2026-12-31(Thu)

【高校入試】入試問題・解説目次

中3生の皆様,お世話になっております。例の解説書ですが,完成が入試直前になってしまいそうですので,解説を書き次第,暫定的にこちらのブログに投稿していきます。投稿した記事は,このページから飛べるように,下にリンクを貼っていきます。お手数おかけしますが,当分の間,こちらでご確認ください。全体が完成したら,紙媒体で皆様に配布しようと思います。

∞∞∞高校入試問題・解説目次∞∞∞
(最終更新日時:H30.1.30 2:37 都立共通高平成22年度第3問追加)

≪国公立≫
【東京都(共通)】
 ◎英語(平28~平9の第1問はリスニング問題のため省略)
  ・平成23年度
   =第2問第3問第4問
  ・平成22年度
   =第2問第3問第4問
  ・平成21年度
   =第2問第3問第4問
  ・平成20年度
   =第2問第3問第4問
  ・平成19年度
   =第2問第3問第4問
  ・平成18年度
   =第2問第3問第4問

【東京都(グループ)】
◎英語
 〇都立立川高校
  ・平成20年度
   =第1問第2問第3問

以 上
スポンサーサイト
2018-07-04(Wed)

【事例で学ぶ民法演習】問題6-錯誤-


≪問題≫
 町工場を営むAは,事業資金を捻出するために知人のBと共謀し,Bから製造用機械を500万円で購入するとみせかけて,クレジット会社Cとの間で立替払契約を締結した。この契約に基づき,CはBに対して代金500万円の立替払をした。Bは協力の見返りとしてその1割を控除して残額の450万円をAに交付した。また,実際にAがBから機械を購入したことは一切なかった。他方,立替払契約の締結に際して,AはAB間の売買目的物とされた機械(実は存在しない)についてCのために譲渡担保権を設定したほか,Cは,Aから委託を受けたDとの間で書面により連帯保証契約を締結した。CとDは,ともに機械の売買が実際になされたものと思い込んでいた。その後,営業に行き詰ったAの分割金支払が滞ったので,CはDに対して保証債務の履行を求めた。Dは,Cからの請求を拒むことができるかどうか論じなさい。


≪答案≫
 CのDに対する保証契約に基づく保証債務履行請求について,Dがこれを拒む理由としては,


2018-07-04(Wed)

【事例で学ぶ民法演習】問題4-虚偽表示と第三者-

民法の問題演習は久しくやっておりません。

大変ですね(他人事)

≪問題≫
 Aは絵画(以下,「本件絵画」という。)を所有していたが,債務超過に陥ったため,債権者から「本件絵画を渡せ」と要求されるのを恐れ,本件絵画を親戚であるBに売ったように見せかけることで,債権者の追及を免れようと考えた。そこで,AはBに本件絵画を引き渡し,また万がーの事態に備え,AB間で虚偽の売買契約書が作成された。
 本件絵画を受け取ったBは,これをネタに一儲けしようと思い,Aに無断で友人であるCに本件絵画を売却し,BC間では売買契約書が作成されたが,実はCもAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていた。
 その後,Bから本件絵画の引渡しを受けたCは,この間の事情を全く知らないD百貨店から頼まれ,本件絵画を1か月の約束でD百貨店において開催される展覧会のために貸すことにし,CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された。しかし,Dへの引渡しはまだされていない。
 なお,賃貸借契約を締結するさい,Cは自分が本件絵画の所有者であることを示すため,AB間及びBC間の売買契約書をDに見せていた。

小問1 展覧会の期日が迫ってきたので,DはCに対して本件絵画の引渡しを求めた。Aは,ABC間の上記の事情を理由に,「本件絵画の所有者は自分〔=A〕であるから,Dに引渡しを求める権利はない(=Dは,Aとの関係では,賃借権を主張しえない)」ということができるか。

小問2 CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された後,Aの債権者であるEがAのもとを訪れ,Aに対して「お前〔=A〕の借金を棒引きしてやるから,本件絵画を渡せ」と要求した。Aは,予定のとおり,「本件絵画はBに売ってしまった」と答えたが,ABC間の関係を怪しんだEはABCを呼ぴつけ,厳しく問い詰めたところ,上記の事情が露見した。激昂したEは「本件絵画を俺に渡せ。もし渡さないと,お前たちの家族がどうなっても知らないぞ」とAらを脅し,Aの債務を帳消しにする代わりに本件絵画をEに譲渡する契約をAに結ばせたうえ,本件絵画の引渡しを受けた。このとき,Dは本件絵画の引渡しを求めることができるか。次の①と②のそれぞれの場合について答えなさい。
①AがEに対する意思表示をまだ取り消しておらず,Eが本件絵画を所持している場合。
②AがEに対する意思表示を取り消し,Eから本件絵画の返還を受けている場合。

総論の一つの山場である94条まわりの問題です。

単純な問題に見えて,考えなければならない点が多いです。

考えても分からない点もあります。

答案の下に(疑問点)という形で示しました。

誰か教えてください(懇願)

≪答案≫
第1.小問1について
 1.DはCに対して賃貸借契約に基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを求めている。これに対して,Aは,本件絵画の所有権が自己にあることを理由に,Dの上記引渡請求権を否定している。この点,AB間の売買契約は「虚偽の意思表示」(民法94条1項)であるから,無効である。また,同条2項の「第三者」とは,虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって,その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいい,Cはこれにあたるところ,「善意」とは虚偽の意思表示があったことについて知らないことをいい,CはAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていたから,これにあたらない。したがって,AはCとの関係でも,本件絵画の所有権を主張することができる。そうすると,AはCから賃貸を受けたDに対しても所有権を主張することができるようにも思える。
 2.これに対して,Dは,自己も民法94条2項の「善意の第三者」にあたることを主張することが考えられる。これは認められるか。
 民法94条2項の趣旨は,虚偽の意思表示をした者とその意思表示の存在を信じて取引関係に入った者とを比較した上で,前者の帰責性に鑑み,後者を保護する点にある。そうすると,「第三者」とは,直接の第三者に限られず,直接の第三者からの転得者も含まれると考える。
 これを本件についてみると,Dは,「第三者」であるCから転得した者であり,「第三者」にあたる。そして,Dは,ABC間の事情を全く知らないのであるから,「善意」である。したがって,Dは,Aとの関係で「善意の第三者」にあたる。
 3.よって,Aは,Dに対して,AB間の売買契約の無効を対抗することができないから,Aが本件絵画の所有権を主張して,Dの引渡請求権を否定することはできない。
第2.小問2について
 1.①について
 ⑴ まず,DはEに対し本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。ここで,DE間には直接の契約関係はなく,Dは本件絵画について物権的支配を及ぼしていないので,DがEに対し直接上記請求をすることはできない。
 ⑵ そこで,DはAのEに対する取消権を代位行使(民法423条1項)したうえで,Eに対して本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。これは認められるか。
 まず,DはAに対して,保全すべき「自己の債権」を有しているか。上記のように,DはあくまでCとの賃貸借契約に基づいて本件絵画の引渡請求権を取得しているので,これをAに対しても主張することができるかについて検討する。上記のように,Aは,Cとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができる。他方で,Aは,Dとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができない。そうすると,Dの賃借権を保護しつつ,Cとの関係における本件絵画の所有権の復帰を観念するべきであるから,CD間におけるCの賃貸人たる地位は,あたかもAに移転したものとして扱うのが妥当である。このように考えた場合には,AD間における賃貸借契約が擬制され,DはAに対して賃借権に基づいて目的物の引渡しを請求することができる。したがって,DはAに対し,保全すべき「自己の債権」を有している。
 「保全するため」とは,被代位者が無資力であることをいう。本件では明らかではないが,Dの代位行使が認められるためには,Aが無資力であることが必要である。
 しかし,強迫取消権は,強迫によって行為を行った者を保護する制度であるから,行為者本人が取消権を行使するか否かを決定すべきであって,「債務者の一身に専属する権利」にあたる。したがって,DはAの取消権を代位行使することができないのが原則である。もっとも,行為者に対する債権を保全するため必要がある場合において,行為者が強迫による取消権を行使する意思を有しているときは,強迫取消権の上記趣旨に鑑み,これを代位行使することができる。本件でも,Aが強迫により取消権を行使する意思を有していると認められる場合には,一身専属性が解消される。
 以上の要件を充たす場合には,Dの代位行使が認められる。
 そのうえで,保全の実効性確保の観点から,DはEに対し本件絵画を自己に対して直接引き渡すよう請求することができる。
 以上の場合には,DはEに対して,本件絵画の引渡を請求することができる。
 2.②について
 本問では,Aが既に上記取消権を行使し,本件絵画がAの下に復帰している。そして,上記のように,AD間には本件絵画について賃貸借契約が成立しているから,DはAに対してこれに基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを請求することができる。
以 上

(疑問点)
●賃貸人の地位の移転について
 →解説では,「Dの払う賃料はまさに本件絵画が生み出した価値であり,すると,Aを他の一般債権者と同じに扱うことには疑問がある。そこで,Dに対する賃貸人は--Cではなく--Aであると考えたほうが法律関係は簡明になり,またAがDに直接賃料を請求できる点でも望ましい解決といえよう。」とされているが,これだけでは賃貸人をAとする法的根拠に乏しい気がする。
 →要件事実的にこれを整理するとしたらどうなるのか。
●強迫による行為の取消権が債権者代位の場面での一身専属権にあたるかについて(私見のオンパレード)
 →錯誤無効を原則として第三者が主張することができないのは,錯誤無効が表意者保護の制度であるから。強迫取消も行為者保護の制度であるとすると,原則行為者のみが行使し得るのではないか。
 →錯誤無効における判例の例外法理として,保全の必要性+表意者が錯誤を認めていることが挙げられている。これと同様に強迫取消を考えるならば,保全の必要性+行為者が強迫を認めていることとなるのだろうか。しかし,錯誤の場合よりも強迫のときの方が行為者保護の要請が強く働く(行為者の帰責性の程度が低い)ことからすると,一身専属性が錯誤に比して強まり,例外的に代位行使ができる場面は狭めるべきではないかとも思える。そうすると,強迫があったことを認めているにとどまらず,これを行使する意思まで必要ではないか。
2018-07-03(Tue)

【事例で学ぶ民法演習】問題3-法人-


≪問題≫
A漁業協同組合(以下,「A漁協」と略すことがある。)は,A町で漁業権を持つ者を構成員(組合員)とする,公益法人の認定を受けていない非営利法人である。A漁協の定款では,A漁業協同組合の目的は,A町の漁業の振興,および,組合員間の相互扶助だとされている。理事長には,かつての網元の子孫であるBが就任している。定款には,A漁協は組合員の住居建設・漁業経営のための資金の貸付けを行うという規定がある。さらに,A漁協の代表権は理事長だけが持つが,金融機関などから融資を受けるには,理事会の承認を要するという規定もあった。以上を前提に,次の小問に答えよ。なお,各小問は独立した問いである。

小問1 B理事長はA漁協を代表して,非組合員Cに弁済期3年後,年利10%で3000万円を融資し,C所有の甲土地に抵当権を設定した。しかし,3年が経過した後も,Cは債務を弁済しない。そこで,Aが抵当権を実行しようとすると,Cは「A漁協の自分への消費貸借は定款に違反しているから無効であり,したがって,抵当権の実行もできない」と抗弁している。このCの主張は認められるか。

小問2 理事長は理事会の承認なしに,A漁協を代表して,D銀行から弁済期3年後,年利10%でA漁協がA港に建築する予定の冷凍倉庫の建築費用5000万円の融資を受けた。3年後に,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求できるか。
 もしD銀行がA漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容は知っていたが,B理事長が理事会の承認書を偽造してD銀行に提示したため,Bが適法にAを代表できるとDが信じていた場合はどうか。
 また,融資を受けることに関する理事の代表権の制限が,A漁協の定款によるものではなく,仮に,水産業協同組合法に「理事長は組合を代表して第三者から融資を受けることはできない」という規定があったときはどうか。

小問3 小問2で,B理事長がA漁協を代表してD銀行と締結した消費貸借契約が,A漁協に効果帰属せず,しかも,D銀行から借り受けた5000万円をB理事長が,A町の町長選挙に立候補し,A町への原子力発電所の誘致を選挙公約にした友人Eの選挙運動に使用していたときは,D銀行はA漁協に対して何か請求することができるか。



≪答案≫
第1.小問1について
 1.非営利法人であるA漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」(民法34条)であるといえるか。
 営利法人が営利を目的とすることから,法人の利益となる可能性があるものについては広く「目的の範囲内」とされるのに対し,非営利法人は営利を目的とする活動が認められていないことから,「目的の範囲内」か否かは,法令や定款に照らして厳格に判断すべきである。
 これを本件についてみると,A漁協のような水産業協同組合は,「その行う事業によってその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを目的とする」ものであり(水産業協同組合法4条),組合員に出資させる出資組合は「組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付け」ができることとされている(法11条1項3号,2項)。そうすると,法は,組合員でない者に対して資金の貸付けを行うことは想定していないというべきである。また,法のこれらの規定を受けて,A漁協の定款では,その目的はA町の漁業の振興,および,組合員の相互扶助であるとし,組合員の住宅資金・漁業資金の貸付けを行うと定めている。そうすると,A漁協定款も,組合員でない者に対して資金を融資することは想定していないというべきである。これらの規定に照らすと,A漁協の目的には,組合員でない者に対する資金の融通は含まれない。したがって,A漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」に含まれない。
 2.「目的の範囲内」ではない行為の効力はどうなるか。
 民法34条の文言からすると,「目的の範囲」は,法人の権利能力の範囲を画するものであると考えられる。したがって,「目的の範囲内」ではない行為は,法人に効果帰属しない。
 これを本件についてみると,上記のように,A漁協が非組合員Cに対して融資をすることは,目的の範囲内ではないから,無効となる。
 3.A漁協の非組合員Cに対する融資が無効であるとして,これに伴ってされた抵当権の設定も無効となるか。
 たしかに,原因となる契約が無効となれば,それに伴ってされた抵当権の設定も原因を失うから,無効となるとも思える。しかし,原因となった契約に基づいて金銭が交付された場合には,これが無効となることによって,不当利得返還義務を新たに負うこととなり,結局債務のあることにおいて変わりはない。そして,当該抵当権も,その設定の趣旨からして,経済的には,債権者の有する不当利得返還請求権の担保たる意義を有するとみることができる。そこで,この場合の債務者は,当該債務を弁済せずして,原因となる契約の無効を理由に,当該抵当権の無効を主張することは,信義則(民法1条2項)に照らして許されない。
 これを本件についてみると,非組合員Cは漁協Aから5000万円を借り入れているが,この借入れの原因となる消費貸借契約が無効となっても,5000万円の不当利得返還義務を負うこととなるから,結局漁協Aに対して債務を負うことには変わりない。したがって,非組合員Cが消費貸借契約の無効を理由として抵当権の無効を主張することは,信義則に照らして許されない。
第2.小問2について
 1.前段について
 D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することはできるか。A漁協とD銀行間の消費貸借契約は,A漁協の代表者であるB理事長がA漁協を代表して締結しているが,A漁協の定款には,金融機関から融資を受けるには,理事会の承認が必要とされているから,これを経ずにしたB理事長の行為の効果がA漁協に及ぶかが問題となる。
 BはA漁協の「代表理事」(法39条の3第1項〔一般法人法77条3項〕)であり,包括的代理権を有している(法39条の3第2項〔一般法人法77条4項〕)。しかし,これについて上記定款による「制限」(法39条の4第2項,会社法349条5項〔一般法人法77条5項〕)がされているから,D銀行は原則としてこの制限に反した行為の効力を会社に対して主張することはできない。しかし,D銀行が「善意の第三者」にあたる場合には,会社に対して対抗することができる。ここに,「善意」とは,理事の代表権に制限が加えられていることを知らないことをいう。したがって,D銀行が,A漁協の定款による制限を知らないときは,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができる。
 2.中段について
 D銀行は,A漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容を知っているから,「善意の第三者」にあたらない。そうすると,D銀行は,A漁協に対して貸金の返還を請求することができないように思える。しかし,D銀行は,B理事長が理事会の承認書を偽造して提示したことから,B理事長がA漁協を適法に代表できると信じ,貸付けを行うことを決めている。そこで,このような場合に,D銀行が保護されないか。
 B理事長は,代表権を有するものの,それに制限が加えられているにすぎず,「権限外の行為をした場合」(民法110条)にはあたらない。しかし,110条の趣旨は,相手方が正当な取引権限を有する外観を信じて取引に入ったことを保護する点にあるから,この趣旨は代表権に制限が加えられていた場合にも妥当する。したがって,代表理事の代表権に制限が加えられている場合に,代表理事がその制限に反して取引行為をした場合に,第三者において代表理事が理事会の承認を受けていると信じ,かつこのように信じることについて正当の理由があるときには,民法110条を類推適用するべきである。
 これを本件についてみると,B理事長は理事会の承認書を偽造して提示しており,D銀行においてこれが偽造であるか否かを判別することは容易ではないことからすると,D銀行はB理事長がA漁協理事会の承認を受けていると信じ,かつ,このように信じることについて正当の理由があるというべきである。したがって,D銀行は,A漁協に対して,貸金の返還を請求することができる。
 3.後段について
 法によって代表理事の代表権が制限されている場合には,はじめから代表理事には代表権がなかったと考えるべきである。そうすると,B理事長の行為の効果はA漁協には帰属せず,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができない。
 そして,110条の類推適用について検討すると,法の不知は許されない以上,「正当の理由」がないといわざるをえない。したがって,D銀行は,A漁協に対し,貸金の返還を請求することができない。
第3.小問3について
 D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求(法39条の4第2項,会社法350条〔一般法人法78条〕)をすることができないか。
 A漁協は「水産業協同組合」であり,B理事長は「代表理事」である。ここで「職務を行うについて」とは,行為の外形から観察して,それが理事の職務に属するか,あるいは,職務の執行と適切な牽連関係に立つことをいう。B理事長は,代表理事としてA漁協の行為の包括代理権を有していることから,B理事長がA漁協の代表としてする行為は,その外形からして,理事の職務に属するか,職務の執行と適切な牽連関係に立つものとみることができる。しかし,代表理事の行為が法人に効果帰属しない場合において,それとは別に不法行為責任を認めたときには,実質的に代表理事の行為が法人に効果帰属したのと変わらないことになる。そこで,理事の行為が法人の職務に属さないことを相手方が知っていたか,知らなかったことにつき重過失がある場合には,法人は不法行為責任を負わない。したがって,D銀行が,B理事長の行為がその職務に属さないことを知っていたか,,知らなかったことにつき重過失がある場合には,A漁協は不法行為責任を負わない。この場合,D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求をすることができない。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題5

刑訴ぉ……

≪問題≫
 甲は,勤務していた会社(以下「A社」という)の上司V1から10年問にわたり執拗なパワーハラスメントを受け続けた挙句,同社から退職勧告を受け,やむなく雀の涙ほどの退職金を受領して自ら退職した。甲は,退職後1年以上を経過し,再就職口もなかなか決まらずに焦燥感を募らせていた平成26年11月15日,A社に同期で入社していたB(人事部に所属していた)に街中で遭遇し,2人で昼食を摂っていたところ,Bから「お前の退職勧告はおかしい」「V1が明らかに不当な査定をして,それを人事側上層部が鵜呑みにした結果お前は切られた」などと聞かされた。
 そこで甲は,その事実を確認するべく同日午後10時ころV1宅に赴き,呼び鈴を押したところ,V1がインターホンで応じたため,「1年前の退職勧告の件で話があるので出てきてほしい」と言った。ところが,V1が「何を今頃言っているんだ。お前と話すことは何もない。もう来るな。来たら警察を呼ぶ」 などと言って全く応じる様子がなかったため,甲は憤慨し,家の中に入って事実を確認した上で,事と次第によっては少しV1を痛めつけてやろうと考え,門扉を開けてV1宅の敷地内に侵入して裏庭に回り,その場に落ちていた石を用いて裏庭に面した部屋の窓のクレセント錠付近のガラスを割り,手を差し込んで錠を回して内部に侵入し,窓ガラスが割れる音を開いて当該部屋(リビングルーム)に駆け込んできたV1およびその妻V2に対し,甲の退職勧告までの経緯について確認した。すると,当初は驚いてひるむ様子を見せていたV1が次第に落ち着きを取り戻し,最終的にはへラヘラと笑いながら「お前のことは入社当初から気に入らなかったんだ」,「仕事もろくにできないくせに給料をもらおうなんて都合がよすぎる」,「そんなものは泥棒と大して変わらない」などと言い,さらに,V2もそんな夫をいさめるどころか「V1の言うとおりよ。甘ったれるのもいい加減にしなさい。あんたなんかが勤めるところはどこにもないわ」などと言うにいたった。
 そこで,甲は,平成26年11月15日午後11時ころV1宅内において,日頃から護身用に持ち歩いていた携帯用小型ナイフで,V1およびV2の大腿部や背部を突き刺し,失血多量等によりその場で両名を死亡せしめたとの2つの傷害致死の事実(以下V1に対する傷害致死の事実について「V1事実」,V2に対する傷害致死の事実について「V2事実」という)で同年12月20日に起訴された(「前訴」という。なお,検察官は,手持ちの証拠に照らし,V1宅への侵入行為があることも明らかであるものの,犯罪に見合った処罰の確保の観点からすれぱ,2件の傷害致死のみで起訴するのが相当であると判断した)。
 甲側は,平成27年4月に開催された第1回公判期日において,「本件各事実は,同一の住居侵入行為たるV1宅への侵入行為を手段として犯されたものであり,V1事実も,V2事実も,住居侵入を含めて起訴されれぱ一罪として処断されるべき犯罪行為の一部を構成するものであるから,こうした形での公訴の提起は,検察官の訴追裁量権の逸脱に当たる。本件公訴はいずれも棄却されなけれぱならない」と主張した上で,証拠調べの段階においても,「住居侵入の事実の存在等」を立証するためのものであることを明示して,関係証人,証拠物,証拠書面の取調べを請求した。
 受訴裁判所は,これらの証拠調べ請求をいずれも却下したが,関係証人の証言や,被告人質問の内容において住居侵入の事実の存在が明らかであったことから,その存在およびそれと本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で,有期懲役刑を選択し,併合罪処理によるならば24年の刑を宣告すべきところ,16年の刑を宣告するにとどめた。

〔設問〕 本事例における①検察官の公訴提起の適否,②裁判所の措置の適否を論じなさい。

一部起訴ですが,その中でも,いわゆる「かすがい外し」についてです。

論点は明確ですが,何をどの順番で論じればいいのか,かなり迷います。

≪答案≫
1.検察官の公訴提起の適否について
 甲は,V1宅への住居侵入,V1事件及びV2事件を行っており,これらがいずれも認定される場合には,科刑上一罪となる関係にある。これに対して,検察官が起訴した事実は,V1事件及びV2事件のみであって,V1宅への住居侵入については起訴していない。そこで,このような一罪の一部の起訴が認められるか。
 検察官には広範な訴追裁量権が認められており(刑訴法248条),一罪の全部の事実を不起訴とすることもできる以上,一部を起訴し残部を起訴しないという一部起訴も許される。しかし,一罪の一部起訴が検察官に認められた訴追裁量権の逸脱となる場合には,これをすることは許されない。
 これを本件についてみると,V1宅への住居侵入の事実が認められると,いわゆる「かすがい理論」によって,V1事件とV2事件とで科刑上一罪になるところ,かすがいを外すことによって,V1事件及びV2事件を併合罪として起訴している。併合罪の場合には,懲役刑の長期が1.5倍となるから(刑法45条前段),被告人にとって量刑上不利益となるため,かすがいを外した起訴は検察官の訴追裁量権を逸脱しているとも思える。しかし,被告人に科刑上の不利益が生じないように量刑上の配慮をすればこの点は問題とならないから,かすがいを外した起訴自体を不適法とする必要はない。また,裁判所が検察官の訴追裁量権の適否を判断するためには,検察官がかすがいを外した理由が合理的なものかを判断しなければならないところ,下記のように裁判所は訴因外の事実に立ち入って審査することはできないから,かすがいを外したことの合理性について審査することができない。そうすると,かすがいを外して公訴提起したことについて,それが検察官の訴追裁量権の逸脱であると積極的に認定することはできない。したがって,検察官は,上記のような一部起訴をすることができる。
2.裁判所の措置の適否について
 裁判所が甲のV1宅への住居侵入の事実の存在及び本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で16年の刑を宣告したことは適当か。裁判所が訴因外の事実に立ち入って審理することが許されるかが問題となる。
 当事者主義を採用している現行法下では,審判対象は検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であり,裁判所は訴因の範囲で審判しなければならない。したがって,原則として,裁判所は訴因外の事実に立ち入って審理することは許されない。もっとも,訴因外の事実が訴因に係る犯罪の成立を否定する事実である場合や公訴提起を無効にする事実である場合には,実質的には訴因の範囲内ということができ,例外的に裁判所はこれについて審理することができる。
 これを本件についてみると,科刑上一罪とされる場合であっても,それを構成する個々の犯罪事実に対応する犯罪は成立していることから,V1宅への住居侵入の事実に基づく住居侵入罪の存否にかかわらずV1に対する傷害致死罪及びV2に対する傷害致死罪はそれぞれ成立する。そうすると,訴因外のV1宅への住居侵入の事実をもって上記2つの傷害致死罪の成立は否定されない。また,上記のように,検察官の訴追裁量権の逸脱はないのであるから,V1宅への住居侵入について公訴提起しなかったことをもって公訴提起は無効とはならない。したがって,裁判所は,訴因外の事実であるV1宅への住居侵入の事実に立ち入って審理することはできない。
 そうすると,裁判所がV1宅への住居侵入の事実を審理できない以上,これを量刑事情として考慮することも許されないから,裁判所がこれについて付随的に心証を形成し,16年の刑を宣告したことは不適当である。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題4

すげぇ遊びてぇ

という気持ちを抑えつつ(抑えきれているとは言っていない)

今日は,捜索差押です。

≪問題≫
 A警察署刑事課は,覚せい剤取締法違反で逮捕した甲から,同署管内に居住する乙が自宅で覚せい剤を恒常的に密売しており,自分も乙から覚せい剤を購入したとの供述を得た。そこで,乙の自宅を捜索して証拠品を押収しようと考え,乙に対する覚せい剤取締法違反(営利目的所持・譲渡)容疑で,乙宅を捜索すべき場所,「覚せい剤,覚せい剤計量器具類,覚せい剤分包紙袋類,覚せい剤取引関係文書,手帳,メモ類,パーソナルコンピュータ及びその付属機器類,電磁的記録媒体,被疑者使用の携帯電話及び付属の充電器等」 を差し押さえるべき物とする捜索差押許可状の発付を受けた上,同課所属のB・Cら計6名の警察官をその捜索等のために乙宅に赴かせた。
 Bらは,乙宅の玄関先で,応対に出た乙に対し,インターフォン越しに,自らの身分を名乗り,覚せい剤取締法違反の容疑で捜索に赴いた旨を伝えたところ,乙は「今,寝起きなので,服を着るのに数分間だけ待ってくれ」と言ったのみで,特段抵抗することなく,それから2~3分後に玄関ドアを開けた。そこで,Bらが室内に入ったところ,乙と同居している乙の内妻丙が,髪の毛はボサボサでノーメイクのまま,ブランド物のショルダーバッグを肩から提げて外出しようとしていた。 Bは,女性である丙が容姿も整えずにブランド物のバッグだけを持って外出しようとする不自然さのほか,その外出のタイミングから,丙が乙の指示を受けて覚せい剤等の証拠品を持ち出そうとしている疑いが極めて濃厚だと考え,丙に対し,そのショルダーバッグの中を見せるように求めたところ,丙はそのショルダーバッグを抱え込んだまま廊下にしゃがみ込み,その中を見せることを頑なに拒否した。
 また,Bが丙にショルダーバッグの中を見せるように説得を始めたところ,宅配業者が乙宛ての荷物を届けに来たことから,Bは乙にそれを受け取らせた上,その中を見せるように乙に求めたが,乙もその荷物を抱え込んで,中を見せるのを頑なに拒否した。
 そこで,BおよびCは,室内の捜索は他の警察官に任せ,Bは丙に対し,Cは乙に対し,それぞれショルダーバッグ,宅配荷物の中を見せるように説得を重ねたが,乙・丙の両名は説得には一切耳を貸さず,その要請を頑なに拒否し続けたことから,B・Cの両名は,これ以上の説得は時間の無駄であり,前記捜索差押許可状に基づき,乙・丙の抵抗を排除してでもこれらの中を捜索するしかないと考え,室内を捜索していた他の警察官の応援を得て,ショルダーバッグを抱えている丙の手,宅配荷物を抱えている
乙の手をつかんでそれぞれショルダーバッグ・宅配荷物から外し,それらを開被して内容物を確認した。
 その結果,丙が持っていたショルダーバッグの中からは覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋2袋,CD-R1枚および乙の高校卒業時のクラス名簿1冊(数名について氏名の脇に丸印が付されているもの)の計4点が,乙が受け取った宅配荷物からはクッション材に包まれた覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋10袋がそれぞれ発見されたことから,Bは,いずれも被疑事実である乙の前記覚せい剤取締法違反罪に関係する証拠物であるとして,直ちにこれらを差し押さえた。なお,CD-Rについては,乙宅室内にあったパソコンが故障して再生できなかったため,差押えの時点ではその内容を硫認していない。
 その後,Bは,白色結晶粉末等を発見されたことで観念した乙・丙の承諾を得て,ショルダーバッグおよび宅配荷物にそれぞれ入っていたポリ袋のうち各1袋を開封し,それらに入っていた白色結晶について覚せい剤の簡易試験をしたところ,いずれも覚せい剤の反応を示したことから,乙・丙の両名を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)の現行犯人として逮捕した。後日,A警察署刑事課において,押収したCD-Rおよびクラス名簿に関して捜査を遂げたところ,CD-Rには,今回の情報提供者である甲を含め,これまで乙が覚せい剤を販売した者の携帯電話番号の一覧表,乙の覚せい剤仕入先である暴力団事務所の名称と住所,取引を担当している構成員の氏名と携帯電話番号などがそれぞれ記録されていたほか,クラス名簿については,氏名に丸印が付されている者が継続的に乙が覚せい剤を販売している相手であることが判明した。

〔設問〕B・Cの捜索・差押えは適法か。

論点がいろいろあって面倒です。

そのような感想を抱きました。

あと問題文長すぎ。

≪答案≫
第1.捜索について
 1.乙に対する覚せい剤取締法違反容疑にかかる捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)は,その「捜索すべき場所」を乙宅としているが,これをもって,丙という人が所持するショルダーバッグ(以下「本件ショルダーバッグ」という。)を捜索することができるか,すなわち,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」である乙宅に含まれるか。
 捜索にあたり令状が必要とされている(憲法35条1項,刑訴法218条1項)趣旨は,捜索という対象者に対して重要な権利侵害を伴う処分については,令状裁判官による「正当な理由」についての事前審査を要求することで,国民の権利利益を保護した点にある。したがって,場所に対する捜索令状の効力が及ぶ範囲は,令状裁判官の事前審査が及んでいる範囲をいう。具体的には,当該捜索場所について認められる総体としての権利利益に包摂され,これと一体を成す関係にある場合には,令状の効力が及び,捜索をすることができる。
 これを本件についてみると,丙は,その捜索場所である乙宅に居住する乙の内縁の妻であって,その場所内の物を自由に移動・保管できる立場にある。また,捜索対象となったショルダーバッグは,丙か手に持っていたにすぎず,着衣等身体に密着させて所持していた物とは異なり,乙宅内に存在する物についてのプライバシーを離れた丙の身体という別個に保護されるべきプライバシーを侵害するものとまではいえない。そうすると,本件ショルダーバッグは,乙宅について認められる総体としての権利利益に包摂されているというべきである。
 したがって,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」に含まれるから,本件捜索差押状をもって本件ショルダーバッグの捜索をすることができる。
 2.B・Cは,乙から宅配荷物(以下「本件宅配荷物」という。)を取り上げて,開扉し,内容物を確認している。しかし,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状発付時には,乙宅に存在しなかったものであるから,これについても令状の効力が及ぶか。
 令状発付時に裁判官が対象場所におけね具体的な物品の存否を把握することは困難であるうえ,対象場所の管理者は令状発付後も物品を自由に移動できる状況にある。それにもかかわらず,刑訴法は捜索差押許可状について有効期間を定め(同法219条1項),幅のある時間内の令状執行を許容していることに照らすと,裁判官は,有効期間内に捜索対象となる場所で行われる物品の移動をも考慮して捜索差押許可状を発付しているとみるべきである。そうすると,捜索差押許可状の効力は,有効期間内にある限り,令状発付後に搬入された物も含めて,当該強制処分の際に対象場所に存在するすべての対象物に対して及ぶと考える。
 これを本件についてみると,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状が執行されている途中で搬入されたものであるから,本件捜索差押許可状の有効期間内に乙宅に搬入されたものとみられる。そうすると,本件捜索差押許可状の執行の際に対象場所たる乙宅に存在したものであるということができるから,本件捜索差押許可状の効力は本件宅配荷物についても及ぶ。
第2.差押えについて
 1⑴ Bは,乙の高校卒業時のクラス名簿(以下「本件クラス名簿」という。)1冊を差し押さえているが,これと覚せい剤取締法違反の被疑事実との関連性は認められるか。
 被疑事実と差し押さえるべき物との関連性は,被疑事実の内容・態様,差し押さえようとする物の内容・性質等を考慮して個別具体的に判断する。
 これを本件についてみると,被疑事実となるのは覚せい剤の営利目的所持及び譲渡であって,その性質上行為の相手方を必要とするものである。そして,客観的には,本件クラス名簿は,覚せい剤を販売する相手方が記載された物とみることができるから上記被疑事実を裏付ける証拠ということができるから,関連性が認められる。また,覚せい剤の販売をする際に,自己の人間関係を利用してその譲渡先を探すことも十分あることや,上記被疑事実と無関係なクラス名簿であれば覚せい剤と思われる物と一緒に本件ショルダーバッグにしまわれていることは考えにくい。さらに,捜索がまさに始まろうとする段階で捜索場所に居住する人間が慌てて持ち出そうとした行為に照らせば,本件クラス名簿は,一部が覚せい剤の密売人の住所録代わりに使用されていたものとの疑いがあるということができる。以上に照らせば,捜査機関が判断できる程度に,本件クラス名簿と被疑事実との関連性は認められる。
  ⑵ そうだとしても,本件クラス名簿は,本件捜索差押許可状に列記された差押対象物に含まれるか。
   ア.そもそも本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」の記載は,これをもって特定しているといえるか。
 令状主義(憲法35条1項,刑訴法218条1項)の趣旨は,令状審査にあたり「正当な理由」(憲法35条)の存在についての令状裁判官による実質的認定を確保する点及び捜索の実施にあたり捜査機関の意のままにあらゆる場所が無差別的に捜索されることを防止する点にある。しかし,令状発付時に差押対象物は必ずしも明らかになっていないことから,厳密な差押物件の特定は不可能であり,ある程度概括的なものにならざるをえない。そこで,裁判官が特定の物の類型について「正当な理由」をはんだすることができ,捜査機関が令状の記載自体から何が令状に記載された差押対象物件なのか判断できる程度に記載されていれば足りる。
 これを本件についてみると,本件捜索差押許可状の差押対象物は「等」とされているが,これは「覚せい剤,覚せい剤計量器具類」などの具体的な物件の例示に付加されている物であって,このような例示からして捜査機関としても差押対象物件か否かの判断は可能であるといえる。したがって,本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」は特定されている。
   イ.それでは,本件クラス名簿は,「等」に含まれるか。
 上記のように差押対象物の記載が概括的なもので足りることからすると,令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であれば,「等」に含まれる。
 これを本件についてみると,仮に本件クラス名簿の丸印の者が抜き書きされて別文書に一覧として記録されていた場合には,その文書は取引先関係者の一覧表であると強く疑わせるものとして,「覚せい剤取引関係文書」に該当すると考えられる。そうすると,加工前の原典についても,本来であれば「覚せい剤取引関係文書」に記載されるべきものの加工の手間が省かれているだけであるから,「覚せい剤取引関係文書」に準ずるものとして扱うことができる。したがって,本件クラス名簿は令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であるといえるから,「等」に含まれる。
 2.BはCD-R(以下「本件CD-R」という。)の内容を確認しないままこれを差し押さえているが,関連性を判断せずに証拠品を差し押さえることはできるか。
 令状主義の上記趣旨に照らすと,差し押さえるべき物と被疑事実との関連性については,捜査機関もこれを審査すべきであるから,これを審査しない包括的差押は原則として許されない。しかし,関連性の判断は,被処分者の利益と捜査の必要性との比較衡量に基づく規範的なものであるから,関連性の程度は,令状執行の際の具体的な状況により変動する。したがって,被疑事実と関連する蓋然性が認められ,包括的差押の必要性がある場合には,包括的差押も認められる。
 これを本件についてみると,本件CD-Rは,覚せい剤と思われる物や本件クラス名簿と一緒に,捜索現場の居住者である丙が,捜索開始後に慌てて持ち出そうとしていた本件ショルダーバッグの中に入っていたものである。そして,本件ショルダーバッグの中には,これらのもの以外には入っていなかったことも併せて考えると,丙が被疑事実である覚せい剤取締法違反の証拠品を持ち出してその押収を免れようとしていたとの疑いが濃厚である。したがって,本件CD-Rが被疑事実と関連する蓋然性は認められる。そして,本件CD-Rは,可視性・可読性がなく,その内容をそのまま確認することはできない。また,丙が上記のように本件CD-Rを乙宅から運び出そうとしていることからすると,証拠隠滅が行われる可能性が高く,その場で内容を確認している間にも隙を見て証拠隠滅が図られるおそれがある。そこで,本件CD-Rについて内容を確認しないまま差押えをする必要性は高い。以上から,本件CD-Rの内容を確認しないままこれを差し押さえた行為は適法である。
以 上



2018-06-09(Sat)

【事例研究刑事法Ⅱ】第4部第2問-訴因変更の可否-


≪問題≫

 P検事は,M県N市にあるN地方検察庁公判部所属の若手検事であり,毎週月,水,金の3日間,N地方裁判所刑事5部の公判に立会している。平成H年9月8日はなかなか大変な1日となった。

〔設問1〕
 最初の事件は,覚せい剤取締法違反被告事件の第1回公判である。被告人甲の尿からは覚せい剤成分が検出されたとの鑑定があるが(強制採尿平成H年7月20日),甲は,捜査段階では,覚せい剤使用について一切供述をしなかったため,「被告人は,法定の除外事由がないのに,平成H年7月上旬ころから同月20日までの間,M県N市及びその周辺において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩類若干量を自己の身体に摂取し,もって覚せい剤を使用した」との公訴事実で公判請求された。公判廷において,甲は,覚せい剤を使用したのは間違いないと述べ,さらに,「7月18日夜,N市内の自宅で,覚せい剤結晶をアルミホイルにのせてライターであぶってその煙を吸いました」と供述し,弁護人も被告人の言うとおりであると述べた。
〔設問2〕
 次の11時からの事件は,窃盗被告事件の第2回公判である。被告人乙は,平成H年4月3日に,N市内のV宝石店から真珠のネックレス1個(時価40万円相当)を窃取したとの公訴事実で起訴されている。乙は捜査段階から犯行を認め,第1回公判で検察官請求証拠はすべて取調べを終え,本日は被告人質問を経て論告,弁論が予定されていた。ところが,乙は,被告人質問において,「本当はこのネックレスは,友人のAがV宝石店から盗んできたものを20万円で買ったものです。正直に話すとAまで事件に巻き込んでしまうので,自分が盗んだことにしましたが,Aが別の盗みで警察に逮捕され,V宝石店の盗みも正直に話すと言っているそうですから,私も,本当のことを話します」と供述した。P検事が警察に連絡したところ,たしかにAは窃盗容疑で逮捕勾留されており,Aが書いた「上申書:私が犯した盗み一覧表」という書面には,「4月初め V宝石店 真珠のネックレス1個」との記載もあるとのことであった。
〔設問3〕
 午前中の事件について考えながら昼食をすませたP検事は午後1時半に始まる覚せい剤取締法違反被告事件の公判のため法廷へ戻った。この事件の被告人丙は,同人の捜査段階の自白に基づき,平成H年6月30日にN市内の自宅で覚せい剤を自己の左腕に駐車したとの事実で起訴されている(尿の任意提出7月5日)。丙は,公判でも事実を認め,検察官請求証拠もすべて取り調べられたので,P検事は,「この事件は今日1回で結審しそうだな」と内心一息ついた。ところが,被告人質問において,丙は,「今まで,覚せい剤を使ったのは6月30日だけだと言っていましたが,今回できっちりやめたいと思いますので,本当のことを話します。6月27日,30日,7月3日と3回注射していました。全部自宅で注射しました。本当のことを言わないで申し訳ありませんでした」と述べた。

 さて,それぞれの事件において,P検事は甲・乙・丙の公判廷での供述を受けて,どうすべきであろうか。



≪答案≫
第1.設問1



2018-06-09(Sat)

【事例研究刑事法Ⅱ】第4部第1問-訴因変更の要否-

論文の勉強が進まず焦っています。

もうあと1ヵ月しかありません。

こんなんで果たして受かるのでしょうか。

今日は久しぶりに刑訴です。

≪問題≫
 甲は,乙およびVと共謀の上,平成26年1月10日午前1時ころ,東京都新宿区〇町〇丁目〇番地の家電量販店に強盗目的で押し入り,乙およびVがそれぞれ店の入口と店内を見張っている間に,甲が店員Aに隠し持っていたナイフを突きつけ,抵抗した店員Aの腹部をナイフで刺して重傷を負わせた上,売上金約400万円を強奪した。3人はその日のうちに,強盗した金を山分けすることとし,甲が約200万円,乙およびVがそれぞれ約100万円を取り分として配分した。
 甲・乙およびVの3名は,同年2月1日午後9時ころ,東京都港区△町△丁目△番地の飲食店「セミナー」において飲食をしたが,先の強盗行為によって得た金の配分額をめぐってVが不満を言ったため,口論となった。そして,しばらく言い争っているうちに,甲および乙は,Vの態度があまりに横柄であることに憤激し,またそれまでに飲んだ酒の勢いもあって,この際,Vを殺すのもやむをえないとその場でとっさに相互了解した上,乙がビールビンを逆さに持って,これをたたき割り,それでVの頸部を突いてVをその場で殺害し,飲食店の店員に気づかれないようにVの遺体にコートを被せて店外に運び出した上,車で郊外の山中まで運搬して,その遺体を遺棄するに至った。
 捜査の結果判明した以上の事実のうち,被告人甲に対する殺人被告事件の審理経過は以下のようであった。
 起訴状記載の公訴事実は,「被告人甲は,乙と共謀の上,平成26年2月1日午後9時ころ,東京都港区△町△丁目△番地の飲食店『セミナー』の個室4号室において,Vに対し,殺意をもって,乙において割ったビールビンでVの頸部を突き,よって,そのころ,同所において同人を頸動脈等損傷に基づく失血により死亡させて殺害した」というものであった。検察官は,冒頭陳述において,Vを殺害するに至った経緯につき,先の強盗行為によって得た金の分配をめぐるVの不満の態度があまりに横柄であったことから甲および乙が憤激し,とっさに相互了解してVを殺害するに至ったものである,と陳述した。
 ところが,証拠調べにおいて,証人として出廷した乙は,「セミナー」個室4号室においてVの隣りの席に座っていたのは甲であり,Vをビールビンで突いたのも甲であって自分ではない,と供述するに至った。乙の供述に対しては,被告人甲およびその弁護人から反対尋問もなされたが,ビールビンでVを突いたのは乙ではなく甲である可能性が高くなった。なお,ビールビンからは甲・乙両名の指紋が検出されたとの鑑定書の証拠調べも行われていた。また,被告人甲は,当夜はビール数本,焼酎の水割り数杯を飲み,その酔いのため乙とV殺害についてとっさに相互了解をすることなどできなかったと主張していた。当夜の飲食店「セミナー」の飲食代金請求書の控えも証拠として提出され,証拠調べも行われていた。
 これに対して,証人乙は次のように供述した。すなわち,Vは金の配分額に対する不満を言っているのはV自身だけでなく,Vの内妻Bも不満を言っていると述べたことから,Vが強盗行為の内容をその内妻Bに漏らしていることがわかった。これを知った甲は,Vが内妻とはいえ事件の第三者であるBに犯行を漏らしたことについて,犯行がさらに外部に漏れるのではないかと危機感を抱き,この上はVの口を封じる必要があり,それが内妻への見せしめにもなるからこの場でVを殺害するしかないと自分に耳打ちしたので,自分はこれに同意した,というものであった。

〔設問〕裁判所は,審理の結果,証人乙の供述により新たに判明した事実が真実であるとの心証を抱くに至った。この場合,裁判所が新たに判明した事実を認定するについては,どのような点が問題となるか。

訴  因  変  更

平成13年判例の規範はまぁいいとして,

それにどう当てはめていったらいいのかが,

毎度毎度悩みどころです。

≪答案≫
1.甲に対する殺人被告事件における起訴状記載の公訴事実につき,実行行為者は「乙」とされているところ,裁判所は乙の証人尋問の結果,実行行為者を「甲」と認定しようとしている。また,冒頭陳述において検察官は,V殺害の動機を「甲および乙が憤激し」たことを述べているのに対して,裁判所は「Vの口を封じる必要があ」ったと認定しようとしている。このように,裁判所が公訴事実または冒頭陳述と異なる認定をしようとする際に,訴因変更手続は必要であるか。
2.当事者主義を採用する刑訴法の下では(同法256条6項,298条1項,312条1項),裁判所の審判対象は,検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であるところ,その機能は,裁判所に対し審判対象を画定し,その限りにおいて,被告人に防御範囲を明示する点にある。したがって,審判対象の画定に必要な必要不可欠な事実,すなわち,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る具体的事実,または,同一構成要件内の他の犯罪事実と区別するに足る事実に変更がある場合には,訴因変更手続が必要である。
 また,訴因事実と異なる認定事実が,一般的に被告人の防御にとって重要な事項であるときは,争点明確化による不意打ち防止の要請に基づく措置がとられるべきである。そこで,検察官が訴因においてこれを明示した場合には,原則として,訴因変更手続を要する。もっとも,被告人の防御の具体的な状況等の審理の状況に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定することができる。
3⑴ これを本件についてみると,甲は,乙との,殺人罪の共謀共同正犯として起訴されている。共同正犯の場合には,実行行為者が特定されずとも,共謀の事実をもって処罰が可能であるから,その実行行為者が誰であるか明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえない。本件公訴事実と認定事実とを比べても,犯行の態様と結果に実質的な差異がない上,共謀をした共犯者の範囲にも変わりはなく,そのうちの誰が実行行為者であるかという点が異なるのみである。したがって,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る具体的事実に変更はない。また,他の犯罪事実の区別するに足る事実にも変更はない。したがって,審判対象確定の見地からは訴因変更は必要とはされない。
 しかし,実行行為者が誰であるかは,一般的に被告人の防御にとって重要な事項であるから,これを「乙」と明示した本件では,原則として訴因変更が必要となる。
 もっとも,本件の審理経過をみると,公訴事実は「乙において割ったビールビンでVの頸部を突き」とされている一方で,乙の証人尋問においては「Vをビールビンで突いたのも甲であって自分ではない」と,両立しないことが述べられている。このような状況においては,当事者双方において,両事実を想定した攻撃防御活動を行うものと考えられる。そうすると,具体的な審理経過から,実行行為者が争点になることが明らかになっており,甲において十分に争う機会が確保されていたものと考えられるから,実行行為者を「甲」であると認定しても,甲にとって不意打ちとならない。
 よって,裁判所は,訴因変更手続を経ずして,実行行為者を「甲」であると認定することができる。
 ⑵ 犯行の動機についても,犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る事実にも,他の犯罪事実と区別するに足る事実にはあたらない。したがって,審判対象確定の見地から,訴因変更が必要となるものではない。
 また,犯行の動機について,訴因に明示されていない以上,争点明確化による不意打ち防止の要請も働かないから,訴因変更は必要とはならない。
 よって,裁判所は,訴因変更手続を経ずして,犯行の動機を「Vの口を封じる必要があっ」たと認定することができる。なお,裁判所が当該事実を認定するためには,争点顕在化の措置がとられるべきである。
以 上



疑問点
Q.訴因に明示されている場合とされていない場合とで区別した記述がされているが,訴因に明示されていない場合であっても,2段階目までの論証には乗るのか(審判対象画定についてのあてはめ→争点顕在化の観点からの不意打ち防止の要請はあたらない,という書き方になるのか)?それとも,最初から独自の論証が用意されるべきなのか?
2018-05-29(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題8

国賠多少はとか言いながら,万が一出されると怖すぎるため,

結構がちがちにやってしまっています。

こういう恐怖心から解放された自由な人生を送りたかった。

≪問題≫
次の事例を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 甲県の乙市立中学校は,乙市が設置し管理する中学校である。乙市立中学校は県内ではとりわけ音楽等の文化活動が盛んであり,構内の体育館(以下「本件体育館」と呼ぶ)は,今から10年前に建築されたが,体育の授業や課外のクラブ活動によるスポーツだけではなく,コンサートや文化的なイベントも開催することができるように,当時の最新の設備を備えていた。その設備の1つとして,舞台前面の床面が可動式になっており,コンサートを行う場合には,床面を下げて,オーケストラピット(舞台上でオペラ等の公演を行う場合,オーケストラが入るためのスペースとして舞台前面に設けられ,通常観客の視線を遮らないよう客席より低い位置になる)を作ることができるようになっていた。ただし,床面を下げた場合,本件体育館の床面とオーケストラピットの床面との間に隙間があく構造となっていた。オーケストラピットの下は地下の機械室につながっており,体育館の床面から機械室の床面の差は4mほどであった。また,体育館の床もオーケストラピットの床も,通常の体育館で使われる素材を使ったフローリングとなっていた。
 乙市立中学校では,例年,文化祭の行事の一部として,音楽系のクラブが中心となって,本件体育館でコンサートを開催していた。コンサートは,地域では有名な行事となっており,中学校の関係者だけではなく,地域住民も参加できるようになっていた。特に,プログラムの内容は小学生や幼稚園児に適した内容とされていた。そのため,例年,コンサートにおいては,同中学校の中学生だけではなく,周辺の地域の小学生や幼稚園児がそれぞれの小学校や幼稚園の行事の一環として参加していた。
 文化祭の日には舞台前の床を約0.7m下げて,オーケストラピットを設定していた。オーケストラピットを設定していたのは,ピット内でオーケストラが演奏するためではなく,当日は乙市立中学校の生徒だけではなく小学生や幼稚園児も多数来場することから,舞台上の生徒が落ち着いて演奏できるように,観客席と舞台の間にスペースを設けるためであった。観客席とオーケストラピットの境界には,高さ0.8mで幅1.6mほどのプラスチックと金属製の防護柵(以下「本件防護柵」と呼ぶ)が数センチ間隔で並べられており,観客が過ってオーケストラピットに転落しないようにされていた(【オーケストラピットおよび部隊の断面図】参照)。

Ⅰ コンサートが休憩時間に入ったとき,観客の1人として来ていた小学1年生のAが,オーケストラピットの中を見ようとして,本件防護柵によじのぼって乗り越えようとしたが,バランスを崩して,オーケストラピット内に転落し,さらに,勢いがついていたため,体育館床面とオーケストラピットの隙間をすり抜け,3m以上下の地階にまで転落し,両足を骨折するという重症を負った。

Ⅱ また,文化祭のコンサートについては,乙中学の生徒は正課の授業の一環として全員鑑賞することになっていた。しかし,休憩時間に,会場の後方で何人かの生徒が遊びはじめ,生徒Bが,止めに入った生徒Cをふざけて柔道の投げ技で投げたところ,Cは体育館の床面で背中を強打し脊椎を損傷する重症を負った。

 AとCはいずれも国家賠償請求を行う意思を示していることから,甲県の担当者Dと乙市の担当者Eは,弁護士であるFに対応を相談することとした。

〔設問1〕
 Aが,乙市に対して,国賠法2条1項に基づく国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。

〔設問2〕
1.Cが,乙市に対して国賠法2条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。
2.Cが,乙市に対して国賠法1条1項に基づいて国家賠償請求をする場合,どのような主張を行うことができるか,乙市の反論に留意しながら検討しなさい。また,この場合,Cが甲県に対する国家賠償請求をできるとすればその法的な根拠はどのような点になるか,Cの立場から説明しなさい。

2条と3条を総ざらいというような問題ですね。

≪答案≫
第1.設問1
 1.Aの乙市に対する国賠法2条1甲に基づく国家賠償請求は認められるか。
 2⑴ 「公の営造物」とは,広く公の目的に供せられる物的施設をいう。本件体育館は,市立中学校の体育館として,地方公共団体である乙市が設置して同校の生徒やそれ以外の地域の小学生らも利用しているものであるから,公の目的に供せられている物的施設である。したがって,本件体育館は,「公の営造物」にあたる。
  ⑵ 「瑕疵」とは,当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。その判断にあたっては,①危険の存在,②予見可能性,③結果回避可能性などを考慮する
 これを本件についてみると,①Aが重症を負ったのは,地階にまで転落したことによるところ,観客席とオーケストラピッチとの間には本件防護柵が設置されていたことから,転落の危険はなく,仮に転落した場合を想定してオーケストラピッチの深さを0.7mとしていたのであるから,本件体育館には転落によって重症を負うような危険は存しなかったようにも思える。しかし,小学生や幼稚園児がオーケストラピッチの中を見ようと行動した場合には,本件防護柵が0.8mの高さであっても簡単に乗り越えることができる。またオーケストラピッチに転落した場合には,観客席との柿間が0.4m程度しかなくても,体の小さい生徒や児童であれば,この隙間を通ることは可能であるから,ここからさらに地階へ転落する危険が存在する。そうすると,建物1階分とほぼ同じ4mの高さから人が転落すれば,骨折などの重傷を負う危険が存在する。②文化祭のコンサートには,地域の小学生や幼稚園児が多数参加していたところ,これらの者が好奇心からオーケストラピッチの中を見ようとすることは十分想定できるのであって,このときにバランスを崩してオーケストラピットに転落することも考えられる。そして,体の小さい生徒や児童が転落した場合には,観客席とオーケストラピッチとの隙間から地階へ転落することも予見することができる。その場合,その者が重症を負うことも想定されるところである。③コンサートの支障となることとの関係から本件防護柵をこれ以上高くすることができないとしても,教職員または生徒を係員としてオーケストラピット周辺に配置しておくことによって,上記危険の発生を防止することができたと考えられる。
 以上からすると,本件体育館は,通常有すべき安全性を欠いているというべきであって,「瑕疵」がある。
  ⑶ Aは両足を骨折する重傷を負っているから「損害」があり,上記「瑕疵」に起因するものであるから,因果関係も認められる。
 3.よって,Aの上記請求は認められる。
第2.設問2
 1.小問1
  ⑴ Cの乙市に対する国賠法2条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
  ⑵ア.本件体育館が「公の営造物」にあたるのは上記のとおりである。
   イ.Cが脊椎損傷の重症を負ったことの原因として,本件体育館の床に衝撃を吸収する特殊素材(以下「本件特殊素材」という。)を用いていなかった点がある。しかし,本件特殊素材が開発されたのは,本件体育館設置後である。そこで,営造物が設置された後に開発された安全設備を設けていないことが「瑕疵」にあたるか問題となる。
 安全設備が後から開発された場合には,それを必ず設置しなければ「瑕疵」であるとすると管理者に酷である。しかし,当該安全設備が同様の営造物において一般的に使用されている場合には,通常人は当該営造物にも当該安全設備が設置されていることを前提とすると考えられ,この場合には通常有すべき安全性を欠くということができる。そこで,当該安全設備を設置していないことが「瑕疵」にあたるか否かの判断にあたっては,①安全設備の普及率,②安全設備の設置の必要性,③安全設備の設置の困難性などを考慮する
 これを本件についてみると,①本件特殊素材は,通常の学校の体育館にはほとんど使用されておらず,普及率は低いものとみられる。②本件特殊素材は,主に格闘技などを行うスポーツ施設に導入されるなど,床に体を衝撃することが多く想定される場所では設置が必要であると考えられるが,本件体育館ではその用に供されることは想定されていない。また体育の授業ではマットを用いるなどしていることからしても,本件特殊素材を設置する必要性は低い。③本件特殊素材の設置には,費用や工事のための時間がかかるため,設置には困難が伴う。
 以上からすると,本件特殊素材を設置していないことは,本件体育館が通常有すべき安全性を欠くものとは認められず,「瑕疵」にあたらない。
  ⑶ よって,Cの上記請求は認められない。
 2.小問2
  ⑴ 乙市に対する請求
   ア.Cの乙市に対する国賠法1条1項に基づく国家賠償請求は認められるか。
   イ(ア) 「公権力の行使」とは,国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国賠法2条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用をいう。乙中学では,文化祭のコンサートは正課の一部とされており,学校教育活動の一環であることが認められるから,「公権力の行使」にあたる。
    (イ) 学校教員には,一般的に,学校での教育活動から生じる危険から生徒を保護する義務があるところ,正課として位置づけられている文化祭の場面において,かつ,以前から生徒が悪ふざけをして騒ぐことがよくあったことが指摘されている本件においては,学校教員としては,より厳格な注意義務を負う。上記のような本件の事情の下では,文化祭においても生徒間で悪ふざけがをすることが予想され,悪ふざけが高じて生徒がけがを負うような事態が生じることも予見可能であったといえる。そうすると,教員としてはこれを防止する策を積極的に講じるべきであったのにもかかわらず,これを怠っている。そうると,学校教員には,上記注意義務違反があり,「過失」が認められる。
    (ウ) Cは脊椎損傷の重大な「損害」を被っており,上記過失との間に因果関係が認められる。
   ウ.よって,Cの上記請求は,その要件を満たすため,認められる。
  ⑵ 甲県に対する請求
 Cは,甲県が「費用を負担する者」にあたるとして,国賠法3条1甲に基づく国家賠償請求をすることが考えられる。
 上記のように乙市は国賠法2条1項に基づく責任を負うから,「前二条の規定によって……公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合」にあたる。
 学校教育法5条は,学校の経費の負担をすべき者を「学校の設置者」としているから,乙市が費用負担者であって,甲県は「費用を負担する者」にはあたらないようにも思える。しかし,乙市立中学校の教員は,市町村立学校職員給与負担法1条1項の職員に該当し,その給与については甲県が負担することとなる。そうすると,甲県は,乙市立中学校の教員の給料等の人件費を負担しているのであるから,「費用を負担する者」にあたる。
 「損害」については上記のとおりである。
 したがって,Cの上記請求は認められる。
以 上


2018-05-29(Tue)

【事例研究行政法】第1部問題7

公法演習の期末試験がつらいです。

まじで何が出るか分からないのつらいな。

全範囲ってなんだよ。

情報公開法とかも入るの???どうなの???

≪問題≫
次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 A県内の飲食店Pにおいて食事をした客Fが,嘔吐・下痢等の食中毒症状を訴えて,病院で入院する事故が起こり,Fを診察した医師からA県の保健所に通報があった。保健所の職員であるBが,原因を調査したところ,Fの食中毒の原因となった病原菌は発見されず,Pの提供した食事が食中毒の原因になったかどうかは明らかにならなかった。しかし,Pの施設の検査の結果,調理場や調理器具の清掃ないし洗浄が不十分であり,また,十分な容量の冷蔵・冷凍保管庫が設けられていないなど,施設の管理ないし設備が食品衛生法50条および51条に基づき同法施行令および同法施行条例で定められた基準に適合していないことが明らかになった。
 Bが以上の調査結果を保健所長Cに報告したところ,Cは,Pが,これまでに食中毒事故を理由に食品衛生法上の営業禁止等の処分を受けたことはなかったこと,今回も,F以外に食中毒事例の報告がいなこと,また,Pの経営者が,直ちに施設の管理ないし設備を改善すると言明していることなどを考慮し,Pに対し,施設の管理ないし設備を改善してから営業を再開するようにとの行政指導をするにとどめ,それ以上の対処は行わず,以上の経緯をA県知事に報告した。ところが,Pは行政指導を無視して営業を再開し,1ヵ月後,このような経緯を知らずにPで食事をしたXらに,Pの施設の管理ないし設備の不備が原因となった重症の食中毒が発生し,Xの長男で幼児であったGが死亡した。

〔設問〕
 Xは,A県知事がPに対して適切な規制をしなかったために,食中毒被害を受けたとして,A県知事を相手取って,国賠法1条1項に基づき,損害賠償を求める訴えを提起しようとしている。Xはこの訴えにおいてどのような主張をすべきか。

【資料】(略)

国賠も,多少はね?

≪答案≫
1.XのA県に対する国家賠償請求(国賠法1条1項)は認められるか。
2⑴ A県知事は「公共団体の公権力の行使に当る公務員」であり,食品衛生法上の営業施設に対する規制はA県知事の権限とされているから(同法55条,56条),Pに対して適切な規制をすることは,「その職務」に含まれる。
 ⑵ア.A県知事がPに対して適切な規制をしなかったことは「違法」であるといえるか。
 食品衛生法55条,56条は,都道府県知事に対して,その規制権限について「できる」という文言を用いており,営業に対する規制にあたっては専門的・技術的観点からの検討が必要であることに照らせば,都道府県知事の規制権限の行使又は不行使は,その裁量的判断に委ねられるべきものである。したがって,都道府県知事の規制権限の不行使は,国賠法上ただちに違法とはならない。もっとも,法令の趣旨・目的や権限の性質に照らして権限の不行使が著しく合理性を欠く場合には,権限の不行使は国賠法上違法の評価を受ける。この判断にあたっては,①危険の存在,②予見可能性,③結果回避可能性,④補充性,⑤期待可能性などを考慮する。
  イ.これを本件についてみると,食品衛生法55条,56条は,公衆衛生等に配慮した同法6条,51条等に違反した場合に規制をすることができるとしていること,同法58条が食中毒に関する調査・報告義務を課していること,同法1条が「国民の健康の保護」を趣旨として掲げていることを併せ考えれば,同法の目的は,衛生基準を満たさない施設を規制して食中毒事故を防ぐ点にあると考えられる。したがって,A県知事は,この権限を,被害の防止のために適切に行使する義務を負う。
 そして,①Pの施設は,調理場や調理器具の清掃ないし洗浄が不十分であるなど,衛生面での整備が行き届いていない点が見受けられる点からすると,客観的に生命・健康に対する危険が存在していたということができる。②上記のような整備不良があり,しかもこれが法令上の基準を満たしていない点からすれば,Pがこれを改善しないまま営業を再開した場合には宿中毒をはじめとする新たな被害を生じるおそれがあることは,A県の担当者において予見することが可能であったといえる。③Pの施設は,食品衛生法50条及び51条に違反している事実があったことから,A県知事は同法55条ないし56条に基づく規制権限を行使することが可能であり,これによって改善命令や営業停止処分がされていれば,被害の発生を防ぐことはできたものと考えられる。④XおよびGは,これまでの経緯を知らずにPにおいて食事をするに至っているから,A県知事による上記処分がされなければ,被害を回避することはできなかったということができる。⑤A県知事において,上記規制権限を行使するのに障害となるような事実は存在しないから,A県知事に上記権限の行使を期待することができたといえる。
 以上の点からすれば,食品衛生法の趣旨・目的に照らして,A県知事の規制権限の不腰は著しく合理性を欠く。なお,保健所長CがPの経営者に対して行政指導をしている事情は,侵害されるおそれのある法益が生命・健康という重要なものであることに照らせば,上記の結論を左右するものではない。
  ウ.したがって,A県知事がPに対して適切な規制をしなかったことは「違法」である。
 ⑶ A県知事が上記権限を行使しなかった点について,少なくとも「過失」が認められる。また,Gが死亡していることから,「損害」も発生している。
3.よって,Xの上記請求は,その要件を満たすため,認められる。
以 上


プロフィール

||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
お疲れ様です。

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード