2017-10-20(Fri)

【ロー過去】中大ロー平成29年刑法

だいぶ間が空きましたが,ロー入試の再現を……。

もう1年経ってしまいましたが,微かな需要のために……。

苦手な刑法ですが……。

Ⅲ 刑 法

 次の【事例】を読み,下記の【設問】に答えなさい。解答用紙は,表面(30行)のみを使用すること。

【事例】
 X警察署X派出所勤務の警察官甲は,深夜,担当区域のパトロールに出たが,やがて,A道路舗装会社の工事用資材置き場がある道路に進入していく小型トラックを認めた。当時,X警察署管内では,工事用資材置き場から資材が盗まれる窃盗事件が多発していたことから,甲は,窃盗犯のトラックではないかと考え,後を追い掛けたところ,間もなく資材置き場の入り口前で小型トラックが停止し,運転席から乙が下りてくるのを現認した。実は,乙は運送会社の勤務を終え,自宅に向かっているところであったが,エンジンの調子が悪いのか,運転中異音がしたため,エンジンルームを点検しようと思い立ち,街路灯がある比較的明るい場所で車を停めたもので,それが偶々A道路舗装会社の工事用資材置き場前だっただけのことであった。下車した乙は,エンジンルームを見ようと車の前に回ったが,甲にはこれがいかにも資材置き場の入口から中をのぞき込んで,そこに置かれている資材を物色し始めているように見えた。加えて,深夜という時間帯や乙の服装が黒ずくめだったこともあって,甲は,頭から乙を多発している資材泥棒の犯人であると決め付け,現行犯逮捕の要件はまだないということが一瞬頭をかすめたものの,功名心から,この際資材置き場に侵入する前に捕まえてしまえという気になり,いきなり走り出して乙に駆け寄ると,その背後から両手を広げて飛びつき,乙を組み伏せて逮捕しようとした。乙は,人が走ってくる音に気付いて振り返り,警察官の制服を着た甲が自分の方に向かってくるのを認めたが,その直後甲に急に飛びかかられたため,驚くとともに,振り向きざま思わず右手で甲を強く突き飛ばした。乙は空手を嗜んでおり,右手の突き出しは,いわゆる掌底突き(手のひらの手首に近い部分で相手を突く技)であったため,その強さは半端なものではなく,そのため,甲はもんどり打って後ろに倒れ,路面に頭をしたたかに打ち付けて脳震盪を起こし,搬送先の救急病院で気がつくまで,約1時間にわたって気を失ってしまった。

【設問】
 甲及び乙の罪責について論じなさい。

(120点)


≪再現答案≫
第1.甲の罪責について
 1.甲が,乙に向けて飛びつき,組み伏せて逮捕しようとした行為について,逮捕罪(220条)が成立しないか。
 2.「逮捕」とは,人の身体を拘束し,場所的移動の自由に制約を加える行為をいう。そして,人の身体に対する拘束は,それが短時間であったとしても,その間の被害者の場所的移動の自由を制限するものであるから,一瞬でも人の身体を拘束すれば,同罪は既遂に達すると考える。甲は,乙に飛びつき,乙によって攻撃をされるまでの間乙の身体を拘束していたと考えられるから,甲の上記行為は「逮捕」にあたる。また,同条にいう「不法」とは,注意的文言にすぎず,構成要件とはならない。甲は,乙を捕まえてしまえという意図で上記行為に出ているから,構成要件的故意も認められる。したがって,甲の上記行為は,逮捕罪の構成要件に該当する。
 3.甲は,乙が資材泥棒の犯人であると考えて,これを逮捕しようとしていることから,正当行為(35条)として違法性が阻却されるとも思えるが,上記行為は,未だ現行犯逮捕の要件を満たしていないため,正当行為にあたらない。したがって,違法性は阻却されない。加えて,甲は,現行犯逮捕の要件がまだないと認識しているから,責任も阻却されない。
 4.以上から,甲の上記行為に逮捕罪が成立する。
第2.乙の罪責について
 1.乙が,甲に対して,掌底突きをした行為について,傷害罪(204条)が成立しないか。
 2.「傷害」とは,人の生理的機能に障害を加え,または,人の健康状態を不良に変更することをいう。空手に嗜んだ者が,本来人に対して攻撃を仕掛けるものである空手技を素人相手に行えば,高確率で決まり,相手の生理的機能に障害を加える危険性が十分に認められる。そして,甲は乙の上記行為によって,脳震盪を起こしており,実際に生理的機能に障害が生じている。したがって,乙の上記行為は,「傷害」にあたる。乙は,甲を認識した上で,これを思わず右手で殴っている。反射的とはいえ,そのような行為に出ることを認識しているといえるから,構成要件的故意も認められる。したがって,乙の上記行為は,傷害罪の構成要件を満たす。
 3.しかし,乙は,甲から飛び掛られたことから,それを避けようとして上記行為に出ている。そこで,正当防衛(36条1項)が成立し,違法性が阻却されないか。
 「急迫」とは,法益侵害の現実的危険性が現に存し,または間近に押し迫っていることをいう。「不正」とは,違法と同義である。「やむを得ず」とは,自己の防衛行為が相当性を保っていることをいう。また,主観的正当化要素として防衛の意思が必要であり,その内容は,急迫不正の侵害を避けようとする単純な心理状態をいう。これを本件についてみると,乙は,甲によって,自己の身体の自由が侵害されるおそれがあり,「急迫」性がある。また,甲の逮捕行為は,上記のように,違法性を阻却する事由がないから,「不正」である。そして,乙は,「自己…の権利」である身体の自由を守ろうとしている。これについて,乙は,反射的に上記行為に出たことからすれば,積極的に甲を加害しようとするといった意思ではなく,単純に自己を防衛する心理状態であったといえる。したがって防衛の意思も認められる。さらに,乙の掌底突きは,その強さが半端ではなかったのであるが,このような緊急状態の下で,自己の力を調節している暇はなく,本件のような状況の下でも未だ相当性は失われないというべきである。したがって,甲の上記行為には正当防衛が成立し,違法性が阻却される。
 4.以上から,乙の上記行為については,犯罪不成立となる。
以上


最初に問題を見たときの感想は,うーんなんだこれは,という感じでした。

見たことない問題だけど,何を論じてほしいかはわからなくはない,

だけどそれが合ってるのかも自信ないと困惑を極めていました。

とりあえず,甲から検討していくわけですが,

甲は飛びついて逮捕しようとしているけど,結局身体拘束に至ってないから,

逮捕未遂かなぁと考え,六法をめくったら,

逮捕罪には未遂規定がないことを知り,10秒くらいかたまりました。

(逮捕未遂がないだと……!?じゃあこれ何罪検討するんだ……)と,

本当にこんな心情になりました。

あとから周囲の人に聞くと,暴行罪にした人がほとんどでしたが,

なぜか当時の私には暴行罪の発想がありませんでした。

そうなってくると,私には逮捕罪を推し進めるしかありませんでした。

同時に,刑訴のやらかしもあるから(後述),いよいよ落ちたぞと覚悟しました。

ただ,冷静に考えたら,絶対この問題のメインは乙の罪責だから,

乙で頑張ればいいやと思い直し,どう考えても逮捕罪が成立しない本問で,

軽く逮捕罪を成立させて終わりました。

とにかく,甲をさっさと終わらせようという気持ちから,

違法性・責任のところはすごくあっさり論じるにとどめました。

乙の罪責については,

まぁ,人並みには書けたかな……書けてるといいな,くらいです。

構成要件該当性の検討で,順番がごちゃごちゃして読みづらくなってしまったのは,

反省点だと思います。

あとは,正当防衛の検討もごちゃごちゃしていて,

全体的にごちゃごちゃの答案ができました。

当時の心理状態が強く反映された劣った答案といえよう。

周りには,正当防衛については,相当性できって,

過剰防衛に流した人も結構いました。

私は,答案構成時点で少し迷いましたが,

この状況で乙に前科つけるのかわいそすぎだろという

完全な私情のもと相当性を肯定しました。

評価次第で変わるでしょうし,どっちでもいいと思いますが。

ちなみに,乙の罪責で公務執行妨害罪を検討している方も,結構いました。

私も,本番で少し思いましたが,行数足りないし,

どうせ否定されるから書かなくていいやと思い,書きませんでした。

とりあえず,中大の刑法は,

定義をしっかり書くだけで,合格ラインに乗るんだと思います。

罪責を間違えてもなんとかなるというのは,私の答案によって証明されました。

その問題でもっとも求められている論点さえ外さなければ大きなミスにはならないでしょう。

刑法と刑訴の失敗を通じて,私が言いたいことは,

1科目や2科目失敗したところで,まだまだ挽回のチャンスはあるから,

心を揺さぶられずに,他の科目に専念してほしいということです。

そうすれば,一度は消えかかった全免の希望であっても,

取り戻すことができると思います。

以上
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||中央特快||高尾||

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お疲れ様です。

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