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2025-12-31(Wed)

答案等のリンク

私が書きなぐった答案のページへのリンク集です。

●旧司法試験●
▼憲法
・ 昭和56年第1問(犯罪歴の開示)
・ 平成15年第2問(政党と結社の自由)
▼民事訴訟法
・ 昭和61年第2問(相手方の訴訟態度の変動と自白の撤回)
・ 平成7年第2問(訴訟手続への表見法理の適用の可否)
・ 平成10年第2問(既判力と基準時後の事由)
・ 平成20年第2問(補助参加人の控訴期間の起算点,参加的効力の制限)
・ 平成21年第1問(一部請求,職権による過失相殺,規範的要件における評価根拠事実)
・ 平成22年第1問(重複訴訟と確認の利益,消極的確認訴訟と給付訴訟)
▼刑法
・ 平成16年第1問(中止犯,不作為犯)
▼刑事訴訟法
・ 昭和43年第2問(供述拒否が「供述不能」にあたるか,公判廷供述よりも検面調書が詳細である場合)
・ 昭和51年第2問(証言拒絶の適用範囲,証言拒絶は「供述不能」にあたるか)
・ 昭和53年第2問(伝聞証拠の意義)
・ 昭和61年第2問(相反供述の認定,共犯者の自白)
・ 平成元年第2問(再伝聞)
・ 平成13年第2問(記憶喪失は「供述不能」にあたるか,手続的公正を欠く場合)
・ 平成21年第2問(自白法則,違法収集証拠排除法則)
・ 平成22年第2問(犯行メモの証拠能力)

●新司法試験●
▼刑事訴訟法
・ 平成26年
▼倒産法
・ 平成18年第1問
・ 平成18年第2問
・ 平成19年第1問
・ 平成19年第2問
・ 平成20年第1問
・ 平成20年第2問
・ 平成21年第1問
・ 平成21年第2問
・ 平成22年第1問
・ 平成22年第2問
・ 平成23年第1問
・ 平成23年第2問
・ 平成24年第1問
・ 平成24年第2問
・ 平成25年第1問
・ 平成25年第2問
・ 平成26年第1問
・ 平成26年第2問
・ 平成27年第1問
・ 平成27年第2問
・ 平成28年第1問
・ 平成28年第2問
・ 平成29年第1問
・ 平成29年第2問
・ 平成30年第1問
・ 平成30年第2問

●演習書●
▼事例研究行政法〔第3版〕
・ 第1部問題1(審査基準の設定公表義務違反,他事考慮)
・ 第1部問題2(処分性,違法性,訴訟形式)
・ 第1部問題3(申出に対する応答の取消訴訟,義務付け訴訟)
・ 第1部問題4(原告適格)
・ 第1部問題5(訴えの客観的利益,取消訴訟の本案)
・ 第1部問題6(訴訟類型,理由の提示,比例原則)
・ 第1部問題7(国賠-1条)
・ 第1部問題8(国賠-営造物)
・ 第2部問題1(理由提示の程度,新たな理由の追加,証明責任の分配,取消判決の拘束力)
・ 第2部問題2(訴訟類型,取消訴訟の訴訟要件全般,工事が完成した場合の訴えの利益)
・ 第2部問題3(公共施設管理者の不同意の処分性,訴訟類型,不同意の違法性,開発許可の違法性,違法性の承継)
・ 第2部問題4(実質的当事者訴訟,差止訴訟の重損要件,要綱の法的性質,第三者の原告適格)
・ 第2部問題5(届出の不受理の争い方,行政指導の実効性確保と争い方,公表の法的性質と争い方)
・ 第2部問題6(代執行における戒告の処分性,法令と条例との関係,条例の合理性,比例原則)
・ 第2部問題7(処分の取消訴訟と執行停止(重損要件を中心に),第三者の原告適格,団体の原告適格)
・ 第2部問題8(処分が反復継続的・累積加重的される場合の争い方(差止訴訟,実質的当事者訴訟),裁量権の範囲の逸脱濫用)
・ 第2部問題9(処分性(公権力性の有無-契約の差異),本案(「保育に欠ける」の解釈),指定管理者の指定の処分性,第三者の原告適格)
・ 第2部問題10(抗告訴訟の対象とすべき行為の選択,処分性,仮の義務付け,裁量の範囲)
・ 第2部問題11(監督処分発令の可否,監督処分の強制方法,監督処分発令の義務付け訴訟,住民訴訟)
・ 第2部問題12(行政財産の目的外使用不許可の処分性,不許可処分が裁量の逸脱・濫用となる場合)
・ 第2部問題13(申請の不受理・返戻に対する争い方,審査基準の合理性,許可決定の留保の違法性)
・ 第2部問題14(直接型義務付け訴訟の訴訟要件全般,直接型義務付け訴訟の本案の類型,義務付け訴訟にも主張制限を及ぼすことができるか)
・ 第2部問題15(条例制定行為の処分性,実質的当事者訴訟の対象とすべき法律関係,地方自治法227条の解釈,平等原則)
・ 第2部問題16(政令の改正を求める訴訟(直接的義務付け訴訟,無効確認訴訟,実質的当事者訴訟),政令の改正によって生じた損害の補てんを求める訴訟(国家賠償請求訴訟,損失補償請求訴訟))
・ 第2部問題17(入管法の仕組み,退去強制を免れるための争い方(取消訴訟,義務付け訴訟),執行停止,仮の義務付け,裁量権の逸脱・濫用)
▼事例で学ぶ民法演習
・ 問題3(法人)
・ 問題4(虚偽表示と第三者)
▼事例から民法を考える
・ 事例①(保佐人の権限,被保佐人の返還義務の範囲,被保佐人が保佐人の同意を得ずにした代理権授与行為の効果)
・ 事例②(錯誤,詐欺,94条2項類推適用)
・ 事例③(時効取得と第三者)
・ 事例④(解除と第三者,詐欺取消しと第三者,錯誤無効と第三者)
・ 事例⑤(共有関係,法定地上権)
・ 事例⑥(転貸賃料債権に対する物上代位,物上代位と相殺の優劣)
・ 事例⑦(集合動産譲渡担保)
・ 事例⑧(履行遅滞解除,危険負担,受領遅滞)
・ 事例⑨(詐害行為取消権)
・ 事例⑩(保証契約における詐欺・錯誤の主張の可否,共同保証人の一人に対する免除の効果,共同保証人間での求償)
・ 事例⑪(代理受領)
・ 事例⑫(債権の準占有者に対する弁済,預金債権の帰属)
・ 事例⑬(瑕疵担保責任,の法的性質,債務不履行責任との異同,買主に対する建築請負人の不法行為責任)
・ 事例⑭(他人物売買の担保責任,権利者が他人物売主を相続した場合)
・ 事例⑮(借賃増減請求,賃貸借契約と消費者契約法10条,信頼関係破壊の法理)
・ 事例⑯(賃貸借契約と転貸借契約の関係)
・ 事例⑰(下請負人の地位)
・ 事例⑱(医療事故による生命侵害の保護法益,親族の損害賠償請求,損害の範囲)
・ 事例⑲(日常家事債務)
・ 事例⑳(有責配偶者の離婚請求,財産分与)
・ 事例㉑(扶養義務者の寄与分,配偶者の寄与分,死別の場合の法律関係,離婚の場合の法律関係)
・ 事例㉒(連帯根保証債務の相続,遺産分割協議の詐害行為取消し)
・ 事例㉓(「相続させる」趣旨の遺言)
▼Law Practice民事訴訟法〔第2版〕
・ 発展問題2(移送)
▼基礎演習民事訴訟法〔第2版〕
・ 問題1(当事者能力)
・ 問題2(当事者適格⑴ 法定訴訟担当)
・ 問題3(当事者適格⑵ 任意的訴訟担当)
・ 問題4(代理(法定代理,訴訟代理,法人の代表))
・ 問題5(訴えの利益)
・ 問題6(二重起訴の禁止)
・ 問題7(弁論主義)
・ 問題8(自白,時機に後れた攻撃防御方法)
・ 問題9(釈明権)
・ 問題10(主張・証明責任-要件事実入門)
・ 問題11(自由心証・証明度)
・ 問題12(文書提出命令)
・ 問題13(基準時後の形成権の行使)
・ 問題14(既判力の客観的範囲・一部請求・相殺)
・ 問題15(既判力の主観的範囲)
・ 問題16(争点効・信義則)
・ 問題17(和解)
・ 問題18(通常共同訴訟(同時審判申出訴訟・訴えの主観的予備的併合))
・ 問題19(固有必要的共同訴訟)
・ 問題20(類似必要的共同訴訟)
・ 問題21(独立当事者参加)
・ 問題22(補助参加の利益)
・ 問題23(補助参加人の権限と判決効・訴訟告知の効力)
・ 問題24(訴訟承継)
・ 問題25(上訴の利益)
・ 問題26(不利益変更禁止の原則)
・ 問題27(再審)
・ 問題28(審判権の限界)
・ 問題29(訴訟と非訟)
・ 問題30(境界確定訴訟)
▼事例研究刑事法Ⅱ〔第2版〕
・ 第3部問題4(令状の効力が及ぶ範囲,差押の範囲)
・ 第3部問題5(かすがい外し)
・ 第4部問題1(訴因変更の要否)
▼事例演習刑事訴訟法〔第2版〕
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)

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2019-06-17(Mon)

※書き途中※【国内旅行業務取扱管理者試験】平成29年度大問1

国内旅行業務取扱管理者ですが,

今年の試験は9月1日にあるようです。

意外と時間がないですよね。

とりあえず司法試験をやってきた人間としては,

法令の分野は満点を取りたいところです。

今回は,平成29年度大問1です。

(注)略称は次の通り
法:旅行業法
規則:旅行業法施行規則
令:旅行業法施行令
契約規則:旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則

(1) 次の記述から,法第1条「目的」に定められているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
a. 旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進
b. 旅行業等を営む者の業務の適正な運営の確保
c. 旅行業等を営む者の適正な利潤の確保
d. 旅行業等を営む者についての登録制度の実施
ア.a, d   イ.b, c   ウ.a, b, d   エ. a, b, c, d


正解:ウ(配点:4)
解説:法1条は,次の通り定めています。

(目的)
第一条 この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。


 a,b及びdについては法1条に定められていますが,cについては定められていません。

(2) 法第2条「定義」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア. 報酬を得て,旅行者のため,運送等サービスの提供を受けることについて,代理して契約を締結し,媒介し,又は取次ぎをする行為を行う事業は,旅行業に該当する。
イ. 報酬を得て,専ら運送サービスを提供する者のため,旅行者に対する運送サービスの提供について,代理して契約を締結する行為を行う事業は,旅行業に該当しない。
ウ. 報酬を得て,旅行業を営む者のため,運送等サービスを提供する者と契約を締結する行為を行う事業は,旅行業に該当しない。
エ. 報酬を得て,旅行に関する相談に応ずる行為を行う事業は,旅行業に該当しない。


正解:エ(配点:4)
解説:アについては,法2条1項3号の通りです。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一,二 略
 三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 四~九 略
2~7 略


 イについては,法2条1項柱書かっこ書の通りです。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~九
2~7 略


 ウについて,法2条1項3号は,「旅行者のため」に代理して契約締結等を行う場合について定めたものですので,旅行業を営む者のためにする場合には同号に該当しません。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一,二 略
 三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 四~九 略
2~7 略


 エについて,法2条1項9号に定めがあるため,「旅行業」に該当し,登録が必要となります。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~八 略
 九 旅行に関する相談に応ずる行為
2~7 略


(3) 報酬を得て,次の行為を事業として行う場合,旅行業の登録を受けなければならないものはどれか。
ア. 旅館が,自らの宿泊施設を利用して,昼食付きの日帰り入浴プランを旅行者に販売する行為
イ. バス会社が,自らの行う運送と他人が経営する宿泊施設を利用した1泊2日の旅行を旅行者に販売する行為
ウ. 観光案内所が,テーマパークの入場チケットの販売に付随して,旅行者のために食事の手配をする行為
エ. 人材派遣会社が,旅行業者の依頼を受け,企画旅行に同行して旅程管理業務を行う主任の者を派遣する行為


正解:イ(配点:4)
解説:アについて,法2条1項1号は,運送等サービスを提供する者との間で契約を締結する者の行為を「旅行業」と定義しているため,運送等サービスを提供する者の行為自体は「旅行業」に該当しません。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
 二~九 略
2~7 略


 イについては,法2条1項5号の通りです。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~四 略
 五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
 六~九 略
2~7 略


 ウについて,法2条1項は9号を除いて運送等サービスの提供又はそれに付随する行為を「旅行業」と定義しているところ,テーマパークの入場チケットの販売は運送等サービスに当たらず,これに付随する行為はいずれも「旅行業」には該当しません。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
 二 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
 三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 四 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
 五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
 六 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 七 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
 八 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
 九 旅行に関する相談に応ずる行為
2~7 略


 エについては,法2条1項に掲げる行為に該当しないため,「旅行業」に当たりません。

(4) 旅行業等の登録に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
a. 第2種旅行業の新規登録の申請をしようとする者は,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に新規登録申請書を提出しなければならない。
b. 第1種旅行業の新規登録又は更新登録を受けようとする者は,事業の経営上使用する商号があるときは,その商号を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
c. 地域限定旅行業の登録の有効期間は,登録の日の翌日から起算して5年である。
d. 第3種旅行業者が新たに旅行業者代理業者を営もうとする者にその旅行業務を取り扱わせるときは,当該旅行業者代理業者を営もうとする者の氏名又は名称を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
ア. a, b   イ. c, d   ウ. a, b, c   エ. a, b, c, d


正解:イ(配点:4)
解説:aについては,規則1条の2第2号の通りです。

(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略


 bについては,法4条1項1号,規則1条の2第1号の通りです(平成29年法改正により,旧法4条1項3号が削除され,1号に新たに「商号」の文言が加えられました。)。

(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一 氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 二~五
2 略
(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 業務の範囲が次条に規定する第一種旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 観光庁長官
 二,三 略
<参考-旧法>
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一,二 略
 三 事業の経営上使用する商号があるときはその商号
 四~六 略
2 略


 cについては,法6条の2の通り,起算日は登録の日となります。

(登録の有効期間)
第六条の二 旅行業の登録の有効期間は、登録の日から起算して五年とする。


 dについては,法4条1項4号,規則1条の2第2号の通り,「主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事」に提出する必要があります。

(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一~三 略
 四 旅行業を営もうとする者にあつては、旅行業者代理業を営む者に旅行業務を取り扱わせるときは、その者の氏名又は名称及び住所並びに当該旅行業務を取り扱う営業所の名称及び所在地
 五 略
2 略
(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略


(5) 次の記述のうち,旅行業等の登録の拒否事由に該当しないものはどれか。
ア. 申請前1年以内に旅行業務に関し不正な行為をした者
イ. 旅行業又は旅行業者代理業者の登録を取り消され,その取消しの日から4年を経過した者
ウ. 法人であって,その役員が禁錮刑に処せられ,その執行を受けることがなくなった日から5年を経過した者
エ. 旅行業者代理業を営もうとする者であって,その代理する旅行業者が2以上であるもの


正解:ウ(配点:4)
解説:法6条1項は,次の通り定めています。

(登録の拒否)
第六条 観光庁長官は、登録の申請者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を拒否しなければならない。
 一 第十九条の規定により旅行業若しくは旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第三十七条の規定により旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から五年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内に当該法人の役員であつた者で、当該取消しの日から五年を経過していないものを含む。)
 二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過していない者
 三 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者をいう。第八号において同じ。)
 四 申請前五年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
 五 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は第七号のいずれかに該当するもの
 六 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
 七 法人であつて、その役員のうちに第一号から第四号まで又は前号のいずれかに該当する者があるもの
 八 暴力団員等がその事業活動を支配する者
 九 営業所ごとに第十一条の二の規定による旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
 十 旅行業を営もうとする者であつて、当該事業を遂行するために必要と認められる第四条第一項第三号の業務の範囲の別ごとに国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
 十一 旅行業者代理業を営もうとする者であつて、その代理する旅行業を営む者が二以上であるもの
2 略


 アは同項4号に,イは同項1号に,エは同項11号に該当するため,登録拒否事由となります。
 ウについては,同項7号,2号から,5年を経過している者は登録拒否事由となりません。

(6) 変更登録等に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア. 第1種旅行業者は,その営業所において選任している旅行業務取扱管理者の氏名について変更があったときは,その日から30日以内に,国土交通省令で定める書類を添付して,その旨を観光庁長官に届け出なければならない。
イ. 第1種旅行業者が法人である場合,その代表者の氏名に変更があったときは,その日から30日以内に,国土交通省令で定める書類を添付して,その旨を観光庁長官に届け出なければならない。
ウ. 第1種旅行業は,業務の範囲を第3種旅行業へ変更しようとするときは,観光庁長官に変更登録申請書を提出しなければならない。
エ. 第3種旅行業を営もうとする旅行業者代理業者は,その主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に変更登録申請書を提出しなければならない。


正解:イ(配点:4)
解説:アについて,変更の届出が必要になるのは法6条の4第3項の場合に限られるところ,法4条1項1号,2号及び4号に旅行業務取扱管理者の氏名については規定されていないため,変更の届出は不要です。

(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一 氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 二 主たる営業所及びその他の営業所の名称及び所在地
 三 略
 四 旅行業を営もうとする者にあつては、旅行業者代理業を営む者に旅行業務を取り扱わせるときは、その者の氏名又は名称及び住所並びに当該旅行業務を取り扱う営業所の名称及び所在地
 五 略
2 略
(変更登録等)
第六条の四 略
2 略
3 旅行業者又は旅行業者代理業者(旅行業者代理業の登録を受けた者をいう。以下同じ。)は、第四条第一項第一号、第二号又は第四号(旅行業者代理業者にあつては、同項第一号又は第二号)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から三十日以内に、国土交通省令で定める書類を添付して、その旨を観光庁長官に届け出なければならない。
4 略


 イについては,法6条の4第3項,4条1項1号の通りです。

(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一 氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 二~五
2 申請書には、事業の計画その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。
(変更登録等)
第六条の四 略
2 略
3 旅行業者又は旅行業者代理業者(旅行業者代理業の登録を受けた者をいう。以下同じ。)は、第四条第一項第一号、第二号又は第四号(旅行業者代理業者にあつては、同項第一号又は第二号)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から三十日以内に、国土交通省令で定める書類を添付して、その旨を観光庁長官に届け出なければならない
4 略


 ウについては,規則4条の2の通り,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事が提出先となります。

(変更登録)
第四条の二 法第六条の四第一項の規定による変更登録(以下「変更登録」という。)の申請をしようとする旅行業者は、次の各号の区分に従い、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による変更登録申請書を提出しなければならない。
 一 略
 二 第二種旅行業、第三種旅行業又は地域限定旅行業への変更登録の申請をしようとする旅行業者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
2~5 略


 エについて,変更登録ができるのは「旅行業者」に限られるため(法6条の4第1項),旅行業者代理業者が第3種旅行業を営むためには新規登録をする必要があります(法3条)。第3種旅行業の新規登録申請書の提出先は,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事です(規則1条の2第2号)。

(変更登録等)
第六条の四 旅行業の登録を受けた者(以下「旅行業者」という。)は、第四条第一項第三号の業務の範囲について変更をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、観光庁長官の行う変更登録を受けなければならない。
2~4 略
(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略






2019-06-07(Fri)

【国内旅行業務取扱管理者試験】平成30年度大問1

お久しぶりです。

司法試験がだいぶ前に終わりました。

まだ終わって3週間弱しか経っていませんが,

もうえらい昔の出来事のように感じます。

司法試験が終わったので,演習書を解くことも基本的になくなったため,

演習書の答案をダラダラ垂れ流すだけの記事は激減すると思います。

もっとも,改正民法だけは勉強しないといかんなあとは思っているので,

もしかしたら民法の答案だけ不定期に投稿していくかもしれません。

ところで突然ですが,9月に国内旅行業務取扱管理者の試験を受けることにしました。

そこで,当面このブログは,旅管試験の過去問を解いていくブログに切り替わります。

こうしてまたどの層にも需要のないブログが作られ続けるのですね。

さて,最初は,直近の平成30年度の問題から解いていくことにします。


(注)略称は次の通り
法:旅行業法
規則:旅行業法施行規則
令:旅行業法施行令
契約規則:旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則

(1) 次の記述のうち,法第1条「目的」に定められていないものはどれか。
ア.旅行業務に関する取引の公正の維持
イ.旅行業等を営む者の健全な発展
ウ.旅行業等を営む者の業務の適正な運営の確保
エ.旅行業等を営む者の組織する団体の適正な活動の促進


正解:イ(配点:4)
解説:法1条は,その目的を次の通り定めています。

(目的)
第一条 この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。


 ア,ウ及びエは法文中に表れていますが,イはその旨の定めがありません。したがって,イが誤りとなります。

(2) 報酬を得て,次の行為を事業として行う場合,旅行業の登録を要しないものはどれか。
ア.イベント事業者が,イベントの入場券と他人が経営する貸切バスによる空港と会場間の送迎サービスをセットにした商品を旅行者に販売する行為
イ.企画旅行契約又は手配旅行契約に付随して,旅行者の案内,旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他の旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
ウ.航空運送事業者を代理して,旅行者に対し,航空券の発券業務のみを行う行為
エ.観光案内所が,旅行者から依頼を受けて他人の経営する宿泊施設を手配する行為


正解:ウ(配点:4)
解説:アについて,他人が経営するバスによる送迎サービスを提供することは法2条1項5号に該当し,イベント事業者が自らのイベントの入場券もセットにしているため「専ら運送サービスを提供する者のため」(法2条1項かっこ書)とはいえず,「旅行業」に該当し,登録が必要です。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~四 略
 五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
 六~九 略
2~7 略


 イについて,企画旅行契約は法2条1項1号に該当し,手配旅行契約は同項3号に該当するため,これらに付随して「旅行者の案内,旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為」は同項8号に該当します。したがって,「旅行業」に該当するため,登録が必要です。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
 二 略
 三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 四~七 略
 八 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
 九 略
2~7 略


 ウについて,航空運送事業者は「運送サービスを提供する者」にあたり,航空券の発券業務は「運送サービスの提供」にあたるため,法2条1項かっこ書に該当します。したがって,「旅行業」に該当しないため,登録が不要です。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~九 略
2~7 略


 エについて,宿泊施設は「宿泊のサービス」にあたり「運送等サービス」に含まれ(法2条1項1号),観光案内所が旅行者からの依頼を受けて宿泊施設を手配することは「旅行者のために」にあたり,宿泊施設を経営する他人と旅行者との契約関係において観光案内所は「代理して契約を締結し,媒介をし,又は取次ぎをする」立場にあるため,法2条1項3号に該当します。したがって,「旅行業」に該当するため,登録が必要です。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
 二 略
 三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 四~九 略
2~7 略


(3) 旅行業の新規登録に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.第1種旅行業を営もうとする者は,観光庁長官に新規登録申請書を提出しなければならない。
イ.異なる都道府県に複数の営業所を設置して第2種旅行業を営もうとする者は,観光庁長官に新規登録申請書を提出しなければならない。
ウ.第3種旅行業を営もうとする者は,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に新規登録申請書を提出しなければならない。
エ.地域限定旅行業を営もうとする者は,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に新規登録申請書を提出しなければならない。


正解:イ(配点:4)
解説:アについて,第一種旅行業を営もうとする者とは,法14条の2第1項の規定により他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結する行為を含めた法2条1項各号に掲げる行為を登録業務範囲とする者をいい(規則1条の3第1号),この者の新規登録の申請書の提出先は観光庁長官となります(規則1条の2第1号)。

(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 業務の範囲が次条に規定する第一種旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 観光庁長官
 二,三 略
(業務の範囲)
第一条の三 法第四条第一項第三号の国土交通省令で定める業務の範囲(以下「登録業務範囲」という。)の別は、次のとおりとする。
 一 第一種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為(法第十四条の二第一項の規定により他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結する行為を含む。以下この条において同じ。))
 二~四 略


 イについて,第二種旅行業を営もうとする者とは,法2条1項各号に掲げる行為のうち本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)の実施に係るもの以外のものを登録業務範囲とする者をいい(規則1条の3第2号),この者の新規登録の申請書の提出先は,営業所の設置場所の如何にかかわらず,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事となります(規則1条の2第2号)。

(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略
(業務の範囲)
第一条の三 法第四条第一項第三号の国土交通省令で定める業務の範囲(以下「登録業務範囲」という。)の別は、次のとおりとする。
 一 略
 二 第二種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。次号において同じ。)の実施に係るもの以外のもの)
 三,四 略


 ウについて,第三種旅行業を営もうとする者とは,法2条1項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の自らの営業所の存する市町村(特別区を含む。)の区域,これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの以外のものを登録業務範囲とする者をいい(規則1条の3第3号),この者の新規登録の申請書の提出先は主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事となります(規則1条の2第2号)。

(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略
(業務の範囲)
第一条の三 法第四条第一項第三号の国土交通省令で定める業務の範囲(以下「登録業務範囲」という。)の別は、次のとおりとする。
 一,二 略
 三 第三種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の自らの営業所の存する市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域、これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域(次号及び第十条の五において「拠点区域」という。)内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの以外のもの)
 四 略


 エについて,地域限定旅行業を営もうとする者とは,法2条1項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の拠点区域内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの及び同項3号から5号までに掲げる行為(一の行為ごとに一の拠点区域内における運送等サービスの提供に係るものを除く。)に係るもの以外のものを登録業務範囲とする者をいい(規則1条の3第4号),この者の新規登録の申請書の提出先は主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事となります(規則1条の2第2号)。

(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 一 略
 二 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 三 略
(業務の範囲)
第一条の三 法第四条第一項第三号の国土交通省令で定める業務の範囲(以下「登録業務範囲」という。)の別は、次のとおりとする。
 一~三 略
 四 地域限定旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の拠点区域内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの及び同項第三号から第五号までに掲げる行為(一の行為ごとに一の拠点区域内における運送等サービスの提供に係るものを除く。)に係るもの以外のもの)


(4) 登録業務範囲に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか(いずれも総合旅行業務取扱管理者を選任しているものとする。)。
ア.第1種旅行業者は,すべての旅行業務を取り扱うことができる。
イ.第2種旅行業者は,本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)を実施することはできない。
ウ.第3種旅行業者は,本邦外の旅行を取り扱うことはできない。
エ.地域限定旅行業者は,本邦外の旅行に関する相談に応ずることができる。


正解:ウ(配点:4)
解説:アについて,前問アの解説に掲げた条文を参照。
 イについて,前問イの解説に掲げた条文を参照。
 ウについて,本邦外の受注型企画旅行,手配旅行の取扱いが可能です。
 エについて,前問エの解説に掲げた条文を参照。

(5) 登録変更等に関する次の記述から,誤っているもののみをすべて選んでいるものはどれか。
a.第1種旅行業者は,業務の範囲を第2種旅行業に変更しようとするときは,観光庁長官に変更登録申請書を提出しなければならない。
b.第2種旅行業者は,業務の範囲を地域限定旅行業に変更しようとするときは,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に変更登録申請書を提出しなければならない。
c.第3種旅行業者は,法人の場合,その代表者の氏名に変更があったときは,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に変更登録申請書を提出しなければならない。
d.旅行業者代理業の登録を受けた者は,その名称に変更があったときは,変更があった日から14日以内に国土交通省令で定める書類を添付して,その旨を主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。
ア.a, b  イ.a, c, d  ウ.b, c, d  エ.a, b, c, d


正解:イ(配点:4)
解説:a及びbについて,規則4条の2第1項2号の通り,主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出します。

(変更登録)
第四条の二 法第六条の四第一項の規定による変更登録(以下「変更登録」という。)の申請をしようとする旅行業者は、次の各号の区分に従い、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による変更登録申請書を提出しなければならない。
 一 略
 二 第二種旅行業、第三種旅行業又は地域限定旅行業への変更登録の申請をしようとする旅行業者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
2~5 略


 cについて,規則5条1項の通り,「登録事項変更届出書」を提出します。

(登録事項の変更の届出)
第五条 旅行業者又は旅行業者代理業者(以下「旅行業者等」という。)は、法第六条の四第三項の規定により登録事項の変更の届出をしようとするときは、登録行政庁(旅行業者等が現に登録を受けている行政庁をいう。第十条の四、第三十八条、第三十九条及び第四十条において同じ。)に、第四号様式による登録事項変更届出書を提出しなければならない。ただし、第二種旅行業者、第三種旅行業者、地域限定旅行業者又は旅行業者代理業者が法第四条第一項第二号に規定する主たる営業所の所在地の変更(都道府県の区域を異にする所在地の変更に限る。)の届出をしようとするときは、変更後の主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に届出書を提出しなければならない。
2,3 略


 dについて,法6条の4第3項の通り,「30日以内」に届出をします。

(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 一 氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 二~五 略
2 略
(変更登録等)
第六条の四 略
2 略
3 旅行業者又は旅行業者代理業者(旅行業者代理業の登録を受けた者をいう。以下同じ。)は、第四条第一項第一号、第二号又は第四号(旅行業者代理業者にあつては、同項第一号又は第二号)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から三十日以内に、国土交通省令で定める書類を添付して、その旨を観光庁長官に届け出なければならない。
4 略


(6) 営業保証金に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.地域限定旅行業の新規登録を受けた者が供託すべき営業保証金の額は,登録の申請時に添付した書類に記載した旅行業務に関する旅行者との年間取引見込額が400万円未満である場合にあっては,15万円である。
イ.旅行業者は,毎事業年度終了後において,その供託している営業保証金の額が所定の額に不足することとなるときは,その不足額を毎事業年度終了の日の翌日から100日以内に追加して供託しなければならない。
ウ.旅行業者が新たに営業所を設置したときは,その日から14日以内に営業保証金を追加して供託しなければならない。
エ.旅行業者は,営業保証金を供託し,供託物受入れの記載のある供託所の写しを添付して,登録行政庁に届け出た後でなければ,事業を開始してはならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:アについては,規則7条,別表第一の通りです。

(営業保証金の額)
第七条 法第八条第一項に規定する営業保証金の額は、別表第一の額(旅行業者の登録業務範囲が第一種旅行業務である場合にあつては、別表第一の額に別表第二の額を加えた額)とする。

別表第一
無題115

 イについては,法9条1項,2項,7条4項の通りです。

(営業保証金の供託)
第七条 略
2,3 略
4 観光庁長官は、旅行業の登録をした場合において、登録の通知を受けた日から十四日以内に旅行業者が第二項の届出をしないときは、その定める七日以上の期間内にその届出をすべき旨の催告をしなければならない。
5 略
(営業保証金の追加の供託等)
第九条 旅行業者は、毎事業年度終了後において、その供託している営業保証金の額が前条第一項に規定する額に不足することとなるときは、その不足額を追加して供託しなければならない
2 第七条第二項、第四項及び第五項の規定は、前項の規定により営業保証金を供託する場合について準用する。この場合において、同条第四項中「旅行業の登録をした場合において、登録の通知を受けた日から十四日以内」とあるのは、「毎事業年度終了後において、その終了の日の翌日から百日以内」と読み替えるものとする。


 ウについては,そのような旨の規定は法文中に見当たりません。
 エについては,法7条1項ないし3項の通りです。

(営業保証金の供託)
第七条 旅行業者は、営業保証金を供託しなければならない
2 旅行業者は、営業保証金の供託をしたときは、供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して、その旨を観光庁長官に届け出なければならない
3 旅行業者は、前項の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない


(7) 旅行業務取扱管理者の選任に関する次の既出のうち,誤っているものはどれか。
ア.旅行業者等は,旅行業務取扱管理者について,5年ごとに旅行業務に関する法令,旅程管理その他の旅行業務取扱管理者の職務に関し必要な知識及び能力の向上を図るため,旅行業協会が実施する研修を受けさせなければならない。
イ.旅行業者等は,旅行業務取扱管理者について,苦情の解決に関する講習を受けさせるよう努めなければならない。
ウ.地域限定旅行業者であって,近接した複数の営業所において旅行業務取扱管理者を選任する場合,当該複数の営業所間の距離の合計が40キロメートル以下で,当該複数の営業所の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額の合計額が1億円以下の場合は,当該複数の営業所を通じて1名の旅行業務取扱管理者を選任することで足りる。
エ.第1種旅行業者は,本邦内の旅行についてのみ旅行業務を取り扱う営業所であっても,総合旅行業務取扱管理者試験に合格した者を旅行業務取扱管理者に選任しなければならない。


正解:エ(配点:4)
解説:「旅行業者等」とは,旅行業者又は旅行業者代理業者をいいます(法11条の2第1項)。
 アについては,法11条の2第7項,規則10条の6の通りです。

(旅行業務取扱管理者の選任)
第十一条の二 略
2~6 略
7 旅行業者等は、旅行業務取扱管理者について、三年以上五年以内において国土交通省令で定める期間ごとに、旅行業務に関する法令、旅程管理その他の旅行業務取扱管理者の職務に関し必要な知識及び能力の向上を図るため、第四十一条第二項に規定する旅行業協会が実施する研修を受けさせなければならない
8~10 略
(法第十一条の二第七項の国土交通省令で定める期間)
第十条の六 法第十一条の二第七項の国土交通省令で定める期間は、五年とする。


 イについては,法11条の2第10項の通りです。

(旅行業務取扱管理者の選任)
第十一条の二 略
2~9 略
10 旅行業者等は、第七項に定めるもののほか、旅行業務取扱管理者について、苦情の解決に関する講習を受講させることその他の旅行業務取扱管理者の職務に関し必要な知識及び能力の向上を図るための措置を講ずるよう努めなければならない


 ウについては,法11条の2第5項,規則10条の2,10条の3の通りです。

(旅行業務取扱管理者の選任)
第十一条の二 略
2~4 略
5 第一項の規定により旅行業務取扱管理者を選任しなければならない営業所が複数ある場合において、当該複数の営業所が近接しているときとして国土交通省令で定めるときは、旅行業務取扱管理者は、前項の規定にかかわらず、その複数の営業所を通じて一人で足りる。ただし、当該旅行業務取扱管理者の事務負担が過重なものとなる場合その他の当該複数の営業所における旅行業務の適切な運営が確保されないおそれがある場合として国土交通省令で定める場合は、この限りでない。
6~10 略
(法第十一条の二第五項の国土交通省令で定めるとき)
第十条の二 法第十一条の二第五項の国土交通省令で定めるときは、営業所間の距離の合計が四十キロメートル以下のときとする。
(法第十一条の二第五項の国土交通省令で定める場合)
第十条の三 法第十一条の二第五項の国土交通省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 一 法第十一条の二第五項の規定に基づき複数の営業所を通じて一人の旅行業務取扱管理者を選任しようとする旅行業者等(旅行業者代理業者にあつては、その代理する旅行業者)の登録業務範囲が地域限定旅行業務以外のものである場合
 二 当該複数の営業所の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額の合計額が一億円を超える場合


 エについては,法11条の2第6項2号の通り,国内旅行業務取扱管理者試験に合格した者を選任すれば足り,総合旅行業務取扱管理者試験に合格した者を必ず選任しなければならないものとはしていません。

(旅行業務取扱管理者の選任)
第十一条の二 略
2~5 略
6 旅行業務取扱管理者は、第六条第一項第一号から第六号までのいずれにも該当しない者で、次に掲げるものでなければならない。
 一 本邦内の旅行のうち営業所の所在する市町村の区域その他の国土交通省令で定める地域内のもののみについて旅行業務を取り扱う営業所にあつては、次条の規定による総合旅行業務取扱管理者試験、国内旅行業務取扱管理者試験又は地域限定旅行業務取扱管理者試験(当該営業所の所在する地域に係るものに限る。)に合格した者
 二 本邦内の旅行のみについて旅行業務を取り扱う営業所(前号の営業所を除く。)にあつては、次条の規定による総合旅行業務取扱管理者試験又は国内旅行業務取扱管理者試験に合格した者
 三 前二号の営業所以外の営業所にあつては、次条の規定による総合旅行業務取扱管理者試験に合格した者
7~10 略


(8) 次の記述のうち,旅行業務取扱管理者の職務として定められていないものはどれか。
ア.法第12条の4の規定による取引条件の説明に関する事項
イ.法第12条の9の規定による標識の掲示に関する事項
ウ.旅行に関する苦情の処理に関する事項
エ.契約締結の年月日,契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供するものと締結した契約の内容にかかる重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項


正解:イ(配点:4)
解説:規則10条の通りです。

(旅行業務取扱管理者の職務)
第十条 法第十一条の二第一項の国土交通省令で定める事項は、次のとおりとする。
 一 旅行に関する計画の作成に関する事項
 二 法第十二条の規定による料金の掲示に関する事項
 三 法第十二条の二第三項の規定による旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
 四 法第十二条の四の規定による取引条件の説明に関する事項
 五 法第十二条の五の規定による書面の交付に関する事項
 六 法第十二条の七及び法第十二条の八の規定による広告に関する事項
 七 法第十二条の十の規定による企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
 八 旅行に関する苦情の処理に関する事項
 九 契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
 十 前各号に掲げるもののほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項


(9) 旅行者から収受する旅行業務の取扱いの料金(企画旅行に係るものを除く。)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア.旅行業者代理業者は,事業の開始前に,旅行者から収受する旅行業務の取扱いの料金を自ら定めなければならない。
イ.旅行業者は,旅行業務の取扱いの料金をその営業所において旅行者が閲覧することができるように備え置かなければならない。
ウ.旅行業者は,旅行業務の取扱いの料金を変更したときは,遅滞なく登録行政庁にその旨を届け出なければならない。
エ.旅行業務の取扱いの料金は,契約の種類及び内容に応じて定率,定額その他の方法により定められ。旅行者にとって明確でなければならない。


正解:エ(配点:4)
解説:アについては,法12条1項では,「旅行業者代理業者」が「自ら」定めることまでは要求されていません。

(料金の掲示)
第十二条 旅行業者は、事業の開始前に、旅行者から収受する旅行業務の取扱いの料金(企画旅行に係るものを除く。)を定め、これをその営業所において旅行者に見やすいように掲示しなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2,3 略


 イについては,法12条1項の通り,営業所において旅行者に見やすいように掲示することが求められます。

(料金の掲示)
第十二条 旅行業者は、事業の開始前に、旅行者から収受する旅行業務の取扱いの料金(企画旅行に係るものを除く。)を定め、これをその営業所において旅行者に見やすいように掲示しなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2,3 略


 ウについては,法令上,料金の変更について登録行政庁への届出は要求されていません。法令上の仕組みとしては,旅行業者が規則21条の基準に従い自由に料金を設定・変更できるものとし(法12条1項,2項),この料金について観光庁長官が変更することを命じることができるものとしています(法18条の3第1項2号)。

(業務改善命令)
第十八条の三 観光庁長官は、旅行業者等の業務の運営に関し、取引の公正、旅行の安全又は旅行者の利便を害する事実があると認めるときは、当該旅行業者等に対し、次に掲げる措置をとるべきことを命ずることができる。
 一 略
 二 旅行業務の取扱いの料金又は企画旅行に関し旅行者から収受する対価を変更すること。
 三~六 略
2~4 略


 エについては,法12条2項,規則21条の通りです。

(料金の掲示)
第十二条 略
2 前項の料金は、国土交通省令で定める基準に従つて定められたものでなければならない。
3 略
(掲示料金の制定基準)
第二十一条 法第十二条第二項の国土交通省令で定める基準は、旅行業務の取扱いの料金が契約の種類及び内容に応じて定率、定額その他の方法により定められ、旅行者にとつて明確であることとする


(10) 旅行業約款に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.保証社員である旅行業者の旅行業約款にあって,その所属する旅行業協会の名称に変更があったときは,登録行政庁の認可を受けなければならない。
イ.他の旅行業者を代理して企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)契約を締結することができる旅行業者等にあっては,当該他の旅行業者の旅行業約款をその営業所において,旅行者に見やすいように掲示し,又は旅行者が閲覧することができるように備え置かなければならない。
ウ.観光庁長官及び消費者庁長官が標準旅行業約款を定めて公示した場合において,旅行業者が,標準旅行業約款と同一の旅行業約款を定めたときは,その旅行業約款については,登録行政庁の認可を受けたものとみなす。
エ.登録行政庁は,旅行業約款の認可をしようとするときは,当該約款が旅行者正当な利益を害するおそれがないものであることの認可の基準のひとつにしなければならない。


正解:ア(配点:4)
解説:アについて,「保証社員」とは,法49条1項の規定により弁済業務保証金分担金を納付した社員をいいます(法48条1項)。保証社員は,旅行業約款に,その所属する旅行業協会の名称を明示しておかなければなりません(法55条1号)。そして,旅行業約款を変更する場合には,観光庁長官の認可を受けなければなりませんが,軽微な変更をしようとする場合はこの限りではありません(法12条の2第1項後段)。そして,旅行業協会の名称の変更は軽微な変更にあたるため(契約規則2条1号イ),観光庁長官の認可が不要です。

(旅行業約款)
第十二条の二 旅行業者は、旅行者と締結する旅行業務の取扱いに関する契約に関し、旅行業約款を定め、観光庁長官の認可を受けなければならない。国土交通省令・内閣府令で定める軽微な変更をしようとする場合を除き、これを変更しようとするときも、同様とする。
2,3 略
(保証社員の旅行業約款の記載事項)
第五十五条 保証社員は、その旅行業約款に次に掲げる事項を明示しておかなければならない
 一 その所属する旅行業協会の名称及び所在地
 二~四 略
(軽微な変更)
第二条 法第十二条の二第一項の国土交通省令・内閣府令で定める軽微な変更は、次のとおりとする。
 一 保証社員である旅行業者の旅行業約款にあっては、次に掲げる事項の変更
  イ その所属する旅行業協会の名称又は所在地
  ロ その者に係る弁済業務保証金からの弁済限度額
 二 保証社員でない旅行業者の旅行業約款にあっては、営業保証金を供託している供託所の名称又は所在地の変更
 三 保証社員でない旅行業者が保証社員となった場合における旅行業法施行規則(昭和四十六年運輸省令第六十一号)第二十三条第七号に掲げる事項を同条第六号に掲げる事項に改める変更
 四 保証社員である旅行業者が保証社員でなくなった場合における旅行業法施行規則第二十三条第六号に掲げる事項を同条第七号に掲げる事項に改める変更


 イについては,法12条の2第3項の通りです。

(旅行業約款)
第十二条の二 略
2 略
3 旅行業者等は、旅行業約款(旅行業者代理業者にあつては所属旅行業者の旅行業約款、第十四条の二第一項又は第二項の規定により他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる者にあつては当該他の旅行業者の旅行業約款をその営業所において、旅行者に見やすいように掲示し、又は旅行者が閲覧することができるように備え置かなければならない


 ウについては,法12条の3の通りです。

(標準旅行業約款)
第十二条の三 観光庁長官及び消費者庁長官が標準旅行業約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、旅行業者が、標準旅行業約款と同一の旅行業約款を定め、又は現に定めている旅行業約款を標準旅行業約款と同一のものに変更したときは、その旅行業約款については、前条第一項の規定による認可を受けたものとみなす


 エについては,法12条の2第2項1号の通りです。

(旅行業約款)
第十二条の二 略
2 観光庁長官は、前項の認可をしようとするときは、次の基準によつてしなければならない。
 一 旅行者の正当な利益を害するおそれがないものであること
 二 少なくとも旅行業務の取扱いの料金その他の旅行者との取引に係る金銭の収受及び払戻しに関する事項並びに旅行業者の責任に関する事項が明確に(企画旅行を実施する旅行業者にあつては、企画旅行契約と手配旅行契約その他の企画旅行契約以外の契約との別に応じ、明確に)定められているものであること。
3 略


(11) 旅行業者等が旅行業務に関し旅行者と契約を締結しようとするとき,取引条件の説明にあたって旅行者に交付する書面に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.旅行業者等は,旅行者と手配旅行契約を締結しようとするときは,手配の内容に運送サービスが含まれる場合であっては,当該運送サービスの内容を勘案して,旅行者が取得することが望ましい輸送の安全に関する情報を書面に記載しなければならない。
イ.旅行業者等は,対価と引換えに法第12条の5に規定するサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付する場合,旅行者に対し書面の交付を要しない。
ウ.旅行業者は旅行に関する相談に応ずる行為に係る旅行業務について契約を締結しようとする場合においても,旅行者に書面を交付しなければならない。
エ.旅行業者等は,書面の交付に代えて,電磁的方法により書面に記載すべき事項を提供しようとするときは,あらかじめ,旅行者に対し,電磁的方法の種類及び内容を示し,書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。


正解:ア(配点:4)
解説:アについて,輸送の安全に関する情報は取引条件説明書面記載事項(契約規則5条)ではありません。

(書面の記載事項)
第五条 法第十二条の四第二項の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、次のとおりとする。
 一 企画旅行契約を締結しようとする場合にあっては、次に掲げる事項
  イ 企画者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
  ロ 企画者以外の者が企画者を代理して契約を締結する場合にあっては、その旨並びに当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
  ハ 当該契約に係る旅行業務を取り扱う営業所の名称及び所在地(外務員が書面を交付する場合にあっては、当該外務員の氏名並びにその所属する営業所の名称及び所在地)
  ニ 当該契約に係る旅行業務取扱管理者の氏名及び旅行者の依頼があれば当該旅行業務取扱管理者が最終的には説明を行う旨
  ホ 第三条第一号ハからタまでに掲げる事項
 二 企画旅行契約以外の旅行業務に関する契約(次号に規定する契約を除く。)を締結しようとする場合にあっては、次に掲げる事項
  イ 契約を締結する旅行業者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
  ロ 旅行業者代理業者が所属旅行業者を代理して契約を締結する場合にあっては、その旨並びに当該旅行業者代理業者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
  ハ 第三条第一号ハからホまで、ト、リからワまで及びヨ、同条第二号ハ及びニ並びに前号ハ及びニに掲げる事項
 三 法第二条第一項第九号に掲げる行為に係る旅行業務について契約を締結しようとする場合にあっては、第三条第一号ニ及びホに掲げる事項


 イについては,法12条の4第2項,契約規則4条の通りです。

(取引条件の説明)
第十二条の四 略
2 旅行業者等は、前項の規定による説明をするときは、国土交通省令・内閣府令で定める場合を除き、旅行者に対し、旅行者が提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容、旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項、旅行業務取扱管理者の氏名、通訳案内士法(昭和二十四年法律第二百十号)第二条第一項に規定する全国通訳案内士(以下単に「全国通訳案内士」という。)又は同条第二項に規定する地域通訳案内士(以下単に「地域通訳案内士」という。)の同行の有無その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 略
(書面の交付を要しない場合)
第四条 法第十二条の四第二項の国土交通省令・内閣府令で定める場合は、旅行業者等が対価と引換えに法第十二条の五に規定するサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付する場合とする。


 ウについて,旅行に関する相談に応じる行為も「旅行業務」であるため(法2条1項9号参照),法12条の4第1項の適用があり,同条2項の適用を受け,書面の交付が必要となります。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~八 略
 九 旅行に関する相談に応ずる行為
2~7 略
(取引条件の説明)
第十二条の四 旅行業者等は、旅行者と企画旅行契約、手配旅行契約その他旅行業務に関し契約を締結しようとするときは、旅行者が依頼しようとする旅行業務の内容を確認した上、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、その取引の条件について旅行者に説明しなければならない。
2 旅行業者等は、前項の規定による説明をするときは、国土交通省令・内閣府令で定める場合を除き、旅行者に対し、旅行者が提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容、旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項、旅行業務取扱管理者の氏名、通訳案内士法(昭和二十四年法律第二百十号)第二条第一項に規定する全国通訳案内士(以下単に「全国通訳案内士」という。)又は同条第二項に規定する地域通訳案内士(以下単に「地域通訳案内士」という。)の同行の有無その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない
3 略


 エについては,法12条の4第3項,令1条1項の通りです。

(取引条件の説明)
第十二条の四 略
2 略
3 旅行業者等は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、旅行者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該旅行業者等は、当該書面を交付したものとみなす。
(情報通信の技術を利用する方法)
第一条 旅行業者等は、旅行業法(以下「法」という。)第十二条の四第三項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、旅行者に対し、その用いる同項前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない
2 略


(12) 法第12条の5「書面の交付」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.旅行業者等は,旅行業務に関し取引をする者(旅行者を除く。)と旅行業務に関し契約を締結したときは,国土交通省令で定める場合を除き,遅滞なく,当該取引をする者に対し,旅行者に提供すべき旅行に関するサービスの内容その他の国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
イ.旅行業者は,旅行者と旅行の相談に応ずる行為に関し契約を締結したときは,遅滞なく,当該旅行者に対し,相談の内容,支払うべき対価及びその収受の方法に関する事項を記載した書面を交付しなければならない。
ウ.旅行業者代理業者が所属旅行業者を代理して旅行者と手配旅行契約を締結したときは,その旨並びに当該旅行業者代理業者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号を書面に記載しなければならない。
エ.旅行業者等は,旅行者と企画旅行契約を締結したときは,契約締結の年月日を書面に記載しなければならない。


正解:イ(配点:4)
解説:アについては,法12条の5第3項の通りです。

(書面の交付)
第十二条の五 略
2 略
3 旅行業者等は、旅行業務に関し取引をする者(旅行者を除く。以下この条において同じ。)と旅行業務に関し契約を締結したときは、国土交通省令で定める場合を除き、遅滞なく、当該取引をする者に対し、旅行者に提供すべき旅行に関するサービスの内容その他の国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない
4 略


 イについて,法12条の5第1項,契約規則8条の通り,書面の交付は不要です。

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 一~八 略
 九 旅行に関する相談に応ずる行為
2~7 略
(書面の交付)
第十二条の五 旅行業者等は、旅行者と企画旅行契約、手配旅行契約その他旅行業務に関し契約を締結したときは、国土交通省令・内閣府令で定める場合を除き、遅滞なく、旅行者に対し、当該提供すべき旅行に関するサービスの内容、旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項、旅行業務取扱管理者の氏名、全国通訳案内士若しくは地域通訳案内士の同行の有無その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面又は当該旅行に関するサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付しなければならない。
2~4 略
(書面の交付を要しない場合)
第八条 法第十二条の五第一項の国土交通省令・内閣府令で定める場合は、法第二条第一項第九号に掲げる行為に係る旅行業務について旅行者と契約を締結した場合とする。


 ウについては,契約規則9条2号ロの通りです。

(書面の記載事項)
第九条 法第十二条の五第一項の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、次のとおりとする。
 一 略
 二 企画旅行契約以外の旅行業務に関する契約を締結した場合にあっては、次に掲げる事項
  イ 略
  ロ 旅行業者代理業者が所属旅行業者を代理して契約を締結した場合にあっては、その旨並びに当該旅行業者代理業者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
  ハ 略


 エについては,法12条の5第3項,規則27条の4第7号の通りです。

(書面の記載事項)
第二十七条の四 法第十二条の五第三項の国土交通省令で定める事項は、次のとおりとする。
 一 旅行業務に関し取引をする者の氏名又は商号若しくは名称及び住所(当該者が旅行業者等又は旅行サービス手配業者である場合においては、氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに登録番号)
 二 契約を締結する旅行業者等の氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに登録番号
 三 旅行者に提供すべき旅行に関するサービスの内容
 四 旅行業者等が旅行業務に関し取引をする者に支払う対価又は旅行業務の取扱いの料金に関する事項
 五 当該契約に係る旅行業務を取り扱う営業所の名称及び所在地
 六 当該契約に係る旅行業務取扱管理者の氏名
 七 契約締結の年月日


(13) 外務員に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア.旅行業者代理業者の役員又は使用人に対する外務員の証明書は,国土交通省令で定める様式により,当該旅行業者代理業者の所属旅行業者が発行し,これを交付しなければならない。
イ.旅行業者等は,当該旅行業者等が選任した旅行業務取扱管理者に限り,旅行業務取扱管理者の証明書の提示をもって,その者を営業所以外の場所で外務員としての業務に従事させることができる。
ウ.外務員は,旅行者から請求があった場合に限り,外務員の証明書を提示しなければならない。
エ.外務員とは,勧誘員,販売員,外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず,旅行業者等の役員又は使用人のうち,その営業所以外の場所でその旅行業者等のために旅行業務について取引を行う者をいう。


正解:エ(配点:4)
解説:アについては,外務員の証明書の発行元及び交付者について法文上の規定がありません。
 イについては,外務員としての業務に従事させる以上,法12条の6第1項の適用があるため,外務員の証明書の提示が必要です。

(外務員の証明書携帯等)
第十二条の六 旅行業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その営業所以外の場所でその旅行業者等のために旅行業務について取引を行う者(以下「外務員」という。)に、国土交通省令で定める様式による証明書を携帯させなければ、その者を外務員としての業務に従事させてはならない
2,3 略
外務員の証明書の様式は→(規則28条,11号様式)


 ウについては,法12条の6第2項の通り,旅行者から請求がなくとも,業務を行う際には提示する必要があります。

(外務員の証明書携帯等)
第十二条の六 略
2 外務員は、その業務を行なうときは、前項の証明書を提示しなければならない。
3 略


 エについては,法12条の6第1項の通りです。

(外務員の証明書携帯等)
第十二条の六 旅行業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その営業所以外の場所でその旅行業者等のために旅行業務について取引を行う者(以下「外務員」という。)に、国土交通省令で定める様式による証明書を携帯させなければ、その者を外務員としての業務に従事させてはならない。
2,3 略


(14) 企画旅行に参加する旅行者を募集するための広告に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア.旅行業者等は,企画者以外の者の氏名又は名称を広告に表示する場合にあっては,文字の大きさ等に留意して,企画者の氏名又は名称の明確性を確保しなければならない。
イ.旅行業者等は,企画旅行の参加者数があらかじめ企画者が定める人員数を下回った場合に当該企画旅行を実施しないこととするときは,その旨及び当該人員数を広告に表示しなければならない。
ウ.旅行業者等は,契約の変更及び解除に関する事項を広告に表示しなければならない。
エ.旅行業者等は,旅行者が旅行業者等に支払うべき対価が当該企画旅行の出発日により異なる場合において,その最低額を表示するときは,併せてその最高額を広告に表示しなければならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:アについては,契約規則12条1号の通りです。

(広告の表示方法)
第十二条 旅行業者等は、企画旅行に参加する旅行者を募集するため広告をするときは、次に定めるところにより行わなければならない。
 一 企画者以外の者の氏名又は名称を表示する場合にあっては、文字の大きさ等に留意して、企画者の氏名又は名称の明確性を確保すること
 二 略


 イについては,契約規則13条6号の通りです。
 ウについては,契約規則13条に定めがありません。

(企画旅行の広告)
第十二条の七 旅行業者等は、企画旅行に参加する旅行者を募集するため広告をするときは、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、当該企画旅行を実施する旅行業者の氏名又は名称、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送等サービスの内容、旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項、第十二条の十の国土交通省令で定める措置を講ずるために必要な業務を行う者の同行の有無その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を表示してしなければならない。
(広告の表示事項)
第十三条 法第十二条の七の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、次のとおりとする。
 一 企画者の氏名又は名称及び住所並びに登録番号
 二 旅行の目的地及び日程に関する事項
 三 旅行者が提供を受けることができる運送、宿泊又は食事のサービスの内容に関する事項
 四 旅行者が旅行業者等に支払うべき対価に関する事項
 五 旅程管理業務を行う者の同行の有無
 六 企画旅行の参加者数があらかじめ企画者が定める人員数を下回った場合に当該企画旅行を実施しないこととするときは、その旨及び当該人員数
 七 第三号に掲げるサービスに専ら企画旅行の実施のために提供される運送サービスが含まれる場合にあっては、当該運送サービスの内容を勘案して、旅行者が取得することが望ましい輸送の安全に関する情報
 八 法第十二条の四に規定する取引条件の説明を行う旨(第三条第一号に規定する事項を表示して広告する場合を除く。)


 エについては,契約規則12条2号の通りです。

(広告の表示方法)
第十二条 旅行業者等は、企画旅行に参加する旅行者を募集するため広告をするときは、次に定めるところにより行わなければならない。
 一 略
 二 旅行者が旅行業者等に支払うべき対価が当該企画旅行の出発日により異なる場合において、その最低額を表示するときは、併せてその最高額を表示すること


(15) 標識に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア 旅行業者等の標識には,当該旅行業者等が法人である場合にあっては,その代表者の氏名及び選任した旅行業務取扱管理者の氏名を記載しなければならない。
イ 旅行業者等は,営業所において,国土交通省令で定める様式の標識を公衆に見やすいように掲示しなければならない。
ウ 旅行業者等以外の者は,国土交通省令で定める様式の標識又はこれに類似する標識を掲示してはならない。
エ 旅行業者等の標識には,登録番号及び登録年月日を記載しなければならない。


正解:ア(配点:4)
解説:アについて,規則31条各号,12号ないし15号様式には,法人である場合の定めがありません。
 エについては,いずれの様式でも,「登録番号」及び「登録年月日」の記載が要求されています。

(標識の様式)
第三十一条 法第十二条の九の国土交通省令で定める様式は、次の各号に掲げる営業所の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
 一 旅行業者の営業所(次号に掲げるものを除く。) 第十二号様式
 二 旅行業者の営業所であつて第十一条の二第六項第一号又は第二号に該当するもの 第十三号様式
 三 旅行業者代理業者の営業所(次号に掲げるものを除く。) 第十四号様式
 四 旅行業者代理業者の営業所であつて法第十一条の二第六項第一号又は第二号に該当するもの 第十五号様式
12号様式→
13号様式→
14号様式→
15号様式→


 イについては,法12条の9第1項の通りです。

(標識の掲示)
第十二条の九 旅行業者等は、営業所において、旅行業と旅行業者代理業との別及び第十一条の二第六項各号に規定する営業所の別に応じ国土交通省令で定める様式の標識を、公衆に見やすいように掲示しなければならない
2 略


 ウについては,法12条の9第2項の通りです。

(標識の掲示)
第十二条の九 略
2 旅行業者等以外の者は、前項の標識又はこれに類似する標識を掲示してはならない


(16) 企画旅行の円滑な実施のための措置に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア 旅行業者は,旅行に関する計画に定めるサービスの旅行者への確実な提供を確保するために旅行の開始前に必要な予約その他の措置を講じなければならない。
イ 旅行業者は,本邦外の旅行にあっては,旅行に関する計画に定めるサービスの内容の変更を必要とする事由が生じた場合は,代替サービスの手配及び当該サービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置を講じなければならない。
ウ 旅行業者は,本邦内の旅行であって,契約の締結の前に旅行者に対し,旅行地において旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置を講じない旨を説明すれば,当該措置を講じなくてもよい。
エ 旅行業者は,旅行に関する計画における2人以上の旅行者が同一の日程により行動することを要する区間における円滑な旅行の実施を確保するために必要な集合時刻,集合場所その他の事項に関する指示をしなければならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:アについては,規則32条1号の通りです。

(旅程管理のための措置)
第三十二条 法第十二条の十の国土交通省令で定める措置は、次のとおりとする。
 一 旅行に関する計画に定めるサービスの旅行者への確実な提供を確保するために旅行の開始前に必要な予約その他の措置
 二~四 略


 イについては,規則32条3号の通りです。同号に定める措置を講じる必要がない場合としては,「本邦内の旅行」の場合が挙げられていますが(同号かっこ書),本問は本邦外の旅行について問うものであるため,同号かっこ書の適用はありません。

(旅程管理のための措置)
第三十二条 法第十二条の十の国土交通省令で定める措置は、次のとおりとする。
 一,二 略
 三 旅行に関する計画に定めるサービスの内容の変更を必要とする事由が生じた場合における代替サービスの手配及び当該サービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置本邦内の旅行であつて、契約の締結の前に旅行者にこれらの措置を講じない旨を説明し、かつ、当該旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付した場合を除く。)
 四 略


 ウについては,規則32条2号かっこ書の通りです。同号に定める措置を講じなくてもよいのは,「講じない旨の説明」と「サービス提供を受ける権利を表示した書面の交付」の2要件を満たした場合に限られます。

(旅程管理のための措置)
第三十二条 法第十二条の十の国土交通省令で定める措置は、次のとおりとする。
 一 略
 二 旅行地において旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置(本邦内の旅行であつて、契約の締結の前に旅行者にこれらの措置を講じない旨を説明し、かつ、当該旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付した場合を除く。)
 三,四 略


 エについては,規則32条4号の通りです。

(旅程管理のための措置)
第三十二条 法第十二条の十の国土交通省令で定める措置は、次のとおりとする。
 一~三 略
 四 旅行に関する計画における二人以上の旅行者が同一の日程により行動することを要する区間における円滑な旅行の実施を確保するために必要な集合時刻、集合場所その他の事項に関する指示


(17) 旅程管理業務を行う者に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア 本邦内の企画旅行に参加する旅行者に同行して旅程管理業務を行う者として,旅行業者によって選任される者のうち主任の者についての実務の経験は,本邦内の旅行に関する旅程管理業務に従事した経験に限られる。
イ 企画旅行に参加する旅行者に同行して旅程管理業務を行う者として旅行業者によって選任される者が複数の場合は,当該同行する者のすべてが旅程管理業務を行う主任の者の資格として定められている要件を満たす者でなければならない。
ウ 本邦外の旅行に係る旅程管理業務に関する実務の経験は,観光庁長官の登録を受けた者が実施する旅程管理業務に関する研修の課程を修了した日の前後1年以内に2回以上の本邦外の旅程管理業務に従事した経験に限られる。
エ 旅行業者によって選任された旅程管理業務を行う主任の者の指導による旅程管理業務に相当する実務の研修を受けた経験は,当該研修を受けた地域を目的地とする旅行に係る旅程管理業務に従事した経験とみなされる。


正解:エ(配点:4)
解説:アについては,本邦外経験も含まれます。
 イについては,旅程管理業務主任者の要件を満たす者が1人いれば足ります。
 ウについては,規則33条1項の通りです。

(旅程管理業務に関する実務の経験)
第三十三条 法第十二条の十一第一項の国土交通省令で定める旅程管理業務に関する実務の経験は、同項に規定する研修の課程を修了した日の前後一年以内に一回以上又は当該研修の課程を修了した日から三年以内に二回以上の旅程管理業務(本邦外の企画旅行に参加する旅行者に同行する者にあつては、本邦外の旅行に関する旅程管理業務に限る。)に従事した経験(観光庁長官が、本邦外の企画旅行に係る旅程管理業務に関し特別の事情があると認めて、旅行の目的地の状況、言語その他の事項を勘案し旅行の目的地及び期間を限定して異なる経験を告示により指定した場合にあつては、当該指定による経験)とする。
2 略


 エについては,規則33条2項の通りです。

(旅程管理業務に関する実務の経験)
第三十三条 略
2 前項の場合において、法第十二条の十一第一項の規定に適合する者の指導による旅程管理業務に相当する実務の研修を受けた経験は、当該研修を受けた地域を目的地とする旅行に係る旅程管理業務に従事した経験とみなす


(18) 法第13条「禁止行為」に関する次の記述から,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
a.旅行業者等の従業者は,旅行者に対し,旅行地において特定のサービスの提供を受けることを強要する行為をしてはならない。
b.旅行業者等は,運送サービス(専ら企画旅行の実施のために提供されるものに限る。)を提供する者に対し,輸送の安全の確保を不当に阻害する行為をしてはならない。
c.旅行業者等は,書面による旅行者の承諾があった場合に限り,営業所に掲示した旅行業務の取扱いの料金を超えて料金を収受することができる。
d.旅行業者等は,旅行業務に関し取引をする者に対し,その取引に関する重要な事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為をしてはならない。
ア.a, c  イ.a, b, d  ウ.b, c, d  エ a, b, c, d


正解:イ(配点:4)
解説:aについては,法13条3項4号,規則37条の9第2号の通りです。

(禁止行為)
第十三条 略
2 略
3 旅行業者等又はその代理人、使用人その他の従業者は、その取り扱う旅行業務に関連して次に掲げる行為を行つてはならない
 一~三 略
 四 前三号に掲げるもののほか、旅行者の保護に欠け、又は旅行業の信用を失墜させるものとして国土交通省令で定める行為
(禁止行為)
第三十七条の九 法第十三条第三項第四号の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
 一 略
 二 旅行者に対し、旅行地において特定のサービスの提供を受けること又は特定の物品を購入することを強要する行為


 bについては,法13条3項4号,規則37条の9第1号の通りです。

(禁止行為)
第十三条 略
2 略
3 旅行業者等又はその代理人、使用人その他の従業者は、その取り扱う旅行業務に関連して次に掲げる行為を行つてはならない
 一~三 略
 四 前三号に掲げるもののほか、旅行者の保護に欠け、又は旅行業の信用を失墜させるものとして国土交通省令で定める行為
(禁止行為)
第三十七条の九 法第十三条第三項第四号の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
 一 運送サービス(専ら企画旅行の実施のために提供されるものに限る。)を提供する者に対し、輸送の安全の確保を不当に阻害する行為
 二 略


 cについて,法13条1項1号,12条1項,3項は,旅行者の承諾による例外規定を設けていないため,誤りです。

(料金の掲示)
第十二条 旅行業者は、事業の開始前に、旅行者から収受する旅行業務の取扱いの料金(企画旅行に係るものを除く。)を定め、これをその営業所において旅行者に見やすいように掲示しなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2 略
3 旅行業者代理業者は、その営業所において、所属旅行業者が第一項の規定により定めた料金を旅行者に見やすいように掲示しなければならない。
(禁止行為)
第十三条 旅行業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
 一 第十二条第一項又は第三項の規定により掲示した料金を超えて料金を収受する行為
 二 略
2,3 略


 dについては,法13条1項2号の通りです。

(禁止行為)
第十三条 旅行業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
 一 略
 二 旅行業務に関し取引をする者に対し、その取引に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
2,略


(19) 受託契約に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア 第3種旅行業者は,第1種旅行業者を委託旅行業者とする受託契約を締結することができない。
イ 旅行業者代理業者は,所属旅行業者の事前の承諾があれば,自ら直接,他の旅行業者と受託契約を締結することができる。
ウ 旅行業者は,複数の他の旅行業者と受託契約を締結することができる。
エ 旅行業者は,委託旅行業者と受託契約を締結したときは,遅滞なく,登録行政庁にその旨を届け出なければならない。


正解:ウ(配点:4)
解説:ア,エについては,法文上そのような定めは置かれていません。
 イについて,委託旅行業者と受託旅行業者との間の受託契約の中で,旅行業者代理業者が委託旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる旨定めることができるにとどまり,旅行業者代理業者が受託契約の当事者とはなりません(法14条の2第2項)。
 ウについては,法文上複数の他の旅行業者と受託契約を締結することを規制する定めはありません。

(企画旅行を実施する旅行業者の代理)
第十四条の二 旅行業者は、他の旅行業者が実施する企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)について、当該他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することを内容とする契約(以下「受託契約」という。)を締結したときは、第三条の規定にかかわらず、旅行業者代理業の登録を受けなくても、当該受託契約の相手方(以下「委託旅行業者」という。)を代理して企画旅行契約を締結することができる。
2 前項の規定により委託旅行業者と受託契約を締結した旅行業者(以下「受託旅行業者」という。)が、当該受託契約において、当該受託旅行業者を所属旅行業者とする旅行業者代理業者のうち当該委託旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができるものを定めたときは、その受託契約において定められた旅行業者代理業者(以下「受託旅行業者代理業者」という。)は、当該委託旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる。
3 委託旅行業者及び受託旅行業者は、受託契約において、委託旅行業者を代理して企画旅行契約を締結することができる受託旅行業者又はその受託旅行業者代理業者の営業所を定めておかなければならない。


(20)  旅行業者代理業者に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア 旅行業者代理業を営もうとする者は,地域限定旅行業者を所属旅行業者とすることはできない。
イ 登録行政庁は,旅行業者代理業者に対し,その行う営業が旅行業であると誤認させ,又は所属旅行業者を誤認させないようにするための措置をとるべきことを命ずることができる。
ウ 旅行業者代理業者は,旅行業務に関し取引をしようとするときは,所属旅行業者の氏名又は名称及び旅行業者代理業者である旨を取引の相手方に明示しなければならない。
エ 旅行業者代理業者は,その行う営業が旅行業であると誤認させ,又は所属旅行業者を誤認させるような表示,広告その他の行為をしてはならない。


正解:ア(配点:4)
解説:アについては,法文中にそのような規定はありません。
 イについては,法14条の3第4項の通りです。

(旅行業者代理業者の旅行業務等)
第十四条の三 略
2,3 略
4 観光庁長官は、旅行業者代理業者に対し、その行う営業が旅行業であると誤認させ、又は所属旅行業者を誤認させないようにするための措置をとるべきことを命ずることができる
5 略


 ウについては,法14条の3第2項の通りです。

(旅行業者代理業者の旅行業務等)
第十四条の三 略
2 旅行業者代理業者は、旅行業務に関し取引をしようとするときは、所属旅行業者の氏名又は名称及び旅行業者代理業者である旨を取引の相手方に明示しなければならない
3~5 略


 エについては,法14条の3第3項の通りです。

(旅行業者代理業者の旅行業務等)
第十四条の三 略
2 略
3 旅行業者代理業者は、その行う営業が旅行業であると誤認させ、又は所属旅行業者を誤認させるような表示、広告その他の行為をしてはならない
4,5 略


(21) 登録の取消し等に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア 登録行政庁は,旅行業者等が法人であって,その役員のうちに著作権法に違反し,罰金刑に処せられた者があるものが判明したときは,6月以内の期間を定めて,当該旅行業者等に対し,業務の一部の停止を命じることができる。
イ 登録行政庁は,旅行業者等が登録を受けてから1年以内に事業を開始せず,又は引き続き1年以上事業を行っていないと認めるときは,登録を取り消すことができる。
ウ 登録行政庁は,旅行業者等が旅行業法若しくは旅行業法に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは,6月以内の期間を定めて当該旅行業者等の業務の全部若しくは一部の停止を命じ,又は登録を取り消すことができる。
エ 登録行政庁は,旅行業者が不正の手段により変更登録を受けたときは,当該旅行業者の登録を取り消すことができる。


正解:ア(配点:4)
解説:アについて,法19条1項1号の「法律」には,著作権法は含まれないため,誤りです。

(登録の取消し等)
第十九条 観光庁長官は、旅行業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる。
 一 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
 二,三 略
2,3 略


 イについては,法19条2項の通りです。

(登録の取消し等)
第十九条 略
2 観光庁長官は、旅行業者等が登録を受けてから一年以内に事業を開始せず、又は引き続き一年以上事業を行つていないと認めるときは、登録を取り消すことができる
3 略


 ウについては,法19条1項1号の通りです。

(登録の取消し等)
第十九条 観光庁長官は、旅行業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる
 一 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき
 二,三
2,3 略


 エについては,法19条1項3号の通りです。

(変更登録等)
第六条の四 旅行業の登録を受けた者(以下「旅行業者」という。)は、第四条第一項第三号の業務の範囲について変更をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、観光庁長官の行う変更登録を受けなければならない。
2~4 略
(登録の取消し等)
第十九条 観光庁長官は、旅行業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる
 一,二 略
 三 不正の手段により第三条の登録、第六条の三第一項の有効期間の更新の登録又は第六条の四第一項の変更登録を受けたとき
2,3 略


(22)  旅行サービス手配業に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
ア 旅行サービス手配業者は,旅行サービス手配業務を他人に委託する場合においては,他の旅行サービス手配業者又は旅行業者に委託しなければならない。
イ 旅行業者は,旅行サービス手配業の登録を受けなくても,旅行サービス手配業務を行うことができる。
ウ 旅行サービス手配業者は,運送サービス(専ら企画旅行の実施のために提供されるものに限る。)を提供する者に対し,輸送の安全の確保を不当に阻害する行為をしてはならない。
エ 旅行サービス手配業の登録の有効期間は,登録の日から起算して5年とする。


正解:エ(配点:4)
解説:アについては,法33条1項の通りです。

(旅行サービス手配業務等の委託)
第三十三条 旅行サービス手配業者は、旅行サービス手配業務を他人に委託する場合においては、他の旅行サービス手配業者又は旅行業者に委託しなければならない
2 略


 イについては,法34条1項の通りです。

(登録)
第二十三条 旅行サービス手配業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。
(旅行業者等による旅行サービスの手配の代理等)
第三十四条 旅行業者は、第二十三条の規定にかかわらず、旅行サービス手配業の登録を受けなくても、第二条第六項に規定する行為を行うことができる
2 略


 ウについては,法31条3項,規則52条2号の通りです。

(禁止行為)
第三十一条 略
2 略
3 旅行サービス手配業者又はその代理人、使用人その他の従業者は、その取り扱う旅行サービス手配業務に関連して、旅行サービス手配業の信用を失墜させるものとして国土交通省令で定める行為を行つてはならない
(禁止行為)
第五十二条 法第三十一条第三項の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
 一 略
 二 運送サービス(専ら企画旅行の実施のために提供されるものに限る。)を提供する者に対し、輸送の安全の確保を不当に阻害する行為
 三 略


 エについて,「旅行業」の登録の有効期間は登録の日から起算して5年ですが(法6条の2),「旅行サービス手配業」は「旅行業」には含まれないため(法2条1項各号に該当しない上,法2条6項は旅行サービス手配業と旅行業を書き分けている。),旅行サービス手配業に法6条の2の適用はありません。

(定義)
第二条 略
2~5 略
6 この法律で「旅行サービス手配業」とは、報酬を得て、旅行業を営む者(外国の法令に準拠して外国において旅行業を営む者を含む。)のため、旅行者に対する運送等サービス又は運送等関連サービスの提供について、これらのサービスを提供する者との間で、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為(取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便の確保に支障を及ぼすおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)を行う事業をいう。
7 略
(登録の有効期間)
第六条の二 旅行業の登録の有効期間は、登録の日から起算して五年とする。


(23) 次の記述のうち,旅行業協会が適正かつ確実に実施しなければならない業務として定められていないものはどれか。
ア 旅行業等又は旅行サービス手配業を営む者の業務の適正な運営を確保するための旅行業者等又は旅行サービス手配業者に対する立入検査
イ 旅行業務又は旅行サービス手配業務の取扱いに従事する者に対する研修
ウ 旅行業務及び旅行サービス手配業務に関する取引の公正の確保又は旅行業,旅行業者代理業及び旅行サービス手配業の健全な発達を図るための調査,研究及び広報
エ 旅行者及び旅行に関するサービスを提供する者からの旅行業者等又は旅行サービス手配業者の取り扱った旅行業務又は旅行サービス手配業務に対する苦情の解決


正解:ア(配点:4)
解説:法42条は,旅行業協会が適正かつ確実に実施しなければならない業務として,次の通り定めています。

(業務)
第四十二条 旅行業協会は、次に掲げる業務をこの章に定めるところにより適正かつ確実に実施しなければならない。
 一 旅行者及び旅行に関するサービスを提供する者からの旅行業者等又は旅行サービス手配業者の取り扱つた旅行業務又は旅行サービス手配業務に対する苦情の解決
 二 旅行業務又は旅行サービス手配業務の取扱いに従事する者に対する研修
 三 旅行業務に関し社員である旅行業者又は当該旅行業者を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と取引をした旅行者に対しその取引によつて生じた債権に関し弁済をする業務(以下「弁済業務」という。)
 四 旅行業務又は旅行サービス手配業務の適切な運営を確保するための旅行業者等又は旅行サービス手配業者に対する指導
 五 旅行業務及び旅行サービス手配業務に関する取引の公正の確保又は旅行業、旅行業者代理業及び旅行サービス手配業の健全な発達を図るための調査、研究及び広報


 イは同条2号,ウは同条5号,エは同条1号に定めがありますが,アについては定めがありません。

(24) 弁済業務保証金制度に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
ア 旅行業協会が供託している弁済業務保証金から債権の弁済を受ける権利を有する旅行者は,その権利を実行しようとするときは,その債権について登録行政庁の認証を受けなければならない。
イ 旅行業協会に加入しようとする旅行業者は,その加入しようとする日までに,所定の弁済業務保証金分担金を旅行業協会に納付しなければならない。
ウ 保証社員と旅行業務に関し取引をした旅行者及び当該保証社員から手配を依頼された旅行サービス手配業者は,その取引によって生じた債権に関し,旅行業協会が供託している弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する。
エ 旅行業協会は,保証社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは,これを保証社員の主たる営業所の最寄りの供託所に弁済業務保証金として供託しなければならない。


正解:イ(配点:4)
解説:アについて,法48条2項は,「旅行業協会」の認証を受けなければならないとしています。

(弁済業務保証金の還付)
第四十八条 保証社員(次条第一項の規定により弁済業務保証金分担金を納付した社員をいう。以下同じ。)又は当該保証社員を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と旅行業務に関し取引をした旅行者は、観光庁長官の指定する弁済業務開始日以後、その取引によつて生じた債権に関し、当該保証社員について弁済業務規約で定める弁済限度額の範囲内(当該保証社員について既に次項の認証をした債権があるときはその額を控除し、第五十条第二項の規定により納付を受けた額があるときはその額を加えた額の範囲内)において、旅行業協会が供託している弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する。
2 前項の権利を実行しようとする者は、その債権について旅行業協会の認証を受けなければならない
3~6 略


 イについては,法49条1項1号の通りです。

(弁済業務保証金分担金の納付等)
第四十九条 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める日までに、弁済業務保証金に充てるため、弁済業務規約で定める額の弁済業務保証金分担金を旅行業協会に納付しなければならない
 一 旅行業協会に加入しようとする旅行業者 その加入しようとする日
 二 略
2~4 略


 ウについて,法48条1項には,「保証社員から手配を依頼された旅行サービス手配業者」は含まれていません。

(弁済業務保証金の還付)
第四十八条 保証社員(次条第一項の規定により弁済業務保証金分担金を納付した社員をいう。以下同じ。)又は当該保証社員を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と旅行業務に関し取引をした旅行者は、観光庁長官の指定する弁済業務開始日以後、その取引によつて生じた債権に関し、当該保証社員について弁済業務規約で定める弁済限度額の範囲内(当該保証社員について既に次項の認証をした債権があるときはその額を控除し、第五十条第二項の規定により納付を受けた額があるときはその額を加えた額の範囲内)において、旅行業協会が供託している弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する
2~6 略


 エについて,法47条1項,2項の通り,「旅行業協会の住所」の最寄りの供託所に供託することになります。

(弁済業務保証金の供託)
第四十七条 旅行業協会は、第四十九条第一項から第三項までの規定により弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から七日以内に、法務省令・国土交通省令で定めるところにより、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない
2 弁済業務保証金の供託は、旅行業協会の住所の最寄りの供託所にしなければならない


(25) 雑則及び罰則に関する次の記述のうち,正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。
a 観光庁長官は,旅行業務又は旅行サービス手配業務に関する取引の公正の維持,旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進のため必要かつ適当であると認めるときは,国土交通省令で定めるところにより,旅行業法又は旅行業法に基づく命令に違反する行為を行った者の氏名又は名称を一般に公表することができる。
b 観光庁長官は,法第1条の目的を達成するため必要な限度において,その職員に旅行業者等若しくは旅行サービス手配業者の営業所に立ち入り,帳簿書類その他の物件を検査し,又は関係者に質問させることができる。
c 旅行業若しくは旅行業者代理業又は旅行サービス手配業を無登録で営んだ者は1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
ア a, b  イ b, c  ウ a, c  エ a, b, c


正解:ア(配点:4)
解説:aについては,法71条のとおりです。

(法令違反行為を行つた者の氏名等の公表)
第七十一条 観光庁長官は、旅行業務又は旅行サービス手配業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進のため必要かつ適当であると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為(以下この条において「法令違反行為」という。)を行つた者の氏名又は名称その他法令違反行為による被害の発生若しくは拡大を防止し、又は取引の公正を確保するために必要な事項を一般に公表することができる


 bについては,法70条3項の通りです。

(報告徴収及び立入検査)
第七十条 略
2 略
3 観光庁長官は、第一条の目的を達成するため必要な限度において、その職員に旅行業者等若しくは旅行サービス手配業者の営業所若しくは事務所又は第十二条の十一第一項若しくは第二十八条第五項の登録を受けた者若しくは旅行業協会の事務所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問させることができる
4~8 略


 cについて,「旅行業者代理業」を営むには観光庁長官の登録を受ける必要がありますが(法3条),これに違反しても罰則の対象とはなりません(法74条1号は「旅行業」しか掲げていない。)。

(登録)
第三条 旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。
(登録)
第二十三条 旅行サービス手配業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。
第七十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
 一 第三条の規定に違反して旅行業を営んだ者
 二~五 略
 六 第二十三条の規定に違反して旅行サービス手配業を営んだ者
 七,八 略



2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例⑧「あっしには,かかわりのねえことでござんす」

じれかん民法,ついに最後の問題です。

とても長い道のりでした。。。

どの演習書よりも1周するのが大変でしたね。

だって難しすぎんだもん。

こんなの司法試験でも聞かれないんじゃないかって議論めちゃくちゃ出てくるし。

しかし,民法の復習もかねて,とてもいい勉強になったので,

一読の価値はありました。

とはいえ,これだけは言いたいですが,

司法試験直前期に読む本ではない

そんなこんなで,最後は,事例⑧です。

≪問題≫

●事例
 ファミリー・レストランや居酒屋など数種類の飲食店をチェーン展開するB社は,2009年末に,翌年夏から秋にかけて各店舗で開催する「北海道フェア」で用いる食材として,北海道十勝地方の農家Aから,Aが2010年6月から9月の収穫期に収穫する「恵味86」という品種--実在する品種である--のトウモロコシ500tを,1kg当たり100円,総額5000万円で買い受けることとした。BがAと取引をするのは初めてのことであったが,Aの生産する「恵味86」は,例年評判が高く,買い付けの引き合いが多かった。そこで,Bは代金の内金として3000万円を前払いするという条件で,この収穫期における予想されるAの総収穫量800tの60%余りの買い付けに成功したものである。
 また,この契約では,Aが自己所有の倉庫のひとつである甲倉庫に目的物を保管して,Bが必要に応じて甲倉庫までトラックで出向いてトウモロコシを受領すること,Bは10月末日までに全部を受領することとされた。
 Bは,約定に従って内金として3000万円を支払ったうえで,2010年8月までに,200tのトウモロコシの引渡しを受けたが,その年に収穫されたAの「恵味86」は,冷夏のためか,粒皮が例年よりもやや固めで,AのB以外への「恵味86」の販売も低調であったし,Bの北海道フェアでの売上げも期待していたほどには伸びなかった。そのためBは,9月以降はしばらく引き取りに行かずにいた。Aは,Bが引き取りに来ればいつでもBの求めに応じた引渡しができるように,甲倉庫に「恵味86」を多めに,余裕をもって確保して待っていたが,甲倉庫にあった在庫は9月末にすべて盗難されてしまった。
 この場合について,以下の設問に答えなさい。設問はそれぞれ独立の問いである。

【設問1】 Aは,甲倉庫とは別に,自己所有の乙倉庫にも,約定の収穫期に収穫した「恵味86」を保管しており,それらは盗難にあっていないとする。このとき,Bは,内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。

【設問2】 Aは,その収穫期の「恵味86」を,すべて甲倉庫に保管しており,そのすべてが盗難にあったとする。Bは,内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。

【設問3】 【設問2】と同じ事案で,ただ盗難が生じたのが,9月末ではなく,11月に入ってからのことであったとする。このとき,Bは内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。


ここらへんの話は,去年の司法試験で問われていました。

そうすると今年は出ない気もしますが,

やはり弱点分野ですので,ちゃんとやっておきたいです。

しかし,この回の解説,マジで分かりやすいですね。

もう,分かりやすさのあまり感動の涙を流してしまいました(大嘘)

学部の頃に貞友民法を読んでいて,

債務不履行と危険負担の関係がいまいちよく分かっていなかったのが,

今回の解説を読んでほとんど解決されました。

この回の解説は一読をおすすめします。

≪答案≫
第1 設問1
 1 AとBとの間では,「恵味86」の売買契約(民法555条。以下「本件売買契約」という。)が締結されている。そうすると,AはBに対し「恵味86」の引渡請求権を,BはAに対し売買代金支払請求権を有している。ここで,Bが売買代金のうち1000万円の返還を求めるためには,前記代金支払請求権が消滅している必要がある。そこで,前記代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 Bとしては,甲倉庫内の「恵味86」の盗難により,Aの「恵味86」の引渡債務が履行不能となっているため,本件売買契約を解除すると主張する(民法543条)ことが考えられる。そこで,Aの前記引渡債務が履行不能になっているかどうかについて検討する。
 Aの前記引渡債務は,「恵味86」という種類物を引き渡す債務であるが,「恵味86」のうち2010年6月から9月にかけて収穫されるものを対象としているため,制限種類債務である。そこで,これが特定されている(同法401条2項)といえるかについてみると,Aの前記引渡債務は,Bが甲倉庫に出向いて受領するというものであるから,取立債務である。取立債務においては,債務者が引渡しの準備をして,目的物を他の同一種類物から分離して,債権者にその旨を通知することによって特定が生じる。しかし,甲倉庫において盗難があった時点において,AはBに引き渡すべき残量200tを超える量の制限種類物を甲倉庫に保管していたのであるから,甲倉庫に保管していることだけをもって当然には特定がなされていたことにはならないというべきである。したがって,Aの前記引渡債務は,履行不能に陥っていない。
 したがって,Bは本件引渡債務を解除することはできない。
 3 また,履行不能となっていない以上,危険負担の適用もない。
 4 よって,未だ前記代金支払請求権は存続しているのであるから,BはAに対し,内金の残余1000万円の返還を求めることができない。
第2 設問2
 1 本件においても,AのBに対する売買契約に基づく代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 本件では,設問1と異なり,制限種類物である「恵味86」がすべて盗難されている。制限種類物が全部滅失したに履行不能となるかどうかについて検討すると,制限種類債権においては,個別具体的な個体の特定まではされていなくても,制限の範囲内という程度の特定はされており,制限の範囲内の物がすべて滅失した場合には,給付危険の移転を判断するのに十分な程度の特定が生じているから,これが全部滅失した場合には履行不能となる。そうすると,Aが引き渡すべき「恵味86」は,前記の期間内に収穫したものの範囲内という程度で特定されているから,これらがすべて盗難されたことをもって履行不能になったものというべきである。
 そこで,Aに帰責事由があるかどうかについて検討すると,前記のように制限種類債権では,個別の個体の特定をまたずに履行不能となることからすれば,種類債権と同様に個別の個体の特定前は注意義務を負わないとするのは妥当ではなく,債務者はその目的物について,自己の財産におけるのと同一の注意義務(同法659条参照)を負うと考える。本件では,AはBに引き渡すべき目的物とそれ以外の目的物を一緒に甲倉庫に保管していたのであるから,自己の財産におけるのと同一の注意義務を果たしていたと認められる。したがって,Aに帰責事由はない。
 よって,Bは,本件売買契約を解除することはできない。
 3 そこで,Bは,危険負担の適用により,Aの前記代金支払請求権は消滅すると主張することが考えられる。
 本件売買契約の目的物は,制限種類物であって,不特定物であるが,前記のように制限の範囲内という程度で特定されており,それによって履行不能を基礎づけられるのであるから,遅くともその全部の滅失時には,目的物が特定されていたと考えられる。そうすると,本件売買契約は,特定した不特定物に関する物権の移転を双務契約の目的としているから,民法534条2項の適用により,債権者の危険負担となり,Aの前記代金支払請求権は消滅するようにも思われる。
 しかし,双務契約の締結をもってその目的物の滅失による対価危険を債権者に移転させることは,当事者間の利益均衡を著しく害するものであり,妥当ではない。そこで,買主は,目的物の引渡しを受けることによって使用収益ができるようになることや,目的物を実質的に管理しえた者が危険を負担すべきであるから,目的物の引渡しがあった時点で対価危険は移転すると考える。したがって,民法534条は,目的物の引渡しがあったときから適用がある。
 これを本件についてみると,甲倉庫内の「恵味86」は,Bへの引渡しがされる前に滅失しているから,民法534条は適用されず,対価危険は未だAにあるというべきである。したがって,Aの前記代金支払請求権は消滅している。
 4 よって,Bは,代金の返還を請求することができる。
第3 設問3
 1 本件においても,AのBに対する売買契約に基づく代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 AB間では,「恵味86」の受領を2010年10月末日までに行う旨の合意がされているが,Bはこの期日までに目的物の受領を受けていないため,受領遅滞(同法413条)に陥っている。受領遅滞があった場合には,受領義務を履行しなかった債権者の帰責事由となり,民法536条2項により,対価危険が債務者から債権者に移転すると考える。そうすると,Bの受領遅滞により,対価危険がAからBに移転し,Aの前記代金支払請求権は存続することとなりそうである。
 3 もっとも,Aの前記引渡債務に履行遅滞がある場合には,その後の履行不能は,Aに帰責事由があるものとして,Bは本件売買契約を解除することができる。そこで,Aが,粒皮がやや固い「恵味86」を提供したことをもって,本件売買契約における弁済の提供をしているといえるかどうかについて検討する。
 判例には,制限種類債務においては,目的物の品質は問題とならないとしたものがある。これによれば,品質が劣悪であっても,制限の範囲内の物が提供される以上,それは弁済の提供にあたることとなる。しかし,同判例の趣旨は,制限種類債権において,品質についての合意がない場合について中等の品質の物の給付義務を定める民法401条1項の適用がないことをいうにすぎず,品質についての明示又は黙示の合意を排除するものではないと考えられる。
 そうすると,本件では,Bは,Aの生産する「恵味86」の評判がよいことを理由として買い付けているのであるから,評判を維持する程度に高品質の「恵味86」を目的物とすることを黙示に合意していると考えられる。それにもかかわらず,AがBに提供した「恵味86」は,粒皮がやや固く,評判がいまいちであったから,当事者間において合意された品質のものが提供されていない。したがって,Aにおいては履行遅滞がある。
 そのため,本件では,Aの履行遅滞後の履行不能として,Aの帰責事由が認められるから,Bは本件売買契約を解除することができる。したがって,Aの前記代金支払請求権は消滅する。
 4 よって,Bは,代金の返還を請求することができる。

以 上



2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例⑥「取られてたまるか」

どうやら,ついに今日,受験票が届き出したようですが,

まだうちには来ていません。

ちゃんと出願できてるよな……

これで受けられなかったら困りますね。

それはおいといて,事例⑥です。

≪問題≫

●Aが所有する商業用賃貸ビル(本件建物)は,老朽化のため傷みが激しく,入居者がいない状態であったが,Aには大規模な改修に踏み切るほど資力に余裕はなかった。2006年4月,Aから話を聞き本件建物に興味をもった友人Bは,本件建物を購入して自ら改修したいとの意向と,その際はAに工事業者の手配や改修後のテナント募集も依頼したい旨をAに伝えたところ,Aはこれに応じた。同年10月,Bは,銀行Cから2億円を借り入れ,うち1億6000万円をAに支払って本件建物の所有権移転を受けるとともに,Cのための抵当権を本件建物に設定し,各登記を経由した。同年12月,Aが手配したDとBの間で代金を8000万円とする本件建物改修工事の請負契約が結ばれ,2007年10月に同工事は完了した。以下の各設問(それぞれ独立した問いである)においてCの請求は認められるか。

【設問1】 B・D間では,工事代金の支払を着工時と竣工時に半額ずつ行う旨が約されていたが,Bは竣工時の支払ができなかった。そこで,2007年12月,準備ができ次第,Aが残金を建て替えてDに支払い,そのかわり本件建物の収益を得ることがA・B間で合意され,これに基づき,Aは,Bとの間で本件建物の賃貸借契約を,入居を希望してきたEとの間で転貸借契約を締結した。AはEから収取した転貸賃料600万円のうち200万円をBの銀行口座に振り込み,Cはこの口座からの引き落としで毎月の債務の弁済をBから受けていた。ところが,Aは,2008年3月にA・B間での合意に従い工事残代金(遅延損害金を含む)4500万円をDに支払って以降,Bの口座への賃料振込みを止めてしまい,そのためBのCに対する債務の不履行が生じた。そこでCは,BのAに対する賃料を物上代位により収取しようとしたが,A・B間の契約内容が不明確であったため断念し,かわりにAがEに対して有する将来の賃料債権のうち被担保債権額に満つるまでの分につき差押命令を求めた。

【設問2】 2006年9月,Bは,Aから紹介されたFとの間で,期間を2007年12月から15年,賃料月額100万円とする賃貸借契約を締結し,同日,2017年12月から毎年800万円ずつFに返還する約定で保証金4000万円をFから受領した。そのご,Bの業績不振の噂を聞いたFは,Bが保証金を返還してくれるのか不安になり,Bと保証金減額の交渉を開始した。その結果,2008年6月,BとFは,従前の賃貸借契約を解消したうえで,これと同内容の賃貸借契約を締結するとともに,保証金について,額を2000万円に減じたうえ従前の保証金の一部をこれに充てること,2012年7月以降毎年400万円ずつ返還すること,本件建物につき差押え等があった場合にはBは保証金返還債務につき当然に期限の利益を失うことを合意し,保証金の差額2000万円がBからFに返還された。2010年5月,Bの一般債権者が本件建物を差し押さえたため,Fはただちに保証金返還請求権をもって2010年6月分以降20か月分の賃料債権を対当額で相殺する旨の意思表示をBにした。一方Cは,2011年4月,Bの履行遅滞を受け,BのFに対する賃料債権のうち被担保債権額に満つるまでの分につき差押命令を得,2011年9月,支払に応じないFを相手に,2011年5月~9月分の賃料の支払を求め,訴えを提起した。


物上代位とその他との優劣の問題です。

私が慶應ローの入試を受けたときに出題された気がします。

それもちょうど保証金との相殺だったような……

当時は全然分からんかったなあ……

≪答案≫
第1 設問1
 1 Cは,AのEに対する賃貸借契約に基づく賃料支払請求権に対して差押命令(民執法145条)をする根拠は,Cが本件建物に設定した抵当権に基づく物上代位(民法372条,304条1項)であると考えられる。
 前提として,賃料債権に対して物上代位をすることができるかどうかについて検討すると,抵当権は,目的物の占有を抵当権設定者の下にとどめ,設定者が目的物を自ら使用し,又は第三者に使用させるとを許す性質の担保権であるところ,抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に,その対価について抵当権を行使することができるとしても,抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならない。したがって,賃料債権に対して物上代位をすることはできる(※1)
 そうだとしても,Cが差押命令の発令を受けているのは,抵当権設定者であるBのAに対する賃料債権ではなく,賃借人Aの転借人Eに対する賃料債権である。このような賃借人が,民法372条が準用する同法304条1項本文にいう「債務者」にあたるかどうかが問題となる。
 2 抵当不動産の賃借人は,抵当不動産をもって物的責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借契約にやける賃借人の利益を不当に害する。そこで,民法372条が準用する同法304条1項本文にいう「債務者」には,原則として抵当不動産の賃借人は含まれない(※2)
 もっとも,判例によれば,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することが許されるとする(※3)。これによる場合には,本件におけるAB間の賃貸借契約は,AのBに対する工事代金の立替金債権の回収のためにされたものにすぎないから,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することができる事情はなく,CがAの前記請求権について物上代位権を行使することはできないようにも思える。
 しかし,抵当権は登記をもって物上代位が公示されているところ,抵当権者は設定登記によって将来の賃料債権まで物上代位によって優先弁済効を及ぼすことを確保できるのであって,以後,他の債権者等がこれらを自らの債権の回収の原資として利用する措置を講ずることはできないと考えるべきである。また,判例によれば,債権譲渡がされた後であっても当該債権についての物上代位権の行使を認めるが(※4),転借人に対する賃料債権の帰属を転貸借契約に基づくものとする場合と,賃貸人から賃借人への債権譲渡によるものとする場合とで,物上代位権の行使の可否が左右されるのは妥当ではない。したがって,判例のいう転貸賃料への物上代位権の行使が認められる場合に限られず,債権回収を目的として賃貸借契約が結ばれた場合であっても,転貸賃料に対して物上代位権を行使することができると考える。
 これを本件についてみると,AB間の賃貸借契約は,AがEから得る転貸賃料とBに支払う賃料の差額をもって,Bに対する立替金債権を回収する意図があったとみられ,Bに対する賃料支払が中断されたのは,Aの立場からすれば,前記立替金債権と賃料債権とを相殺して,Bに対する債権を回収するという意味を持つ措置であるということができる。したがって,この場合には,Cは,AのEに対する転貸賃料についても物上代位権を行使することができるというべきである。
 3 よって,Cの請求は認められる。
第2 設問2
 1 Cは,BのFに対する賃貸借契約に基づく賃料支払請求権に対して差押命令の発令を受け,Fに対してこれを求める訴訟を提起している根拠も,物上代位権の行使としてであると考えられる。
 これに対して,Fは,Cが差押命令の発令を受けた目的である賃料債権は,保証金債権との相殺(民法505条1項本文)により消滅しているから,これは認められないと反論する。そこで,物上代位と相殺の優劣が問題となる。
 2 抵当権設定者が抵当不動産を他人に賃貸している場合に,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる必要はない。したがって,抵当権者が仏事よう代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない(※5)
 3 これを本件についてみると,Fが自働債権として供した保証金債権は,Bの本件建物の改修工事に先立って保証金として支払われ,Fの入居後一定期間にわたって返済されるもので,その実質は,建設協力金としてFのBに対する融資であり,貸金債権と同視し得る。そこで,Fが,保証金債権を取得した時期について検討すると,Fは,Cが本件建物に抵当権を設定する以前に,前記保証金を支払っているため,この時点で保証金債権を取得しているとみることができる。この点,BF間では,その後に賃貸借契約を締結しなおしているが,その後も一貫してFが賃借人であり,その趣旨は,当初の賃貸借契約に付随する保証金請求権につき弁済期を前倒しにさせるものであると評価できる。したがって,Fの保証金請求権は,Cの抵当権設定登記前に取得したものであるから,これを自働債権として賃料債権と相殺することができる。
 なお,このように考えると,当初は2017年までFは保証金の返還を請求できなかったはずであり,相殺もできなかったはずなのに,抵当権設定登記後に期限の利益喪失の合意を新たに行って相殺可能な状態にしたものであって,これをもって物上代位に優先させるとするのは不当であるようにも思える。しかし,相殺による当事者間における両債権を対当額で消滅させることへの期待の保護からすれば,抵当権設定登記前に弁済期が到来している必要はないから,物上代位のための差押えの効力発生前に弁済期が到来している必要もない。
 また,将来分の賃料債権を受働債権とする相殺が可能かどうかも問題となるが,将来の賃料債権に対する差押えが可能であることとの均衡から認められる。
 4 よって,Cの請求は認められない。
以 上

(※1)抵当権の目的不動産が賃貸された場合においては、抵当権者は、民法372条、304条の規定の趣旨に従い、目的不動産の賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし、民法372条によって先取特権に関する同法304条の規定が抵当権にも準用されているところ、抵当権は、目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ、設定者が目的物を自ら使用し又は第三者に使用させることを許す性質の担保権であるが、抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし、抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に、右対価について抵当権を行使することができるものと解したとしても、抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから、前記規定に反してまで目的物の賃料について抵当権を行使することができないと解すべき理由はなく、また賃料が供託された場合には、賃料債権に準ずるものとして供託金還付請求権について抵当権を行使することができるものというべきだからである。」「そして、目的不動産について抵当権を実行しうる場合であっても、物上代位の目的となる金銭その他の物について抵当権を行使することができることは、当裁判所の判例の趣旨とするところであり……、目的不動産に対して抵当権が実行されている場合でも、右実行の結果抵当権が消滅するまでは、賃料債権ないしこれに代わる供託金還付請求権に対しても抵当権を行使することができるものというべきである。」最判平成元年10月27日民集43巻9号1070頁
(※2)民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する『債務者』には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても、これを『債務者』に含めることはできない。また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。」最決平成12年4月14日民集54巻4号1552頁
(※3)「もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。」前掲最決平成12年4月14日
(※4)「民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の『払渡又ハ引渡』には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」「けだし、(一)民法304条1項の『払渡又ハ引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし、物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ、弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから、抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず、(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ、(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが、このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。」「そして、以上の理は、物上代位による差押えの時点において債権譲渡に係る目的債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく、当てはまるものというべきである。」最判平成10年1月30日民集52号1頁
(※5)抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。」「そして,上記に説示したところによれば,抵当不動産の賃借人が賃貸人に対して有する債権と賃料債権とを対当額で相殺する旨を上記両名があらかじめ合意していた場合においても,賃借人が上記の賃貸人に対する債権を抵当権設定登記の後に取得したものであるときは,物上代位権の行使としての差押えがされた後に発生する賃料債権については,物上代位をした抵当権者に対して相殺合意の効力を対抗することができないと解するのが相当である。」最判平成13年3月13日民集55巻2号363頁



2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例②「その土地,誰にも売ってません。」

本日2通目。

割と順調に進んでいます。

やっぱり今日中に終わるかもしれないですね。

とりあえず,事例②です。

≪問題≫

●事例
 X(2013年11月の時点で80歳)は,妻(同78歳)とともに長年理髪店を営んでいたが,2008年に白内障を患ったのを機に店をたたみ,以後,年額約80万円の国民年金と1998年に取得した甲土地を月極駐車場として賃貸して得られる賃料(月額10万円)により生計を立て,不足するときには預金(約1000万円)を取り崩していた。諸事に不安を覚えるようになったXは,近所に住み親身に面倒を見てくれる姪Aに(X夫妻に子はなかった),2010年夏頃から甲土地の登記済証,実印,預金通帳,銀行届出印を預けていた。

【設問1】 Xは,Aに,甲土地の登記済証等を預けた頃から,甲土地にかかる駐車場契約の管理をゆだねているY不動産会社(Bが従業員を2名雇って営んでいた)との連絡と預金の管理を任せていた。
 2012年5月に,Xは,Yが社内手続のため管理契約確認書の作成への協力を求めてきているとAから聞かされ,Aの求めに応じて書類に署名し,Aから渡された実印を押捺した。この書類は,Xを売主,Yを買主とする甲土地の売買契約書であった。また,Aが,愛人関係にあるBに唆され,Xは目が悪いため書類を差し出せばAに代読させ,それを信じるという状況を利用して,Xに署名捺印させたものだった。その後まもなく,甲土地につきこの売買を原因とするX名義からY名義への所有権移転登記がされた。契約書において売買代金額は4000万円とされていたが,この売買はAとBが経営不振に陥ったYに甲土地を得させようとして仕組んだものであったため,代金の支払はされていなかった。
 2012年8月に,YとZとの間で代金額3000万円とする甲土地の売買契約が締結され,これを原因とするY名義からZ名義への所有権移転登記がされた。Zは,障害のある子を持ち,その将来の生活資金確保の目的でこの売買をしていた。また,売買代金額がかなり割安と感じていたが,資金調達の必要から早く処分したいためというBの説明を信じていた。
 Aは,入ってこなくなった賃料分をXの前記預金の取崩しにより賄って事態の発覚を防いでいたが,Bにほかにも愛人がおり甲土地の売買代金の一部がその愛人のために使われたことを知り,2013年11月にXに事実を伝えた。Xは,弁護士に相談して,YおよびZに対して所有権移転登記の抹消登記手続を求めた。この請求の認否を論じなさい。

【設問2】 XとYとの間の売買に関する事情が,【設問1】と次の2点において異なっていたとすればどうか。①Aは,Xから駐車場契約につき全面的にゆだねられ,契約の更新,解除,新規締結など代理人として行っていた。②2012年5月にXは,Aから駐車場契約の内容を改定したうえでの更新に必要と聞かされて,数通の書類に署名した。同様のことはそれまでに何度かあったが,今回Xが署名した書類は,Aを代理人とするX・Y間の売買契約書とXを本人・Aを代理人とする白紙委任状であった。


94条から96条あたりのあれです。

代理も絡んでいます。

ここらへんが問題になるときは,

単純に記述量が多くなるので大変です。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Xは,Y及びXに対して,所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権を行使する。Xは,甲土地を所有しており,甲土地についてはX名義からY名義,Y名義からZ名義の所有権移転登記が存在しているから,Xの上記請求は認められるのが原則である。
 2 Y及びZは,Xが,Yに対して,甲土地を売却していることをもって(以下「本件売買契約」という。),甲土地の所有権を喪失しているとの抗弁を主張することが考えられる。これに対してXは,甲土地の売買契約書への署名捺印は,Xがその内容を把握しないまましたものであり,売買契約締結の認識がなく,本件売買契約は成立していないと再抗弁する。
 しかし,意思表示の成立は厳格に判断せず,意思表示・法律行為の効力に関する諸規定の解釈を通じて,当該事情のもとで適切な結論を得られるようにすべきであるから,表示意識が欠如していても,契約は成立する。そうすると,本件売買契約も,Xの表示意識の有無にかかわらず,成立する。
 3 また,Xは,本件売買契約が,Yの詐欺によるものであるとして,その取消しを主張する(民法96条1項)。しかし,Zは,本件売買契約との関係では「第三者」であるところ,ZはXの意思表示が詐欺によるものであることにつき「善意」であると考えられるから,Xは本件売買契約を取り消しても,これをZに対抗することができず,無意味である。
 4⑴ そこで,Xは,本件売買契約は錯誤に基づくものであるから,無効であると再抗弁する(同法95条本文)。
 「錯誤」とは,内心的効果意思と表示に不一致があることをいう。Xは,Yの社内手続に係る管理契約確認書であると認識して署名捺印をしているから,本件売買契約を締結する意思はなく,内心的効果意思と表示との間に不一致があるから,「錯誤」が認められる。そして,Xが,署名捺印をする書類が本件売買契約に係る契約書であると認識していれば,それをしていなかったと認められるから,「法律行為の要素」に錯誤があると認められる。
  ⑵ これに対して,Y及びZは,Xが内容を確認しないまま署名捺印をしたことが「重大な過失」であるとして,錯誤無効は認められないと再々抗弁をする(同条ただし書)。
 しかし,同条ただし書の趣旨は,意思表示の有効に対する相手方の信頼を保護する点にあるから,相手方がそのような保護に値しないときには,重大な過失の有無にかかわらず,無効の主張を認めることができる。Yは,Aを利用して,Xの目の悪いことを利用して,本件売買契約を締結させようとしたものであるから,Xが錯誤に陥っていることを認識していたということができる。そうすると,YにおけるXの意思表示の有効に対する信頼は保護に値しないというべきであるから,Y及びZは「重大な過失」があることをもって再々抗弁とすることができない。
  ⑶ また,Zは,Xの錯誤無効の主張に対しても,民法96条3項が類推適用されるから,Zに対して対抗することができないと再々抗弁する。
 この主張の論拠は,詐欺による意思表示において表意者は他人の違法な干渉により錯誤に陥るのに対し,錯誤による意思表示は他人の干渉なく表意者が自ら錯誤に陥る場合も含まれる点において,本人の帰責性の程度が錯誤の方が強い点にある。しかし,詐欺取消しは表意者の錯誤の重大性を問わずに認められるのに対し,錯誤無効は法律行為の要素に錯誤がなければ認められない点で,錯誤者はよりいっそう保護に値するというべきである。したがって,錯誤無効の主張に対して民法96条
3項が当然に類推適用されるものではない。
  ⑷ さらに,Zは,民法94条2項の類推適用により,ZのY名義の登記に対する信頼は保護されるべきであると再々抗弁する。
 しかし,民法94条2項も第三者の外観に対する信頼を保護する制度である点で,民法96条3項と類似する。そして,前記の通り,要素の錯誤の場合には,錯誤者を第三者との間でも保護すべきであるから,同様の事情をもって民法94条2項を類推適用することは矛盾となるため,認められない。
 4 以上から,Xの錯誤無効の主張が容れられるから,Xの上記請求は認められる。
第2 設問2
 1 Xは,Y及びZに対して,第1.1と同様の請求をする。
 2 Y及びZは,代理(同法99条1項)によって締結された本件売買契約により,Xは甲土地の所有権を喪失していると抗弁する。
 しかし,AとYとの間で甲土地の売買契約締結の意思表示がされ,その際に顕名もされているが,Aはこれらに先立って本件売買契約の締結についての代理権を付与されていないから,代理の要件を満たさず,その効果はXに帰属しない。
 3⑴ そこで,Y及びZは,民法109条所定の表見代理によって,Xはその責任を負うと抗弁する。AY間における売買契約締結の意思表示,その際の顕名については前記の通りである。そして,Xを本人・Aを代理人とする委任状が作成されたことにより,XがAに代理権を授与したことがYに対して表示されている。そうすると,Xは,民法109条所定の表見代理によって,本件売買契約の責任を負う。
  ⑵ これに対しては,Xは,本件売買契約の締結のための委任状との認識なく署名したものであるから,委任状の成立は否定されると再抗弁する。しかし,代理権授与表示は,意思表示類似のものであるため,表示意思は不要である。そうすると,Xが,前記の認識なく署名をしたとしても,それをもって前記委任状の存在により,Aが本件売買契約の代理権を有する旨が表示されたというべきである。
  ⑶ また,Xは,YがAに代理権がないことを知っていたため,Xは民法109条所定の表見代理による責任を負わないと再抗弁する(同条ただし書)。YはAとの協力の下,Xに本件売買契約を締結させようとしたものであるから,Aに代理権がないことを知っていたと認められるため,Xは民法109条所定の表見代理責任を負わない。
 4 また,Y及びZは,民法110条所定の表見代理によって,Xはその責任を負うと抗弁する。しかし,前記のように,YはAに代理権が存在しないことを知っていたため,認められない。また,同条は,本人に契約の効力か本来帰属しない場合につき,代理権の存在に対する信頼を保護するために例外を認めるものであるところ,転得者はの信頼の対象は,直接には前主が権利を有することであり,前主との間でその権利について契約をした者がその契約をする代理権を有していたことではない。したがって,同条にいう「第三者」には転得者は含まれないから,転得者であるZは,同条所定の表見代理の責任について抗弁することができない。
 5 そこで,Zは,民法94条2項の類推適用により,Y名義の登記を信頼したことは保護されるべきであると抗弁する。
 前記のように,民法94条2項は,権利の外観を信頼した第三者を保護する趣旨に出たものであるから,同様に第三者の信頼を保護すべき場合には類推適用される。そして,不実の権利の外観が存在し,この外観の存在について権利者に帰責性があり,第三者がこれを真正に信じたことが認められる場合には,同項が類推適用される。そして,自らが不実の外観の作出に直接かかわっていなくとも,これと同程度の帰責性が認められる場合には,民法110条をも類推適用すべきである。
 これを本件についてみると,甲土地の所有権移転登記については,本件売買契約が有効にされていないにもかかわらわず,Y名義とされていることから,不実の登記が存在する。そして,Xは,重要な財産の管理をAに任せきりにしており,Aに言われるがままにその内容も確認せず書面に署名し実印を捺印していることからすると,Xにおいて不実の登記が作出されたことについて帰責性が認められるようにも思える。しかし,Xは,高齢で目が不自由であり,他人を頼らざるを得なかったということができる。そして,全く無関係の者に頼っていたわけではなく,親族である姪のAを頼っていたものであるから,このような事情の下では,XがAに頼りきりにしていたことを避難することはできず,不実の登記の作出について必ずしも帰責性があったということはできない。そして,Zにおいては,不動産業者であるYが買い取った土地をわずか3か月で買値より1000万円,率にして25%も下回る価格で売却することは,通常考えられないところであり,不自然であるというべきである。そうすると,Zにおいても,甲土地の取引について不自然に考えられるはずであるところ,Zは,廉価での売却は資金調達を急ぐ必要があるためというYの説明だけをもって安易に納得している。不動産業者による説明であったとしても,その事実関係を詳細に確認するなどの手段を講じることができたと考えられ,またそうすべきであったというべきであるから,ZによるY名義の登記の存在への信頼には「正当な理由」が欠ける。
 したがって,Zについて,民法94条2項及び110条を類推適用することはできない。
 6 よって,Xの上記請求は認められる。

以 上



2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例①「任せてくれてもいいんじゃない?」

じれかん民法もあと4問になりました。

ワンチャン今日中に終わらせられるかもしれないですね。

そうだと嬉しいですね。

でもたぶん今までのペースからして無理でしょうね。

≪問題≫

●事例
 Aは,2013年4月に保佐開始の審判を受けた。Aには子BとCがあり,Aと同居していたBが保佐人に選任された(13条2項に基づく同意事項の付加も,876条の4に基づく代理権の授与もされていない)。Aは,2013年6月中旬に,不動産業を営むCから,「経営が苦しいので援助してほしい。Bには反対されると思うので,内密にしてほしい。」と頼まれた。

【設問1】 2013年9月16日に,Aは,Cの仲介により,Dとの間で,所有する甲土地を代金額2500万円でDに売却する契約(以下,「甲売買」)を結んだ。同月30日に,代金の支払と移転登記手続が行われた。代金の支払は,Cの事務所で行われた。甲土地の登記済証とAの実印はBが保管していたが,AがBに気づかれないように持ち出し,移転登記手続に用いていた。代金として支払われた2500万円のうち,2000万円はその場でCに分け与えられ,500万円はCがAに代わって新たに開設したA名義の普通預金口座に預け入れられた。
 2014年2月10日に,Bは,甲土地の登記済証が見当たらないことからAに事情を聞き,前記の諸事実を知った。Bは,同年3月12日に,Dに対して甲売買の取消しの意思表示をした。ところが,Dは,甲土地の返還にも抹消登記手続にも応じようとしない。Aも,土地の返還も登記の抹消も必要がないと言い張っている。Bは,どのような対応をとることができるか。

【設問2】 【設問1】において,Dは,土地の返還と抹消登記手続に応じることにした。この場合,Dは,Aに対してどのような請求をすることができるか。
 なお,Aの前記普通預金口座は,2013年9月30日に500万円が入金された後,同年10月15日に80万円,同月20日に30万円,同月28日に50万円の出金があり,残高が340万円となっている。10月15日出金分の80万円はAが競馬や競輪に使い,同月20日出金分の30万円はAが1年前にEからした借金の返済に充てたことが分かっているが,同月28日出金分の50万円の使途は不明である。

【設問3】 Aは,2013年11月初旬に,所有する不動産の管理・処分をCに委任してそのための代理権を与え,Bの目を盗んで登記済証と実印を持ち出してCに交付した。Cは,それらを利用して,2013年11月中に,乙土地の店舗敷地としての賃貸借契約(期間10年,賃料月額20万円。以下,「乙賃貸借」)をFとの間で,丙土地の駐車場としての賃貸借契約(期間1年,賃料月額2万円。以下,「丙賃貸借」)をGとの間で,丁土地の売買契約(代金額3000万円。以下,「丁売買」)をHとの間で,いずれもAの代理人として締結した。賃料,売買代金は,Aの了解のもと,Cが収受し,Aには渡されていなかった。
 事情を知ったBは,乙賃貸借については賃料をAまたはBが収受することにして継続し,丙土地と丁土地はAのもとに取り戻したいと考えている。これは可能か。


保佐人……

なるほど……

保佐人にこんなに論点があるとは知りませんでしたね……

≪答案≫
第1 設問1
 1 まず,BがDに対してした甲売買の取消しの意思表示の効力について検討する。
 Aについては保佐開始の審判(民法876条)がされ,Bがその保佐人(同法12条)となっている。甲売買は,不動産である土地の売買であって,日常生活に関する行為であるとは認められないから,AがこれをするにはBの同意が必要である(同法13条1項3号)。しかしながら,Aは,Bの同意を得ることなく甲売買をしているから,Bはこれを取り消すことができる(同条4項)。そして,Aが詐術を用いたことを示す事情は存在せず(同法21条),取消しの意思表示は甲売買をBが知った時から約1か月後にされており(同法126条),それ以前に追認(同法122条本文)または法定追認(同法125条)に該当する事実もないから,その効力は否定されない。
 したがって,BがDに対してした甲売買の取消しの意思表示は有効である。
 2 そこで,Bは,甲土地を現実に取り戻すために,Dに対して,甲土地の返還及び所有権移転登記抹消登記手続をすることを催告し,これにDが応じない場合にAに代わって訴訟を提起し,それに備えて甲土地が他に処分されることを防止するため処分禁止の仮処分(民保法23条1項,53条1項)を請求し,それらのために弁護士との間でAに代わって委任契約を結ぶことなどをすることが考えられる。
 もっとも,Bがこれらの行為をするためには,Aに代理して行う必要があるが,保佐開始の審判によっては当然に保佐人に代理権は与えられることにはならない。そうすると,Bは,Aから代理権授与行為を受けるか,代理権付与の審判(同法876条の4)を受けることによって,代理権を取得しなければならない。しかし,Aは,土地の返還も登記の抹消も必要がないと言い張っているから,これらを受けることができる見込みはない。そこで,保佐開始の審判によって,保佐人に法定代理権が与えられている場合があるということができないかについて検討する。
 保佐人に同意権が認められる行為については,その保護のために,被保佐人の行為が制限されている。この限りでは,被保佐人の自己決定権の尊重に対して被保佐人の保護の要請を優越させることが,民法においてすでに決せられているとみることができる。そして,この保護が現実に図られるためには,取消権の行使だけでは足りず,取消権行使の効果として生ずる権利の行使が必要になることもある。その場合に,当該権利行使の権限が保佐人に認められないとすると,法政策上の一貫性を欠く。したがって,取消しの目的を達成するために必要な行為については,保佐人に法定代理権が認められるべきである。
 これを本件についてみると,前記のように,甲売買にはBの同意が必要であって,Bの同意なく行われた甲売買は,取消しの対象となるから,その目的の達成のために必要な行為については,すでにBに代理権があるというべきである。したがって,Bは前記行為をすることができる。
第2 設問2
 1 Bが甲売買を取り消すことにより,甲売買は遡求的に無効となり(同法121条本文),Aは給付として得たものを返還する義務を負う。もっとも,Aは「制限行為能力者」であるから,現存利益についてのみ返還すれば足りる(同条ただし書)。その趣旨は,契約上の給付として得たものを原則通り全部返還しなければならないとすると,すでにそのものを失っており返還義務を履行できそうにないため取消しを断念せざるを得ないという事態が発生するので,これを回避するために返還義務の履行のための新たな負担を制限行為能力者に免れさせた点にある。したがって,制限行為能力者にとって新たな負担となる場合には,その返還義務を免れる。
 2 本件では,Aは甲売買による給付として現金2500万円を得ている。この点,給付として得た金銭が他の金銭と混蔵されれば,返還を求められている金銭の価値が消滅したと証明することは困難であるが,Aは,甲売買の代金の一部はその場でAからCに与えられ(以下「本件贈与」という。),残部は普通預金口座に入金されており,しかもその普通預金口座にはそれ以外の入金はなく,かつ,入金後比較的短い間に相次いで出金があったきりであることから,Aのした支出は,甲売買の代金からの支出であると認められる。
 3⑴ そこで,各支出について検討すると,普通預金口座からの出金分のうち,競馬・競輪に使われた80万円は,受益と無関係にされるべき出費とはいえず,これに相当する額の返還を認めると,取り消された行為をしていなければ生じなかったはずの負担を強いることになるから,Aは返還義務を免れる。
 Eへの借金の返済のに充てられた30万円について,債務の弁済は,甲売買による代金の取得とは関わりなくされるべきものであるから,甲売買がされていなければ生じなかった負担を強いることにはならず,Aは返還義務を免れない。
 使途不明の50万円については,利得の消滅が認められるべき事情の証明がされていないため,Aは返還義務を免れない。
  ⑵ 次に,本件贈与による2000万円については,甲売買による代金の取得に関わりなくされるべきものとはいえないから,これに相当する額の返還を認めると,取り消された行為をしていなければ生じなかったはずの負担を強いることになり,利得の消滅が認められるようにも思われる。
 もっとも,本件贈与は,Bの同意が必要となる行為であるから(同法13条1項5号),Bが取り消すことができる。Bが本件贈与を取り消した場合には,AはCに対して,2000万円の返還請求権を有することとなるから,利得の消滅が認められないのではないかが問題となる。
 Bが甲売買を知った後に本件贈与を追認した場合には,それによって贈与金の支出が確定するから,甲売買の取消しは認められなくなる(同法125条5号)。一方,Bが甲売買について知った後,その取消し前に本件贈与を取り消した場合には,AがCに対する2000万円の返還請求権を取得し,これが価値変形物としてDに返還されるべき利益になる。これらのことからすると,Bが甲売買の取消し又は追認をすることができるようになった時において,本件贈与の取消しが可能であったならば,Dは,本件贈与の効力判断によって不利益を受けない,すなわち,Aは本件贈与の効力判断によってDの利益を害することができない立場にある。そうすると,本件贈与の効力が不確定である場合には,贈与金分の利得の消滅を認めるべきではなく,また,甲売買を取り消す以上は,本件贈与を追認するのであれば,Aは2000万円全額をDに返還する義務を負うというべきである。
 そこで,甲売買の取消しによってDに回復されるべき利益を確保するために,甲売買の取消しによの本件贈与の贈与者の地位がDに移転すると考える。
第3 設問3
 1 Aは,Cに代理権を与えて,乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買をしている。代理権の授与行為自体は民法13条1項の同意が必要とされていないから,代理権の授与行為により,本来保佐人の同意が必要となる行為をその同意なくして代理人に行わせることができるかが問題となる。
 2 代理行為と代理権授与行為とは別個の法律行為であるが,代理において目的とされるのは代理行為による本人と相手方との間の法律関係の変動であり,代理権授与行為はその変動を生じさせるための前提にすぎない。そのため,代理行為と代理権授与行為との独立性を過度に強調することは適当ではなく,代理行為が民法13条1項に掲げられた行為に該当する場合には,被保佐人がその代理行為のための代理権授与行為をするには保佐人の同意が必要である。
 ここで,本件では,乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買がされているが,これらの行為についての代理権授与行為が包括的にされているといえるか,それとも個別的にされているといえるかについて検討すると,乙賃貸借及び丁売買については本来Bの同意が必要となる行為であるが(同法13条1項3号,9号),丙賃貸借についてはBの同意が必要とならない行為である。この場合に,代理権授与行為が包括的にされているとみて,全部の行為が取消しの対象となると,AがBの同意を得ることなく単独でなし得た行為についてまで制限を受けることになり,Aの自己決定権への過剰な介入となり妥当ではない。また,代理権授与行為は代理行為のための手段であり,目的となる代理行為に複数の可能性が考えられるため,それに備えて包括的に行われるのであって,最終的に目的とされているのは個別的な代理行為である。そうすると,代理甲がされるまでは代理権授与を包括的に捉えるべきであるが,代理行為がされたならば,その限りで代理権授与は具体化されて目的を達しており,抽象的包括的な内容にとどまる代理権授与の他の部分と別個に捉えることができる。したがって,代理権授与の効力は,代理行為がされた後においては,個別に判断する。
 本件でも,既に乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買がされているから,これらの効力は個別的に判断する。
 3 そして,被保佐人が保佐人の同意を得ずにしたことを理由として代理権授与行為が取り消された場合,その代理権の行使としてされた行為は無権利代理となる。ここで,相手方の信頼保護のため,表見代理の適用があるか問題となるが,制限行為能力違反を理由とする取消しは第三者にも対抗することができるものとして,制限行為能力者の保護を第三者との関係でも貫くのが民法の立場である。そうすると,表見代理を適用して第三者を保護することは,民法の立場に矛盾することとなる。したがって,この場合には,表見代理規定が適用されることは原則としてない。
 4 これを本件についてみると,乙賃貸借については,取り消すことができるが,追認することもできるため,Bが追認をすれば,乙賃貸借のAへの効果帰属が確定する。乙賃貸借における賃貸人はAであるから,AはFに対して賃料の支払を請求することができる。他方で,Bは代理権を有しない以上,Aのためであっても,賃料の支払を請求することはできない。
 丙賃貸借は,取消しの対象とならないから,Aが丙土地を取り戻すことはできない。
 丁売買にかかる代理権授与も取り消すことができるため,Bがこれを取り消すことにより,丁売買は無権代理行為となるから,Hに対する丁土地の返還オ余語所有権移転登記の抹消登記手続請求が可能となる。この場合に,Aがこれらの請求をしようとしないときは,取消しの目的を達成するため,Bに法定代理権があるとみるべきであるから,BがAに代わって請求することが可能である。

以 上



2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例④「そんなの,絶対,認めない!」

なぜか知らないですけど,

急におなかの調子が悪くなりました。

大変です。

健康第一ですから,

勉強なんかしている場合ではありません。

≪問題≫

●事例
 A(77歳)は,丘の中腹にある自宅(その建物を甲,土地を乙とする)に住んでいた。夫とともに懸命に働いて手に入れ,一男一女を育てあげた家であり,Aは,この家に強い愛着をもっていた。ただ,子2人が独立し遠方に住むようになり,夫に先立たれてひとり暮らしになってからは,その広さが孤独感をいっそう増すこともあった。また,膝を悪くしてからは,外出のたびに急な坂道を上り下りしなければならないことがつらかった。
 そんなあるとき,Aは,日ごろ何かと気を配ってくれる甥Bから,乙付近の地盤に問題があり,集中豪雨があると急に崩落するところもあるらしいと教えられ,専門家に調べさせようかと,もちかけられた。Aは,近くに住むBを普段から頼りにしており,また,Bが不動産業を営んでいることもあって,この申し出を受け入れた。後日,Bは,Cら3人を連れてA宅を訪れ,建設コンサルタント会社の者であるとAに紹介した。Cらは,ボーリング調査らしきことを行った。2週間後,Cが,BとともにA宅を再訪し,Aに,「調査報告書」と題する書面を手渡し,対策を講じなければ乙に地盤崩壊の可能性があること,その対策には2000万円ていどの費用を要することを告げた。しかし,実際には,これらすべてが,Aに甲と乙を売却させるためのBの偽計であった。
 途方に暮れるAに,Bが,甲・乙の相場価格はあわせて4500万円程度であるが,崩壊対策費がかかるので3000万円でなら購入してもよい,転居先も手配すると申し出た。Aは,子らに事情を話して相談のうえ,Bの申し出を受けることにした。Aは,Bから,急な話なので,代金のうち300万円はすぐに支払うが,残りは3か月後に支払うことにしてほしいと頼まれ,これを了承した。2011年11月18日に,Aは,Bが用意した契約書に署名押印し(以下,「本件売買契約」),Bから300万円を受け取り,Bに委任状・実印・登記済証・印鑑証明書を交付した。Bは,これらを用いて,甲と乙につき所有権移転登記手続をした。また,Aは,同月21日に,Bが仲介した借家に転居し,甲・乙をBに明け渡した。
 Bは,2012年3月1日になっても残代金の支払をしなかった。Aが支払を求めたところ,Bは,もう1か月待ってほしいと言い,同年4月15日には,さらにもう1か月待って欲しいと言った。Aは,子らとも相談のうえ,同月20日に,Bに対して,「今月中に2700万円を支払うか,そうでなければ,300万円を返すので,家を返してほしい。」と伝えた。しかし,その後も,Bは,2700万円の支払も甲・乙の返還もしなかった。同年6月10日に,Aの長男がBに会い,事情を厳しく問い質していたところ,前記地質調査等はBの偽計であったことが発覚した。これを伝え聞いたAは,同日,Bに対し,「ひどいじゃないの。危なくないと知っていたら,売らなかったわ。すぐに返しなさい。」と述べた。しかし,Bは甲・乙を明け渡さず,甲・乙いずれについても所有権移転登記の抹消登記手続もしていない。また,甲にはDのための抵当権設定登記(2011年12月1日付)が,乙にはEのための抵当権設定登記(2012年5月1日付)とFのための抵当権設定登記(2012年6月14日付)が,それぞれされている。いずれの登記も契約締結日にされており,契約締結の当時,Dは,Bの前記偽計を知らなかった。Eは,Bの偽計は知っていたが,AがBに甲・乙の返還を求めている事実は知らなかった。Fは,Bの偽計を知っていたAが怒って甲・乙の返還をBに求めている事実を知っていた。
 Aは,Bに対し甲・乙の返還と所有権移転登記の抹消登記手続を,D・E・Fに対し上記各抵当権設定登記の抹消登記手続を請求した。AのD・E・Fに対する請求は認められるか。


第三者シリーズです。

特に目新しいことがあったというわけでもありませんが,

それぞれの効果の対抗関係について,

整理できるという意味でいい問題です。

≪答案≫
1 Dに対する請求
 ⑴ Aは,Dに対して,所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権を行使する。これが認められるためには,Aが甲が所有していること,Dの抵当権設定登記が存在することが必要であるところ,これに対して,Dは,本件売買契約により,Aが甲の所有権を喪失しているとの抗弁を主張する。
 ⑵ そこで,Aは,本件売買契約を解除したとして(民法541条),その所有権の復帰をもって再抗弁を主張する。Aは,Bとの間で,本件売買契約に係る売買代金のうち2700万円の支払期日を2012年2月18日としているが,Bは同日を経過してもこれを支払っていないため,「当事者の一方がその債務を履行」していない。また,Aは,同年4月20日,Bに対して,今月中に残代金を支払うよう告げており,2度も支払期日を猶予してもらっている事情のもとではその期間も相当であるから,「相当の期間を定め定めてその履行の催告」をするとともに,同発言をもって履行がない場合の契約解除の意思表示があったものとみることができる。そして,Bは,履行をしないまま同月末日を経過しているから,「その期間内に履行がない」といえる。したがって,Aは,本件売買契約について解除権を有し,その行使により,本件売買契約は解除されている。解除の効果(同法545条1項本文)によって,契約前の状態に直接法律関係が復帰するから,Aは甲の所有権を取り戻している。
 しかし,これに対しては,Dは「第三者」(同項ただし書)にあたるため,Aは解除の効果を対抗することはできないとの再々抗弁を主張する。前記の解除の効果との関係から,同項ただし書は,解除前に現れた第三者を解除の遡及効による地位の喪失から保護する趣旨に出たものである。したがって,同項ただし書にいう「第三者」とは解除前の第三者をいう。そして,Dは解除前に甲に抵当権を設定した第三者であるから「第三者」にあたる。したがって,AはDに対して解除の効果を主張することはできない。
 ⑶ 次に,Aは,本件売買契約がBによる詐欺に基づくものから詐欺取消しをしたとして(同法96条1項),遡及的に本権売買契約が無効になる(同法121条本文)との再抗弁を主張する。Bの偽計は,Aに甲売却の意思表示をさせる目的でされており,本件売買契約はAに重大な不利益を被らせるものであるから,「詐欺」にあたる。また,Aがこの詐欺により甲売却の意思表示をしたことは明らかである。Aは,2012年6月10日,Bに対して,甲をすぐに返すように伝えているから,これをもって取消しの意思表示(同法123条)がされている。したがって,Aは,本件売買契約について取消権を有し,その行使により,本件売買契約は取り消されている。その結果,Aは甲の所有権を取り戻している。
 しかし,これに対しては,Dは「善意の第三者」(同法96条3項)にあたるため,Aは取消の効果を対抗することができないとの再々抗弁を主張する。同項は,取消しの遡及効から第三者を保護する趣旨に出たものであるから,「第三者」とは,取消し前に法律上の利害関係を有するに至った者をいう。Dは,Aの取消し前に甲に抵当権を設定しており,かつ,Bの偽計を知らなかったのであるから,「善意の第三者」である。したがって,AはDに対し取消しの効果は主張することはできない。
 ⑷ そこで,Aは,本件売買契約が錯誤(同法95条本文)に基づくものであるとして,その無効であることを再抗弁として主張する。もっとも,Aは,本件売買契約を締結する点において内心的効果意思と表示行為とは一致しているから,「錯誤」がないように思えるが,動機の錯誤であっても,それが外部に表示され,法律行為の要素となっている場合には,錯誤無効を主張することができる。本件売買契約における甲の売買代金は,Aの誤信の対象である地盤崩壊の危険性をAとBがともに前提として定めたものであることから,Aの動機はBに少なくとも黙示されており,かつ,この錯誤は売買代金額を相場額よりその3分の1にあたる1500万円程度も低下させた原因であり,極めて重大なものであるから,法律行為の要素となっていると考えられる。したがって,Aには「錯誤」が認められる。そうすると,本件売買契約は無効であって,Aは甲の所有権を当初から有していたことになる。
 これに対して,Dは,錯誤無効についても民法96条3項が類推適用されるべきであるとの再々抗弁を主張することが考えられる。この主張の論拠は,錯誤による意思表示の無効は原則として錯誤者からしか主張することができないから,錯誤者が無効の主張をするまでは,意思表示は事実上効力を有するものとして扱われる点で,錯誤無効の主張は取消しに類似すること,また,詐欺取消しと錯誤無効は,錯誤者を意思表示の拘束から解放する点で共通しており,民法95条による場合には他人の干渉によらず自ら錯誤に陥った者を含む点で,表意者の帰責性が同法96条の場合よりも大きいことにある。しかし,同法95条の無効主張には錯誤の要素性が必要であるから,この点で,錯誤者は,より厚く保護されるべきである。したがって,錯誤無効の場合に同法96条3項を類推適用すべきではない。そうすると,Dの前記主張は認められない。
 そこで,Dとしては,民法94条2項の類推適用を主張することも考えられるが,BD間の契約の時点でAは錯誤に気づいていなかったのであるから,同項の類推適用を基礎づける帰責性が認められない。したがって,Dのこの主張も認められない。
 ⑸ よって,Aは,本件売買契約の無効を主張することにより,上記請求が認められる。
2 Eに対する請求
 ⑴ Eに対する請求の根拠も1⑴と同様である。
 ⑵ Aが解除を主張する場合には,Eは解除後の第三者であるから,同法545条1項ただし書の「第三者」にはあたらない。しかし,解除による所有権の復帰的物権変動は,「第三者」(同法177条)との間で対抗関係となるから,登記を具備しなければ対抗することができない。また,Eは,本件解除が自己の抵当権取得に先行することを知らないから,「第三者」から除外されるものではない。したがって,Aの解除の主張は認められない。
 ⑶ Aが取消しを主張する場合には,Eは取消し前の第三者であるが,Bの偽計について知っているのであるから「善意の第三者」ではない。したがって,Aの上記請求は,取消しを理由として認められる。
 ⑷ またもAが無効を主張する場合にも,1⑷と同様に,Aの上記請求が認められる。
3 Fに対する請求
 ⑴ Fに対する請求の根拠も1⑴と同様である。
 ⑵ Aが解除を主張する場合には,Fは本件解除について知らないのであるから,「第三者」から除外されない。
 ⑶ Aが取消しを主張する場合には,Fは取消し後の第三者であるから,同法96条3項の「第三者」にあたらない。もっとも,取消しに基づく所有権の復帰的物権変動についても,第三者と対抗関係になるから,登記がなければ対抗することができない。そうすると,Fは「第三者」にあたり,登記を具備している。
 ところが,同条は自由競争下での対抗関係の処理について定めたものであるから,自由競争を逸脱する背信的悪意者は,登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有しているとはいえず,「第三者」にあたらない。二重売買の場合と異なり,先行する物権変動の原因が取消しである場合には,第三者は,取消者と対等な立場で同一前主からの物権の取得を競うものとはいえないから,この場合の悪意の第三者は,取消しによる権利の原状回復を妨害する者であるとして,背信的悪意者であるというべきである。そうすると,FはAによる取消しを知りつつ乙に抵当権を取得しているから,Fは「第三者」にあたらない。
 したがって,Aは登記なくしてFに取消しの効果を対抗することができるため,Aの上記請求は認められる。
 ⑷ Aが無効を主張する場合にも,1⑷と同様に,Aの上記請求が認められる。

以 上



2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例⑱「もっと生きられたはずなのに」

【今日の一品】

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本日の昼飯兼夜飯はラーメン二郎立川店にて小豚です。

去年だか一昨年くらいに営業を再開したところですが,

今回初めて伺いました。

よくtwitterでは「しょっぱい」とか「豚がかたい」などと書かれていましたが,

本当にその通りでした。

なんなら野菜もかたかったです。

とはいえ私は別にジロリアンでもなんでもないので,

これで十分二郎欲は満たされます。

おいしかったです。

ところで,今回は,事例⑱です。

≪問題≫

●事例
 A(52歳)は,2011年3月にB病院の医師Cの診察を受けたが,同年12月に白血病で死亡した。次の各設問におけるAの妻X1(47歳)と子X2(15歳)の損害賠償請求につき検討せよ(設問はそれぞれ独立した問いである)。

【設問1】 2011年3月にAを診察したCは,仕事に忙殺され睡眠も十分とれず毎晩大量に飲酒をしていたこと等をAから聞き,特段の検査もせずに,Aの体調不良は過労やストレスによる内蔵機能の低下が原因であると判断し,Aに対し静養と断酒等の指示をし,肝機能疾患薬を処方した。Aは,一時は症状が改善したものの,1か月後には再び極度の疲労感に襲われ,体重減少や発熱も続いたため,総合病院で精密検査を受けたところ,同年5月,進行期の慢性骨髄性白血病に罹患していることが判明した。その直後より開始された種々の化学療法も奏功せず,Aは同年12月に死亡した。
 Xらは,Aが死亡したのはCが3月時点で必要な措置を講じなかったためであるとして,Bに対して,不法行為(715条)を根拠に,Aの死亡による逸失利益4000万円(平均稼働年数15年分で算出),Aの慰謝料3000万円,Xら固有の慰謝料1200万円等の損害の賠償を求めて訴えを提起した。この請求は認められるか。なお,同裁判では,同年3月の時点でBにおいて医療水準に応じた注意義務に従い適切な検査が行われていればAの病気は発見できたこと,ただし実際にこの時期に治療が開始されていたとしても延命できた可能性は5割程度にとどまるとする鑑定結果が出された。

【設問2】 【設問1】において,Aに自らの営む事業に係る負債15億円があったためXらが相続放棄をしたとすると,延命可能性が9割を超える場合だったとしても,Xらの損害賠償請求は認められないことになるか。

【設問3】 2010年8月,Aは,赤信号に変わるタイミングで交差点を横断していたところ,制限速度を50km上回って交差点に進入してきたD運転のトラックに撥ねられ,頭部を激しく強打した結果,言語障害と右下半身不随の障害を負った。そこで2010年12月,Aは,Dに対し,慰謝料2000万円,治療費3000万円,逸失利益2000万円(障害による労働能力喪失を平均稼働年数15年で算出),介護費用5000万円(平均余命までの30年分で算出)につき賠償請求をした。ところで,Aは,退院後も続けられていた言語療法の結果,2011年3月には意思伝達が可能となるまでに回復したが,この頃にAから体調不良を訴えられたX1は,AにCの診療を受けさせた。Cが,当初Aの体調不良は受傷の回復期にみられるものと判断し格別の検査を行わなかったこともあって,白血病の治療開始が遅れ,同年12月にAは死亡した。Aの訴訟を引き継いだXらは,Aの死亡はDの交通事故で意思伝達ができず病気の発見が遅れたことに起因するものであるとして,A死亡により,逸失利益2000万円,Aの慰謝料1000万円,Xら固有の慰謝料1200万円を従前の請求額に追加してDに賠償請求をした。この請求は認められるか。なお,交通事故におけるAとDの過失割合は1対9であった。また,交通事故当時すでにAは慢性骨髄性白血病に罹患してはいたが,症状が悪化する前段階であったため,治療をすれば寛解の可能性も7割はあったとの鑑定結果であった。


不法行為……

色々問題があってそれだけで大変なのに,

理論面で未だに学説同士が強く対立しあっているイメージがあります。

司法試験で出されたら嫌な分野の一つです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Xらは,Bに対して,使用者責任に基づく損害賠償請求をしているが,これが認められるかどうかについて,その要件を検討する。
 2⑴ CはBに雇用されて勤務される医師であるから,Bは「事業のために他人を使用する者」である。そして,CはBにおける勤務中の職務としてAの診療を行っているから,「被用者がの事業の執行について」行ったものである。
  ⑵ そこで,Aの死亡を権利侵害とみて,Cの過失行為とAの死亡との間に因果関係が認められるかどうかが問題となる。
 訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして前証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りる(※1)。このことは,医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断においても異なるものではない。そして,医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば,患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば,医師の不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定される(※2)
 これを本件についてみると,Aの延命可能性は5割程度という鑑定結果が出ていることから,裁判所においても同様の心証にしか達しない場合には,Cが注意義務を尽くして診療行為を行っていたとしても,Aが死亡時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されたとはいえないため,Cの不作為とAの死亡との間の因果関係は肯定されない。
  ⑶ もっとも,医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないが,医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは,医師は,患者に対し,不法行為による損害を賠償する責任を負う。なぜなら,生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって,その可能性は法に依って保護される利益であり,医師が過失により医療水準かなった医療を行わないことによって患者の利益が侵害されたものということができるからである(※3)
 これを本件についてみると,前記の鑑定結果からすれば,医療水準にかなった医療が行われていたならばAがその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が高度の蓋然性をもって証明されているということができる。したがって,Aにおいて,その死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性を喪失させられる権利侵害があり,これとCの医療行為との間の因果関係も肯定される。
 よって,XらのBに対する上記請求権は成立する。
 3 そこで,Xらが請求することができる損害の範囲について検討すると,あくまで生存の可能性が法益とされている以上は,これを具体的数値で明確に認定することは困難である。したがって,この場合には,Aの死亡による逸失利益までを賠償請求することはできず,Aの慰謝料請求のみが認められ,Xらはこれを相続した限りで賠償請求することしかできない。よって,XらはBに対し3000万円の範囲で損害賠償請求をすることが認められる。
第2 設問2
 1 Xらが相続放棄(同法938条)をする場合には,初めから相続人とならなかったものとみなされ(同法939条),AのBに対する慰謝料請求権及び逸失利益の損害賠償請求権も相続しないこととなる。そうすると,Xらがこれらの請求権を行使することはできなくなる。
 2⑴ そこでXらとしては,自己の固有の損害賠償請求権を行使することが考えられる。本件では,Aの延命可能性が9割を超えるとの鑑定結果が出されており,Cが注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば,Aがその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されるものと考えられるから,Cの不作為とAの死亡との間の因果関係は肯定される。したがって,Xらは,Aの生命侵害を理由とする損害賠償請求をすることができる。
  ⑵ ここで,損害とされるべき対象については,Xらの慰謝料及びXらがAから扶養を受ける利益である(同法711条)。この利益は,被扶養者固有の利益であるから,相続放棄によってAの逸失利益の損害賠償請求権が失われたからといって失われるものではない。したがって,相続放棄には影響されない。
 なお,扶養利益喪失による損害額は,相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく,個々の事案において,扶養者の生前の収入,そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分,被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合,扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきである(※4)
 したがって,Aの死亡による逸失利益4000万円が扶養利益喪失による損害額となるものではなく,このほかに,Aの負債15億円を放棄した点や,Xらの扶養を要する状態が存続する期間などを勘案して損害額が決定される。
第3 設問3
 1 Xらは,Dに対して,不法行為に基づく損害賠償請求をしているが,その損害がどの範囲で認められるか問題となる。
 2⑴ まず,Aが生前に,Dに対して,不法行為に基づく損害賠償請求をしていた部分について,慰謝料2000万円および治療費3000万円は,既に生じた損害であるから,これらの損害にかかる請求権は相続によりXらが取得する。したがって,Aの慰謝料及び治療費は損害の範囲に含まれる。
  ⑵ それでは,逸失利益についてはどの範囲で認められるか。逸失利益の算定は基礎年収に労働能力割合と労働能力喪失期間を乗じることによって行うところ,ここでは平均稼働可能年齢を用いることとなる。しかし,Aは平均稼働可能年齢に達する前に死亡しているため,その後の逸失利益部分は実際には稼働が可能でなかったとして損害の範囲に含まれないようにも思われるため,この点について検討する。
 労働能力の一部喪失による損害は,事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから,事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではない。また,事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより,賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ,他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるのは衡平の理念に反する。したがって,事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し,労働能力の一部を喪失した場合において,逸失利益の算定にあたっては,その後に被害者が死亡したとしても,当該事故の時点で,志望の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,当該死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきでない(※5)
 これを本件についてみると,AがDのトラックに衝突される交通事故の段階で,白血病の罹患の程度は進行期の前段階であり,この段階で治療をすることにより7割程度の確実性をもって寛解の余地があったのであるから,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情はなかったというべきである。したがって,交通事故に基づく逸失利益の算定において,Aが死亡した事実は就労可能期間の認定上考慮すべきではない。よって,逸失利益2000万円についても請求が可能である。
  ⑶ また,介護費用についてもどの範囲で認められるか問題となる。
 介護費用の賠償は,被害者において現実に支出すべき費用を補填すべきものであり,被害者が死亡すれば,その時点以降の介護は不要となるのであるから,もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく,その費用をなお加害者に負担させることは,被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり,かえって衡平の理念に反する。したがって,自己の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には,死亡後に要したであろう介護費用を当該事故による損害として請求することはできない(※6)
 そうすると,本件では,Aの死亡後の介護費用の賠償を求めることはできないため,介護費用5000万円のうち,A死亡後の部分については請求することができない。
 3 また,Xらは,Aの死亡による逸失利益,Xら固有の慰謝料を請求に追加しているが,緊急に対処すべきであり,かつ対処すれば死を回避できたという白血病の施術が,交通事故によって不可能となったという事情が具体的に認められる等でない限り,相当因果関係があるということはできない。したがって,Xらはこれらの請求をすることはできない。
 同様に,Aの慰謝料についても,Xらは請求することができない。

以 上


(※1)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁
(※2)「[訴訟上の因果関係の立証は,]医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断においても異なるところはなく、経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し、医師の右不作為が患者の当該時点における死亡を招来したこと、換言すると、医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば、医師の右不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定されるものと解すべきである。患者が右時点の後いかほどの期間生存し得たかは、主に得べかりし利益その他の損害の額の算定に当たって考慮されるべき事由であり、前記因果関係の存否に関する判断を直ちに左右するものではない。」最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁
(※3)「疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。けだし、生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである。」最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁
(※4)「不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるというべきである。しかし、その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。」最判平成12年9月7日集民199号477頁
(※5)「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。」最判平成8年4月25日民集50巻5号1221頁
(※6)「介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり、判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。……交通事故による損害賠償請求訴訟において一時金賠償方式を採る場合には、損害は交通事故の時に一定の内容のものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付けが欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。……被害者死亡後の介護費用が損害に当たらないとすると、被害者が事実審の口頭弁論終結前に死亡した場合とその後に死亡した場合とで賠償すべき損害額が異なることがあり得るが、このことは被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由になるものではない。以上によれば、交通事故の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用を右交通事故による損害として請求することはできないと解するのが相当である。」最判平成11年12月20日民集53巻9号2038頁



2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例⑭「聞いてないよ」

いつもと変わらない水曜日です。

今回は,事例⑭です。

≪問題≫

●事例
 Cは,甲土地(100坪)の近くのアパートに居住するDが,自宅を建築するための敷地として甲土地を購入したがっていることを伝え聞き,自分が甲土地を買い受けてそれをDに転売して,利益を得ることを思いついた。
 甲土地を含むその周辺一帯の土地は,かつてはBの父が大地主として所有していたものであったが,その父は十数年前に亡くなっており,現在は,Bが事実上その一族を取り仕切る実力者としての地位にいることは,衆目の一致するところであった。また,甲土地は,Bの単独所有として時されていた。そこで,Cは,Bに対して甲土地の買受けを持ちかけたところ,Bは「お売りしましょう」と述べ,平成24年4月1日にB・C間で代金を5000万円とする甲土地の売買契約が締結された。代金支払は,同月20日に,移転登記および甲土地の引渡しと引換えに行われることとされた。
 これを受けて,CはDに甲土地の売却を持ちかけ,同月8日に,C・D間で代金を5300万円とする売買契約を締結したが,Dの資金調達の関係で,代金支払は,同年6月1日に移転登記および甲土地の引渡しと引換えに行われることとされた。
 ところが,甲土地は,実際にはBとその妹Aが共同相続したものであり(相続分はA・Bそれぞれ1/2ずつ),遺産分割がされないままであったものを,たまたま同年3月に,Bが書類を偽造してAに無断で単独名義の登記をしていたものである。Bは,Aの持分を安く譲り受けることは容易であると考えて,Cに甲土地を売却する契約を締結したものであった。同年4月2日,BはAに対して,2000万円での持分の譲受けを持ちかけたが,Bの予想に反してAはそれを強く拒んだ。Bは,何とか2500万円以内での譲受けをめざしてその後も粘り強くAの説得を続けていたが,Aは3000万円以上でなければ持分を譲ることはできないと述べて,断固として応じようとしなかった。Bは,結局,2500万円以内でAの持分を譲り受けることはできないと判断し,同年4月17日,Cに事情を説明して,契約をなかったことにして欲しいと告げた。
 この場合につき,次の設問に答えなさい。設問はそれぞれ独立の問いである。

【設問1】 CはBに対して,いかなる権利行使をすることができるか論じなさい。

【設問2】 平成24年4月18日に,Bは交通事故で死亡し,AがBを単独相続した(単純承認をした)。このとき,CはAに対して甲土地の引渡しおよび所有権の移転を求めることができるかどうか論じなさい。


他人物売買ですね。

みんな大好き担保責任の性質論にも触れ,

無権代理の相続の問題にも思いを巡らせ,

頑張って答案を書いていきたいと思います。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Cは,Bに対して,甲土地のうちAの持分に係る部分(以下「A持分部分」という。)については他人物売買であるとして,契約を解除する(民法563条2項)ことが考えられる。
 甲土地は,A及びBが共同で相続したものであるから,それぞれ2分の1ずつ(同法900条4号)の持分を有する共有状態となっている。そうすると,A持分部分については,Bはこれを処分する権限を有していないから,BC間の「売買の目的である権利の一部が他人に属する」(同法563条1項)といえる。
 「売主がこれを買主に移転することができないとき」とは,社会の取引観念上,権利移転を期待できない場合をいい,権利者の処分意思の有無,売主による履行意思の欠如,時間の経過等から判断する。A持分部分の権利者であるAは,Bの提示した2500万円での譲渡しを断固として拒絶しているから,処分意思はないものといえる。また,BはCに対し,契約はなかったことにしてほしいと告げているから,Bの履行意思は欠如している。したがって,社会の取引観念上,BがCにA持分部分を移転することは期待できないといえるから,「売主がこれを買主に移転することができないとき」にあたる。
 「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」とは,通常人を基準として,制約の性質や目的から客観的に判断される(※1)。Cが,甲土地のうちBの持分に係る部分(以下「B持分部分」という。)のみを取得した場合には,甲土地はA及びCの共有となるが,CはDが居住用住宅を建てるための敷地として甲土地を転売しようとしているのであり,同様に転売を考えている通常人であれば,B持分部分を取得できるだけであれば甲土地を買い受けなかったということができるから(同法249条参照),「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」にあたる。
 そして,Cは,A持分部分が他人物であることについて,契約締結当初において「善意」であったといえる。
 したがって,Cは,Bに対して,契約を解除することができる。
 2 Cは,Bに対して,他人物売買の担保責任として損害賠償請求をする(同法563条3項)ことが考えられる。
 同項は,売買の目的である権利の一部が他人に帰属する場合でも,売主は目的物を移転する契約上の義務を負っている(同法560条)ことから,債務不履行責任の特則を定めたものである。その特則性は,買主の善意が要件であること,無過失責任であることに求められるから,損害賠償の対象は信頼利益に限られる。
 そうすると,CはBに対して,契約費用や登記の準備費用等についてのみ損害賠償を受けられる。
 3 そこで,Cは,Bに対して,債務不履行に基づく損害賠償請求をする(同法415条後段)ことが考えられる。
 前記の担保責任に基づく損害賠償請求は,悪意の買主に債務不履行に基づく損害賠償請求を認めない趣旨にとどまらず,善意の買主に売主の無過失責任の追及を認めるものであるから,担保責任に基づく損害賠償請求が認められる場合であっても,これとは別個に債務不履行に基づく損害賠償請求が成立する余地がある。
 前記のように,BはA持分部分をCに譲渡することについて「履行することができなく」なっている。
 「責めに帰すべき事由」とは,故意,過失又は信義則上これと同視し得る事由をいう。Aは3000万円以上の価格であれば売るといっているのであって,2500万円以内で買いたいというBと条件が折り合っていないだけであるが,金銭の提供には不能はありえないのであるから,AがA持分部分を相当価格で売り渡そうという態度を示していたのであれば,Bとしてはこれを買い受けられなかったことに不可抗力はないはずである。不能でない限り,いくら不利な条件でもAから買い受けてCに対する債務を履行すべきであり,これを買い受けなければ当該債務の履行ができないことは当然認識できるのであるから,過失どころか故意の不作為として帰責事由を基礎づける事情となる。仮にAに全く売却の意思がなくとも,これを取得できなければBの過失があるということができる。
 したがって,Cは,Bに対して,債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。この場合には,損害賠償の対象に履行利益まで含まれるのであるから,CのAに対する甲土地の転売利益である300万円及びCがDから損害賠償請求を受けた場合の損害額を請求することができる。
第2 設問2
 1 Cは,Aに対して,売主Bの地位を相続したことをもって,売買契約に基づく目的物引渡請求権としての土地明渡請求権を行使する。これに対して,Aは,A持分部分をCに移転することを承諾するか否かの自由を有しているとして,Cの上記請求を拒むことが考えられる。そこで,売主の地位を相続した権利者が権利の移転を拒絶することができるかどうかについて検討する。
 2 権利者が他人の権利の売主を相続した場合であっても,そのたに権利者自身が売買契約を締結したことになるものではないし,これによって売買の目的とされた権利が当然に買主に移転するものとされる根拠もない。また,権利者は権利の移転につき諾否の自由を有しているのであって,それが相続による売主の義務の承継という偶然の事由によって左右されるべき理由もなく,また権利者がその権利の移転を拒否したからといって買主が不測の不利益を受けるというわけでもない。したがって,権利者は,相続によって売主の義務ないし地位を承継しても,相続前と同様その権利の移転につき諾否の自由を有し,信義則に反すると認められるような特別の事情がない限り,当該売買契約上の売主として履行義務を拒否することができる(※2)
 そうすると,本件でも,Aは,権利者としての地位に基づいて,Cへの権利移転を拒絶することができる。
 したがって,CはAに対して甲土地の引渡しおよび所有権の移転を求めることはできない。
 3 なお,CはAに対して,前記のように損害賠償責任を負うBの地位を相続したとして,担保責任又は債務不履行に基づく損害賠償請求をすることはできる。

以 上


(※1)「民法563条の規定に徴すれば,売買の目的たる権利の一部が他人に属するに因り,売主が之を買主に移転すること能わざる場合に於て,残存する部分のみなれば買主が之を買受けざるべかりし事情は,売買の当時売主に於て之を知りたること,若は契約の性質,売主に知れたる契約の動機等によりて推断し得べきものたることを要すと解すべき根拠なく,唯正常の人が其の買主となりたる場合に於ては,通常之を買受けざるべかり事情たるを以て足ると解するを相当とし,原審は本件各売買の場合に斯る事情ありたることを認めたるものなること判文上自ら明白なるを以て,原判決には所論の如き違法あるものに非ず。」大判昭和6年10月31日新聞3339号10頁(一部現代表記に改め,句読点挿入済み)
(※2)「他人の権利の売主が死亡し、その権利者において売主を相続した場合には、権利者は相続により売主の売買契約上の義務ないし地位を承継するが、そのために権利者自身が売買契約を締結したことになるものでないことはもちろん、これによつて売買の目的とされた権利が当然に買主に移転するものと解すべき根拠もない。また、権利者は、その権利により、相続人として承継した売主の履行義務を直ちに履行することができるが、他面において、権利者としてその権利の移転につき諾否の自由を保有しているのであつて、それが相続による売主の義務の承継という偶然の事由によつて左右されるべき理由はなく、また権利者がその権利の移転を拒否したからといつて買主が不測の不利益を受けるというわけでもない。それゆえ、権利者は、相続によつて売主の義務ないし地位を承継しても、相続前と同様その権利の移転につき諾否の自由を保有し、信義則に反すると認められるような特別の事情のないかぎり、右売買契約上の売主としての履行義務を拒否することができるものと解するのが、相当である。」「このことは、もつぱら他人に属する権利を売買の目的とした売主を権利者が相続した場合のみでなく、売主がその相続人たるべき者と共有している権利を売買の目的とし、その後相続が生じた場合においても同様であると解される。」最判昭和49年9月4日民集28巻6号1169頁



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