処分の取消訴訟の中で主張することは,先行処分に係る排他的管轄に抵触するものであって,原則としては認められないが,先行処分と後行処分とが同一の目的を達成するために行われ両者が結合して初めてその効果を発揮する関係にあり,先行処分を争うための手続的保障が十分に与えられていない場合には,先行処分と後行処分とは一体的な手続であると評価され,先行処分に係る違法を後行処分の取消訴訟の中で主張することができる(※12)
 これを本件についてみると,公共施設管理者の同意は開発許可の前提として要求される行為であって,それ自体独立した意味をもつものではない。また,不同意が処分であるか否か不明である本件のような場合には,不同意の処分性を認めたからといって,不同意の違法性を不同意の取消訴訟の中でしか争えないとすることは,手続的保障を欠くものであるといえる。したがって,本件不同意と本件不許可処分とは,一体的な手続であると評価されるから,本件不同意の違法性を本件不許可処分の取消訴訟の中で主張することが可能である。
 したがって,本件不許可処分は違法である。

以 上


(※1)最判平成7年3月23日民集49巻3号1006頁は「公共施設の管理者である行政機関等が法三二条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分には当たらない」と判断しています。
(※2)「『確認の利益』の有無をいかなる基準で判断すべきかについては,以下のような議論がある。当事者訴訟も本質的には民事訴訟であるから,『確認の利益』も民事訴訟と同様に考えてよいというのが,通説・判例の考え方である。すなわち,①確認の対象は原則として『現在の法律関係』であり(確認対象選択の適切性),②給付訴訟や形成訴訟で救済できる場合にはそちらによる救済を優先すべきであり(方法選択の適切性あるいは確認訴訟の補充性),③法律関係や権利義務の存否を確認することで原告の救済がなされる場合,すなわち紛争が成熟性を有する場合に認められる(即時確定の必要性)。」曽和俊文ほか『現代行政法入門[第3版]』320頁
(※3)最判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁
(※4)櫻井敬子ほか『行政法[第4版]』280頁では,公権力性について,「裁判実務上,処分性を根拠づける『公権力の行使に当たる行為』とは,『法が認めた優越的地位に基づき,行政庁が法の執行としてする権力的な意思活動』であると解されてきた。」と紹介されていますが,一方で,「公権力性の具体的な内容は,それを『法が認めた優越的地位』や『私的利益に還元できない公益』と敷衍してみたところで,なお明確な基準とはいい難く,結局ところ,根拠法令において当該行為を抗告訴訟の対象とする趣旨が認められるかどうかにつき,総合的に判断するほかはない。」としていますので,単純に「優越的地位に基づいて一方的にする行為」などと評価をしただけでは公権力性は認定しきれていないのだろうと思います。もっとも,本問では少なくとも公権力性がそこまで問題とならないと思われるので,あまり詳細なあてはめは,かえって答案としてのバランスを欠くことになるのだろうと思われます。
(※5)「国若しくは地方公共団体又はその機関(以下「行政機関等」という。)が公共施設の管理権限を有する場合には、行政機関等が法三二条の同意を求める相手方となり、行政機関等が右の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。したがって、開発行為を行おうとする者が、右の同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、右の同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない。」前掲最判平成7年3月23日
(※6)「法30条2項、32条1項によれば、開発許可の申請については、公共施設の管理者の同意書面を添付する必要があるので、この同意がないと開発許可の申請ができない構造となっており、公共施設の管理者がこの同意をしない場合には、前記同意書の添付がないという理由で開発許可の申請に対し不許可処分がなされる結果となる。このように開発許可の申請に対し、最終的に都道府県知事の許可に至るまで法32条の同意や協議が一つの仕組みを形成しているものであって、法32条の同意と開発許可との関係が、公共施設の管理者の同意がなければ、開発許可の申請そのものすらできないという結果をもたらすという意味で、双方が密接に連動する仕組みを形成している。本件においても、本件不許可処分(甲16)は、本件開発行為に関係のある公共施設の管理者の同意を得たことを証する書面が開発許可申請に添付されていないことのみを理由として却下されている。したがって、法32条所定の公共施設の管理者による同意が不当になされなかった場合には、正当に開発行為の許可を求める国民は、開発行為の途を閉ざされる結果となり、そのような場合にも法律の規定がない限りは救済されないとすることは、ひいては憲法29条あるいは22条1項の趣旨に反することとなる。」高松高判平成25年5月30日地自384号64頁
(※7)「設問2では,公共施設管理者の同意には裁量がある,と何ら説明なく前提とする答案が多いことに驚いた。被告であればともかく原告の立場からは,裁量を否定する主張をまずは展開すべきであろう。すなわち,同意があることが開発許可申請の前提となっていることに鑑みると,不同意は公共施設の適切な管理に支障がある場合に限定されるべきであり,裁判所がその支障の有無について独自に最終的に判断できるはずであるとすると,司法審査との関係で認められる行政裁量はないということになる。原告としてはまずこのように主張し,次に,仮に裁量があるとしてもそれは無制限ではなく,裁量権の範囲を逸脱しまたは濫用すれば違法であると論じていくべきであろう。」曽和俊文ほか『事例研究行政法[第3版]』189頁
(※8)「都市計画法は,都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず,当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号),このような基準に従って都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている」最判平成18年11月2日民集60巻9号3249頁
(※9)この部分は,自分の勉強のために長々と書いただけですし,実際の答案でこんなに書く必要はないと思いますし,裁量がある根拠を簡単に示すだけでいいと思います。
(※10)「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」前掲最判平成18年11月2日
(※11)重要な事実の基礎を欠くこととなる場合と,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合との両方を答案上示す必要はないと思いますし,たぶん両方書いている時間もないと思うので,必要となる方だけ示しました。
(※12)「本件条例4条1項は,大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより,避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり,これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は,同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について,同項を適用しないこととし,建築主に対し,建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では,同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は,建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが,この改正により,建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは,平成10年法律第100号により建築基準法が改正され,建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(法6条の2,7条の2,7条の4,77条の18以下参照)に伴う措置であり,上記のとおり判断機関が分離されたのは,接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり,建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが,安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。以上のとおり,建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして,前記のとおり,安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。」


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-02-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題2

ねっむ!!

ねむくない??

ねむいよね???

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 建設会社であるPは,甲県乙市内の,都計法上の都市計画区域に指定された地域において,地上15階建て,高さ約45mの高層分譲マンション(以下「本件マンション」という)を建設することを計画し,建基法に基づく建築確認を申請することにした。乙市には建基法4条にいう建築主事が置かれており,建基法6条により乙市建築主事に建築確認を申請することもできるが,Pは,建基法6条の2により,国土交通大臣によって指定確認検査機関としての指定を受けた株式会社Cに建築確認を申請することにした。また,Pは,建基法18条の2による構造計算適合性判定を,甲県知事の委任を受けた指定構造計算適合性判定機関である株式会社Dに申請した。Pは,2016年4月8日,Dから構造計算適合性判定(以下「本件構造計算適合性判定」という)を受けて,建基法6条の3第7項に従って適合性判定通知書をCに提出し,同月15日,Cから建築確認(以下「本件建築確認」という)を受けた。Pは,同月22日,建基法89条に従い,本件建築確認を受けていることを示す表示板(以下「本件表示板」という)を現場に設置したうえで,工事に着手した。
 ところが,本件マンショ建設中の同年11月1日に,Pが手がけた,本件マンション以外の一連のマンションについて,Pによるコストダウンの要求に応えようとした一級建築士Qが耐震強度に関する構造計算書を偽造していたことが発覚し,専門家から,それらのマンションは震度5強の地震で倒壊するおそれがあるという指摘がなされた。また,同月10日に,本件マンションについても,構造計算書の偽造が行われている可能性が高いという内部告発もあったが,Pは,このマンションについては偽造はなされていないとして工事を続行している。
 本件マンションの近隣住民であるAらは,同月20日に,この問題に関する対策会議を開催し,本件マンションが建設されれば,その倒壊のおそれにより,Aらの生命・財産に対する重大な危険が生じると考え,建設の中止を求めるために法的手段を用いることにした。

〔設問〕
1.Aらは,建設工事差し止めの民事訴訟を提起するほか,行訴法が定める訴訟を用いることを検討している。2016年11月16日の段階で,Aらが用いることのできる偽陽性訴訟を挙げ,その訴訟要件について論じなさい。なお,仮の救済や本案における主張については論じなくてよい。
2.その後,Aらは,設問1で検討した訴訟を提起したが,仮の救済は認められず,訴訟係属中に本件マンションが完成し,Pは,建基法7条の2による検査済証の交付を受けるため,Cに検査を引き受けさせた。この段階において,設問1で検討した訴訟につき,訴えの客観的利益が認められるか。
3.本件マンションが完成し,検査済証が交付された段階で,Aらが救済を求めるために提起しうる行政訴訟を挙げ,その訴訟要件について論じなさい。なお,仮の救済や本案における主張については論じなくてよい。

【資料】(略)


むっず!!

むずくない??

むずいよね???

≪答案≫
第1 設問1
 1 まず,Aらは,本件構造計算適合性判定の取消しの訴え(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
  ⑴ 本件構造計算適合性判定は,株式会社Dが行ったものではあるが,建基法6条の3第1項ただし書により,株式会社Dは公権力の主体たる公共団体としての甲県から委任を受けたことにより,これと同様の地位を取得したものと考えられる。そして,構造計算適合性判定がなければ,建築主は建築確認を受けることができず,適法に建築ができないという意味で,建築主の権利に影響を及ぼしている。したがって,本件構造計算適合性判定は,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。このことは,建基法94条1項が,指定構造計算適合性判定機関の処分について審査請求がてきる旨の定めを置いていることからも肯定することができる。
  ⑵ Aらは,「処分の相手方以外の者」(行訴法9条2項)であるが,「法律上の利益を有する者」(同条1項)に該当するか検討する。本件構造計算適合性判定の根拠規定は,建基法6条の3第1項であるが,ここでは建築物の計画が同法20条1項2号に定める基準に適合することが要件とされている。そして,本件マンションが該当する建築物の区分については,当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合することが求められている(建基法20条1項2号イ)。この規定の趣旨は,地震等の自然災害が生じた場合であっても,当該建築物の倒壊を防ぎ,もって住民の生命,健康及び財産の保護を図る点にあると考えられる(同法1条参照)。そうすると,法は,住民の生命,健康及び財産を個々人の個別的利益として保護する趣旨と考えられ,本件マンションの周辺住民であれば,本件マンションの倒壊によりこれらの法益が侵害されるおそれがある。したがって,Aらは,「法律上の利益を有する者」にあたり,原告適格が認められる。
  ⑶ 本件構造計算適合性判定が取り消されれば,本件建築確認が失効するか,失効しないにしても判決の拘束力(行訴法33条)によりCにおいて本件建築確認を取り消す義務及び特定行政庁において建基法6条の2第6項が定める不適合通知により本件建築確認を失効させる義務が生じると考えられるので,訴えの客観的利益も認められる。
  ⑷ 被告適格は,Dにある(行訴法11条2項)。
  ⑸ 本件構造計算適合性判定がされたのは,2016年4月8日であり,そこから起算して1年を経過していないから,客観的出訴期間は徒過していない(行訴法14条2項)。また,本件建築確認とは異なり,本件構造計算適合性判定については,それが表示板に示されるなど外部的に周知されてはいないのであるから,Aらがこれを知った日は,早くとも2016年11月1日であると考えられ,これから6か月を経過していないから,主観的出訴期間も徒過していない(行訴法14条1項)。
  ⑹ よって,本件構造計算適合性判定の取消しの訴えは,訴訟要件を満たす。 
 2 次に,Aらは,本件建築確認の取消しの訴え(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。
  ⑴ 本件建築確認は,株式会社Cが行ったものではあるが,建基法6条の2第1項により,株式会社Cは公権力の主体たる公共団体としての建築主事から指定を受けることにより,これと同様の地位にあり,その地位に基づいて建築確認を行っている。これにより,Pは,本件マンションを建築することができるようになるという法効果を受けることとなる。したがって,本件建築確認は,取消訴訟の対象となる「処分」にあたる。
  ⑵ Aらは,「処分の相手方以外の者」(行訴法9条2項)であるが,「法律上の利益を有する者」(同条1項)に該当するか検討する。本件建築確認の根拠規定は,建基法6条の2第1項であるが,ここでは同法6条1項と同様の効果を規定している。同法6条1項によれば,建築確認を行うに当たっては,「計画が建築基準関係規定に適合するものであること」が要件とされている。そして,本件マンションが該当する建築物の区分については,当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合することが求められている(建基法20条1項2号イ)。この規定の趣旨は,地震等の自然災害が生じた場合であっても,当該建築物の倒壊を防ぎ,もって住民の生命,健康及び財産の保護を図る点にあると考えられる(同法1条参照)。そうすると,法は,住民の生命,健康及び財産を個々人の個別的利益として保護する趣旨と考えられ,本件マンションの周辺住民であれば,本件マンションの倒壊によりこれらの法益が侵害されるおそれがある。したがって,Aらは,「法律上の利益を有する者」にあたり,原告適格が認められる。
  ⑶ 建築確認が取り消されれば,Pは適法に工事を継続することができなくなるため,訴えの客観的利益も認められる。
  ⑷ 被告適格を有するのは,株式会社Cである(行訴法11条2項)。
  ⑸ それでは,出訴期間(行訴法14条)は徒過していないといえるか。本件建築確認がされたのは,2016年4月15日であるから,ここを起算日とする客観的出訴期間(行訴法14条2項)は未だ徒過していない。しかし,Pは,同月22日に本件表示板を設置して工事に着手しているから,これをもって「処分があったことを知った」として,主観的出訴期間(行訴法14条1項)が徒過したとされないか。
 行訴法が,客観的出訴期間を設けつつも主観的出訴期間を別途設けていることからすると(※1),「処分があったことを知った日」とは,当事者が書類の交付,口頭の告知その他の方法により処分の存在を現実に知った日を指すものであって,抽象的な知り得べかりし日を意味するものではない。もっとも,社会通念上処分のあったことを当事者の知り得べき状態に置かれたときは,反証のない限り,その処分のあったことを知ったものと推定する。
 これを本件についてみると,本件表示板は,本件マンションの工事現場に設置されており,これをもって,周辺住民に対しては本件建築確認がされたことが周知されているとみることができるから,本件表示板の設置をもって社会通念上本件建築確認のあったことを当事者の知り得べき状態に置かれたといわざるを得ず,当事者において本件建築確認のあったことを知ったものと推定される。そして,Aらにおいて,これを覆す特段の反証が可能であるようには思われない。したがって,本件建築確認の取消訴訟の主観的出訴期間の起算点は2016年4月22日である。
 もっとも,Pが手がけた一連のマンションについて耐震強度が偽装されていたことが発覚したのは,2016年11月1日である。そうすると,この段階に至るまで,Aらにとっては,本件建築確認の取消しの訴えを提起する契機がなかったということもでき,そのことから,出訴期間を徒過したことは「正当な理由」によるものであるということができる。
 したがって,本件建築確認の取消訴訟の出訴期間は,その要件を満たす。
  ⑹ もっとも,本件では,構造計算書に偽造があった点が問題となっているのであるから,違法な行為自体があったのは,本件構造計算適合性判定である。そうすると,本件構造計算適合性判定における違法性が本件建築確認に承継されない限り,本件建築確認の違法性は認められないこととなる。
 そこで,違法性が承継されるかについて検討すると,取消訴訟の排他的管轄と出訴期間を定めた行訴法の趣旨から,原則として処分の違法性は処分ごとに個別に判断すべきであるが,両処分が一体的に手続を構成していると評価できる場合には,違法性が後続の処分にも承継される(※2)
 これを本件についてみると,構造計算適合性判定は,違法な建築物の出現を防ぐという点で,建築確認と同一の目的を有しており,建築確認と結合して建築主に建築を可能にさせるという1つの効果を生じさせる。また,構造計算適合性判定は,それ自体を周辺住民には告知されず,周辺住民がその存在を速やかに知ることはできないから,構造計算適合性判定自体を争うことの手続的保障が十分であるとはいえない。さらに,周辺住民が仮に構造計算適合性判定について知り得たとしても,その後の建築確認により不利益が現在化するまで訴訟を提起しないという判断をすることが不合理であるとまではいえない。そうすると,本件構造計算適合性判定と本件建築確認とは,手続的に一体であるとみることができるから,本件構造計算適合性判定における違法性は本件建築確認にも承継される。
  ⑺ よって,本件建築確認の取消しの訴えは,訴訟要件を満たす上,本件構造計算適合性判定の取消しの訴えと併せて提起する実益がある。
 3 また,Aらは,上記の取消訴訟の出訴期間要件が満たされなかった場合に備えて,本件構造計算適合性判定及び本件建築確認の無効確認の訴え(行訴法3条4項)を提起することが考えられる。
  ⑴ 本件構造計算適合性判定及び本件建築確認がそれぞれ「処分」にあたることは,前述の通りである。
  ⑵ Aらは,本件控訴う計算適合性判定及び本件建築確認のそれぞれについて,無効確認を求める「法律上の利益」を有している。
  ⑶ それでは,「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」といえるか。
 同要件は,法律上別の救済手段が容易されている場合に,手続上の交通整理を行う趣旨から,義務付け訴訟の提起を塞ごうとするものである。他方で,同要件を第三者に対して直接民事上の請求をすることが可能である場合にも適用してしまうと,義務付け訴訟の提起できる場面が著しく狭められる。そこで,「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」とは,当該処分に基づいて生じる法律関係に関し,処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては,その処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより,当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として,当該処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味する。
 これを本件についてみると,Aらは民事差止訴訟も提起しているが,これは人格権の侵害を理由とするものであって,本件構造計算適合性判定及び本件建築確認の無効を先決問題としていないから,無効確認訴訟による方が直截的に解決することができる。したがって,「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」といえる。
  ⑷ よって,上記の無効確認の訴えは,その訴訟要件を満たす。
 4 加えて,Aらは,Pらが違法な建築物を建設しようとしていることを理由に,建基法9条1項に基づくPに対する工事施工停止命令の発付を求める義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起することも考えられる。
  ⑴ 工事施工停止命令は,Pが建築物を建設することを制限する甲県知事の行う一方的な行為であるから「処分」である。
  ⑵ 工事施工停止命令は,裁判所が判断可能な程度に特定された処分であるから,「一定の処分」である。
  ⑶ 工事施工停止命令がされない場合には,本件マンションが完成した後,自然災害を起因としてこれが倒壊し,周辺住民の生命,健康及び財産に危害が及ぶおそれがあり,その損害は著しく回復が困難であるから,「重大な損害を生ずるおそれ」がある。
  ⑷ 上記の取消訴訟及び無効確認訴訟が提起できるとしても,これらの審査対象は建築計画が建築基準関係規定に適合しているか否かであるのに対し,上記義務付け訴訟は,建築工事そのものの違法性に着目してその停止を命ずることを義務付けるものであるから,終局的な目的である本件マンションの建設を中止させること自体について直截的な「他に適当な方法」は存在しないということができる。
  ⑸ したがって,Aらは,上記義務付けの訴えを提起することができる。
第2 設問2
 1 取消訴訟及び無効確認訴訟の帰趨
 建基法によれば,建築主は,同法6条1項の建築物の建築等の工事をしようとする場合においては,当該工事に着手する前に,その計画が当該建築物の敷地,構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事又は指定確認検査機関の確認を受けなければならず(6条1項,6条の2第1項),特定行政庁は,建基法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については,建築主等に対し,当該建築物の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(9条1項)とされている。そうすると,建築確認は,建基法6条1項の建築物の建築等の公示が着手される前に,当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを甲県的に判断する行為であって,それを受けなければ当該工事をすることができないという法的効果が付与されており,建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。
 しかし,当該工事が完了した後における建築主事等の検査は,当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを基準とし,同じく特定行政庁の違反是正命令は,当該建築物及びその敷地が建基法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準と市,いずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準としていない。また,違反是正命令を発するかどうかは,特定行政庁の裁量にゆだねられているから,建築確認の存在は,検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではない。さらに,たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても,検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない
 以上からすると,本件の取消訴訟及び無効確認訴訟が認容されたとしても,本件マンションの出現自体は防げないのであるから,Aらの具体的利益が客観的に回復することができるとはいえなくなっているから,訴えの客観的利益が欠けることとなる(※3)
 2 義務付け訴訟の帰趨
 本件マンションの工事の完成によって,工事施工停止命令の対象となるべき工事が完了するのであるから,同命令を発令する対象がなくなるため,これを義務付けることを求める訴えは,その客観的利益を失う。
第3 設問3
 1 まず,Aらは,検査済証の交付(建基法7条の2第5項)の取消訴訟を提起することが考えられる。
  ⑴ 検査済証の交付を受けなければ,その建築物を居住のために使用することができないという法効果を伴うから(建基法7条の6),検査済証の交付は取消訴訟の対象となる「処分」である。
  ⑵ 検査済証の交付は,これによって当該建築物を居住の用に供することができるようになるという法効果しか有さず,当該建築物の倒壊による周辺住民の生命,健康及び財産を保護する趣旨を含むものではないから,Aらは「法律上の利益」を有さず,原告適格が否定されるおそれがある(※4)
  ⑶ また,違法是正命令の発令は特定行政庁の裁量とされていることからすると,上記にみたように,訴えの客観的利益を欠くものとされるおそれがある。
  ⑷ 以上から,検査済証の交付の取消訴訟を提起することはできない。
 2 また,Aらは,本件マンションの除却等の命令(建基法9条1項)の義務付け訴訟を提起することが考えられる。
 工事施工停止命令の場合と異なり,建基法9条1項に基づく命令には,その手段が複数あることから,「一定の処分」といえないようにも思えるが,裁判所において判断可能な程度の特定があれば足りるのであって,建基法9条1項の指摘がされていれば,裁判所において判断が可能であると考えられるから,「一定の処分」にあたる。
 そして,その他の要件についても,上記の義務付け訴訟と同様に満たされる。
 したがって,Aらは,本件マンションの除却等の命令の義務付け訴訟を提起することができる。
以 上

(※1)主観的出訴期間の起算日の理由付けについて,最判昭和27年11月20日民集6巻10号1038頁は,自作農創設特別措置法のものではありますが,「同条の一項は、『この法律による行政庁の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は……当事者がその処分のあつたことを知つた日から一箇月以内にこれを提起しなければならない。但し、処分の日から二箇月を経過したときは……訴を提起することはできない。』と規定し、その但書において同条項所定の訴は、処分の日から二箇月を経過したときは、当事者が処分のあつたことを知らなくともこれを提起することができないものとして、処分の不確定な状態を処分の日から二箇月に限定したところからこれを見ると、同条にいう『処分のあつたことを知つた日』とは、当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分の存在を現実に知つた日を指すものであつて、抽象的な知り得べかりし日を意味するものでないと解するを相当とする。」というように,主観的出訴期間とは別に客観的出訴期間が設けられている点に着目しているように読めます。
(※2)違法性の承継について検討する際の整理として,最判平成21年12月17日民集63巻10号2631頁の調査官解説(最判解民事篇平成21年度(下)983頁)は,「後続処分の取消訴訟において先行処分が違法であるがゆえに後続処分も違法であると主張される場合,まず,両者の関係を定めた法令の規定があればそれに従う。例えば,固定資産課税台帳に登録された価格の決定が違法であっても,その違法性は固定資産税の賦課決定に承継されないから(地方税法432条3項,434条2項),賦課決定の取消訴訟において価格の決定の違法が主張されてもそれ自体理由がないとして排斥されることになる(他の立法例については仲野参照)。これに対し,法令の規定がない場合は解釈によって対処するほかない。その際,第1に検討すべきは,先行処分の違法が後続処分の違法をもたらす関係にあるか否かであるこの関係が否定されるのであれば,後続処分の取消訴訟において先行処分の違法性を主張することは無意味であり,主張自体理由がないことになる。違法性の承継を否定した前掲最三小判昭39・5・27(他の吏員の昇任と待命)はこの類型に当てはまると見ることができる。関係規定の解釈により先行処分の違法が後続処分の違法をもたらす関係にあると判断されると,第2段階の検討に移る。結論からいうと,そのような関係がある以上常に違法性の承継を肯定すべきであるとするならば行政の手続の安定性が害される事態が生じ得るから,違法性の承継が否定される場合があることを認めざるを得ない。先行処分が違法であり,その違法が後続処分の違法もたらす関係にあっても,解釈により違法性の承継を否定しなければならない場合があるということである。この結論を導き出すための解釈上の手掛かりになるのが行政処分の取消訴訟の出訴期間制限(すなわち不可争力)という制度の存在であり,この制度を踏まえると次のような解釈上の操作が可能となる。まず,先行処分の違法性が後続処分に承継されるという判断をするためには,関係規定の解釈上,『適法な先行処分』の存在が後続処分の要件になっているといえばいい。先行処分が違法であればこの要件を欠くことになるから後続処分は取り消すべきである。逆に,先行処分の違法性が後続処分に承継されないと判断するためには,関係規定の解釈上,『適法な先行処分』の存在ではなく『(その適否を問わず)不可争力が生じた(有効な)先行処分』の存在が後続処分の要件になっているといえばいい。先行処分が仮に違法であったとしても-無効事由に当たるほどの違法でない限り-,出訴期間が経過してしまえばこの要件を欠くことはないから,先行処分の違法が後続処分の取消事由にはならない。先行処分が違法である以上後続処分も違法であるとしてこれを取り消すのが法治主義の見地からは一貫するようにみえるが,取消訴訟の出訴期間制限という制度の存在により,もう一つ別の回路が開かれるわけである。最近の学説が違法性の承継を否定する根拠として不可争力を挙げるのは以上のことを意味するのではないかと思われる。不可争力という行政処分の効力の存在が違法性の承継を否定する決め手となるのではなく(もし決め手になるのであれば先行処分に不可争力が生じた場合は常に違法性の承継が否定されることになるが,大多数の学説はこの立場を採らない。),不可争力という制度(この場面では出訴期間制限といったほうが分かりやすい。)の存在が媒介となって解釈により違法性の承継を否定することが可能となるのである。」と指摘しています。

①先行処分と後続処分との関係を定めた法令の規定
 ↓    ↓
ない   ある
 ↓
②関係規定の解釈上,先行処分の違法が後続処分の違法をもたらす関係
 ↓    ↓
ある   ない
 ↓
③解釈による先行行為の後続処分における要件としての位置付け
 ↓    ↓
 ↓  不可争力が生じた先行処分の存在
 ↓
適法な先行処分の存在
 ↓
違法性の承継を肯定


(※3)「建築基準法によれば、建築主は、同法六条一項の建築物の建築等の工事をしようとする場合においては、右工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築関係規定」という。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(六条一項。以下この確認を「建築確認」という。)、建築確認を受けない右建築物の建築等の工事は、することができないものとされ(六条五項)、また、建築主は、右工事を完了した場合においては、その旨を建築主事に届け出なければならず(七条一項)、建築主事が右届出を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを検査し(七条二項)、適合していることを認めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならないものとされている(七条三項)。そして、特定行政庁は、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については、建築主等に対し、当該建築物の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(九条一項。以下この命令を「違反是正命令」という。)、とされている。これらの一連の規定に照らせば、建築確認は、建築基準法六条一項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であつて、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。しかしながら、右工事が完了した後における建築主事等の検査は、当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを基準とし、同じく特定行政庁の違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準としいずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準とするものでない上、違反是正命令を発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているから、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがつて、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」最判昭和59年10月26日民集38巻10号1169頁
(※4)こういうことを解説には書いてあるわけですが,検査済証が交付されるのは「当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたとき」となっており(建基法7条5項),基となる建築基準関係規定自体には,人の生命,健康及び財産の保護まで考えられているのではないかと思われるので,そうすると,それを確認するという作業を意味する検査済証の交付にも,人の生命,健康及び財産の保護の趣旨が少なからず含まれているのではないのかなあとも思いました。ただ,結局のところ,建築基準関係規定に何が書いてあるのかを具体的には知らないですし,上に書いたような立論がそもそも正しいのかどうかはよく分かりません。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2019-02-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題1

突然ですが,行政法をやります。

事例研究の第2部まではせめてやっておこうということで,

今週中には終わらせたいところです(n回目の淡い希望)。

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照ながら,以下の設問に答えなさい。

Ⅰ 甲県の住民であるAは,「甲県情報公開条例」に基づき,甲県土木部用地室が道路拡幅工事用地として買収した土地に関して作成された文書Pの公開を求めた。文書Pは,甲県内の道路Qの拡張工事のために,甲県土木部用地室が土地所有者から土地を取得した情報のうち,買収地と買収価格を記録した文書であり,以下の項目についての個別情報が記録されていた。
① 買収の対象となる土地の土地所有者の名前,住所または所在地
② 上記土地の所在,地番,地目および面積
③ 各土地の買収価格と単価
 公開請求を受けて,甲県土木部用地室では公開の是非を検討した結果,①と②の部分は,不動産登記簿で既に公開されている情報であるので公開することにして,③の部分を非公開とすることにした。公共事業用地の買収は,損失補償基準に基づき土地を手放したくない土地所有者に対して公共事業への理解を求め,何度も足を運んで納得してもらって買収に至るという,短答公務員にとっても気の重い仕事であり,買収価格が明らかになると,今後の同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想されたからである。道路Qの拡幅工事のための買収はほとんど終わっていたが,一部にまだ交渉中の土地も残っていた。また,今後同種の道路工事を近くでも予定していた。そこで,甲県土木部用地室は,「③の部分は,条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」との理由を付したうえで,③の部分を黒塗りにして,文書Pを部分公開とする決定をした。これに対して,Aは,③の部分を含めた全部の公開を求めて,部分公開決定の取消訴訟(非公開部分についての非公開処分の取消訴訟。以下では「本件取消訴訟」という)を提起した。

〔設問1〕
1.あなたが,Aから依頼を受けた弁護士であるとしたら,本件取消訴訟において,非公開処分の違法性として,いかなる主張をすべきか。
2.あなたが,甲県土木部用地室から依頼を受けた弁護士であるとしたら,本件取消訴訟において,非公開処分の適法性として,いかなる主張をすべきか。なお,必要ならば,設問1-1の主張に対する反論も考えなさい。
3.上記の③の部分が,「条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」か否かについて,証明責任(立証責任)を負担するのは,原告か,被告か。理由とともに答えなさい。

Ⅱ 本件取消訴訟が開始されてから,甲県土木部用地室ではさらに検討を重ねた結果,③の部分については,条例8条1項4号署ていの非公開情報に該当するばかりではなく,条例9条1号所定の個人情報にも該当するのではないかという議論が強くなった。そこで,本件取消訴訟において,「③の部分は,条例9条1号所定の非公開情報に該当する」との理由を新たに非公開決定の理由として追加したいと考えた。

〔設問2〕
1.本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきではない,という主張をする場合に,いかなる理由が考えられるか。
2.本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきである,という主張をする場合に,いかなる理由が考えられるか。
3.もしも,本件取消訴訟と同時に公開処分の義務付け訴訟が併合提起されていた場合には,理由の追加の是非についての結論に違いはあるのか。
4.もしも,本件取消訴訟での新たな理由の追加は認められず,さらに,「③の部分は,条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」という当初の非公開理由も認められなかった場合には,取消訴訟が認容されることになるが,その場合,Yは,「③の部分は,条例9条1号所定の非公開情報に該当する」との新たな理由に基づいて,再度,非公開決定を出すことができるのか。行訴法33条の拘束力との関係も考えながら,答えなさい。


問題を見た瞬間,

「えっ……なんかこれどっかで見たことある……」

ってなったんですけど,

ロースクールの某行政法絡みの期末試験で,

ほぼそっくりそのままの問題が出題されていました。

なんでもっと早く見ておかなかったのか……!!

大変悔やまれます。

事前にこの問題の解説を読んでいれば,

さぞかし素晴らしい答案が書けていたことでしょう。

ちなみに評価はAでした。

≪答案≫
第1 設問1
 1 小問1
  ⑴ A側としては,非公開処分が条例8条1項4号に基づいてされているが,これは同号の解釈を誤ったものであるとして,違法であるとの主張を行う。
 甲県土木部用地室は,買収価格が明らかになると,今後の同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想されるとの理由から,「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」があるものと判断している。しかし,公共事業用地の買収は,損失補償基準に基づき,土地の客観的評価に基づいて行われるのが通常であって,過去の買収価格が公開されても将来の買収が困難になるということはない。また,本件では,道路拡幅のための買収はほとんど終わっており,買収価格を公表しても,今後の買収において「著しい支障」であるとは考えにくい。さらに,道路工事の態様や土地の特性は工事ごとに異なるのであるから,今回の買収価格の公開が今後の同種の工事に対して「著しい支障」を与えるというのは,単なる憶測にすぎないというべきである。そうすると,本件において,甲県が文書Pのうち各土地の買収価格と単価を公表したとしても,「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」があるとはいえないから(※1),これを理由としてされた非公開処分は,条例8条1項4号の解釈を誤った違法がある。
  ⑵ また,A側としては,非公開処分にあたり,その処分がされた理由の提示が不十分であるから条例13条3項1号に違反するものとして,違法であるとの主張を行う。
 条例13条3項1号が,行政文書の一部開示決定をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,何人も行政文書の公開を請求することができるところ(条例6条),その権利を制限するという一部開示決定の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものである(※2)。そして,どの程度の記載をなすべきかは,処分の性質と理由付記を命じた法令の趣旨・目的に照らして決定すべきである(※3)(※4)(※5)
 これを本件についてみると,条例8条1項4号は「著しい支障」といった抽象的な文言を用いており,その判断に関して条文から一義的に決定されるものではない(※6)。そうすると,条例13条3項1号で要求される理由提示の程度としては,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知しうるものでなければならない。しかし,本件では,条例8条1項4号に該当するというように,抽象的に処分の根拠規定を示すにすぎないのであるから,理由提示の程度として不足している。
 したがって,非公開処分に際してされた理由の提示が不十分であるから,条例13条3項1号に違反し,違法である。
 2 小問2
  ⑴ 甲県側としては,A側の主張するような,条例8条1項4号の解釈の誤りはないとの主張を行う。
 A側の主張するように,公共事業用地の買収は損失補償基準によるものではあるが,実際には,土地にはそれぞれ個性があり,個別の交渉に委ねられるものである。そうすると,他者に対する買収価格が公表されると,既に買収に応じた者もそれを見て不満をもつ場合があり,またこれから買収交渉を行う相手との関係でも交渉における柔軟性を失わせることも考えられる。したがって,他者に対する買収価格の公表は,買収事務への「著しい支障」となる。また,道路Qの拡幅工事が完了した後でも,今後同種の道路事業が行われるのであるから,本件道路工事に関する買収価格が公開されると,今後の同種の道路工事の遂行においても買収が困難になることが予想される。したがって,「著しい支障」となることが認められる。
 よって,非公開処分には,法令の解釈適用を誤った違法はないというべきである。
  ⑵ア また,甲県側は,非公開処分にあたって提示した理由は,その程度として不十分ではなかったと主張する。
 単に抽象的に処分の根拠規定を示すものであっても,それによって当該規定の適用の原因となった具体的事実関係をも当然に知り得るような場合には,理由提示の程度として問題ない(※7)。本件では,処分時に該当条文を明確にしており,通常の理解力があれば,買収価格の公開による買収事務への支障という非公開理由は十分に理解できるはずであって,本件では理由の提示の程度が不十分であるとはいえない(※8)
   イ さらに,甲県側は,仮に非公開処分での理由の提示の程度が不十分であるとしても,本件訴訟において,条例8条1項4号に該当する所以を詳しく述べているのであるから,非公開という結論は変わらないとの主張を行う。そうすると,結論に影響が出ない手続的瑕疵は,処分の取消事由たり得ないのであって,本件訴訟は棄却されるべきである。
 3 小問3
 甲県情報公開条例において,不開示情報該当性(条例8条,9条)の証明責任を負うのは被告である甲県側である。
 なぜならば,条例6条は,何人も行政文書の公開を請求することができる旨を規定しており,情報の公開を原則としつつ,非公開事由に該当するときだけ例外的に非公開とすることができるという形式を採用しており,このような条例の構造からすれば,例外に当たることを主張することとなる甲県が,その例外に当たることを証明すべきであるからである。また,対象公文書を現実に所持しているのは甲県であり,その内容について判断できるのも甲県であるから,甲県が当該文書の内容に即して非公開事由に該当することを証明すべきである。
 したがって,文書Pに記載の項目のうち③の部分が条例8条1項4号署ていの非公開情報に該当するか否かについて証明責任を負うのは,被告である甲県である(※9)
第2 設問2
 1 小問1
  ⑴ 本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することを許すべきではないとする理由としては,理由提示の趣旨との関係が挙げられる。すなわち,上記のように理由提示が要求される趣旨は,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるところにある。そうすると,訴訟の段階で処分時には主張されなかった理由を持ち出すことを許せば,処分時までの行政庁の恣意の抑制は図れないし,処分の名宛人の不服申立ての便宜にも資さなくなる。したがって,新たな理由の追加は,理由提示の趣旨に反するものであるから,これを許すことはできない。
  ⑵ また,新たな理由に基づく再処分を禁止することも理由として挙げられる。新たな理由の追加を許すべきと主張する側からは,紛争の一回的解決の要請が主張されるが,行政処分時の決定基礎資料から無理なく構成できたであろう理由については,その理由を事後的に持ち出して同一内容の処分を行うことは許されるべきではない。したがって,新たな理由に基づく再処分が禁止されることから,本件取消訴訟の途中で,新たな理由を追加することは許されない。
 2 小問2
  ⑴ 本件取消訴訟の途中で,新たに理由を追加することを許すべきであるとする理由としては,訴訟物との関係が挙げられる。すなわち,取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であるから,処分の違法性を支える理由は口頭弁論終結時まで事由に主張できるのが民事訴訟における原則である。したがって,処分の同一性を保持している限り,理由の追加・変更は認められるべきである。本件では,対象文書を公開すべきか否かが争われており,非公開事由ごとに別個の処分がされる性質のものではないから,処分の同一性を害するものではなく,新たに理由を追加することが許される。
  ⑵ また,紛争の一回的解決の要請との関係も,理由として挙げられる。すなわち,新たな理由の追加が許されず,そのために本件取消訴訟で請求認容判決がなされても,被告としては,訴訟で主張することが認められなかった新たな理由に基づいて再度非公開処分をすることになる。そうすると,本件では,紛争の一回的解決のためにも,理由の追加を認めるべきである。
  ⑶ さらに,新たな理由の追加を認めるべきではないと主張する側のような,理由提示の趣旨に反するものではない。すなわち,理由提示の趣旨である行政庁の恣意の抑制と処分の名宛人の不服申立ての便宜は,非公開理由を具体的に記載して通知させること自体をもってひとまず実現される。そうすると,一度理由の提示を行った以上,理由提示の趣旨は達成されるのであって,これと別個に実施機関が当該理由以外の理由を非公開処分決定の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むものではない。したがって,取消訴訟で新たな理由を追加することは許される(※10)(※11)
 3 小問3
 文書の公開処分の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が併合提起された場合,義務付け訴訟の審理にあたり,裁判所は,文書を公開すべきか否かについて判断すべき要素をすべて考慮した上で判断することが求められることとなる。そうすると,義務付け訴訟においては,行政庁が新たな非公開理由を主張してきた場合には,それを審理・判断することが当然に求められているということができる。したがって,仮に取消訴訟では理由の追加が許されないとしても,義務付け訴訟においてはこれが認められることとなる。
 本件でも,甲県は,③の部分は条例9条1号所定の非公開情報に該当するとの理由を当然に主張することができる。
 4 小問4
 行訴法33条1項は,取消判決は,行政庁を「拘束する」と規定しているが,これは,反復禁止効と取消判決の趣旨に従って改めて措置をとるべき義務が生ずる積極的効力を意味する。
 もっとも,拘束力は,取消訴訟の権利救済の実効性を高めるために行政庁に対して取消判決に従うという実体法上の義務を課す特殊な効力であるところ,取消判決によって確定された違法事由を超えてその効力を及ぼすものではない。そこで,行政庁が異なる理由に基づいて同一内容の処分をすることは,取消判決の拘束力に反するものではない。
 したがって,本件において甲県は,条例9条1号所定の非公開理由に該当するという新たな理由に基づいて,再度同一内容の非公開処分をすることができる。
以 上

(※1)「大阪府における事業用地の取得価格は,『公共用地の取得に伴う損失補償基準』等に基づいて,公示価格との均衡を失することのないよう配慮された客観的な価格として算定された価格を上限とし,正常な取引価格の範囲内で決定され,公社による代替地の取得価格及び譲渡価格は,公示価格を規準とし,公示価格がない場合又はこれにより難い場合は近傍類地の取引価格等を考慮した適正な価格によるものとされているというのである。そうすると,当該土地の買収価格等に売買の当事者間の自由な交渉の結果が反映することは比較的少ないというべきである。……上述したところによれば,上記部分に関する情報を公開することによって,大阪府における今後の用地買収事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるということはできないから,上記情報は,いずれも本件条例8条4号所定の非公開情報に該当しないというべきである。」最判平成18年7月13日判時1945号18頁
(※2)理由提示の趣旨について,行手法14条について判示したものですが,最判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁は,「行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。」としています。
(※3)最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁
(※4)この点,前掲最判平成23年6月7日は,「上記のような本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して」どの程度の理由を提示すべきかを決定すべきであるとしていますが,これはあくまで行手法14条との関係で示されたものですので,直ちに他の理由提示の場面(特に法令上処分基準の設定が義務どころか努力義務にもなっていない場合)でも使えるかは分かりません。
(※5)ここで,一般的基準として,最判昭和49年4月25日民集28巻3号405頁が判示した「そこにおいて要求される附記の内客及び程度は、特段の理由のないかぎり、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の原因となつた具体的事実関係をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記として十分でないといわなければならない。」を示す参考答案がありますが,この基準については,「49年判例は,侵害処分の理由定時についての一般的な要求水準を示したものであるので,38年判例がいうように『処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らして』,その都度調整される必要があると考えられる」(北島周作「理由呈示の程度と処分基準」法教373号52頁)と指摘されているように,あたかも理由提示全般の一般的基準として用いるのは危ないかもしれません。ちなみに,前掲最判昭和49年4月25日も,前記基準を導き出すにあたり,「旧法人税法二五条は、その八項において、青色申告書提出承認の取消し(以下、単に承認の取消しという。)の事由を一号ないし五号に掲げる五つに限定したうえ、その九項において、右取消しをしたときは、その旨を当該法人に通知し、その通知の書面には取消しの基因となつた事実が同条八項各号のいずれに該当するかを附記しなければならないものと定めている。同法が承認取消しの通知書にこのような附記を命じたのは、承認の取消しが右の承認を得た法人に認められる納税上の種々の特典(前五事業年度内の欠損金額の繰越し、推計課税の禁止、更正理由の附記等)を剥奪する不利益処分であることにかんがみ、取消事由の有無についての処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、取消しの理由を処分の相手方に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与えるためであり、この点において、青色申告の更正における理由附記の規定(同法三二条)その他一般に法が行政処分につき理由の附記を要求している場合の多くとその趣旨、目的を同じくするものであると解される。」と,法令の趣旨等を斟酌しています。
(※6)この点について,当初は,条例8条が「公開しないことができる」という文言になっていることから,行政庁の裁量的判断が認められているとの趣旨の答案を書いていましたが,事例研究の解説には「そもそも,行政裁量を付与した規定であるのかどうかは,文言(多義的概念や公益判断などにより行政機関に判断の余地を認めていると解されるかどうか)だけではなく,裁量を認める実質的な理由(行政の判断を尊重すべしとする国会・議会の判断があること,さらに行政判断を尊重する必要性や根拠があること)によっても決せられるべきである。既に本文で述べたとおり情報公開制度では行政文書は原則として公開されることになっており,非公開にするか否かの行政裁量は否定されているのが原則である。」とドストレートに指摘されていましたので,書き直しました。
(※7)前掲最判昭和49年4月25日
(※8)前掲最判平成23年6月7日那須弘平裁判官反対意見は,「指摘されるような構造基準に達しない設計や構造計算書における偽装が存在したことを前提とすれば,上記各設計行為につき建築の専門家である建築士の職責(建築士法2条の2)の本質的部分に関わる重大な違法行為及び不適切な行為があったことは明らかである。本件免許取消処分通知書には,これらの違法行為及び不適切な行為の具体的事実が示され,また処分の根拠となった法令の条項も示されているのであり,その違法・不適切な行為の重大性とこれによって生じた深刻な結果とを直視することにより,本件懲戒規定の定める3種類の処分の中から最も重い免許取消処分が選択されたことがやむを得ないものであることは,専門家ならずとも一般人の判断力をもってすれば,容易に理解できるはずである。」と指摘した上で,「本件と同様な事案において,仮に処分基準がない場合を想定してみると,処分通知の事実記載自体から免許取消しという結論に至ったことに格別の違和感を持たず,これを了解する者が大半を占めるのではないか。結論として,裁量権の逸脱・濫用等の誤りないしこれに関する手続違背の主張を容れなかった原審判断を支持したい。」としています。
(※9)事例研究の解説によると,このような解釈が判例・通説であるとされています。これに対して,行政機関が行政文書を保有していることの証明責任については,最判平成26年7月14日集民247号63頁は,「情報公開法において,行政文書とは,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいうところ(2条2項本文),行政文書の開示を請求する権利の内容は同法によって具体的に定められたものであり,行政機関の長に対する開示請求は当該行政機関が保有する行政文書をその対象とするものとされ(3条),当該行政機関が当該行政文書を保有していることがその開示請求権の成立要件とされていることからすれば,開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。」としています。
(※10)「[理由提示の]目的は非公開の理由を具体的に記載して通知させること(実際には、非公開決定の通知書にその理由を付記する形で行われる。)自体をもってひとまず実現されるところ、本件条例の規定をみても、右の理由通知の定めが、右の趣旨を超えて、一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である。したがって、上告人が本件処分の通知書に付記しなかった非公開事由を本件訴訟において主張することは許されず、本件各文書が本件条例五条(2)アに該当するとの上告人の主張はそれ自体失当であるとした原審の判断は、本件条例の解釈適用を誤るものであるといわざるを得ない。」最判平成11年11月19日民集53巻8号1862頁
(※11)なお,前掲平成23年6月7日の調査官解説(最判解民事篇平成23年度(下)519頁)は,「一般に,処分基準の適用関係についても,処分の同一性を失わない限り,その差替えは原則として自由であると解されるが,行政庁が自ら定めた処分基準の適用関係を訴訟において差し替えなければならないような事態はほめられたことではなく,処分時の慎重な判断に基づく処分基準の適用とその名宛人への提示を通じて,そのような事態の生じないようにすることが求められているといえよう。」と指摘しており,これは理由の追加・差替え一般について言えることができるのではないかと思われます。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2018-12-30(Sun)

【事例研究行政法】第1部問題6

いやー年末ですねー。

もう2018年も終わりですねーー。

1年経つの早いですねーーー。

そういえば,先日期末試験が終わり,同時にロー生活が終了しました。

なんかあっという間でしたね。

このあいだ入学したばっかりだと思っていたんですがね。

なんか,ローでは全体的にだらだらしていた気がします。

もう少しいろいろ学ぶ姿勢をもって過ごせばよかったですね。

入学前よりも劣化したんじゃないかと思うくらいです。

その劣化の埋め合わせに行政法の答案を書きます。

今回ので事例研究行政の第1部は全部書いたことになります。

頑張った頑張った。

≪問題≫
 A社は,化工でん粉の製造販売等を目的とする株式会社である。A社は,2008年5月23日から2015年3月9日の間,甲農政事務所から事故米殻約236t(玄米重量)を購入した。事故米殻とは,WTO協定に基づく輸入米のうち輸入後の国内残留農薬基準の見直しによって基準値を超えることが判明した米殻等,および,倉庫に保管中に水濡れ等の被害を受けたりカビが生えたりした米殻をいう。本件で問題となった米殻は,メタミドホス等の農薬やアフラトキシンのようなカビ毒に汚染されたものではなく,一般のカビ,袋破れ等によって事故米殻とされたものであった。A社は,この事故米殻のうち,2008年5月23日から2012年8月10日に購入した約233t(以下「本件事故米殻」という)について,2008年5月25日から2012年8月20日の間に,加工用米殻(食用)と区分管理することなく米でん粉に加工し,当該米でん粉(以下「本件米でん粉」という)を食用と非食用の区別をせずに販売した。
 2013年8月下旬頃,大手食品会社であるC社が自己米殻を食用に販売している旨の内部告発を受けて,農林水産省が同社に立ち入り調査を実施し,その事実を確認して公表したことにより,事故米殻の食用としての不正流通が大きな社会問題となった。このような中で,農林水産省は,事故米殻の流通に関する全国一斉点検を実施することとし,同年9月8日,一斉点検の対象となる業者名を公表したが,その中にA社も含まれていた。これに対し,A社は,同日付けで,A社の取引先に対し,「弊社で製造しております食品向け製品の原料には,食品用の米のみを使用しております。カビ米,基準を超える農薬が検出された米等,非食用の事故米殻は使用しておりません。過去に購入した事故米殻およびその製品は個別に管理しており,その製品は食品産業以外のお客様に限定して販売しております」との内容を記載した文書を送付した。しかしながら,A社に対して甲県乙地方保健所が実施した調査の結果,A社も本件事故米殻を使用して本件米でん粉を製造していたことが判明した。そこでA社は,甲県乙地方保健所長に立会いの下に,「A社は,この事故米殻のうち,2008年5月23日から2012年8月10日に購入した約233tについて,2008年5月25日から2012年8月20日の間に,加工用米殻(食用)と区分管理することなく米でん粉に加工し,当該米でん粉を食用と非食用の区別をせずに販売した」との事実を確認した旨の確認書に記名押印し,保健所長に提出した。このときA社の代表は,保健所長に対して,「このたびは違反を犯して申し訳ありません。深く反省し,いかなる処分も甘んじて受けます」と伝えていた。
 甲県乙地方保健所長(同保健所長は,甲県事務委任規則により,食品衛生法54条の規定に基づく知事の権限に属する事務の委任を受けている)は,2013年9月17日付けで,A社に対し,「食品衛生法第6条に違反したので,同法第54条の規定により下記のとおり処置することを命じます」として,下記「違反の内容」について,下記「処置事項」を命じる処分をした(以下「本件処分」という)。なお,A社が違反事実を認めていたので,保健所長は,A社に改めて意見を聞くまでもないと判断し,処分に先立っての事前手続はとっていなかった。

「1 違反の内容」
 貴社は,カビの発生等による非食用の事故米殻を原料として米でん粉を製造し,食用と非食用の区別をせずに販売した。製造期間:2008年5月25日から2012年8月20日まで。
「2 処置事項」
⑴ 販売済みの上記1の米でん粉を回収すること。
 (販売先で非食用として使用されることが確実なものは除く。)
⑵ 回収方法及び回収品の処分方法についての計画書を提出すること。
⑶ 回収後,回収結果を速やかに報告すること。

 A社は,甲農政事務所から本件事故米殻を購入するに際して,食用には用いないとの約束をしており,本件事故米殻を使用して本件米でん粉を製造販売したことは,たしかにこの約束に違反する行為であった。しかしA社としては,農政事務所との約束違反が直ちに食品衛生法違反になるとは考えていなかった。というのは,A社の理解によれば,食品衛生法6条は,「人の健康を損なうおそれのあるもの」の販売を禁止しているが,A社が製造販売した本件米でん粉は安全性が確認されているものであるからである。そこで,A社は,本件処分の違法性を訴訟で争おうと考えて,2013年11月1日に,知り合いの弁護士Pが勤務している弁護士事務所を訪問した(その時の会話の一部については,【資料1】を参照せよ)。

〔設問〕
1.本件処分の違法性を争う訴訟として,誰を被告として,いかにる訴訟を提起すべきか。あなたが,A社の依頼を受けて本件を担当する弁護士Qであるとして答えよ。ただし,仮の救済については検討しなくても良い。訴訟要件などで問題となる点があれば,その点についても説明せよ。
2.設問1で検討した訴訟において,本件処分の違法性として,いかなる主張をすべきか。あなたが,弁護士Qであるとして答えよ。被告による反論も想定しつつ,できるだけ詳しく述べよ。

【資料】略

設問1は提起する訴訟類型についてですね。

訴訟要件について問題になるところは何もないような気がしますが。

解説にも問題ないって書いてありますし。

じゃあ聞くなよっていう感じですね。

こういうフェイントをかけてくる姿勢を見ても,

公法系の先生って性格悪いなと思いますね。(19日ぶり2回目)

設問2は,うん,まぁ,特に……。

≪答案≫
第1 設問1
 1 A社としては,本件処分の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起する。
 2⑴ 本件処分は,「行政庁」たる甲県乙地方保健所長が,A社を「名あて人として」,本件米でん粉を回収する「義務を課」すものであるから,「不利益処分」にあたり(行手法2条4号本文),「処分」である。
  ⑵ 「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。A社は本件処分の相手方であって,これにより本件米でん粉を販売する権利を侵害されるから,「法律上の利益を有する者」にあたり,原告適格を満たす。
  ⑶ 保健所長は,甲県に所属する行政庁であるから,甲県に被告適格がある(行訴法11条1項1号)。
  ⑷ 管轄に関しては,甲県の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所に属する(行訴法12条1項)。
  ⑸ 本件処分がされたのは2013年9月17日であり,A社が弁護士事務所を訪問したのは同年11月1日であるから,未だ「処分……があつたことを知つた日から六箇月を経過」していおらず,出訴期間内である(行訴法14条)。
  ⑹ また,本件処分に関して,審査請求を前置すべきとする規定はない。
 3 以上から,A社は,適法に本件処分の取消訴訟を提起することができる。
第2 設問2
 1 手続的瑕疵
  ⑴ 本件処分は,上記のように「不利益処分」であり,行手法13条1項1号に掲げる事由は存しないから,「弁明の機会の付与」が必要となる(同項2号)。しかし,本件処分にあたり,保健所長は,処分に先立つ事前手続きをとっていないから,「弁明の機会が付与」がされていない。したがって,本件処分は,行手法13条1項2号に違反する瑕疵がある。
 これに対して,甲県側からは,保健所長が弁明の機会の付与を行わなかったのは,A社が当初から違反事実を認めていたため,改めて弁明の機会を付与する必要がないと判断したためであると反論する。しかし,弁明手続は,行政庁が行うことを予定している不利益処分の内容等の提示を受けた上で(行手法30条),これに対する弁明を行わせるものである。そうすると,たとえ処分の相手方が違反事実を認めていても,処分の内容等を提示して,相手方に処分の内容等について吟味し争う機会を与えなければならない。したがって,A社が違反事実を従前認めていたことをもって弁明手続きを省略することは許されないから,本件処分には,行手法13条1項2号違反の瑕疵がある。
  ⑵ また,「不利益処分」を行うには,その「理由を示さなければならない」(行手法14条1項本文)。行手法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名あて人に示さなければならないとしているのは,名あて人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名あて人に知らせて不服の申立ての便宜を与える趣旨に出たものである。そして,同項本文に基づいて,どの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(※1)
 甲県側としては,「違反の内容」から,A社が本件事故米殻から本件米でん粉を製造したことに対する処分であることが分かるから,理由の提示として十分であると主張することが予想される。しかし,食品衛生法(以下「法」という。)6条は,「販売」する行為と,「販売の用に供するために,採取」する等の行為を別に禁止し,また禁止される食品等について各号に掲げている。そうすると,法54条に基づく「必要な措置をとることを命ずる」に際して同時に示されるべき理由としては,処分の根拠法条として法6条のうちどの文言を適用したかを明らかにしなければ,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。(※2)そこで,これを本件処分についてみると,「違反の内容」に示された事実からでは,処分の対象となる事実並びに対象となる食品等が何であり,それが法6条各号のいずれに該当するかが法6条の規定に沿って示されたとはいえず,A社において,いかなる理由に基づいていかなる食品当を対象として本件処分がなされたかを知ることはできないものといわざるを得ない。したがって,このような本件の事情の下においては,行手法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず,本件処分はこれに違反する瑕疵がある。
  ⑶ そして,行手法は,適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を保障するものであるから,これに違反する処分は,国民の権利侵害であって,当然に違法となる。
 2 実体的瑕疵
  ⑴ 法6条前段について
 法6条前段は,各号に掲げる食品等について「人の健康を損なうおそれ」があるものに限定して,その販売を禁止している。しかし,本件米でん粉は,その製造過程に照らしても,実際の現地調査に照らしても,安全性が確認されており,人の健康を損なうおそれがない。したがって,本件米でん粉を販売したことは,法6条前段に抵触せず,この点で本件処分は法6条前段の解釈適用を誤った違法がある。
  ⑵ 法6条後段について
   ア 法6条後段は,前段と同様の食品等について,販売目的で採取等をすることを禁止している。A社としては,本件事故米殻は,メタミドホス等の農薬やアフラトキシンのようなカビ毒に汚染されたものではなく,一般のカビ,袋破れ等によって事故米殻とされたものであるから,人の健康を損なうおそれのあるものではないとの主張をすることが考えられる。
 しかし,甲県としては,法が国民の健康の保護を図ることを目的としている見地からすると(法1条),法6条各号に掲げる「人の健康を損なうおそれ」があるか否かは厳格に解釈すべきであり,一般のカビであっても,それによって人の健康を損なうおそれが抽象的にでも存在することをもって,同要件を満たすと反論する。
   イ そこで,A社としては,本件処分は比例原則に反し違法であると主張する。本件米でん粉は,化工する際に汚れ等も取り除いて製品として安全なものを製造販売しているので,当該製品を回収する必要性は高くない。また,本件米でん粉による実害が明らかとなっていないにもかかわらず,販売済みの本件米でん粉を回収させるとすると,A社に多大な損害を被らせることとなる。したがって,本件処分は,その必要性に比してA社の受ける権利侵害の程度が過大であって違法である。
 これに対して,甲県としては,法6条後段の趣旨は,実害発生の危険が切迫していない段階での準備行為をも禁止することにあり,本件処分をする必要性を検討する余地はないと反論することが想定される。しかし,行政行為としての処分である以上,一般原則としての比例原則から適用が除外されることはないから,この反論は認められない。
   ウ 以上から,本件処分は,法6条前段の解釈適用を誤っている点及び法6条後段の適用に際して比例原則に違反している点で瑕疵がある。
以 上

(※1)最判平成23年6月7日の判示をほぼそのまま引用しただけなので,答案上は短縮して記載すべき。「行手法14条1項本文の趣旨は,行政庁の恣意的判断を抑制するとともに被処分者の不服申し立ての便宜を図ることにあるから,理由提示の程度は,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべき。」くらいか。これでも長い気がする。もっといい書き方があったら教えてください。
(※2)最判平成23年6月7日の判示に沿って書くと,一旦当該処分の根拠法令等から処分に際して提示すべき理由の程度に関する基準を立て,そのあとで本件処分はその基準を満たしているかという当てはめの仕方になると思われる。だから,いわゆる答案としての「あてはめ」の中にさらに具体的な法令における規範的なものとしての基準とさらにそれへのあてはめの2つが入り込む形になるのか。ただ,これをいちいち答案に書いていると長くなりすぎる気がする。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2018-12-11(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題3

さてさて,期末試験が目前です。

最近期末試験の話しかしていない気がしますが,

他にする話もないですしね。

カラオケ行きたいですね。

≪問題≫次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 Aは,婚姻届出をしていない事実上の夫婦であるB(母)およびC(父)の子として,2008年9月29日に出生した。Cは,同年10月11日,甲市長Dに対し,戸籍法49条に基づき,Aに係る出生届(以下「本件出生届」という)を提出したが,非嫡出子という用語を差別用語と考えていたことから,届書中,嫡出子または非嫡出子の別を記載する欄(戸籍49条2項1号参照)を空欄のままとした。このため,Dは,Cに対し,この不備の補正を求めたが,Cはこれを拒否した。Dは,届出の記載が上記のままでも,届書のその余の記載事項から出生証明書の本人と届書の本人との同一性が確認されれば,その認定事項(例えば,父母との続柄を「嫡出でない子・女」と認める等)を記載した付せんを届書に貼付するという内部処理(いわゆる「付せん処理」)をして受理する方法を提案したものの,Cはこの提案も拒絶した。そこで,Dは,同日,本件出生届を受理しないこととした(以下「本件不受理処分」という)。
 Cは,本件不受理処分を不服として,Dに本件出生届の受理を命ずることを求める家事審判の申立てをしたが,E家庭裁判所は,本件不受理処分に違法はないとして,同申立てを却下する決定をした。Cはこれを不服として抗告したが,東京高等裁判所は,これを棄却する決定をし,これに対する特別抗告も最高裁判所の決定により棄却された。BおよびCは,その後も,現在に至るまで,Aに係る適法な出生届を提出していない。
 他方,Cは,Dに対し,Aにつき住民票の記載を求める申出(住民台帳14条2項)をしたが,2008年11月19日,Dは,本件出生届が受理されていないことを理由に,上記記載をしない旨の応答をした。
 住民票の記載は,転入の場合には,住民基本台帳法上の届出(同法22条)に基づいて行うこととされている(同法施行令11条)のに対し,出生の場合には,戸籍法上の届出(戸籍49条)が受理されたときに職権で行うこととされている(住民台帳法施行令12条2項1号)。本件では,戸籍法上の出生届は受理されていないが,例外的に住民票の記載をすべき場合に当たるとBおよびCは考えている。
 BおよびCは,その後も,Aの住民票の記載を行うように,甲市の担当者と交渉したが,進展が見られなかったため,2009年4月6日,弁護士Fに相談した。
 なお,住民票は,行政実務上,選挙人名簿への登録のほか,就学,転出証明,国民健康保険,年金,自動車運転免許証の取得等に係る事務処理の基礎とされている。これらのうち,選挙人名簿への登録以外の事務に関しては,Dは,住民基本台帳に記載されていない住民に対し,手続的に煩さな点はあるが,多くの場合,それに記録されている住民に対するのと同様の行政上のサービスを提供している。

〔設問〕
 弁護士Fの立場に立って,Aを原告とする行政訴訟によって,Aに係る住民票の記載を求めるには,どのような訴訟を提起し,どのような主張をすべきか,述べなさい。

【資料】省略

こう,どっちかの立場から立論してくださいみたいな出題の仕方,嫌いですね。

こっちの好きなように書かせろよって思います。

公法系の先生ってマジで正確の悪い奴らしかいないんじゃないかと思っています。

≪答案≫
1 まず,Aが提起すべき訴訟について検討すると,CがAにつき住民票の記載を求める申出(住基法14条2項。以下「本件申出」という。)をしたのに対し,Dは上記記載をしない旨の応答(以下「本件応答」という。)をしているので,本件応答を処分とみて取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。本件応答が取消訴訟の対象となる「処分」にあたるか検討する前提として,本件申出の法的性格について判断する。
 出生があった場合,戸籍法上の届出(同法49条)に基づいて戸籍の記載が行われるが,住民票の記載は,戸籍法上の届出が受理されたときに職権で行うこととされている(住基法施行令12条2項1号)。このような仕組みからすると,戸籍法上の届出の記載事項に不備があるために届出が受理されない場合,戸籍と連動して,住民票の記載もされないこととなる。この場合,戸籍法上の届出が受理されず,戸籍の記載がされなくても,出生があったのは事実であるから,「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度」(住基法1条)の趣旨からは,住民票の記載をすべきであるとも考えられる。そして,市町村長は,住民票に記載漏れ等があることを知ったときは,職権で,住民票の記載をしなければならないから(住基法14条2項),戸籍法上の届出が受理されていなくても,例外的に,住民票の記載をすべきであるようにも思われる。
 しかし,転入の場合には,住基法上の届出(同法22条)に基づいて住民票の記載を行うこととされている(同法施行令11条)のに対し,出生の場合には,上述のように考えたとしても,職権で住民票の記載をしなければならないとされているにとどまり,届出や申請に基づいて住民票の記載を行う仕組みは規定されていない。そして,住基法14条2項に基づく申出は「申し出る」という文言が用いられており,申出に対する行政庁の審査・応答義務が規定されていない。そうすると,住基法は,住民票の記載を専ら行政庁の判断にかからしめているから,住基法14条2項に基づく申出は,職権の発動を促すものにすぎず,「申請」に当たらない。
 本件でも,Cの申出は,Dの職権による住民票の記載を促すものにすぎず,「申請」にあたらない。そうすると,本件応答は,職権の発動をしない旨を事実上回答したものにすぎないから,取消訴訟の対象となる「処分」にあたらない。したがって,本件応答に対する取消訴訟を提起することはできない。
2⑴ そこで,Aは,住民票の記載を求める義務付け訴訟(行訴法3条6項1号,37条の2)を提起することが考えられる。
 ⑵ 住民票に特定の者の氏名を記載する行為は,市町村長が職権により一方的にその者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを決定づけるものであるから(住基法8条,住基施行令12条2項1号),公権力の主体たる公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものであるから,「処分」にあたる。
 「一定の」とは,原告が義務付けを求める処分,裁決について,裁判所における裁判が可能な程度に特定されていることが必要である。Aは,住基法及び住基施行令に定める,市町村長が職権で住民票を記載すべき場合のうち,住基施行令12条2項1号にあたるものとして処分の義務付けを求めているから,裁判所における裁判が可能な程度に特定されているといえ,「一定の」処分である。(※1)
 前記のように,出生の場合における住民票の記載について申請する手続は法令上認められていないから,「次号に掲げる場合」にあたらない。
 そして,「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)とは,当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれのある者をいう。Aは,住民票の記載がされないことにより,行政上のサービスを受けるにあたり煩さな手続を経ることが要求され,迅速な行政サービスを受ける権利を必然的に侵害されるおそれがある地位にあるから,「法律上の利益を有する者」にあたる。(※2)
 それでは,「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の2第1項)は認められるか。住民基本台帳に記載のない住民は,選挙人名簿への登録以外の各種行政サービスを,手続に煩さな点がありながら受けることができる。また,Aは乳児であって,選挙権を得るまで10年以上あるから,Aに選挙人名簿への登録がされないことについて現在の不利益はない。そうすると,「重大な損害の生ずるおそれ」はないとも思える。しかし,居住関係の証明を必要とし,住民票の提出を求められる手続は,甲市による行政サービス以外にも存在し,日常の社会生活の様々な場面における不利益の累積は,市民生活上看過することができない負担である。このような負担の程度からすると,Aの被る損害の回復は性質上困難である。したがって,住民票に記載されないこと自体をもって,「重大な損害の生ずるおそれ」があるということができる。
 また,Aが上記のような不利益を回避するための手段を定めた法令は特段存しないから,「損害を避けるため他に適当な方法がないとき」(行訴法37条の2第1項)にあたる。
 以上から,Aの提起する義務付け訴訟は,訴訟要件を満たす。
 ⑶ そして,本件では,戸籍法上の届出が受理されていなくても,Aが出生したことは事実であるから,「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度」(住基法1条)の趣旨,この趣旨を貫徹するために市町村長に定期的な調査の責務と強力な調査権限が与えられていること(住基法34条,49条),そして,住民票に記載されないことによって前記のような重大な不利益がもたらされることからすると,「行政庁」DがAを住民票に記載する「処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ」る(行訴法37条の2第5項)。
 したがって,本案勝訴要件も満たす。
 ⑷ よって,Aとしては,住民票の記載を求める義務付け訴訟を提起した上で,上記のような主張を行う。
以 上

(※1)「一定の」についてのあてはめの仕方は分からない。櫻井=橋本『行政法[第4版]』349頁では,「たとえば,根拠法令上,同一の処分要件であることを前提に複数の処分の選択肢があると解釈されるような場合(一定の効果裁量が認められる場合),その選択肢の範囲内で何らかの処分の義務付けを求める義務付け訴訟は,特定性を満たし,適法と考えるべきであろう。」とされているので,義務付けの訴えに係る処分を根拠法令を基に指定していることがいえれば,特定性は満たされるのではないかと思われる。
(※2)予備校の参考答案などを見ると,「法律上の利益を有する者」の定義を出していないものがあるが,第三者でなく当事者の原告適格の場面でも定義は出した方がいいのではないかと思う。たぶん,その方があてはめが楽になる気がする。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
2018-12-09(Sun)

【事例研究行政法】第1部問題2

昨日ブログを久しぶりに更新したかと思いきや,

2日連続の投稿となりました。

この不定期な更新は,完全に気分です。

「てきとーに更新」と呼ばれる所以です。

このブログタイトルをつけた9年前の私は,

先見の明がありました。

そもそも,このブログを読んでいる人がごく限られている時点で,

定期的な更新は求められていません。

日記です。

しかし,日記だとしたら,答案を書いてそれを掲載しているのは,

正直言って頭沸いてんじゃないかと思います。



今日は事例研究行政法の問題2です。

≪問題≫次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

日時 2016年3月10日
場所 Cの事務所

A(ホテル経営者):それでは,事情をお話しします。私は甲県乙市でホテルを建てようと考え,準備を始めておりました。
B(Aの申請手続等を代行している行政書士):ここからは,私が申し上げます。Aさんが建築を予定していたホテルは,その設備が風営法2条6項4号に規定された構造や設備を有していないので,風営法の規制を受けないホテルです。したがって,風営法やその委任を受けた甲県条例などの規制を受けません。また,ホテルの建築予定地は,他の法律の規制を受けないことを確認しました。
A:私どもとしては,風営法の規制を受けないように工夫して,ホテルの設計図を作成し,建築の準備を始めました。
B:ところが,乙市には,「乙市遊技場等及びラブホテル等の建築物の規制に関する条例」という条例が制定されているのです。
C(弁護士):乙市ラブホテル建築等規制条例ですね。
B:そうです。そこで,乙市に設計図や予定されている建築物の外観の資料等をもって担当者に会いに行きました。すると,乙市の担当者から,Aさんが建築を予定していたホテルは,風営法の規制は受けないが,乙市条例の2条1項2号におけるラブホテルに該当するから,条例上の手続をとるように言われました。そこで,私は,Aさんと相談して条例上必要な手続をとることにしました。条例3条2項によるとラブホテルの建築には乙市市長の同意が必要ということですので,私が同意申請書を作成し乙市に提出したところ,昨年12月21日,乙市市長は条例4条1号に違反するとして同意をしないとの通知をしてきたのです。
C:それでどのような対応をされましたか。
B:こちらとしては同意が得られないのは残念ですが,乙市市長の同意を得ないまま,今年の1月12日に甲県の建築主事に建築確認の申請書を提出しました。建築確認済証が出次第,建築工事にかかろうと考えているのですが,甲県は,乙市と協議して,同意をとるようにという指導を続けるだけで,未だに建築確認を出してくれません。建基法6条4項の期間を既に経過しています。これまでの私の経験からしても,これくらいの建築物ですと,遅くても1カ月以内に建築確認が出るのですが。
A:建築確認申請はしたのですが,条例には違反した状態が続いているので,それが気になっています。建築か始まってからも同意を経ずに建築をすれば,乙市は中止命令を出すかもしれませんし。中止命令を無視して建築を続ければ,刑事罰を受ける可能性もあるとのことで,不安に感じています。
B:過去,同様の事例で,乙市はほぼ確実に建築中止命令を出しているそうです。そのことは,乙市の担当者から聞いています。
C:ところで,甲県はなぜ留保しているのでしょうか。
A:乙市では私たちのラブホテル出店に反対運動が起きているので,甲県は,指導を続け,その間に乙市との話がついて,反対運動が収束するのを望んでいるのだと思います。しかし,私は違法な点がない出店計画を変更するつもりはありません。る当初から,甲県に対しては,出店計画を一切変更するつもりはないし,乙市条例が「建築基準関係規定」に該当しない以上,迅速に建築確認を行って確認済証を交付するようにはっきりと言っております。
C:乙市条例6条の中止命令は出ていますか。
B:今のところは,出ていません。
A:既に着工が遅れ,借入金の利息も増えています。また,乙市も甲県も全く態度を変えないので,裁判を起こすことを考えております。
C:わかりました。それでは,これまでの点を踏まえて,訴訟の可否を検討してみましょう。

〔設問〕
1.Aは,Cとの相談の結果,乙市市長の不同意に対して取消訴訟で争うこととした。乙市市長の不同意は取消訴訟の対象としての処分性が認められるか検討しなさい。
2.Aは,甲県に対して抗告訴訟で争うとすれば,どのような訴訟で争うのが適切か検討しなさい。また,甲県の対応の行政法上の評価も検討しなさい。なお,仮の救済については検討する必要はない。

なお,本問の解答にあたっては,以下のことを前提として考えなさい。
①乙市条例は風営法や旅館業法などの国法と抵触していないものとする。
②乙市と甲県行政手続条例は本問の解答に必要な限りでは行手法と同一の内容であるものとする。

【資料】省略

※事例研究行政法[第2版]第1部問題4と共通


僕には,最判昭和60年7月16日の位置付けが分かりませんし,

いろいろな文献を読んでみましたが,

やっぱりよく分かりませんし,

知人に聞いたりもしましたが,

果たして分かりませんでした。

きっと一生理解し得ないんだろうと思います。

残念だなあと思いました。

≪答案≫
第1 設問1
 1 乙市市長の不同意(以下「本件不同意」という。)は,取消訴訟の対象としての処分性が認められるか。
 2⑴ 「処分」(行訴法3条2項)とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
  ⑵ 本件不同意は,乙市市長が,Aが建築しようとしているホテル(以下「本件ホテル」という。)が乙市遊技場等及びラブホテル等の建築等の規制に関する条例(以下「本件条例」という。)4条1号に該当するものと判断し,これを理由として不同意とするものであり(本件条例3条3項),乙市市長の一方的に決定したものであるから,公権力の主体たる公共団体が行う行為である。
  ⑶ 本件条例は,市長が不同意を申請者に通知し(同3条3項),通知された申請者が建築を強行すると中止命令等が発され(同6条),中止命令等に違反すると刑事罰が科せられる(同11条)ことになっている。そうすると,乙市市長がする中止命令によって,同意を得ていない建築主は建築をやめなければならない法的義務を負うことになるのであるから,その前段階にある不同意は将来の中止命令の前に行われる中間的な性格の行為であるとも考えられる。このように考えた場合には,市長の不同意は,単に事前に建築計画の見直しを求めるものにすぎないのであるから,法的効果はみられない行政指導の一種であるということになる。
 しかし,Aが本件不同意にもかかわらず建築を続けた場合には,乙市の条例運用の実態からしてもAは将来中止命令を受ける地位に立たされる状態にある。不同意によってこのような地位に立たされること自体が法的効果であるといえ,その意味において本件不同意には法的効果があるということができる。また,中止命令を受けて訴訟を起こすためだけに建築工事にかかるのは,不自然であり,無駄な時間と費用がかかる対応であって,国民の権利救済の観点から合理的な解決方法とはいえない。そこで,本件不同意によって将来中止命令を受ける地位に立たされて,紛争の成熟性が認められた現段階において取消訴訟を提起することを認めるべきである。したがって,本件不同意は,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものである。
 3 以上から,本件不同意には,取消訴訟の対象としての処分性が認められる。
第2 設問2
 1⑴ まず,甲県の対応の行政法上の評価について検討すると,甲県は建築確認申請を行ったAに対して乙市の同意をとるよう行政指導を続け,これに対しAが迅速に建築確認を行うよう申し向けているにもかかわらず,2か月にわたって申請を保留している。そこで,甲県が上記保留をし続けていることが違法とならないか。
  ⑵ 建基法6条4項は,建築主事が申請書を受理した場合には,その日から35日以内に建築確認をすることを定めている。しかし,普通地方公共団体は住民の福祉の増進に努めるものとされていることから(地方自治法2条14項)(※1),建築確認申請に係る建築物が良好な居住環境を損なうことになるものと考えて,当該地域の生活環境の維持,向上を図るために,建築計画の確認処分を留保し,行政指導を行っても,直ちに違法となるものではない。
 もっとも,建築主において建築主事に対し,確認処分を留保したままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し,当該確認申請に対し直ちに応答すべきこと求めているものと認められるときには,行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情がない限り,当該行政指導を理由に建築主に対し確認処分の留保の措置を受任せしめることは許されない。したがって,それ以後の行政指導を理由とする確認処分の留保は違法である。(※2)
  ⑶ これを本件についてみると,甲県は,Aに対し,乙市の同意をとるよう申し向け行政指導を続け,建築確認を留保している。これに対して,Aは,乙市条例が「建築基準関係規定」に該当しない以上,迅速に建築確認を行って確認済証を交付するようはっきりと言っていることから,確認処分を留保したままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し,当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているということができる。そして,Aが上記行政指導に不協力であることに社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情はない。したがって,Aが,上記意思を表明した時点以降の確認処分の留保は違法である。
 2 そして,Aとしては,甲県の建築主事から本件ホテルの建築計画に係る建築確認済証の交付を受けることを求めているから,甲県の建築主事が建築確認をすることの義務付け訴訟(行訴法3条6項2号,37条の3)を提起することが考えられる。
 建築確認は「処分」(行訴法37条の3第1項1号)であるところ,Aは,甲県に対して建築確認申請書をもって建築確認申請をしているが(建築基準法6条1項),これに対して甲県は何らの処分をしていないから「当該法令に基づく申請……に対し相当の期間内に何らの処分……がされない」場合にあたり(行訴法37条の3第1項1号),Aは「法令に基づく申請……をした者」である(同条2項)。
 そして,Aが上記訴訟を提起するためには,建築確認を行わないことについて不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項,37条)を提起する必要があるが,上記のようにAは「処分……についての申請をした者」(行訴法37条)である。「相当の期間内」(行訴法3条5項)か否かは,通常当該申請を処理するのに必要とされる期間を経過しているか,また,それを経過することについてそれを正当とするような事情があるかによって判断されるところ,本件では,建基法6条4項の規定に照らしても通常処理するのに必要とされる期間は経過しており,行政指導を行っていること以外に処分が行わないことに理由がないことから,経過することについてそれを正当とする事情はない。したがって,上記不作為の違法確認訴訟は適法に提起することができる(行訴法37条の3第3項1号)。
 また,Aの申請した本件ホテルの建築計画は,法令上問題がないものであるから,「行政庁がその処分……をすべきであることがその処分……の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ」る(行訴法37条の3第5項)。
 以上から,上記義務付け訴訟は,上記不作為の違法確認訴訟と併合提起することで,適法に提起することができる(行訴法37条の3第4項)。

以 上


(※1)最判昭和60年7月16日では,普通地方公共団体が建築確認を留保して行政指導を行いうる根拠について,「普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止その他の環境の整備保全に関する事項を処理することをその責務のひとつとしているのであり(地方自治法二条三項一号、七号)」としているが,おそらくこの判決後に地方自治法が改正されたのか,判決に掲げられている地方自治法上の条文が消えている。そこで,これに相当するような条文を挙げるとしたら同法2条14項になろうか。
(※2)事例研究行政法第3版34頁は「行手法33条と同一内容の甲県行政手続条例は,『申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない』と規定しているはずであり,また,判例も同様に考えている」ことから「本事例のAは,捨て背に行政指導には従わない意思を明言している」ため「行政指導を継続し,留保を続けることは違法ではないかと考えられる」としている。しかし,行手法33条は「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては」という前文があるのであって,甲県がAに対して乙市の同意をとってくるよう指導していることが「申請の取下げ又は内容の変更」に当たらない限りは,この条文の適用はできないのではないか,という疑問に直面している。この場合には,結局,最判昭和60年7月16日をそのまま引用することになるのか。ただし,この点について,探究ジュリスト3号76頁参照。

※答案に誤りやご指摘等があれば積極的にコメントをください!!

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