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2025-12-31(Wed)

答案等のリンク

私が書きなぐった答案のページへのリンク集です。

●旧司法試験●
▼憲法
・ 昭和56年第1問(犯罪歴の開示)
・ 平成15年第2問(政党と結社の自由)
▼民事訴訟法
・ 昭和61年第2問(相手方の訴訟態度の変動と自白の撤回)
・ 平成7年第2問(訴訟手続への表見法理の適用の可否)
・ 平成10年第2問(既判力と基準時後の事由)
・ 平成22年第1問(重複訴訟と確認の利益,消極的確認訴訟と給付訴訟)
▼刑法
・ 平成16年第1問(中止犯,不作為犯)
▼刑事訴訟法
・ 昭和43年第2問(供述拒否が「供述不能」にあたるか,公判廷供述よりも検面調書が詳細である場合)
・ 昭和51年第2問(証言拒絶の適用範囲,証言拒絶は「供述不能」にあたるか)
・ 昭和53年第2問(伝聞証拠の意義)
・ 昭和61年第2問(相反供述の認定,共犯者の自白)
・ 平成元年第2問(再伝聞)
・ 平成13年第2問(記憶喪失は「供述不能」にあたるか,手続的公正を欠く場合)
・ 平成21年第2問(自白法則,違法収集証拠排除法則)
・ 平成22年第2問(犯行メモの証拠能力)

●新司法試験●
▼刑事訴訟法
・ 平成26年

●演習書●
▼事例研究行政法第3版
・ 第1部問題1(審査基準の設定公表義務違反,他事考慮)
・ 第1部問題2(処分性,違法性,訴訟形式)
・ 第1部問題3(申出に対する応答の取消訴訟,義務付け訴訟)(未完)
・ 第1部問題4(原告適格)
・ 第1部問題5(訴えの客観的利益,取消訴訟の本案)
・ 第1部問題6(訴訟類型,理由の提示,比例原則)
・ 第1部問題7(国賠-1条)
・ 第1部問題8(国賠-営造物)
・ 第2部問題1
・ 第2部問題2
・ 第2部問題3
・ 第2部問題4
・ 第2部問題5
・ 第2部問題6
・ 第2部問題7
・ 第2部問題8
・ 第2部問題9
・ 第2部問題10
・ 第2部問題11
・ 第2部問題12
・ 第2部問題13
・ 第2部問題14
・ 第2部問題15
・ 第2部問題16
・ 第2部問題17
▼事例で学ぶ民法演習
・ 問題3(法人)
・ 問題4(虚偽表示と第三者)
▼事例研究刑事法Ⅱ
・ 第3部問題4(令状の効力が及ぶ範囲,差押の範囲)
・ 第3部問題5(かすがい外し)
・ 第4部問題1(訴因変更の要否)
▼事例演習刑事訴訟法第2版
・ 設問25(手続的公正を欠く場合)
・ 設問26(再伝聞)
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2018-12-11(Tue)

(未完)【事例研究行政法】第1部問題3



≪問題≫次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 Aは,婚姻届出をしていない事実上の夫婦であるB(母)およびC(父)の子として,2008年9月29日に出生した。Cは,同年10月11日,甲市長Dに対し,戸籍法49条に基づき,Aに係る出生届(以下「本件出生届」という)を提出したが,非嫡出子という用語を差別用語と考えていたことから,届書中,嫡出子または非嫡出子の別を記載する欄(戸籍49条2項1号参照)を空欄のままとした。このため,Dは,Cに対し,この不備の補正を求めたが,Cはこれを拒否した。Dは,届出の記載が上記のままでも,届書のその余の記載事項から出生証明書の本人と届書の本人との同一性が確認されれば,その認定事項(例えば,父母との続柄を「嫡出でない子・女」と認める等)を記載した付せんを届書に貼付するという内部処理(いわゆる「付せん処理」)をして受理する方法を提案したものの,Cはこの提案も拒絶した。そこで,Dは,同日,本件出生届を受理しないこととした(以下「本件不受理処分」という)。
 Cは,本件不受理処分を不服として,Dに本件出生届の受理を命ずることを求める家事審判の申立てをしたが,E家庭裁判所は,本件不受理処分に違法はないとして,同申立てを却下する決定をした。Cはこれを不服として抗告したが,東京高等裁判所は,これを棄却する決定をし,これに対する特別抗告も最高裁判所の決定により棄却された。BおよびCは,その後も,現在に至るまで,Aに係る適法な出生届を提出していない。
 他方,Cは,Dに対し,Aにつき住民票の記載を求める申出(住民台帳14条2項)をしたが,2008年11月19日,Dは,本件出生届が受理されていないことを理由に,上記記載をしない旨の応答をした。
 住民票の記載は,転入の場合には,住民基本台帳法上の届出(同法22条)に基づいて行うこととされている(同法施行令11条)のに対し,出生の場合には,戸籍法上の届出(戸籍49条)が受理されたときに職権で行うこととされている(住民台帳法施行令12条2項1号)。本件では,戸籍法上の出生届は受理されていないが,例外的に住民票の記載をすべき場合に当たるとBおよびCは考えている。
 BおよびCは,その後も,Aの住民票の記載を行うように,甲市の担当者と交渉したが,進展が見られなかったため,2009年4月6日,弁護士Fに相談した。
 なお,住民票は,行政実務上,選挙人名簿への登録のほか,就学,転出証明,国民健康保険,年金,自動車運転免許証の取得等に係る事務処理の基礎とされている。これらのうち,選挙人名簿への登録以外の事務に関しては,Dは,住民基本台帳に記載されていない住民に対し,手続的に煩さな点はあるが,多くの場合,それに記録されている住民に対するのと同様の行政上のサービスを提供している。

〔設問〕
 弁護士Fの立場に立って,Aを原告とする行政訴訟によって,Aに係る住民票の記載を求めるには,どのような訴訟を提起し,どのような主張をすべきか,述べなさい。

【資料】省略




≪答案≫
1 まず,Aが提起すべき訴訟について検討すると,CがAにつき住民票の記載を求める申出(住基法14条2項。以下「本件申出」という。)をしたのに対し,Dは上記記載をしない旨の応答(以下「本件応答」という。)をしているので,本件応答を処分とみて取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。本件応答が取消訴訟の対象となる「処分」にあたるか検討する前提として,本件申出の法的性格について判断する。
 出生があった場合,戸籍法上の届出(同法49条)に基づいて戸籍の記載が行われるが,住民票の記載は,戸籍法上の届出が受理されたときに職権で行うこととされている(住基法施行令12条2項1号)。このような仕組みからすると,戸籍法上の届出の記載事項に不備があるために届出が受理されない場合,戸籍と連動して,住民票の記載もされないこととなる。この場合,戸籍法上の届出が受理されず,戸籍の記載がされなくても,出生があったのは事実であるから,「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度」(住基法1条)の趣旨からは,住民票の記載をすべきであるとも考えられる。そして,市町村長は,住民票に記載漏れ等があることを知ったときは,職権で,住民票の記載をしなければならないから(住基法14条2項),戸籍法上の届出が受理されていなくても,例外的に,住民票の記載をすべきであるようにも思われる。
 しかし,転入の場合には,住基法上の届出(同法22条)に基づいて住民票の記載を行うこととされている(同法施行令11条)のに対し,出生の場合には,上述のように考えたとしても,職権で住民票の記載をしなければならないとされているにとどまり,届出や申請に基づいて住民票の記載を行う仕組みは規定されていない。そして,住基法14条2項に基づく申出は「申し出る」という文言が用いられており,申出に対する行政庁の審査・応答義務が規定されていない。そうすると,住基法は,住民票の記載を専ら行政庁の判断にかからしめているから,住基法14条2項に基づく申出は,職権の発動を促すものにすぎず,「申請」に当たらない。
 本件でも,Cの申出は,Dの職権による住民票の記載を促すものにすぎず,「申請」にあたらない。そうすると,本件応答は,職権の発動をしない旨を事実上回答したものにすぎないから,取消訴訟の対象となる「処分」にあたらない。したがって,本件応答に対する取消訴訟を提起することはできない。
2 そこで,Aは,住民票の記載を求める義務付け訴訟(行訴法3条6項1号,37条の2)を提起することが考えられる。
 住民票に特定の者の氏名を記載する行為は,その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか以下を決定づけるものであるから,「処分」にあたる。そして,前記のように,出生の場合における住民票の記載について申請する手続は法令上認められていないから,「次号に掲げる場合を除く」場合にあたる。



2018-12-09(Sun)

【事例研究行政法】第1部問題2

昨日ブログを久しぶりに更新したかと思いきや,

2日連続の投稿となりました。

この不定期な更新は,完全に気分です。

「てきとーに更新」と呼ばれる所以です。

このブログタイトルをつけた9年前の私は,

先見の明がありました。

そもそも,このブログを読んでいる人がごく限られている時点で,

定期的な更新は求められていません。

日記です。

しかし,日記だとしたら,答案を書いてそれを掲載しているのは,

正直言って頭沸いてんじゃないかと思います。



今日は事例研究行政法の問題2です。

≪問題≫次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

日時 2016年3月10日
場所 Cの事務所

A(ホテル経営者):それでは,事情をお話しします。私は甲県乙市でホテルを建てようと考え,準備を始めておりました。
B(Aの申請手続等を代行している行政書士):ここからは,私が申し上げます。Aさんが建築を予定していたホテルは,その設備が風営法2条6項4号に規定された構造や設備を有していないので,風営法の規制を受けないホテルです。したがって,風営法やその委任を受けた甲県条例などの規制を受けません。また,ホテルの建築予定地は,他の法律の規制を受けないことを確認しました。
A:私どもとしては,風営法の規制を受けないように工夫して,ホテルの設計図を作成し,建築の準備を始めました。
B:ところが,乙市には,「乙市遊技場等及びラブホテル等の建築物の規制に関する条例」という条例が制定されているのです。
C(弁護士):乙市ラブホテル建築等規制条例ですね。
B:そうです。そこで,乙市に設計図や予定されている建築物の外観の資料等をもって担当者に会いに行きました。すると,乙市の担当者から,Aさんが建築を予定していたホテルは,風営法の規制は受けないが,乙市条例の2条1項2号におけるラブホテルに該当するから,条例上の手続をとるように言われました。そこで,私は,Aさんと相談して条例上必要な手続をとることにしました。条例3条2項によるとラブホテルの建築には乙市市長の同意が必要ということですので,私が同意申請書を作成し乙市に提出したところ,昨年12月21日,乙市市長は条例4条1号に違反するとして同意をしないとの通知をしてきたのです。
C:それでどのような対応をされましたか。
B:こちらとしては同意が得られないのは残念ですが,乙市市長の同意を得ないまま,今年の1月12日に甲県の建築主事に建築確認の申請書を提出しました。建築確認済証が出次第,建築工事にかかろうと考えているのですが,甲県は,乙市と協議して,同意をとるようにという指導を続けるだけで,未だに建築確認を出してくれません。建基法6条4項の期間を既に経過しています。これまでの私の経験からしても,これくらいの建築物ですと,遅くても1カ月以内に建築確認が出るのですが。
A:建築確認申請はしたのですが,条例には違反した状態が続いているので,それが気になっています。建築か始まってからも同意を経ずに建築をすれば,乙市は中止命令を出すかもしれませんし。中止命令を無視して建築を続ければ,刑事罰を受ける可能性もあるとのことで,不安に感じています。
B:過去,同様の事例で,乙市はほぼ確実に建築中止命令を出しているそうです。そのことは,乙市の担当者から聞いています。
C:ところで,甲県はなぜ留保しているのでしょうか。
A:乙市では私たちのラブホテル出店に反対運動が起きているので,甲県は,指導を続け,その間に乙市との話がついて,反対運動が収束するのを望んでいるのだと思います。しかし,私は違法な点がない出店計画を変更するつもりはありません。る当初から,甲県に対しては,出店計画を一切変更するつもりはないし,乙市条例が「建築基準関係規定」に該当しない以上,迅速に建築確認を行って確認済証を交付するようにはっきりと言っております。
C:乙市条例6条の中止命令は出ていますか。
B:今のところは,出ていません。
A:既に着工が遅れ,借入金の利息も増えています。また,乙市も甲県も全く態度を変えないので,裁判を起こすことを考えております。
C:わかりました。それでは,これまでの点を踏まえて,訴訟の可否を検討してみましょう。

〔設問〕
1.Aは,Cとの相談の結果,乙市市長の不同意に対して取消訴訟で争うこととした。乙市市長の不同意は取消訴訟の対象としての処分性が認められるか検討しなさい。
2.Aは,甲県に対して抗告訴訟で争うとすれば,どのような訴訟で争うのが適切か検討しなさい。また,甲県の対応の行政法上の評価も検討しなさい。なお,仮の救済については検討する必要はない。

なお,本問の解答にあたっては,以下のことを前提として考えなさい。
①乙市条例は風営法や旅館業法などの国法と抵触していないものとする。
②乙市と甲県行政手続条例は本問の解答に必要な限りでは行手法と同一の内容であるものとする。

【資料】省略

※事例研究行政法[第2版]第1部問題4と共通


僕には,最判昭和60年7月16日の位置付けが分かりませんし,

いろいろな文献を読んでみましたが,

やっぱりよく分かりませんし,

知人に聞いたりもしましたが,

果たして分かりませんでした。

きっと一生理解し得ないんだろうと思います。

残念だなあと思いました。

≪答案≫
第1 設問1
 1 乙市市長の不同意(以下「本件不同意」という。)は,取消訴訟の対象としての処分性が認められるか。
 2⑴ 「処分」(行訴法3条2項)とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
  ⑵ 本件不同意は,乙市市長が,Aが建築しようとしているホテル(以下「本件ホテル」という。)が乙市遊技場等及びラブホテル等の建築等の規制に関する条例(以下「本件条例」という。)4条1号に該当するものと判断し,これを理由として不同意とするものであり(本件条例3条3項),乙市市長の一方的に決定したものであるから,公権力の主体たる公共団体が行う行為である。
  ⑶ 本件条例は,市長が不同意を申請者に通知し(同3条3項),通知された申請者が建築を強行すると中止命令等が発され(同6条),中止命令等に違反すると刑事罰が科せられる(同11条)ことになっている。そうすると,乙市市長がする中止命令によって,同意を得ていない建築主は建築をやめなければならない法的義務を負うことになるのであるから,その前段階にある不同意は将来の中止命令の前に行われる中間的な性格の行為であるとも考えられる。このように考えた場合には,市長の不同意は,単に事前に建築計画の見直しを求めるものにすぎないのであるから,法的効果はみられない行政指導の一種であるということになる。
 しかし,Aが本件不同意にもかかわらず建築を続けた場合には,乙市の条例運用の実態からしてもAは将来中止命令を受ける地位に立たされる状態にある。不同意によってこのような地位に立たされること自体が法的効果であるといえ,その意味において本件不同意には法的効果があるということができる。また,中止命令を受けて訴訟を起こすためだけに建築工事にかかるのは,不自然であり,無駄な時間と費用がかかる対応であって,国民の権利救済の観点から合理的な解決方法とはいえない。そこで,本件不同意によって将来中止命令を受ける地位に立たされて,紛争の成熟性が認められた現段階において取消訴訟を提起することを認めるべきである。したがって,本件不同意は,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものである。
 3 以上から,本件不同意には,取消訴訟の対象としての処分性が認められる。
第2 設問2
 1⑴ まず,甲県の対応の行政法上の評価について検討すると,甲県は建築確認申請を行ったAに対して乙市の同意をとるよう行政指導を続け,これに対しAが迅速に建築確認を行うよう申し向けているにもかかわらず,2か月にわたって申請を保留している。そこで,甲県が上記保留をし続けていることが違法とならないか。
  ⑵ 建基法6条4項は,建築主事が申請書を受理した場合には,その日から35日以内に建築確認をすることを定めている。しかし,普通地方公共団体は住民の福祉の増進に努めるものとされていることから(地方自治法2条14項)(※1),建築確認申請に係る建築物が良好な居住環境を損なうことになるものと考えて,当該地域の生活環境の維持,向上を図るために,建築計画の確認処分を留保し,行政指導を行っても,直ちに違法となるものではない。
 もっとも,建築主において建築主事に対し,確認処分を留保したままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し,当該確認申請に対し直ちに応答すべきこと求めているものと認められるときには,行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情がない限り,当該行政指導を理由に建築主に対し確認処分の留保の措置を受任せしめることは許されない。したがって,それ以後の行政指導を理由とする確認処分の留保は違法である。(※2)
  ⑶ これを本件についてみると,甲県は,Aに対し,乙市の同意をとるよう申し向け行政指導を続け,建築確認を留保している。これに対して,Aは,乙市条例が「建築基準関係規定」に該当しない以上,迅速に建築確認を行って確認済証を交付するようはっきりと言っていることから,確認処分を留保したままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し,当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているということができる。そして,Aが上記行政指導に不協力であることに社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情はない。したがって,Aが,上記意思を表明した時点以降の確認処分の留保は違法である。
 2 そして,Aとしては,甲県の建築主事から本件ホテルの建築計画に係る建築確認済証の交付を受けることを求めているから,甲県の建築主事が建築確認をすることの義務付け訴訟(行訴法3条6項2号,37条の3)を提起することが考えられる。
 建築確認は「処分」(行訴法37条の3第1項1号)であるところ,Aは,甲県に対して建築確認申請書をもって建築確認申請をしているが(建築基準法6条1項),これに対して甲県は何らの処分をしていないから「当該法令に基づく申請……に対し相当の期間内に何らの処分……がされない」場合にあたり(行訴法37条の3第1項1号),Aは「法令に基づく申請……をした者」である(同条2項)。
 そして,Aが上記訴訟を提起するためには,建築確認を行わないことについて不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項,37条)を提起する必要があるが,上記のようにAは「処分……についての申請をした者」(行訴法37条)である。「相当の期間内」(行訴法3条5項)か否かは,通常当該申請を処理するのに必要とされる期間を経過しているか,また,それを経過することについてそれを正当とするような事情があるかによって判断されるところ,本件では,建基法6条4項の規定に照らしても通常処理するのに必要とされる期間は経過しており,行政指導を行っていること以外に処分が行わないことに理由がないことから,経過することについてそれを正当とする事情はない。したがって,上記不作為の違法確認訴訟は適法に提起することができる(行訴法37条の3第3項1号)。
 また,Aの申請した本件ホテルの建築計画は,法令上問題がないものであるから,「行政庁がその処分……をすべきであることがその処分……の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ」る(行訴法37条の3第5項)。
 以上から,上記義務付け訴訟は,上記不作為の違法確認訴訟と併合提起することで,適法に提起することができる(行訴法37条の3第4項)。
以 上

(※1)最判昭和60年7月16日では,普通地方公共団体が建築確認を留保して行政指導を行いうる根拠について,「普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止その他の環境の整備保全に関する事項を処理することをその責務のひとつとしているのであり(地方自治法二条三項一号、七号)」としているが,おそらくこの判決後に地方自治法が改正されたのか,判決に掲げられている地方自治法上の条文が消えている。そこで,これに相当するような条文を挙げるとしたら同法2条14項になろうか。
(※2)事例研究行政法第3版34頁は「行手法33条と同一内容の甲県行政手続条例は,『申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない』と規定しているはずであり,また,判例も同様に考えている」ことから「本事例のAは,捨て背に行政指導には従わない意思を明言している」ため「行政指導を継続し,留保を続けることは違法ではないかと考えられる」としている。しかし,行手法33条は「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては」という前文があるのであって,甲県がAに対して乙市の同意をとってくるよう指導していることが「申請の取下げ又は内容の変更」に当たらない限りは,この条文の適用はできないのではないか,という疑問に直面している。この場合には,結局,最判昭和60年7月16日をそのまま引用することになるのか。ただし,この点について,探究ジュリスト3号76頁参照。


2018-12-08(Sat)

【事例研究行政法】第1部問題1

久しぶりに答案を書きました。

たぶん,予備の論文前以来だと思います。

いや,その後にローの期末があったので,そのときに書いたかもしれません。

いずれにせよ4か月ぶりくらいです。

4か月も答案を書いていないと,答案の書き方を忘れてしまうものです。

困ったものですね。

そうこうしているうちに,またもローの期末が近づいてきました。

しかも,また公法系の試験があります。

もういいでしょって感じです。

ですが,おとなしく行政法のお勉強をします。

≪問題≫次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 大学受験予備校「甲ゼミナール」を全国展開している学校法人Aは,新たに「甲ゼミナール乙校」を,各種学校(学校教育134条)として開設しようと考えた。Aは,設置認可の申請をするにあたり,B県の担当部署に対し,各種学校規程以外に,審査の基準となるものはないかと問い合わせたが,特にそのようなものはないとの返答であったので,各種学校規程に従って準備をととのえ,B県知事に対し,設置認可の申請をした。しかし,B県知事は,この申請を拒否する処分(以下「本件処分」という)をし,その理由として,「本件申請を認容すれば,過当競争によって地元中小予備校の経営不振に伴う教育水準の低下がもたらされることは避け難く,さらに,地元中小予備校が休・廃校に追い込まれるようなことになれば,生徒の選択の幅を狭めることにもなるため,予備校の適正配置の観点から,本件申請を拒否すべきと判断した」旨を付記した。これに対し,Aは,本件処分の取消訴訟を提起した。

〔設問〕
1.Aは,予備校設置認可の審査において「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」が考慮されることについて,申請の段階で何も知らされなかったことが不満である。もし,そのようなことが考慮されるとあらかじめ知っていれば,申請の段階で,店員を削減するなどの対策をとって,不認可処分を避けることができたのではないかと考えている。Aは本件処分の取消事由として,どのような主張をすることが考えられるか。また,その主張が認められてAが勝訴した場合,B県知事はどのような措置をとる義務を負うか。
2.設問1の場合と異なり,Aは,予備校設置認可の審査において,「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」は考慮すべきではないと考えている。Aは本件処分の取消事由として,どのような主張をすることが考えられるか。【資料】を参照し,学校と各種学校とで法的位置づけがどのように異なるかに注意して,論じなさい。また,Aの主張が認められてAが勝訴した場合,B県知事はどのような措置をとる義務を負うか。

【資料】省略


今の今になって,事例研究の1問目とは・・・。

いかに行政法を勉強していないかが分かります。

なんで予備論文行政法でAをとれたのか不思議です。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Aは本件処分の取消事由として,B県知事の審査基準の設定公表義務違反を主張する。
 2⑴ Aが学校教育法(以下「法」という。)に規定する各種学校として「甲ゼミナール乙校」を開設することは「私立の各種学校の設置」にあたる。したがって,これをするにあたっては,B県知事の認可が必要である(法134条2項,4条1項)。ここで,B県知事のする認可は法に基づいてする処分であり,これを求めるAの行為は「申請」(行手法2条3号)にあたるから,これに対してB県知事がした本件処分は「申請に対する処分」(行手法2章,2条4号ただし書ロ)にあたる。そうすると,B県知事は,当該認可に係るできる限り具体的な審査基準を定め,かつ,行政上特別の支障がない限り,それを公にしておく義務を負う(行手法5条)。
 B県知事は,「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」という,法および各種学校規程に明示されていない基準で認可の許否を判断したにもかかわらず,そのような基準をあらかじめ定めていなかったか,または,定めていたとしても公にしていない。そして,この基準を公にしておくことに「行政上特別の支障がある」(行手法5条3項)とも考えられない。したがって,B県知事が上記基準を公にしていなかったことは,行手法5条に違反し,違法である。
  ⑵ Aの主張は,手続的瑕疵をいうものであるが,これが取消事由となりうるか。この点,行手法は,同法に規定された手続を履践せずになされた処分の効力について規定していないため,この場合の効力をどのように考えるかが問題となる。
 Aとしては,行手法が審査基準の設定及び公表を明確に行政庁の行為義務として定めている趣旨は,適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を国民に保障する点にあるから,手続違反は当然に国民の権利侵害として処分の取消事由になると主張することが考えられる。この主張によれば,本件では,B県知事が行手法に規定する審査基準の設定及び公表義務を怠っているから,国民の手続的権利の保障の観点から,当然に取消事由となる。
 これに対して,B県知事としては,手続的瑕疵は結果に影響を及ぼす可能性がある場合にのみ処分の違法をもたらし,取消事由となる旨主張することが考えられる。しかし,本件で審査基準が設定公表されていれば,Aとしては,過当競争による教育水準の低下をもたらさないための方策を具体的に申請書に記載することができたはずであり,不認可という結果が左右されていた可能性がある。したがって,B県知事の主張によっても,B県知事が審査基準の設定公表を怠っていたことは,本件処分の取消事由となる。
 3 本件処分が取り消された場合には,取消判決の拘束力(行訴法33条)により,B県知事は,判決の趣旨に従って,審査基準を設定公表し,必要があればAから追加書類の提出等を受けて,改めて申請を審査しなければならない。その結果,B県知事は,Aの申請が「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」の基準を満たすと考える場合には認可の処分をすることとなり,他方で上記基準を満たさないと考える場合には再度不認可の処分をすることとなる。
第2 設問2
 1 Aは本件処分の取消事由として,B県知事が予備校設置認可に審査において「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」を考慮したことが,B県知事に認められた裁量権を逸脱濫用する旨を主張する。
 2⑴ そこで,前提として,各種学校の設置認可についてB県知事の裁量が認められるかについて検討すると,法は各種学校の設置認可を都道府県知事の権限としており(法134条2項,4条1項),当該設置認可の要件について委任する旨の規定がなく(法134条3項),各種学校規程においても各種学校の設置認可の要件を定めるものとは明示されていない。そうすると,法令上,各種学校の設置認可について要件が定められていないから,これについては認可権者である都道府県知事の裁量に委ねる趣旨であると考えられる。
  ⑵ もっとも,裁量権の行使は,それが認められた趣旨を超えて認められるものではないから,裁量権を逸脱濫用したものと評価される場合には,これに基づく処分は違法であり,処分の取消事由となる。
 法は,各種学校(法134条以下)を学校(法1条以下)と制度上区別しており,学校は,国,地方公共団体および学校法人のみが設置できるとしている(法2条)のに対し,各種学校にはそのような制限がないこと,学校は公の性質を有するとされている(法6条1項)のに対し,各種学校にはそのような位置付けは与えられていないことからすると,学校における教育は国が相当程度その運営に関与することが法律上予定されているのに対し,各種学校における教育は職業選択の自由(憲法22条1項)の行使として原則として自由であると考えられる。そうすると,各種学校の設置認可の要件としては,各種学校規程に定められた基準を満たすことをもって足り,それ以外の事情を考慮して認可を拒否することは許されない。
 これを本件についてみると,各種学校の配置について規定するのは,各種学校規程9条1項のみであるが,同項は繁華街の近くや不衛生な場所など,教育上不適切な場所に各種学校を設置することを禁ずるものであって,他の同種校との過当競争を防ぐ趣旨を含むものではない。そうすると,B県知事が,予備校の設置認可にあたって,「地元予備校間の過当競争を防ぐための適正配置」を考慮することは許されない。したがって,本件処分は,考慮すべきでないことを考慮してされたものであるから,裁量判断の過程に誤りがあり,裁量権の行使に逸脱濫用がある。よって,B県知事が上記事項を考慮に入れたことは,本件処分の違法を基礎づけるものであり,取消事由となる。
 3 本件処分が取り消された場合には,取消判決の拘束力により,B県知事は,判決の趣旨に従って,上記事項を考慮要素から外し,改めて申請を審査する義務を負う。その結果,各種学校規程の定める要件を満たしていると判断されれば認可処分をする義務を負い,他方要件を満たしていないと判断されれば不認可処分をする義務を負う。
以 上



2018-12-08(Sat)

近況報告

お久しぶりです,管理人です。

気を抜くと更新が途絶えるこのブログ,

これは管理人がもう忘れているレベルと思われるかもしれません。

正直に言います。

ここ数ヶ月,このブログの存在を完全に忘れ去っていました。

とはいえ,最近のこのブログは管理人が書いた答案を,

ただひたすら晒し続けているだけになっていました。

そうすると,答案を書かなければブログも書けない

もう分かりますね?


ところで,管理人の最近ですが,

なんと,



順位はそんなによくないですけどね。

受かってしまえばこっちのものです。

口述の再現は後日掲載しようと思います。

予備試験に合格してからは,今度は就活続きです。

いろいろ事務所を訪問できて楽しいです。

でもあまり遊びすぎないで,ほどほどに勉強もしないといけないですね。

司法試験まで半年を切っているという残酷な事実を目の当たりにしているのでね。

頑張ります。

取り急ぎ,ご報告まで。
2018-07-04(Wed)

【事例で学ぶ民法演習】問題4-虚偽表示と第三者-

民法の問題演習は久しくやっておりません。

大変ですね(他人事)

≪問題≫
 Aは絵画(以下,「本件絵画」という。)を所有していたが,債務超過に陥ったため,債権者から「本件絵画を渡せ」と要求されるのを恐れ,本件絵画を親戚であるBに売ったように見せかけることで,債権者の追及を免れようと考えた。そこで,AはBに本件絵画を引き渡し,また万がーの事態に備え,AB間で虚偽の売買契約書が作成された。
 本件絵画を受け取ったBは,これをネタに一儲けしようと思い,Aに無断で友人であるCに本件絵画を売却し,BC間では売買契約書が作成されたが,実はCもAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていた。
 その後,Bから本件絵画の引渡しを受けたCは,この間の事情を全く知らないD百貨店から頼まれ,本件絵画を1か月の約束でD百貨店において開催される展覧会のために貸すことにし,CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された。しかし,Dへの引渡しはまだされていない。
 なお,賃貸借契約を締結するさい,Cは自分が本件絵画の所有者であることを示すため,AB間及びBC間の売買契約書をDに見せていた。

小問1 展覧会の期日が迫ってきたので,DはCに対して本件絵画の引渡しを求めた。Aは,ABC間の上記の事情を理由に,「本件絵画の所有者は自分〔=A〕であるから,Dに引渡しを求める権利はない(=Dは,Aとの関係では,賃借権を主張しえない)」ということができるか。

小問2 CD間で本件絵画の賃貸借契約が締結された後,Aの債権者であるEがAのもとを訪れ,Aに対して「お前〔=A〕の借金を棒引きしてやるから,本件絵画を渡せ」と要求した。Aは,予定のとおり,「本件絵画はBに売ってしまった」と答えたが,ABC間の関係を怪しんだEはABCを呼ぴつけ,厳しく問い詰めたところ,上記の事情が露見した。激昂したEは「本件絵画を俺に渡せ。もし渡さないと,お前たちの家族がどうなっても知らないぞ」とAらを脅し,Aの債務を帳消しにする代わりに本件絵画をEに譲渡する契約をAに結ばせたうえ,本件絵画の引渡しを受けた。このとき,Dは本件絵画の引渡しを求めることができるか。次の①と②のそれぞれの場合について答えなさい。
①AがEに対する意思表示をまだ取り消しておらず,Eが本件絵画を所持している場合。
②AがEに対する意思表示を取り消し,Eから本件絵画の返還を受けている場合。

総論の一つの山場である94条まわりの問題です。

単純な問題に見えて,考えなければならない点が多いです。

考えても分からない点もあります。

答案の下に(疑問点)という形で示しました。

誰か教えてください(懇願)

≪答案≫
第1.小問1について
 1.DはCに対して賃貸借契約に基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを求めている。これに対して,Aは,本件絵画の所有権が自己にあることを理由に,Dの上記引渡請求権を否定している。この点,AB間の売買契約は「虚偽の意思表示」(民法94条1項)であるから,無効である。また,同条2項の「第三者」とは,虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって,その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいい,Cはこれにあたるところ,「善意」とは虚偽の意思表示があったことについて知らないことをいい,CはAB間の売買契約が虚偽のものであることを知っていたから,これにあたらない。したがって,AはCとの関係でも,本件絵画の所有権を主張することができる。そうすると,AはCから賃貸を受けたDに対しても所有権を主張することができるようにも思える。
 2.これに対して,Dは,自己も民法94条2項の「善意の第三者」にあたることを主張することが考えられる。これは認められるか。
 民法94条2項の趣旨は,虚偽の意思表示をした者とその意思表示の存在を信じて取引関係に入った者とを比較した上で,前者の帰責性に鑑み,後者を保護する点にある。そうすると,「第三者」とは,直接の第三者に限られず,直接の第三者からの転得者も含まれると考える。
 これを本件についてみると,Dは,「第三者」であるCから転得した者であり,「第三者」にあたる。そして,Dは,ABC間の事情を全く知らないのであるから,「善意」である。したがって,Dは,Aとの関係で「善意の第三者」にあたる。
 3.よって,Aは,Dに対して,AB間の売買契約の無効を対抗することができないから,Aが本件絵画の所有権を主張して,Dの引渡請求権を否定することはできない。
第2.小問2について
 1.①について
 ⑴ まず,DはEに対し本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。ここで,DE間には直接の契約関係はなく,Dは本件絵画について物権的支配を及ぼしていないので,DがEに対し直接上記請求をすることはできない。
 ⑵ そこで,DはAのEに対する取消権を代位行使(民法423条1項)したうえで,Eに対して本件絵画の引渡しを請求することが考えられる。これは認められるか。
 まず,DはAに対して,保全すべき「自己の債権」を有しているか。上記のように,DはあくまでCとの賃貸借契約に基づいて本件絵画の引渡請求権を取得しているので,これをAに対しても主張することができるかについて検討する。上記のように,Aは,Cとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができる。他方で,Aは,Dとの関係では,本件絵画に対する自己の所有権を主張することができない。そうすると,Dの賃借権を保護しつつ,Cとの関係における本件絵画の所有権の復帰を観念するべきであるから,CD間におけるCの賃貸人たる地位は,あたかもAに移転したものとして扱うのが妥当である。このように考えた場合には,AD間における賃貸借契約が擬制され,DはAに対して賃借権に基づいて目的物の引渡しを請求することができる。したがって,DはAに対し,保全すべき「自己の債権」を有している。
 「保全するため」とは,被代位者が無資力であることをいう。本件では明らかではないが,Dの代位行使が認められるためには,Aが無資力であることが必要である。
 しかし,強迫取消権は,強迫によって行為を行った者を保護する制度であるから,行為者本人が取消権を行使するか否かを決定すべきであって,「債務者の一身に専属する権利」にあたる。したがって,DはAの取消権を代位行使することができないのが原則である。もっとも,行為者に対する債権を保全するため必要がある場合において,行為者が強迫による取消権を行使する意思を有しているときは,強迫取消権の上記趣旨に鑑み,これを代位行使することができる。本件でも,Aが強迫により取消権を行使する意思を有していると認められる場合には,一身専属性が解消される。
 以上の要件を充たす場合には,Dの代位行使が認められる。
 そのうえで,保全の実効性確保の観点から,DはEに対し本件絵画を自己に対して直接引き渡すよう請求することができる。
 以上の場合には,DはEに対して,本件絵画の引渡を請求することができる。
 2.②について
 本問では,Aが既に上記取消権を行使し,本件絵画がAの下に復帰している。そして,上記のように,AD間には本件絵画について賃貸借契約が成立しているから,DはAに対してこれに基づく目的物引渡請求権として本件絵画の引渡しを請求することができる。
以 上

(疑問点)
●賃貸人の地位の移転について
 →解説では,「Dの払う賃料はまさに本件絵画が生み出した価値であり,すると,Aを他の一般債権者と同じに扱うことには疑問がある。そこで,Dに対する賃貸人は--Cではなく--Aであると考えたほうが法律関係は簡明になり,またAがDに直接賃料を請求できる点でも望ましい解決といえよう。」とされているが,これだけでは賃貸人をAとする法的根拠に乏しい気がする。
 →要件事実的にこれを整理するとしたらどうなるのか。
●強迫による行為の取消権が債権者代位の場面での一身専属権にあたるかについて(私見のオンパレード)
 →錯誤無効を原則として第三者が主張することができないのは,錯誤無効が表意者保護の制度であるから。強迫取消も行為者保護の制度であるとすると,原則行為者のみが行使し得るのではないか。
 →錯誤無効における判例の例外法理として,保全の必要性+表意者が錯誤を認めていることが挙げられている。これと同様に強迫取消を考えるならば,保全の必要性+行為者が強迫を認めていることとなるのだろうか。しかし,錯誤の場合よりも強迫のときの方が行為者保護の要請が強く働く(行為者の帰責性の程度が低い)ことからすると,一身専属性が錯誤に比して強まり,例外的に代位行使ができる場面は狭めるべきではないかとも思える。そうすると,強迫があったことを認めているにとどまらず,これを行使する意思まで必要ではないか。
2018-07-03(Tue)

【事例で学ぶ民法演習】問題3-法人-


≪問題≫
A漁業協同組合(以下,「A漁協」と略すことがある。)は,A町で漁業権を持つ者を構成員(組合員)とする,公益法人の認定を受けていない非営利法人である。A漁協の定款では,A漁業協同組合の目的は,A町の漁業の振興,および,組合員間の相互扶助だとされている。理事長には,かつての網元の子孫であるBが就任している。定款には,A漁協は組合員の住居建設・漁業経営のための資金の貸付けを行うという規定がある。さらに,A漁協の代表権は理事長だけが持つが,金融機関などから融資を受けるには,理事会の承認を要するという規定もあった。以上を前提に,次の小問に答えよ。なお,各小問は独立した問いである。

小問1 B理事長はA漁協を代表して,非組合員Cに弁済期3年後,年利10%で3000万円を融資し,C所有の甲土地に抵当権を設定した。しかし,3年が経過した後も,Cは債務を弁済しない。そこで,Aが抵当権を実行しようとすると,Cは「A漁協の自分への消費貸借は定款に違反しているから無効であり,したがって,抵当権の実行もできない」と抗弁している。このCの主張は認められるか。

小問2 理事長は理事会の承認なしに,A漁協を代表して,D銀行から弁済期3年後,年利10%でA漁協がA港に建築する予定の冷凍倉庫の建築費用5000万円の融資を受けた。3年後に,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求できるか。
 もしD銀行がA漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容は知っていたが,B理事長が理事会の承認書を偽造してD銀行に提示したため,Bが適法にAを代表できるとDが信じていた場合はどうか。
 また,融資を受けることに関する理事の代表権の制限が,A漁協の定款によるものではなく,仮に,水産業協同組合法に「理事長は組合を代表して第三者から融資を受けることはできない」という規定があったときはどうか。

小問3 小問2で,B理事長がA漁協を代表してD銀行と締結した消費貸借契約が,A漁協に効果帰属せず,しかも,D銀行から借り受けた5000万円をB理事長が,A町の町長選挙に立候補し,A町への原子力発電所の誘致を選挙公約にした友人Eの選挙運動に使用していたときは,D銀行はA漁協に対して何か請求することができるか。



≪答案≫
第1.小問1について
 1.非営利法人であるA漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」(民法34条)であるといえるか。
 営利法人が営利を目的とすることから,法人の利益となる可能性があるものについては広く「目的の範囲内」とされるのに対し,非営利法人は営利を目的とする活動が認められていないことから,「目的の範囲内」か否かは,法令や定款に照らして厳格に判断すべきである。
 これを本件についてみると,A漁協のような水産業協同組合は,「その行う事業によってその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを目的とする」ものであり(水産業協同組合法4条),組合員に出資させる出資組合は「組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付け」ができることとされている(法11条1項3号,2項)。そうすると,法は,組合員でない者に対して資金の貸付けを行うことは想定していないというべきである。また,法のこれらの規定を受けて,A漁協の定款では,その目的はA町の漁業の振興,および,組合員の相互扶助であるとし,組合員の住宅資金・漁業資金の貸付けを行うと定めている。そうすると,A漁協定款も,組合員でない者に対して資金を融資することは想定していないというべきである。これらの規定に照らすと,A漁協の目的には,組合員でない者に対する資金の融通は含まれない。したがって,A漁協が非組合員Cに対して3000万円を融資したことは,A漁協の「目的の範囲内」に含まれない。
 2.「目的の範囲内」ではない行為の効力はどうなるか。
 民法34条の文言からすると,「目的の範囲」は,法人の権利能力の範囲を画するものであると考えられる。したがって,「目的の範囲内」ではない行為は,法人に効果帰属しない。
 これを本件についてみると,上記のように,A漁協が非組合員Cに対して融資をすることは,目的の範囲内ではないから,無効となる。
 3.A漁協の非組合員Cに対する融資が無効であるとして,これに伴ってされた抵当権の設定も無効となるか。
 たしかに,原因となる契約が無効となれば,それに伴ってされた抵当権の設定も原因を失うから,無効となるとも思える。しかし,原因となった契約に基づいて金銭が交付された場合には,これが無効となることによって,不当利得返還義務を新たに負うこととなり,結局債務のあることにおいて変わりはない。そして,当該抵当権も,その設定の趣旨からして,経済的には,債権者の有する不当利得返還請求権の担保たる意義を有するとみることができる。そこで,この場合の債務者は,当該債務を弁済せずして,原因となる契約の無効を理由に,当該抵当権の無効を主張することは,信義則(民法1条2項)に照らして許されない。
 これを本件についてみると,非組合員Cは漁協Aから5000万円を借り入れているが,この借入れの原因となる消費貸借契約が無効となっても,5000万円の不当利得返還義務を負うこととなるから,結局漁協Aに対して債務を負うことには変わりない。したがって,非組合員Cが消費貸借契約の無効を理由として抵当権の無効を主張することは,信義則に照らして許されない。
第2.小問2について
 1.前段について
 D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することはできるか。A漁協とD銀行間の消費貸借契約は,A漁協の代表者であるB理事長がA漁協を代表して締結しているが,A漁協の定款には,金融機関から融資を受けるには,理事会の承認が必要とされているから,これを経ずにしたB理事長の行為の効果がA漁協に及ぶかが問題となる。
 BはA漁協の「代表理事」(法39条の3第1項〔一般法人法77条3項〕)であり,包括的代理権を有している(法39条の3第2項〔一般法人法77条4項〕)。しかし,これについて上記定款による「制限」(法39条の4第2項,会社法349条5項〔一般法人法77条5項〕)がされているから,D銀行は原則としてこの制限に反した行為の効力を会社に対して主張することはできない。しかし,D銀行が「善意の第三者」にあたる場合には,会社に対して対抗することができる。ここに,「善意」とは,理事の代表権に制限が加えられていることを知らないことをいう。したがって,D銀行が,A漁協の定款による制限を知らないときは,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができる。
 2.中段について
 D銀行は,A漁協の「融資を受けるには理事会の承認を要する」旨の定款の内容を知っているから,「善意の第三者」にあたらない。そうすると,D銀行は,A漁協に対して貸金の返還を請求することができないように思える。しかし,D銀行は,B理事長が理事会の承認書を偽造して提示したことから,B理事長がA漁協を適法に代表できると信じ,貸付けを行うことを決めている。そこで,このような場合に,D銀行が保護されないか。
 B理事長は,代表権を有するものの,それに制限が加えられているにすぎず,「権限外の行為をした場合」(民法110条)にはあたらない。しかし,110条の趣旨は,相手方が正当な取引権限を有する外観を信じて取引に入ったことを保護する点にあるから,この趣旨は代表権に制限が加えられていた場合にも妥当する。したがって,代表理事の代表権に制限が加えられている場合に,代表理事がその制限に反して取引行為をした場合に,第三者において代表理事が理事会の承認を受けていると信じ,かつこのように信じることについて正当の理由があるときには,民法110条を類推適用するべきである。
 これを本件についてみると,B理事長は理事会の承認書を偽造して提示しており,D銀行においてこれが偽造であるか否かを判別することは容易ではないことからすると,D銀行はB理事長がA漁協理事会の承認を受けていると信じ,かつ,このように信じることについて正当の理由があるというべきである。したがって,D銀行は,A漁協に対して,貸金の返還を請求することができる。
 3.後段について
 法によって代表理事の代表権が制限されている場合には,はじめから代表理事には代表権がなかったと考えるべきである。そうすると,B理事長の行為の効果はA漁協には帰属せず,D銀行はA漁協に対して貸金の返還を請求することができない。
 そして,110条の類推適用について検討すると,法の不知は許されない以上,「正当の理由」がないといわざるをえない。したがって,D銀行は,A漁協に対し,貸金の返還を請求することができない。
第3.小問3について
 D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求(法39条の4第2項,会社法350条〔一般法人法78条〕)をすることができないか。
 A漁協は「水産業協同組合」であり,B理事長は「代表理事」である。ここで「職務を行うについて」とは,行為の外形から観察して,それが理事の職務に属するか,あるいは,職務の執行と適切な牽連関係に立つことをいう。B理事長は,代表理事としてA漁協の行為の包括代理権を有していることから,B理事長がA漁協の代表としてする行為は,その外形からして,理事の職務に属するか,職務の執行と適切な牽連関係に立つものとみることができる。しかし,代表理事の行為が法人に効果帰属しない場合において,それとは別に不法行為責任を認めたときには,実質的に代表理事の行為が法人に効果帰属したのと変わらないことになる。そこで,理事の行為が法人の職務に属さないことを相手方が知っていたか,知らなかったことにつき重過失がある場合には,法人は不法行為責任を負わない。したがって,D銀行が,B理事長の行為がその職務に属さないことを知っていたか,,知らなかったことにつき重過失がある場合には,A漁協は不法行為責任を負わない。この場合,D銀行は,A漁協に対し,不法行為責任としての損害賠償請求をすることができない。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題5

刑訴ぉ……

≪問題≫
 甲は,勤務していた会社(以下「A社」という)の上司V1から10年問にわたり執拗なパワーハラスメントを受け続けた挙句,同社から退職勧告を受け,やむなく雀の涙ほどの退職金を受領して自ら退職した。甲は,退職後1年以上を経過し,再就職口もなかなか決まらずに焦燥感を募らせていた平成26年11月15日,A社に同期で入社していたB(人事部に所属していた)に街中で遭遇し,2人で昼食を摂っていたところ,Bから「お前の退職勧告はおかしい」「V1が明らかに不当な査定をして,それを人事側上層部が鵜呑みにした結果お前は切られた」などと聞かされた。
 そこで甲は,その事実を確認するべく同日午後10時ころV1宅に赴き,呼び鈴を押したところ,V1がインターホンで応じたため,「1年前の退職勧告の件で話があるので出てきてほしい」と言った。ところが,V1が「何を今頃言っているんだ。お前と話すことは何もない。もう来るな。来たら警察を呼ぶ」 などと言って全く応じる様子がなかったため,甲は憤慨し,家の中に入って事実を確認した上で,事と次第によっては少しV1を痛めつけてやろうと考え,門扉を開けてV1宅の敷地内に侵入して裏庭に回り,その場に落ちていた石を用いて裏庭に面した部屋の窓のクレセント錠付近のガラスを割り,手を差し込んで錠を回して内部に侵入し,窓ガラスが割れる音を開いて当該部屋(リビングルーム)に駆け込んできたV1およびその妻V2に対し,甲の退職勧告までの経緯について確認した。すると,当初は驚いてひるむ様子を見せていたV1が次第に落ち着きを取り戻し,最終的にはへラヘラと笑いながら「お前のことは入社当初から気に入らなかったんだ」,「仕事もろくにできないくせに給料をもらおうなんて都合がよすぎる」,「そんなものは泥棒と大して変わらない」などと言い,さらに,V2もそんな夫をいさめるどころか「V1の言うとおりよ。甘ったれるのもいい加減にしなさい。あんたなんかが勤めるところはどこにもないわ」などと言うにいたった。
 そこで,甲は,平成26年11月15日午後11時ころV1宅内において,日頃から護身用に持ち歩いていた携帯用小型ナイフで,V1およびV2の大腿部や背部を突き刺し,失血多量等によりその場で両名を死亡せしめたとの2つの傷害致死の事実(以下V1に対する傷害致死の事実について「V1事実」,V2に対する傷害致死の事実について「V2事実」という)で同年12月20日に起訴された(「前訴」という。なお,検察官は,手持ちの証拠に照らし,V1宅への侵入行為があることも明らかであるものの,犯罪に見合った処罰の確保の観点からすれぱ,2件の傷害致死のみで起訴するのが相当であると判断した)。
 甲側は,平成27年4月に開催された第1回公判期日において,「本件各事実は,同一の住居侵入行為たるV1宅への侵入行為を手段として犯されたものであり,V1事実も,V2事実も,住居侵入を含めて起訴されれぱ一罪として処断されるべき犯罪行為の一部を構成するものであるから,こうした形での公訴の提起は,検察官の訴追裁量権の逸脱に当たる。本件公訴はいずれも棄却されなけれぱならない」と主張した上で,証拠調べの段階においても,「住居侵入の事実の存在等」を立証するためのものであることを明示して,関係証人,証拠物,証拠書面の取調べを請求した。
 受訴裁判所は,これらの証拠調べ請求をいずれも却下したが,関係証人の証言や,被告人質問の内容において住居侵入の事実の存在が明らかであったことから,その存在およびそれと本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で,有期懲役刑を選択し,併合罪処理によるならば24年の刑を宣告すべきところ,16年の刑を宣告するにとどめた。

〔設問〕 本事例における①検察官の公訴提起の適否,②裁判所の措置の適否を論じなさい。

一部起訴ですが,その中でも,いわゆる「かすがい外し」についてです。

論点は明確ですが,何をどの順番で論じればいいのか,かなり迷います。

≪答案≫
1.検察官の公訴提起の適否について
 甲は,V1宅への住居侵入,V1事件及びV2事件を行っており,これらがいずれも認定される場合には,科刑上一罪となる関係にある。これに対して,検察官が起訴した事実は,V1事件及びV2事件のみであって,V1宅への住居侵入については起訴していない。そこで,このような一罪の一部の起訴が認められるか。
 検察官には広範な訴追裁量権が認められており(刑訴法248条),一罪の全部の事実を不起訴とすることもできる以上,一部を起訴し残部を起訴しないという一部起訴も許される。しかし,一罪の一部起訴が検察官に認められた訴追裁量権の逸脱となる場合には,これをすることは許されない。
 これを本件についてみると,V1宅への住居侵入の事実が認められると,いわゆる「かすがい理論」によって,V1事件とV2事件とで科刑上一罪になるところ,かすがいを外すことによって,V1事件及びV2事件を併合罪として起訴している。併合罪の場合には,懲役刑の長期が1.5倍となるから(刑法45条前段),被告人にとって量刑上不利益となるため,かすがいを外した起訴は検察官の訴追裁量権を逸脱しているとも思える。しかし,被告人に科刑上の不利益が生じないように量刑上の配慮をすればこの点は問題とならないから,かすがいを外した起訴自体を不適法とする必要はない。また,裁判所が検察官の訴追裁量権の適否を判断するためには,検察官がかすがいを外した理由が合理的なものかを判断しなければならないところ,下記のように裁判所は訴因外の事実に立ち入って審査することはできないから,かすがいを外したことの合理性について審査することができない。そうすると,かすがいを外して公訴提起したことについて,それが検察官の訴追裁量権の逸脱であると積極的に認定することはできない。したがって,検察官は,上記のような一部起訴をすることができる。
2.裁判所の措置の適否について
 裁判所が甲のV1宅への住居侵入の事実の存在及び本件公訴にかかる各事実との関係について付随的に心証を形成した上で16年の刑を宣告したことは適当か。裁判所が訴因外の事実に立ち入って審理することが許されるかが問題となる。
 当事者主義を採用している現行法下では,審判対象は検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であり,裁判所は訴因の範囲で審判しなければならない。したがって,原則として,裁判所は訴因外の事実に立ち入って審理することは許されない。もっとも,訴因外の事実が訴因に係る犯罪の成立を否定する事実である場合や公訴提起を無効にする事実である場合には,実質的には訴因の範囲内ということができ,例外的に裁判所はこれについて審理することができる。
 これを本件についてみると,科刑上一罪とされる場合であっても,それを構成する個々の犯罪事実に対応する犯罪は成立していることから,V1宅への住居侵入の事実に基づく住居侵入罪の存否にかかわらずV1に対する傷害致死罪及びV2に対する傷害致死罪はそれぞれ成立する。そうすると,訴因外のV1宅への住居侵入の事実をもって上記2つの傷害致死罪の成立は否定されない。また,上記のように,検察官の訴追裁量権の逸脱はないのであるから,V1宅への住居侵入について公訴提起しなかったことをもって公訴提起は無効とはならない。したがって,裁判所は,訴因外の事実であるV1宅への住居侵入の事実に立ち入って審理することはできない。
 そうすると,裁判所がV1宅への住居侵入の事実を審理できない以上,これを量刑事情として考慮することも許されないから,裁判所がこれについて付随的に心証を形成し,16年の刑を宣告したことは不適当である。
以 上


2018-07-02(Mon)

【事例研究刑事法Ⅱ】第3部問題4

すげぇ遊びてぇ

という気持ちを抑えつつ(抑えきれているとは言っていない)

今日は,捜索差押です。

≪問題≫
 A警察署刑事課は,覚せい剤取締法違反で逮捕した甲から,同署管内に居住する乙が自宅で覚せい剤を恒常的に密売しており,自分も乙から覚せい剤を購入したとの供述を得た。そこで,乙の自宅を捜索して証拠品を押収しようと考え,乙に対する覚せい剤取締法違反(営利目的所持・譲渡)容疑で,乙宅を捜索すべき場所,「覚せい剤,覚せい剤計量器具類,覚せい剤分包紙袋類,覚せい剤取引関係文書,手帳,メモ類,パーソナルコンピュータ及びその付属機器類,電磁的記録媒体,被疑者使用の携帯電話及び付属の充電器等」 を差し押さえるべき物とする捜索差押許可状の発付を受けた上,同課所属のB・Cら計6名の警察官をその捜索等のために乙宅に赴かせた。
 Bらは,乙宅の玄関先で,応対に出た乙に対し,インターフォン越しに,自らの身分を名乗り,覚せい剤取締法違反の容疑で捜索に赴いた旨を伝えたところ,乙は「今,寝起きなので,服を着るのに数分間だけ待ってくれ」と言ったのみで,特段抵抗することなく,それから2~3分後に玄関ドアを開けた。そこで,Bらが室内に入ったところ,乙と同居している乙の内妻丙が,髪の毛はボサボサでノーメイクのまま,ブランド物のショルダーバッグを肩から提げて外出しようとしていた。 Bは,女性である丙が容姿も整えずにブランド物のバッグだけを持って外出しようとする不自然さのほか,その外出のタイミングから,丙が乙の指示を受けて覚せい剤等の証拠品を持ち出そうとしている疑いが極めて濃厚だと考え,丙に対し,そのショルダーバッグの中を見せるように求めたところ,丙はそのショルダーバッグを抱え込んだまま廊下にしゃがみ込み,その中を見せることを頑なに拒否した。
 また,Bが丙にショルダーバッグの中を見せるように説得を始めたところ,宅配業者が乙宛ての荷物を届けに来たことから,Bは乙にそれを受け取らせた上,その中を見せるように乙に求めたが,乙もその荷物を抱え込んで,中を見せるのを頑なに拒否した。
 そこで,BおよびCは,室内の捜索は他の警察官に任せ,Bは丙に対し,Cは乙に対し,それぞれショルダーバッグ,宅配荷物の中を見せるように説得を重ねたが,乙・丙の両名は説得には一切耳を貸さず,その要請を頑なに拒否し続けたことから,B・Cの両名は,これ以上の説得は時間の無駄であり,前記捜索差押許可状に基づき,乙・丙の抵抗を排除してでもこれらの中を捜索するしかないと考え,室内を捜索していた他の警察官の応援を得て,ショルダーバッグを抱えている丙の手,宅配荷物を抱えている
乙の手をつかんでそれぞれショルダーバッグ・宅配荷物から外し,それらを開被して内容物を確認した。
 その結果,丙が持っていたショルダーバッグの中からは覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋2袋,CD-R1枚および乙の高校卒業時のクラス名簿1冊(数名について氏名の脇に丸印が付されているもの)の計4点が,乙が受け取った宅配荷物からはクッション材に包まれた覚せい剤様の白色結晶粉末数百g入りのポリ袋10袋がそれぞれ発見されたことから,Bは,いずれも被疑事実である乙の前記覚せい剤取締法違反罪に関係する証拠物であるとして,直ちにこれらを差し押さえた。なお,CD-Rについては,乙宅室内にあったパソコンが故障して再生できなかったため,差押えの時点ではその内容を硫認していない。
 その後,Bは,白色結晶粉末等を発見されたことで観念した乙・丙の承諾を得て,ショルダーバッグおよび宅配荷物にそれぞれ入っていたポリ袋のうち各1袋を開封し,それらに入っていた白色結晶について覚せい剤の簡易試験をしたところ,いずれも覚せい剤の反応を示したことから,乙・丙の両名を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)の現行犯人として逮捕した。後日,A警察署刑事課において,押収したCD-Rおよびクラス名簿に関して捜査を遂げたところ,CD-Rには,今回の情報提供者である甲を含め,これまで乙が覚せい剤を販売した者の携帯電話番号の一覧表,乙の覚せい剤仕入先である暴力団事務所の名称と住所,取引を担当している構成員の氏名と携帯電話番号などがそれぞれ記録されていたほか,クラス名簿については,氏名に丸印が付されている者が継続的に乙が覚せい剤を販売している相手であることが判明した。

〔設問〕B・Cの捜索・差押えは適法か。

論点がいろいろあって面倒です。

そのような感想を抱きました。

あと問題文長すぎ。

≪答案≫
第1.捜索について
 1.乙に対する覚せい剤取締法違反容疑にかかる捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)は,その「捜索すべき場所」を乙宅としているが,これをもって,丙という人が所持するショルダーバッグ(以下「本件ショルダーバッグ」という。)を捜索することができるか,すなわち,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」である乙宅に含まれるか。
 捜索にあたり令状が必要とされている(憲法35条1項,刑訴法218条1項)趣旨は,捜索という対象者に対して重要な権利侵害を伴う処分については,令状裁判官による「正当な理由」についての事前審査を要求することで,国民の権利利益を保護した点にある。したがって,場所に対する捜索令状の効力が及ぶ範囲は,令状裁判官の事前審査が及んでいる範囲をいう。具体的には,当該捜索場所について認められる総体としての権利利益に包摂され,これと一体を成す関係にある場合には,令状の効力が及び,捜索をすることができる。
 これを本件についてみると,丙は,その捜索場所である乙宅に居住する乙の内縁の妻であって,その場所内の物を自由に移動・保管できる立場にある。また,捜索対象となったショルダーバッグは,丙か手に持っていたにすぎず,着衣等身体に密着させて所持していた物とは異なり,乙宅内に存在する物についてのプライバシーを離れた丙の身体という別個に保護されるべきプライバシーを侵害するものとまではいえない。そうすると,本件ショルダーバッグは,乙宅について認められる総体としての権利利益に包摂されているというべきである。
 したがって,本件ショルダーバッグは「捜索すべき場所」に含まれるから,本件捜索差押状をもって本件ショルダーバッグの捜索をすることができる。
 2.B・Cは,乙から宅配荷物(以下「本件宅配荷物」という。)を取り上げて,開扉し,内容物を確認している。しかし,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状発付時には,乙宅に存在しなかったものであるから,これについても令状の効力が及ぶか。
 令状発付時に裁判官が対象場所におけね具体的な物品の存否を把握することは困難であるうえ,対象場所の管理者は令状発付後も物品を自由に移動できる状況にある。それにもかかわらず,刑訴法は捜索差押許可状について有効期間を定め(同法219条1項),幅のある時間内の令状執行を許容していることに照らすと,裁判官は,有効期間内に捜索対象となる場所で行われる物品の移動をも考慮して捜索差押許可状を発付しているとみるべきである。そうすると,捜索差押許可状の効力は,有効期間内にある限り,令状発付後に搬入された物も含めて,当該強制処分の際に対象場所に存在するすべての対象物に対して及ぶと考える。
 これを本件についてみると,本件宅配荷物は,本件捜索差押許可状が執行されている途中で搬入されたものであるから,本件捜索差押許可状の有効期間内に乙宅に搬入されたものとみられる。そうすると,本件捜索差押許可状の執行の際に対象場所たる乙宅に存在したものであるということができるから,本件捜索差押許可状の効力は本件宅配荷物についても及ぶ。
第2.差押えについて
 1⑴ Bは,乙の高校卒業時のクラス名簿(以下「本件クラス名簿」という。)1冊を差し押さえているが,これと覚せい剤取締法違反の被疑事実との関連性は認められるか。
 被疑事実と差し押さえるべき物との関連性は,被疑事実の内容・態様,差し押さえようとする物の内容・性質等を考慮して個別具体的に判断する。
 これを本件についてみると,被疑事実となるのは覚せい剤の営利目的所持及び譲渡であって,その性質上行為の相手方を必要とするものである。そして,客観的には,本件クラス名簿は,覚せい剤を販売する相手方が記載された物とみることができるから上記被疑事実を裏付ける証拠ということができるから,関連性が認められる。また,覚せい剤の販売をする際に,自己の人間関係を利用してその譲渡先を探すことも十分あることや,上記被疑事実と無関係なクラス名簿であれば覚せい剤と思われる物と一緒に本件ショルダーバッグにしまわれていることは考えにくい。さらに,捜索がまさに始まろうとする段階で捜索場所に居住する人間が慌てて持ち出そうとした行為に照らせば,本件クラス名簿は,一部が覚せい剤の密売人の住所録代わりに使用されていたものとの疑いがあるということができる。以上に照らせば,捜査機関が判断できる程度に,本件クラス名簿と被疑事実との関連性は認められる。
  ⑵ そうだとしても,本件クラス名簿は,本件捜索差押許可状に列記された差押対象物に含まれるか。
   ア.そもそも本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」の記載は,これをもって特定しているといえるか。
 令状主義(憲法35条1項,刑訴法218条1項)の趣旨は,令状審査にあたり「正当な理由」(憲法35条)の存在についての令状裁判官による実質的認定を確保する点及び捜索の実施にあたり捜査機関の意のままにあらゆる場所が無差別的に捜索されることを防止する点にある。しかし,令状発付時に差押対象物は必ずしも明らかになっていないことから,厳密な差押物件の特定は不可能であり,ある程度概括的なものにならざるをえない。そこで,裁判官が特定の物の類型について「正当な理由」をはんだすることができ,捜査機関が令状の記載自体から何が令状に記載された差押対象物件なのか判断できる程度に記載されていれば足りる。
 これを本件についてみると,本件捜索差押許可状の差押対象物は「等」とされているが,これは「覚せい剤,覚せい剤計量器具類」などの具体的な物件の例示に付加されている物であって,このような例示からして捜査機関としても差押対象物件か否かの判断は可能であるといえる。したがって,本件捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」は特定されている。
   イ.それでは,本件クラス名簿は,「等」に含まれるか。
 上記のように差押対象物の記載が概括的なもので足りることからすると,令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であれば,「等」に含まれる。
 これを本件についてみると,仮に本件クラス名簿の丸印の者が抜き書きされて別文書に一覧として記録されていた場合には,その文書は取引先関係者の一覧表であると強く疑わせるものとして,「覚せい剤取引関係文書」に該当すると考えられる。そうすると,加工前の原典についても,本来であれば「覚せい剤取引関係文書」に記載されるべきものの加工の手間が省かれているだけであるから,「覚せい剤取引関係文書」に準ずるものとして扱うことができる。したがって,本件クラス名簿は令状に例示されている物件と同程度の関連性を有する証拠品であるといえるから,「等」に含まれる。
 2.BはCD-R(以下「本件CD-R」という。)の内容を確認しないままこれを差し押さえているが,関連性を判断せずに証拠品を差し押さえることはできるか。
 令状主義の上記趣旨に照らすと,差し押さえるべき物と被疑事実との関連性については,捜査機関もこれを審査すべきであるから,これを審査しない包括的差押は原則として許されない。しかし,関連性の判断は,被処分者の利益と捜査の必要性との比較衡量に基づく規範的なものであるから,関連性の程度は,令状執行の際の具体的な状況により変動する。したがって,被疑事実と関連する蓋然性が認められ,包括的差押の必要性がある場合には,包括的差押も認められる。
 これを本件についてみると,本件CD-Rは,覚せい剤と思われる物や本件クラス名簿と一緒に,捜索現場の居住者である丙が,捜索開始後に慌てて持ち出そうとしていた本件ショルダーバッグの中に入っていたものである。そして,本件ショルダーバッグの中には,これらのもの以外には入っていなかったことも併せて考えると,丙が被疑事実である覚せい剤取締法違反の証拠品を持ち出してその押収を免れようとしていたとの疑いが濃厚である。したがって,本件CD-Rが被疑事実と関連する蓋然性は認められる。そして,本件CD-Rは,可視性・可読性がなく,その内容をそのまま確認することはできない。また,丙が上記のように本件CD-Rを乙宅から運び出そうとしていることからすると,証拠隠滅が行われる可能性が高く,その場で内容を確認している間にも隙を見て証拠隠滅が図られるおそれがある。そこで,本件CD-Rについて内容を確認しないまま差押えをする必要性は高い。以上から,本件CD-Rの内容を確認しないままこれを差し押さえた行為は適法である。
以 上



2018-06-09(Sat)

【事例研究刑事法Ⅱ】第4部第1問-訴因変更の要否-

論文の勉強が進まず焦っています。

もうあと1ヵ月しかありません。

こんなんで果たして受かるのでしょうか。

今日は久しぶりに刑訴です。

≪問題≫
 甲は,乙およびVと共謀の上,平成26年1月10日午前1時ころ,東京都新宿区〇町〇丁目〇番地の家電量販店に強盗目的で押し入り,乙およびVがそれぞれ店の入口と店内を見張っている間に,甲が店員Aに隠し持っていたナイフを突きつけ,抵抗した店員Aの腹部をナイフで刺して重傷を負わせた上,売上金約400万円を強奪した。3人はその日のうちに,強盗した金を山分けすることとし,甲が約200万円,乙およびVがそれぞれ約100万円を取り分として配分した。
 甲・乙およびVの3名は,同年2月1日午後9時ころ,東京都港区△町△丁目△番地の飲食店「セミナー」において飲食をしたが,先の強盗行為によって得た金の配分額をめぐってVが不満を言ったため,口論となった。そして,しばらく言い争っているうちに,甲および乙は,Vの態度があまりに横柄であることに憤激し,またそれまでに飲んだ酒の勢いもあって,この際,Vを殺すのもやむをえないとその場でとっさに相互了解した上,乙がビールビンを逆さに持って,これをたたき割り,それでVの頸部を突いてVをその場で殺害し,飲食店の店員に気づかれないようにVの遺体にコートを被せて店外に運び出した上,車で郊外の山中まで運搬して,その遺体を遺棄するに至った。
 捜査の結果判明した以上の事実のうち,被告人甲に対する殺人被告事件の審理経過は以下のようであった。
 起訴状記載の公訴事実は,「被告人甲は,乙と共謀の上,平成26年2月1日午後9時ころ,東京都港区△町△丁目△番地の飲食店『セミナー』の個室4号室において,Vに対し,殺意をもって,乙において割ったビールビンでVの頸部を突き,よって,そのころ,同所において同人を頸動脈等損傷に基づく失血により死亡させて殺害した」というものであった。検察官は,冒頭陳述において,Vを殺害するに至った経緯につき,先の強盗行為によって得た金の分配をめぐるVの不満の態度があまりに横柄であったことから甲および乙が憤激し,とっさに相互了解してVを殺害するに至ったものである,と陳述した。
 ところが,証拠調べにおいて,証人として出廷した乙は,「セミナー」個室4号室においてVの隣りの席に座っていたのは甲であり,Vをビールビンで突いたのも甲であって自分ではない,と供述するに至った。乙の供述に対しては,被告人甲およびその弁護人から反対尋問もなされたが,ビールビンでVを突いたのは乙ではなく甲である可能性が高くなった。なお,ビールビンからは甲・乙両名の指紋が検出されたとの鑑定書の証拠調べも行われていた。また,被告人甲は,当夜はビール数本,焼酎の水割り数杯を飲み,その酔いのため乙とV殺害についてとっさに相互了解をすることなどできなかったと主張していた。当夜の飲食店「セミナー」の飲食代金請求書の控えも証拠として提出され,証拠調べも行われていた。
 これに対して,証人乙は次のように供述した。すなわち,Vは金の配分額に対する不満を言っているのはV自身だけでなく,Vの内妻Bも不満を言っていると述べたことから,Vが強盗行為の内容をその内妻Bに漏らしていることがわかった。これを知った甲は,Vが内妻とはいえ事件の第三者であるBに犯行を漏らしたことについて,犯行がさらに外部に漏れるのではないかと危機感を抱き,この上はVの口を封じる必要があり,それが内妻への見せしめにもなるからこの場でVを殺害するしかないと自分に耳打ちしたので,自分はこれに同意した,というものであった。

〔設問〕裁判所は,審理の結果,証人乙の供述により新たに判明した事実が真実であるとの心証を抱くに至った。この場合,裁判所が新たに判明した事実を認定するについては,どのような点が問題となるか。

訴  因  変  更

平成13年判例の規範はまぁいいとして,

それにどう当てはめていったらいいのかが,

毎度毎度悩みどころです。

≪答案≫
1.甲に対する殺人被告事件における起訴状記載の公訴事実につき,実行行為者は「乙」とされているところ,裁判所は乙の証人尋問の結果,実行行為者を「甲」と認定しようとしている。また,冒頭陳述において検察官は,V殺害の動機を「甲および乙が憤激し」たことを述べているのに対して,裁判所は「Vの口を封じる必要があ」ったと認定しようとしている。このように,裁判所が公訴事実または冒頭陳述と異なる認定をしようとする際に,訴因変更手続は必要であるか。
2.当事者主義を採用する刑訴法の下では(同法256条6項,298条1項,312条1項),裁判所の審判対象は,検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であるところ,その機能は,裁判所に対し審判対象を画定し,その限りにおいて,被告人に防御範囲を明示する点にある。したがって,審判対象の画定に必要な必要不可欠な事実,すなわち,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る具体的事実,または,同一構成要件内の他の犯罪事実と区別するに足る事実に変更がある場合には,訴因変更手続が必要である。
 また,訴因事実と異なる認定事実が,一般的に被告人の防御にとって重要な事項であるときは,争点明確化による不意打ち防止の要請に基づく措置がとられるべきである。そこで,検察官が訴因においてこれを明示した場合には,原則として,訴因変更手続を要する。もっとも,被告人の防御の具体的な状況等の審理の状況に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定することができる。
3⑴ これを本件についてみると,甲は,乙との,殺人罪の共謀共同正犯として起訴されている。共同正犯の場合には,実行行為者が特定されずとも,共謀の事実をもって処罰が可能であるから,その実行行為者が誰であるか明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえない。本件公訴事実と認定事実とを比べても,犯行の態様と結果に実質的な差異がない上,共謀をした共犯者の範囲にも変わりはなく,そのうちの誰が実行行為者であるかという点が異なるのみである。したがって,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る具体的事実に変更はない。また,他の犯罪事実の区別するに足る事実にも変更はない。したがって,審判対象確定の見地からは訴因変更は必要とはされない。
 しかし,実行行為者が誰であるかは,一般的に被告人の防御にとって重要な事項であるから,これを「乙」と明示した本件では,原則として訴因変更が必要となる。
 もっとも,本件の審理経過をみると,公訴事実は「乙において割ったビールビンでVの頸部を突き」とされている一方で,乙の証人尋問においては「Vをビールビンで突いたのも甲であって自分ではない」と,両立しないことが述べられている。このような状況においては,当事者双方において,両事実を想定した攻撃防御活動を行うものと考えられる。そうすると,具体的な審理経過から,実行行為者が争点になることが明らかになっており,甲において十分に争う機会が確保されていたものと考えられるから,実行行為者を「甲」であると認定しても,甲にとって不意打ちとならない。
 よって,裁判所は,訴因変更手続を経ずして,実行行為者を「甲」であると認定することができる。
 ⑵ 犯行の動機についても,犯罪構成要件に該当するか否かを判定するに足る事実にも,他の犯罪事実と区別するに足る事実にはあたらない。したがって,審判対象確定の見地から,訴因変更が必要となるものではない。
 また,犯行の動機について,訴因に明示されていない以上,争点明確化による不意打ち防止の要請も働かないから,訴因変更は必要とはならない。
 よって,裁判所は,訴因変更手続を経ずして,犯行の動機を「Vの口を封じる必要があっ」たと認定することができる。なお,裁判所が当該事実を認定するためには,争点顕在化の措置がとられるべきである。
以 上



疑問点
Q.訴因に明示されている場合とされていない場合とで区別した記述がされているが,訴因に明示されていない場合であっても,2段階目までの論証には乗るのか(審判対象画定についてのあてはめ→争点顕在化の観点からの不意打ち防止の要請はあたらない,という書き方になるのか)?それとも,最初から独自の論証が用意されるべきなのか?
プロフィール

||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
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