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2025-12-31(Wed)

各答案・解説へのリンク

司法試験過去問や司法試験向けの演習書の答案/ロー入試過去問の答案・解説/旅行業務取扱管理者試験過去問の解説の記事へのリンク集です。

-----司法試験関係-----
●旧司法試験●
▼憲法
・ 昭和56年第1問(犯罪歴の開示)
・ 平成15年第2問(政党と結社の自由)
▼民事訴訟法
・ 昭和61年第2問(相手方の訴訟態度の変動と自白の撤回)
・ 平成7年第2問(訴訟手続への表見法理の適用の可否)
・ 平成10年第2問(既判力と基準時後の事由)
・ 平成20年第2問(補助参加人の控訴期間の起算点,参加的効力の制限)
・ 平成21年第1問(一部請求,職権による過失相殺,規範的要件における評価根拠事実)
・ 平成22年第1問(重複訴訟と確認の利益,消極的確認訴訟と給付訴訟)
▼刑法
・ 平成16年第1問(中止犯,不作為犯)
▼刑事訴訟法
・ 昭和43年第2問(供述拒否が「供述不能」にあたるか,公判廷供述よりも検面調書が詳細である場合)
・ 昭和51年第2問(証言拒絶の適用範囲,証言拒絶は「供述不能」にあたるか)
・ 昭和53年第2問(伝聞証拠の意義)
・ 昭和61年第2問(相反供述の認定,共犯者の自白)
・ 平成元年第2問(再伝聞)
・ 平成13年第2問(記憶喪失は「供述不能」にあたるか,手続的公正を欠く場合)
・ 平成21年第2問(自白法則,違法収集証拠排除法則)
・ 平成22年第2問(犯行メモの証拠能力)

●新司法試験●
▼刑事訴訟法
・ 平成26年
▼倒産法
・ 平成18年第1問
・ 平成18年第2問
・ 平成19年第1問
・ 平成19年第2問
・ 平成20年第1問
・ 平成20年第2問
・ 平成21年第1問
・ 平成21年第2問
・ 平成22年第1問
・ 平成22年第2問
・ 平成23年第1問
・ 平成23年第2問
・ 平成24年第1問
・ 平成24年第2問
・ 平成25年第1問
・ 平成25年第2問
・ 平成26年第1問
・ 平成26年第2問
・ 平成27年第1問
・ 平成27年第2問
・ 平成28年第1問
・ 平成28年第2問
・ 平成29年第1問
・ 平成29年第2問
・ 平成30年第1問
・ 平成30年第2問

●演習書●
▼事例研究行政法〔第3版〕
・ 第1部問題1(審査基準の設定公表義務違反,他事考慮)
・ 第1部問題2(処分性,違法性,訴訟形式)
・ 第1部問題3(申出に対する応答の取消訴訟,義務付け訴訟)
・ 第1部問題4(原告適格)
・ 第1部問題5(訴えの客観的利益,取消訴訟の本案)
・ 第1部問題6(訴訟類型,理由の提示,比例原則)
・ 第1部問題7(国賠-1条)
・ 第1部問題8(国賠-営造物)
・ 第2部問題1(理由提示の程度,新たな理由の追加,証明責任の分配,取消判決の拘束力)
・ 第2部問題2(訴訟類型,取消訴訟の訴訟要件全般,工事が完成した場合の訴えの利益)
・ 第2部問題3(公共施設管理者の不同意の処分性,訴訟類型,不同意の違法性,開発許可の違法性,違法性の承継)
・ 第2部問題4(実質的当事者訴訟,差止訴訟の重損要件,要綱の法的性質,第三者の原告適格)
・ 第2部問題5(届出の不受理の争い方,行政指導の実効性確保と争い方,公表の法的性質と争い方)
・ 第2部問題6(代執行における戒告の処分性,法令と条例との関係,条例の合理性,比例原則)
・ 第2部問題7(処分の取消訴訟と執行停止(重損要件を中心に),第三者の原告適格,団体の原告適格)
・ 第2部問題8(処分が反復継続的・累積加重的される場合の争い方(差止訴訟,実質的当事者訴訟),裁量権の範囲の逸脱濫用)
・ 第2部問題9(処分性(公権力性の有無-契約の差異),本案(「保育に欠ける」の解釈),指定管理者の指定の処分性,第三者の原告適格)
・ 第2部問題10(抗告訴訟の対象とすべき行為の選択,処分性,仮の義務付け,裁量の範囲)
・ 第2部問題11(監督処分発令の可否,監督処分の強制方法,監督処分発令の義務付け訴訟,住民訴訟)
・ 第2部問題12(行政財産の目的外使用不許可の処分性,不許可処分が裁量の逸脱・濫用となる場合)
・ 第2部問題13(申請の不受理・返戻に対する争い方,審査基準の合理性,許可決定の留保の違法性)
・ 第2部問題14(直接型義務付け訴訟の訴訟要件全般,直接型義務付け訴訟の本案の類型,義務付け訴訟にも主張制限を及ぼすことができるか)
・ 第2部問題15(条例制定行為の処分性,実質的当事者訴訟の対象とすべき法律関係,地方自治法227条の解釈,平等原則)
・ 第2部問題16(政令の改正を求める訴訟(直接的義務付け訴訟,無効確認訴訟,実質的当事者訴訟),政令の改正によって生じた損害の補てんを求める訴訟(国家賠償請求訴訟,損失補償請求訴訟))
・ 第2部問題17(入管法の仕組み,退去強制を免れるための争い方(取消訴訟,義務付け訴訟),執行停止,仮の義務付け,裁量権の逸脱・濫用)
▼Law Practice民法Ⅰ〔第4版〕
・ 問題36(民法177条の第三者の範囲)
▼事例で学ぶ民法演習
・ 問題3(法人)
・ 問題4(虚偽表示と第三者)
▼事例から民法を考える
・ 事例①(保佐人の権限,被保佐人の返還義務の範囲,被保佐人が保佐人の同意を得ずにした代理権授与行為の効果)
・ 事例②(錯誤,詐欺,94条2項類推適用)
・ 事例③(時効取得と第三者)
・ 事例④(解除と第三者,詐欺取消しと第三者,錯誤無効と第三者)
・ 事例⑤(共有関係,法定地上権)
・ 事例⑥(転貸賃料債権に対する物上代位,物上代位と相殺の優劣)
・ 事例⑦(集合動産譲渡担保)
・ 事例⑧(履行遅滞解除,危険負担,受領遅滞)
・ 事例⑨(詐害行為取消権)
・ 事例⑩(保証契約における詐欺・錯誤の主張の可否,共同保証人の一人に対する免除の効果,共同保証人間での求償)
・ 事例⑪(代理受領)
・ 事例⑫(債権の準占有者に対する弁済,預金債権の帰属)
・ 事例⑬(瑕疵担保責任,の法的性質,債務不履行責任との異同,買主に対する建築請負人の不法行為責任)
・ 事例⑭(他人物売買の担保責任,権利者が他人物売主を相続した場合)
・ 事例⑮(借賃増減請求,賃貸借契約と消費者契約法10条,信頼関係破壊の法理)
・ 事例⑯(賃貸借契約と転貸借契約の関係)
・ 事例⑰(下請負人の地位)
・ 事例⑱(医療事故による生命侵害の保護法益,親族の損害賠償請求,損害の範囲)
・ 事例⑲(日常家事債務)
・ 事例⑳(有責配偶者の離婚請求,財産分与)
・ 事例㉑(扶養義務者の寄与分,配偶者の寄与分,死別の場合の法律関係,離婚の場合の法律関係)
・ 事例㉒(連帯根保証債務の相続,遺産分割協議の詐害行為取消し)
・ 事例㉓(「相続させる」趣旨の遺言)
▼Law Practice民事訴訟法〔第2版〕
・ 発展問題2(移送)
▼基礎演習民事訴訟法〔第2版〕
・ 問題1(当事者能力)
・ 問題2(当事者適格⑴ 法定訴訟担当)
・ 問題3(当事者適格⑵ 任意的訴訟担当)
・ 問題4(代理(法定代理,訴訟代理,法人の代表))
・ 問題5(訴えの利益)
・ 問題6(二重起訴の禁止)
・ 問題7(弁論主義)
・ 問題8(自白,時機に後れた攻撃防御方法)
・ 問題9(釈明権)
・ 問題10(主張・証明責任-要件事実入門)
・ 問題11(自由心証・証明度)
・ 問題12(文書提出命令)
・ 問題13(基準時後の形成権の行使)
・ 問題14(既判力の客観的範囲・一部請求・相殺)
・ 問題15(既判力の主観的範囲)
・ 問題16(争点効・信義則)
・ 問題17(和解)
・ 問題18(通常共同訴訟(同時審判申出訴訟・訴えの主観的予備的併合))
・ 問題19(固有必要的共同訴訟)
・ 問題20(類似必要的共同訴訟)
・ 問題21(独立当事者参加)
・ 問題22(補助参加の利益)
・ 問題23(補助参加人の権限と判決効・訴訟告知の効力)
・ 問題24(訴訟承継)
・ 問題25(上訴の利益)
・ 問題26(不利益変更禁止の原則)
・ 問題27(再審)
・ 問題28(審判権の限界)
・ 問題29(訴訟と非訟)
・ 問題30(境界確定訴訟)
▼事例研究刑事法Ⅱ〔第2版〕
・ 第3部問題4(令状の効力が及ぶ範囲,差押の範囲)
・ 第3部問題5(かすがい外し)
・ 第4部問題1(訴因変更の要否)
▼事例演習刑事訴訟法〔第2版〕
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)

-----ロー入試関係-----
●中大ロー●
・ 2020年度 憲法(外部リンク)/刑法民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2019年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2018年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2017年度 憲法刑法民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2016年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2015年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2014年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2013年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2012年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2011年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2010年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2009年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法
・ 2008年度 憲法/刑法/民法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法


-----旅行業務取扱管理者試験-----
●国内旅行業務取扱管理者試験●
・ 令和元年度  第1問第2問/第3問
・ 平成30年度 第1問第2問/第3問
・ 平成29年度 第1問第2問/第3問
・ 平成28年度 第1問/第2問/第3問
・ 平成27年度 第1問/第2問/第3問
・ 平成26年度 第1問/第2問/第3問

●総合旅行業務取扱管理者試験●
・ 令和元年度  第1問/第2問/第3問/第4問
・ 平成30年度 第1問/第2問/第3問/第4問
・ 平成29年度 第1問/第2問/第3問/第4問
・ 平成28年度 第1問/第2問/第3問/第4問
・ 平成27年度 第1問/第2問/第3問/第4問

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2020-05-21(Thu)

【ロー過去】中大ロー2018年度刑法

書き途中

≪問題≫

 次の【事例】を読み,下記の【設問1】及び【設問2】に答えなさい(配点は1:1)。解答用紙は,表面(30行)のみを使用すること。

【事例】
 甲が所属している暴力団X組と,乙を幹部構成員とする暴力団Y組は,それぞれA市内で大きな勢力を持ち,さまざまな局面で対立し,衝突する関係にあった。甲は,一計をめぐらせ,架空の覚せい剤取引を持ちかけて乙を誘い出し,乙から相当量の覚せい剤を奪い取ることにより,これをX組の資金源にするとともに,乙及びY組にダメージを与えることを企て,その計画を実行に移すこととした。
 甲は,まず乙に対し,買い手がいるかのように装って覚せい剤取引を持ちかけたところ,乙から,その所有する覚せい剤1.5キログラムを現金5,000万円と引き換えに譲り渡したいという返事を得た。そこで,甲は,2017年2月9日,覚せい剤と現金の受け渡しのため,乙をA市内にあるBホテルの603号室へと案内した。603号室は同ホテルの6階にあり,その日は宿泊客もおらず,フロアはひっそりと静まりかえっていた。甲は,乙が部屋に到着すると,乙に対し,1階下の528号室に先方(買主)がいるが,先方は現物を見分して品質を確認するまでは持参した現金5,000万円を渡せないと言っているなどと湖渡場巧みに申し向けた。乙は,この作り話を信用してうなずくとともに,白い布製の手提げ袋に入った覚せい剤(ビニール袋入り)を手提げ袋ごと甲に渡し,ただ「早くしろよ。」とだけ付け加えた。
 甲は,頭書の計画どおり,そのまま覚せい剤を自分のものにするため,手提げ袋入りの覚せい剤を持って603号室を出ると,階段を使って528号室に行き,部屋の中で手提げ袋から覚せい剤入りのビニール袋を取り出し,覚せい剤であることを確認すると,これを持参した空のジュラルミンケース(55×38×25センチメートル)の中に入れてケースを閉じた。このケースはいったん閉じると,X組本部にある特殊なキーを使わない限り開けることのできないものであった。次に,甲は,手提げ袋の中に,あらがめ用意しておいた,一見すると覚せい剤に見える無害な粉末1.5キログラムの入ったビニール袋を代わりに入れようとした。甲としては,事前に計画にしたがい,乙のところに戻り,この粉末が入った手提げ袋を乙に返して,鹿倉イザイの質が低いことを理由に取引中止を告げるつもりであったのである。ところが,手提げ袋に入れる際に,袋が破れて粉末が周辺に飛び散ってしまったため,慌てて粉末をかき集めようとするなどしているところに,突然に乙が部屋の中に入ってきた。
 乙は,すぐに代金を持ってくるものと考えて「ブツ」を渡したのに,10分たっても甲が戻ってこなかったことから,持ち逃げされたのではないかと心配になり,603号室を出て,買い手がいるという528号室に来たのである。「遅いぞ。何をしているんだ。」と言いながら,528号室に入り込んだ乙は,部屋の中に存在するはずの会てらしき人物がおらず,甲しかいないのを見て,瞬時に甲にはめられたと気付いた。覚せい剤を取り戻さなければという気になった乙は,床に飛び散っている粉末を見て,たちどころに覚せい剤でないと見抜き,甲の手元にあるジュラルミンケースに自分の覚せい剤が移し替えられたと瞬時に気付き,これを取り戻そうと考え,「ふざけるな。」と叫ぶや,背広の内ポケットから刃渡り15センチメートルのナイフを取り出し,これを甲に向けて示した。さらに乙は,棒立ちになった甲の顔面を手拳で強く殴って床に倒れさせ,甲がもはや身動きができないようにした上,ジュラルミンケースを取り上げると部屋を出て,そのままBホテルから立ち去った。なお,乙はジュラルミンケースを取ろうとした際,その大きさから,中に自分の覚せい剤だけではなく,ひょっとしたら代金の5,000万円が入っているかもしれないと考えており,それならそれで儲けものという気持であった。

【設問1】 甲が乙から手提げ袋に入った覚せい剤を取得したことについて,甲はどのような刑事責任を負うか。想定される異説を批判しながら自分の見解を述べなさい。
【設問2】 乙がジュラルミンケースごとその内容物を奪おうとしたことについて,乙はどのような刑事責任を負うかを明らかにしなさい。






2020-05-16(Sat)

【ロー過去】中大ロー2020年度刑法

中大ロー2020年度刑法の解説です。

解説を書いたのは私ではなく,通信添削ゼミで刑法を担当していた者です。

≪問題≫

 次の【事例】を読み,下記の【設問】に答えなさい。解答用紙は,表面(30行)のみを使用すること。

【事例】
1 A(52歳:男性)は,その妻である甲(50歳)及びその長男である乙(28歳:Aと先妻との間に生まれた)と3人でアパートの一室に同居していたが,勤務先の会社が倒産し,Aが失業状態となった5年前から,深夜にひどく酩酊して帰宅すると,大声を出して暴れ,甲と乙に殴りかかって負傷させたり,壁をたたいて穴をあけたり,テレビや冷蔵庫を壊したりということを幾度となく繰り返してきた。そうしたときは,甲と乙は,暴れるAの身体を2人がかりで押さえ付け,Aが疲れて眠ってしまうまで押さえ続けるなどしてこれに対処していたが,アパートの住人たちから騒がしいと苦情を言われることがたびたびあり,アパートを追い出されかねない状況となったため,暴れるAを早く落ち着かせるため,Aの手足をロープで縛り,口にガムテープを貼ることもしばしばあった。
2 2018年8月某日の午前6時頃,Aは,相当に酩酊した状態で帰宅したが,ちょうどパート先に赴くところであった甲から,「働きもしないで朝帰りか。」などとたしなめられて激高し,ふらつく足で甲に殴りかかろうとしたので,乙がAを後ろから羽交い締めにしてこれを制止した。乙は,Aが後頭部で乙に頭突きをしようとするので,Aをそのまま床に組み伏せ,そこに甲が加わり,乙がうつ伏せのAの上半身を,甲がAの下半身を押さえ付けて動けないようにした。それでもAが手足を激しく動かして起き上がろうとするので,甲は全力で背後から腰の部分を押さえ付け,乙は,Aを早くおとなしくさせるため,頸部を強く締めるのがよいと考え,右ての親指と揃えた他の4本の指とでAの頸部を挟む形で,思い切り体重を掛け,Aが抵抗しなくなるまで全力で押さえ続けた。甲は,下半身を押さえるのに懸命であり,乙がAの頸部を押さえ付けていることは知らなかった。5分ほどしてAが動かなくなったので,甲と乙は手を離し,傍らにあったロープをAの両足首に巻き付けて縛り,また,Aの両手を後ろ手に回し両手首をあわせて縛りつけた。Aがすぐにおとなしくなったので,口にガムテープを貼ることはしなかった。
3 甲は,同日午前6時30分頃,パート先に向かうため,「後はよろしく。」と言ってアパートを出たので,そこには乙とAが残された。同日午前7時過ぎ,乙は,Aの頸部を少し強く絞めすぎたかもしれないと思って心配になり,Aの様子を見たところ,呼吸をしておらず,身体を揺さぶってもまったく反応せず,すでに死亡しているように見えた。乙は気が動転し,ひどい親のせいで自分の人生までメチャクチャにされてはたまらない,遠くに逃げて警察に逮捕されることだけは免れたい,と考え,当座の逃走資金にする目的で,Aが甲に内緒で現金を保管していた机の引き出し(乙のみはそのことに気づいていた)を開け,その中にあった現金15万円を取り出してそれを自分のポケットに押し込み,アパートから立ち去った。
4 同日の午後になって,帰宅した甲がアパート内で死亡しているAを発見し,すぐに警察に通報した。Aの死因は,乙による頸部圧迫に起因する窒息死であり,すでに同日午前6時30分頃には死亡していたものと推定された。

【設問】甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く)。

≪出題趣旨≫

 本問の設例における甲と乙の刑事責任を明らかにするに当たっては,⑴甲と乙が,暴れるAを押さえつけ,頸部を圧迫することでAを死亡させたことについて,それぞれがどのような罪責を負うか,そして,⑵乙が,Aがすでに死亡していることに気づき,生前のAが所有していた現金15万円を持ち逃げした点について乙にいかなる犯罪が成立するか,という2つの問題について検討することが必要である。
 まず,⑴について見ると,乙の頸部圧迫行為とAの死亡の結果の発生との間に法的因果関係が肯定されることから,乙は傷害致死罪(刑法205条)の構成要件に該当する行為を行っている。そこで,甲と乙との間で,傷害致死罪の共同正犯(の構成要件該当性)を認めうるかどうかが問題となる。判例・通説は,暴行の故意さえあれば傷害致死罪が成立とうるとするとともに,結果的加重犯の共同正犯についてもこれを肯定することから,暴行の故意しかなかった(すなわち,暴行の限度で乙との間に意思連絡がある)甲についても,傷害致死罪の構成要件該当性が認められることになろう。ただし,結果的加重犯については,重い結果の発生との関係で過失を要求する学説も多く,その見解(判例の「過失不要説」に対し,「過失必要説」とも呼ばれる)によれば,乙がAの頸部を強く圧迫していることをまったく認識していなかった甲には,重い結果との間に過失がなく,甲の行為については傷害罪の限度でしか共同正犯の構成要件該当性を認めることができないとする結論をとることも可能であろう。
 次に,甲・乙のAに対する行為が正当防衛(刑法36条)として違法性が阻却されうるかどうかが問題となる。Aの甲・乙に対する暴行は,急迫・不正の侵害といいうるし,乙がAを組み伏せた段階ではまだ侵害の継続性を肯定できる。しかし,酩酊したAを二人で押さえつけ,しかも頸部を思いきり圧迫することは,防衛の意思をもって行われているとしても,もはや必要最小限の反撃とはいえず,防衛行為の相当性が否定されるであろう。乙については,過剰性ある事実を認識していることから傷害致死罪が成立するが,過剰防衛(刑法36条2項)となる。これに対し,乙による頸部の圧迫のことを知らなかった甲については,護送防衛(相当性を基礎づける事実の誤信)としてせいぜい過失致死罪の罪責を負うにとどまることとなろう。
 ⑵について見ると,乙が現金を持ち逃げした時点において,すでにAは死亡していたことから,相続財産に帰属する当該の現金15万円については相続人(という他人)の所有が認められるとしても,占有侵害の要件を肯定することができず,窃盗罪(刑法235条)ではなく,占有離脱物横領罪(254条)しか成立しないのではないかが問題となる。この点につき判例は,一定の要件の下に,死後における行為であっても被害者の生前の占有を侵害しうることを認めており,この事例でもその要件が充足されると考えられるところから,乙には窃盗罪の成立が認められることになろう。その上で,親族相盗例(244条1項)の適用の可否が問題となるが,同条の適用にあたっては所有者と占有者の両方との間に所定の親族関係があることが必要とされるところ,本事例では,占有者がAであり,Aと乙との間に直系血族の関係があるとしても,所有者たる相続人(全員)と乙との間に所定の相続関係があるかどうかが明らかではない。ただ,解答に当たっては,およそ親族相盗例の適用の問題とし,それを本事例に適用する上での論点を指摘すれば,それに対し十分に高い評価が与えられることになる。



令和元年度中央大学法科大学院入試
刑法 解説篇
(※1)

第1 はじめに
  新型コロナウィルスの影響により中央大学が誇る炎の塔が閉鎖されて久しい。司法試験も延期となり,今後のスケジュールに不安を覚えている受験生も多かろうと思う。本稿は,そんな受験生のために昨年度の法職専門指導員が開講したロー入試通信対策ゼミの解説篇である。
 もとより,本稿は一司法修習生にすぎない小生の筆によるもので,絶対の解説ではない。むしろ,このような考え方もありますよね,ということを示しているだけであると御理解いただきたい。よもやそのような方はおられまいが,本稿を金科玉条にすることだけは現に慎んで欲しいのである。むしろ本稿が読者諸兄の積極的な批判に晒され,より良い解説を産み出すことの嚆矢となれたのであれば,それは筆者にとり望外の喜びというほかない。
  なお,本問を単なる刑法の問題として終わらせて欲しくないというのが,筆者のひそかな願いであったりする。これが実際の事件であったならば,Aは死亡し,甲乙は精神的に大きな打撃を受けることになる。我々が目指す法曹は,刑事裁判が終わればそれまでのように思いがちであるけれども,当事者にとって事件は一生終わらないのである。
 そこで考えて欲しいのが,どうすればこの事件を防げたか,ということである。本件は典型的なDVが発端となっているから,甲乙はAから逃れるために役所にDV被害の相談をしに行くべきであった。その相談をしにくい現状があるのであれば,その障壁を取り除かなくてはならない。AのDVの原因が失業であったなら,職探しの支援が行われるべきであるし,アルコール中毒になっていたならば,断酒会に参加することも考えられる。いや,そもそも失業しなければ普通の生活が起こらなかったというのであれば,会社が倒産しないように不況を改善すべきであったかもしれない(※2)
 フランツ・リストは,「最良の刑事政策は最良の社会政策である」という格言を残している。刑事裁判に携わることを希望するのであれば,幅広い学問に携わることが重要である(※3)。ぜひ研鑽を積んで欲しい。
 では,始めよう。

(※1)本稿で引用する文献の凡例は,以下のとおりである。
・井田良『講義刑法学・総論 第2版』(有斐閣,2018)→ 井田総論
・井田良『講義刑法学・各論』(有斐閣,2016)→ 井田各論
・小林充・植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選上 第2版』(立花書房,2013)→ 50選上〔執筆者〕
(※2)経済的苦境が犯罪を引き起こすというのは,過去の歴史が裏付けている。たとえば,現在では死刑の基準として知られている永山事件も,経済的苦境が犯罪の背景にあったのである。この点については,夏樹静子『裁判百年史ものがたり』(文藝春秋,2012)273頁以下。
(※3)この点,刑法学は学際科学であると評される(井田良『入門刑法学総論』(有斐閣,2013)16頁)。経済学(岩田規久男『経済学を学ぶ』(筑摩書房,1994)),政治哲学(サンデル〔鬼澤忍訳〕『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房,2011),歴史学(川北稔『世界システム論講義』(筑摩書房,2016)),精神医学(フロイト〔高橋義孝・下坂幸三訳〕『精神分析入門』(新潮社,1977)),古典(橋本治『これで古典がよくわかる』(筑摩書房,2001)),哲学(木田元『わたしの哲学入門』(講談社,2014),筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』(河出書房,2018))など,多くの学問を学んで欲しい。最近,私が読んで深い示唆を受けたのは,ほぼ日刊イトイ新聞編『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(株式会社ほぼ日,2019)である。


第2 総論
 1 題材について
   本稿がテーマとするのは,2020年度中央大学法科大学院入試問題の刑法である。中央大学法科大学院では,2019年度以来入試問題の出題趣旨を公表するようになっており,これを参考にすることが重要となる。問題文と出題趣旨は別紙として末尾に添付しておくので,適宜参照されたい。
   本論に入る前に,中央大学法科大学院入試について触れておこう。受験生の方々には釈迦に説法であろうから,読み飛ばしてもらったとしても構わない。
    まず問題となるのは,刑法では30行指定があることである。今後,どのようになるかは定かでないものの,2020年度入試まででは,刑法は配布される解答用紙の表面30行ですべてを書ききらなくてはならないこととされている。したがって,コンパクトに法的三段論法を書くことが重要になってくる。
 法的三段論法といえば,

「規範定立→事実の当てはめ→結論」

という流れを指すものであると,受験業界的には理解されている(※4)。しかし,これをフルスケールで示すと,とてもではないが圧倒的に行数が足りない。したがって,これを適切に圧縮することが必要となる。一例を示そう。
 住居等侵入罪は,簡潔に書かなければならない犯罪の代表格であるといえよう。読者諸兄は,住居等侵入罪を起案する際,「侵入」の該当性について,次のように論じているのではなかろうか。
     
「AはV宅に無断で入っているのであるから,当該行為は住居権者たるVの意思に反する立ち入りであるといえ,「侵入」に該当する。」
    
 これを抽象的に言えば,

「事実の指摘→規範による事実の抽象化→結論」

といことになる。ポイントは,従来の法的三段論法とは,規範と事実の順序が逆転していることである。意識すれば何のことはない。
 このように,コンパクトな法的三段論法は意外とできている人が多かったりする。小生が添削をしていても,すんなり出来ている人は相当数いるものだ。しかし,これが他の犯罪になると出来なかったりする。住居侵入罪は住居侵入罪,他の犯罪は他の犯罪という風に,ある意味で型に囚われてしまっているからだと思料するが,どうだろう。上記の流れも一種の型ではあるものの,より一般的な型であるから,参考にされたい(※5)
 それと,これは豆知識であるが,ボールペンで起案することだけは避けて欲しい。ただでさえギッチリ書くことになるのだから,加筆修正などできるはずもない。ボールペンで書いて真っ黒な起案を提出するくらいなら,シャープペンシル等で起案して消しゴムを使えるようにしておこう。
    次に問題となるのは,問題の難しさである。
 中央大学法科大学院は,はなはだ不思議なことに,他の法分野に比べると刑事法のスペシャリストが非常に多い。過去には,安廣文夫元東京高裁判事や中山隆夫元福岡高裁長官が在籍しておられ,現在は,髙橋直哉教授や佐伯仁志教授,そして小生が尊敬してやまない井田良教授が教鞭を振るっておられるのである。中央大学法科大学院に進学すれば間違いなく刑事法のスペシャリストになれるといっても,決して過言ではないと思う。
 そのような神々が作問をしているだけあって,なかなか骨の折れる問題が多い。特に,2019年度の問題は,30行指定も相まって凶悪な難易度となっていた。2020年度もそうである。
 しかし,骨の折れる問題といっても,決して奇をてらった問題というわけではない。判例通説の知識さえ押さえておけば十分に料理できるような「良問」である。事前の準備さえしておけば,あとはその場でコンパクトに仕上げてしまえば対応は十分に可能である。
 とはいえ,言うは易し行うは難し,といった至言もある。徹底的な訓練が必要だということにはなろうが,それは逆に言えば,徹底的な訓練さえすればどうとでもなる,ということでもあるのである。
   長々と中央大学法科大学院について書きすぎた。首を長くしている読者諸兄もおられようから,そろそろ本題に入ることにしよう。
 2 出典
   本問を見たとき,既視感を覚えるようであれば,その人は十分に学習が進んでいるものと思われる。本稿を読む必要などないから,手持ちの基本書や演習書でガンガン勉強を進めていただきたい。見覚えがないというのであれば,本稿を読んでおくことを手前味噌ながら推奨しておこう。
   本問の前半部分は,黄色本との愛称で親しまれている井田良ほか『刑法事例演習教材 第2版』(有斐閣,2014)74頁以下に収録されている「哀しき親子」が題材になっている(その元ネタは東京地判平成14年11月21日判時1823号156頁であるので,余裕があれば読んでおくとよい。)。そのため,黄色本をやっていた人にとっては,まさにラッキー問題であったといえよう。ここに,演習書をやるうま味がある。
 しかし,思わぬ落とし穴もある。30行指定である。人間,知っている問題が出ると有頂天になり,オレはこんなに知っているんだぜ,と言わんばかりに衒学的に知識を披露したがる。そうなると,30行はすぐに埋まってしまい,後半部分がスッカスカになってしまうのだ。これは非常にもったいない。しかも,衒学的であると友達も減る。心していただきたい。
   後半部分は,いわゆる死者の占有の典型的な問題である。ここも落としてはいけないポイントである。というより,中央大学法科大学院を受験するような受験生であれば,およそ知っている論点であり,ここを落とすようだと,言い方は厳しいが,不合格推定が働くようになる。入試には「疑わしきは受験生の利益に」などという原則はない。
   さて,ここまで書けばお分かりなとおり,本問は非常に典型的な問題であり,事前準備の差が合否を分けたといえるだろう。特に司法試験までの試験では,事前準備で引出しを増やしておくことが非常に重要である。本稿も,読者諸兄の引出しを増やすことに貢献させていただきたい。

(※4)法学的な意味での法的三段論法は,少し異なる。筆者は,法学的な意味での法的三段論法をマクロな意味での法的三段論法と,受験業界的な意味での法的三段論法をミクロな意味での法的三段論法と呼んで峻別しているが,本稿で触れるべきポイントではないので,割愛する。
(※5)刑事法の答案の書き方については,田中和壽子「結論から書く司法試験答案」法学セミナー2014年9月号32頁以下が大いに参考になる。


第3 哀しき親子
 1 論点と判例
   大まかな論点を先に紹介しておこう。こうすると,論点主義の誹りを免れないかもしれないが,体系的な知識さえあれば,論点主義も悪くはないだろう(そうなってしまうと,もはや論点主義ではない,との批判は甘んじて受け止めよう。)。
   まず大切なのが,相当性の議論である。相当性については,最判平成元年11月13日刑集43巻10号823頁が最重要判例であるから,丁寧に復習しておいていただきたい。重要なのは,武器対等の原則を基本に,行為者と被害者の性別,年齢,体格等を適切かつ具体的に検討していくことである(※6)
 なお,「やむを得ずにした行為」については必要性と相当性に分けられることがあるが,ここにいう必要性は,自己又は他人の法益を防衛するのにどうしても必要な行為でなければならない,ということまでは含意していない。そこまで要求するのは,緊急避難における補充性である。ここにいう必要性とは,攻撃防止のための手段として何ら役に立たない行為が行われた場合に否定される要件である(※7)。憲法論でいうところの適合性と同義である,と表現すれば理解が促されようか。
   次に問題となるのが,違法の連帯の議論である。この論点については最決平成4年6月5日刑集46巻4号245頁という重要判例があるから,しっかりと押さえておいていただきたい。もっとも,この議論は非常に難しいものであるから,あとで詳しく触れておくことにする。
 2 問題点
   中心的論点について解説する前に,添削をしていて見受けられた問題点について触れておくことにしよう。なお,本項で指摘する問題点は,小生が「そうかなるほど!」と相槌を打つようなものであるから,本項で取り上げられたことで恥じ入る必要はまったくない。
   正当防衛を論じる上で,入口の議論になるのが急迫性要件である。最近になって,急迫性の議論に激しい動きが生じていることから,本問でも急迫性の問題ではないかと考えた方がいた。問題意識としては決して悪いものではないが,ともすると衒学的答案との烙印を押されかねないので,まずは適切に議論を辿っていこう。
    従来,急迫性が否定されるのは主に積極的加害意思がある場合とされていた(※8)。積極的加害意思とは,「予期された侵害の機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思」と定義されるもので,侵害の確実な予期が前提となる(※9)。そのため,積極的加害意思を分解すると,①侵害の確実な予期と②積極的に相手に対して加害行為をする意思の存在という二つの要件が必要だ,ということになる。
 本問の場合,Aの従前の態度や酒乱具合に鑑みれば,侵害の確実な予期はあったと評価することも可能であるように思われる。しかし,甲及び乙がAを押さえつけるのに乗じて同人を痛めつけようと画策していたとの事情は存在しないのであるから,②の要件に該当する事実が存在しないということになる。積極的加害意思を肯定するのは困難であるといわざるを得ない。
    さて,積極的加害意思が否定される場合,従来であれば急迫性の議論は終わっていた。しかし,最決平成29年4月26日刑集71巻4号275頁(※10)が出た今日にあっては,積極的加害意思の検討以外にも急迫性が否定される場合があるとして,その検討をしなくてはならないのである(※11)。とはいえ,本決定で示された要素をすべて覚える必要はない。本決定は,正当防衛という難解な法律概念をどのようにして裁判員に説明するかという議論の延長に位置付けられたものであるから,ある意味で一般人の常識的な議論が反映されることになる。無論,我々は法律家を志すものであるから,単なる感想を並べ立てるのは御法度であり,起案に表現する場合には,本決定を意識した丁寧な議論が求められるであろう(※12)
 しかし,いずれにせよ本件で急迫性が否定されるような事情は存在しない。本決定によったとしても,急迫性は何の疑いもなく肯定されるべきであろう。
   次に,甲及び乙の行為を分析的に捉えて,上半身と下半身を押さえつけた行為を第1行為,頸部を挟む形で押さえつけた行為を第2行為とした答案があった。これも,分からないではない。しかし,原則は全体的評価であり,分析的評価は例外的なのである。
 そもそも,全体的評価か分析的評価が問題となるのは,いわゆる量的過剰防衛が問題となる場面である。そして,量的過剰防衛が問題となる場合というのは,あくまで短時間のうちの一連の行動が問題となっている場合なのであるから,人の行動についてその刑事責任を過不足なく捉えることが要求される刑事裁判においては,あえてその行動を分節するというのは合理的な扱いとはいえないであろう。むしろ,「短時間のうちに連続的に推移し,社会的には一つのエピソードとして存在する事態の取り扱い方」としては,全体的評価の方が合理的な選択なのである。かくして,分析的評価は特殊な事情が認められる場合の例外,全体的評価が原則的な場合であるという結論が導かれることになる(※13)。この点は,喧嘩闘争について全体的考察をした最判昭和32年1月22日刑集11巻1号31頁が参考になるところである。
 一方,分析的考察が有益な場合もある。その点が示されたのが,最決平成20年6月25日刑集62巻6号1859頁と最決平成21年2月24日刑集63巻2号1頁である。前者では,分析的考察の要件として,①第2行為につき侵害の継続性と防衛の意思の双方が否定されること,②第1行為と第2行為の態様がそれぞれ異なること,が挙げられている。したがって,これらの要件に該当するような事実が無い場合,原則として全体的考察によるべきだということになる。
 本問において,例えば,甲及び乙がAを押さえつけたことで同人が全く身動きの取れない状況になり,かつ,乙が憤激にかられていたような場合には,単なる押さえつけと頸部を指で挟みながらの押さえつけとは異なる態様であると評価して,分析的評価をするべきであると考えることも可能であろう。しかし,本問のようにAが酒に酔って暴れていたような場合に単なる押さえつけ程度でAが暴れるのをやめるといえるであろうか。むしろ,押さえつけを解除した途端に再びAが暴れだすと考えるのが自然であろうから,侵害の継続性が否定されるようなことはないだろう(※14)。したがって,本問のような場合に分析的評価をすることは考えにくい。素直に全体的評価をすべきである。
   ほかに,本問を共謀の射程論で処理した答案もあった。共謀の射程論は目新しい議論である(※15)から,使いたくなる気持ちも分からないではない。しかしながら,共謀の射程論を論じて欲しい場合には,共謀から生じた結果発生の危険が現実化しなかったということを基礎づける事実が多く散りばめられているはずであるから,そこに注意しなくてはならない(※16)。これは問題と対話するということであり,問題演習には欠かせないスキルであるから,徹底的に訓練することが必要である。
 3 構成要件該当性
   共同正犯を論じる場合,難しいのが論じ方である。共同正犯の構成要件は,実務の立場に従う限り,共謀(意思連絡+正犯意思)及び共謀に基づく実行行為であるとされている。もっとも,その前提として実行行為を筆頭とする客観的構成要件要素充足性(※17)が必要になる。そして,ここまでは共同正犯で共通に考えればよく,後述の制限従属性の立場からは,故意などの主観的要素については各個人につき別々に検討すべきだということになる。論じる順番としては,①客観的構成要件充足性,②共謀,③共謀に基づく実行行為,④故意ということになるだろう(※18)
 とはいえ,これはあくまで検察の終局処分起案の考え方である。司法修習前の試験答案においては,行為者から論じるのが通常であるから,行為者の段階で①及び④を論じて,それ以外の者は①を前提として②以下を論じることになるだろう(※19)。典型的な実行共同正犯の場合には,行為ごとに論じることになるため,端的に①以下を検討すれば足りることになるはずである。
   では,正当防衛はどこで論じるべきか。これは非常に難しい問題であるといえる。井田教授の提唱される消極的構成要件要素の理論(※20)によれば,①から④のすべての段階で意識されることになるだろう。すなわち,①では急迫性や防衛の対象となる法益,相当性といった客観的な要素が,④では積極的加害意思や防衛の意思といった主観的な要素が問題となるはずである。一方,検察の終局処分起案では,①から④の検討を終えた後にその存否について検討することになる。
では,資格試験の答案ではどうすべきか。さしあたり,実行行為者から論じることになる場合には,①及び④の検討だけで終わることが多いから,その際は④の後で検討すれば足りるだろう。一方,行為ごとに論じる場合には,検察の終局処分起案に倣い,①から④の後で検討するということになるだろうか。大切なことは,判例通説に従うのであれば,構成要件該当性を論じた後に違法性阻却事由を論じるということであり,正当防衛を論じる上でも,客観から主観という風に検討を進めていくべきであるということである。
   本問では,中心的な実行行為者は乙であるから,まずは乙を単独正犯に準じて検討すればよい。本問では暴行罪から論じて,最終的に結果的加重犯としての傷害致死罪を論じるべきだろう。中には傷害罪を検討している者もいたが,故意論で暴行罪について論じるのであれば,客観的構成要件も暴行罪に揃えなくてはならない。なお,故意も構成要件要素なのであるから,これを論じないと刑罰権が生じないことに留意するべきである。
 その後,乙については正当防衛を論じることになる。急迫性については前の段で論じたし,専ら積極的加害意思がある場合でない限り防衛の意思も否定されることはない。残すは相当性である。
    乙の罪責について論じ終えたら,次は甲である。具体的な客観的構成要件要素については乙で論じているから,それを前提にして②以下を検討すればよい。本問は典型的な現場共謀であるから,共謀が否定されることはないだろう。なお,共謀の認定には意思連絡が必要であるところ,具体的な謀議行為がなくとも単なる目配せ程度でも肯定されることがある。本問もそのパターンに該当するだろう。共謀に基づく実行行為が肯定された時点で,違法が連帯することになる。そして,最後に誤想防衛について論じることになるわけである(※21)
 4 相当性
   それでは,相当性の議論に移ろう。刑法の答案の場合,行為者から論じていくのがセオリーであるから,まずは危険な行為をした乙の罪責から論じていくべきである。
   相当性は,前述したとおり必要性の議論と相当性の議論とに分けることのできる法概念である。そして,必要性が否定される場合というのは事例問題において通常考えられないから,検討するにしても一言で終わらせて相当性の議論に移るのが賢明であろう。
 さてその相当性である。相当性は「当該具体的事態の下において当時の社会通念が防衛行為として当然性,妥当性を認め得るもの」であると定義される(※22)から,その判断は畢竟,判断する人の常識に委ねられる。そこにこそ,相当性の議論の難しさがあるといえよう。
   もちろん,社会通念だからといってフリーハンドの議論であってはならない。あくまで,指針となる判断要素を適切に把握する必要がある。ここで一般的に挙げられるのが,①武器対等の原則,②侵害者と防衛行為者の身体的条件,③侵害行為の態様,④防衛行為の態様,⑤侵害排除のための代替手段の有無である(※23)。そして,事例問題においては上記の要素に該当するような事情が大量に散りばめられているのであるから,これを丁寧に拾って評価していけば,高得点を得られることは間違いない。このような規範的要件というのは非常に当てはめが難しいけれども,難しいからこそ体得すれば合格に近づくのである。
   さて,本問ではどうか。まず,①甲及び乙もAも素手であるから,武器対等の原則からすれば相当性が肯定されよう。②Aは52歳の男性であって高齢ではあるものの体力があるといえる一方,甲は50歳の女性であり通常は非力であると考えられるから,28歳の男性で力があると考えられる乙と共同でAを押さえつけたとしても,それだけで不相当であるとはいえない。③Aはふらつく足で甲を殴ろうとしたのみであるから,侵害行為は軽いものであると評価できるといえるものの,従前のAの酒乱具合からすればその後の苛烈な暴行は想像に難くないから,侵害行為の態様としては激しいものであると考えることも可能である。④単に上半身や下半身を押さえつけるだけであれば生命に対する危険性は乏しいものの,人体の枢要部である頸部を押さえつける行為は相手を窒息死させる危険性がある行為であるから,全体として考えれば侵害行為に対して過剰な防衛行為であると考えられよう。⑤最後に,甲及び乙は,Aが暴れないようにロープで緊縛するなどしていたことがあり,そちらの方が頸部を押さえるよりも危険性が低いのであるから,今回もそれによれば足りたと考えられ,しかも実際にロープで縛りあげているのであり現実的に採りえない行動ではなかったといえるし,ロープを使わずとも,そのままAが眠るまで押さえつけるということも過去に成功していた以上は採り得たといえよう。
 これらの事情を考えれば,本件で相当性を肯定するのは困難であるといえよう。
 5 違法の連帯
   本来であれば,そのまま乙の窃盗罪の罪責について論じるのが答案上の流れであるものの,甲の誤想防衛について論じるのが便宜であるため,先に甲の罪責を検討することにする。
   甲の罪責を検討する上で欠かせないのは,違法の連帯,という議論である。違法の連帯とは,違法行為に協力した場合には協力者の行為も違法であると評価される,というものである(※24)。これは,広義の共犯における制限従属性説を前提としたものであり,これに対して責任は個別に検討されることになる。もっとも,行為無価値論を前提とする限り,行為者の主観的認識の違いにより違法の有無が相対的に決せられることになる(※25)。これは違法の本質を法益侵害に求める結果無価値論からは導かれない結論なのであって,規範に違反した行為をしたという点を違法の本質とする行為無価値論の特徴の一つであるといえるだろう。
 さてそうなると,誤想防衛では責任故意が阻却されることになるのであるから,仮に過剰防衛によって違法が連帯することになったとしても,責任が個別に判断される以上,その者は何らの罪責も負わないことになるわけである。本問も,甲は過剰性を認識しておらず,その認識としては正当防衛の要件を完全に充足していたのであるから,一種の誤想防衛として責任故意が阻却されることになるだろう。
 ここで注意されるべきは,誤想防衛と誤想過剰防衛の区別である。誤想防衛とは,その者の頭の中では眼前の状況が正当防衛であることを意味するのであるから,過剰性を認識していない以上,その者の頭の中では相当性が充足されていることになるわけであって,これは一種の誤想防衛であると評価できることになる。一方,誤想過剰防衛とは,その者の頭の中では眼前の状況が過剰防衛であることを意味するのであり,過剰性の認識自体はあることになる。この点を誤ると頓珍漢な議論になるため,十分な注意が必要である。
   最後に問題となるのは,甲について何らの罪責も負わないことになるのかである。誤想防衛による責任故意阻却説によれば,論理上の難点はあるけれども,死の結果発生に関する予見可能性さえあれば過失致死罪になるとされる。過失致死罪を成立させるならば,その点の論述を忘れてはならないだろう。

(※6)50選上101頁以下〔松井芳明〕。
(※7)井田総論314頁以下。
(※8)最決昭和52年7月21日刑集31巻4号707頁。
(※9)50選上79頁〔栃木力〕。なお,栃木判事は司法研修所の現所長である。
(※10)この判例の批評として面白いものに,高橋則夫「急迫性の判断構造」研修837号3頁以下がある。刑法総論の奥深さを味わえることだろう。
(※11)正当防衛論については,井田良「正当防衛をめぐる議論の現状」季刊刑事弁護96号10頁以下に詳しいので,一読を推奨する。また,刑事弁護を志す方は,井田良ほか「座談会 正当防衛の成否は何で決まるのか」季刊刑事弁護96号44頁以下も読んでおくとよいだろう。
(※12)なお,本決定には退避可能性の議論も影響しているように思われる。退避可能性については,佐藤文哉「正当防衛における退避可能性について」『西原春夫先生古稀祝賀記念論文集第1巻』(成文堂,1998)242頁以下参照。なお,髙橋直哉「正当防衛状況の判断」法学教室453号10頁以下。
(※13)以上,永井敏雄「量的過剰防衛」『現代裁判法体系30〔刑法・刑事訴訟法〕』(新日本法規,1999)132頁以下。
(※14)この侵害の継続性については,最判平成9年6月19日刑集51巻5号435頁を参考にしてほしい。
(※15)実はその出自は古く,因果的共犯論をドイツから本邦に輸入した平野龍一博士により,その議論の萌芽は示されていたのである(平野龍一『刑法 総論Ⅱ』(有斐閣,1975)343頁)。
(※16)共謀の射程論について,因果関係論における危険の現実化説とパラレルに考える見解が有力である(橋爪隆「共同正犯をめぐる問題⑷ 共謀の射程について」警察学論集70巻10号160頁以下)。
(※17)すべての構成要件を充たしていることを構成要件充足性ということがある。これは団藤重光博士からの伝統であり,大谷實教授に引き継がれている。もっとも,最近は充足性という言葉はあえて使われないようである。
(※18)司法研修所検察教官室『検察終局処分起案の考え方(令和元年版)』25頁以下。
(※19)二人組の共謀共同正犯の場合を想像してもらえれば足りる。つまり,実行行為者は単独正犯に準じて検討し,共謀者は共同正犯として論じるわけである。本文はこのことを示しているに過ぎない。
(※20)井田総論96頁以下。
(※21)なお,誤想防衛で責任故意が阻却される場合,それは責任阻却事由であるから,まずは構成要件要素としての故意を検討しなければならないように思われる。しかし,その場合に暴行罪の故意があるとした場合,行為無価値論を前提とする以上は,誤想防衛について過失致死罪に問うことはできないはずなのである。この辺りは非常に難しい問題であり,これを解決する唯一の道は消極的構成要件要素の理論を採用することであるように思われる。実際に起案する場合には,この辺りには目をつぶり,共謀に基づく実行行為を認定し終えてから誤想防衛の問題を検討すれば足りようか。
(※22)最判昭和24年8月18日刑集3巻9号1465頁。
(※23)武器対等の原則を唯一絶対の指針とし,これを形式的にではなく実質的なものとして捉える見解も有力である(50選上106頁以下〔松井芳明〕)。
(※24)井田総論388頁。
(※25)井田総論485頁以下。


第4 死者の占有
 1 議論状況
   次に論じられるべきは死者の占有である。これは,窃盗罪における「窃取」概念の論点であるから,そこに引き付けて検討されなくてはならないといえる。このように,条文の文言に照らして論点を考えることは,法解釈において最重要の作法であるから,常に気を配らなくてはならない。
   死者の占有という論点は,被害者を死に至らしめた者が,被害者の死亡後にはじめて領得意思を生じた場合に顕在化する。被害者を死に至らしめた者以外が同人から財物を持ち去った場合,被害者は死んでおり占有を観念できないから,単なる占有離脱物横領罪となる。そして,この場合と平衡を保つために,被害者を死に至らしめた者が事後的に領得意思を生じた場合にも死者の占有を認める必要はない,というのが有力説であるとされている(※26)
 一方,判例は上記の有力説とは異なる結論を採用する。ここで重要なのが,判例は決して死者の占有を肯定しているわけではない。最判昭和41年4月8日刑集20巻4号207頁は,あくまで「被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなう」としているのである。したがって,判例実務の見解に立脚する場合,死者の占有が肯定されるとすることは誤りである。
 2 要件論
   それでは,被害者の生前有していた占有が保護されるには,どのような要件が必要になるのであろうか。この点,一般的には①被害者を死に至らしめたこと,②被害者から財物を持ち去ったこと,③①と②が時間的場所的に近接していること,が必要であるといわれている。通常の問題であればこれで足りるであろう。そして,故意の対象は構成要件該当事実なのであるから,①から③までを認識認容していることを示してようやく故意が認められることになる。この点を的確に示している答案は皆無であったため,十分な注意を促したい。
   さて,本稿ではこの議論をもう少し先に進めてみたい。ここで注目されるべきは,東京高判昭和39年6月8日高刑集17巻5号446頁である。この裁判例では,被害者の死亡から財物の奪取まで4日の開きがあったことが問題になり,結果として窃盗罪の成立を肯定した。もちろん,死者の占有を肯定したのではなく,被害者の生前の占有が保護に値するとしているのである。
 しかし,先ほどの要件から考えてみると,③を満たさないのではないだろうか。4日という時間的な開きが,時間的近接性を基礎づけるものとは考えにくい。では,この裁判例の結論は誤りなのであろうか。私としてはそれにも異論を唱えたい。
 それでは,どのように考えるべきか。実はこの裁判例では,被害者は自室で殺害されており,問題となった財物も被害者の占有が残っているかのように放置されていたという特殊事情があったのである。これを例外のための要件と位置付けることも可能ではあるだろうが,むしろこれを統一的に捉え直してみたい。すなわち,③の要件について,③´社会通念上被害者の生前の占有を保護すべきと認められる事情があること,と構成し直すのである。確かに,かなり漠然としてしまうから基準としての明確性は損なわれてしまうかもしれない。しかし,このような規範的要件は刑法においては数多くみられるし,死者の占有が問題となる場面では「犯人自らが被害者を殺害した被害者が占有する財物を占有離脱物に変えたのに,そのことにより犯人が有利に扱われて刑法による占有保護が否定されてしまう(殺害と財物取得のわずかな時間的な先後関係の違いで占有保護が左右されてしまう)のは不当であるとする考え方がある」(※27)とされているのであるから,その問題意識を端的に要件に落とし込んでしまうべきであるとはいえるはずである(※28)
 無論,上記の見解は私見であるから,答案上で展開するのは避けるべきであろう。解釈論としては考えられなくはないことを示してみただけである。
 3 本件の処理
   現金15万円が「財物」に該当することは疑いない。また,①乙はAを死亡させており,②乙はAが甲に内緒で保管していた現金15万円を持ち出しており,そして③Aの死亡と現金15万円の持ち出しとは約30分しか離れておらず場所も同じA方居室であるから時間的場所的に接着しているものといえるだろう。したがって,現金15万円に関するAの生前の占有が保護されることになり,これを持ち出しているのであるから「窃取」に該当することになる。
 乙は自分がAの頸部を強く締めすぎたから死んだと考えており,その上で逃走資金のために現金15万円を持ち出しているのであるから,①から③の認識認容もあるといえよう。そして,逃走資金として持ち出している以上は,不法領得の意思も認められることになる。不法領得の意思を無視している人もいたが,その事情も問題文には示されているから,これを考慮しないのは悪手であろう。
 4 親族相盗例?
 出題趣旨を見ると,親族相盗例に触れることができれば高得点が得られたとの指摘がある。なるほど,確かに本件のような親族間の死者の占有が問題となる場合には,相続人が誰であるか,つまり本件の現金の所有者が誰であるかによってその適用の有無が変わり得るから,論じる実益があるといえよう。しかし,それならば問題文で明示しているはずであるし,わざわざ問題文からは明らかではないなどと言及しないはずである。
 思うに,この点は作問者としても予想外のことだったのではないだろうか。そうであるならば,30行指定がある中で,あえてこれに触れる実益があるとは思われない。もちろん,実際の事件であれば,必ず事実認定をしなくてはならない点であるし,おそらく弁護人の弁護方針となることであろうから,検討しなくてよいということにはならない。しかし,これはあくまで入学試験であり,畢竟,合格さえしてしまえばよい。そのためには,本項で中心的に検討した論点を必要十分に論じれば足りるはずなのである。

(※26)井田各論216頁以下。
(※27)井田各論216頁。
(※28)なお,井田各論216頁では,「どの程度の時間が経過すると「死亡直後」とは言えなくなるのかが問題となる」という問題意識を持ちつつ,「具体的な状況により判断が異なってくる」としているのであるから,特別の事情が認められる場合には時間的場所的接着性の幅が広がるものと考えているのだと思われる。

以上

2020-05-14(Thu)

【ロー過去】慶應ロー2016年度民事訴訟法

今回は,慶應ロー2016年度民訴です。

私が受験する前年度の問題ですので,過去問演習で一番初めに解いた記憶があります。

そして,慶應ローってもしかしてムズいんじゃね?やばくね?と思った記憶もあります。

割と本気でやばいと思っていたことは,当ブログが2015年の一時以来全く更新がなくなってしまったことからも伺えます。

そういえば当ブログが,それまでの趣味活動を垂れ流すブログから司法試験受験ブログに大転換したのもこの時期ですね(2016年7月9日の記事参照)。

そんな思い入れがある(思い入れがあるとは言っていない)問題です。

≪問題≫

【事例】
 Xは,Yが運転する自転車に追突されて路上に転倒し,それによって胸骨と腰骨を骨折するなどしたために,約3週間の入院治療を受けることとなった。そこで,Yを被告として不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを提起した。Xは,この訴訟において,入院治療費100万円と慰謝料200万円の合計300万円を請求した。

【設問】
 以下の各問について論じなさい。なお,問1と問2は相互に関連しない。

問1 裁判所は,Xの被った損失は,入院治療費150万円,慰謝料100万円であると認定し,Yに250万円の支払いを命ずる判決をした。この判決に,訴訟法上の問題はあるか。

問2 裁判所は,Xの請求をすべて認め,Yに300万円の支払いを命ずる判決をした。Xは,この第1審判決に対し,入院治療費をさらに150万円追加するために控訴することができるか。


問題文はとてもあっさりしているのに,論じることは膨大です。

今では慶應ローは出題趣旨が公開されていますが,この年はまだ公開されていないので,

正直何を論じてほしいのか的確に把握できているのかは怪しいです。

まあ受験生であれば書くかなあというところは取り上げて書いたつもりです。

しかし,司法試験が終わってから民訴は全然やっていなかったので,何もかも忘れていますね……。

この下に書いてあることは信用しない方がいいかもしれません。

何を信じるかは読者次第です。

自分の身は自分で守りましょう。

≪答案≫

第1 設問1
 1 総額を250万円として一部認容判決をしたことは,処分権主義に反しないか。
 処分権主義とは,訴訟の開始,終了,審判対象の特定を当事者が自由に決定することができる原則をいう(※1)。これは,訴訟物たる権利関係は,実体法上,私的自治の原則の下にその主体たる当事者の自由な管理処分に委ねられるところ,訴訟法上もこれを反映したものであり(※2),被告に対して防御対象を提示する手続保障として機能する(※3)。そこで,裁判所がなした判決が処分権主義に抵触するかどうかは,①原告の合理的意思に合致し,②被告の不意打ちとなるかどうかによって判断する。
 本件では,Xが総額300万円の損害賠償請求を申し立てているのに対し,裁判所は総額250万円であるとして一部認容判決をしている。①Xの請求は金銭的請求であり,満額が認められなければ無意味となるような性質の請求ではないから,Xとしては請求の全部が棄却されるよりは一部でも認められた方がよいと考えるのが自然である(※4)。したがって,Xの合理的意思に反しない。また,②後記のように入院治療費と慰謝料のそれぞれに対する損害賠償請求権は訴訟物として1個であるところ,Yの攻撃防御の対象は訴訟物全体に及ぶから,同訴訟物内でなされた判決である以上,Yにとって不意打ちとならない(※5)
 したがって,裁判所が総額250万円の一部認容判決をしたことは,処分権主義に反しない(※6)
 2⑴ 入院治療費を150万円と認定したうえで判決をしたことは,処分権主義に反しないか。
 前記の処分権主義の根拠からすれば,当事者の申立事項が裁判所による審判の対象となるため,裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることができず(246条),申立事項以外のことについて判決をすると処分権主義違反となる。
 そこで,本件では,Xが入院治療費を100万円と主張して申し立てたことで,訴訟物がこの100万円の損害賠償請求権に限定されるかが問題となる(※7)
 損害賠償請求権の訴訟物の範囲は,原因行為と被侵害利益から判断する(※8)。Xは,入院治療費のほかに慰謝料についても請求しているが,両者は,Yが運転する自転車がXに追突するという同一の事故により発生しているから,原因行為は共通である。また,入院治療費と慰謝料とは,財産上の損害と精神上の損害で性質は異なるものの,同じXに対する人損であるから,被侵害利益も共通している。そうすると,両者に係る損害賠償請求権は別個独立のものではなく,あわせて1個の訴訟物となる(※9)(※10)
 したがって,裁判所は,Xが申し立てた入院治療費と慰謝料の双方にかかる請求の総額である300万円の中で,各損害の額を認定した上で総額を決めることができる。よって,裁判所が入院治療費を150万円として判決をしても,Xの申し立てていない事項について判断したものではないから,処分権主義に反しない。
  ⑵ そうだとしても,弁論主義に反しないか(※11)
 弁論主義とは,裁判資料の収集提出を当事者の権能かつ責任に委ねる原則をいう(※12)。これも,私的自治の原則を権利関係の判断のための裁判資料の収集提出について適用したものである(※13)。その結果,当事者が自由に処分できる権利関係を直接に基礎づける事実,すなわち主要事実については(※14)(※15),私的自治の反映として,当事者による主張がなされない限り,裁判所は,これを判決の基礎とすることができない(※16)
 本件で,訴訟物は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)であるから,主要事実として「損害」の発生を当事者が主張する必要があり,ここでは損害の額まで主張される必要がある(※17)。そうすると,Xは入院治療費が100万円と主張しているから,100万円の限度では当事者の主張がなされているが,100万円を超える部分については主張がされていない。
 したがって,裁判所が,入院治療費を150万円と認定することは,当事者が主張していない事項を裁判の基礎とするものであり,弁論主義に反する(※18)。もっとも,Xが黙示的に150万円部分まで主張しているとみられる事情がある場合には,弁論主義に反しない(※19)
 3 よって,本件で裁判所がした判決は,Xの黙示的な主張が認められない限り,不適法である。
第2 設問2
 1 Xのする控訴(民訴法281条1項)は,控訴の要件を満たすか。
 2⑴ 控訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,控訴をする者に,控訴を提起するにつき正当な利益(以下「控訴の利益」という。)があることが必要である(※20)。そして,基準の明確性の観点から,当事者の申立てと判決とを比較し,前者が後者より大きい場合には控訴の利益が認められる。
 これを本件についてみると,原審は,Xが300万円の支払請求を申し立てていたのに対して300万円の支払を命ずる判決をしているから,Xの申立てと判決とが一致するため,Xには控訴の利益がないようにも思われる。
  ⑵ しかし,本訴の既判力により別訴が遮断される場合には,別訴で主張できるものも,同一訴訟手続内で主張しておかないと,訴訟上主張する機会が奪われてしまうという不利益を受けるので,それらの請求については,同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要がある。また,この不利益は,全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決を妨げることによってしか排除することができない。そこで,このような場合には,例外的に,訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴の利益が認められるべきである(※21)(※22)
  ⑶ 本件では,Xが既に請求している損害賠償請求権と同一の請求権について損害額を拡張するものであるから,300万円の請求は一個の債権の数量的な一部を求める一部請求である。そして,一部請求においては,それが当該一部についてのみ判決を求める趣旨であることが明示されていないときには,残額部分も含めて1個の訴訟物として扱われるから,Xは150万円を別訴で請求することは既判力に抵触して許されないこととなり,150万円について訴求する機会を失う。
 したがって,Xには,例外的に,訴えの変更によって150万円部分を拡張する機会を与えるべく,控訴の利益が認められる。
 3 よって,Xは,その他の控訴の要件を遵守していれば,150万円を追加するために控訴することができる。

以 上


(※1)「民事訴訟では,当事者が審判対象たる権利関係について処分権を有していることを反映して,当事者が訴えの提起,審判対象の特定,審判対象の実体的処分および訴訟の終了について自由に決定できるとの原則を認めている。これを広く処分権主義と呼ぶが,そのうち,審判対象を特定し,その上限を明示する権限については,申立事項に関する処分権主義,あるいは申立事項拘束主義と呼ばれる(246条)。私的自治原則の訴訟手続への反映である。」山本和彦『Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕』(商事法務,2014年)104頁
(※2)「訴訟物たる権利関係は,実体法上は,私的自治の原則の下にその主体たる当事者の自由な管理処分に委ねられる。訴訟法上も,このことを反映して,いかなる権利関係について,いかなる形式の審判を求めるかは,当事者の判断に委ねられる。これが訴訟物についての処分権主義であり,246条がこれを規定する。」伊藤眞『民事訴訟法〔第6版〕』(有斐閣,2018年)219頁
(※3)被告の手続保障や被告の不意打ち防止を,処分権主義の根拠として位置づける論証などがありますが,訴訟物が原告の一存によって決まる以上,処分権主義の根拠は原告の意思尊重にのみ求められ,被告の手続保障は処分権主義の根拠ではなく機能として導かれるものと考えるのが妥当ではないかと思います。例えば,前掲伊藤219頁は「処分権主義の根拠は,訴訟物たる権利関係についての当事者の処分権に求められるが,その機能としては,被告に対して防御の目標を提示する手続保障の役割をもっている。」と説明していますし,高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下)〔第2版補訂版〕』(有斐閣,2014年)234頁は「弁論主義がそうであるように、ドイツ=日本法の処分権主義も、根拠は当事者意思(私的自治)の尊重であるが、機能は不意打ち防止につらなる。」と説明しています。
(※4)「当事者の申立事項の一部のみを認容する判決をなしうる根拠は,申立てに対する応答として,当事者は必ずしも全部認容か無かのいずれかの応答のみを求めるものではなく,むしろ通常は,全部が無理ならば一部の認容でも欲している,と解されるところにある。したがって,個々の場合に一部認容をなしうるか否かは,原告の意思を客観的・合理的に解釈して決せられるべきである。」藪口康夫『ロースクール演習民事訴訟法』(法学書院,2015年)30-31頁
(※5)このあてはめは正直「書きすぎ」です。金銭請求で一部認容判決が処分権主義違反とならないことは,ほぼ争いにならないと思われるため,全体的に軽い論述にとどめておいて,損害論の問題や設問2に紙面と時間をまわした方が得策です。そういうことも考え,本番では,試験時間との兼ね合いでどこまで書くかを見極める必要があります。
(※6)「訴訟物の範囲に関してしばしばも問題となるのが,いわゆる一部認容の判決である。債権額は,債権の内容をなすものであるから,金銭給付請求などに対して,請求の量的範囲を超えて給付を命じることは処分権主義違反にあたる。逆に,量的範囲内でその一部の給付を命じ,残部の請求を棄却することは処分権主義に抵触するものではない。これが一部認容判決と呼ばれる。また,一部認容は,このような量的範囲に限られず,請求の質的一部を認容することも,処分権主義に違反しないものと解されている。」前掲伊藤222頁(注:下線は清水)
(※7)「交通事故訴訟では、訴訟物をどう考えるかという問題がある。交通事故においては、一つの事故によって、多くの「損害」が生じうる。まず、着ていた衣服の破損、腕時計の破損などの物損が生ずる。人に対して生ずる人損では、医療機関での治療費などの積極損害、休業に伴う逸失利益という消極損害、および精神的損害に対する慰藉料がある。このように、一つの事故からも「損害」がいくつかに細分化され得るが、どこまでを訴訟の最小基本単位(訴訟物)と捉えるかが問題となる。」「考え方は分かれる。第一に、物損において、損害の生じた物(車、時計、衣服、等々)毎に訴訟物が別個になる、人損においても、積極損害、消極損害、慰藉料で三個の訴訟物に分かれるという考え方がある。」「第二において、積極・消極両損害を合わせての財産上の損害と慰藉料という精神上の損害に分けて、訴訟物は二個とする考え方もある。慰藉料の特殊性に基づく考え方であるが、裁判実務の中の後述するいわゆる慰藉料の補完的機能にそぐわないという難点がある。」「第三に、人損で一個という説がある。物損でも一個という考え方もあり得るし、物損は損害の生じた物毎に別だという考え方もある。」「第四に、紛争解決の一回性の理念から、物損・人損を含め一個の事故で訴訟物は一つという考え方がある(新堂三三五頁)。」前掲高橋(下)254頁
(※8)「それでは,判例は一般論として訴訟物の単一性をどのような基準で判断しているものであろうか。参考判例①[注:最判昭和48年4月5日民集27巻3号419頁]は「原因事実および被侵害利益を共通にする」点を重視し,原因事実(事故等の単一性)と被侵害利益(人損か物損か等)をメルクマールとして理解しているように見える。そのような理解を確認するものとして,参考判例②[注:最判昭和61年5月30日民集40巻4号725頁]がある。これは,原告の撮影出版した写真について同意を得ずにモンタージュ写真を作成発表したとして,被告に対し,著作財産権(複製権)および著作者人格権(同一性保持権)を侵害したとして合計50万円の損害賠償請求をしたところ,判決は「同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であっても,著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて,両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは,訴訟物を異にする2個の請求が併合されているものであるから,被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである」とした。ここからも,原因事実と被侵害利益の同一性が求められている(原因事実が同一であっても被侵害利益を異にすれば訴訟物は別である)ことが明らかにされている。」前掲山本99-100頁
(※9)「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は一個であると解すべきである。」最判昭和48年4月5日民集27巻3号419頁
(※10)「当裁判所は、このような場合、原告主張額を超えて慰藉料を算定しても、賠償の総額において原告が本件事故による賠償額として主張したところを超えない限り差支えないと考える。」「けだし、不法行為に基づく損害賠償請求権の特定は、加害行為と被害法益との同一性の判断によるべきものであるが、慰藉料請求権を基礎づける精神上損害となるものは、損害の権利に過ぎず、「精神」を法益とすることによつてのみ発生するものではない。もとより「名誉」等の精神的存在も独立の法益たることは民法七一〇条の規定するところであるが、本件に即して言えば、同条の意味は、原告深井の「身体」が傷害されたことに「因りて生じたる損害」 (七〇九条)としては、財産上損害ばかりでなく「財産以外の損害」すなわち精神上損害なるものも観念しえ、これについても賠償責任が及ぶことを規定しているに止まり、同人の「身体」の外に「精神」をも被害法益であると規定しているわけではない。従つて他の法益侵害(例えば車輛破損)の主張を伴う場合にこれをも合せて一個の不法行為ありと見うるか否かは暫らく措き、少くとも、本件のように、すべての損害の発生が遡つて法益侵害としての「身体傷害」の事実に帰する旨主張せられている場合には、請求の基礎をなす不法行為は一つ存するだけであり、因つて生ずる損害賠償請求権も一個であり、各種損害費目が主張せられていても、それは「身体傷害」に因る損害の範囲と内容とを具体化するための、損害算定上の資料として主張せられているものと解する外はない。」東京地判昭和42年10月18日判時496号15頁
(※11)「理論としては、申立事項のハードルはこれによって乗り越えることができるとしても、認定事実の基礎となる事実が当事者の主張によって弁論に上程されているかという弁論主義のハードルが存在することに注意しなければならない(慰藉料における弁論主義は、実務上、厳格ではない)。」前掲高橋(下)256頁
(※12)「弁論主義とは,訴訟物たる権利関係の基礎をなす事実の確定に必要な裁判資料の収集,すなわち事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則である。」前掲伊藤309頁
(※13)「訴訟物たる私人間の権利関係は,私的自治の原則に服し,当事者の自由な処分に委ねられる。弁論主義は,その権利関係の判断のための裁判資料の収集について私的自治の原則が適用されることを根拠としたものである。」前掲伊藤310頁
(※14)「弁論主義の根拠を私的自治に求める以上,その対象も権利関係の発生・消滅・変更の原因となる主要事実に限られるという結論が導かれる。」前掲伊藤312頁
(※15)弁論主義が適用される事実の範囲を主要事実に限ることの理由付けについて,間接事実にまで適用すると自由心証主義に反するというものがありますが,これは間接事実に適用することに消極的な理由付けにすぎず,主要事実に限ることの積極的な理由付けにはなっていません。したがって,この理由付けを書くこと自体は誤りではないですが,弁論主義の本質と結び付けた理由付けをすべきです。もっとも,本問では,間接事実への適用が問題となる事案ではないため,弁論主義の適用される事実の範囲について大展開する必要はなく,簡潔に流すべきでしょう。
(※16)「弁論主義の具体的内容は,以下の3つに区分される。第1に,権利関係を直接に基礎づける事実,すなわち主要事実については,当事者による主張がなされない限り,裁判所は,これを判決の基礎とすることはできない。この原則から,主張責任の概念,および判決の基礎となる事実によって構成される訴訟資料とその認定のための証拠資料の区別などが派生する。」「弁論主義の第1の内容,すなわち主要事実についての当事者の提出責任は,その事実にもとづく権利関係について私的自治が認められることを反映している。」前掲伊藤309,311頁
(※17)「民法709条の不法行為による損害賠償請求の要件事実は,一般に次のとおりである。」「請求原因は,① Xが権利または法律上保護されるべき利益を有すること ② Yが①の権利または利益を侵害したこと ③ ②についてYに故意があることまたは過失があることを基礎づける評価根拠事実 ④ Xに損害が発生したことおよびその額 ⑤ ②の加害行為と④の損害との間に相当因果関係が存在すること である(①から⑤まですべて必要)。」大島眞一『完全講義民事裁判実務の基礎〔第3版〕上巻』(民事法研究会,2019年)467頁(注:下線は清水)
(※18)損害額の認定について,前掲注11に引用したように,「慰謝料における弁論主義は、実務上、厳格ではない」とされています。前掲注10に引用した裁判例は,この点について「精神上損害の評価すなわち慰藉料額の算定は……裁判所が自由な心証によつて定めうるのであり、額を定めるにつき勘酌すべき事情について当事者の主張を要せぬばかりでなく、その額の算定自体についても当事者の主張に拘束されぬものと解すべきであつて、その限度では弁論主義の適用の外にあることになる。」と説明しています。したがって,仮に本問が慰謝料を250万円と認定したという問題であれば,弁論主義違反とはならない可能性が出てきます。しかし,本問はあくまで入院治療費という財産上の損害について問うているものです。そこで,前記裁判例の説明を,慰謝料以外の財産上の損害についても援用することができないかと思うかもしれませんが,これはできないと考えた方がよいでしょう。この裁判例でも指摘されているように,慰謝料は「裁判所が自由な心証によつて定めうる」性質のものであるからこそ,弁論主義の適用外となると言っているであり,「裁判所が自由な心証によつて定め」ることができない損害については,原則通り弁論主義の適用があるはずです。この裁判例でも,「他の財産上損害において、その細部の費目の主張と証拠によつて認定せられるべき額の主張とが分離せられず、証拠により厳密に額を認定せられるのとは異つて」という留保が付せられています。そうすると,財産上の損害である入院治療費については,当事者の主張として損害額の主張が出ていなければ,それを裁判所が勝手に認定することはできないということになります。
(※19)黙示的な主張という点ですが,司法研修所『改訂紛争類型別の要件事実』(法曹会,2007年)3頁は,売買代金支払請求について,「Xの主張した代金額と証拠により認定できる代金額との間に相違がある場合,Xは通常は契約の同一性を損なわない範囲内で異なる代金額をも黙示に主張していると考えられるから,その範囲内であればXの明示の主張と異なる代金額による売買契約の締結を認定することは差し支えない。」としています。これを,本問の不法行為に基づく損害賠償請求にも援用すると,Xが黙示的に150万円部分まで主張していると認められるのであれば,裁判所が入院治療費を150万円と認定してもよさそうですし,このように認定しても前掲注18とは矛盾しないことになります。もっとも,黙示的に主張が出ているかの判断は,この問題文の事情からは判断できません。実務上は弁論準備手続などで裁判所側から当事者に対して主張の意味内容の確認が行われることになるのではないかと思います。
(※20)「上訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,不要な上訴は排除しなければならない。そこで,上訴を提起する正当な利益を有する者による上訴のみが適法な上訴とされる。この利益のことを「上訴の利益」といい,控訴については「控訴の利益」という。」三木浩一ほか『民事訴訟法〔第2版〕』(有斐閣,2015年)604頁
(※21)「全部勝訴の判決を受けた当事者は、原則として控訴の利益がなく、訴えの変更又は反訴の提起をなすためであっても同様であるか、人事訴訟手続法九条二項(別訴の禁止)、民事執行法三四条二項(異議事由の同時主張)等の如く、特別の政策的理由から別訴の提起が禁止されている場合には、別訴で主張できるものも、同一訴訟手続内で主張しておかないと、訴訟上主張する機会か奪われてしまうという不利益を受けるので、それらの請求については、同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要があり、また、この不利益は、全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決の確定を妨げることによってしか排除し得ないので、例外として、これらの場合には、訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴をする利益を認めるべきである。」「そして、その理由を進めて行くと、いわゆる一部請求の場合につき、一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨か明示されていないときは、請求額を訴訟物たる債権の 部として訴求したものと解すべく、ある金額の支払を請求権の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後、別訴において、右請求を請求権の一部である旨主張しその残額を訴求することは、許されないと解されるので(最高判昭和三二年六月七日民集一一巻六号九四八頁参照)、この場合には、一部請求についての確定判決は残額の請求を遮断し、債権者はもはや残額を訴求する機会を失ってしまうことになり、前述の別訴禁止が法律上規定されている場合と同一となる。したがって、黙示の一部請求につき全部勝訴の判決を受けた当事者についても、例外として請求拡張のための控訴の利益を認めるのが相当ということになる。」名古屋高裁金沢支判平成元年1月30日判時1308号125頁
(※22)「形式的不服説によれば,黙示の一部請求を全額認容された当事者に控訴の利益が認めらるかは,この場合が前記例外[原判決が確定した場合に当事者に失権効が働くような場合には,例外 的に,全部勝訴の当事者にも控訴の利益を認める]にあたるかどうかによって決まる。」「法律上別訴を提起することが許されず,当該訴訟手続内での訴えの変更によらなければ残額を請求できないとして,例外的に控訴の利益を肯定すべき場合の一つにあたるとするのが多数説である……。」「それでは,形式的不服説において,当事者が原審で請求拡張しえたのにしなかった場合にも,請求拡張のための控訴の利益が認められるか。」「小室教授は,例外として請求拡張のための控訴が許されるのは原告が過失なくして残額の請求をなしえなかった場合に限られると される……。ただし,債権が法律上不可分な場合に一部請求を認めない見解に立って,右の場合に公訴の利益を認めないと実体的正義が害されるとするものである。この考え方では,一部請求につき判例通説の見解に立つと,一層例外の承認に厳しくなろう。なぜなら,原告が残部請求の存在を認識できる場合には,一部請求であることを明示しさえすれば残部の請求を遮断されることはないはずであって,請求認容の一審判決で紛争を終了させようとして不服を申し立てなかった被告を犠牲にしてまで,原告に請求拡張のための控訴を許す必要があるかは疑問となるか らである……。」「これに対して,前記多数説は,この場合にも控訴の利益を認めるもののようである。これは,権利実現のための裁判制度の利用の途をできるだけとざさないようにしようという考慮が背後にある。そして,前記の点は攻撃防御方法の提出,訴えの変更の制限において評価すべきことになろう……。」「黙示の一部請求における残部請求の遮断は,政策による制限というより当事者の意思による権利不行使の結果とみれなくもないから,別訴禁止が法定されている他の例外の場合と処理を異にすることには合理性がないわけではない。とはいえ,原審で 残部請求しえた場合を排除する立場では,原告が原審において残部請求の存在に気付いていたかという不明確な要素に控訴の適法性が左右されることになり……,控訴の利益の有無をできるだけ明確な基準によろうとする立場からは不都合な難点がある。」「なお,多数説によっても,原告が原審において残部を請求しないと釈明するなど,その原審における態度に基づき,控訴の提起が信義則違反あるいは権利濫用として許されない場合があることは否定されまい。」判タ735号293頁


2020-05-06(Wed)

【ロー過去】中大ロー2019年度民事訴訟法

≪問題≫

 次の【事例】を読み,下記の【設問】に答えなさい。なお,下記の【設問】における各問はそれぞれ独立したものである。解答用紙は,表面(30行)のみを使用すること。

【事例】
 XはYに対し500万円の貸金返還請求訴訟を提起して,500万円の貸渡しの事実を主張したが,Yはこれを否認し,仮定的に500万円は弁済したと主張した。これに対し,Xは弁済について否認した。

【設問】
問1 証拠調べの結果,裁判所は,Xが主張する500万円の貸渡しの事実は認定できないが,この主張にかかる貸金債権とは社会的事実として同一性があるとは認められない別個のXのYに対する600万円の貸金債権があるとの心証を形成した。この場合,裁判所は,Yに対し600万円の支払いを命ずる判決をすることができるか。

問2 証拠調べの結果,裁判所は,500万円の貸渡しの事実は認定できるが,弁済の事実は認定することはできないとの心証を形成した。他方で,貸金債権の弁済期から10年以上経過していることが判明した。この場合,裁判所は,消滅時効を理由としてXの請求を棄却する判決をすることができるか。

≪出題趣旨≫

 本問は,民事訴訟法における基本原則である「処分権主義」および「弁論主義」について正しく理解しているか,事例に即してこれらの基本原則を適切に用い正確に結論を導くことができるか,を問うものである。

問1 処分権主義の意義と当てはめ
 民事訴訟において,裁判所による審判を求めるかどうか,求めるとして何を審判対象とするか,どの範囲で審判を求めるか,の決定は当事者に委ねられている(処分権主義)。その結果,裁判所は,当事者が申し立てていない事項について,判決をすることができない(民訴法246条)。当事者が申し立てている事項(申立事項)は,審判の対象となるべき権利関係(訴訟物)と,それについての審判の形式を含み,訴えによって特定されることになる。
 本問における訴訟の訴訟物は,いわゆる旧訴訟物理論によれば「(XのYに対する)消費貸借契約に基づく500万円の貸金返還請求権」である。債権は同一当事者間に同一内容の権利がその発生原因を異にすることによって重複して存在しうることから,債権を訴訟物とする場合には,それを特定識別する事実(民訴規53条1項における「請求を特定するのに必要な事実」)として,権利主体(債権者),義務者(債務者),権利内容(権利類型と給付内容)のほかに,権利の発生原因事実が必要となる。したがって,Xは,たとえば①XはYに対して,平成○○年○月○日,500万円を貸し付けた,②XとYは,①に際し,弁済期(返還時期)を平成□□年□月□日と定めた,③平成□□年□月□日は到来した,との請求原因事実(主要事実)を主張しなければならない。しかし,Xがこれらの主要事実を主張したにもかかわらず,証拠調べの結果,裁判所は,①の主要事実を認定できないのであれば,Xの請求を棄却する判決をしなければならない。
 かりに,証拠調べの結果,このXのYに対する500万円の貸金債権とは発生原因事実を異にする(問題文では,このことを「社会的事実として同一性があるとは認められない」と表現している),XのYに対する600万円の貸金債権の存在が認められたとしても,裁判所は,Xが申し立てていない事項について判決をすることができないのであるから,Yに対し600万円の支払いを命ずる判決をすることは処分権主義に反する。

問2 弁論主義の意義と当てはめ
 弁論主義とは,判決の基礎となる資料(事実および証拠)の収集提出を当事者の権能かつ責任とする建前である。この弁論主義の内容のひとつとして,「裁判所は,当事者のいずれもが主張しない事実を判決の基礎としてはならない」(第1テーゼないし主張原則)というものがあり,ここにいう事実とは主要事実に限ると一般に解されている。主要事実とは,訴訟物たる権利法律関係の発生・消滅等という法律効果の発生に直接必要な事実であり,実体法上の法律要件として掲げられた事実(要件事実)に照応する事実である。
 本問において,抗弁事由である消滅時効における主要事実は「弁済期から10年が経過したこと」および「YがXに対して消滅時効の援用の意思表示をしたこと」であるが,これらの事実はいずれの当事者からも主張されていない。それにもかかわらず,裁判所が,消滅時効を認定し,これを理由としてXの請求を棄却する判決をすることは弁論主義(第1テーゼないし主張原則)に反する。


処分権主義と弁論主義に関する基本的な問題です。

民訴を少し勉強した人であれば,結論がどうなるかくらいは分かると思います。

そうすると,入試本番で差がつくポイントは,裁判所が判断できる範囲が申立事項に限られるとか,当事者から主張のない主要事実を判決の基礎とすることができないといった原則を,処分権主義や弁論主義の根拠に遡っていかに正確に論証することができるかという部分でしょう。

また,短いながらも事例として具体的事実が与えられているので,本問に即した検討がきちんとなされているかという点になるかと思います。

≪答案≫
1 (※1)問1で,裁判所が,Yに対し600万円の支払いを命ずる判決をすることは,処分権主義に反するため,許されない。
 処分権主義とは,訴訟の開始,終了,審判対象の特定を当事者が自由に決定することができる原則をいう(※2)。これは,訴訟物たる権利関係は,実体法上,私的自治の原則の下にその主体たる当事者の自由な管理処分に委ねられるところ,訴訟法上にもこれを反映したものである(※3)。その結果,当事者の申立事項が裁判所による審判の対象となるため,裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることができず(246条),申立事項以外のことについて判決をすると処分権主義違反となる。申立事項である訴訟物は,請求の趣旨及び原因によって特定される(※4)
 本問で,XのYに対する請求の訴訟物は,消費貸借契約に基づく貸金返還請求権である。Xは,その請求原因事実として,①金銭の返還の合意をしたこと,②金銭を交付したこと,③消費貸借契約が終了したことのそれぞれに係る具体的事実を主張して,前記訴訟物を特定することとなる(※5)。そして,これらの事実が認められない場合には,裁判所は,Xの請求を棄却しなければならない。ここで,裁判所が,Xの主張する貸金債権とは社会的事実として同一性があるとは認められない別個の貸金債権があるとの心証を形成したとしても,それは,Xの主張した前記事実とは別の事実に基づいて発生した債権である。そうすると,裁判所が心証を形成した貸金債権は,Xの主張した事実によって特定される貸金債権とは別個の債権であるから,Xが申し立てた訴訟物とはならない。したがって,裁判所は,処分権主義から,心証を形成した600万円の貸金債権について判決をすることができない。
 よって,裁判所は,Yに対し600万円の支払いを命ずる判決をすることができない。
2 問2で,裁判所が,消滅時効を理由としてXの請求を棄却する判決をすることは,弁論主義に反するため,許されない。
 弁論主義とは,裁判資料の収集提出を当事者の権能かつ責任に委ねる原則をいう(※6)。これも,私的自治の原則を権利関係の判断のための裁判資料の収集提出について適用したものである(※7)。その結果,当事者が自由に処分できる権利関係を直接に基礎づける事実,すなわち主要事実については(※8)(※9),私的自治の反映として,当事者による主張がなされない限り,裁判所は,これを判決の基礎とすることができない(※10)
 本問で,裁判所が認定しようとしている消滅時効の抗弁に係る主要事実は,ⓐ権利を行使することができる状態になったこと(民法166条1項2号),ⓑⓐから10年間が経過したこと,ⓒ援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたことである(※11)。しかし,Yからは,ⓐないしⓒのいずれの事実も主張されていない。したがって,裁判所は,これらの事実を判決の基礎とすることができない。
 よって,裁判所は,消滅時効を理由としてXの請求を棄却する判決をすることができない。

以 上


(※1)答案用紙の30行制限があるので,「第1 問1について」というタイトルなどは記載せず,1行目から本題に入りましょう。
(※2)「民事訴訟では,当事者が審判対象たる権利関係について処分権を有していることを反映して,当事者が,訴えの定期,審判対象の特定,審判対象の実体的処分および訴訟の終了について自由に決定できるとの原則を認めている。これを広く処分権主義と呼ぶが,そのうち,審判対象を特定し,その上限を明示する権限については,申立事項に関する処分権主義,あるいは申立事項拘束主義と呼ばれる(246条)。私的自治原則の訴訟手続への反映である。」山本和彦『Law Practice民事訴訟法〔第2版〕』(商事法務,2014年)104頁
(※3)「訴訟物たる権利関係は,実体法上は,私的自治の原則の下にその主体たる当事者の自由な管理処分に委ねられる。訴訟法上も,このことを反映して,いかなる権利関係について,いかなる形式の審判を求めるかは,当事者の判断に委ねられる。これが訴訟物についての処分権主義であり,246条がこれを規定する。」伊藤眞『民事訴訟法〔第6版〕』(有斐閣,2018年)219頁
(※4)「246条は,当事者の申立事項が裁判所による審判の対象となることを規定する。ここでいう申立事項は,訴訟物およびそれについての審判の形式を含み,訴状の請求の趣旨および原因によって特定される。裁判所は,申立事項の範囲内で申立てに理由があるか否かを審判しなければならないことが,処分権主義の帰結である。」前掲伊藤220頁
(※5)「確定期限による返還時期の合意がある場合の貸金返還請求権を発生させる要件は,次のとおりとなります。
 ア 消費貸借契約の成立
 (ア)金銭の返還の合意をしたこと(①)
 (イ)金銭を交付したこと(②)
 イ 消費貸借契約の終了(返還時期の合意とその到来)
 (ア)返還時期の合意をしたこと(③)
 (イ)イ(ア)の返還時期の到来(④)
 一方,当事者間に返還時期の合意がない場合には,イに代えて,
 イ’消費貸借契約の終了(催告と催告後相当期間の経過)
 (ア)アの債務の履行を催告したこと(③’)
 (イ)イ’(ア)の催告後相当の期間が経過したこと(④)
が要件となります。」司法研修所『新問題研究要件事実』(司法研修所,2011年)40頁
(※6)「弁論主義とは,訴訟物たる権利関係の基礎をなす事実の確定に必要な裁判資料の収集,すなわち事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則である。」前掲伊藤309頁
(※7)「訴訟物たる私人間の権利関係は,私的自治の原則に服し,当事者の自由な処分に委ねられる。弁論主義は,その権利関係の判断のための裁判資料の収集について私的自治の原則が適用されることを根拠としたものである。」前掲伊藤310頁
(※8)「弁論主義の根拠を私的自治に求める以上,その対象も権利関係の発生・消滅・変更の原因となる主要事実に限られるという結論が導かれる。」前掲伊藤312頁
(※9)弁論主義が適用される事実の範囲を主要事実に限ることの理由付けについて,間接事実にまで適用すると自由心証主義に反するというものがありますが,これは間接事実に適用することに消極的な理由付けにすぎず,主要事実に限ることの積極的な理由付けにはなっていません。したがって,この理由付けを書くこと自体は誤りではないですが,弁論主義の本質と結び付けた理由付けをすべきです。もっとも,本問では,間接事実への適用が問題となる事案ではないため,弁論主義の適用される事実の範囲について大展開する必要はなく,簡潔に流すべきでしょう。
(※10)「弁論主義の具体的内容は,以下の3つに区分される。第1に,権利関係を直接に基礎づける事実,すなわち主要事実については,当事者による主張がなされない限り,裁判所は,これを判決の基礎とすることはできない。この原則から,主張責任の概念,および判決の基礎となる事実によって構成される訴訟資料とその認定のための証拠資料の区別などが派生する。」「弁論主義の第1の内容,すなわち主要事実についての当事者の提出責任は,その事実にもとづく権利関係について私的自治が認められることを反映している。」前掲伊藤309,311頁
(※11)「新民法においては,債権の消滅時効の法律要件は,
【主観的起算点から5年の場合】
① 権利を行使することができる状態になったこと(新民法166条1項1号)
② 債権者が上記①を知ったこと(同上)
③ 上記②から5年間が経過したこと(同上)
④ 援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと
又は
【客観的起算点から10年の場合】
①’権利を行使することができる状態になったこと(新民法166条1項2号)
②’上記①’から10年間が経過したこと(同上)
③’援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと
となります。」司法研修所『新問題研究要件事実追補-民法(債権関係)改正に伴う追補-』(司法研修所,2019年)1頁


2020-05-03(Sun)

【ロー過去】中大ロー2020年度民法


≪問題≫

 次の【事実】を読み,下記の【設問】に答えなさい。

【事実】
Ⅰ 次の1から9までの事実があった。

1 Aは,プロの写真家として,東京都内で写真スタジオを営む傍ら,世界各地の様子を撮影し各種メディアや収集家に販売することを業としていた。Aは,10年前に購入したプロカメラマン用の高級カメラ甲(以下「甲カメラ」)を所有し使用してきたが,新機能を搭載した高級カメラ乙(以下「乙カメラ」)が新発売されたためこれを購入し,最近ではもっぱら乙カメラを持って世界中を撮影旅行している。
2 Bは,Aの友人であり,照明技術師として写真スタジオや劇場,テレビ局等で照明の仕事を請け負うことを業としていたが,Aが海外出張中はAの写真スタジオの管理を任されるとともに,Bが必要とするときはその写真スタジオを使用することや,スタジオの維持に必要な消耗品の購入をすることが認められ,Aから写真スタジオの鍵を預かって自由に出入りしていた。
3 Bは,Aが海外に長期撮影旅行に出ていたあるとき,仕事でたまたま知り合ったCから,「もうすぐ定年退職して時間ができるので,これからは趣味の写真をこれまで以上に楽しみたいと思っているのだが,自分が持っているカメラはアマチュア用の簡単なものなので,プロが使うような精密なものが欲しいと思っている。ついては,中古でよいので,そうしたカメラを安く手に入れることはできないか。」と相談された。
4 Bは,Aの写真スタジオには甲カメラがあり,最近ではもっぱら乙カメラを使用していて甲カメラは使用されていないことを思い出し,甲カメラを売却処分して金銭に換えておいてやればAも喜ぶだろうと考え,Cに対し,「丁度良いカメラがある。今度持ってくるので,見て気に入ったら買ってくれ。」と言ったところ,Cもこれを快諾した。
5 後日,Cの職場を訪れたBから甲カメラを見せられたCは,これを大変気に入り,購入することにした。売買代金は,Bが提案した300万円とすることが合意された。

(以下の6から9までは設問1のみに関する事実)
6 上記5の合意にあたり,Bは,Cに対し,このカメラは以前から写真家のAが使ってきたものだという説明はしたが,現在の所有者が誰であるかの説明はしておらず,Cから訊かれることもなかった。
7 Cは,その場でBから甲カメラを受け取って持ち帰り,翌日,Bが指定したB名義の銀行預金口座に300万円を振込入金して支払った。
8 その後半月ほどしてAが帰国し,甲カメラがないことに気付いた。AがBに連絡したところ,上記の各事実が判明した。
9 Aは,甲カメラを売却するつもりはないとして,Cに対し甲カメラの返還請求をした。

【設問1】(前記1から9までの事実を前提とする。)
 Cは,Aからの返還請求に対し,甲カメラは売買契約に基づき取得したものであることを主張して反論したいと考えている。この場合の売買契約の当事者としては,(ア)売主をBとする構成,(イ)売主をAとする構成,の二つが考えられるが,(ア)及び(イ)それぞれの法律構成の概略を説明したうえで,それらのCの反論が認められるか否かについて検討して論ぜよ。

Ⅱ 前記1から5までの事実に加えても次の事実があった(事実6から9までは前提としない。)。
10 前記5の合意にあたり,Bは,Cに対し,このカメラは以前からBが所有するものであると説明していた。しかし,Cは,それがAの所有物であることを写真雑誌で見て知っており,Bがウソをついて甲カメラを売ろうとしていることに気付いていたが,甲カメラを手に入れるチャンスだと思って何も言わずに購入したのであった。
11 CはBから甲カメラを受け取って持ち帰ったが,まだ支払はしていない。Cは,Bに対して以前に200万円を貸し付けており,返してもらう約束の時期が過ぎているので,それと相殺して残額100万円を支払うつもりであった。ただ,前記5の合意の際には,支払時期や支払方法について特に決めなかった。
12Aは,帰国してBによる売却の事実を知ったが,丁度甲カメラの換金を考えていたところだったとしてBにお礼を言ったうえで,Cに対し,「それは自分の所有物だがBさんが売ってくれて喜んでいる。代金300万円は私の銀行口座に支払ってほしい。」と述べ,Aの銀行預金口座を指定してきた。

【設問2】(前記1から5までの事実及び10から12までの事実を前提とする。)
 Aから300万円の支払を求められたCは,誰に,いくら支払えばよいか,検討して論ぜよ。

≪出題趣旨≫

 設問1は,BC間の売買合意により,Aにあった目的物の所有権をCが取得する法律構成を確認したうえで,その成否を検討する問題である。要件事実的には,Aからの所有権に基づく返還請求に対しCはAの所有権喪失の抗弁として主張できるか,という枠組みとなるが,そこまでの指摘を必須とするものではない。
 売主をBとする(ア)の構成としては,Cの即時取得(192条)が考えられ,その成否を検討することになる。192条の要件を指摘して吟味する姿勢を示してもらえればよい。Cが無過失といえるかどうかについては設問中で十分な基礎付け事実も与えておらず,見方が分かれるかもしれないが,結論はいずれでもかまわない。
 他方,売主をAとする(イ)の構成としては,BがAの代理人となって代理行為をしたことによりその効果がAに帰属し,AC間に承継取得が生じるとするものであるが,AからBへの代理権授与行為やAの追認がなさそうな本件では,せいぜい表見代理の成否が問題となる程度と思われる。Bは,Aの留守中には鍵を預かってスタジオの管理を任されていたというのであるが,スタジオ維持に必要な消耗品の購入という法律行為らしきことについても認められていたことなどに着目すると,これを基本代理権とする110条の表見代理は検討の余地がありそうである。もっとも,Cに正当の理由が認められるかどうかは,即時取得の場合と同様,見方が分かれるところであろう。結論はいずれでもよい。なお,Bの行為は事務管理(697条)に該当しそうであるが,事務管理では代理権が生じることはないとするのが判例通説である。しかし少数説に立って代理権を認める解答も,理由がしっかりしていれば評価できる。
 また,BはAのためにすることを示していたか(顕名)も定かでないが,顕名がなくとも100条但書でCが知りまたは知り得た可能性はある。

 設問2は,即時取得は成立しないことを前提としたうえ,他人物売買(561条)の追認があった場合におけるその後の法律関係を問うものである。
 まず,事実12のAの言動は他人物売買の追認に該当することを指摘して欲しい。そのうえで,この場合の法律関係につき,判例(最判昭和37年8月10日民集16-8-1700)は,116条を類推適用して他人物買主Cの所有権取得を認めるが,その物権的効力を越えて契約上の代金債権取得という債権的効果まで追認をした本人に認めるべきかの点については,否定している(販売委託契約に関する最判平成23年10月18日民集65-7-2899)。ここは,判例の知・不知にかかわらず,本件のCのように他人物売主に対する反対債権があり相殺の抗弁への期待がある場合に,その期待をどのように処理するか,各人の思考態度を示してもらえればよい。なお,判例の考え方に従えば,CはBに対して相殺後の100万円を支払えばたりるとの結論になろうが,Aに債権的効果が生じることを認めつつ,Aに対しても相殺の抗弁を主張できるとの見解もあり得よう。柔軟な思考は評価に値する。



この問題は,私が担当したゼミで扱った問題でしたので,答案を20通弱添削しました。

添削していてよくあるミスであるとか,こうしたらもっといい答案になると思った点を以下羅列します。

下の参考答案とあわせて「参考」にしていただければと思います(鵜呑みにしないでください。)。

・ 設問1は,Cの反論として構成できるものが問われていますので,答案の冒頭から「Cの反論として~~が考えられる。」と書き始めても問題ないとは思いますが,Cの反論はAの主張を前提として成り立つはずですから,冒頭で簡潔にAの主張に触れ,その主張のどの部分に対する反論として構成するのかを示した方が,答案の流れもよくなって読みやすくなると思います。

・ 設問1(ア)の構成で,BC間の売買が他人物売買であることを指摘している答案がほとんどでした。それ自体は誤りではないものの,Aの追認の可能性がない本問では,他人物売買がされたことを反論として用いることは難しいです。指摘するにしても簡潔なものにとどめておきましょう。

・ 要件を先出しにする(「即時取得の要件は,①……,②……,……である。」というもの。)答案が多くみられましたが,それは条文を読めば分かることですから,要件の先出しは不要です。

・ 即時取得に限った話ではないですが,善意・無過失の要件が出てきたときには,その対象は何か(何について善意・無過失である必要があるのか)を示してください。

・ 186条1項や188条の推定規定を指摘している答案が多く,その点は良いですが,これらの条文によって推定されるということを示しただけでは,要件充足性の判断としては不十分です。要件事実の問題ではなく民法の問題ですから,要件を充足するのか最終的な判断をきちんと示してください(具体的には,推定を覆すような事情があるかどうかを検討することになります。)。もっとも,本問では,「平穏」「公然」「善意」についてはほぼ争いなく認められると思われるので,簡単に「これらの推定を覆す事情はない。」ということを指摘すれば足ります。

・ 過失要件は,対立当事者のそれぞれの利益を最終的に調整する機能を有する要件です。ここでは,過失の評価にかかる事情を全て取り上げて,総合考慮したうえで,利益衡量を行うことになります。したがって,188条によって推定されるというだけでは不十分で,Cにとって有利な事情(Cに過失なしとする事情)と不利な事情(Cに過失ありとする事情)の双方の事情をできる限り指摘して,それらの事情を全部見たうえで,Cに過失があるかどうかを判断してください。答案では,自分の出したい結論に使える事情だけ取り上げて評価するというものがかなりありましたが,反対事情もしっかり考慮する必要があります。

・ 設問1(イ)の構成で,表見代理の検討をしていない答案が意外と多くありました(それらの多くは,Bが無権代理であることを指摘して答案を終わらせていました。)。単純な有権代理の主張だけでは,本問では認められる可能性はほぼないので,Cとしてはさらに反論を組み立てる必要があるはずです。答案の分量が大事というわけではないですが,極端に分量が少なくなってしまった場合は,何かしらの検討を漏らしている可能性が高いので,さらに何か考えられる主張はないのかを検討するようにしてください。

・ 110条の検討をするときに,その要件は,①基本代理権の存在,②越権行為,③正当な理由とする答案がほとんどでした。しかし,110条の条文には「基本代理権」という文言は出てきません。あくまで要件は「代理人がその権限外の行為をした場合」ですから,これを要件として捉えたうえで,このあてはめの中で基本代理権の認定とその越権行為の認定を行うことになります。

・ 「正当な理由」の意義が何であるかについて全く触れていない答案や,触れていても善意・無過失の対象が何かを示していない答案がほとんどでした。

・ 表見代理の無過失の検討で,即時取得の無過失での検討をそのまま引用している(「前述のように」で済ませている)答案がかなりありましたが,表見代理の無過失の対象と即時取得の無過失の対象とは異なるはずですから,使う事実は共通するとしても,評価方法は変わるはずです。したがって,ここでは,改めて事実を評価する作業が必要になります。

・ 設問2では,Bの行為を無権代理と捉えている答案が半数近くありました。問題文をよく読んでください。

・ 無権代理と捉えている答案の多くは,Aが追認したことにより甲カメラの売買契約がAC間に効果帰属するとしたうえで,CがAに対しても相殺の主張をすることができるかということを検討していました。しかし,AはCに対して何ら同種の債務を有していないため,相殺の要件(505条1項本文)を満たさないでしょう。答案の中には,さらに,そうだとしてもCの期待を保護すべきではないかということを検討しているものがありましたが,無権代理構成をとっているということは,前提としてCは売買契約の効果がAとの間に帰属することを予め理解しているはずですから,そもそもCに相殺の期待は生じていないと考える方が自然です。

・ 設問2の問題点はどこなのかが把握できていない答案もありましたが,現場思考型の問題(もっとも,設問2はもとになる判例があるため,それを知っていれば現場思考要素は薄れますが。)では,対立当事者のそれぞれの利益(生の主張)が何なのかをきちんと把握することが大事です。本問でいえば,AはCから300万円払ってほしいという利益,Cは相殺をして100万円だけ払いたいという利益を主張するはずです。これらの利益の衝突がどこで生じるのかを特定するのが,現場思考型の問題の核です。ここでは,それらの利益を実現する方法を個別に考えてみる必要があります。Aとしては,300万円を請求するとなれば,まずその訴訟物を特定する必要があり,例えばBC間の売買契約を追認することによって同契約に基づく当事者の地位が移転する,あるいは同契約に基づく代金債権を取得するという主張をすることが考えられます。一方で,Cは,相殺をするためには,代金債務はBに対して負い続ける必要があるため,Aの主張は受け入れがたいはずです。そうすると,本問の対立点は,Aの追認によって,BC間の売買契約に基づく当事者の地位がAに移転するかどうかということになり,ここが論点ということになります。

≪答案≫

第1 設問1
 1 前提として,Aは,Cに対し,所有権に基づく返還請求権として甲カメラの引渡しを請求する。①甲カメラはAの所有物であるところ,②これをCが占有しているから,Aの請求は認められそうである。(※1)
 2 (ア)の法律構成としては(※2),Cが甲カメラを即時取得(192条(※3))したことで,Aが甲カメラの所有権を喪失し,上記①の要件が欠けるとの反論が考えられる。
 そこで,Cの即時取得の成否について検討すると,Cは甲カメラについて無権利であるB(※4)から売買契約(555条)という「取引行為」によって「動産」である甲カメラを取得して「占有を始め」ている。このときに,Bが「平穏に,かつ,公然と」占有を始めたこと,及びBが無権利者であることについて(※5)「善意」であったことの推定(186条1項)を覆すような事情はない(※6)
 それでは,CはBが無権利者ではないと信じるにつき(※7)「過失がない」といえるか(※8)。甲カメラは,中古品であるにもかかわらず,BC間での売買代金が300万円と高額に設定されていることからすると,甲カメラは,一般人が使用するようなカメラではなく,カメラに精通した者が使用することが予定されているカメラであると考えられる。Bは照明技術師であり,必ずしもカメラそのものを取り扱う職業ではないから,Bがこのような甲カメラを所持していることは不自然であると考える余地がある。これに加えて,BがCに対して,甲カメラはもともとAが使ってきたものであると説明しながら現在の所有者が誰であるか説明をしなかったのであれば,余計にBが甲カメラをなぜ所有しているのか疑問が生じる。たしかに,Cからすれば,Bが照明技術師としてAと仕事上深くかかわりを持っている関係にあると考えれば,BがAから甲カメラを譲り受けている可能性も考えられる。しかし,Cとしても,Bに対して,甲カメラの所有者が誰であるのかを尋ねるという簡単な作業によって,甲カメラの所有関係を把握することができるため,Cにとって大きな負担とはならないから,不自然に思われる点があるのであればこれを確認すべきである。また,BとCとは,仕事でたまたま知り合ったにすぎない間柄であるから,CとBとの間で過去に何らかの取引が何度もあったということもない。そうすると,Cが,Bに対して,甲カメラの所有者を疑うべき事情があるから,Bが無権利者ではないと信じるにつき過失がある(※9)
 したがって,Cが甲カメラを取得するにつき即時取得の要件を満たさないから,(ア)の法律構成によるCの反論は認められない。
 3 (イ)の法律構成としては,BがAの代理人としてCに甲カメラを売却したことで,Cが甲カメラの所有権を取得する結果,Aがその所有権を喪失し,上記①が欠けるとの反論が考えられる。もっとも,本問では,AからBに対して,甲カメラをCに売却することについて代理権が授与されていない(※10)。また,Aは甲カメラを売却するつもりはないとしているから,Bの無権代理行為を追認する(116条本文)ことも期待できない(※11)。そこで,Cは,Bの無権代理行為に表見代理(110条)が成立し,Cが甲カメラを取得するとして,Aの所有権喪失の抗弁を主張する。
 Bは,Aの留守中には鍵を預かってスタジオの管理を任されており,スタジオ維持に必要な消耗品の購入についても認められていたことからすると,少なくともAのためにスタジオを管理し消耗品を購入するのに必要な範囲の代理権を有している(※12)。そうすると,Bはこのような基本代理権を有していながら,その代理権の範囲に含まれない甲カメラの売却をAの代理人として行っているから,「代理人がその権限外の行為をした場合」にあたる。
 それでは,「第三者」(※13)であるCがBに「代理人の権限があると信ずべき正当な理由」,すなわちBに代理権があると信じたことに過失がないといえるか(※14)。前述のように,甲カメラの売買代金が300万円と高額に設定されていることからすると,通常のカメラの売買よりも代理権の有無をより慎重に確認すべきである。また,甲カメラがもともとAの使っていたものであるとの説明を受けた段階で,甲カメラを売却するに至るまでの経緯等を確認して,本当にAが甲カメラを売る意思があるのか,すなわちBに対して代理権を与えているのかどうかを解明する動機が生じるはずである。それにもかかわらず,Cは,漫然Bに代理権があるものと信じたのであるから,代理権の有無に関する調査が欠如しており,過失が認められる。
 したがって,Bの無権代理行為には表見代理が成立しないから,(イ)の法律構成によるCの反論は認められない(※15)
第2 設問2
 1 前提として,Aの請求の根拠について考える。AがCに対して売買契約に基づく代金支払請求として300万円の支払を請求するためには,AC間で売買契約が成立している必要がある。しかし,本問では,AC間では売買契約が締結されていない。また,Bは甲カメラをBの所有物と説明してCに売却しているから,Bを代理人としてAC間で売買契約が成立したとみることもできない。
 そうすると,BC間の甲カメラの売買契約は他人物売買(561条)となるところ,AはBにお礼を言い,Cに対して代金を振り込む口座を指定するなど,売買契約が成立したことを前提とする行動をとっているから,前記他人物売買を追認したものとみることができる。そこで,Aは,この追認により,BC間の売買契約に基づく代金支払請求権(以下「本件代金債権」という。)がAに移転したと主張することが考えられる。
 2 それでは,Aは追認により本件代金債権を取得することができるか。
 この点,他人物売買は,無権代理との関係では,無権限者が代理人と称して第三者と取引をしたか否かの違いしかなく,真の所有者にとっての利害状況は異ならない。したがって,他人物売買を真の所有者が追認した場合には,116条類推適用により,処分の時に遡って効力を生じ(※16),当該第三者は物の所有権を取得する。そうすると,真の所有者の犠牲のもとに第三者は所有権を取得しているから,第三者はその対価的価値を真の所有者に返還すべきであり,それに相当する売買代金債権の取得のために,追認により契約に基づく当事者の地位が真の所有者に移転するとも思える(※17)(※18)
 しかし,追認により,売買契約に基づく契約当事者の地位が真の権利者に移転するとなれば,第三者が無権限者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど,第三者に不測の不利益を与えることになり,相当ではない(※19)。また,真の権利者は,無権限者に対して不当利得あるいは不法行為に基づいて代金相当額の回収する方法もあるため,売買代金債権が移転しないとしても,真の権利者に大きな不利益は生じない。
 したがって,真の権利者の追認によっても,他人物売買に基づく代金債権は,真の権利者には移転しないと考える。
 3 本問でも,AがBC間の他人物売買を追認したところで,本件代金債権はAには移転しない。したがって,Aは,Cに対して,本件代金債権に基づいて300万円の支払を請求することはできない。
 4 そうすると,本件代金債権は,いまだBC間にとどまるから,CはBに対してその履行をすることになる。このとき,CはBに対して200万円の貸金債権を有しているから,本件代金債権と相殺して(505条1項),CはBに対して残額の100万円を支払えばよい。

以 上


(※1)本来であれば,所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権の要件を摘示したうえであてはめるべきですが,本問は,もっぱらCの反論の成否を問われていますから,その前提にすぎないAの請求権の成否に関する論述は軽めにとどめておくべきです(出題趣旨にもあるように,最悪全部カットしてもいいと思います。)。
(※2)中大ロー入試は,憲法と民法を除き,答案用紙に30行制限があり,答案に見出しをつけて改行していると,あっという間に30行に達してしまいます。民法には30行制限はありませんが,答案の行を有効活用する癖をつけておくためにも,見出しはあえてつけないでおくことをお勧めします。もっとも,これは中大ロー特有の対策であって,他大のロー入試や予備試験・司法試験などでは,読みやすい答案にするためにも,むしろ見出しを付けた方がいいと思います。
(※3)条文摘示のときも,本来であれば法律名まで記載((民法192条)など)すべきでしょうが,紙幅も時間もない中では省略してもいいのではないかと思います。私も条文摘示で法律名はほとんど書いていませんが,中大ローは全免でしたし,予備試験・司法試験でも普通にAがついているので,法律名を書かなくても特に減点がされるということはないと考えていいでしょう。
(※4)前主が無権利者であることは,条文上の要件ではありませんが,「前主が処分権限をもっていれば,譲受人は権利を承継取得するわけで,即時取得を問題とするまでもない」ため(川島武宜=川井健『新版注釈民法⑺物権⑵』(有斐閣,2007年)181頁),即時取得の成否を検討する上では一言触れておくべきです。もっとも,前主が無権利であることは,消極要件である解されています(前掲注釈183頁)。
(※5)「善意」の対象が何かをしっかりと示してください。最判昭和26年11月27日民集5巻13号775頁は「民法一九二条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは,動産の占有を始めた者において,取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し,且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する」としています。
(※6)主張立証責任を意識して論述するとこうなると思いますが,単に「「平穏に,かつ,公然と」「善意で」占有を始めている。」とするだけでも足りるとかもしれません。
(※7)無過失についても,その対象を示しましょう。前掲最判昭和26年11月27日は,「民法一九二条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは,動産の占有を始めた者において,取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し,且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する」としています。
(※8)「過失の有無は,前主の処分権限につき取得者に疑念が生じなければならなかったかどうか,もしそれが肯定されるとすれば,取得者が正しい認識を得るために相当と認められる措置を講じたかどうか,にかかる。そして,過失を肯定するためには,通常人なら当然に気付いたし,またそれに必要な注意を払ったはずなのにかかる注意に欠けていた,という積極的な評価に達しなければならない……。その際,とりわけ取引の実情ないし慣行,商慣習,従来の当事者間の諸関係などが総合的に考慮されなければならない。」前掲注釈185頁
(※9)過失の評価の一例です。出題趣旨にもあるように,過失がないと認定してもかまいません。
(※10)ここで,代理の要件を全て検討する必要はなく,代理権授与行為がないことを端的に指摘すれば足ります。
(※11)無権代理であっても,追認があれば本人に効果帰属するため,表見代理の話に移る前に一言追認の可能性についても触れておくべきです。
(※12)基本代理権が認められるか微妙な事案のようにも思えますが,答案戦略上は正当事由の検討までいきたいので,一応肯定してくべきでしょう。例えば,大判昭和16年6月26日新聞4716号11頁は,薪炭の製造販売をしていたAが,製造に際してBを雇い,自分は現場へは一度も行かずBに全般を委ねていたところ,BがAの代理人としてCに薪を売却した事案で,このような事実関係のもとでは,Bが自由裁量で人夫の雇入れや資材購入などの取引をしていたことは容易に想像であるとしたうえで,「仮令,AがBを管理人と云うが如きものに選任したることなしとするも,特殊の自由なき限り,Bは少くともAの為右薪炭の製造並其の製品の保管を為すに付必要なる或る範囲の代理権を有し居たるものと推認する」のが相当であり,したがって,本件売買は「仮令其の権限なしとするも,権限踰越の代理行為と謂うを妨げ」ないとしています(於保不二雄=奥田昌道『新版注釈民法⑷総則⑷』(有斐閣,2015年)221頁)。
(※13)本問とは全く関係ありませんが,短答知識として,民法110条にいう「第三者」の範囲は代理人の相手方として行為をした者に限られることも確認しておきましょう(大判昭和7年12月24日新聞3518号17頁)。
(※14)「正当な理由」とは何を意味するのかを示しましょう。最判昭和44年6月24日判時570号48頁は,「民法一一〇条にいう「正当ノ理由ヲ有セシトキ」とは,無権代理行為がされた当時存した諸般の事情を客観的に観察して,通常人において右行為が代理権に基づいてされたと信ずるのがもっともだと思われる場合,すなわち,第三者が代理権があると信じたことが過失とはいえない(無過失な)場合をい」うとしています。
(※15)仮に,即時取得と表見代理とで結論を分ける場合は,その理由をしっかりと示す必要があります。試験時間上それが難しいのであれば,結論を両方あわせてしまうのも戦略としてはありです。
(※16)「或る物件につき,なんら権利を有しない者が,これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは,無権代理行為の追認に関する民法一一六条の類推適用により,処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和一〇年(オ)第六三七号同年九月一〇日云渡判決,民集一四巻一七一七頁参照)。」最判昭和37年8月10日民集16巻8号1700頁
(※17)争点が法解釈論のレベルで設定されているため,この場合には考えられる反対の見解に触れておくとベターです。もっとも,(事前に用意していたら別ですが)現場で反対の見解まで考えてそれを批判するには時間的余裕がないことがほとんどですから,反対の見解に触れるとしても軽くで十分ですし,反対の見解に触れられなくてもそれだけで不合格とはならないでしょう。自説をしっかり示した方が点は伸びます。
(※18)この反対の見解は,私が勝手に考えたものであり,ソースは特にありません。したがって,理論的にこのような反対の見解がそもそも成り立ち得るのか,検証する必要はありますが,一応悩みを見せるというレベルでは十分だと思います。
(※19)「無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に,当該物の所有者が,自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても,その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない。なぜならば,この場合においても,販売委託契約は,無権利者と受託者との間に有効に成立しているのであり,当該物の所有者が同契約を事後的に追認したとしても,同契約に基づく契約当事者の地位が所有者に移転し,同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解する理由はないからである。仮に,上記の追認により,同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解するならば,上記受託者が無権利者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど,受託者に不測の不利益を与えることになり,相当ではない。」最判平成23年10月18日民集65巻7号2899頁





2020-05-02(Sat)

〈令和2年改正対応〉【宅地建物取引士試験】令和元年度

書き途中

(注)略称は以下の通り
法:宅地建物取引業法



【問26】宅地建物取引業法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 宅地建物取引業者は,自己の名義をもって,他人に,宅地建物取引業を営む旨の表示をさせてはならないが,宅地建物取引業を営む目的をもってする広告をさせることはできる。
2 宅地建物取引業とは,宅地又は建物の売買等をする行為で業として行うものをいうが,建物の一部の売買の代理を業として行う行為は,宅地建物取引業に当たらない。
3 宅地建物取引業の免許を受けていない者が営む宅地建物取引業の取引に,宅地建物取引業者が代理又は媒介として関与していれば,当該取引は無免許事業に当たらない。
4 宅地建物取引業者の従業者が,当該宅地建物取引業者とは別に自己のために免許なく宅地建物取引業を営むことは,無免許事業に当たる。


正解:4(配点:1)
解説:1について,法13条2項は,他人に,宅地建物取引業を営む旨の表示,宅地建物取引業を営む目的をもってする広告のいずれをさせることも禁止しています。したがって,1は,誤りです。

(名義貸しの禁止)
第十三条 略
2 宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない


2について,法2条2号かっこ書きは,建物の一部の売買の代理であっても,宅地建物取引業にあたる旨を規定しています。したがって,2は,誤りです。

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
 一 略
 二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
 三,四 略


3について,宅地建物取引業の取引と,これを代理又は媒介する行為とは,それぞれ別個に宅地建物取引業を構成するため(法2条2号),いずれの行為をするについても,免許を受ける必要があります(法3条1項)。したがって,3は,宅地建物取引業の取引を営む者も免許が必要であり,これがなければ無免許事業となりますから,誤りです。

(免許)
第三条 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない
2~6 略


4について,宅地建物取引業者の従業員が当該宅地建物取引業者とは別に自己のために宅地建物取引業を営む場合には,それ自体をもって新たな1個の宅地建物取引業を構成しますから,免許を受ける必要があります。したがって,4は,正しいです。

【問27】宅地建物取引業法に関する次の記述のうち,正しいものはいくつあるか。なお,取引の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。
 ア 宅地建物取引業者は,自己の所有に属しない宅地又は建物についての自ら売主となる売買契約を締結してはならないが,当該売買契約の予約を行うことはできる。
 イ 宅地建物取引業者は,自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において,その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し,取引の相手方が同意した場合に限り,損害賠償の請求期間を当該宅地又は建物の引渡しの日から1年とする特約を有効に定めることができる。
 ウ 宅地建物取引業者は,いかなる理由があっても,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
 エ 宅地建物取引業者は,宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し,その相手方に対し,利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 なし


正解:1(配点:1)
解説:アについて,法33条の2は,売買契約,売買契約の予約のいずれについても禁止しています。したがって,アは,売買契約の予約を行うことができるとしている点で誤りです。

(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)
第三十三条の二 宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
 一,二 略


イについて,法40条1項,2項は,契約不適合責任(令和2年改正前にいう瑕疵担保責任)に基づく損害賠償請求の期間を特約で定める場合には,目的物の引渡しの日から2年以上としなければならず,これを下回る場合には無効とする旨を規定しています。したがって,イは,これを1年とする特約を有効に定めることができるとしている点で誤りです。

(担保責任についての特約の制限)
第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない
2 前項の規定に反する特約は、無効とする


ウについて,法45条は,正当な理由がある場合であれば,秘密を他に漏らすことが許される旨を規定しています。したがって,ウは,いかなる理由があっても許されないとしている点で誤りです。

(秘密を守る義務)
第四十五条 宅地建物取引業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。


エは,法47条の2第1項の通りですから,正しいです。

(業務に関する禁止事項)
第四十七条の二 宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。
2,3 略


【問28】宅地建物取引業者が建物の賃借の媒介を行う場合における宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,説明の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。
1 当該建物が住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは,その旨を説明しなければならない。
2 当該建物が既存の建物であるときは,既存住宅に係る住宅の品質確保の促進等に関する法律第6条第3項に規定する建設住宅性能評価書の保存の状況について説明しなければならない。
3 当該建物が既存の建物である場合,石綿使用の有無の調査結果の記録がないときは,石綿使用の有無の調査を自ら実施し,その結果について説明しなければならない。
4 当該建物が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであって,同条第3項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは,その内容を説明しなければならない。


正解:4(配点:1)
解説:1について,住宅性能評価を受けた新築住宅である旨の説明は,建物の売買又は交換の契約にあっては必要ですが,賃借の契約にあって不要です(法35条1項14号イ,規則16条の4の3第6号参照)。したがって,1は,誤りです。

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 一~十三 略
 十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
  イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
  ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令
2~7 略
(法第三十五条第一項第十四号イの国土交通省令・内閣府令及び同号ロの国土交通省令で定める事項)
第十六条の四の三 法第三十五条第一項第十四号イの国土交通省令・内閣府令及び同号ロの国土交通省令で定める事項は、宅地の売買又は交換の契約にあつては第一号から第三号までに掲げるもの、建物の売買又は交換の契約にあつては第一号から第六号までに掲げるもの、宅地の貸借の契約にあつては第一号から第三号まで及び第八号から第十三号までに掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第一号から第五号まで及び第七号から第十二号までに掲げるものとする。
 一~五 略
 六 当該建物が住宅の品質確保の促進等に関する法律第五条第一項に規定する住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨
 七~十三 略


2について,建設住宅性能評価書の保存状況の説明は,建物の売買又は交換の契約にあっては必要ですが,賃借の契約にあって不要です(法35条1項6号の2ロ,規則16条の2の3第4号)。したがって,2は,誤りです。

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 一~六 略
 六の二 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
  イ 略
  ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
 七~十四 略
2~7略
(法第三十五条第一項第六号の二ロの国土交通省令で定める書類)
第十六条の二の三 法第三十五条第一項第六号の二ロの国土交通省令で定める書類は、売買又は交換の契約に係る住宅に関する書類で次の各号に掲げるものとする。
 一~三 略
 四 既存住宅に係る住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第六条第三項に規定する建設住宅性能評価書
 五,六 略


3について,石綿使用の有無の調査結果の記録がないときでも,石綿使用の有無の調査を自ら実施する必要はないとされています(法35条1項14号,規則16条の4の3第4号,解釈・運用35条1項14号関係4)。したがって,3は,誤りです。

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 一~十三 略
 十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
  イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
  ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令
2~7 略
(法第三十五条第一項第十四号イの国土交通省令・内閣府令及び同号ロの国土交通省令で定める事項)
第十六条の四の三 法第三十五条第一項第十四号イの国土交通省令・内閣府令及び同号ロの国土交通省令で定める事項は、宅地の売買又は交換の契約にあつては第一号から第三号までに掲げるもの、建物の売買又は交換の契約にあつては第一号から第六号までに掲げるもの、宅地の貸借の契約にあつては第一号から第三号まで及び第八号から第十三号までに掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第一号から第五号まで及び第七号から第十二号までに掲げるものとする。
 一~三 略
 四 当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容
 五~十三 略
第35条第1項第14号関係
法第35条第1項第14号の省令事項(規則第16条の4の3)について
 宅地の売買又は交換の契約に当たっては以下の1から3を、建物の売買又は交換の契約に当たっては1から6までの事項を、宅地の賃借の契約に当たっては1から3まで及び8から13までの事項を、建物の賃借の契約に当たっては1から5まで及び7から12までの事項を説明することとする。
1~3 略
4 建物に係る石綿の使用の有無の調査の結果について(規則第16条の4の3第4号関係)
 石綿の使用の有無の調査結果記録が保存されているときは、「その内容」として、調査の実施期間、調査の範囲、調査年月日、石綿の使用の有無及び石綿の使用の箇所を説明することとする。ただし、調査結果の記録から、これらのうちいずれかが判明しない場合にあっては、売主等に補足情報の告知を求め、それでもなお判明しないときは、その旨を説明すれば足りるものとする。
 調査結果の記録から容易に石綿の使用の有無が確認できる場合には、当該調査結果の記録を別添いることも差し支えない。
 本説明義務については、売主及び所有者に当該調査の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合、管理業者及び施工会社にも問い合わせた上、存在しないことが確認された場合又はその存在が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになる。
 なお、本説明義務については、石綿の使用の有無の調査の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではないことに留意すること。
 また、紛争の防止の観点から、売主から提出された調査結果の記録を説明する場合は、売主等の責任の下に行われた調査であることを、建物全体を調査したものではない場合は、調査した範囲に限定があることを、それぞれ明らかにすること。
5~13 略


4は,法35条1項6号,規則16条の2第3号の通りですから,正しいです。

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 一~五 略
 六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
 七~十四 略
2~7 略
(法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項)
第十六条の二 法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、建物の貸借の契約以外の契約にあつては次に掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第三号及び第八号に掲げるものとする。
 一,二 略
 三 区分所有法第二条第三項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容
 四~九 略



2020-04-27(Mon)

〈令和2年改正対応〉【国内旅行業務取扱管理者試験】平成26年度第2問

書き途中


1.標準旅行業約款に関する以下の各設問について,該当する答を,選択肢の中からそれぞれ1つ選びなさい。
(1)募集型企画旅行契約の部「適用範囲」「用語の定義」「旅行契約の内容」に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行業者が旅行者との間で締結する契約において,約款に定めのない事項については,法令又は一般に確立された慣習による。
 b.「電子承諾通知」とは,契約の申込みに対する承諾の通知であって,情報通信の技術を利用する方法のうち旅行業者又は旅行業者の募集型企画旅行を旅行業者を代理して販売する会社が使用する電子計算機,ファクシミリ装置,テレックス又は電話機(本問において,以下「電子計算機等」という。)と旅行者が使用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいう。
 c.旅行業者は,契約において,旅行者が当該旅行業者の定める旅行日程に従って,運送・宿泊機関等の提供する運送,宿泊その他のサービスの提供を受けることができるように,手配し,旅程を管理することを引き受ける。

ア.a,b  イ.a,c  ウ.b,c  エ.a,b,c


正解:エ(配点:4) ※令和2年改正によりbは削除され,正解はイになりました
解説:aは,約款(募集)1条1項の通りですから,正しいです。

(適用範囲)
第一条 当社が旅行者との間で締結する募集型企画旅行に関する契約(以下「募集型企画旅行契約」といいます。)は,この約款の定めるところによります。この約款に定めのない事項については,法令又は一般に確立された慣習によります
2 略


bについて,令和2年改正前の約款(募集)2条4項は,「電子承諾通知」について,問題文に記載のような定義を置いていました。これは,契約の成立時期に関する約款(募集)8条2項が,通信契約の成立時期について,電子承諾通知を用いる場合と用いない場合とで異なる規定を置いていたため,同条にいう「電子承諾通知」の意義を明らかにするための規定であったと考えられます。しかし,令和2年改正により,通信契約の成立時期について,電子承諾通知を用いる場合と用いない場合との区別を取りやめることとなり,条文上から電子承諾通知の文言が削除されました。そのため,令和2年改正後は,定義規定として「電子承諾通知」の意義を明らかにする必要がなくなったため,約款(募集)2条4項は削除されました。したがって,bは,内容的に誤りではありませんが,令和2年改正後は出題されないものと思われます。

◆◇◆令和2年改正前条文◆◇◆
(用語の定義)
第二条 この約款で「募集型企画旅行」とは,当社が,旅行者の募集のためにあらかじめ,旅行の目的地及び日程,旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し,これにより実施する旅行をいいます。
2 この約款で「国内旅行」とは,本邦内のみの旅行をいい,「海外旅行」とは,国内旅行以外の旅行をいいます。
3 この部で「通信契約」とは,当社が,当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が提携するクレジットカード会社(以下「提携会社」といいます。)のカード会員との間で電話,郵便,ファクシミリその他の通信手段による申込みを受けて締結する募集型企画旅行契約であって,当社が旅行者に対して有する募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等に係る債権又は債務を,当該債権又は債務が履行されるべき日以降に別に定める提携会社のカード会員規約に従って決済することについて,旅行者があらかじめ承諾し,かつ当該募集型企画旅行契約の旅行代金等を第十二条第二項,第十六条第一項後段,第十九条第二項に定める方法により支払うことを内容とする募集型企画旅行契約をいいます。
4 この部で「電子承諾通知」とは,契約の申込みに対する承諾の通知であって,情報通信の技術を利用する方法のうち当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が使用する電子計算機,ファクシミリ装置,テレックス又は電話機(以下「電子計算機等」といいます。)と旅行者が使用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいいます。
5 この約款で「カード利用日」とは,旅行者又は当社が募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等の支払又は払戻債務を履行すべき日をいいます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
◆◇◆令和2年改正後条文◆◇◆
(用語の定義)
第二条 この約款で「募集型企画旅行」とは,当社が,旅行者の募集のためにあらかじめ,旅行の目的地及び日程,旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し,これにより実施する旅行をいいます。
2 この約款で「国内旅行」とは,本邦内のみの旅行をいい,「海外旅行」とは,国内旅行以外の旅行をいいます。
3 この部で「通信契約」とは,当社が,当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が提携するクレジットカード会社(以下「提携会社」といいます。)のカード会員との間で電話,郵便,ファクシミリその他の通信手段による申込みを受けて締結する募集型企画旅行契約であって,当社が旅行者に対して有する募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等に係る債権又は債務を,当該債権又は債務が履行されるべき日以降に別に定める提携会社のカード会員規約に従って決済することについて,旅行者があらかじめ承諾し,かつ当該募集型企画旅行契約の旅行代金等を第十二条第二項,第十六条第一項後段,第十九条第二項に定める方法により支払うことを内容とする募集型企画旅行契約をいいます。
4 この約款で「カード利用日」とは,旅行者又は当社が募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等の支払又は払戻債務を履行すべき日をいいます。


cは,約款(募集)3条の通りですから,正しいです。

(旅行契約の内容)
第三条 当社は,募集型企画旅行契約において,旅行者が当社の定める旅行日程に従って,運送・宿泊機関等の提供する運送,宿泊その他の旅行に関するサービス(以下「旅行サービス」といいます。)の提供を受けることができるように,手配し,旅程を管理することを引き受けます


以上から,a及びcは正しく,bは令和2年改正により削除されましたから,改正前の正解はエですが,改正後の正解はイです。

(2)募集型は各旅行の部「契約の申込み」「契約締結の拒否」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.契約の申込みをしようとする旅行業者は,旅行業者所定の申込書に所定の事項を記入の上,当該旅行業者が別に定める金額の申込金とともに,当該旅行業者に提出しなければならない。
 イ.旅行者が,契約の申込みの際に支払った申込金は,旅行代金又は取消料の一部として取り扱われ,他に充当されることはない。
 ウ.旅行者が他の旅行者に迷惑を及ぼすおそれがあるときは,旅行業者は契約の締結に応じないことがある。
 エ.旅行の参加に際し,特別な配慮を必要とする旨の申し出が旅行者からあったときは,旅行業者は,可能な範囲でこれに応じる。この場合において,旅行者のために講じた特別な措置に関する費用は,旅行者の負担とする。


正解:イ(配点:4)
解説:アは,約款(募集)5条1項の通りですから,正しいです。

(契約の申込み)
第五条 当社に募集型企画旅行契約の申込みをしようとする旅行者は,当社所定の申込書(以下「申込書」といいます。)に所定の事項を記入の上,当社が別に定める金額の申込金とともに,当社に提出しなければなりません
2~5 略


イについて,約款(募集)5条3項は,申込金は,①旅行代金,②取消料,③違約料の一部として取り扱われる旨を規定しています。したがって,イは,旅行代金と取消料にしか充当されないとしている点で誤りです。

(契約の申込み)
第五条 略
2 略
3 第一項の申込金は,旅行代金又は取消料若しくは違約料の一部として取り扱います
4,5 略


ウは,約款(募集)7条3号の通りですから,正しいです。

(契約締結の拒否)
第七条 当社は,次に掲げる場合において,募集型企画旅行契約の締結に応じないことがあります。
 一,二 略
 三 旅行者が他の旅行者に迷惑を及ぼし,又は団体行動の円滑な実施を妨げるおそれがあるとき。
 四~八 略


エは,約款(募集)5条4項,5項の通りですから,正しいです。

(契約の申込み)
第五条 略
2,3 略
4 募集型企画旅行の参加に際し,特別な配慮を必要とする旅行者は,契約の申込時に申し出てください。このとき,当社は可能な範囲内でこれに応じます
5 前項の申出に基づき,当社が旅行者のために講じた特別な措置に要する費用は,旅行者の負担とします


(3)募集型企画旅行の部「契約の成立時期」「契約書面の交付」に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.契約は,旅行業者が契約の締結を承諾し,当該旅行業者が定める金額の申込金を受理した時に成立する。
 b.通信契約は,電子承諾通知を発する場合には,旅行業者が契約の締結の通知を発した時に成立する。
 c.旅行業者は,契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び旅行業者の責任に関する事項を記載した書面を交付する。
 d.旅行業者が契約により手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,契約書面に記載するところによる。

ア.a,d  イ.b,c  ウ.a,c,d  エ.a,b,c,d


正解:ウ(配点:4) ※bは令和2年改正により削除されました
解説:aは,約款(募集)8条1項の通りですから,正しいです。

(契約の成立時期)
第八条 募集型企画旅行契約は,当社が契約の締結を承諾し,第五条第一項の申込金を受理した時に成立するものとします
2 略


bについて,令和2年に約款(募集)の改正があり,該当規程が削除となりました。令和2年改正前の約款(募集)8条2項は,通信契約の場合には,旅行業者が承諾通知を発した時点で契約が成立するのが原則(発信主義)であり,電子承諾通知を用いる場合には,旅行者に承諾通知が到達したときに契約が成立するとの例外を置いていました。しかし,令和2年改正後の約款(募集)8条2項は,電子承諾通知の例外を削除し,通信契約の規律を一本化するとともに,契約の成立時期を承諾通知が旅行者に到達したときに変更しました(到達主義)。したがって,イは,試験実施当時の約款(募集)によれば正しいですが,令和2年改正後は誤りとなります。なお,法改正の詳細については,こちらをご覧ください。

◆◇◆令和2年改正前条文◆◇◆
(契約の成立時期)
第八条 略
2 通信契約は,前項の規定にかかわらず,当社が契約の締結を承諾する旨の通知を発した時に成立するものとします。ただし,当該契約において電子承諾通知を発する場合は,当該通知が旅行者に到達した時に成立するものとします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
◆◇◆令和2年改正後条文◆◇◆
(契約の成立時期)
第八条 略
2 通信契約は,前項の規定にかかわらず,当社が契約の締結を承諾する旨の通知が旅行者に到達した時に成立するものとします。


cは,約款(募集)9条1項の通りですから,正しいです。

(契約書面の交付)
第九条 当社は,前条の定める契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面(以下「契約書面」といいます。)を交付します
2 略


dは,約款(募集)9条2項の通りですから,正しいです。

(契約書面の交付)
第九条 略
2 当社が募集型企画旅行契約により手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,前項の契約書面に記載するところによります


以上から,a,c及びdが正しく,bが誤りですから,正解はウです。

(4)募集型企画旅行契約の部「確定書面」「情報通信の技術を利用する方法」に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行業者は,契約書面において,確定された旅行日程,運送若しくは宿泊機関の名称を記載できない場合には,当該契約書面において利用予定の宿泊機関及び表示上重要な運送機関の名称を限定して列挙した上で,当該契約書面交付後,旅行開始日の前日(旅行開始日の前日から起算してさかのぼって7日目に当たる日以降に契約の申し込みがなされた場合にあっては,旅行開始日)までの当該契約書面に定める日までに,これらの確定状況を記載した書面を交付する。
 b.旅行業者は,あらかじめ旅行者の承諾を得て,確定書面の交付に代えて,情報通信技術を利用する方法により当該書面に記載すべき事項(本問において,以下「記載事項」という。)を提供したときは,当該旅行者の使用する通信機器に備えられたファイルに記載事項が記録されたことを確認する。
 c.旅行業者は,確定書面の交付に代えて,情報通信技術を利用する方法により記載事項を提供した場合に,旅行者の使用に係る通信機器に記載事項を記録するためのファイルが備えられていないときは,旅行業者の使用する通信機器に備えられたファイル(専ら当該旅行者のように供するものに限る。)に記載事項を記録し,旅行者が記載事項を閲覧したことを確認する。

ア.a,b  イ.a,c  ウ.b,c  エ.a,b,c


正解:エ(配点:4)
解説:aは,約款(募集)10条1項の通りですから,正しいです。

(確定書面)
第十条 前条第一項の契約書面において,確定された旅行日程,運送若しくは宿泊機関の名称を記載できない場合には,当該契約書面において利用予定の宿泊機関及び表示上重要な運送機関の名称を限定して列挙した上で,当該契約書面交付後,旅行開始日の前日(旅行開始日の前日から起算してさかのぼって七日目に当たる日以降に募集型企画旅行契約の申込みがなされた場合にあっては,旅行開始日)までの当該契約書面に定める日までに,これらの確定状況を記載した書面(以下「確定書面」といいます。)を交付します
2,3 略


bは,約款(募集)11条1項の通りですから,正しいです。

(情報通信の技術を利用する方法)
第十一条 当社は,あらかじめ旅行者の承諾を得て,募集型企画旅行契約を締結しようとするときに旅行者に交付する旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面,契約書面又は確定書面の交付に代えて,情報通信の技術を利用する方法により当該書面に記載すべき事項(以下この条において「記載事項」といいます。)を提供したときは,旅行者の使用する通信機器に備えられたファイルに記載事項が記録されたことを確認します
2 略


cは,約款(募集)11条2項の通りですから,正しいです。

(情報通信の技術を利用する方法)
第十一条 略
2 前項の場合において,旅行者の使用に係る通信機器に記載事項を記録するためのファイルが備えられていないときは,当社の使用する通信機器に備えられたファイル(専ら当該旅行者の用に供するものに限ります。)に記載事項を記録し,旅行者が記載事項を閲覧したことを確認します


以上から,aないしcのいずれも正しいですから,正解はエです。

(5)募集型企画旅行契約の部「旅行代金」「旅行代金の額の変更」「旅行者の交替」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者は,通信契約を締結したときは,カード利用日は旅行契約成立日とする。
 イ.旅行業者は,通信契約を締結したときは,提携するクレジットカード会社のカードにより所定の伝票への旅行者の署名なくして契約書面に記載する金額の旅行代金の支払いを受ける。
 ウ.旅行業者と契約を締結した旅行者が,契約上の地位を第三者に譲り渡すことができるのは,旅行業者の承諾を得たときであっても,当該旅行者の三親等以内の親族に限られる。
 エ.旅行業者は,旅行を実施するに当たり利用する運送機関について適用を受ける運賃・料金が,著しい経済情勢の変化等により,旅行の募集の際に明示した時点において有効なものとして公示されている適用運賃・料金に比べて,通常想定される程度を大幅に超えて増額される場合においては,その増額される金額の範囲内で旅行代金の額を増加することができる。


正解:ウ(配点:4)
解説:アは,約款(募集)12条2項の通りですから,正しいです。

(旅行代金)
第十二条 略
2 通信契約を締結したときは,当社は,提携会社のカードにより所定の伝票への旅行者の署名なくして契約書面に記載する金額の旅行代金の支払いを受けます。また,カード利用日は旅行契約成立日とします


イは,約款(募集)12条2項の通りですから,正しいです。

(旅行代金)
第十二条 略
2 通信契約を締結したときは,当社は,提携会社のカードにより所定の伝票への旅行者の署名なくして契約書面に記載する金額の旅行代金の支払いを受けます。また,カード利用日は旅行契約成立日とします。


ウについて,約款(募集)15条は,旅行者の交替を,三親等以内の親族に限る旨の規定を置いていません。したがって,ウは,誤りです。

(旅行者の交替)
第十五条 当社と募集型企画旅行契約を締結した旅行者は,当社の承諾を得て,契約上の地位を第三者に譲り渡すことができます。
2 旅行者は,前項に定める当社の承諾を求めようとするときは,当社所定の用紙に所定の事項を記入の上,所定の金額の手数料とともに,当社に提出しなければなりません。
3 第一項の契約上の地位の譲渡は,当社の承諾があった時に効力を生ずるものとし,以後,旅行契約上の地位を譲り受けた第三者は,旅行者の当該募集型企画旅行契約に関する一切の権利及び義務を承継するものとします。


エは,約款(募集)14条1項の通りですから,正しいです。

(旅行代金の額の変更)
第十四条 募集型企画旅行を実施するに当たり利用する運送機関について適用を受ける運賃・料金(以下この条において「適用運賃・料金」といいます。)が,著しい経済情勢の変化等により,募集型企画旅行の募集の際に明示した時点において有効なものとして公示されている適用運賃・料金に比べて,通常想定される程度を大幅に超えて増額又は減額される場合においては,当社は,その増額又は減額される金額の範囲内で旅行代金の額を増加し,又は減少することができます。
2~5 略


(6)募集型企画旅行契約の部「旅行者の解除権」に関する次の記述のうち,旅行者が旅行開始前に契約を解除するに当たって取消料の支払いが必要となるものはどれか(いずれも取消料の支払いを要する期間内の解除とする。)。
 ア.契約書面に「Aレストランでフランス料理の昼食」と記載されていたが,旅行業者によって「Bレストランでフランス料理の昼食」に変更されたとき。
 イ.旅行者が必要な介助者の急病によって旅行に参加できなくなり,やむを得ず契約を解除するとき。
 ウ.旅行業者が旅行者に対し,契約書面に記載した期日までに,確定書面を交付しなかったとき。
 エ.契約書面に「A航空会社を利用」と記載されていたが,A航空会社のパイロット不足により運航中止となり,「B航空会社」に変更されたとき。


正解:イ(配点:4)
解説:約款(募集)16条1項は,旅行者が契約を解除する場合には,原則として取消料の支払いが必要である旨を定めています。もっとも,同条2項は,その各号事由に該当する場合には,取消料の支払いが不要である旨を定めています。そこで,取消料の支払いが必要かどうかは,同条2項各号事由に該当するかどうかによって決せられることになります。
 アは,契約書面に記載されたレストランの変更が生じているため,「契約内容が変更されたとき」(同項1号本文)にあたります。そのうえで,同号ただし書によれば,その変更が別表第2上欄に掲げるものであるときに限るとしています。そこで別表第2該当性についてみると,2号の「契約書面に記載した入場する……観光施設(レストランを含みます。)……の変更」にあたります。したがって,アは,取消料の支払いが不要です。
 イは,同条2項各号のいずれにも該当しないため,取消料の支払いが必要です。
 ウは,同条2項4号に該当するため,取消料の支払いが不要です。
 エは,契約書面に記載された航空会社の変更が生じているため,「契約内容が変更されたとき」(同条2項1号本文)にあたります。そして,別表第2該当性については,4号の「契約書面に記載した運送機関の……会社名の変更」にあたります。したがって,エ,取消料の支払いが不要です。

(旅行者の解除権)
第十六条 旅行者は,いつでも別表第一に定める取消料を当社に支払って募集型企画旅行契約を解除することができます。通信契約を解除する場合にあっては,当社は,提携会社のカードにより所定の伝票への旅行者の署名なくして取消料の支払いを受けます。
2 旅行者は,次に掲げる場合において,前項の規定にかかわらず,旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます
 一 当社によって契約内容が変更されたとき。ただし,その変更が別表第二上欄に掲げるものその他の重要なものであるときに限ります
 二 略
 三 略
 四 当社が旅行者に対し,第十条第一項の期日までに,確定書面を交付しなかったとき
 五 略
3,4 略

別表第二 変更補償金

(7)募集型企画旅行契約の部「旅行業者の解除権等-旅行開始前の解除」に関する次の記述のうち,旅行業者が旅行開始前に契約を解除できないものはどれか(いずれの場合も解除に係る旅行者への理由説明は行うものとする。)。
 ア.旅行者が,旅行業者があらかじめ明示した参加旅行者の条件を満たしていないことが判明したとき。
 イ.2泊3日の国内旅行において,旅行者の数が契約書面に記載した最少催行人員に達しなかったため,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって7日目に当たる日に,旅行を中止する旨を旅行者に通知したとき。
 ウ.通信契約を締結した場合であって,旅行者の有するクレジットカードが無効になり,旅行者が旅行代金等に係る債務の一部又は全部を旅行業者が提携するクレジットカード会社のカード会員規約に従って決済できなくなったとき。
 エ.花見を目的とする日帰りの国内旅行において,異常気象により開花が遅れ,花見そのものができないおそれが極めて大きいことから。当該旅行を中止する旨を旅行開始日の前日から起算してさかのぼって3日目に当たる日に旅行者に通知したとき。


正解:イ(配点:4)
解説:アは,約款(募集)17条1項1号の通りですから,解除することができます。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一 旅行者が当社があらかじめ明示した性別,年齢,資格,技能その他の参加旅行者の条件を満たしていないことが判明したとき
 二~九 略
2,3 略


イについて,約款(募集)17条3項は,日帰り以外の国内旅行を,最少催行人員に達しないこと理由に解除する場合には,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって13日目に当たる日より前に通知をする旨を規定しています。したがって,イは,これを7日目に当たる日にしているため,解除することができません。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 略
2 略
3 当社は,第一項第五号に掲げる事由により募集型企画旅行契約を解除しようとするときは,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって,国内旅行にあっては十三日目(日帰り旅行については,三日目)に当たる日より前に,海外旅行にあっては二十三日目(別表第一に規定するピーク時に旅行を開始するものについては三十三日目)に当たる日より前に,旅行を中止する旨を旅行者に通知します


ウは,約款(募集)17条1項8号の通りですから,解除することができます。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一~七 略
 八 通信契約を締結した場合であって,旅行者の有するクレジットカードが無効になる等,旅行者が旅行代金等に係る債務の一部又は全部を提携会社のカード会員規約に従って決済できなくなったとき
 九 略
2,3 略


エは,約款(募集)17条1項6号の通りですから,解除することができます。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一~五 略
 六 スキーを目的とする旅行における必要な降雪量等の旅行実施条件であって契約の締結の際に明示したものが成就しないおそれが極めて大きいとき
 七~九 略
2,3 略


(8)募集型企画旅行契約の部「旅行業者の解除権-旅行開始後の解除」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者は,官公署の命令など当該旅行業者の関与し得ない事由が生じた場合であって,旅行の継続が不可能となったときは,旅行開始後であっても,旅行者に理由を説明して,契約の一部を解除することがある。
 イ.旅行業者が旅行開始後に契約を解除したときは,旅行業者と旅行者との間の契約関係は,将来に向かってのみ消滅する。
 ウ.旅行業者が旅行開始後に契約を解除したときは,旅行者が既に提供を受けた旅行サービスに関する旅行業者の債務については,有効な弁済がなされたものとされる。
 エ.旅行開始後,旅行者が旅行を安全かつ円滑に実施するための添乗員の指示に従わず,団体旅行の規律を乱し,当該旅行の安全かつ円滑な実施を妨げるため,旅行業者が契約を解除したとき,旅行業者は,旅行者に対し払い戻すべき金額が生じても払い戻すことを要しない。


正解:エ(配点:4)
解説:アは,約款(募集)18条1項4号の通りですから,正しいです。

(当社の解除権-旅行開始後の解除)
第十八条 当社は,次に掲げる場合において,旅行開始後であっても,旅行者に理由を説明して,募集型企画旅行契約の一部を解除することがあります。
 一~三 略
 四 天災地変,戦乱,暴動,運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止,官公署の命令その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合であって,旅行の継続が不可能となったとき
2,3 略


イは,約款(募集)18条2項前段の通りですから,正しいです。

(当社の解除権-旅行開始後の解除)
第十八条 略
2 当社が前項の規定に基づいて募集型企画旅行契約を解除したときは,当社と旅行者との間の契約関係は,将来に向かってのみ消滅します。この場合において,旅行者が既に提供を受けた旅行サービスに関する当社の債務については,有効な弁済がなされたものとします。
3 略


ウは,約款(募集)18条2項後段の通りですから,正しいです。

(当社の解除権-旅行開始後の解除)
第十八条 略
2 当社が前項の規定に基づいて募集型企画旅行契約を解除したときは,当社と旅行者との間の契約関係は,将来に向かってのみ消滅します。この場合において,旅行者が既に提供を受けた旅行サービスに関する当社の債務については,有効な弁済がなされたものとします
3 略


エについて,約款(募集)18条3項は,解除時において旅行者がいまだ提供を受けていない旅行サービスに係る旅行代金から取消料等を差し引いたものを旅行者に払い戻すとしています。したがって,エは,誤りです。

(当社の解除権-旅行開始後の解除)
第十八条 略
2 略
3 前項の場合において,当社は,旅行代金のうち旅行者がいまだその提供を受けていない旅行サービスに係る部分に係る金額から,当該旅行サービスに対して取消料,違約料その他の既に支払い,又はこれから支払わなければならない費用に係る金額を差し引いたものを旅行者に払い戻します



2020-04-26(Sun)

【国内旅行業務取扱管理者試験】令和元年度第1問

書き途中

以下の各設問について,該当する答を,選択肢の中からそれぞれ1つ選びなさい。

(1)次の記述のうち,法第1条「目的」に定められているものはどれか。
 ア.旅行業等を営む者の業務の適正な運営の確保
 イ.旅行業等を営む者を通じた訪日外国人旅行者の誘致と観光立国の促進
 ウ.旅行業等を営む者を通じた地方創生と国民経済の発展
 エ.旅行業等を営む者が組織する団体の活性化による国際親善の促進


正解:ア(配点:4)
解説:法1条は下記のとおり定めています。アは法1条に規定されていますが,イないしエは法1条に規定されていません。したがって,正解はアです。

(目的)
第一条 この法律は,旅行業等を営む者について登録制度を実施し,あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに,その組織する団体の適正な活動を促進することにより,旅行業務に関する取引の公正の維持,旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。


(2)報酬を得て,次の行為を事業として行う場合,旅行業の登録を受けなければならないものはどれか。
 ア.町内会が,徒歩での日帰り紅葉ハイキングを実施し,昼食のためにレストランを手配する行為
 イ.観光案内所が,旅行者からの依頼を受け,他人の経営する貸切バスを手配する行為
 ウ.イベント事業者が,外国の法令に準拠して外国において旅行業を営む者からの依頼を受け,他人の経営する旅館を手配する行為
 エ.人材派遣会社が,旅行業者からの依頼を受け,全国通訳案内士又は地域通訳案内士を派遣する行為


正解:イ(配点:4)
解説:


(3)旅行業又は旅行業者代理業の登録に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.第2種旅行業の有効期間の更新の登録がなされたときは,その登録の有効期間は,従前の登録の有効期間の満了の日から起算する。
 イ.地域限定旅行業の更新登録の申請をしようとする者は,その主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に有効期間の満了の日の2月前までに更新登録申請書を提出しなければならない。
 ウ.旅行業者代理業の新規登録の申請をしようとする者は,所属旅行業者を第種旅行業者とする場合であっても,当該登録の申請をしようとする者の主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に新規登録申請書を提出しなければならない。
 エ.旅行業者代理業については,登録の有効期間は定められていない。


正解:ア(配点:4)
解説:


(4)登録業務範囲に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか(いずれも総合旅行業務取扱管理者を選任しているものとする。)。
 ア.第1種旅行業者は,法第14条の2第1項の規定により,地域限定旅行業者が実施する本邦内の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものであって,一の企画旅行ごとに一の拠点区域内において実施されるものに限る。)について,当該地域限定旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる。
 イ.第2種旅行業者は,本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)以外の全ての旅行業務を取り扱うことができる。
 ウ.第3種旅行業者は,訪日外国人旅行者を対象とした本邦内の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものであって,一の企画旅行ごとに一の拠点区域内において実施されるものに限る。)を実施することができる。
 エ.地域限定旅行業者は,本邦外の旅行に関する相談に応ずることはできない。


正解:エ(配点:4)
解説:


(5)次の記述のうち,旅行業又は旅行業者代理業の登録の拒否事由に該当するもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.申請前5年以内に旅行業務に関し不正な行為をした者
 b.第2種旅行業を営もうとする者であって,その基準資産額が300万円であるもの
 c.刑法の規定に違反して罰金の刑に処せられ,その執行を終わった日から 年を経過していない者
 d.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

ア.a,c  イ.a,b,d  ウ.b,c,d  エ.a,b,c,d


正解:イ(配点:4)
解説:


(6)変更登録等に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 ア.第1種旅行業者は,法人の場合であって,その代表者の氏名について変更があったときは,観光庁長官に変更登録申請書を提出しなければならない。
 イ.第2種旅行業者は,主たる営業所の名称及び都道府県の区域を異にする所在地の変更があったときは,その日から30日以内に変更後の主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に変更登録申請書を提出しなければならない。
 ウ.第3種旅行業者は,第1種旅行業への変更登録の申請をしようとするときは,観光庁長官に変更登録申請書を提出しなければならない。
 エ.旅行業者代理業者は,地域限定旅行業への変更登録の申請をしようとするときは,当該旅行業者代理業者の主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に変更登録申請書を提出しなければならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(7)営業保証金に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者は,営業保証金の供託をしたときは,供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して,その旨を登録行政庁に届け出た後でなければ,その事業を開始してはならない。
 イ.第3種旅行業の新規登録を受けた者が供託すべき営業保証金の額は,登録の申請時に添付した書類に記載した旅行業務に関する旅行者との年間取引見込額が2億円未満である場合にあっては,300万円である。
 ウ.登録行政庁は,旅行業の登録をした場合において,登録の通知を受けた日から14日以内に旅行業者が法第7条第2項の届出をしないときは,その定める7日以上の期間内にその届出をすべき旨の催告をしなければならない。
 エ.営業保証金は,現金以外では国債証券に限り,当該証券の額面金額をもって,これに充てることができる。


正解:エ(配点:4)
解説:


(8)旅行業務取扱管理者の選任に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者等は,その営業所の旅行業務取扱管理者として選任した者の全てが欠けるに至ったときは,新たに旅行業務取扱管理者を選任するまでの間は,その営業所において旅行業務に関する契約を締結してはならない。
 イ.旅行業者等は,旅行業務取扱管理者について,5年ごとに旅行業務に関する法令,旅程管理その他の旅行業務取扱管理者の職務に関し必要な知識及び能力の向上を図るため,旅行業協会が実施する研修を受けさせなければならない。
 ウ.旅行業者等は,営業所で旅行業務を取り扱う者が1人である場合には,当該営業所については,旅行業務取扱管理者を選任しなくてもよい。
 エ.地域限定旅行業者は,本邦内の旅行のうち営業所の所在する市町村の区域その他の国土交通省令で定める地域内のもののみについて旅行業務を取り扱う営業所にあっては,地域限定旅行業務取扱管理者試験(当該営業所の所在する地域に係るものに限る。)に合格した者を旅行業務取扱管理者として選任することで足りる。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(9)次の記述のうち,旅行業務取扱管理者の職務として,定められているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行に関する計画の作成に関する事項
 b.法第12条の5の規定による書面の交付に関する事項
 c.法第12条の10の規定による企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
 d.法第7条の規定による営業保証金の供託に関する事項

ア.a,d  イ.a,b,c  ウ.b,c,d  エ.a,b,c,d


正解:イ(配点:4)
解説:


(10)旅行業約款に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者代理業者は,所属旅行業者の旅行業約款,法第14条の2第1項又は第2項の規定により他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる者にあっては当該他の旅行業者の旅行業約款をその営業所において,旅行者に見やすいように掲示し,又は旅行者が閲覧することができるように備え置かなければならない。
 イ.旅行業者が,観光庁長官及び消費者庁長官が定めて公示した標準旅行業約款と同一の旅行業約款を定めたときは,その旅行業約款については,登録行政庁による認可を受けたものとみなす。
 ウ.保証社員でない旅行業者の旅行業約款にあっては,営業保証金を供託している供託所の名称又は所在地に変更があったときは,登録行政庁の認可を受けなければならない。
 エ.旅行業者の責任に関する事項が明確に(企画旅行を実施する旅行業者にあっては,企画旅行契約と手配旅行契約その他の企画旅行契約以外の契約との別に応じ,明確に)定められているものであることは,旅行業約款の認可基準の一つである。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(11)旅行業者等が旅行業務に関し旅行者と契約を締結しようとするときの取引条件の説明及び取引条件の説明をするときに交付する書面に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 ア.旅行業者等は,旅行者と手配旅行契約を締結しようとするときに,国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面を交付する場合は,旅行者に対し取引条件の説明をすることを要しない。
 イ.旅行業者等は,対価と引換えに法第12条の5に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付する場合においては,旅行者に対し,取引条件の説明にあたって,国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面の交付を要しない。
 ウ.旅行業者等は,旅行者に対し,取引条件の説明をするときに交付する書面に代えて,当該書面に記載すべき事項を情報通信の技術を利用する方法で提供するときは,当該旅行者の承諾を要しない。
 エ.旅行業者は,旅行に関する相談に応ずる行為に係る旅行業務について,旅行者と契約を締結しようとするときは,取引条件の説明をすることを要しない。


正解:イ(配点:4)
解説:


(12)次の記述のうち,旅行業者等が旅行者と企画旅行契約を締結したときに交付する書面の記載事項として,定められているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行に参加する資格を定める場合にあっては,その旨及び当該資格
 b.契約の申込方法及び契約の成立に関する事項
 c.旅行者が旅行業者等に支払うべき対価及びその収受の方法
 d.旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に含まれていない旅行に関する経費であって旅行者が通常必要とするもの

ア.a,b  イ.c,d  ウ.a,c,d  エ.a,b,c,d


正解:ウ(配点:4)
解説:


(13)旅行業務取扱管理者の証明書の提示,外務員の証明書携帯等に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業務取扱管理者は,旅行者から請求があったときは,国土交通省令で定める様式による旅行業務取扱管理者の証明書を提示しなければならない。
 イ.旅行業者代理業者によって選任された旅行業務取扱管理者の証明書は,当該旅行業者代理業者の所属旅行業者が交付しなければならない。
 ウ.外務員は,所属する旅行業者等の営業所以外の場所でその旅行業者等のために旅行業務を行なうときは,旅行者からの請求の有無にかかわらず,外務員の証明書を提示しなければならない。
 エ.外務員は,旅行者が悪意であったときを除き,その所属する旅行業者等に代わって,旅行者との旅行業務に関する取引についての一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなされる。


正解:イ(配点:4)
解説:


(14)企画旅行に参加する旅行者を募集するための広告に関する次の記述のうち,誤っているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.広告には,企画旅行を実施する営業所の旅行業務取扱管理者の氏名を表示しなければならない。
 b.広告には,旅程管理業務を行う者が同行しない場合の旅行地における企画者との連絡方法を表示しなければならない。
 c.広告には,旅行中の損害の補償に関する事項を表示しなければならない。
 d.広告をするときに,企画者以外の者の氏名又は名称を表示する場合にあっては,文字の大きさ等に留意して,企画者の氏名又は名称の明確性を確保しなければならない。

ア.a,b  イ.b,c  ウ.c,d  エ.a,b,c


正解:エ(配点:4)
解説:


(15)次の記述から,旅行業者等が旅行業務について広告をするとき,誇大表示をしてはならない事項として,定められているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行地における旅行者の安全の確保に関する事項
 b.感染症の発生の状況その他の旅行地における衛生に関する事項
 c.旅行地の景観,環境その他の状況に関する事項
 d.旅行業者等の業務の範囲,資力又は信用に関する事項

ア.a,c  イ.a,b,d  ウ.b,c,d  エ.a,b,c,d


正解:エ(配点:4)
解説:


(16)標識に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業者等は,営業所において,国土交通省令で定める様式の標識を,旅行者に見やすいように備え置かなければならない。
 イ.国土交通省令で定める様式の標識には,その営業所において選任されている旅行業務取扱管理者の氏名を記載しなければならない。
 ウ.旅行業者代理業者は,国土交通省令で定める様式の標識に所属旅行業者の登録番号及び氏名又は名称を記載しなければならない。
 エ.旅行業者等以外の者は,国土交通省令で定める様式の標識又はこれに類似する標識を掲示してはならない。


正解:ア(配点:4)


(17)企画旅行の円滑な実施のための措置に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 ア.旅行業者は,旅行に関する計画に定めるサービスの旅行者への確実な提供を確保するために,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって20日目に当たる日までに,必要な予約その他の措置を講じなければならない。
 イ.旅行業者は,本邦外の旅行であって,旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付した場合は,旅行地において旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置を講ずることを要しない。
 ウ.旅行業者は,本邦内の旅行であって,契約の締結の前に旅行者に旅程管理のための措置を講じない旨を説明した場合は,2人以上の旅行者が同一の日程により行動することを要する区間における円滑な旅行の実施を確保するために必要な集合時刻,集合場所その他の事項に関する指示を行うことを要しない。
 エ.旅行業者は,本邦外の旅行であって,旅行に関する計画に定めるサービスの内容の変更を必要とする事由が生じた場合は,代替サービスの手配及び当該サービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置を講じなければならない。


正解:エ(配点:4)
解説:


(18)旅程管理業務を行う者に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 ア.旅程管理業務を行う主任の者に必要な実務の経験は,登録研修機関が実施する旅程管理研修の課程を修了した日の前後1年以内に1回以上又は当該研修を修了した日から5年以内に3回以上の旅程管理業務に従事した経験とする。
 イ.本邦外の企画旅行に参加する旅行者に同行して旅程管理業務を行う主任の者に選任されるために必要な実務の経験には,本邦内の企画旅行に同行して旅程管理業務に従事した経験も含まれる。
 ウ.旅行業者は,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わった日から5年を経過していない者を旅程管理業務を行う主任の者として選任することはできない。
 エ.旅行業者は,登録研修機関が実施する旅程管理研修の課程を修了し,かつ,旅行の目的地を勘案して国土交通省令で定める旅程管理業務に関する実務の経験を有する者であれば,旅行業務に関し不正な行為をした者であっても,当該不正行為をした日から3年を経過していれば,旅程管理業務を行う主任の者として選任することができる。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(19)法第13条「禁止行為」に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
 a.旅行業者等は,旅行者に対し,旅行地において施行されている法令に違反する行為を行うことに関し便宜を供与する行為をしてはならない。
 b.旅行業者等は,その営業所において掲示した旅行業務の取扱いの料金を超えて料金を収受する行為をしてはならない。
 c.旅行業者等は,宿泊サービスを提供する者(旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者を除く。)と取引を行う際に,当該者が住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をした者であるかどうかの確認を怠る行為をしてはならない。
 d.旅行業者等は,旅行業務に関し取引をした者に対し,その取引によって生じた債務の履行をいかなる場合も遅延する行為をしてはならない。

ア.a,d  イ.a,b,c  ウ.b,c,d  エ.a,b,c,d


正解:イ(配点:4)
解説:


(20)旅行業者代理業者に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 ア.旅行業者代理業者は,旅行業務に関し取引をしようとするときは,所属旅行業者の登録番号を取引の相手方に明示しなければならない。
 イ.所属旅行業者は,旅行業者代理業者が旅行業務につき旅行者に加えた損害をいかなる場合も賠償する責めに任ずる。
 ウ.旅行業者の登録の有効期間が満了したことによりその登録が効力を失い,登録が抹消されたときは,当該旅行業者を所属旅行業者とする旅行業者代理業者の登録はその効力を失う。
 エ.旅行業者代理業者は,所属旅行業者の承諾がある場合に限り,その行う営業が旅行業であるとの広告をすることができる。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(21)法第18条の3「業務改善命令」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.登録行政庁は,旅行業者に対し,旅行業協会に加入することを命ずることができる。
 イ.登録行政庁は,旅行業者に対し,旅行者に生じた損害を賠償するために必要な金額を担保することができる保険契約を締結することを命ずることができる。
 ウ.登録行政庁は,旅行業者に対し,企画旅行に係る旅程管理のための措置を確実に実施することを命ずることができる。
 エ.登録行政庁は,旅行業者に対し,旅行業務取扱管理者を解任することを命ずることができる。


正解:ア(配点:4)
解説:


(22)法第19条「登録の取消し等」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.登録行政庁は,旅行業者等が登録を受けてから6月以内に事業を開始せず,又は引き続き6月以上事業を行っていないと認め,登録を取り消した場合においては,直ちに,理由を付して,その旨を当該旅行業者等に通知しなければならない。
 イ.登録行政庁は,旅行業者等が旅行業法若しくは旅行業法に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは,6月以内の期間を定めて当該旅行業者等の業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
 ウ.登録行政庁は,登録当時,旅行業者等が営業所ごとに法第11条の2の規定による旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者に該当していたことが判明したときは,当該旅行業者等の登録を取り消すことができる。
 エ.登録行政庁は,旅行業者が不正の手段により有効期間の更新の登録を受けたときは,当該旅行業者の登録を取り消すことができる。


正解:ア(配点:4)
解説:


(23)旅行サービス手配業に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行サービス手配業の新規登録の申請をしようとする者は,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に新規登録申請書を提出しなければならない。
 イ.旅行サービス手配業者が,旅行サービス手配業務に関し取引をする者と旅行サービス手配業務に関し契約を締結したときに,当該取引をする者に対し交付する書面の記載事項の一つとして,旅行者に提供すべき旅行に関するサービスの内容に関する事項が規定されている。
 ウ.旅行サービス手配業務取扱管理者を選任しなければならない営業所が複数ある場合において,当該複数の営業所が近接しているときとして,営業所間の距離の合計が40キロメートル以下であるときは,旅行サービス手配業務取扱管理者は,その複数の営業所を通じて1人で足りる。
 エ.旅行サービス手配業者は,運送サービス(専ら企画旅行の実施のために提供されるものに限る。)を提供する者に対し,輸送の安全の確保を不当に阻害する行為を行ってはならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:


(24)次の記述のうち,旅行業協会が適正かつ確実に実施しなければならない業務として定められていないものはどれか。
 ア.旅行業務又は旅行サービス手配業務に関する苦情の解決のため,旅行業者等又は旅行サービス手配業者の営業所への立入検査
 イ.旅行業務又は旅行サービス手配業務の取扱いに従事する者に対する研修
 ウ.旅行業務又は旅行サービス手配業務の適切な運営を確保するための旅行業者等又は旅行サービス手配業者に対する指導
 エ.旅行業務及び旅行サービス手配業務に関する取引の公正の確保又は旅行業,旅行業者代理業及び旅行サービス手配業の健全な発達を図るための調査,研究及び広報


正解:ア(配点:4)
解説:


(25)弁済業務保証金制度に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 ア.旅行業協会に加入しようとする旅行業者は,その加入しようとする日までに,所定の弁済業務
証金分担金を旅行業協会に納付しなければならない。
 イ.旅行業協会から還付充当金を納付するよう通知を受けた保証社員が,その通知を受けた日から7日以内に,その通知された額の還付充当金を旅行業協会に納付しないときは,当該保証社員は旅行業協会の社員の地位を失う。
 ウ.旅行業協会が供託している弁済業務保証金から弁済を受ける権利を実行しようとする旅行者は,その債権について旅行業協会の認証を受けなければならない。
 エ.弁済業務保証金制度により,保証社員と旅行業務に関し取引をした旅行者が,その取引によって生じた債権に関し,弁済を受けることができるのは,当該旅行業者が旅行業協会に納付している弁済業務保証金分担金の額の範囲内までである。


正解:エ(配点:4)
解説:

2020-04-25(Sat)

〈令和2年改正対応〉【総合旅行業務取扱管理者試験】令和元年度②旅行業約款,運送約款及び宿泊約款

書き途中



第1問 標準旅行業約款に関する以下の問1.~問17.の各設問について,該当するものをそれぞれの選択肢から一つ選び,問18.~問20.の各設問について,該当するものをそれぞれの選択肢からすべて選び,解答用紙にマークしなさい。  (配点4点×20)

問1.募集型企画旅行契約に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 a.契約は,約款の定めるところによるが,約款に定めのない事項については,法令又は一般に確立された慣習による。
 b.旅行業者が,旅程保証に基づき旅行者名に対して旅行につき支払うべき変更補償金の額が1,000円未満であっても,変更補償金を支払う旨を契約書面に記載し特約を結んだときは,その特約が約款に優先して適用される。
 c.旅行者が,電話により予約を行い,その後旅行業者の店舗に行き,旅行業者が提携するカード会社のクレジットカードにより旅行代金を支払った場合は,通信契約となる。
 d.電子承諾通知とは,契約の申込みに対する承諾の通知であって,情報通信の技術を利用する方法のうち旅行業者又は当該旅行業者を代理して販売する旅行業者等が使用する電子計算機等と旅行者が使用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいう。


正解:c(配点:4) ※令和2年改正によりdは削除されました
解説:aは,約款(募集)1条1項の通りですから,正しいです。

(適用範囲)
第一条 当社が旅行者との間で締結する募集型企画旅行に関する契約(以下「募集型企画旅行契約」といいます。)は,この約款の定めるところによりますこの約款に定めのない事項については,法令又は一般に確立された慣習によります
2 略


bについて,約款(募集)29条2項は,変更補償金の額が1000円未満であるときは,旅行業者は,変更補償金を支払わない旨を規定しています。もっとも,約款(募集)1条2項によれば,旅行業者が,旅行者に不利にならない範囲で特約を結んだときは,約款よりも特約が優先します。変更補償金の額が1000円未満でも支払う旨の特約は,旅行者にとって有利なものですから,同特約が約款に優先することになります。したがって,bは,正しいです。

(適用範囲)
第一条 略
2 当社が法令に反せず,かつ,旅行者の不利にならない範囲で書面により特約を結んだときは,前項の規定にかかわらず,その特約が優先します
(旅程保証)
第二十九条 略
2 当社が支払うべき変更補償金の額は,旅行者一名に対して一募集型企画旅行につき旅行代金に十五%以上の当社が定める率を乗じた額をもって限度とします。また,旅行者一名に対して一募集型企画旅行につき支払うべき変更補償金の額が千円未満であるときは,当社は,変更補償金を支払いません
3 略


cについて,約款(募集)2条3項は,「通信契約」といえるためには,電話等の通信手段による申込みを受けて契約が締結されなければならない旨を規定しています。本問では,電話による予約しかされておらず,契約の申込みがされたとはいえないため,「通信契約」にはあたりません。したがって,cは,誤りです。

(用語の定義)
第二条 略
2 略
3 この部で「通信契約」とは,当社が,当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が提携するクレジットカード会社(以下「提携会社」といいます。)のカード会員との間で電話,郵便,ファクシミリ,インターネットその他の通信手段による申込みを受けて締結する募集型企画旅行契約であって,当社が旅行者に対して有する募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等に係る債権又は債務を,当該債権又は債務が履行されるべき日以降に別に定める提携会社のカード会員規約に従って決済することについて,旅行者があらかじめ承諾し,かつ当該募集型企画旅行契約の旅行代金等を第十二条第二項,第十六条第一項後段,第十九条第二項に定める方法により支払うことを内容とする募集型企画旅行契約をいいます。
4 略


dについて,令和2年改正前の約款(募集)2条4項は,「電子承諾通知」について,問題文に記載のような定義を置いていました。これは,契約の成立時期に関する約款(募集)8条2項が,通信契約の成立時期について,電子承諾通知を用いる場合と用いない場合とで異なる規定を置いていたため,同条にいう「電子承諾通知」の意義を明らかにするための規定であったと考えられます。しかし,令和2年改正により,通信契約の成立時期について,電子承諾通知を用いる場合と用いない場合との区別を取りやめることとなり,条文上から電子承諾通知の文言が削除されました。そのため,令和2年改正後は,定義規定として「電子承諾通知」の意義を明らかにする必要がなくなったため,約款(募集)2条4項は削除されました。したがって,dは,内容的に誤りではありませんが,令和2年改正後は出題されないものと思われます。

◆◇◆令和2年改正前条文◆◇◆
(用語の定義)
第二条 この約款で「募集型企画旅行」とは,当社が,旅行者の募集のためにあらかじめ,旅行の目的地及び日程,旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し,これにより実施する旅行をいいます。
2 この約款で「国内旅行」とは,本邦内のみの旅行をいい,「海外旅行」とは,国内旅行以外の旅行をいいます。
3 この部で「通信契約」とは,当社が,当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が提携するクレジットカード会社(以下「提携会社」といいます。)のカード会員との間で電話,郵便,ファクシミリその他の通信手段による申込みを受けて締結する募集型企画旅行契約であって,当社が旅行者に対して有する募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等に係る債権又は債務を,当該債権又は債務が履行されるべき日以降に別に定める提携会社のカード会員規約に従って決済することについて,旅行者があらかじめ承諾し,かつ当該募集型企画旅行契約の旅行代金等を第十二条第二項,第十六条第一項後段,第十九条第二項に定める方法により支払うことを内容とする募集型企画旅行契約をいいます。
4 この部で「電子承諾通知」とは,契約の申込みに対する承諾の通知であって,情報通信の技術を利用する方法のうち当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が使用する電子計算機,ファクシミリ装置,テレックス又は電話機(以下「電子計算機等」といいます。)と旅行者が使用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいいます。
5 この約款で「カード利用日」とは,旅行者又は当社が募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等の支払又は払戻債務を履行すべき日をいいます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
◆◇◆令和2年改正後条文◆◇◆
(用語の定義)
第二条 この約款で「募集型企画旅行」とは,当社が,旅行者の募集のためにあらかじめ,旅行の目的地及び日程,旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し,これにより実施する旅行をいいます。
2 この約款で「国内旅行」とは,本邦内のみの旅行をいい,「海外旅行」とは,国内旅行以外の旅行をいいます。
3 この部で「通信契約」とは,当社が,当社又は当社の募集型企画旅行を当社を代理して販売する会社が提携するクレジットカード会社(以下「提携会社」といいます。)のカード会員との間で電話,郵便,ファクシミリその他の通信手段による申込みを受けて締結する募集型企画旅行契約であって,当社が旅行者に対して有する募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等に係る債権又は債務を,当該債権又は債務が履行されるべき日以降に別に定める提携会社のカード会員規約に従って決済することについて,旅行者があらかじめ承諾し,かつ当該募集型企画旅行契約の旅行代金等を第十二条第二項,第十六条第一項後段,第十九条第二項に定める方法により支払うことを内容とする募集型企画旅行契約をいいます。
4 この約款で「カード利用日」とは,旅行者又は当社が募集型企画旅行契約に基づく旅行代金等の支払又は払戻債務を履行すべき日をいいます。


問2.募集型企画旅行契約に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 a.旅行の参加に際し,特別な配慮を必要とする旅行者が,契約の申込時にその旨を申し出た場合,旅行業者は可能な範囲内でこれに応じ,旅行者のために講じた特別な措置に要する費用を負担しなければならない。
 b.旅行業者は,契約において,旅行者が旅行業者の定める旅行日程に従って,旅行サービスの提供を受けることができるように,手配し,旅程を管理することを引き受けるが,海外旅行についてのみ,その手配の全部又は一部を手配代行者に代行させることができる。
 c.通信契約で,旅行業者が電子承諾通知を発する場合,契約は旅行業者が当該通知を発した時に成立する。
 d.旅行業者が,契約の予約を受け付けた場合において,旅行者が旅行業者の定めた期間内に申込金を提出しない場合又は会員番号等を通知しない場合は,旅行業者は,予約がなかったものとして取り扱う。


正解:d(配点:4) ※令和2年改正によりcは削除されました
解説:aについて,約款(募集)5条5項は,旅行者に対する特別な措置に要する費用は,旅行者が負担することとしています。したがって,aは,この費用負担を旅行業者がするとしている点で誤りです。

(契約の申込み)
第五条 略
2,3 略
4 募集型企画旅行の参加に際し,特別な配慮を必要とする旅行者は,契約の申込時に申し出てください。このとき,当社は可能な範囲内でこれに応じます
5 前項の申出に基づき,当社が旅行者のために講じた特別な措置に要する費用は,旅行者の負担とします


bについて,約款(募集)4条は,旅行業者が手配代行者を利用できる場合について国内旅行か海外旅行かで区別していません。したがって,bは,海外旅行についてのみとしている点で誤りです。

(旅行契約の内容)
第三条 当社は,募集型企画旅行契約において,旅行者が当社の定める旅行日程に従って,運送・宿泊機関等の提供する運送,宿泊その他の旅行に関するサービス(以下「旅行サービス」といいます。)の提供を受けることができるように,手配し,旅程を管理することを引き受けます。
(手配代行者)
第四条 当社は,募集型企画旅行契約の履行に当たって,手配の全部又は一部を本邦内又は本邦外の他の旅行業者,手配を業として行う者その他の補助者に代行させることがあります


cについて,令和2年改正前の約款(募集)8条2項は,通信契約の場合には,旅行業者が承諾通知を発した時点で契約が成立するのが原則(発信主義)であり,電子承諾通知を用いる場合には,旅行者に承諾通知が到達したときに契約が成立するとの例外を置いていました。しかし,令和2年改正後の約款(募集)8条2項は,電子承諾通知の例外を削除し,通信契約の規律を一本化するとともに,契約の成立時期を承諾通知が旅行者に到達したときに変更しました(到達主義)。したがって,cは,試験実施当時の約款(募集)でも誤りでしたが,令和2年改正後も誤りとなります。なお,法改正の詳細については,こちらをご覧ください。

◆◇◆令和2年改正前条文◆◇◆
(契約の成立時期)
第八条 略
2 通信契約は,前項の規定にかかわらず,当社が契約の締結を承諾する旨の通知を発した時に成立するものとします。ただし,当該契約において電子承諾通知を発する場合は,当該通知が旅行者に到達した時に成立するものとします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
◆◇◆令和2年改正後条文◆◇◆
(契約の成立時期)
第八条 略
2 通信契約は,前項の規定にかかわらず,当社が契約の締結を承諾する旨の通知が旅行者に到達した時に成立するものとします。


dは,約款(募集)6条3項の通りですから,正しいです。

(電話等による予約)
第六条 当社は,電話,郵便,ファクシミリ,インターネットその他の通信手段による募集型企画旅行契約の予約を受け付けます。この場合,予約の時点では契約は成立しておらず,旅行者は,当社が予約の承諾の旨を通知した後,当社が定める期間内に,前条第一項又は第二項の定めるところにより,当社に申込書と申込金を提出又は会員番号等を通知しなければなりません。
2 略
3 旅行者が第一項の期間内に申込金を提出しない場合又は会員番号等を通知しない場合は,当社は,予約がなかったものとして取り扱います


問3.募集型企画旅行契約における契約書面及び確定書面に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 a.旅行業者は,契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び旅行業者の責任に関する事項を記載した書面を交付しなければならない。
 b.旅行業者は,あらかじめ旅行者の承諾を得て,契約書面又は確定書面の交付に代えて,情報通信の技術を利用する方法により記載事項を提供したときは,旅行者の使用に係る通信機器に記載事項を記録するためのファイルが備えられていない場合を除き,旅行者の使用する通信機器に備えられたファイルに記載事項が記録されたことを確認しなければならない。
 c.旅行業者が契約により手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,契約書面に記載するところによるが,確定書面を交付した場合は,確定書面に記載するところに特定される。
 d.確定書面は,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって7日目に当たる日以降に契約の申込みがなされた場合,旅行開始日の前日までの旅行業者が契約書面に定める日までに交付しなければならない。


正解:d(配点:4)
解説:aは,約款(募集)9条1項の通りですから,正しいです。

(契約書面の交付)
第九条 当社は,前条の定める契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面(以下「契約書面」といいます。)を交付します
2 略


bは,約款(募集)11条1項,2項の通りですから,正しいです。

(情報通信の技術を利用する方法)
第十一条 当社は,あらかじめ旅行者の承諾を得て,募集型企画旅行契約を締結しようとするときに旅行者に交付する旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面,契約書面又は確定書面の交付に代えて,情報通信の技術を利用する方法により当該書面に記載すべき事項(以下この条において「記載事項」といいます。)を提供したときは,旅行者の使用する通信機器に備えられたファイルに記載事項が記録されたことを確認します
2 前項の場合において,旅行者の使用に係る通信機器に記載事項を記録するためのファイルが備えられていないときは,当社の使用する通信機器に備えられたファイル(専ら当該旅行者の用に供するものに限ります。)に記載事項を記録し,旅行者が記載事項を閲覧したことを確認します。


cは,約款(募集)9条2項,10条3項の通りですから,正しいです。

(契約書面の交付)
第九条 略
2 当社が募集型企画旅行契約により手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,前項の契約書面に記載するところによります
(確定書面)
第十条 略
2 略
3 第一項の確定書面を交付した場合には,前条第二項の規定により当社が手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,当該確定書面に記載するところに特定されます


dについて,約款(募集)10条1項かっこ書きは,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって7日目に当たる日以降に契約の申し込みがなされた場合は,旅行開始日までに確定書面を交付するものとしています。したがって,dは,これを旅行会日の前日までに交付するとしている点で誤りです。

(確定書面)
第十条 前条第一項の契約書面において,確定された旅行日程,運送若しくは宿泊機関の名称を記載できない場合には,当該契約書面において利用予定の宿泊機関及び表示上重要な運送機関の名称を限定して列挙した上で,当該契約書面交付後,旅行開始日の前日(旅行開始日の前日から起算してさかのぼって七日目に当たる日以降に募集型企画旅行契約の申込みがなされた場合にあっては,旅行開始日)までの当該契約書面に定める日までに,これらの確定状況を記載した書面(以下「確定書面」といいます。)を交付します。
2,3 略


問4.募集型企画旅行契約における契約の変更に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
 a.利用する運送機関について適用を受ける運賃・料金の減額がなされたときは,旅行者の不利にならないよう,旅行業者はいかなる場合でも,その減少額だけ旅行代金を減額しなければならない。
 b.旅行業者の関与し得ない事由が生じた場合で,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,旅行業者は,旅行者にあらかじめ速やかに当該事由が旅行業者の関与し得ないものである理由及び当該事由との因果関係を説明し,旅行者の承諾を得た上でなければ契約内容を変更することができない。
 c.旅行者が,旅行業者の承諾を得て,契約上の地位を第三者に譲り渡した場合,契約上の地位を譲り受けた第三者が残りの旅行代金を支払う義務を負う。
 d.運送機関の過剰予約受付により座席の不足が発生したため,旅行の安全かつ円滑な実施のためやむを得ず契約内容を変更したことで,旅行の実施に要する費用が増加した場合,旅行業者は,その増額される金額の範囲内で旅行代金の額を増加することができる。


正解:c(配点:4)
解説:aについて,約款(募集)14条1項は,「通常サ雨堤される程度を大幅に超えて……減額される場合に」は,旅行代金の減額をすることができる旨を規定しています。したがって,aは,いかなる場合でも減額しなければならないとしている点で誤りです。

(旅行代金の額の変更)
第十四条 募集型企画旅行を実施するに当たり利用する運送機関について適用を受ける運賃・料金(以下この条において「適用運賃・料金」といいます。)が,著しい経済情勢の変化等により,募集型企画旅行の募集の際に明示した時点において有効なものとして公示されている適用運賃・料金に比べて,通常想定される程度を大幅に超えて増額又は減額される場合においては,当社は,その増額又は減額される金額の範囲内で旅行代金の額を増加し,又は減少することができます。
2~5 略


bについて,約款(募集)13条は,契約内容の変更にあたり,旅行者の承諾を要求していません。したがって,bは,誤りです。

(契約内容の変更)
第十三条 当社は,天災地変,戦乱,暴動,運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止,官公署の命令,当初の運行計画によらない運送サービスの提供その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合において,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,旅行者にあらかじめ速やかに当該事由が関与し得ないものである理由及び当該事由との因果関係を説明して,旅行日程,旅行サービスの内容その他の募集型企画旅行契約の内容(以下「契約内容」といいます。)を変更することがあります。ただし,緊急の場合において,やむを得ないときは,変更後に説明します。


cについて,約款(募集)15条3項は,旅行者の交替があった場合は,旅行契約上の地位を譲り受けた第三者は,契約に関する一切の権利義務を承継する旨を規定しています。旅行代金の支払義務は,ここにいう第三者が承継する「義務」に含まれます。したがって,cは,正しいです。

(旅行者の交替)
第十五条 略
2 略
3 第一項の契約上の地位の譲渡は,当社の承諾があった時に効力を生ずるものとし,以後,旅行契約上の地位を譲り受けた第三者は,旅行者の当該募集型企画旅行契約に関する一切の権利及び義務を承継するものとします


dについて,約款(募集)14条4項かっこ書きは,運送・宿泊機関が旅行サービスを提供しているのに設備の不足によって費用が増加する場合には,契約内容の変更にあたり旅行代金の額を変更することができない旨を規定しています。したがって,dは,誤りです。

(旅行代金の額の変更)
第十四条 略
2,3 略
4 当社は,前条の規定に基づく契約内容の変更により旅行の実施に要する費用(当該契約内容の変更のためにその提供を受けなかった旅行サービスに対して取消料,違約料その他既に支払い,又はこれから支払わなければならない費用を含みます。)の減少又は増加が生じる場合(費用の増加が,運送・宿泊機関等が当該旅行サービスの提供を行っているにもかかわらず,運送・宿泊機関等の座席,部屋その他の諸設備の不足が発生したことによる場合を除きます。)には,当該契約内容の変更の際にその範囲内において旅行代金の額を変更することがあります。
5 略


問5.募集型企画旅行契約における旅行開始前の旅行業者による契約の解除に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(いずれも旅行者に理由を説明し,取消料の支払いを要する期間内の解除とする。)
 a.通信契約を締結した旅行者の有するクレジットカードが無効になり,旅行代金を決済できなくなったため旅行業者が契約を解除した場合,旅行業者は,当該旅行者に取消料を請求することはできない。
 b.旅行業者は,旅行者が契約書面に記載する期日までに旅行代金を支払わないときは,当該期日において旅行者が契約を解除したものとし,この場合,旅行者は,旅行業者に対し,取消料に相当する額の違約料を支払わなければならない。
 c.1泊2日の国内旅行において,旅行者の数が最少催行人員に達しなかった場合,旅行業者は,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって13日目に当たる日より前に旅行を中止する旨を旅行者に通知しなかったときは,当該旅行を中止することはできない。
 d.旅行業者は,旅行者が団体旅行の円滑な実施を妨げるおそれがあると認められるときは,契約を解除することができる。


正解:b(配点:4)
解説:aについて,約款(募集)17条1項は,旅行代金が決済できない場合の旅行業者による解除にあたり,取消料の請求をすることができる旨の規定を置いていません。したがって,aは,正しいです。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一~七 略
 八 通信契約を締結した場合であって,旅行者の有するクレジットカードが無効になる等,旅行者が旅行代金等に係る債務の一部又は全部を提携会社のカード会員規約に従って決済できなくなったとき。
 九 略
2,3 略


bについて,約款(募集)17条2項は,旅行代金を支払わないことを理由とする旅行業者によるみなし解除は,代金支払期日の翌日を基準日としています。したがって,bは,これを代金支払期日の当日としている点で誤りです。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 略
2 旅行者が第十二条第一項の契約書面に記載する期日までに旅行代金を支払わないときは,当該期日の翌日において旅行者が募集型企画旅行契約を解除したものとします。この場合において,旅行者は,当社に対し,前条第一項に定める取消料に相当する額の違約料を支払わなければなりません。
3 略


cは,約款(募集)17条3項の通りですから,正しいです。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一~四 略
 五 旅行者の数が契約書面に記載した最少催行人員に達しなかったとき。
 六~九 略
2 略
3 当社は,第一項第五号に掲げる事由により募集型企画旅行契約を解除しようとするときは,旅行開始日の前日から起算してさかのぼって,国内旅行にあっては十三日目(日帰り旅行については,三日目)に当たる日より前に,海外旅行にあっては二十三日目(別表第一に規定するピーク時に旅行を開始するものについては三十三日目)に当たる日より前に,旅行を中止する旨を旅行者に通知します


dは,約款(募集)17条1項3号の通りですから,正しいです。

(当社の解除権等-旅行開始前の解除)
第十七条 当社は,次に掲げる場合において,旅行者に理由を説明して,旅行開始前に募集型企画旅行契約を解除することがあります。
 一,二 略
 三 旅行者が他の旅行者に迷惑を及ぼし,又は団体旅行の円滑な実施を妨げるおそれがあると認められるとき
 四~九 略
2,3 略


問6.募集型企画旅行契約における旅行代金の払戻しに関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(いずれも通信契約でない場合とし,旅行代金は全額収受済とする。)
 a.旅行開始日の前日に,旅行者の都合により契約が解除された場合,旅行業者は,旅行者に対し,解除の翌日から起算して7日以内に,旅行代金から取消料を差し引いた金額を払い戻さなければならない。
 b.旅行開始後に,契約内容の変更により旅行の実施に要する費用の減少が生じ,旅行業者が旅行代金を減額した場合は,旅行業者は,契約書面に記載した旅行終了日の翌日から起算して30日以内に,当該減額分を旅行者に払い戻さなければならない。
 c.旅行業者の責に帰すべき事由により旅行の実施が不可能になったため,旅行者が旅行開始前に契約を解除し旅行代金の払戻しを受けた場合であっても,旅行業者に対する旅行者の損害賠償請求権を行使することは妨げられない。
 d.旅行開始後において,旅行者が契約書面に記載された旅行サービスを受領することができなくなり,旅行者が当該契約の一部を解除したときは,旅行業者の責任の有無にかかわらず,旅行業者は,旅行代金のうち当該受領することができなくなった旅行サービスの部分に係る金額のすべてを払い戻さなければならない。


正解:d(配点:4)
解説:aについて,旅行者の都合による契約の解除は,約款(募集)16条1項に基づいてすることができるため,約款(募集)19条1項にいう「前三条の規定により……解除された場合」にあたります。そして,この解除が旅行開始前にされた場合には,解除の翌日から7日以内に払戻しを行うことは,同項の定めるとおりです。したがって,aは,正しいです。

(旅行者の解除権)
第十六条 旅行者は,いつでも別表第一に定める取消料を当社に支払って募集型企画旅行契約を解除することができます。通信契約を解除する場合にあっては,当社は,提携会社のカードにより所定の伝票への旅行者の署名なくして取消料の支払いを受けます。
2~4 略
(旅行代金の払戻し)
第十九条 当社は,第十四条第三項から第五項までの規定により旅行代金が減額された場合又は前三条の規定により募集型企画旅行契約が解除された場合において,旅行者に対し払い戻すべき金額が生じたときは,旅行開始前の解除による払戻しにあっては解除の翌日から起算して七日以内に,減額又は旅行開始後の解除による払戻しにあっては契約書面に記載した旅行終了日の翌日から起算して三十日以内に旅行者に対し当該金額を払い戻します
2,3 略


bについて,契約内容の変更による旅行代金の減額は,約款(募集)14条4項に基づいてすることができるため,約款(募集)19条1項の「第十四条第三項から第五項までの規定により旅行代金が減額された場合」にあたります。そして,代金減額がされた場合には,旅行終了日の翌日から30日以内に払戻しを行うことは,同項の定めるとおりです。したがって,bは,正しいです。

(旅行代金の額の変更)
第十四条 略
2,3 略
4 当社は,前条の規定に基づく契約内容の変更により旅行の実施に要する費用(当該契約内容の変更のためにその提供を受けなかった旅行サービスに対して取消料,違約料その他既に支払い,又はこれから支払わなければならない費用を含みます。)の減少又は増加が生じる場合(費用の増加が,運送・宿泊機関等が当該旅行サービスの提供を行っているにもかかわらず,運送・宿泊機関等の座席,部屋その他の諸設備の不足が発生したことによる場合を除きます。)には,当該契約内容の変更の際にその範囲内において旅行代金の額を変更することがあります。
5 略
(旅行代金の払戻し)
第十九条 当社は,第十四条第三項から第五項までの規定により旅行代金が減額された場合又は前三条の規定により募集型企画旅行契約が解除された場合において,旅行者に対し払い戻すべき金額が生じたときは,旅行開始前の解除による払戻しにあっては解除の翌日から起算して七日以内に,減額又は旅行開始後の解除による払戻しにあっては契約書面に記載した旅行終了日の翌日から起算して三十日以内に旅行者に対し当該金額を払い戻します
2,3 略


cは,約款(募集)19条3項の通りですから,正しいです。

(旅行代金の払戻し)
第十九条 略
2 略
3 前二項の規定は第二十七条又は第三十条第一項に規定するところにより旅行者又は当社が損害賠償請求権を行使することを妨げるものではありません


dについて,約款(募集)16条4項は,旅行業者の責に帰すべき事由によらない場合は,受領することができなくなった旅行サービスに係る金額から取消料,違約料,費用を差し引いたものを払い戻す旨を規定しています。したがって,dは,旅行業者の帰責事由の有無によって区別をしていない点で誤りです。

(旅行者の解除権)
第十六条 略
2 略
3 旅行者は,旅行開始後において,当該旅行者の責に帰すべき事由によらず契約書面に記載した旅行サービスを受領することができなくなったとき又は当社がその旨を告げたときは,第一項の規定にかかわらず,取消料を支払うことなく,旅行サービスの当該受領することができなくなった部分の契約を解除することができます。
4 前項の場合において,当社は,旅行代金のうち旅行サービスの当該受領することができなくなった部分に係る金額を旅行者に払い戻します。ただし,前項の場合が当社の責に帰すべき事由によらない場合においては,当該金額から,当該旅行サービスに対して取消料,違約料その他の既に支払い,又はこれから支払わなければならない費用に係る金額を差し引いたものを旅行者に払い戻します


問7.募集型企画旅行契約における旅程管理に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 a.旅行業者は,旅行サービスの内容を変更せざるを得ないときは,変更後の旅行サービスが当初の旅行サービスと同様のものとなるよう努め,契約内容の変更を最小限にとどめるよう努力しなければならない。
 b.旅行業者は,すべての旅行に添乗員その他の者を同行させ,旅程管理業務その他当該旅行に付随して旅行業者が必要と認める業務の全部又は一部を行わせなければならない。
 c.旅行業者は,旅行中の旅行者が,疾病,傷害等により保護を要する状態にあると認めたときは,必要な措置を講ずることがあり,この場合において,これが旅行業者の責に帰すべき事由によるものでないときは,当該措置に要した費用は旅行者の負担となる。
 d.旅行者は,旅行開始後旅行終了までの間において,団体で行動するときは,旅行を安全かつ円滑に実施するための旅行業者の指示に従わなければならない。


正解:b(配点:4)
解説:aは,約款(募集)23条2号の通りですから,正しいです。

(旅程管理)
第二十三条 当社は,旅行者の安全かつ円滑な旅行の実施を確保することに努力し,旅行者に対し次に掲げる業務を行います。ただし,当社が旅行者とこれと異なる特約を結んだ場合には,この限りではありません。
 一 略
 二 前号の措置を講じたにもかかわらず,契約内容を変更せざるを得ないときは,代替サービスの手配を行うこと。この際,旅行日程を変更するときは,変更後の旅行日程が当初の旅行日程の趣旨にかなうものとなるよう努めること,また,旅行サービスの内容を変更するときは,変更後の旅行サービスが当初の旅行サービスと同様のものとなるよう努めること等,契約内容の変更を最小限にとどめるよう努力すること


bについて,約款(募集)25条1項は,「旅行の内容により」添乗員に業務を行わせることがある旨を規定しており,必ず添乗員を付さなければならないものとはしていません。したがって,bは,誤りです。

(添乗員等の業務)
第二十五条 当社は,旅行の内容により添乗員その他の者を同行させて第二十三条各号に掲げる業務その他当該募集型企画旅行に付随して当社が必要と認める業務の全部又は一部を行わせることがあります
2 略


cは,約款(募集)26条の通りですから,正しいです。

(保護措置)
第二十六条 当社は,旅行中の旅行者が,疾病,傷害等により保護を要する状態にあると認めたときは,必要な措置を講ずることがあります。この場合において,これが当社の責に帰すべき事由によるものでないときは,当該措置に要した費用は旅行者の負担とし,旅行者は当該費用を当社が指定する期日までに当社の指定する方法で支払わなければなりません。


dは,約款(募集)24条の通りですから,正しいです。

(当社の指示)
第二十四条 旅行者は,旅行開始後旅行終了までの間において,団体で行動するときは,旅行を安全かつ円滑に実施するための当社の指示に従わなければなりません


問8.募集型企画旅行契約における責任に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 a.旅行業者の過失により,旅行者の手荷物について生じた損害については,損害発生の翌日から起算して,国内旅行にあっては,14日以内に旅行業者に対して通知があったときに限り,旅行業者はその損害を賠償する責に任じる。
 b.旅行業者は,旅行者が運送・宿泊機関等のサービス提供の中止により損害を被ったときは,旅行業者の故意又は過失による場合を除き,その損害を賠償する責任を負わない。
 c.旅行者は,契約を締結するに際しては,旅行業者から提供された情報を活用し,旅行者の権利義務その他の契約の内容について理解するよう努めなければならない。
 d.旅行業者は,旅行者が旅行参加中に手配代行者の過失(重大な過失がある場合を除く。)により身体に損害を被ったときは,その損害発生の翌日から起算して2年以内に旅行業者に対して通知があったときに限り,その損害を賠償する責に任じる。


正解:d(配点:4)
解説:aは,約款(募集)27条3項の通りですから,正しいです。

(当社の責任)
第二十七条 略
2 略
3 当社は,手荷物について生じた第一項の損害については,同項の規定にかかわらず,損害発生の翌日から起算して,国内旅行にあっては十四日以内に,海外旅行にあっては二十一日以内に当社に対して通知があったときに限り,旅行者一名につき十五万円を限度(当社に故意又は重大な過失がある場合を除きます。)として賠償します。


bは,約款(募集)27条2項の通りですから,正しいです。

(当社の責任)
第二十七条 当社は,募集型企画旅行契約の履行に当たって,当社又は当社が第四条の規定に基づいて手配を代行させた者(以下「手配代行者」といいます。)が故意又は過失により旅行者に損害を与えたときは,その損害を賠償する責に任じます。ただし,損害発生の翌日から起算して二年以内に当社に対して通知があったときに限ります。
2 旅行者が天災地変,戦乱,暴動,運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止,官公署の命令その他の当社又は当社の手配代行者の関与し得ない事由により損害を被ったときは,当社は,前項の場合を除き,その損害を賠償する責任を負うものではありません。
3 略


cは,約款(募集)30条2項の通りですから,正しいです。

(旅行者の責任)
第三十条 略
2 旅行者は,募集型企画旅行契約を締結するに際しては,当社から提供された情報を活用し,旅行者の権利義務その他の募集型企画旅行契約の内容について理解するよう努めなければなりません
3 略


dについて,約款(募集)27条1項は,旅行業者が旅行者に対して損害を与えたときの損害賠償責任について,重過失の場合を特に区別することなく規律しています。したがって,dは,重大な過失を除いている点で誤りです。

(当社の責任)
第二十七条 当社は,募集型企画旅行契約の履行に当たって,当社又は当社が第四条の規定に基づいて手配を代行させた者(以下「手配代行者」といいます。)が故意又は過失により旅行者に損害を与えたときは,その損害を賠償する責に任じます。ただし,損害発生の翌日から起算して二年以内に当社に対して通知があったときに限ります。
2,3 略


問9.特別補償に関する次の記述から,正しいものだけをすべて選んでいるものはどれか。
 (ア)旅行業者は,旅行者が企画旅行参加中にその生命,身体に被った一定の損害については,当該旅行業者の責任が生ずるか否かを問わず,特別補償規程に定める額の補償金及び見舞金を支払う。
 (イ)旅行業者の企画旅行参加中の旅行者を対象として,別途の旅行代金を収受して当該旅行業者が実施する募集型企画旅行については,主たる旅行契約の内容の一部として取り扱う。
 (ウ)旅行業者が損害賠償責任を負うときは,その責任に基づいて支払うべき損害賠償金の額の限度において,旅行業者が支払うべき補償金は,当該損害賠償金とみなされる。

a.(ア)(イ)  b.(ア)(ウ)  c.(イ)(ウ)  d.(ア)(イ)(ウ)


正解:d(配点:4)
解説:(ア)は,約款(募集)28条1項の通りですから,正しいです。

(特別補償)
第二十八条 当社は,前条第一項の規定に基づく当社の責任が生ずるか否かを問わず,別紙特別補償規程で定めるところにより,旅行者が募集型企画旅行参加中にその生命,身体又は手荷物の上に被った一定の損害について,あらかじめ定める額の補償金及び見舞金を支払います
2~4 略


(イ)は,約款(募集)28条4項の通りですから,正しいです。

(特別補償)
第二十八条 略
2,3 略
4 当社の募集型企画旅行参加中の旅行者を対象として,別途の旅行代金を収受して当社が実施する募集型企画旅行については,主たる募集型企画旅行契約の内容の一部として取り扱います


(ウ)は,約款(募集)28条2項の通りですから,正しいです。

(特別補償)
第二十八条 略
2 前項の損害について当社が前条第一項の規定に基づく責任を負うときは,その責任に基づいて支払うべき損害賠償金の額の限度において,当社が支払うべき前項の補償金は,当該損害賠償金とみなします
3,4 略


以上から,(ア)ないし(ウ)のいずれも正しいですから,正解はdです。

問10.特別補償規程における「サービスの提供を受けることを開始した時」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(添乗員,旅行業者の使用人又は代理人による受付が行われない場合とする。)
 a.最初の運送・宿泊機関等が鉄道であるときは,改札の終了時又は改札のないときは当該列車乗車時
 b.最初の運送・宿泊機関等が車両であるときは,当該車両の出発時
 c.最初の運送・宿泊機関等が航空機であるときは,乗客のみが入場できる飛行場構内における手荷物の検査等の完了時
 d.最初の運送・宿泊機関等が美術館であるときは,当該施設の利用手続終了時


正解:b(配点:4)
解説:特別補償規程における「サービスの提供を受けることを開始した時」は,約款(補償)2条3項に定めがあります。これによれば,aは同項2号ハ,cは同号イ,dは同号ヘの通りですから,正しいです。一方で,bについて,同号ニは「乗車時」としていますから,bは,これを出発時としている点で誤りです。

(用語の定義)
第二条 略
2 略
3 前項の「サービスの提供を受けることを開始した時」とは,次の各号のいずれかの時をいいます。
 一 添乗員,当社の使用人又は代理人が受付を行う場合は,その受付完了時
 二 前号の受付が行われない場合において,最初の運送・宿泊機関等が,
  イ 航空機であるときは,乗客のみが入場できる飛行場構内における手荷物の検査等の完了時
  ロ 船舶であるときは,乗船手続の完了時
  ハ 鉄道であるときは,改札の終了時又は改札のないときは当該列車乗車時
  ニ 車両であるときは,乗車時
  ホ 宿泊機関であるときは,当該施設への入場時
  ヘ 宿泊機関以外の施設であるときは,当該施設の利用手続終了時とします。
4 略


問11.旅程保証に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
 a.旅行業者は,変更補償金を支払うべき契約内容の重要な変更が生じた場合は,旅行代金に別表第2の「変更補償金の支払いが必要となる変更」の項目別に記載する率を乗じた額以上の変更補償金を旅行者に支払う。
 b.旅行業者は,旅行業者の責任が生ずるか否かを問わず,変更補償金を支払うべき契約内容の重要な変更が生じた場合は,旅行終了日の翌日から起算して30日以内に変更補償金を支払う。
 c.確定書面が交付された場合には,契約書面の記載内容と確定書面の記載内容との間又は確定書面の記載内容と実際に提供された旅行サービスの内容との間に変更が生じたときは,それぞれの変更につき1件として取り扱う。
 d.旅行業者が支払うべき変更補償金の額は,旅行者1名に対して1企画旅行につき旅行代金に15%以上の旅行業者が定める率を乗じた額をもって限度とする。


正解:b(配点:4)
解説:aは,約款(募集)29条1項柱書の通りですから,正しいです。

(旅程保証)
第二十九条 当社は,別表第二上欄に掲げる契約内容の重要な変更(次の各号に掲げる変更(運送・宿泊機関等が当該旅行サービスの提供を行っているにもかかわらず,運送・宿泊機関等の座席,部屋その他の諸設備の不足が発生したことによるものを除きます。)を除きます。)が生じた場合は,旅行代金に同表下欄に記載する率を乗じた額以上の変更補償金を旅行終了日の翌日から起算して三十日以内に支払います。ただし,当該変更について当社に第二十七条第一項の規定に基づく責任が発生することが明らかである場合には,この限りではありません。
 一,二 略
2,3 略


bについて,約款(募集)29条1項柱書ただし書は,旅行業者の責任が生ずる場合には,旅行業者は変更補償金を支払わない旨を規定しています。したがって,bは,旅行業者の責任が生ずるか否かで区別をしていない点で誤りです。なお,約款(募集)28条に基づく特別補償は,旅行者の責任が生ずるか否かに関わらず行われます(特別補償と旅程保証とで取扱いに差異がある理由については,下記(※1)参照。)。

(旅程保証)
第二十九条 当社は,別表第二上欄に掲げる契約内容の重要な変更(次の各号に掲げる変更(運送・宿泊機関等が当該旅行サービスの提供を行っているにもかかわらず,運送・宿泊機関等の座席,部屋その他の諸設備の不足が発生したことによるものを除きます。)を除きます。)が生じた場合は,旅行代金に同表下欄に記載する率を乗じた額以上の変更補償金を旅行終了日の翌日から起算して三十日以内に支払います。ただし,当該変更について当社に第二十七条第一項の規定に基づく責任が発生することが明らかである場合には,この限りではありません
 一,二 略
2,3 略


cは,約款(募集)別表第2注2の通りですから,正しいです。

別表第二 変更補償金

dは,約款(募集)29条2項前段の通りですから,正しいです。

(旅程保証)
第二十九条 略
2 当社が支払うべき変更補償金の額は,旅行者一名に対して一募集型企画旅行につき旅行代金に十五%以上の当社が定める率を乗じた額をもって限度とします。また,旅行者一名に対して一募集型企画旅行につき支払うべき変更補償金の額が千円未満であるときは,当社は,変更補償金を支払いません。
3 略


(※1)「変更補償金は……旅行業者にその変更につき債務不履行による損害賠償責任のある疑いのあるときでも,とりあえず支払われる(本条[注:約款(募集)29条]第1項ただし書き)。」「しかし,その後になって,実はその変更は旅行業者の債務不履行に基づくものであることが明らかになったときには,旅行業者は変更補償金の額にかかわらず,旅行者に生じている損害について賠償の責任を負うことになる。その際には,旅行者は,旅行業者から損害賠償としての支払を受けることから,すでに支払を受けた変更補償金は不当利得となるので,旅行業者に返還しなければならない(本条第3項前段)。この場合,実務的には,旅行業者が損害賠償債務を負っていることから,変更補償金返還債務との間で相殺処理して,残額の損害賠償金(変更補償金の金額からいって,通常,損害賠償金の方が高くなるであろう)を旅行業者が旅行者に支払うことになる(本条第3項後段)。」「特別補償責任に基づく補償金の場合には,旅行業者が損害賠償債務を同時に負うときには,その額の限度で補償金は損害賠償金とみなすという規定で調整を図っているが(第28条第2項),変更補償金については,このような調整をせずに,完全に損害賠償金とは別個の扱いとしている。特別補償責任に基づく補償金の支払事由は,企画旅行参加中の事故により旅行者に実際に生じた「損害」の填補を目的としている(第28条第1項)。これに対し,変更補償金の支払事由は,「契約内容の変更」であって,必ずしも「損害」の発生を要件にはしておらず,その変更内容によっては(アップグレードの場合等)旅行者には精神的損害等も生じていない場合もあり得ることから,「損害」の填補を目的とする金員という性格をもたすことができないためである。」三浦雅生『標準旅行業約款解説』(自由国民社,2018年)180頁


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